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▶ ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイションの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】全方向視覚装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20221122BHJP
   A61B 1/06 20060101ALI20221122BHJP
   A61B 1/07 20060101ALI20221122BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61B1/00 500
A61B1/06 611
A61B1/00 731
A61B1/07 733
A61B1/00 732
G02B23/26 A
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020159403
(22)【出願日】2020-09-24
(62)【分割の表示】P 2019005753の分割
【原出願日】2014-06-19
(65)【公開番号】P2021020073
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】61/836,716
(32)【優先日】2013-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/905,893
(32)【優先日】2013-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/934,518
(32)【優先日】2014-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/934,454
(32)【優先日】2014-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】細田 真希
(72)【発明者】
【氏名】ナドカルニ シーマンティニ
(72)【発明者】
【氏名】ミレン シシュコフ
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-052882(JP,A)
【文献】特表2009-509690(JP,A)
【文献】特開2008-228810(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0019809(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0262359(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を分析するための装置であって、
ミラーと、
前記ミラーと光通信する第1の切り替え可能な照明ファイバと、
前記ミラーと光通信する第2の切り替え可能な照明ファイバと、
前記ミラーと光通信するファイババンドル端面を含む光ファイババンドルと、
2つ以上の切り替え可能な照明ファイバの切り替えを制御する切り替えシステムと、
を備え、
前記第1および第2の切り替え可能な照明ファイバは、光ファイババンドルに隣接して配置され、
前記切り替えシステムは、前記ミラー上の2つ以上の隣接していない位置を同時に照明するように適合され、
第1の照明ファイバからの照明に基づく組織から反射される第1の光は、ファイババンドル端面の第1の部分に伝達され、第2の照明ファイバからの照明に基づく組織から反射される第2の光は、ファイババンドル端面の第2の部分に伝達され、
ファイババンドル端面の前記第1の部分は、ファイババンドル端面の前記第2の部分とオーバーラップしない、装置。
【請求項2】
前記第1および第2の切り替え可能な照明ファイバは、各々、組織の少なくとも60°の部分を照明するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記切り替えシステムは、MEMSスイッチを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記光ファイババンドルの遠位端に配置されたレンズをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記レンズは、グリンレンズである、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記レンズと前記ミラーとの間に円偏光子をさらに備える、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記ミラーは、複数ファセットの角錐ミラーを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記複数ファセットの角錐ミラーは、4つのファセットを有する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記複数ファセットの角錐ミラーは、6つのファセットを有する、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記第1および第2の切り替え可能な照明ファイバは、シングルモードファイバである、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記光ファイババンドルおよび前記ミラーは、外側シース内で可動な駆動軸に取り付けられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記駆動軸は、90°未満の不連続の回転に適合される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記光ファイババンドルの近位端と光通信する検出器と、スペックル強度の時間的自己相関関数を計算するコンピュータとをさらに備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記光ファイババンドルは、組織の実質的にオーバーラップしない2つの区分から光を受光するように適合され、前記光は、前記第1の切り替え可能な照明ファイバおよび前記第2の切り替え可能な照明ファイバから反射された、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2013年6月19日出願の米国特許仮出願第61/836,716号、2013年11月19日出願の米国特許仮出願第61/905,893号、2014年1月31日出願の米国特許仮出願第61/934,454号、および2014年1月31日出願の米国特許仮出願第61/934,518号の優先権を主張するものであり、各文献の開示はここで本明細書にその全体が援用される。
【0002】
本願は、概して、医療装置に関し、詳細には、レーザスペックルイメージングのための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
急性心筋梗塞は、ひどく危険な粘弾性の特性を有する冠動脈プラークの破裂によって起きることが多い。レーザスペックルの変動を時間的に発生させることから光散乱粒子のブラウン運動を測定することによってプラークの粘弾性特性を評価する、脈管内レーザスペックルイメージング(ILSI)と呼ばれる新しい光学技術が開発されてきた。
【0004】
ILSIは、コヒーレント光(例えばレーザ光)が粗い試料または多重散乱性の試料から検出面上に反射されるときに起こる「スペックル」として知られる干渉現象を用いる。試料からおよび試料内で光子が散乱することにより、様々な光子が検出面まで様々な距離を伝播する。その結果、試料から反射されるかまたは後方散乱される光は、空間的かつ時間的にコヒーレントな場合は検出面で干渉して、「スペックル」として知られる粒状のパターンを生み出す。ILSIを用いるとプラークの粘弾性の特性を評価基準とすることができる。ILSIは、例えば、ヒトの大動脈のアテローム硬化性プラークを分析してプラークの粘性を評価するために用いられてきた。本明細書にその全体が援用されるTearneyの特許文献1参照。脆弱なプラークの検出のための冠動脈内LSIを提供するILSIも記載されている。本明細書にその全体が援用されるTearneyの特許文献2参照。
【0005】
しかし、ヒトの大動脈または他の管腔の周囲のILSI画像を作成するカテーテルなど、改善されたカテーテルが依然として必要である。管腔壁の周囲のILSI画像は機械構造を用いて視認できるが、ファイババンドルがファイバコアを多数有し典型的な光ファイバの回転接合部に適していないので、ファイババンドルの機械的な回転は複雑であり、実現が難しい。さらに、ILSIのオーバーラップしない画像を必要とすることにより、本明細書で説明するような装置を使用することなく周囲の画像を撮ることが難しくなる。したがって、画像内視鏡に設けられるようなファイババンドルを回転させることは、通常、ILSIにとって実行可能な選択肢ではない。さらに、カテーテルの長さにわたってファイバの密度が高いことは、光の漏出(クロストーク)の一因となり、したがって信号を劣化させる恐れがある。したがって、クロストークが低減されたILSI信号を出す装置も必要である。
【0006】
さらに、従来の血管顕微鏡とは異なり、コヒーレント光の干渉によって形成されたレーザスペックルパターンは動きに非常に影響されやすい。
【0007】
したがって、改善されたILSIカテーテルおよび使用法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第7,231,243(B2)号
【文献】米国特許出願公開第2008/0262359(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも第1および第2の導波路であって、各々コヒーレントな光または部分的にコヒーレントな光で管腔組織を照明するように構成された、少なくとも第1および第2の導波路と、第1および第2の導波路の照明を切り替えるように構成された、1つまたは複数のスイッチと、前記管腔組織から反射される光を受光し一連のスペックルパターンを形成するように構成された、少なくとも第3の導波路と、第1および第2の導波路から管腔組織に光を反射し管腔組織から第3の導波路上に光を反射するように構成された、反射体とを備え、1つまたは複数のスイッチは、任意の所与の時間に管腔組織から第3の導波路上に反射される光が管腔組織の1つまたは複数の実質的にオーバーラップしない区分から反射されるように構成される組織分析のための装置が提供される。一部の実施形態では、その装置はカテーテルを備える。
【0010】
他の実施形態は、少なくとも第1のミラーファセットおよび第2のミラーファセットを有する、複数ファセットの角錐ミラーと、第1のミラーファセットと光通信する切り替え可能な照明ファイバと、第2のミラーファセットと光通信する第2の切り替え可能な照明ファイバと、複数ファセットの角錐ミラーと光通信する光ファイババンドルとを備える、組織分析のための装置を提供する。使用の際には、第1および第2の切り替え可能な照明ファイバは、実質的にオーバーラップしない組織区分を照明する。
【0011】
本明細書に記載する実施形態は、複数ファセットの角錐ミラーの少なくとも1つのファセットにコヒーレントな光または部分的にコヒーレントな光を送ることによってその光で管腔壁の少なくとも1つの第1の円筒区分を照明するステップと、管腔壁の第1の円筒区分から反射される光をミラーで受光するステップと、複数ファセットの角錐ミラーの少なくとも第2のファセットにコヒーレントな光または部分的にコヒーレントな光を送ることによって、第1の照明ステップとは異なる時間にその光で管腔壁の少なくとも第2の円筒区分を照明するステップと、管腔壁の第2の円筒区分から反射される光をミラーで受光するステップと、ミラーから反射される光を検出器で受光し一連のスペックルパターンを形成するステップと、組織内の対象物の顕微鏡的運動によって起こる変化を測定するのに十分な時間間隔でスペックルパターンの変化を分析するステップとを含む、組織分析の方法を提供する。このような照明の間は、複数ファセットの角錐ミラーのうち隣接する2つのファセットが同時に照明されないことが好ましい。本明細書で用いられるように、ミラーファセットを通して伝播することとは、光がミラーファセット表面から反射することを意味する。
【0012】
さらに他の実施形態は、第1の切り替え可能な照明ファイバで管腔壁の第1の部分を照明するステップであって、照明が複数ファセットの角錐ミラーの第1のファセットを通して伝播する、第1の部分を照明するステップと、第2の切り替え可能な照明ファイバで管腔壁の第2の部分を照明するステップであって、照明が複数ファセットの角錐ミラーの第2のファセットによって伝播する、第2の部分を照明するステップとを含む、組織壁を照明する方法を提供する。この方法では、組織壁の周囲は順次照明される。
【0013】
一部の実施形態では、光源と、本明細書に記載するような装置と、検出器とを備えるレーザスペックルイメージングカテーテルが提供される。
【0014】
本発明のさらなる特徴は、添付の図面に関連する例示的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【0015】
本発明のさらなる目的、特徴および利点は、本発明の例示的な実施形態を示す添付の図と併せて以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】典型的なg2(t)曲線を示す。
図1B】様々なタイプのプラークに関するτの比較を示す。
図2】照明切り替えシステムを有する4ファセットの角錐ミラーを用いる全方向視覚ILSIカテーテルの概略図。
図3A】4ファセットの角錐ミラーを用いたILSIカテーテルの遠位光学部品のCADモデルの斜視図。
図3B】4ファセットの角錐ミラーを用いたILSIカテーテルの遠位光学部品のCADモデルの平面図。
図4】4ファセットの角錐ミラーを用いたILSIカテーテルの遠位光学部品の光学設計。
図5A】ファイババンドル端面における視野。
図5B】ファイババンドル端面における対応する画像形状。
図6】近位端における照明切り替えシステム。
図7A】4ファセットの反射要素の概略図。
図7B】様々な実施形態に関する強度対時間を示すグラフ。
図7C】6ファセットの反射要素の概略図。
図7D】様々な実施形態に関する強度対時間を示すグラフ。
図8】円錐ミラーを用いる全方向視覚ILSIカテーテルの概略図。
図9】円錐ミラーを用いたILSIカテーテルの遠位光学部品の光学設計。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明では、開示される本発明を実施できる実施形態の説明である添付の図面を参照する。しかし、当業者は、本開示の新規性および範囲から逸脱することなく他の構造面および機能面の修正を実行できることを理解されたい。
【0018】
冠動脈壁の単一の領域を評価可能にした脈管内カテーテルによって、ILSIを生きている動物に導入することができる。例示的なILSIシステムでは、レーザ光源から放出されるビームは、自由空間で照明ファイバとして用いられるシングルモードファイバと接続される。この照明ファイバおよびファイババンドル(FB)は、ILSIカテーテルに組み込まれる。ファイババンドルは、スペックル画像を検出する、拡大光学部品を有する検出器と、測定されたプラークの粘弾性の特性を示す、g2(t)曲線として知られるスペックル強度の時間的自己相関関数を計算するコンピュータとに、スペックル画像を送るために用いることができる。この工程は、例えば、本明細書に全体が援用される特許文献1に記載されている。
【0019】
カテーテルの遠位端では、照明ファイバからの光は、ミラー面によって直接反射され、血管壁のプラークまたは組織などの管腔壁に照射される。組織の多重散乱光は、グリンレンズなどの集束レンズによって取り込まれ、ファイババンドルの端面上で画像化され、近位端に送られる。
【0020】
こうしたスペックル画像は、組織の単一の領域から作り出され、t=tからt=tの時間に沿って変動する。スペックル画像の変動は、後続の画像をt=tの初期画像と比較する、g2(t)曲線という名称のスペックル強度の時間的自己相関関数によって説明することができる。図1Aは、スペックル画像によって計算される、単純化された典型的なg2(t)曲線を示す。
【0021】
スペックル画像の数値的な変動の速度を評価するために、g2(t)曲線から一意的に時定数「τ」を計算することができる。冠動脈にはいくつかのタイプのプラークがあり、その一部はAMIに関係する。図1Bは、プラークに関するτの比較を示し、ここで、NCFA<100は、線維性被膜の最小厚さが100μm未満である壊死性コアの線維性アテロームを意味し、NCFA>100は、被膜の厚さが約100μm超であることを意味し、PITは病的内膜肥厚を意味し、IHは内膜過形成を意味し、Cは石灰化プラークを意味する。被膜厚さ約65μmのNCFAは、プラークの破裂に関して重要な役割であると考えられる。特許文献2参照。したがって、ILSIカテーテルを用いて生体内でAMIを引き起こす不安定なプラークを識別することができる。
【0022】
本明細書では、ファイババンドルとして示される導波路を有するILSIカテーテルのための全方向視覚カテーテルを実現するために、いくつかの実施形態を説明する。第1の実施形態は、照明切り替えシステムを有する複数ファセットの角錐ミラー(実施形態1)を用い、第2の方法は、円錐ミラー(実施形態2)を用いている。照明切り替えシステムは、ファイババンドル端面の角錐ミラーの各面からの画像のオーバーラップを避けるために用いられる。
【0023】
図2は、照明切り替えシステムを有する4ファセットの角錐ミラーを用いた実施形態1の全方向視覚ILSIカテーテルの概略図を示す。本実施形態では、レーザ光源から放出されるビームは、照明ファイバとして用いられるシングルモードファイバと接続される。シングルモードファイバは、光ファイバMEMS切り替えシステムと連結されている。このMEMS切り替えシステムは、1つの入力チャネルおよび2つの出力チャネルを有し、出力チャネルを切り替えるようにコンピュータによって制御される。2つの出力チャネルは、50:50の強度に分岐するファイバカプラに連結されている。その際、ILSIカテーテルには4つの照明ファイバが組み込まれており、そのうち2つは、同時に切り替えられ管腔壁に照射される。その管腔壁は、この場合、血管壁のプラークまたは組織である。
【0024】
図2についてさらに詳細には、光源21からのレーザ光などのコヒーレント光は、ファイバ接続光学部品22を介してファイバ23を通して伝達され、微小電気機械(MEMS)切り替えシステムなどの照明切り替えシステム24に至る。その照明切り替えシステム24は、出力ファイバ25を2つ設け、出力ファイバ25は、ファイバカプラ26を貫通する。照明ファイバ27は、カテーテル28につながっている。カテーテル28の遠位端は、以下で図3と同じ番号を用いる拡大図に示される。図では、照明ファイバ34からの光は、円偏光子38を通って本明細書で4ファセットの角錐ミラーとして示されるミラー40などの反射体上に至る。光は、反射体40から反射されて、管腔壁のアテローム硬化性プラークなどの移動組織層を覆う静止組織層などの組織試料29に至る。外側シース31(より詳細には図3B参照)を、試料29と直接接触するように配置する(近距離場)こともでき、短い距離、例えば、試料から1mmから10cm離間した位置に位置決めする(遠距離場)こともできる。光が試料29に入り、試料内の分子、細胞デブリ、たんぱく質、化合物(例えばコレステロール結晶)、および細胞微細構造(小器官、微小管など)によって反射される。試料29から伝送される光は、ミラー40から反射して円偏光子38を通り、ここで、集束光学部品(グリンレンズ)37を通ってファイババンドル35に至り、次いで、ファイババンドル2Xによって検出器に伝達される。検出器は、例えば、平面電荷結合素子(CCD)、または線形検出器もしくは2次元検出器でよい。光は、任意選択で、円偏光子とグリンレンズとの間に配置される開口または遮蔽体を通る。あるいは、任意選択の開口は、反射体40の面(単数もしくは複数)または共通の焦平面に配置されてよい。干渉により、検出器2Xにスペックルパターンが形成される。次いで、結果として生じるスペックルパターンは、コンピュータ48の一部として例示されるアナログ-デジタル変換器によってデジタル化され、本明細書ならびに特許文献1および特許文献2に記載される手法を用いて分析され、任意選択で表示装置49に示され、そのときにg2(t)曲線を計算することができる。
【0025】
本発明は、特に生体内分析に有用である。したがって、本装置は、特に、ヒトまたは他の動物の管腔(例えば血管)の測定に適合される。一部の好ましい実施形態では、管腔に挿入できる装置の外径は、せいぜい2mm、1.5mm、もしくは1.0mm、または990μmである。一部の好ましい実施形態では、管腔に挿入できる光学部品(例えば、ファイババンドル、照明ファイバ、集束光学部品および反射光学部品)の外径は、せいぜい1mm、900μm、800μm、700μm、600μm、500μm、またはそれ未満である。
【0026】
他の多くのタイプの機器を用いてスペックルデータを収集することができる。例えば、本明細書に記載するような光学部品は、内視鏡、関節鏡、または腹腔鏡など、他のタイプの機器に一体化することができる。その光学部品は、標準的な内視鏡もしくは腹腔鏡のアクセサリポートに通される独立型のユニットを形成することもでき、2重目的の脈管内超音波カテーテルなど、別のタイプのカテーテルと一体化することもできる。その光学部品は、(組織の表面から1波長を超える距離だけ離間して配置される検出器における)「遠距離場画像」ではなく「近距離場画像」(1波長未満の、試料が見える位置の近く)の形成を可能にするように、伝送される光をファイババンドルの遠位端上に集束させるレンズを含むこともできる。
【0027】
円偏光フィルタ38は、一定のタイプの偏光された光を除く全ての光を取り除くのに使用できる任意選択の構成要素である。あるいは、垂直偏光フィルタにより入射光に垂直な偏光を有する光のみ検出器に到達でき、水平偏光フィルタにより入射光と同じ偏光を有する光のみ通過できるようになる。多重散乱光は、一重散乱光よりその初期偏光を保持する可能性が低いので、偏光フィルタを用いて多重散乱光または一重散乱光にデータをバイアスすることができる。このようなバイアスを用いると、試料内により深く貫入した光は、表面から反射される光または表面付近から伝送される光よりも大きく散乱されるので、試料の構成についての情報を推定することができる。
【0028】
検出器は、CCDの代わりに、例えば、CMOSセンサ、フォトダイオード検出器、感光板、光検出器アレイ、または単体の検出器とすることができる。光源は、連続光または同期パルスで試料を照明することができる。
【0029】
この概略図では、4ファセットの角錐ミラーが選択されるが、もちろんどの複数ファセットのミラーを選択することもできる。偶数ファセットのミラーの場合は、2つ同時の照明の切り替えを用いて測定時間を短縮することができる。奇数ファセットのミラーの場合は、単一の照明の切り替えを用いることができる。偶数ファセットのミラーを用いる場合に単一の照明の切り替えを用いることも企図される。
【0030】
したがって、一実施形態では、6ファセットの角錐ミラーが用いられ、ここで、照明光学部品およびMEMS切り替えシステムは、ミラーの互いに反対側のファセットを3対、順次、したがって管腔壁の3つの区分を順次照明するように適合され、各時点で6ファセットの角錐ミラーの互いに反対側の2つの面が同時に照明される。
【0031】
さらに別の実施形態では、8ファセットの角錐ミラーが用いられ、ここで、照明光学部品およびMEMS切り替えシステムは、ミラーの互いに反対側のファセットを4対、順次、したがって、管腔壁の4つの区分を順次照明するように適合され、各時点で8ファセットの角錐ミラーの互いに反対側の2つの面が同時に照明される。
【0032】
別の実施形態では、6ファセットの角錐ミラーを用いる場合、1つおきのファセット3つが同時に照明され、ここで、MEMSスイッチは、交互に並んだ2組のファセットを順次照明する。同様に、8ファセットの角錐ミラーの場合、4つのファセットが同時に照明され、4つのファセットは、交互に並んだファセットであり、交互に並んだファセットを2組、順次、照明することができる。
【0033】
一部の実施形態では、複数ファセットの角錐ミラーのファセットのそれぞれを照明することができ、次いで、その装置は、約360°/(n×2)の不連続の回転により回転する。ここでnは、ミラーのファセット数である。さらなる回転も企図される。回転位置で測定した後に、装置は、元の位置に回転し、さらなる走査のために長手方向に管腔に沿って移動することができる。好ましくは、光学系は、このような実施形態を最適にするように設計される。例えば、(本明細書で以下に論じる図8に示すように)グリンレンズの位置で対向するように、光遮蔽体をファセット上に配置することができる。
【0034】
このシステムでは、遠位端から近位端にスペックル画像を送るためにファイババンドルも用いられる。近位端では、拡大光学部品を有する検出器がスペックル画像を検出し、コンピュータが、測定されたプラークの粘弾性の特性を示す、g2(t)曲線としても知られるスペックル強度の時間的自己相関関数を計算する。
【0035】
遠位端では、照明ファイバからの光は、4ファセットの角錐ミラー面によって直接反射され、管腔壁に照射される。その管腔壁は、この場合、血管壁のプラークまたは組織である。組織の多重散乱光は、グリンレンズによって取り込まれ、ファイババンドルの端面上で画像化され、近位端に送られる。
【0036】
照明切り替えシステムを有する複数ファセットの角錐ミラーを用いる全方向視覚ILSIカテーテルを説明するために、ILSIカテーテルの遠位光学部品の光学要素の機構を説明する。図3Aは、4ファセットの角錐ミラーを用いるILSIカテーテルの遠位光学部品のCADモデルを示し、図3Bは、各光学要素の例示的な寸法を示す。
【0037】
図3Aは、4ファセットの角錐ミラーを用いるILSIカテーテルの遠位光学部品のCADモデルを示す。このILSIカテーテルは、4ファセットの角錐ミラーを組み込み、照明のために用いられるシングルモードファイバ4つと関連付けられる。ILSIカテーテルの長手方向の周りの4つの照明ファイバの回転角度位置は、4ファセットの角錐ミラーのファセットと等価である。異なる4つのシングルモードファイバを通る照明光は、ファイバの端面から放出され、円偏光子を通り、4ファセットのミラーによって反射され、組織に照射される。組織内では、本明細書に記載するように、多重散乱が起こり、散乱光の一部分は後方散乱され、再度4ファセットのミラーで反射され、円偏光子を通り、グリンレンズによってファイババンドル端面上で画像化される。ファイババンドル端面上の画像は、ファイババンドルを通して近位の光学部品に移送される。
【0038】
さらに詳細には図3Bを参照すると、複数ファセットの角錐ミラーと共に例示された光学カテーテル28が設けられ、外側シース31およびクリアランス32を含む。駆動軸33は、照明ファイバ34およびファイババンドルフェルール35を収容する。ファイババンドルフェルール35は、遠位端で、グリンレンズ37などの集束光学部品、円偏光子38、および透明でよい内側シース39内の複数ファセットのミラー40に取り付けられる。内側シースは、角錐ミラーなどの複数ファセットのミラー40を保持するように特に適合することができる。複数ファセットのミラー40は、図3Aでは4ファセットの角錐ミラーとして示されている。照明ファイバ(単数または複数)34は、カテーテルから近位に光源まで延在する固定光ファイバ(図示せず)に連結することができる。
【0039】
例示的な寸法を有するILSIカテーテルの遠位光学部品の光学設計が図4に示されている。このように、直径1000μm未満、800μm未満、または600μm未満(図示の594μm)の光学構成要素を有するカテーテル、および1500μm未満、1250μm未満、または1000μm未満の外側シースを含むカテーテルが設けられる。図3Bおよび図4に示す例示的な直径は、全径を990μmにするように形成される。他の直径および構成も企図される。
【0040】
この光学設計に基づいて、この系の遮蔽体は、グリンレンズの右の端面に配置することができ、角錐ミラーの形状は、どの画像化形状にも影響を及ぼさない。さらに、この遠位光学部品の視野(FOV)は、内側シースの透明の領域によって限定されている。この設計では、円偏光子(CP)によって起こる迷光を避けるために、CPの側面または内側シースの一部の領域は不透明であり、血管壁部分をCPから前方に送るようにFOVは限定される。FOVの限定は、以下で説明するように測定時間も改善する。
【0041】
図3Bでは、この系の遮蔽体をグリンレンズの右側に配置することができる。したがって、角錐ミラーの1つのファセットおよび遠位光学部品を通して得られる画像は、グリンレンズの形状が円筒なので、理論上は円形になる。しかし、駆動軸は、この系の遮蔽体に加えて開口絞りとしても働き、光束の半分を遮る。そのとき、ファイババンドル上の実際の画像形状は、図5Bに示すように半円である。
【0042】
この系の遮蔽体が角錐ミラーの1つのファセットに配置される場合は、ファイババンドル端面上の画像形状は、概してそのファセットと同じであり、オーバーラップする画像はない。しかし、この場合、FOVは狭く、全長をより長くする必要がある場合がある。
【0043】
図4に示される例示的な一実施形態では、集束光学部品37は、直径350μm(CA=315μm)のGRINTECHまたはNSGのグリンレンズである。光は、2重に通過する場合に透過率4.2%である(457mm×609mm)、American Polarizers Inc.の円偏光子38を通して送信される。内側シース(ZeusのFEP AWG23)は、内径660.4μm(AWG23)、厚さ50μmである。外側シース39は、内径860μm、外径990μm、厚さ65μmである。特定の非限定的な一例で用いられる反射体40は、研磨した黄銅ワイヤ(McMaster)から形成した48°の4ファセットの角錐である。他の非限定的な例では、反射体は、アルミニウム被覆の研磨したガラスロッドから形成した4ファセットの角錐ミラーである。
【0044】
図5Aは、4ファセットの角錐ミラーの1つのファセットによってカバーされるFOVを示し、図5Bは、そのFOVに対応するファイババンドル端面における画像の形状を示す。
【0045】
FOVの限定により、図5Bに示すファイババンドル端面において上側半分の画像が切り取られており、これは、角錐ミラーの反対側のファセットによって構築される画像のためにファイババンドル端面の上側を使用できることを意味する。一方、隣接するファセットからの画像は、元の画像にオーバーラップするので避けるべきである。隣接するファセットによるこのオーバーラップ画像を避けるために、照明の光は、近位の光学部品の外部制御装置によって切り替えられる。したがって、光は、ミラーの隣接していない2つのファセットに一度に入射でき、結果として得られる画像は、ファイババンドルのほとんどをカバーするFOVを形成する。その際、切り替えにより、ファセットのそれぞれを画像化することが可能になる。
【0046】
図5Aに示すように、この場合、1つのファセットに対応する周囲FOVは、43.6°である。これは174.4°(43.6×4面)の全体の周囲FOVを実現し、360°全体の48.4%と等価である。このFOVは、ファセット数が増えると改善できるが、本質的に、FOVは、実現可能な複数ファセットの角錐ミラーを用いる限り100%に達することができない。100%の周囲FOVを実現するために、検流計モータの動きなど、部分的な角度内の不連続の回転をILSIカテーテルに組み込むことができる。例えば、検流計モータがカテーテルの近位端に配置され、駆動軸が検流計モータの動きを遠位端に移送する。ファイババンドルの動きは、ヒトまたは動物の体の心臓の動きよりも小さく、検出器の正面のファイババンドルの近位端は固定されているので、スペックル画像は安定し鮮明である。一部の実施形態では、不連続の回転は、360°未満、もしくは270°未満、もしくは180°未満、もしくは90°未満、または約45°である。
【0047】
例えば、4ファセットの角錐の場合、回転は、約45°とすることができる。この回転は、1つの回転位置で4つのファセットによって画像化した後に、プローブを約45°回転させてさらなる画像を撮ることは、第1組の画像では「暗かった」位置に心合わせされる範囲をもたらすので、特に有利である。例えば45°の回転の後の第2の回転、約22.5°の回転だけ移動させることができる。別の実施形態では、6ファセットのミラーが用いられる場合、約30°の回転が好ましいことがある。
【0048】
図6は、照明切り替えシステム24、ILSIカテーテルのためのMEMS切り替えシステムの一例を示す。レーザダイオード42でよい光源21からの光は、ファイバ接続レンズ42を用いてMEMS切り替えシステム24の一部であるシングルモードファイバと接続される。ファイバは、MEMSスイッチ43、SMカプラ44を通してセットされる。切り替えシステム24は、照明光の出力チャネルを変更することができる。この場合、2つのチャネルが、入力光を50:50の2つの出力に分岐できるシングルモードカプラに連結されている。次いで、レーザダイオードからの1つの光は、切り替え可能な4つの照明に分割される。これら4つのファイバ25は、カテーテル28を通して送られ、2つの照明が同時に組織に照射される。
【0049】
対角線上の対になった2つの領域のみを照明することにより、画像のオーバーラップを避け、測定時間を改善することができる。図5に示すように、1つのミラーファセットに対応する画像形状は、ファイババンドル端面の領域の半分をカバーし、そのとき、対角線上の対になった2つの照明は、ファイババンドル端面の領域全体をカバーする。また、2つの領域を同時に測定することにより、測定の速度は2倍になる。
【0050】
他の同様の実施形態(図示せず)では、照明切り替えシステムは、入力光を33:33:33の3つの出力に分岐するMEMS切り替えシステムを含むことができる。そのとき、レーザダイオードからの1つの光は、切り替え可能な6個の照明に分割され、3つの照明が同時に組織に照射される。他の実施形態では、3方向切り替えシステムは、切り替え可能な6個の照明に分割され、3つの照明が2組同時に組織に照射される。他の同様の実施形態(図示せず)では、レーザダイオードからの1つの光は、切り替え可能な8個の照明に分割され、2つまたは4つの照明が同時に組織に照射される。
【0051】
したがって、各照明ファイバ34は、角錐ミラー40の各ファセットに対応する。この構成は、図2に示すように、画像のオーバーラップを避け測定速度を上昇させるために設けることができ、照射される領域は、切り替えシステムによって制御される。図7に示すように、4ファセットの角錐(図7A)の場合、照明#1および#3がオンのときに他の#2および#4はオフである(図7B)。照明#2および#4がオンのときに他の#1および#3はオフである。このサイクルが繰り返され。6個の照明および2方スイッチ(図7C)を用いる場合は、照明#1および#4がオンのときは他の照明はオフである(図7D)。次に、照明#1および#4がオフになると照明#2および#5がオンになる。次に、照明#2および#5がオフになると照明#3および#6がオンになる。このサイクルが繰り返される。
【0052】
図8は、円錐ミラーを用いる全方向視覚ILSIカテーテルの概略図を示す。図8と先の概略図との主な違いは、円錐ミラーおよび遠位端の開口を用いることである。円錐ミラーは、管腔壁の全体の周囲FOVをカバーできるが、円錐ミラーを用いた画像は、ミラー形状のせいで非常に大きい非点収差を有する。円錐の先端領域の周りで反射される画像の非点収差は比較的大きく、円錐ミラーのスカート周りでは緩和される。
【0053】
動作の際には、図8の円錐ミラーを用いたILSIについて例示されるように、光源21からのレーザ光などのコヒーレント光は、ファイバ接続光学部品22を介して伝達され、照明ファイバ23を通ってカテーテル28に至る。カテーテル28の遠位端は、上記で図3と同じ番号を用いる拡大図に示される。図では、照明ファイバ34からの光は、円偏光子38を通って本明細書で円錐ミラーとして示されるミラー40上に至る。光は、反射体40から反射されて、管腔壁のアテローム硬化性プラークなどの移動組織層を覆う静止組織層などの組織試料29に至る。外側シース31を、試料29と直接接触するように配置する(近距離場)こともでき、短い距離、例えば、試料から1mmから10cm離間した位置に位置決めする(遠距離場)こともできる。光は、試料29に入り、試料内の分子、細胞デブリ、たんぱく質、化合物(例えばコレステロール結晶)、および細胞微細構造(小器官、微小管など)によって反射される。試料29から伝送される光は、ミラー40から反射して円偏光子38を通り、開口(または遮蔽体)41を通り、ここで、集束光学部品(グリンレンズ)37を通ってファイババンドル35に至り、次いで、ファイババンドル45によって検出器47に伝達される。検出器は、例えば、平面電荷結合素子(CCD)、または線形検出器もしくは2次元検出器でよい。
【0054】
干渉により、検出器47にスペックルパターンが形成される。次いで、結果として生じるスペックルパターンは、コンピュータ48の一部として例示されるアナログ-デジタル変換器によってデジタル化され、本明細書ならびに特許文献1および特許文献2に記載される手法を用いて分析され、任意選択で表示装置49に示され、g2(t)曲線が計算される。
【0055】
周辺減光しこの非点収差を改善するために開口が用いられる。図9は、円錐ミラー40を用いたILSIカテーテルの遠位光学部品の例示的な光学設計を示す。
【0056】
この光学設計は、ダブルテレセントリック系を選択し、遮蔽体41は、2つのグリンレンズ(36と37と)の間に配置される。この光学設計の利点は、管腔内のカテーテル位置に関係なく歪みがより小さいことと、ファイババンドル端面35に対する入射角がより小さいことである。また、この設計は、どんな照明の切り替えも必要としない。照明ファイバ(23、図示せず)をファイババンドル35の中央にまたはファイババンドルの周りに配置することができる。
【0057】
一部の好ましい実施形態では、光ファイババンドルは、ファイバ間のクロストークを低減した。好ましくは、これらの光ファイババンドルは、(SCHOTTから販売されるような)リーチングしたファイババンドルである。Snyderによって開発された結合モード理論(CMT)(Journal of the Optical Society of America、Volume62、1267~1277頁(1972年))を、本実施形態で用いられるリーチングした光ファイババンドルの好ましいパラメータを決定するために利用した。CMTを用いて、ファイバ間のクロストークおよび伝達されたレーザスペックルの変調の複数ファイババンドルのパラメータの影響を定量化した。さらに、マルチモードコア間のおよびその内部のモード結合によって起こる伝達スペックルパターンの変調を大幅に低減するようにファイババンドルパラメータを定義した。この分析では、均一のクラッド材に埋め込まれ六角形状に配列された7個のコアのモデルのマルチコア光ファイバシステムを使用した。CMTを用いて、光バンドルを通して移送する間のレーザスペックルパターンの変調を評価した。したがって、コア径、コア径の変動、開口数、およびコア間隔をそれぞれ、ファイバ間のクロストークを低減すると評価した。
【0058】
一部の実施形態に関して、特に690μmの波長が用いられる場合、ファイババンドルのパラメータは、3.0μm±0.3μm、もしくは3.0μm±0.2μm、もしくは3.0μm±0.1μmのコア径、またはエラーが測定可能な範囲内の3.0μmコア径を含むべきである。
【0059】
NAがより高いと、コア内のモードフィールドをより良好に制限するが、NAがより高いと、導波モード数も増加し、0.40のNAは、ファイババンドルのコアとクラッド材との間の現在利用可能な屈折率のコントラストで最も高い。一部の実施形態に関して、特に690nmの波長が用いられる場合、ファイババンドルは、好ましくは、少なくとも0.35、少なくとも0.36、少なくとも0.37、少なくとも0.38、少なくとも0.39、または少なくとも0.40の開口数を含む。一実施形態では、開口数は、0.37と0.41との間または0.38と0.41との間である。現在市販の光ファイババンドルの最も大きいNAは、約0.40であるが、クロストークを低減するにはより大きいNAが好ましく、本発明は、利用できる場合は約0.42、0.43、0.44、または0.45のNAなど、より大きいNAを用いることも企図する。
【0060】
モード結合に影響を及ぼすさらなるパラメータは、コアサイズの変動および異形のコア形状など、ファイバの不均一性である。こうした不均一性は、コア間の伝搬定数βをミスマッチにさせる可能性があり、ミスマッチが少しであってもファイバ間のモード結合を広範に低減させる可能性がある。一部の実施形態に関して、特に690nmの波長が用いられる場合、コアの直径は、±0.02μmから±0.4μm、±0.02μmから±0.3μm、±0.03μmから±0.3μm、0.05μmから±0.2μm、または±約0.1μmの変動を有するべきである。一部の実施形態では、コアの変動は、約0.06μm(2.0%)である。
【0061】
コア同士が互いに近いと、モードフィールドのオーバーラップが小さくなるので、コア同士の間隔が大きいと、モードフィールド間の分離が大きいため結合が低減する。NAがより大きいと、コアとクラッド材との間の屈折率コントラストがより大きくなり、モードフィールドの制限がより強くなり、したがって、隣接するファイバのモードフィールドのオーバーラップを低減する。一部の実施形態に関して、特に690nmの波長が用いられる場合、ファイババンドルは、8.0μm±0.7μm、8.0μm±0.5μm、8.0μm±0.4μm、8.0μm±0.3μm、8.0μm±0.2μm、もしくは8.0μm±0.1μm、またはエラーが測定可能な範囲内の8.0μmのコア間隔を含むべきである。
【0062】
したがって、これらの実施形態では、光ファイババンドルは、複数のコアファイバを備え、各コアファイバは、コア径3.0μm±0.3μmであり、コア径の変動は±0.05μmから±0.3μm、開口数は少なくとも0.35、光ファイババンドルのコア間隔は8.0μm±0.5μmである。一部の実施形態では、ファイババンドルは、コア径3.0μm±0.1μmであり、コアサイズの変動は±0.1μmから±0.2μm、コア間隔は8.0μm±0.5μm、開口数は0.38と0.41との間である。さらに他の実施形態では、これらの最適なパラメータを得るために用いられる同じまたは同様の手法を、他の波長が用いられるときに同様のパラメータを得るために用いることができる。
【0063】
照明切り替えを備えた複数ファセットの角錐ミラーおよび円錐ミラーを用いる全方向視覚カテーテルを実現する本発明の利点は、機械的な複雑さを改善できることである。現行の技術には、ファイババンドルを回転させ、さらに全方向視覚を実現するには大きな障害がある。機械的に複雑な光ファイバの回転接合部がファイババンドルを回転させることができても、不安定なプラークの検出に影響を及ぼすスペックル画像の質は、不安定になり低下する。
【0064】
全方向視覚カテーテルの提案された発明は、安定し鮮明なスペックルの画像化を実現することができる。
【0065】
本発明は、試料のスペックルパターンを検出するための光学系を含む。この光学系は、本明細書に記載するような光ファイバプローブと、ファイバアレイ内の中央の光ファイバに連結された、コヒーレントな光または部分的にコヒーレントな光の光源と、試料から伝送される光を受光する検出器と、伝送された光を処理し試料から伝送されたスペックルパターンを分析する、プロセッサとを有する。例えば、プロセッサは、例えば健康な組織および病気の組織に関して、基準スペックルパターン時定数、または基準スペックルパターン時定数のライブラリ全体、または基準スペックルパターン相関曲線を含むことができる。この系は、伝送されるアナログの光をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換器を含むこともできる。
【0066】
本発明は、概して、レーザ光などのコヒーレント光または部分的にコヒーレントな光で組織を照明するステップと、一連のスペックルパターンを形成するように組織から反射される光を検出器で受光するステップと、巨視的なスケールの運動、例えば約1mm超の運動を除外しながら、分子もしくは巨大分子のブラウン運動、または細胞もしくは細胞小器官の運動、またはリンパ液もしくは細胞内の経膜的な流れなどのランダムでない形態の他の運動など、顕微鏡的スケールで、例えば約1mm未満(例えば、約500または100ミクロン未満)で、組織内の対象物の運動によって生じる変化を測定するのに十分な時間間隔でスペックルパターンの変化を分析するステップとによる、例えば生体内の組織を分析する方法を特徴とする。
【0067】
例えば、スペックルパターンは、近距離場または遠距離場で測定し、検出器上で画像化することができる。「近距離場」は、組織表面から光の1波長未満の位置のスペックル分布の測定であり、「遠距離場」スペックルは、表面から光の1波長を超える位置に形成される干渉パターンである。この方法はさらに、顕微鏡的運動、例えばブラウン運動を分離するために、心拍、患者の動き、または蠕動などの巨視的または外因性の運動を補償するステップを含むことができる。
【0068】
この方法では、照明ステップは、光源に接続された侵襲性の装置を設けるステップと、装置を患者に通すステップと、その装置を組織の近傍に配置するステップと、コヒーレント光または部分的にコヒーレントな光を光源から組織上に当てるステップとを含むことができる。
【0069】
この装置は、例えば、カテーテル、内視鏡、または腹腔鏡など、侵襲性の装置とすることができる。装置は、(近距離場のスペックルパターンを測定するために)組織と直接接触するように配置することができるか、または(遠距離場または近距離場のスペックルパターンを測定するために)組織から所与の距離だけ離間して配置してもよい。装置は、光源から組織に光を伝達する第1のファイバ(またはファイバアレイもしくはバンドル)と、組織から伝送される光を受光するファイバアレイまたは単一のファイバとを有するカテーテルを含むことができる。ファイバアレイは、1次元または2次元とすることができる。ある位置で(不連続回転ありまたはなしで)照明した後、装置は、長手方向に組織に沿って移動され、さらなる測定が行われる。これは、例えば、管腔組織の長さ全体の画像を形成することができる。
【0070】
本発明の一態様は、光ファイババンドルと、光ファイババンドルの遠位端と光通信するレンズと、レンズと光通信する円錐または円錐多角形のミラーと、レンズと円錐ミラーとの間に配置された開口と、円錐ミラーと光通信する1つまたは複数の照明ファイバとを備え、その開口は、円錐ミラーから反射して光ファイババンドルに至る光の非点収差を低減する、組織分析のための装置を提供する。一部の実施形態では、1つまたは複数の照明ファイバ(単数または複数)は、ファイババンドルの中央に配置される。一部の実施形態では、1つまたは複数の照明ファイバは、ファイババンドルの周りにリング形状として位置合わせされる。ミラーは円錐ミラーでよく、装置はダブルテレセントリック系でよく、かつ/またはレンズはグリンレンズである。一部の実施形態では、装置はさらに、レンズと円錐ミラーとの間に円偏光子を備える。
【0071】
一部の実施形態では、UV硬化樹脂などの透明な接着剤を、反射体と導波路(単数もしくは複数)または他の光学要素との間(例えば、円偏光子と角錐ミラーとの間)の光線が通る空間に用いることができる。この接着剤は、遠位光学部品の剛性および角錐ミラーの位置の安定性を改善することができる。さらに、例示的な実施形態では、この接着剤は、同様の円偏光子の反射率および角錐ミラーを保持するチューブを有し、そうすることで、画像のコントラストの低下およびレーザの不安定性を起こす後方反射を低減することができる。
【0072】
本発明の一態様は、ミラーを通してコヒーレントな光または部分的にコヒーレントな光を送ることによってその光で管腔壁の円筒区分を照明するステップと、管腔壁の円筒区分から反射される光をミラーで受光するステップと、ミラーから反射される光を検出器で受光し一連のスペックルパターンを形成するステップと、組織内の対象物の顕微鏡的運動によって起こる変化を測定するのに十分な時間間隔でスペックルパターンの変化を分析するステップとを含む組織分析の方法を提供する。一部の実施形態では、ミラーは複数ファセットの角錐ミラーであり、他の実施形態では、ミラーは円錐形のミラーであり、ミラーから反射される光は、開口を通して送られる。一部の実施形態では、ミラーから反射される光は、ダブルテレセントリックレンズ系を通る。
【0073】
分析ステップは、一連のスペックルパターンのそれぞれを一連の基準スペックルパターンと比較するステップと、パターンと基準パターンとの間の時間的相関の差異を定量化するステップとを含むことができる。例えば、分析ステップは、スペックルパターンのそれぞれを時間および空間の関数としてデジタル化するステップを含むことができ、定量化ステップは、パターンと基準パターンとの間の相互相関を評価するステップを含むことができる。分析ステップはさらに、スペックルパターンに関する無相関率を判定するステップ、または組織の構造的特徴および/もしくは生体力学特徴を推定するためにスペックルパターンの空間の特徴を分析するステップを含むことができる。生体力学的特徴には、例えば、コンプライアンス、弾性、応力、歪み、および粘性を含むことができる。このような方法では、スペックルパターンのデータは、特定の時点で撮ったスナップショットである。スペックルパターンの相関データは、時間の関数としてのスペックルパターンの相互相関の測定値である。
【0074】
変更形態では、この方法は、組織の複数の位置を次々に照明するステップと、組織のそれぞれの位置ごとに別々の一連のスペックルパターンを形成するステップと、次いで、別々の一連のスペックルパターンそれぞれを分析するステップと、その一連のスペックルパターンを比較して組織のそれぞれの位置の間の構造的および/または生体力学的な差異を推定するステップとを含むことができる。
【0075】
一定の実施形態では、この方法は、反射される光を光受容体で収集するステップと、収集された光を検出器に伝達するステップと、受容体を組織に接続することによって巨視的な運動を補償するステップとを含む。巨視的な運動を補償するステップは、分析ステップ中のランダムでない運動によって起こるスペックルパターンの変化を排除することによって実行することもできる。巨視的な運動または外因性の運動は、例えば、組織と反射体との間の血流からもたらされることもある。そのような場合は、補償ステップは、血液を透明な溶液に置き換えるステップおよび/または方向性の血流に対応する相関スペックルパターン情報を排除するステップを含むことができる。
【0076】
別の実施形態では、本発明は、例えば脂質プールおよび線維性被膜を有するアテローム硬化性プラークの破裂のしやすさを判定するために、組織構造を分析する方法を特徴とする。その方法は、コヒーレントな光または部分的にコヒーレントな光で組織構造を、例えばプラークを照明するステップと、一連のスペックルパターンを形成するように組織構造から反射される光を検出器で受光するステップと、脂質プールなどの組織構造またはその組織構造に隣接する組織内で、顕微鏡的運動、例えば、ブラウン運動または他の形態の顕微鏡的運動を測定するのに十分な時間間隔でスペックルパターンのデータを収集するステップと、組織構造を評価する、例えば、ブラウン運動の量から破裂に対するプラークの弱さを評価するステップとを含む。
【0077】
この方法はさらに、例えば、組織構造の、例えば線維性被膜の厚さを評価することによって、組織構造の、例えばプラークの構造上のおよび/または生体力学的な特徴を判定するように、スペックルパターンデータの空間的特徴を分析するステップを含むことができる。組織の厚さは、入射ビームの入る点からの距離の関数としてスペックルパターンの空間的および時間的な無相関を測定することによって判定することができる。ビームの入る点の近くでは、スペックルパターンはより静的になる。ビームの入る点から離れると、スペックルパターンはより速く無相関になる。移行する位置は、厚さの指標である。厚さを判定する他の方法を本明細書で説明する。線維性被膜の厚さが約60ミクロン未満の場合に、プラークは、破裂に対して脆弱であると考えられる。その方法は、脂質プールの粘性を評価するために用いることもでき、ここでプラークは、脂質プールの粘性の時定数が約200ミリ秒未満の場合に、破裂に対して脆弱であると考えられ、脂質プールの粘性の時定数が約100ミリ秒未満の場合に、破裂しやすいと考えられる。
【0078】
本発明は、コヒーレントな光または部分的にコヒーレントな光で生体内の血管のセグメントを照明することによって、血管内の脂質プールおよび線維性被膜を有する脆弱なアテローム硬化性プラークを検出するステップと、一連のスペックルパターンを形成するようにセグメントの内部血管壁から反射される光を検出器で受光するステップと、内部血管壁内の顕微鏡的運動の、例えばブラウン運動を測定するのに十分な時間間隔でスペックルパターンのデータを収集するステップと、スペックルパターン相関データを既知のスペックルパターンの時間相関データと比較するステップとからなる方法も含む。測定されたスペックルパターンの相関データを基準スペックルパターン相関データと比較する一手段は、時定数によるもの、またはスペックルパターンが1/eだけ無相関になるのにかかる時間によるものである。例えば、血管の任意の所与のセグメントに関する無相関時定数を測定し、正常な血管、アテローム硬化性の血管、線維性被膜の厚い脂質プール、および線維性被膜の薄い脂質プール(脆弱なプラーク)の既知の時定数と比較することができる。時定数が線維性被膜の薄い脂質プールの存在を示す場合(τ<100ms)は、スペックルパターンのデータの空間的特徴をさらに分析して、本明細書に記載するようにプラークの構造上の特徴を判定することができる。さらに、スペックルパターンの確率分布関数パターン(ヒストグラム)の第1(平均)および第2(標準偏差)は、異なるプラークのタイプに固有である。
【0079】
複数ファセットの角錐ミラーでよい反射体は、当技術分野で知られ特に小型光学部品の作製のために改変された任意の方法で作製することができる。アルミニウム、黄銅、およびステンレス鋼のワイヤをそれぞれ研磨して複数ファセットの角錐ミラーを形成した。3μmのダイヤモンドフィルムおよび0.3μmのAlフィルムを両方とも使用した。600μmのシリカロッドも研磨し、AuまたはAlで被覆した。他の直径のロッドおよび他の組成のロッド、ならびに他の反射被覆材料を用いてもよい。この方法によって4ファセットのミラーおよび6ファセットのミラーを両方とも作製し、試験した。しかし、これらのおよび同様の技法によって他の反射体を作製することができる。
【0080】
反射体を試験するために、PixeLinkカメラ上の反射体から反射する前に、均一の光をAir Force Chartを通過させた。試験の1つでは、ステンレス鋼が690nmで反射率約75%であることが分かった。Au被覆のガラスは690nmで反射率約97%であった。
【0081】
説明に関しては、開示した例の理解の徹底を期すために具体的な詳細を記載している。他の例では、本開示を必要以上に長くしないように周知の方法、手法、構成要素および回路を詳細には説明していない。
【0082】
「スペックル(speckle)」とは、コヒーレントな光または部分的にコヒーレントな光が粗い試料または多重散乱性の試料から検出面上に反射されるときに起きる干渉現象である。「スペックルパターン(speckle pattern)」とは、干渉によって生じる強度パターンである。
【0083】
「コヒーレンス(coherence)」とは、2以上の光波の干渉を可能にする光の特性である。「部分的コヒーレンス(partial coherence)」とは、各波が伝播する経路が試料の任意の所与の点において光の時間的コヒーレンス長と等価であるかまたはその範囲内である場合に、互いに干渉できる波を指す。
【0084】
本明細書で用いられるように、語句「周囲全体(full circumference)」とは、全周(total circumference)の少なくとも50%、またはより好ましくは少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%を意味し、周囲のうち含まれない部分は、管腔の周りに分布する(すなわち、50%の範囲とは、管腔の周囲に沿って離間した少なくとも4つの別々の管腔領域を意味し、ここで、単一の画像化されない領域は、いずれも周囲のせいぜい15%、好ましくは12%未満または10%未満である)。したがって、本明細書に記載する方法は、管腔組織の壁の周囲全体を順次照明することができる。
【0085】
本明細書で用いられるように、語句「実質的にオーバーラップしない(substantially non-overlapping)」とは、組織上で実質的にオーバーラップしないか、または、光ファイババンドルで反射されるスペックル画像について用いられるときは、あるミラーファセットから反射する画像データのほとんどが、第2の(またはいくつかの他の)ミラーファセット(単数または複数)から反射する画像データとオーバーラップしないことを意味する。したがって、ファイババンドルに入る全光度の15%未満しかオーバーラップしない。好ましくは、光度の10%未満、または5%未満、または2%未満、または1%未満しかオーバーラップしていない。あるいは、後退が画像化中に用いられるときは、実質的にオーバーラップしないとは、ファイババンドル上で画像データのオーバーラップする量が、カテーテルを後退させる動きの間に管腔組織上でオーバーラップする測定領域より小さいことを意味する。この場合は、ファイババンドル上で実質的にオーバーラップしない画像データは、スペックル画像を劣化させないように必要であるが、一部のオーバーラップは許容でき、後処理で画像を縫合するためにはさらに好ましい。
【0086】
本明細書で用いられるように、「組織(tissue)」は、体内または身体表面上の任意の生物学的な構造を意味する。組織には、細胞の集合体、腫瘍、および脂質または他の成分を含み得るプラークなどの堆積物が含まれる。調査できるプラークの特有の成分には、脂質プール、石灰化、線維性領域、および線維性被膜が含まれる。
【0087】
本明細書で用いられるように、双方向テレセントリシティを有するレンズとも呼ばれることがある「ダブルテレセントリックレンズ(double telecentric lens)」は、例えば、光学系の遮蔽体が共通の焦平面に配置されて入射ひとみおよび射出ひとみの両方が無限遠にあるときに形成される。したがって、ダブルテレセントリック系が無限焦点の場合、画像または対象物の面をシフトすることは、拡大率に影響を及ぼさない。
【0088】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられる技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載するのと同様のまたは等価の方法および材料を本発明の実施または試験に使用できるが、適切な方法および材料は以下に記載する。本明細書で言及される出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は全てその全体が援用される。不一致がある場合は、定義を含め本明細書が統制する。さらに、材料、方法、および実施例は、単なる例示であり、限定的なものではない。
【0089】
ある要素または部分が別の要素または部分に対して「上に(on)」、「接して(against)」、「連結される(connected to)」、または「接続される(coupled to)」と本明細書で言及される場合、直接的にその別の要素または部分の上にある、それに接する、連結する、または接続することもでき、介在する要素または部分が存在してもよいことが理解されよう。一方、ある要素が別の要素または部分に「直接上に(directly on)」、「直接連結される(directly connected to)」、または「直接接続される(directly coupled to)」と記述される場合、介在する要素または部分は存在しない。用語「および/または(and/or)」が用いられるときは、関連の列挙された項目が設けられる場合はそのうち1つまたは複数の項目の任意のおよび全ての組み合わせを含む。
【0090】
「下(under)」、「下(beneath)」、「下方(below)」、「下側(lower)」、「上方(above)」、「上側(upper)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」など、空間的な相対用語は、様々な図に例示するように、ある要素または特徴の、別の要素(単数または複数)または特徴(単数または複数)との関係を説明するための記述を簡単にするために本明細書に用いることができる。しかし、空間的な相対用語は、図に示した向きに加え使用中または動作中の装置の様々な向きを包含するものであることを理解されたい。例えば、図中の装置が上下逆にされると、他の要素または特徴の「下方(below)」または「下(beneath)」と記載される要素が他の要素または特徴の「上方(above)」に向けられることになる。したがって、「下方(below)」などの相対的な空間の用語は、上方(above)の向きも下方(below)の向きも包含することができる。装置は、それ以外の向きに(90°回転するかまたは他の向きに)向けられてもよく、本明細書で用いられる空間的な相対表現はそれに従って解釈されるべきである。同様に、該当する場合は、相対的な空間用語「近位(proximal)」および「遠位(distal)」も置き換え可能なことがある。
【0091】
本明細書で用いられるように、用語「約(about)」または「約(approximately)」は、値を測定または判定する方法、例えば試料の調製システムおよび測定システムの制限に部分的に依存する、当業者に決定される明示の特定パラメータについて許容できる範囲内を意味する。例えば、「約(about)」は所与の値の最大20%の範囲を意味することができ、より好ましくは最大10%の範囲を意味する。
【0092】
用語、第1、第2、第3などは、本明細書で様々な要素、構成要素、領域、部分および/または区分を説明するために用いることがある。これらの要素、構成要素、領域、部分および/または区分をその用語によって限定すべきではないことを理解されたい。この用語は、ある要素、構成要素、領域、部分、または区分を別の領域、部分、または区分から識別するためにのみ用いられている。したがって、以下で論じる第1の要素、構成要素、領域、部分、または区分は、本明細書の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、部分、または区分と呼ばれる可能性もある。
【0093】
本明細書で用いられる専門用語は、特定の実施形態を単に説明する目的のものであり、限定するものではない。本明細書で用いられるように、単数形「a」、「an」、および「the」は文脈上別段の明確な指示がない限り複数形も含むものである。用語「includes」および/または「including」は、本明細書で用いられるときは、記述された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を明示するが、明示的に記述されていない1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはその群の存在または追加を除外しないことをさらに理解されたい。
【0094】
図面に示された例示的な実施形態を説明する際は、明確にするために特有の専門用語が用いられる。しかし、本特許明細書の開示はそのように選択された特有の専門用語に限定されるものではなく、特有の各要素が同様に動作する技術的な等価物を全て含むことを理解されたい。
【0095】
いくつかの図面を参照しながら例示的な実施形態を以下に説明する。同様の参照番号は、いくつかの図および実施形態を通して同一のまたは対応する部分を指す。したがって、同様の参照番号を有するこのような部分の説明は、複数の図に関して繰り返さない。
【0096】
例示的な実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明は開示された例示的な実施形態に限定されないことを理解されたい。以下の請求項の範囲は、このような修正形態ならびに等価の構造および機能を全て包含するように最も広範な解釈に一致するものである。

図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9