(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】生物学的組織を処理するための組織処理装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/36 20060101AFI20221122BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G01N1/36
G01N1/28 J
(21)【出願番号】P 2020514259
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2018069043
(87)【国際公開番号】W WO2019048112
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-05-11
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513113596
【氏名又は名称】サーモ シャンドン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン ダニエル ペーター
(72)【発明者】
【氏名】フォーショー マイケル ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】チャン デヴィット ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ベーカー マーク
(72)【発明者】
【氏名】マクナルティ デヴィット
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー マーク ニール
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-043497(JP,A)
【文献】特開2011-227048(JP,A)
【文献】特開2013-195130(JP,A)
【文献】特表2005-502064(JP,A)
【文献】特開平10-096733(JP,A)
【文献】実開平05-027676(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/28~ 1/44
G01N 35/00~35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的組織を処理するための組織処理装置であって、
試薬容器に接続されたとき、前記組織処理装置で使用するために前記試薬容器から試薬を取り出すように構成される抽出装置と、
機械読み取り可能タグから情報を読み取るように構成されたタグリーダと
、
前記機械読み取り可能タグに情報を書き込むように構成されたタグライタとを含み、
前記組織処理装置で以前に使用されていない試薬を含む試薬容器に前記抽出装置を接続するようにユーザに指示する表示をユーザに提供し、
前記試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグから前記タグリーダが読み取った情報に基づいて、組織処理装置で以前に使用されていない試薬を前記試薬容器が含むと判定された場合に、ユーザが前記抽出装置を前記試薬容器に接続し、及び/又は、そのような接続が行われたことを示した後、前記組織処理装置で使用するために、前記試薬容器から前記試薬を取り出す前記抽出装置を使用するように構成され
、
少なくとも一つの前記機械読み取り可能タグは、前記試薬容器の内容物を記述する更新情報を記憶するように書き換え可能に構成された書き換え可能な機械読み取り可能タグであり、
前記タグライタは、前記抽出装置が前記試薬容器から前記試薬を取り出し、その後、前記組織処理装置で使用された試薬が前記組織処理装置によって前記試薬容器に戻された後に、前記試薬容器に含まれる試薬が組織処理装置で以前に使用されたことを示す更新情報を前記機械読み取り可能タグに書き込むように構成される組織処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の組織処理装置であって、
前記組織処理装置は、前記抽出装置を特定の種類の試薬を含む試薬容器に接続するようにユーザに指示する表示をユーザに提供するように構成され、
前記組織処理装置は、前記試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグから前記タグリーダが読み取った情報に基づいて、特定の種類の試薬を前記試薬容器が含むと判定された場合に、ユーザが前記抽出装置を前記試薬容器に接続し、及び/又は、そのような接続が行われたことを示した後、前記組織処理装置で使用するために、前記試薬容器から前記試薬を取り出す前記抽出装置を使用するように構成される組織処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の組織処理装置であって、
前記特定の種類はアルコールである組織処理装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の組織処理装置であって、
前記抽出装置を特定の種類及び濃度の試薬を含む試薬容器に接続するようにユーザに指示する表示をユーザに提供するように構成され、
前記試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグから前記タグリーダが読み取った情報に基づいて、特定の種類及び濃度の試薬を前記試薬容器が含むと判定された場合に、ユーザが前記抽出装置を前記試薬容器に接続し、及び/又は、そのような接続が行われたことを示した後、前記組織処理装置で使用するために、前記試薬容器から前記試薬を取り出す前記抽出装置を使用するように構成される組織処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の組織処理装置であって、
前記タグリーダはRFIDタグリーダであり、
前記機械読み取り可能タグの各々がRFIDタグである組織処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の組織処理装置であって、
前記RFIDタグの各々は、外部ソースから受信した電磁放射によって少なくとも部分的に電力が供給され、前記RFIDタグが前記RFIDタグリーダに電波を送信できるように構成されたパッシブRFIDタグである組織処理装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の組織処理装置であって、
1以上の前記試薬容器を保管する貯蔵領域を有し、
前記貯蔵領域は、特定の種類の試薬を含む試薬容器を配置するための少なくとも一つの所定の場所を含み、
前記所定の場所の各々は、前記所定の場所にある試薬容器から特定の種類の試薬を抽出するように構成された抽出装置の各々に関連付けられる組織処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の組織処理装置であって、
前記タグリーダは、前記貯蔵領域の前記所定の場所にある試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグから情報を読み取ることができる位置に取り付けられる組織処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の組織処理装置であって、
前記タグリーダが取り付けられる場所は、前記貯蔵領域に面するドアの上又は中にある組織処理装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載の組織処理装置であって、
前記試薬容器に取り付けられ、前記試薬容器の内容物を示す情報又は前記試薬容器の内容物を決定可能な情報を保存するように構成された少なくとも一つの前記機械読み取り可能タグを含む組織処理システムの一部である組織処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の組織処理装置であって、
前記機械読み取り可能タグの各々に記憶される前記試薬容器の内容物を示す情報は、
前記試薬容器に含まれる試薬が以前に組織処理装置で使用されたかを示す情報、
前記試薬容器に含まれる試薬の種類を示す情報、
前記試薬容器に含まれる試薬の濃度を示す情報、及び、
前記試薬容器に含まれる試薬の有効期限を示す情報、のいずれか1以上を含む組織処理装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一つに記載の組織処理装置であって、
前記組織処理装置は、複数の前記抽出装置を含み、
前記抽出装置の各々は、前記試薬容器の各々に接続されると、前記組織処理装置で使用するために、前記試薬容器から前記試薬を取り出すように構成され、
前記組織処理装置は、2以上の複数の前記抽出装置の各々に関して、
組織処理装置で以前に使用されていない試薬を含む試薬容器に前記抽出装置を接続するようにユーザに指示する表示をユーザに提供し、
前記試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグから前記タグリーダが読み取った情報に基づいて、組織処理装置で以前に使用されていない試薬を前記試薬容器が含むと判定された場合に、ユーザが前記抽出装置を前記試薬容器の各々に接続し、及び/又は、そのような接続が行われたことを示した後、前記組織処理装置が使用するために、前記試薬容器から前記試薬を取り出す前記抽出装置を使用するように構成される組織処理装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一つに記載の組織処理装置によって実行される方法であって、
前記組織処理装置は、前記組織処理装置の前記抽出装置を、組織処理装置で以前に使用
されていない試薬を含む試薬容器に接続するようにユーザに指示する表示をユーザに提供し、
前記試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグから前記タグリーダが読み取った情報に基づいて、組織処理装置で以前に使用されていない試薬を前記試薬容器が含むと判定された場合に、ユーザが前記抽出装置を前記試薬容器に接続し、及び/又は、そのような接続が行われたことを示した後、前記組織処理装置で使用するために、前記試薬容器から前記試薬を取り出す前記抽出装置を使用し、
前記抽出装置が前記試薬容器から前記試薬を取り出し、その後、前記組織処理装置で使用された試薬が前記組織処理装置によって前記試薬容器に戻された後に、前記試薬容器に含まれる試薬が組織処理装置で以前に使用されたことを示す更新情報を前記機械読み取り可能タグに書き込む方法。
【請求項14】
計算機によって実行されると、請求項1から12のいずれか一つに記載の組織処理装置に以下の方法を実行させる命令を含む計算機読み取り可能媒体であって、
前記組織処理装置が、前記組織処理装置の前記抽出装置を、前記組織処理装置で以前に使用されていない試薬を含む試薬容器に接続するようにユーザに指示する表示をユーザに提供し、
前記試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグから前記タグリーダが読み取った情報に基づいて、組織処理装置で以前に使用されていない試薬を前記試薬容器が含むと判定された場合に、ユーザが前記抽出装置を前記試薬容器に接続し、及び/又は、そのような接続が行われたことを示した後、前記組織処理装置で使用するために、前記試薬容器から前記試薬を取り出す前記抽出装置を使用し、
前記抽出装置が前記試薬容器から前記試薬を取り出し、その後、前記組織処理装置で使用された試薬が前記組織処理装置によって前記試薬容器に戻された後に、前記試薬容器に含まれる試薬が組織処理装置で以前に使用されたことを示す更新情報を前記機械読み取り可能タグに書き込む計算機読み取り可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的組織を処理するための組織処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的組織サンプルが収集される場合、分析のためにサンプルを調製することが一般的である。例えば、顕微鏡下で見るためのサンプルである。一つの調製方法は、種々の液体を用いて生物学的組織を処理することによって組織サンプルを処理し、その後、各サンプルを包埋媒体、典型的にはパラフィンワックスのブロックに包埋することである。サンプルの処理に使用されるさまざまな液体には、典型的には、固定剤、アルコール及び透明化剤(例えばキシレンなどの炭化水素溶媒)が含まれる。
【0003】
典型的には、生物学的組織サンプルは、解剖学的病理学のための密閉された組織処理機である組織処理装置によって処理される。組織処理装置内の生物学的組織を処理する前に、生物学的組織は、典型的には、ホルムアルデヒドのような固定剤中に保存される。典型的な組織処理装置内では、まず生物学的組織サンプルをアルコールで処理し、その後、透明化剤(典型的にはキシレンなどの炭化水素溶媒)で処理する。最後に、組織処理装置は、パラフィンワックス(包埋媒体)で生物学的組織を処理し、生物学的組織にワックスを含浸して充填する。典型的には、組織処理装置がこのプロセスを完了するのに14時間を要する。
【0004】
次に、埋め込み装置によって生物学的組織をパラフィンワックスのブロックに埋め込み(これは「包埋中心」と呼ばれる)、生物学的組織(ここではワックスで満たされている)を型に入れ、パラフィンワックスを急冷して、生物学的組織を含む所定の形状及び大きさ(型によって決定される)のパラフィンワックスの固体ブロックを形成する。ブロックの所定の形状及びサイズは、固体したブロックが顕微鏡下での使用に適した非常に細かいスライスに切断できるミクロトームでの使用に適する形状及びサイズが選択される。
【0005】
生物学的組織サンプルを最初に純粋なアルコールで処理すると、生物学的組織サンプルが損傷する可能性があることが知られている。組織処理装置は、生物学的組織を損傷する可能性を減らすために、通常、生物学的組織サンプルを段階的に処理するように構成されている。アルコールの場合、生物学的組織の処理に使用されるアルコールの濃度は、希釈されたものから始まり、希釈度がより低い(より純粋な)ものに向かって徐々に増加する。これは、生物学的組織を使用に適さないものにする可能性がある組織処理手順中での生物学的組織の劣化を防ぐことを目的とする。
【0006】
Pathcentre(登録商標)密封組織処理装置のような初期モデルの組織処理装置では、多数の試薬容器から一つの試薬容器を選択するロータリーバルブシステムを使用していた。そのようなモデルでは、典型的には、組織処理装置内に貯蔵された16~20個の試薬容器があり、それぞれが異なる状態及び/又は種類の試薬を含んでいる。ロータリーバルブシステムは、正しい試薬の強度を増加して生物学的組織を処理するように、必要な順序で試薬容器を選択するように構成されている。しかしながら、これらのモデルの組織処理装置は、各試薬容器が正しい状態及び/又は種類の試薬を含むことを確実にするために、試薬容器の内容物が組織処理装置で使用される前に、一般に、かなりの時間と労力を費やす技術者を必要とする。
【0007】
サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社による”Shandon Excelsior”という名称で製造された最近の組織処理装置は、「エクセルシオール」組織処理装置と呼ばれ、いわゆる「インプロセス」試薬管理を使用する。エクセルシオール組織処理装置は、様々な試薬を収容する。試薬容器には様々な強度のアルコールが収容されており、その他には様々な純度のキシレンが収容される。Pathcentre(登録商標)ロータリーバルブシステムとは異なるエクセルシオール組織処理装置によって行われる「インプロセス」試薬管理は、純粋なアルコール及び純粋なキシレンを含む試薬容器の投入を必要とし、他の濃度のアルコール及びキシレンの純度は、装置の使用を通して制御される。
【0008】
エクセルシオール組織処理装置は、また、組織処理装置で使用されるアルコールの比重測定値を取得するために使用されるフローティングブイ機構を有する。この比重測定値を用いて、他の試薬容器内の試薬の濃度を推定し、新しい試薬を含む新しい試薬容器が必要とされるときに判定できる。
【0009】
一般に、高品質の結果を維持するためには、試薬(包埋媒体も)を定期的に交換する必要がある。
【0010】
本発明者は、試薬を補充するときにユーザが間違う可能性があることに気づいた。本発明者が気づいた間違いには、組織処理装置でこれまで使用されていない特定の種類の試薬を含む試薬容器に、組織処理の抽出装置を接続するように指示されたユーザが行う以下の行為が含まれる。
・実際に以前に使用された試薬(例えば廃棄物の形態)を含む既存の試薬容器が組織処理装置に接続されている場合、新しい(以前に使用されていない)試薬を含む試薬容器が抽出装置に接続されたことを示す組織処理装置の誤った表示、
・処理サイクル内のその位置で間違った種類(及び/又は濃度)の試薬を含む試薬容器の抽出装置への接続
【0011】
本発明者は、これらの間違いが発生すると、処理される組織サンプルの次の処理が一般に正しく処理されず、組織サンプルに損傷が生じ、組織サンプルの処理の遅延を引き起こす可能性や、処理された組織サンプルに基づく診断を遅延を引き起こす可能性に気づいた。
【0012】
エクセルシオール組織処理装置などの「処理中」の試薬を管理する組織処理装置について、本発明者は、共通のエラーは試薬の交換であり、すなわち、次の処理サイクルで、前の処理サイクルからの廃試薬が、きれいな(つまり、以前に使用されていない)試薬として処理装置に戻され、隠れた容器に置かれる。現在の組織処理装置は、一般に、組織処理装置のGUIによる質問への応答としてユーザによって提供される信頼と正しい回答に依存する。
【0013】
要約すると、本発明者は既存の組織処理装置に関する問題に気づいた。それは、組織処理装置の抽出装置を特定の種類及び状態の試薬(例えば、100%アルコール、100%キシレン)を含む試薬容器にユーザに接続させるときに、ユーザがこのアクションの実行を忘れたり、以前に使用したり特定の状態や種類の試薬と一致しない試薬を含む試薬容器に抽出装置を誤って接続することがある。誤った状態及び/又は種類の試薬が組織処理装置で使用されると、生物学的組織に不可逆的な損傷を引き起こす可能性がある。但し、このような問題は、生物学的組織が装置で処理されるまで明らかにならない(前述したように14時間を要する)。
【0014】
本発明は、前述の考察に照らして考案された。
【発明の概要】
【0015】
本発明の第1の態様は、生物学的組織を処理するための組織処理装置を提供し、組織処理装置は:
試薬容器に接続されたとき、組織処理装置で使用するために試薬容器から試薬を取り出すように構成される抽出装置と、
機械読み取り可能タグから情報を読み取るように構成されたタグリーダとを含み、
組織処理装置は、
組織処理装置で以前に使用されていない試薬を含む試薬容器に抽出装置を接続するようにユーザに指示する表示をユーザに提供し、
試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグからタグリーダが読み取った情報に基づいて、組織処理装置で以前に使用されていない試薬を試薬容器が含むと判定された場合に、ユーザが抽出装置を試薬容器に接続し、及び/又は、そのような接続が行われたことを示した後、組織処理装置で使用するために、試薬容器から試薬を取り出す抽出装置を使用する。
【0016】
このように、ユーザが誤って以前に使用した試薬を含む試薬容器に抽出装置を誤って接続したり、指示された接続が行われたことを示した場合(示さない場合)、組織処理装置は、抽出装置を使用して以前に使用された試薬を試薬容器から取り出して組織処理装置での使用を回避でき、それにより、以前に使用された試薬を使用した組織処理装置によって引き起こされる可能性がある(前述した)問題を回避できる 。
【0017】
ここで、一般に、現在利用可能な組織処理装置は、試薬容器から試薬を取り出す前に、以前に未使用の試薬を含む試薬容器に抽出装置が接続されていることを確認することで試薬を管理しないことに注意すべきである。例えば、前述の背景技術の項で説明したエクセルシオール組織処理装置は、各組織処理装置による処理後のアルコールの劣化を監視する(この測定は装置の背面にある隠れた容器の一つで約30秒かかる)。この監視結果は、すべての試薬の廃棄と回転を促すために使用される(組織がそのまま使用されても、試薬の使用を1回測定すると、各試薬の種類の交換を契機として使用できる)。しかし、前述したように、本発明者は、組織処理装置が促したときに、ユーザが以前に未使用の試薬及び/又は特定の種類ではない試薬を含む試薬容器を接続しない場合、問題が生じる可能性があることを発見した。本発明は、組織処理装置が促したときに、組織処理装置が以前に未使用(好ましくは特定の種類)の試薬を含む試薬容器に接続されたことの確認を助ける。
【0018】
当業者は、組織処理装置で以前に使用されていない試薬を含む試薬容器に抽出装置を接続するようにユーザに指示する表示をユーザに与えることができることを理解するであろう。そのような指示は、例えば、組織処理装置のディスプレイ上に、例えば「位置Ex1に新しいアルコールを装填してください」というメッセージを表示する形をとれる。
【0019】
本開示において、用語「組織処理装置で以前に使用されていない試薬」、「以前に未使用の試薬」、及び「新しい試薬」は、同じ意味で互換的に使用される。
【0020】
疑義を避けるために、以前に使用された試薬は、その組織処理装置自体又は別の組織処理装置で以前に使用された可能性があり、以前に使用された組織処理装置に関係なく問題が生じる可能性がある。
【0021】
好ましくは、タグリーダは、RFID(無線識別)タグリーダであり、機械読み取り可能タグはRFIDタグである。
【0022】
RFIDタグリーダは、RFIDタグによってRFIDタグリーダに送信された電磁放射(典型的には周波数が105から1010Hzの電波)を介してRFIDタグから情報を読み取るように構成されてもよい。
【0023】
RFIDタグは、RFID電池がRFIDタグリーダに電波を送信することを可能にするために、搭載された電池によって電力が供給されるように構成されたアクティブRFIDタグでもよい。
【0024】
各RFIDタグは、外部電源から受け取る電磁放射によって少なくとも一部の電力が供給され、RFIDタグがRFIDタグリーダに電波を送信できるように構成されたパッシブRFIDタグでもよい。外部電源は、RFIDタグリーダ(この場合、RFIDタグリーダは「アクティブ」RFIDタグリーダでもよい)又は他の外部電源でもよい。
【0025】
パッシブRFIDタグは、アクティブRFIDタグより比較的安価であるため、アクティブRFIDタグよりパッシブRFIDタグの方が好ましい場合があり、また一般的にアクティブRFIDタグに関する電池寿命の問題を回避する。
【0026】
RFIDタグリーダ及びRFIDタグは、その動作が当業者が十分に理解できる周知の装置であり、本明細書でさらに詳細な説明を避ける。
【0027】
タグリーダは、RFIDタグリーダでなくてもよく、機械読み取り可能タグは、全ての実施形態においてRFIDタグでなくてもよい。
【0028】
例えば、タグリーダは視認可能なコードリーダであり、機械読み取り可能タグは可視コードでもよい。表示されるコードは、例えばバーコード又は二次元バーコード(QRコードなど)でもよい。
【0029】
組織処理装置は、1以上の試薬容器を保管するための貯蔵領域を有してもよい。貯蔵領域は、好ましくは、特定の種類の試薬を含む試薬容器を配置するための少なくとも一つの所定の場所を含む。各所定の場所は、所定の場所にある試薬容器から特定の種類の試薬を抽出するように構成された各々の抽出装置に関連付けられてもよい。
【0030】
貯蔵領域は、組織処理装置の空洞でもよい。空洞は、ドアで閉じることができ、例えば
図2に示すように、一つ又は複数の試薬容器を保管する区画を提供する。
【0031】
組織処理装置は、貯蔵領域の前述した所定の場所にある試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグから情報を読み取れる(及びオプションで書き込める)位置(例えば、保管エリアに面する壁又はドア上の位置)にタグリーダ(以下で説明するようにタグリーダ/ライタでもよい)を(保管エリアに面した壁又はドア上の)位置に取り付けるとよい。これにより、ユーザによる入力をさらに求めることなく、ユーザが所定の場所にある試薬容器に取り付けられたタグから情報を読み取れる(オプションで書き込める)。
【0032】
あるいは、抽出装置を試薬容器に接続する前又は後に、試薬容器に取り付けられたタグをタグリーダに提示するように、(例えば、組織処理装置のディスプレイ上のプロンプトによって)ユーザをガイドしてもよい。
【0033】
組織処理装置が別のタグライタ(以下を参照)を有する場合、組織処理装置は、貯蔵領域の前述した所定の場所にある試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグにタグライタが情報を書き込める場所(例えば、保管エリアに面する壁又はドア上の位置)にタグライタを取り付けるとよい。
【0034】
他の実施形態では、タグリーダは可搬型装置でもよい。初期の組織処理装置が本発明を使用するために容易に後付けできるため便利である。しかし、機械読み取り可能タグが貯蔵領域の前述した所定の場所の試薬容器から読み取り可能にする前述した例より面倒かもしれない。
【0035】
組織処理装置は、試薬容器に取り付けられ、試薬容器の内容物を示す情報又は試薬容器の内容物を決定可能な情報を格納するように構成された少なくとも一つの機械読み取り可能タグを含む組織処理システムの一部でもよい。
【0036】
好ましくは、機械読み取り可能タグは、試薬容器の内容物を(間接的に)決定可能な単なる情報ではなく、試薬容器の内容物を示す情報を保存するように構成される。
【0037】
例えば、試薬容器の内容物を示す各機械読み取り可能タグに格納される情報は、試薬容器に含まれる試薬が組織処理装置で以前に使用されたかを示す情報を含んでもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、試薬容器の内容物を各機械読み取り可能タグが示す唯一の情報は、試薬容器によって保存される試薬が組織処理装置で以前に使用されたかの単純な(例えば、YES、NO)表示でもよい。しかし、好ましくは、各タグは、以下に説明するような試薬容器の内容物を説明する追加情報を保存する。
【0039】
例えば、試薬容器の内容物を示す各機械読み取り可能タグに格納される情報には、試薬容器に保存される試薬の種類を示す情報が含まれてもよい(種類は、例えば、アルコール、透明化剤、又は固定剤を含む)。
【0040】
例えば、試薬容器の内容物を示す各機械読み取り可能タグに格納される情報は、試薬容器に含まれる試薬の濃度を示す情報を含んでもよい。
【0041】
例えば、試薬容器の内容物を示す各機械読み取り可能タグに格納される情報は、試薬容器に含まれる試薬の有効期限を示す情報を含んでもよい。
【0042】
単純に(例えば、YES、NO)試薬容器に含まれる試薬が各タグに格納されていないかの表示であっても、試薬容器に含まれる試薬の種類及び/又は濃度を示す情報により、組織処理装置で以前に使用されていない試薬が試薬容器に保存されているかを判断可能なことに留意されたい。
【0043】
従って、試薬容器の内容物を示す各機械読み取り可能タグに格納される情報は、以下のいずれか1以上を含んでもよい。
試薬容器に含まれる試薬が以前に組織処理装置で使用されたかを示す情報
試薬容器に含まれる試薬の種類を示す情報
試薬容器に含まれる試薬の濃度を示す情報
試薬容器に含まれる試薬の有効期限を示す情報
【0044】
少なくとも一つの機械読み取り可能タグの各々は、試薬容器の内容物を示す情報を格納するより、試薬容器の内容を決定可能なる情報を保存するように構成されてもよい。
【0045】
例えば、試薬容器の内容を決定可能な機械読み取り可能タグごとに格納される情報は、機械読み取り可能タグが取り付けられた試薬容器を識別するように構成された一意の識別子を含んでもよい。機械読み取り可能タグが取り付けらる試薬容器の内容物は、データ記憶装置内の一意の識別子に関連付けられる。このように、一意の識別子用いて試薬容器の内容物を示す情報をデータ記憶装置内で検索することによって、一意の識別子に基づいて組織処理装置で以前に使用された試薬が試薬容器に含まれているかを決定できる。データ記憶装置は、組織処理装置の近傍に設けられても遠隔に設けられてもよいが、例えば、病理検査室は、通常、その検査室の情報の出入りを規制する規則によって制限されているため、遠隔のデータ記憶装置を避けることが望ましい。
【0046】
これらの理由により、本発明者は、試薬容器の内容物を決定可能な単なる情報ではなく、試薬容器の内容物を示す情報を格納するように構成された各機械読み取り可能タグがより単純できれいであると考えている。同様の理由で、機械読み取り可能タグが最新の情報を格納できるように、機械読み取り可能タグを書き換え可能にすること(以下を参照)も望ましいと考えられる。
【0047】
好ましくは、組織処理装置は、特定の種類、好ましくは特定の種類及び濃度の試薬を含む試薬容器が抽出装置に接続するようにユーザに指示する表示をユーザに提供するように構成されることが好ましい。
【0048】
例えば、特定の種類は、アルコール、透明化剤(例えば、キシレンなどの炭化水素溶媒)又は固定剤でもよい。
【0049】
試薬の濃度(指定されていれば)は、特定の種類の試薬(100%アルコールなど)である試薬の(体積)パーセントとして表される。疑義を避けるために、試薬の濃度は試薬の希釈状態として表される。
【0050】
試薬の濃度は、黙示的に指定される可能性があるため、常に明示的に指定する必要はない。例えば、「位置Ex1に新しいアルコールを注入する」という指示を、「位置Ex1」に純粋な(100%)アルコールを接続する要求として、当業者は解釈することに留意されたい。
【0051】
好ましくは、組織処理装置は、試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグからタグリーダが読み取った情報に基づいて、試薬容器に特定の種類の(又は該当する場合、特定の種類と濃度の)試薬が含まれていると判定された場合に、ユーザが抽出装置を試薬容器に接続し、及び/又は、そのような接続が行われたことを示した後に、組織処理装置が使用するために、試薬容器から試薬を取り出す抽出装置を使うように構成される。
【0052】
このように、ユーザが誤って抽出装置を特定の種類ではない(又は特定の種類及び濃度ではない)試薬を含む試薬容器に接続する、又は指示された接続が行われたことを示すシナリオにおいて、組織処理装置は、組織処理装置で使用するために、試薬容器から間違った種類及び/又は濃度の試薬を取り出す抽出装置の使用を回避でき、それにより、間違った種類及び/又は濃度の試薬を使用する組織処理装置によって生じる可能性がある問題を回避できる。
【0053】
組織処理装置が適切でない際に、組織処理装置で以前に使用されたアルコールを使用するとき、特定の種類がアルコール(又は特定濃度のアルコール、例えば100%アルコール)である場合に、本発明は特に有用である。又は、適切でない場合はアルコール以外の試薬を使用するか、間違った濃度のアルコールを使用すると、組織処理装置の洗浄又は初期化が必要になり、大幅な遅延が生じる可能性がある。
【0054】
組織処理装置は、試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグからタグリーダが読み取った情報に基づいて、試薬容器に含まれる試薬の有効期限が経過していないと判定された場合に、ユーザが抽出装置を試薬容器に接続し、及び/又は、そのような接続が行われたことを示した後に、組織処理装置が使用するために、試薬容器から試薬を取り出す抽出装置を使うように構成される。
【0055】
好ましくは、少なくとも一つの機械読み取り可能タグは、試薬容器の内容物を記述する更新情報を格納するように書き換えられるように構成された書き換え可能な機械読み取り可能タグ(より好ましくは、書き換え可能なRFIDタグ)である。
【0056】
この目的のため、組織処理装置は、機械読み取り可能タグに情報を書き込むように構成されたタグライタを含んでもよい。タグライタは、タグリーダと同じ装置でもよく、その場合、タグリーダは、機械読み取り可能タグから情報を読み取り、情報を書き込むように構成されたタグリーダ/ライタでもよい。あるいは、タグライタはタグリーダとは別でもよく、その場合、タグライタは「別個の」タグライタでもよい。
【0057】
このようにして、機械読み取り可能タグを書き換えられる。抽出装置に接続されている間に試薬容器の内容物が変化すると、タグライタ(前述したタグリーダ/ライタの一部又は別のタグライタ)が、試薬容器の内容物を示す更新情報を保存する。これは、このような情報をローカルに保存し続けるのに有効です(また、前述したように、通常は病理検査室からの情報の伝送は厳しく制限されている)。
【0058】
例えば、タグライタ(前述したタグリーダ/ライタの一部又は別のタグライタ)は、抽出装置が試薬容器から試薬を取り出した後に、試薬容器が空の場合、試薬容器が空であることを示す更新情報を機械読み取り可能タグに書き込む。
【0059】
このようにして、組織処理装置は、試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグからタグリーダが読み取った情報に基づいて、試薬容器に試薬が入っていないことを判定できる。従って、組織処理装置が(例えば、その試薬が組織処理装置で使用された後)試薬容器に戻された試薬を試薬容器が有することを決定できる。
【0060】
別の例として、タグライタ(上記のタグリーダ/ライタの一部又は別のタグライタ)は、抽出装置が試薬容器から試薬を取り出し、その後、組織処理装置で使用された試薬が組織処理装置によって試薬容器に戻された後、試薬容器に含まれる試薬が組織処理装置で以前に使用されたことを示す更新情報(この情報は、試薬容器に廃棄物が含まれているなどのさまざまな形で提供できる)を機械読み取り可能タグに書き込んで保存する。
【0061】
このようにして、組織処理装置は、試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグからタグリーダが読み取った情報に基づいて、組織処理装置で以前に使用された試薬を試薬容器が含むことを判定できる 。その結果、組織処理装置は、以前に使用された(例えば、廃棄物)試薬を、組織処理装置で使用するために、試薬容器から取り出すことを避けられる。
【0062】
組織処理装置で使用される試薬は、抽出装置によって試薬容器に戻すことができること(使用済み試薬を試薬容器に戻すように構成でき、その試薬を試薬容器から取り出すように構成できる)に留意されたい。試薬容器に戻された使用済み試薬は、元々試薬容器に含まれていた試薬を使用した結果のものでもよい。
【0063】
疑義を避けるために、機械読み取り可能タグに情報を書き込むには、タグの内容の一部又は全てを書き換える。
【0064】
試薬容器に取り付けられたタグからタグリーダーが読み取った情報に基づいて、組織処理装置で以前に使用された試薬が試薬容器に含まれている、及び/又は特定の種類ではない試薬が試薬容器に含まれている、及び/又は特定の濃度ではない試薬が試薬容器に含まれていると決定された場合、組織処理装置は、試薬容器のチェックをユーザに指示する表示をユーザに提供するように構成されてもよい(例えば、内容物が指示されたとおりであることを確認する)。
【0065】
好ましくは、組織処理装置は、さらに、組織処理装置で使用するために、抽出装置が試薬を試薬容器から取り出した後、試薬容器の内容物を示す更新情報を格納するように、機械読み取り可能タグに情報を書き込むように構成される。
【0066】
例えば、組織処理装置で使用するために、抽出装置が試薬を試薬容器から取り出した後(及び、オプションで、組織処理装置で使用された試薬が試薬容器に戻された後)、組織処理装置は、試薬容器に保存された試薬が組織処理装置で以前に使用されたことを示す更新情報を格納するために、機械読み取り可能タグに情報を書き込んでもよい。
【0067】
例えば、組織処理装置で使用された試薬が試薬容器に戻された後に、抽出装置が試薬容器から試薬を取り出して組織処理装置で使用された後、組織処理装置は、試薬容器に含まれる試薬の更新された濃度を示す更新情報を格納するために、機械読み取り可能タグに情報を書き込んでもよい。
【0068】
抽出装置は、入口管を含んでもよい。抽出装置の入口管を試薬容器に挿入することによって、抽出装置を試薬容器に接続するように構成してもよい。入口管は、キャップが入口管に取り付けられることによって、例えば、
図2に示すように、キャップによって試薬容器に固定されるように構成されてもよい。抽出装置は、入口管が試薬容器に挿入されると、試薬容器から入口管を通した試薬の吸い上げによって、組織処理装置で使用するために試薬容器から試薬を取り出すように構成されてもよい。
【0069】
組織処理装置は、前述したような多数の抽出装置を含み、それらを使用するように構成されてもよい。
【0070】
従って、組織処理装置は、各抽出装置が(各々の)試薬容器に接続されると、組織処理装置で使用するために、試薬容器から試薬を取り出すように構成される複数の抽出装置を含んでもよい。
【0071】
同様に、組織処理装置は、各機械読み取り可能タグが(各々の)試薬容器に取り付けられ、試薬容器の内容物を示す情報又は試薬容器の内容物を決定可能な情報を保存するように構成される複数の機械読み取り可能タグを含む組織処理システムの一部でもよい。
【0072】
組織処理装置は、複数の抽出装置のうちの2以上(必ずしも全てではない)の各々は、組織処理装置で以前に使用されていない試薬(例えば、特定の種類、又は特定の種類及び濃度)を含む試薬容器に抽出装置を接続するようにユーザに指示する表示をユーザに提供し、試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグからタグリーダが読み取った情報に基づいて、組織処理装置で以前に使用されていない試薬を試薬容器が含むと判定された場合に、ユーザが抽出装置を(各々の)試薬容器に接続し、及び/又は、そのような接続が行われたことを示した後に、組織処理装置が使用するために、試薬容器から試薬を取り出す抽出装置を使用するように構成されてもよい。
【0073】
指示は、異なる抽出装置を異なる種類の試薬及び/又は異なる濃度の試薬を含む試薬容器に接続するようにユーザに指示してもよい。異なる種類の試薬には、例えば、アルコール、透明化剤(例えば、キシレンなどの炭化水素溶媒)及び/又は固定剤が含まれてもよい。
【0074】
組織処理装置は、前述した抽出装置、試薬容器、タグ、及び/又は表示と同じ方法で、複数の抽出装置、試薬容器、タグ、及び/又は表示の各々を構成してもよい。これにより、例えば、各抽出装置が組織処理装置で以前に使用されていない試薬、及び/又は特定の種類及び/又は濃度の試薬を含む試薬容器へ確実に接続されるようにする。
【0075】
組織処理装置は、複数のタグリーダと、オプションで複数の別個のタグライタを含んでもよい。各タグリーダ(及び、存在する場合、各タグライタ)は、前述したように配置又は構成してもよい。
【0076】
例えば、組織処理装置は複数のタグリーダを収容でき、各タグリーダは、貯蔵領域内の前述した所定の場所にある各試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグから情報を読み取り(及び、オプションで、情報を書き込み)可能な場所に収容される。
【0077】
組織処理装置は、1以上の試薬(例えば、本明細書に記載の1以上の試薬)を使用して生物学的組織サンプルを処理する、例えば生物学的組織サンプルを一つ又は複数の試薬で処理するための組織処理領域を含んでもよい。そのような技術は、当技術分野で周知である。
【0078】
例えば、組織処理領域は、生物学的組織サンプルを1以上の試薬で処理し、次いで包埋媒体で処理することによって、生物学的組織サンプルを処理するためのものである。生物学的組織サンプルを処理するために使用される複数の試薬は、1以上(好ましくは複数)の脱水剤と、1以上(好ましくは複数)の透明化剤を含んでよい。1以上の脱水剤は、異なる濃度の複数のアルコール溶液及び/又は純粋なアルコールを含んでよい。1以上の炭化水素溶媒は、1以上のキシレン溶液及び/又は純粋なキシレンを含んでよい。包埋媒体はパラフィンワックスでもよい。
【0079】
組織処理装置は、組織処理装置の動作を制御するための制御ユニットを含んでもよい。制御ユニットは、前述した判定ステップの1以上を実行するように、及び/又は前述した指示のうちの1以上を、例えば組織処理装置のディスプレイを介して、ユーザに提供するように構成されてもよい。
【0080】
組織処理装置はディスプレイを有してもよいが、ユーザへの表示は組織処理装置の内蔵ディスプレイ以外の手段、例えば、ユーザの携帯電話機によって提供されてもよいため、これは必須構成ではない。ディスプレイは、無線で組織処理装置に接続できる(例えば、リモートPCでもよい)。
【0081】
ユーザへの前述した指示は、例えば、組織処理装置のディスプレイを介して、携帯電話アプリケーションを介して、及び/又は携帯電話に送信されるメッセージを介して提供されてもよい。ユーザに情報を提供する他の方法は、当業者によって容易に想定できる。
【0082】
組織処理装置は、試薬容器に含まれる状態(例えば、濃度)及び/又は試薬の種類の決定を可能にする他の技術、例えば同時に係属中の国際出願PCT/EP2017/058565で説明される技術に従って機能するように構成されてもよい。
【0083】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様にかかる組織処理装置によって実行される方法を提供できる。この方法は、組織処理装置が、組織処理装置で以前に使用されていない試薬を含む試薬容器に(組織処理装置の)抽出装置を接続するようにユーザに指示する表示をユーザに提供し、試薬容器に取り付けられた機械読み取り可能タグからタグリーダが読み取った情報に基づいて、組織処理装置で以前に使用されていない試薬を試薬容器が含むと判定された場合に、ユーザが抽出装置を試薬容器に接続し、及び/又は、そのような接続が行われたことを示した後に、組織処理装置が使用するために、前記試薬容器から試薬を取り出す抽出装置を使用する。
【0084】
この方法は、本発明の第1の態様に関連して説明された任意の装置の特徴を実装又はそれに対応する任意の方法のステップを含んでもよい。
【0085】
本発明の第3の態様は、コンピュータによって実行されると、本発明の第1の態様にかかる組織処理装置に本発明の第2の態様による方法を実行させる命令を含むコンピュータ読み取り可能媒体を提供できる。
【0086】
本発明の第4の態様は、本発明の第1の態様にかかる組織処理装置を提供するために組織処理装置を改造する方法を提供できる。
【0087】
組織処理装置を改造する方法は、タグリーダを組織処理装置に接続し、及び/又は組織処理装置の制御ユニットのソフトウェアを更新し、これによって、本発明の第1の態様による組織処理装置を得るステップを含むことができる。
【0088】
本発明は、また、そのような組み合わせが明らかに許容されないか又は明白に回避される場合を除いて、記載された態様及び好ましい特徴の任意の組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図3】
図1の組織処理装置で使用される試薬容器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
一般的に、以下の説明では、一意に識別されるRFIDタグを各試薬容器(この例ではボトル)に取り付け、組織処理装置内にRFIDタグリーダ/ライタを配置した組織処理装置の例を示す。簡単な形では、試薬容器に取り付けられた各タグは、試薬容器に保存される試薬が組織処理装置で以前に使用されたかを単に示すことができる。タグには、含まれる試薬の種類を示す情報を含めてもよい。このようにして、システムは廃試薬の再使用を防ぐだけでなく、間違った試薬の最初の使用も防ぐことができる。これにより、組織の処理不良や診断の遅れや診断不可を防止できる。
【0091】
図1は、本発明による組織処理装置100の例の概略図であり、
図2は、同じ組織処理装置100の斜視図である。
【0092】
図1及び
図2に示すように、組織処理装置100は、複数の試薬容器120a~gを保管するための貯蔵領域105を含む。この例では、貯蔵領域105は、複数の試薬容器120a~gを保管する保管場所を提供するために、ドア107によって閉鎖可能な組織処理装置の空洞である。
【0093】
組織処理装置100は複数の抽出装置を含み、各抽出装置は各入口管110a~gであり、(各々の)試薬容器に接続されると、組織処理装置100で使用するために試薬容器から試薬を取り出すように構成される。入口管110a、110b、110c、110d、110f、110gには、蒸気を封じ込めるキャップが設けられる。この例では、試薬容器はサイズ及び構成の少なくとも一つが異る可能性があるため、キャップ112は、試薬容器に取り付けるのではなく、その上に載るように構成される。他の例では、キャップは、ねじによって試薬容器に取り付けるように構成されてもよい。貯蔵領域105は、特定の種類の試薬容器を配置するための複数の所定の場所を含み、各所定の場所は、特定の種類の試薬を所定の場所に配置された試薬容器120a~gから抽出するように構成された各入口管110a~gに関連付けられる。
【0094】
この特定の例では、七つの入口管110a~gがある。
・入口管110a、110bは、試薬容器120a、120bから固定剤を抽出するように構成される。
・入口管110cは、透明化剤、この場合は炭化水素溶媒(キシレン)、を試薬容器120cから抽出するように構成される。
・入口管110dは、試薬容器120dから組織処理用のアルコールを抽出するように構成される。
・入口管110eは、試薬容器120eから洗浄試薬(水)を抽出するように構成される(水蒸気は健康リスクを生じないため、この入口管にはキャップ112は使用されない)。
・入口管110fは、試薬容器120fから洗浄試薬(キシレン)を抽出するように構成される。
・入口管110gは、試薬容器120gから洗浄試薬(アルコール)を抽出するように構成される。
【0095】
典型的には、アルコールを含む容器120dは、組織処理装置の7~10回の動作ごとに交換する必要があり、透明化剤を含む容器120cは、通常、容器120dと同じ頻度で交換されるとよい。
【0096】
最も重要な変更は、アルコールを含む容器120dの交換に関するものであり、抽出装置110dを以前に使用されたアルコール又は間違った種類の試薬を含む容器に接続すると、組織処理装置100を洗浄又は初期化する必要があり、深刻な遅延が発生する可能性があるためである。次の最も重大な変更は、透明化剤を含む容器120cの交換に関するものであり、抽出装置110cを以前に使用された透明化剤又は間違った種類の試薬を含む容器に接続することにも問題があるためである。もちろん、他の試薬を交換する際に、他の抽出装置を、必要な種類の以前に使用されていない試薬を含む試薬容器に接続することも好ましい。
【0097】
組織処理装置100は、制御ユニット140(例えば、コンピュータ)、ディスプレイ150、及び組織処理領域160を含む。
【0098】
制御ユニット140は、組織処理装置100の動作を制御する。
【0099】
ディスプレイ150は、情報をユーザに提供する。
【0100】
組織処理領域160は、試薬容器120dに含まれるアルコール及び試薬容器120cに含まれる透明化剤を含む1以上の試薬を使用して、生物学的組織サンプルを処理する。
【0101】
この例では、組織処理装置は、RFIDタグから情報を読み取り、RFIDタグの情報を書き換えるように構成されたRFIDタグリーダ/ライタ130も含む。
【0102】
この例では、RFIDタグリーダ/ライタ130は、入口管110dに関連する所定の場所に配置された試薬容器120dに取り付けられたRFIDタグから情報を読み書きできるように、貯蔵領域105のドア107内の場所に取り付けられる。このようにして、ユーザ入力を必要とせずに、試薬容器120dに取り付けられたRFIDから情報を読み取ることができ、オプションで書き込むことができる。
【0103】
図3は、試薬容器120dに取り付けられたRFIDタグ122の例を示す。試薬容器120d上のRFIDタグ122の位置とRFIDタグリーダ/ライタ130の位置は、RFIDタグリーダ/ライタ130が、入口管110dに関連する所定の場所に配置された試薬容器120dに取り付けられたRFIDタグから情報を読み書きできるようになっていることに留意されたい。
【0104】
この例では、試薬容器120d上のRFIDタグ122は、以下を含む情報を保存してもよい。
・試薬容器に含まれている試薬が組織処理装置で以前に使用されたかを示す情報
・試薬容器に含まれている試薬がアルコールであることを示す情報
・試薬容器により保存されるアルコールの濃度(オプションである)
【0105】
この例では、組織処理装置は、抽出装置110dに関して、以下のように構成される:
組織処理装置で以前に使用されていないアルコール(例えば100%アルコール)を含む試薬容器に抽出装置110dを接続するようにユーザに指示する表示をユーザに提供し、及び、
新しい試薬容器120dに取り付けられたRFIDタグ122からタグリーダ/ライタ130によって読み取られた情報に基づいて、組織処理装置で以前に使用されていないアルコールを試薬容器120dが含むと(制御ユニット140によって)判定された場合に、ユーザが抽出装置110dを新しい試薬容器120dに接続し、及び/又は、そのような接続が行われたことを(例えば、ディスプレイ150のGUIプロンプトにおいて)示した後に、組織処理装置100が使用するための新しい試薬容器120dから試薬を取り出す抽出装置110dを使用する。
【0106】
表示は、ディスプレイ150によってユーザに提供されてもよく、例えば、「位置Ex1に新しいアルコールを注入してください」というメッセージを表示する。
【0107】
前述したように、RFIDタグリーダ/ライタは、さらなるユーザ入力なしに、入口管110dに対応する所定の場所にある試薬容器120dに取り付けられたRFIDタグから情報を読み書きできるように配置されているので、ユーザは、試薬容器をRFIDタグリーダ/ライタ130に提示する追加のステップを必要とせず、既存の機械と同様に、RFIDタグを有する既存の試薬容器120dを、RFIDタグを備えた新しい試薬容器120dと交換するだけでよいことに留意されたい。
【0108】
通常、決定は、制御ユニット140によって実行されるが、他の実施形態では、組織処理装置から離れて設けられるコンピュータによって実行されてもよい。
【0109】
組織処理装置は、RFIDタグリーダ/ライタ130によって新しい試薬容器120dに取り付けられたRFIDタグ122から読み取られた情報に基づいて、新しい試薬容器120dが以前に組織処理装置で使用された試薬を含む、又はアルコールではない(又は、該当する場合、特定の種類でない)試薬を含むと判定される場合、試薬容器を確認するようにユーザが指示する表示をユーザに提供するように構成されてもよい。
【0110】
新しい試薬容器120dから組織処理装置に試薬が取り込まれた後、RFIDタグ122は、新しい試薬容器120dが空であることを示すために書き換えられてもよい。組織処理装置100は、いくつかの処理が行われた後、例えばRFIDタグリーダ/ライタ130を使用して試薬容器120dが空であることを確認した後、使用済みの試薬を抜き取ってもよい。廃棄試薬が空の容器120dの移動中又は移動後に、タグ122は、廃棄物の存在を示すように書き直されてもよい(これは、試薬容器120dに含まれる試薬が、組織処理装置100によって以前に使用されたことの表示に等しい)。
【0111】
この例では、組織処理装置100は、抽出装置110cに関連して以下のようにも構成される。
抽出装置110cを、組織処理装置で以前に使用されていない透明化剤(例えば、キシレン)を含む試薬容器に接続するようにユーザに指示する表示をユーザに提供し、及び、
新しい試薬容器120cに取り付けられたRFIDタグからRFIDタグリーダ/ライタ130によって読み取られた情報に基づいて、新しい試薬容器120cが以前に組織処理装置100で使用されていない透明化剤を含むと判断された場合に、ユーザが抽出装置110cを新しい試薬容器120cに接続し、及び/又は、そのような接続が行われたことを示した後、組織処理装置100が使用するために、新しい試薬容器120cから試薬を取り出す抽出装置110cを使用する。
【0112】
図示の例では、RFIDタグリーダ/ライタ130の位置が、RFIDタグリーダ/ライタ130が入口管に対応する所定の場所にある試薬容器120cに取り付けられたRFIDタグの情報の読み書きを許可しない場合、例えば、そうするように求められた際に、この例ではユーザは新しい試薬容器120cをRFIDタグリーダ/ライタ130に提示する必要がある。透明化剤を含む試薬容器に抽出装置110cを接続するようにユーザに指示する表示は、そのようなプロンプトを提供するために適切に表現されてもよい。
【0113】
他の(図示しない)例では、RFIDタグリーダ/ライタ130は、入口管110cに対応する所定の場所にある試薬容器120cに取り付けられたRFIDタグから情報を読み取り、情報を書き込むのに十分な感度を有するとよい。
【0114】
さらなる(図示しない)例では、さらなるユーザ入力なしで、組織処理装置は、入口管110cに対応する所定の場所にある試薬容器120cに取り付けられたRFIDタグから情報を読み取り可能で、RFIDタグに情報を書き込み可能に配置された追加のRFIDタグリーダ/ライタ130を含んでもよい。
【0115】
この例では、組織処理装置100は、固定剤を含むものなどの他の試薬容器の内容物を監視するように構成されていないが、これを達成するために組織処理装置100を変更できる。
【0116】
それにもかかわらず、組織処理装置100は、複数の、ほとんどの、又は実際にはすべての試薬の貯蔵、例えばアルコールとキシレンの貯蔵を管理するように変更できることに留意されたい。同様に、1回分の試薬及び試薬の有効期限データは、試薬容器120a~gの一部又は全てに取り付けられるRFIDタグに記録でき、組織処理装置100によって管理される。
【0117】
この例では、RFIDタグリーダ/ライタ130はドア107に取り付けられているが、他の(図示されていない)例では、RFIDタグリーダ/ライタ130は他の場所に取り付けられるか、可搬型装置として提供されるか、又は可搬型RFIDタグリーダ/ライタをRFIDタグリーダ/ライタ130と共に提供できる。
【0118】
旧来の組織処理装置は、前述した機能を提供するように改造できる。組織処理装置を修正して、RFIDタグリーダ/ライタ130をドアに組み込むか、可搬型ユニットとして使用し、更新されたソフトウェアをその制御ユニット140に提供する。
【0119】
前述した例では、試薬容器はボトルであるが、他の種類の容器も使用可能である。
【0120】
RFIDタグは、いかなる製造業者の試薬容器にも取り付けられ、製造業者自身が試薬容器に取り付けられる。前述した例では、RFIDタグリーダ/ライタ130は、情報がタグ自体によって提供されない限り、RFIDタグから試薬容器の内容物の品質又は正確な化学的性質を確認できない。しかし、タグシステムは、試薬容器の品質/内容物を特定する他の技術と併せて動作してもよい。このことは、例えば同時に係属中の国際出願PCT/EP2017/058565で説明されている。
【0121】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、用語「備える」、「有する」、「含む」及びその変形は、記載された特徴、ステップ又は数値が含まれることを意味する。これらの用語は、他の機能、ステップ、又は数値が存在する可能性を排除すると解釈されるべきではない。
【0122】
前述した説明、又は以下の特許請求の範囲、又は添付の図面で開示された特徴は、特定の形式で、又は開示された機能を実行する手段の観点で表され、又は開示された結果を取得する方法又はプロセスの観点は、適切に、別個に、又はそれらの特徴の任意の組み合わせで、本発明をその多様な形態で実現するために利用できる。
【0123】
前述した例示的な実施形態に関連して本発明を説明したが、本開示が与えられた場合、多くの等価な修正及び変更が当業者には明らかであろう。したがって、前述した本発明の例示的な実施形態は、例示的であり、限定的ではないと見なされる。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に対する様々な変更がなされてもよい。
【0124】
疑義を避けるために、ここで提供される理論的な説明は読者の理解を向上させる目的で提供される。本発明者は、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望まない。