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特許7181294撮像ユニット、内視鏡および内視鏡システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】撮像ユニット、内視鏡および内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20221122BHJP
   A61B 1/045 20060101ALI20221122BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20221122BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61B1/00 731
A61B1/00 522
A61B1/045 610
G02B23/24
G02B23/26 A
G02B23/26 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020530889
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2019009195
(87)【国際公開番号】W WO2020017089
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2018136697
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綿谷 祐一
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/199666(WO,A1)
【文献】特開2018-040927(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104191(WO,A1)
【文献】特開平08-194170(JP,A)
【文献】特開平09-005643(JP,A)
【文献】特開2003-060947(JP,A)
【文献】特開2012-118698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
G02B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光学像を結像する第1のレンズ群と、
前記第1のレンズ群と対をなし、第2の光学像を結像する第2のレンズ群と、
物体光を前記第1のレンズ群へ導光する第1の領域と、物体光を前記第2のレンズ群へ導光する第2の領域と、を有する対物レンズ群と、
前記第1の光学像および前記第2の光学像を受光することによって画像信号を生成する単一のイメージセンサと、
前記第1のレンズ群を保持する第1の保持孔と、前記第2のレンズ群を保持する第2の保持孔と、を有する単一の第1の保持枠と、
前記対物レンズ群を保持し、かつ、前記第1の保持枠の先端側と嵌合した状態で接着されることによって位置決めされて固定された第2の保持枠と、
前記イメージセンサを保持し、内周面において前記第1の保持枠の基端側と嵌合した状態で接着されることによって位置決めされて固定された第3の保持枠と、
前記第2のレンズ群と前記対物レンズ群との間に配置され、前記第2のレンズ群へ入射する光を制限するピント調整用の絞りと、
を備え、
前記対物レンズ群および前記第1のレンズ群によって構成される第1の光学系の被写界深度は、前記対物レンズ群および前記第2のレンズ群によって構成される第2の光学系の被写界深度を完全に含み、第2の光学系の被写界深度よりも深い
撮像ユニット。
【請求項2】
被検体に挿入される挿入部と、
前記挿入部の先端側に設けられ、前記被検体を撮像することによって画像信号を生成する撮像ユニットと、
前記挿入部の基端側に設けられた、前記画像信号に対して画像処理を行う処理装置に着脱自在に接続される基端部と、
を備え、
前記撮像ユニットは、
第1の光学像を結像する第1のレンズ群と、
前記第1のレンズ群と対をなし、第2の光学像を結像する第2のレンズ群と、
物体光を前記第1のレンズ群へ導光する第1の領域と、物体光を前記第2のレンズ群へ導光する第2の領域と、を有する対物レンズ群と、
前記第1の光学像および前記第2の光学像を受光することによって前記画像信号を生成する単一のイメージセンサと、
前記第1のレンズ群を保持する第1の保持孔と、前記第2のレンズ群を保持する第2の保持孔と、を有する単一の第1の保持枠と、
前記対物レンズ群を保持し、かつ、内周面において前記第1の保持枠の先端側の外周面と嵌合した状態で接着されることによって位置決めされて固定された第2の保持枠と、
前記イメージセンサを保持し、内周面において前記第1の保持枠の基端側の外周面と嵌合した状態で接着されることによって位置決めされて固定された第3の保持枠と、
前記第2のレンズ群と前記対物レンズ群との間に配置され、前記第2のレンズ群へ入射する光を制限するピント調整用の絞りと、
を備え、
前記対物レンズ群および前記第1のレンズ群によって構成される第1の光学系の被写界深度は、前記対物レンズ群および前記第2のレンズ群によって構成される第2の光学系の被写界深度を完全に含み、第2の光学系の被写界深度よりも深い
内視鏡。
【請求項3】
請求項に記載の内視鏡と、
処理装置と、
を備え、
前記処理装置は、前記画像信号に対して画像処理を行う画像処理部を備え、
前記画像処理部は、
前記画像信号に基づいて、前記第1の光学系によって生成された第1の画像および前記第2の光学系によって生成された第2の画像を取得し、
前記第2の画像および前記第1の画像の各々の所定の位置のズレ量である視差値を算出し、
前記視差値に基づいて、前記第2の画像と前記第1の画像の各画素の輝度情報の差分値を算出し、
前記第2の画像の各画素の画素値に、前記差分値を加算する
内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検体内に挿入される内視鏡の挿入部の先端に設けられて被検体内を撮像する撮像ユニット、内視鏡および内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡では、視差の異なる2つの画像を1つの撮像素子の撮像面に結像することによって、被検体の体内の立体画像(以下、単に「3D画像」という)を観察する技術が知られている(特許文献1参照)。この技術では、互いに視差を有する2つの光学像を生成する主光学系および従光学系それぞれに異なるピント調整用の保持枠を設けることによって、製造誤差による主光学系および従光学系それぞれのピント位置の差が一定の許容幅内に収めることで、3D画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/104276号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、撮像素子の高画素化による画素ピッチの縮小および撮像ユニットの小型化に伴って光学系のレンズ径も縮小しているため、ピント調整の難易度が上がってきている。
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1では、主光学系に対して従光学系のピントを合わせるため、ピント調整手段の枠構造が複雑なため、簡易にピント調整を行うことができなかった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、2つの光学系のピント調整を簡易に行うことができる撮像ユニット、内視鏡および内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る撮像ユニットは、第1の光学像を結像する第1のレンズ群と、前記第1のレンズ群と対をなし、第2の光学像を結像する第2のレンズ群と、物体光を前記第1のレンズ群へ導光する第1の領域と、物体光を前記第2のレンズ群へ導光する第2の領域と、を有する対物レンズ群と、前記第1の光学像および前記第2の光学像を受光することによって画像信号を生成する単一のイメージセンサと、前記第1のレンズ群を保持する第1の保持孔と、前記第2のレンズ群を保持する第2の保持孔と、を有する単一の第1の保持枠と、前記対物レンズ群を保持し、かつ、前記第1の保持枠の先端側と嵌合した状態で接着されることによって位置決めされて固定された第2の保持枠と、前記イメージセンサを保持し、内周面において前記第1の保持枠の基端側と嵌合した状態で接着されることによって位置決めされて固定された第3の保持枠と、を備え、前記対物レンズ群および前記第1のレンズ群によって構成される第1の光学系のFナンバーは、前記対物レンズ群および前記第2のレンズ群によって構成される第2の光学系のFナンバーと比べて大きい。
【0008】
また、本開示に係る撮像ユニットは、前記第2の光学系は、前記第2の光学系の光路上に絞りをさらに備える。
【0009】
また、本開示に係る内視鏡は、被検体に挿入される挿入部と、前記挿入部の先端側に設けられ、前記被検体を撮像することによって画像信号を生成する撮像ユニットと、前記挿入部の基端側に設けられた、前記画像信号に対して画像処理を行う処理装置に着脱自在に接続される基端部と、を備え、前記撮像ユニットは、第1の光学像を結像する第1のレンズ群と、前記第1のレンズ群と対をなし、第2の光学像を結像する第2のレンズ群と、物体光を前記第1のレンズ群へ導光する第1の領域と、物体光を前記第2のレンズ群へ導光する第2の領域と、を有する対物レンズ群と、前記第1の光学像および前記第2の光学像を受光することによって前記画像信号を生成する単一のイメージセンサと、前記第1のレンズ群を保持する第1の保持孔と、前記第2のレンズ群を保持する第2の保持孔と、を有する単一の第1の保持枠と、前記対物レンズ群を保持し、かつ、内周面において前記第1の保持枠の先端側の外周面と嵌合した状態で接着されることによって位置決めされて固定された第2の保持枠と、前記イメージセンサを保持し、内周面において前記第1の保持枠の基端側の外周面と嵌合した状態で接着されることによって位置決めされて固定された第3の保持枠と、を備え、前記対物レンズ群および前記第1のレンズ群によって構成される第1の光学系のFナンバーは、前記対物レンズ群および前記第2のレンズ群によって構成される第2の光学系のFナンバーと比べて大きい。
【0010】
また、本開示に係る内視鏡システムは、上記記載の内視鏡と、処理装置と、を備え、前記処理装置は、前記画像信号に対して画像処理を行う画像処理部を備え、前記画像処理部は、前記画像信号に基づいて、前記第1の光学系によって生成された第1の画像および前記第2の光学系によって生成された第2の画像を取得し、前記第2の画像および前記第1の画像の各々の所定の位置のズレ量である視差値を算出し、前記視差値に基づいて、前記第2の画像と前記第1の画像の各画素の輝度情報の差分値を算出し、前記第2の画像の各画素の画素値に、前記差分値を加算する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、2つの光学系のピント調整を簡易に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の一実施の形態に係る内視鏡システムの全体構成を模式的に示す概略図である。
図2図2は、本開示の一実施の形態に係る撮像ユニットの断面を模式的に示す図である。
図3図3は、本開示の一実施の形態に係る第1の光学系および第2の光学系の各々のFナンバーを同じ値にした際の解像度と被写体距離との関係を示す図である。
図4図4は、本開示の一実施の形態に係る第1の光学系のFナンバーを第2の光学系のFナンバーより大きい値にした際の解像度と被写体距離との関係を示す図である。
図5図5は、本開示の一実施の形態に係る処理装置の機能構成を示すブロック図である。
図6図6は、本開示の一実施の形態に係る処理装置が実行する処理の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)として、被検体内に挿入する挿入部における先端側の先端部に撮像ユニット(撮像装置)を有する内視鏡を備えた内視鏡システムについて説明する。また、この実施の形態により、本開示が限定されるものでない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付して説明する。さらにまた、図面は、模式的なものであり、各部材の厚みと幅との関係、各部材の比率等は、現実と異なることに留意する必要がある。また、図面の相互間において、互いの寸法や比率が異なる部分が含まれている。
【0014】
〔内視鏡システムの構成〕
図1は、本開示の一実施の形態に係る内視鏡システムの全体構成を模式的に示す概略図である。図1に示す内視鏡システム1は、内視鏡2と、処理装置3と、表示装置4と、光源装置5と、を備える。
【0015】
内視鏡2は、複数のケーブルおよびライトガイドを含む挿入部100を被検体の体腔内に挿入し、被検体の体内を撮像することによって生成した撮像信号を処理装置3へ出力する。内視鏡2は、挿入部100と、操作部200と、ユニバーサルコード300と、基端部400と、を備える。
【0016】
挿入部100は、内部に複数のケーブルおよびライトガイドを有し、被検体の体腔内に挿入される。挿入部100は、被検体の体腔内に挿入される先端側の先端部101に、被検体の体内を撮像することによって撮像信号を生成する撮像ユニット20が設けられ、基端部102側に操作部200が接続される。挿入部100は、処理装置3から供給される電力および駆動信号を撮像ユニット20へ伝送するとともに、撮像ユニット20によって生成された撮像信号を基端側102へ伝送する。
【0017】
操作部200は、内部に各種回路が実装された基板を内蔵するとともに、内視鏡2に関する各種操作の入力を受け付ける。また、操作部200は、ユニバーサルコード300が接続される。操作部200は、各種のスイッチ、トグルスイッチおよびボタン等を用いて構成される。
【0018】
ユニバーサルコード300は、内部に複数のケーブルおよびライトガイドを有し、基端側301に基端部400が接続される。ユニバーサルコード300は、基端部400および操作部200を経由して処理装置3から供給された電力および駆動信号を挿入部100へ伝送するとともに、挿入部100および操作部200を経由して撮像ユニット20によって生成された撮像信号を基端側102へ伝送する。
【0019】
基端部400は、処理装置3および光源装置5に着脱自在に接続される。基端部400は、処理装置3から供給される電力および駆動信号をユニバーサルコード300へ伝送するとともに、ユニバーサルコード300を経由して入力された撮像信号を処理装置3へ伝送する。
【0020】
処理装置3は、基端部400へ電力および駆動信号を出力するとともに、基端部400から入力された撮像信号を受信する。処理装置3は、撮像信号に対して所定の画像処理を施して表示装置4へ出力する。処理装置3は、内視鏡システム1の各部を制御する。処理装置3は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)およびDSP(Digital Signal Processing)、揮発性メモリおよび不揮発性メモリ等を用いて構成される。
【0021】
表示装置4は、処理装置3が画像処理を施した撮像信号に対応する画像を表示する。また、表示装置4は、内視鏡システム1に関する各種情報を表示する。表示装置4は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)等を用いて構成される。
【0022】
光源装置5は、基端部400を経由して挿入部100の先端部101側から被検体(被写体)に向けて照明光を照射するため、照明光を供給する。光源装置5は、ハロゲンランプまたは白色光を発する白色LED(Light Emitting Diode)等を用いて構成される。なお、本実施の形態では、光源装置5に同時方式の照明方式を用いる場合について説明するが、撮像ユニット20の種別に応じて適宜変更することができ、例えば面順次方式の照明方式であってもよい。さらに、光源装置5は、白色光にも、特殊光を供給してもよい。特殊光としては、例えばNBI(Narrow Band Imaging)が可能な狭帯域光、赤外光、バイオレット光、オレンジ光等を供給してもよい。
【0023】
〔撮像ユニットの構成〕
次に、撮像ユニット20の構成について説明する。図2は、撮像ユニット20の断面を模式的に示す図である。
【0024】
図2に示す撮像ユニット20は、第1のレンズ群201と、第2のレンズ群202と、対物レンズ群203と、イメージセンサ204と、第1の保持枠205と、第2の保持枠206と、第3の保持枠207と、絞り208と、を備える。
【0025】
第1のレンズ群201は、対物レンズ群203から導光された物体光をイメージセンサ204の受光面に第1の光学像として結像する。第1のレンズ群201は、複数のレンズを用いて構成される。
【0026】
第2のレンズ群202は、第1のレンズ群と対をなし、対物レンズ群203から導光された物体光をイメージセンサ204の受光面に第2の光学像として結像する。第2のレンズ群202は、複数のレンズを用いて構成される。
【0027】
対物レンズ群203は、物体光を第1のレンズ群201へ導光する第1の領域R1と、物体光を第2のレンズ群202へ導光する第2の領域R2と、を有する。対物レンズ群203は、複数のレンズを用いて構成される。以下においては、対物レンズ群203および第1のレンズ群201によって構成される光学系(左側光学系)を第1の光学系L1とし、対物レンズ群203および第2のレンズ群202によって構成される光学系(右側光学系)を第2の光学系L2として説明する。さらに、第1の光学系L1および第2の光学系L2は、視差を有するステレオ光学系として機能する。
【0028】
イメージセンサ204は、第1のレンズ群201が結像した第1の光学像と、第2のレンズ群202が結像した第2の光学像と、を受光することによって撮像信号を生成する。イメージセンサ204は、単一のCCD(Charge Coupled Device)または単一のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を用いて構成される。なお、イメージセンサ204は、単一のものに限定されることなく、第1の光学像および第2の光学像の各々を受光する複数板のものを用いて構成してもよい。
【0029】
第1の保持枠205は、筒状をなし、第1のレンズ群201を保持する第1の保持孔205aと、第2のレンズ群202を保持する第2の保持孔205bとが一体的に形成される。第1の保持孔205aおよび第2の保持孔205bは、第1のレンズ群201の光軸O1と第2のレンズ群202の光軸O2とが所定の視差になるように内部で保持する。
【0030】
第2の保持枠206は、筒状をなし、対物レンズ群203を保持する。第2の保持枠206は、内周面において第1の保持枠205の先端側(一端側)の外周面と嵌合させた状態で接着剤206a等を用いて接着されることによって位置決めされて固定される。なお、固定方法としては、接着剤以外にも、例えば第1の保持枠205の外周側に螺旋状の溝や雌ねじを設け、第2の保持枠206の内周側に雄ねじを設けることによって固定してもよい。
【0031】
第3の保持枠207は、イメージセンサ204を保持する。第3の保持枠207は、筒状をなし、内周面において第1の保持枠205の基端側(他端側)の外周面が嵌合させた状態で接着剤207a等を用いて接着されることによって位置決めされて固定される。なお、固定方法としては、接着剤以外にも、例えば第1の保持枠205の外周側に螺旋状の溝や雌ねじを設け、第3の保持枠207の内周側に雌ねじを設けることによって固定してもよい。
【0032】
絞り208は、第2の光学系L2の光路上に配置され、第2のレンズ群202に入射する光を制限することによって、第2の光学系L2のFナンバー(F値)を変更する。絞り208は、第2の光学系L2の光路上に配置される。具体的には、絞り208は、第2の光学系L2の光路上における対物レンズ群203と第2のレンズ群202との間に配置される。なお、絞り208の配置場所は、適宜変更することができ、例えば第2のレンズ群202とイメージセンサ204との間、対物レンズ群203の先端側、第2のレンズ群202のいずれかの間にすることができる。
【0033】
このように構成された撮像ユニット20は、第1の光学系L1(主光学系)のFナンバー(F値)が、第2の光学系L2(従光学系)のFナンバー(F値)と比して大きい。具体的には、第2の光学系L2は、対物レンズ群203と第2のレンズ群202との間に絞り208が設けられているので、第1の光学系L1のFナンバー(F値)と比して小さい。
【0034】
図3は、第1の光学系L1および第2の光学系L2の各々のFナンバーを同じ値にした際の解像度と被写体距離との関係を示す図である。図4は、第1の光学系L1のFナンバーを第2の光学系L2のFナンバーより大きい値にした際の解像度と被写体距離との関係を示す図である。図3および図4において、横軸が被写体距離を示し、縦軸が解像度を示す。また、図3および図4の曲線LL1および曲線LL2は、第1のレンズ群201の特性を示し、図3および図4の曲線LR1および曲線LR2は、第2のレンズ群202の特性を示す。さらに、図3および図4において、閾値LTがピントの閾値を示す。
【0035】
図3に示すように、従来の構成(以下、「構成1」という)では、第1の光学系L1および第2の光学系L2の各々のFナンバーが同じであるため、第1の光学系L1および第2の光学系L2のどちらか一方のレンズ枠を調整する。これにより、構成1では、第1の光学系L1および第2の光学系L2の各々の被写界深度D1が同じため、第1の光学系L1および第2の光学系L2の各々が同じピント位置に合わせることができるが、ピント合わせの調整作業が煩雑となる。また、第1の光学系L1および第2の光学系L2のどちらか一方の一部のレンズだけを他方の光学系のピントに合うように調整が可能な構成(以下、「構成2」という)であっても、レンズ枠が複雑になるうえ、ピント合わせの調整作業が煩雑となる。具体的には、従来の構成2では、第1の光学系L1および第2の光学系L2の間でピント調整を行った後(調整工程1)、第2の光学系L2を構成する一部のレンズを光軸O2方向に動かしてピント調整を行う(調整工程2)。即ち、従来の構成2では、2回の調整工程を行わなければならないうえ、第2の光学系L2の一部のレンズのみを移動させる構造を別途設ける必要があるため、枠機構が複雑となる。
【0036】
これに対して、図4に示すように、撮像ユニット20は、第1の光学系L1のFナンバー(F値)が、第2の光学系L2のFナンバー(F値)と比して大きく設定する。具体的には、図4に示すように、撮像ユニット20は、第1の光学系L1のFナンバーを第2の光学系L2のFナンバーより大きくすることで、第2の光学系L2の被写界深度D1を含むように被写体Pに対する被写界深度D2を拡大する。即ち、第1の光学系L1のピントが合う範囲に第2の光学系L2のピントの合う範囲を合わせる。この結果、特別なピント調整用の部材を設けることなく、第1の光学系L1および第2の光学系L2のピント調整を簡易な構成で行うことができる。さらに、撮像ユニット20は、上述した従来の構造2と比して、第1の保持枠206~第3の保持枠207の構成を簡略化することができるとともに、1回の調整作業のみで、第1の光学系L1および第2の光学系L2のピント調整を行うことができる。さらにまた、3D合成画像の特徴として、2つの画像を合成した場合、人間の目では、片側の高分解能な画像の影響を強く受けるので、結果的に、片側のF値を大きくして分解能を落としてもよい。この効果を利用することによって、得られる3D画像は、高精細な印象となる。
【0037】
〔処理装置の構成〕
次に、処理装置3の構成について説明する。図5は、処理装置3の機能構成を示すブロック図である。
【0038】
図5に示す処理装置3は、画像処理部31と、制御部32と、記録部33と、を有する。
【0039】
画像処理部31は、内視鏡2から入力された画像信号に対して、各種処理を行って表示装置4へ出力する。画像処理部31は、例えばGPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal
Processing)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いて構成される。
【0040】
制御部32は、内視鏡システム1の各部を制御する。制御部32は、CPU(Central
Processing Unit)等を用いて構成される。
【0041】
記録部33は、内視鏡システム1に関する各種データや実行するプログラムを記録する。記録部33は、揮発性メモリ、不揮発性メモリおよびメモリーカード等を用いて構成される。
【0042】
〔処理装置の処理〕
次に、処理装置3が実行する処理の概要について説明する。図6は、処理装置3が実行する処理の概要を示すフローチャートである。なお、内視鏡2は、3D観察時を行う場合であっても、基本的に2D画像、例えば第1の光学系L1によって生成された第1の画像(以下、副主画像」という)および第2の光学系L2によって生成された第2の画像(以下、「主画像」という)のどちらか一方を記録する。好ましくは、内視鏡2は、主画像を記録する。現在、内視鏡2では、超解像技術が知られているが、そのほとんどが表示装置4の表示画素数よりイメージセンサ204の撮像画素数が小さいため、表示画像数と撮像画素数との間に差が生じているため、内視鏡2が接続される処理装置3内で補間処理やエッジ強調処理を行うことによって精彩な画像を再生している。また、現在、内視鏡2では、学習型の超解像技術が知られているが、静物と異なり、被検体が動くので、教師データを得ることが難しいうえ、リアルタイム性に欠けるため、CADe、CADxといった自動検出・自動診断との親和性が欠ける問題点もある。さらに、現在、内視鏡2では、処理装置3がエッジ強調を行っているが、エッジに隣接する情報への影響、例えば濃いグレーが黒くなるだけなく、薄いグレーも白く変化する影響がある。このため、以下においては、内視鏡システム1が3D画像観察でなく、2D画像観察時または2D画像保存時に実行する処理装置3の処理について説明する。
【0043】
図6に示すように、まず、画像処理部31は、内視鏡2のイメージセンサ204によって生成された画像信号から主画像および副画像を取得する(ステップS101)。
【0044】
続いて、画像処理部31は、主画像に対する副画像の画像調整処理を実行する(ステップS102)。具体的には、画像処理部31は、主画像の所定の位置、例えば中心から副画素の中心とのズレ量である視差値を算出するオフセット処理、主画像および副画像の倍率を調整する倍率調整処理、主画像および副画像のディストーションを調整するディストーション調整処理および主画像と副画像の水平や垂直を調整する回転処理等を実行する。
【0045】
その後、画像処理部31は、オフセット処理で算出した視差値に基づいて、主画像と副画像の各画素の輝度情報の差分値を算出する(ステップS103)。具体的には、画像処理部31は、オフセット処理で算出した視差分(ズレ量)に基づいて、主画像と副画像の各画素の位置を合わせた後に、主画像の各画素と副画素の各画素との輝度情報(画素値)の差分値を算出する。
【0046】
続いて、画像処理部31は、主画像の各画素の画素値に、ステップS103で算出した差分値を加算し(ステップS104)、記録部33に記録する(ステップS105)。ステップS105の後、画像処理部31は、本処理を終了する。なお、画像処理部31は、主画像の各画素の画素値に、ステップS103で算出した差分値を単に加算していたが、これに限定されることなく、差分値の絶対値を主画像の各画素の画素値に加算してもよい。これにより、一実施の形態によれば、1つのイメージセンサ204を用いて主画像および副画像の2つを同時に取得することによって、簡易な計算で強調処理を行うことができるので、リアルタイム性を向上させることができる。一実施の形態によれば、簡易な計算で強調処理を行うことができるので、画像処理部31を構成する回路規模の縮小することができる。さらに、一実施の形態によれば、第2の光学系L2のFナンバー(F値)が第1の光学系L1のFナンバー(F値)より小さい。このため、第1の光学系L1(従光学系)は、被写体深度が深いため、強調処理によって保存される2D画像の被写体深度が拡大された画像となる。さらにまた、一実施の形態によれば、コントラストや解像感を向上させることができるうえ、副画像で生じる周辺画素への影響を防止することができるので、違和感のない強調画像を提供することができる。
【0047】
以上説明した本開示の一実施の形態によれば、第1の光学系L1のFナンバー(F値)を第2の光学系L2のFナンバー(F値)と比して大きくすることによって、第1の光学系L1および第2の光学系L2のピント調整を簡易な構成で行うことができる。
【0048】
なお、本開示の一実施の形態によれば、第1の光学系L1のFナンバー(F値)を第2の光学系L2のFナンバー(F値)と比して大きくしていたが、これに限定されることなく、第2の光学系L2のFナンバー(F値)を第1の光学系L1のFナンバー(F値)と比して大きくしてもよい。即ち、2つの光学系のうち、どちらか一方のFナンバーを他方のFナンバーと比して大きくすることによって、2つの光学系のピント調整を簡易な構成で行うことができる。
【0049】
なお、本開示の一実施の形態では、第1の光学系L1および第2の光学系L2のどちらか一方に、一部の波長帯域の光をカットするフィルタを光路上に設けてもよいし、コーティングをレンズに施してもよい。ここで、一部の波長帯域の光としては、PDT(Photodynamic Therapy)の波長帯域(600~800nm)、波長可変YAGレーザの波長帯域(例えば1064nm)およびLDレーザの波長帯域(650~905nm)等をカットするフィルタの挿入またはコーティングを施してもよい。これにより、各モードに応じた2D画像の観察を行うことができる。
【0050】
また、本開示の一実施の形態では、第1の光学系L1および第2の光学系L2のどちらか一方に焦点位置を切り替えるアクチュエーターを設けてもよいし、焦点距離を切り替えるアクチュエーターを設けてもよい。これにより、観察対象に合わせて焦点位置および焦点距離を変更することができる。
【0051】
また、本開示の一実施の形態では、内視鏡2の先端部101に内視鏡の軸方向を中心に径方向に移動可能な扇状をなす絞り機構、フィルタ機構、レンズ機構等の切り替え機構を設けてもよい。この場合、切り替え機構は、内視鏡2の径方向に駆動するコイル等のアクチュエーターに電流を供給することによって、第1の光学系L1または第2の光学系L2の光路上に挿入される。これにより、観察対象や処置対象に合わせた観察を行うことができるうえ、第1の光学系L1および第2の光学系L2の光軸を結ぶ線に対して垂直方向に生じるデッドスペースを有効活用することができるので、小型化を行うことができる。
【0052】
また、本開示の一実施の形態では、第1の光学系L1および第2の光学系L2のうち少なくとも一方の光学像を受光するイメージセンサ204の受光面に配置されるベイヤー配列のカラーフィルタに換えて、例えばBフィルタ(ブルーフィルタ)、Cyフィルタ(シアンフィルタ)、Yeフィルタ(イエローフィルタ)およびMgフィルタ(マゼンダフィルタ)で構成される補色フィルタを配置してもよい。
【0053】
また、本開示の一実施の形態では、第1の光学系L1および第2の光学系L2のうち少なくとも一方の光学像を受光するイメージセンサ204の受光面の画素領域のフレームレートを他方の画素領域のフレームレート(例えば60fps)より高速(例えば120fps)にしてもよい。2D画像として記録する画素領域のフレームレートを高速化することで、被写体ブレを防止することができるうえ、第1の光学系L1および第2の光学系L2の両方の画素領域の高速化と比して処理回路を小型化することができる。さらに、高速で照明光の種類が切り替わる面順次発光モード時に、高速フレームレートで撮影することができるので、被写体ブレや色ズレを防止することができる。
【0054】
また、本開示の一実施の形態に係る内視鏡システムに開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の実施の形態を形成することができる。例えば、上述した本開示の一実施の形態に係る内視鏡システムに記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、上述した本開示の一実施に係る内視鏡システムで説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0055】
また、本開示の一実施の形態に係る内視鏡システムでは、上述してきた「部」は、「手段」や「回路」などに読み替えることができる。例えば、制御部は、制御手段や制御回路に読み替えることができる。
【0056】
また、本開示の一実施の形態に係る内視鏡システムに実行させるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルデータでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)、USB媒体、フラッシュメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0057】
また、本開示の一実施の形態に係る内視鏡システムに実行させるプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。
【0058】
なお、本明細書におけるタイミングチャートの説明では、「まず」、「その後」、「続いて」等の表現を用いてステップ間の処理の前後関係を明示していたが、本発明を実施するために必要な処理の順序は、それらの表現によって一意的に定められるわけではない。即ち、本明細書で記載したタイミングチャートにおける処理の順序は、矛盾のない範囲で変更することができる。
【0059】
以上、本願の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、本発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 内視鏡システム
2 内視鏡
3 処理装置
4 表示装置
5 光源装置
20 撮像ユニット
31 画像処理部
32 制御部
33 記録部
100 挿入部
101 先端部
102 基端側
200 操作部
201 第1のレンズ群
202 第2のレンズ群
203 対物レンズ群
204 撮像素子
205 第1の保持枠
205a 第1の保持孔
205b 第2の保持孔
206 第2の保持枠
206a,207a 接着剤
207 第3の保持枠
208 絞り
300 ユニバーサルコード
301 基端側
400 基端部
L1 第1の光学系
L2 第2の光学系
図1
図2
図3
図4
図5
図6