(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 3/093 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
F16H3/093
(21)【出願番号】P 2020537945
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2018031059
(87)【国際公開番号】W WO2020039529
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000154347
【氏名又は名称】株式会社ユニバンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】榎本 博計
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 甫
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-050165(JP,A)
【文献】特開2010-285062(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066120(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な第1軸、第2軸、第3軸および第4軸を少なくとも備え、
前記第1軸は、前記第1軸に結合する第1ギヤと、第1クラッチの切換によって前記第1軸に結合または前記第1軸を空転する第2ギヤと、を備え、
前記第2軸は、前記第1ギヤにかみ合い前記第2軸に結合する第3ギヤと、第2クラッチの切換によって前記第2軸に結合または前記第2軸を空転する第4ギヤと、を備え、
前記第3軸は、前記第1ギヤにかみ合い前記第3軸に結合する第6ギヤと、第4クラッチの切換によって前記第3軸に結合または前記第3軸を空転する第7ギヤと、を備え、
前記第4軸は、前記第2ギヤ、前記第4ギヤ及び前記第7ギヤにかみ合い前記第4軸に結合する第9ギヤを備え
、
前記第1軸は動力が入力される入力軸であり、前記第1軸の動力を、前記第1ギヤ、前記第3ギヤ及び前記第6ギヤを介して前記第2軸および前記第3軸に伝達する変速機。
【請求項2】
前記第2軸は、第3クラッチの切換によって前記第2軸に結合または前記第2軸を空転する第5ギヤを備え、
前記第3軸は、第5クラッチの切換によって前記第3軸に結合または前記第3軸を空転する第8ギヤを備え、
前記第4軸は、前記第5ギヤ及び前記第8ギヤにかみ合い前記第4軸に結合する第10ギヤを備える請求項1記載の変速機。
【請求項3】
前記第4軸に平行な第5軸をさらに備え、
前記第4軸は、前記第4軸に結合する第11ギヤと、第6クラッチの切換によって前記第4軸に結合または前記第4軸を空転する第12ギヤと、を備え、
前記第5軸は、前記第12ギヤにかみ合い前記第5軸に結合する第14ギヤと、前記第11ギヤにかみ合い第8クラッチの切換によって前記第5軸に結合または前記第5軸を空転する第18ギヤと、を備える請求項1又は2に記載の変速機。
【請求項4】
前記第2軸および前記第3軸にそれぞれ駆動される油圧ポンプを備える請求項1から3のいずれかに記載の変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変速機に関し、特にトラクター等の農業機械や建設機械などの作業機に用いられる変速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクター等の農業機械や建設機械などの作業機に用いられる変速機として、特許文献1及び2には、3つのクラッチにより断接される3つのギヤと軸に結合する1つのギヤが配置された第1軸と、2つのクラッチにより断接される3つのギヤと軸に結合する1つのギヤが配置された第2軸と、軸に結合する3つのギヤが配置された第3軸と、を備える変速機が開示されている。各軸に配置されたギヤは常時かみ合い、クラッチの切換によりギヤ比が選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-252558号公報
【文献】国際公開第2018/066120号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1及び2に開示される技術では、第3軸にクラッチが配置されないで第1軸に3つのクラッチが配置されるので、第1軸の長さが長くなり、変速機のスペースが拡大するという問題点がある。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、省スペース化できる変速機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の変速機は、互いに平行な第1軸、第2軸、第3軸および第4軸を少なくとも備え、第1軸は、第1軸に結合する第1ギヤと、第1クラッチの切換によって第1軸に結合または第1軸を空転する第2ギヤと、を備え、第2軸は、第1ギヤにかみ合い第2軸に結合する第3ギヤと、第2クラッチの切換によって第2軸に結合または第2軸を空転する第4ギヤと、を備え、第3軸は、第1ギヤにかみ合い第3軸に結合する第6ギヤと、第4クラッチの切換によって第3軸に結合または第3軸を空転する第7ギヤと、を備え、第4軸は、第2ギヤ、第4ギヤ及び第7ギヤにかみ合い第4軸に結合する第9ギヤを備える。第1軸は動力が入力される入力軸であり、第1軸の動力を、第1ギヤ、第3ギヤ及び第6ギヤを介して第2軸および第3軸に伝達する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の変速機によれば、第1軸の動力は、第1ギヤ、第3ギヤの順に第2軸に伝達され、それと同時に第1ギヤ、第6ギヤの順に第3軸に伝達される。第1軸の動力は、第1クラッチをつなぐことにより、第2ギヤ、第9ギヤの順に第4軸に伝達される。第2軸の動力は、第2クラッチをつなぐことにより、第4ギヤ、第9ギヤの順に第4軸に伝達される。第3軸の動力は、第4クラッチをつなぐことにより、第7ギヤ、第9ギヤの順に第4軸に伝達される。第1軸から第3軸にそれぞれクラッチを配置することにより、各軸が過剰に長くならないようにできるので、省スペース化できる。
【0008】
請求項2記載の変速機によれば、第2軸の動力は、第3クラッチをつなぐことにより、第5ギヤ、第10ギヤの順に第4軸に伝達される。第3軸の動力は、第5クラッチをつなぐことにより、第8ギヤ、第10ギヤの順に第4軸に伝達される。第4軸へ動力が伝達される経路を増やすことができるので、請求項1の効果に加え、変速段数をさらに増やすことができる。
【0009】
請求項3記載の変速機によれば、第4軸に平行な第5軸をさらに備える。第4軸の動力は、第6クラッチをつなぐことにより、第12ギヤ、第14ギヤの順に第5軸に伝達され、第8クラッチをつなぐことにより、第11ギヤ、第18ギヤの順に第5軸に伝達される。第4軸から第5軸へ動力が伝達される経路を増やすことができるので、請求項1又は2の効果に加え、変速段数をさらに増やすことができる。
【0010】
請求項4記載の変速機によれば、油圧ポンプは第2軸および第3軸にそれぞれ駆動される。よって、請求項1から3のいずれかの効果に加え、多くの油圧ポンプを駆動できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態における変速機のスケルトン図である。
【
図3】
図2のIII-III線における変速機の断面図である。
【
図4】
図2のIV-IV線における変速機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施の形態における変速機10のスケルトン図である。変速機10はトラクター等の農業機械や建設機械などの作業機(図示せず)に搭載される。
【0013】
変速機10は、入力軸としての第1軸11、中間軸としての第2軸12、第3軸13、第4軸14及び第5軸15、出力軸としての第6軸16が平行に配置されている。エンジンやトルクコンバータ等の駆動源1の動力が入力される第1軸11にPTO(Power take-off)2が設けられている。第2軸12及び第3軸13の両端に、各軸とギヤとの連結を断続するクラッチ又は作業機のロータリや昇降装置等の油圧装置(図示せず)の油圧源である油圧ポンプ3,4がそれぞれ配置されている。変速機10は、第6軸16に設けられたフロント出力部材5及びリア出力部材6から動力を出力する。
【0014】
第1軸11は、第1ギヤ21が結合し、軸受(図示せず)により第2ギヤ22を回転自在に支持する。第2ギヤ22は、第1クラッチ51がつながれると第1軸11に結合し、第1クラッチ51が切られると第1軸11を空転する。
【0015】
第2軸12は、第3ギヤ23が結合し、軸受(図示せず)により第4ギヤ24及び第5ギヤ25を回転自在に支持する。第3ギヤ23は第1ギヤ21にかみ合う。第4ギヤ24は、第2クラッチ52がつながれると第2軸12に結合し、第2クラッチ52が切られると第2軸12を空転する。第5ギヤ25は、第3クラッチ53がつながれると第2軸12に結合し、第3クラッチ53が切られると第2軸12を空転する。
【0016】
第3軸13は、第6ギヤ26が結合し、軸受(図示せず)により第7ギヤ27及び第8ギヤ28を回転自在に支持する。第6ギヤ26は第1ギヤ21にかみ合う。第7ギヤ27は、第4クラッチ54がつながれると第3軸13に結合し、第4クラッチ54が切られると第3軸13を空転する。第8ギヤ28は、第5クラッチ55がつながれると第3軸13に結合し、第5クラッチ55が切られると第3軸13を空転する。
【0017】
第4軸14は、第9ギヤ29、第10ギヤ30及び第11ギヤ31が結合し、軸受(図示せず)により第12ギヤ32及び第13ギヤ33を回転自在に支持する。第9ギヤ29は、第2ギヤ22、第4ギヤ24及び第7ギヤ27にかみ合う。第10ギヤ30は、第5ギヤ25及び第8ギヤ28にかみ合う。第12ギヤ32は、第6クラッチ56がつながれると第4軸14に結合し、第6クラッチ56が切られると第4軸14を空転する。第13ギヤ33は、第7クラッチ57がつながれると第4軸14に結合し、第7クラッチ57が切られると第4軸14を空転する。
【0018】
第5軸15は、第14ギヤ34、第15ギヤ35、第16ギヤ36及び第17ギヤ37が結合し、軸受(図示せず)により第18ギヤ38及び第19ギヤ39を回転自在に支持する。第14ギヤ34は第12ギヤ32にかみ合う。第15ギヤ35は第13ギヤ33にかみ合う。第18ギヤ38は第11ギヤ31にかみ合う。第19ギヤ39は第10ギヤ30にかみ合う。第18ギヤ38は、第8クラッチ58がつながれると第5軸15に結合し、第8クラッチ58が切られると第5軸15を空転する。第19ギヤ39は、第9クラッチ59がつながれると第5軸15に結合し、第9クラッチ59が切られると第5軸15を空転する。
【0019】
第6軸16は、軸受(図示せず)により第20ギヤ40及び第21ギヤ41を回転自在に支持する。第20ギヤ40は第16ギヤ36にかみ合う。第21ギヤ41は第17ギヤ37にかみ合う。第20ギヤ40は、第10クラッチ60がつながれると第6軸16に結合し、第10クラッチ60が切られると第6軸16を空転する。第21ギヤ41は、第11クラッチ61がつながれると第6軸16に結合し、第11クラッチ61が切られると第6軸16を空転する。本実施形態では、第1クラッチ51から第11クラッチ61まで油圧駆動式の摩擦クラッチからなる。
【0020】
図2は変速機10の模式的な正面図である。
図3は
図2のIII-III線における変速機10の断面図であり、
図4は
図2のIV-IV線における変速機10の断面図である。
図2では各ギヤの歯の図示が省略されており、
図3及び
図4では各クラッチ51,54,55,56,57の内部の図示が省略されている。
【0021】
図2に示すように第1軸11の第1ギヤ21に、第2軸12の第3ギヤ23及び第3軸13の第6ギヤ26がかみ合い、第2軸12及び第3軸13に第1軸11の動力が伝達される。第1軸11の第2ギヤ22、第2軸12の第4ギヤ24、第3軸13の第7ギヤ27を介して第4軸14に動力が伝達されるので、第1軸11から第4軸14までの軸直角方向の寸法を抑制できる。
【0022】
図3及び
図4に示すように第1軸11の第2ギヤ22、及び、第3軸13の第7ギヤ27が、第4軸14の第9ギヤ29にかみ合うので、第2ギヤ22にかみ合うギヤと、第7ギヤ27にかみ合うギヤとを、それぞれ第4軸14に配置する場合に比べて、第4軸14に配置されるギヤの数を少なくできる。また、各軸に配置されるクラッチの数は2つ以下なので、第1軸11から第4軸14までの軸直角方向および軸方向の寸法を抑制できる。よって、変速機10を省スペース化できる。その結果、作業機(図示せず)に変速機10を搭載し易くできる。
【0023】
図1に戻って説明する。変速機10は、第1軸11から第6軸16まで全ての軸にクラッチが配置されている。クラッチは、第1軸11に1つ配置され、第2軸12から第6軸16にそれぞれ2つ配置されている。各軸に配置されるクラッチの数を2つ以下にできるので、クラッチが配置される各軸の長さを抑制できる。
【0024】
図5は変速機10のクラッチ締結の組合せを示す図表である。変速機10は第1クラッチ51から第11クラッチ61(
図5に1~11と記す)を切り換え、前進32速(F1~F32)、後進8速(R1~R8)の変速を行うことができる。
図5は各変速段において締結するクラッチが×で示される。各変速段において同時につながれるクラッチの数は3個である。変速機10は、第1クラッチ51から第11クラッチ61の切り換え操作を行うことによって所定のギヤ比を選択できる。
【0025】
ニュートラルのときは、変速機10は、第1クラッチ51、第2クラッチ52、第3クラッチ53、第4クラッチ54及び第5クラッチ55を切る。これにより、第1軸11、第2軸12及び第3軸13以外の他の軸に動力が伝達されなくなる。第2軸12に結合する第3ギヤ23及び第3軸13に結合する第6ギヤ26は、第1軸11に結合する第1ギヤ21にかみ合うので、第1軸11が回転するときは、第2軸12及び第3軸13は常に回転する。従って、第2軸12及び第3軸13の両端に接続された油圧ポンプ3,4は、第1軸11が回転するときは常に作動する。
【0026】
前進1速(F1)のときは、変速機10は、第2クラッチ52、第6クラッチ56及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第4ギヤ24、第9ギヤ29、第12ギヤ32、第14ギヤ34、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0027】
前進2速(F2)のときは、変速機10は、第3クラッチ53、第6クラッチ56及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第5ギヤ25、第10ギヤ30、第12ギヤ32、第14ギヤ34、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0028】
前進3速(F3)のときは、変速機10は、第4クラッチ54、第6クラッチ56及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第7ギヤ27、第9ギヤ29、第12ギヤ32、第14ギヤ34、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0029】
前進4速(F4)のときは、変速機10は、第5クラッチ55、第6クラッチ56及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第8ギヤ28、第10ギヤ30、第12ギヤ32、第14ギヤ34、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0030】
前進5速(F5)のときは、変速機10は、第2クラッチ52、第8クラッチ58及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第4ギヤ24、第9ギヤ29、第11ギヤ31、第18ギヤ38、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0031】
前進6速(F6)のときは、変速機10は、第3クラッチ53、第8クラッチ58及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第5ギヤ25、第10ギヤ30、第11ギヤ31、第18ギヤ38、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0032】
前進7速(F7)のときは、変速機10は、第4クラッチ54、第8クラッチ58及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第7ギヤ27、第9ギヤ29、第11ギヤ31、第18ギヤ38、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0033】
前進8速(F8)のときは、変速機10は、第5クラッチ55、第8クラッチ58及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第8ギヤ28、第10ギヤ30、第11ギヤ31、第18ギヤ38、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0034】
前進9速(F9)のときは、変速機10は、第2クラッチ52、第9クラッチ59及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第4ギヤ24、第9ギヤ29、第10ギヤ30、第19ギヤ39、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0035】
前進10速(F10)のときは、変速機10は、第3クラッチ53、第9クラッチ59及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第5ギヤ25、第10ギヤ30、第19ギヤ39、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に7個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0036】
前進11速(F11)のときは、変速機10は、第4クラッチ54、第9クラッチ59及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第7ギヤ27、第9ギヤ29、第10ギヤ30、第19ギヤ39、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0037】
前進12速(F12)のときは、変速機10は、第5クラッチ55、第9クラッチ59及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第8ギヤ28、第10ギヤ30、第19ギヤ39、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に7個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0038】
前進13速(F13)のときは、変速機10は、第2クラッチ52、第7クラッチ57及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第4ギヤ24、第9ギヤ29、第13ギヤ33、第15ギヤ35、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0039】
前進14速(F14)のときは、変速機10は、第3クラッチ53、第7クラッチ57及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第5ギヤ25、第10ギヤ30、第13ギヤ33、第15ギヤ35、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0040】
前進15速(F15)のときは、変速機10は、第4クラッチ54、第7クラッチ57及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第7ギヤ27、第9ギヤ29、第13ギヤ33、第15ギヤ35、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0041】
前進16速(F16)のときは、変速機10は、第5クラッチ55、第7クラッチ57及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第8ギヤ28、第10ギヤ30、第13ギヤ33、第15ギヤ35、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0042】
前進17速(F17)のときは、変速機10は、第2クラッチ52、第6クラッチ56及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第4ギヤ24、第9ギヤ29、第12ギヤ32、第14ギヤ34、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0043】
前進18速(F18)のときは、変速機10は、第3クラッチ53、第6クラッチ56及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第5ギヤ25、第10ギヤ30、第12ギヤ32、第14ギヤ34、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0044】
前進19速(F19)のときは、変速機10は、第4クラッチ54、第6クラッチ56及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第7ギヤ27、第9ギヤ29、第12ギヤ32、第14ギヤ34、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0045】
前進20速(F20)のときは、変速機10は、第5クラッチ55、第6クラッチ56及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第8ギヤ28、第10ギヤ30、第12ギヤ32、第14ギヤ34、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0046】
前進21速(F21)のときは、変速機10は、第2クラッチ52、第8クラッチ58及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第4ギヤ24、第9ギヤ29、第11ギヤ31、第18ギヤ38、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0047】
前進22速(F22)のときは、変速機10は、第3クラッチ53、第8クラッチ58及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第5ギヤ25、第10ギヤ30、第11ギヤ31、第18ギヤ38、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0048】
前進23速(F23)のときは、変速機10は、第4クラッチ54、第8クラッチ58及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第7ギヤ27、第9ギヤ29、第11ギヤ31、第18ギヤ38、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0049】
前進24速(F24)のときは、変速機10は、第5クラッチ55、第8クラッチ58及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第8ギヤ28、第10ギヤ30、第11ギヤ31、第18ギヤ38、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0050】
前進25速(F25)のときは、変速機10は、第2クラッチ52、第9クラッチ59及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第4ギヤ24、第9ギヤ29、第10ギヤ30、第19ギヤ39、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0051】
前進26速(F26)のときは、変速機10は、第3クラッチ53、第9クラッチ59及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第5ギヤ25、第10ギヤ30、第19ギヤ39、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に7個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0052】
前進27速(F27)のときは、変速機10は、第4クラッチ54、第9クラッチ59及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第7ギヤ27、第9ギヤ29、第10ギヤ30、第19ギヤ39、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0053】
前進28速(F28)のときは、変速機10は、第5クラッチ55、第9クラッチ59及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第8ギヤ28、第10ギヤ30、第19ギヤ39、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に7個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0054】
前進29速(F29)のときは、変速機10は、第2クラッチ52、第7クラッチ57及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第4ギヤ24、第9ギヤ29、第13ギヤ33、第15ギヤ35、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0055】
前進30速(F30)のときは、変速機10は、第3クラッチ53、第7クラッチ57及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第3ギヤ23、第5ギヤ25、第10ギヤ30、第13ギヤ33、第15ギヤ35、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0056】
前進31速(F31)のときは、変速機10は、第4クラッチ54、第7クラッチ57及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第7ギヤ27、第9ギヤ29、第13ギヤ33、第15ギヤ35、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0057】
前進32速(F32)のときは、変速機10は、第5クラッチ55、第7クラッチ57及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第1ギヤ21、第6ギヤ26、第8ギヤ28、第10ギヤ30、第13ギヤ33、第15ギヤ35、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に8個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0058】
後進1速(R1)のときは、変速機10は、第1クラッチ51、第6クラッチ56及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第2ギヤ22、第9ギヤ29、第12ギヤ32、第14ギヤ34、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に6個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0059】
後進2速(R2)のときは、変速機10は、第1クラッチ51、第8クラッチ58及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第2ギヤ22、第9ギヤ29、第11ギヤ31、第18ギヤ38、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に6個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0060】
後進3速(R3)のときは、変速機10は、第1クラッチ51、第9クラッチ59及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第2ギヤ22、第9ギヤ29、第10ギヤ30、第19ギヤ39、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に6個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0061】
後進4速(R4)のときは、変速機10は、第1クラッチ51、第7クラッチ57及び第10クラッチ60をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第2ギヤ22、第9ギヤ29、第13ギヤ33、第15ギヤ35、第16ギヤ36、第20ギヤ40の順に6個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0062】
後進5速(R5)のときは、変速機10は、第1クラッチ51、第6クラッチ56及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第2ギヤ22、第9ギヤ29、第12ギヤ32、第14ギヤ34、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に6個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0063】
後進6速(R6)のときは、変速機10は、第1クラッチ51、第8クラッチ58及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第2ギヤ22、第9ギヤ29、第11ギヤ31、第18ギヤ38、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に6個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0064】
後進7速(R7)のときは、変速機10は、第1クラッチ51、第9クラッチ59及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第2ギヤ22、第9ギヤ29、第10ギヤ30、第19ギヤ39、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に6個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0065】
後進8速(R8)のときは、変速機10は、第1クラッチ51、第7クラッチ57及び第11クラッチ61をつなぎ、他のクラッチを切る。第1軸11の動力は、第2ギヤ22、第9ギヤ29、第13ギヤ33、第15ギヤ35、第17ギヤ37、第21ギヤ41の順に6個のギヤを経由して第6軸16に伝達される。
【0066】
変速機10は、通常、農地等の作業場所では低速段から中速段までが主に使われ、作業場所までの移動時には高速段が主に使われる。変速機10は多くの変速段数が得られるので、移動時・作業時の両方ともに最適なギヤ比の選択が可能となる。変速機10は、第1軸11のトルクを第6軸16へ伝達するために最大8個のギヤを経由するだけなので、ギヤのかみ合いによる損失を軽減できる。
【0067】
変速機10はいずれの変速段においても、第6軸16の第20ギヤ40、第21ギヤ41のいずれかにトルクが入力される。よって、第6軸16上の複数のギヤにトルクがかかる場合に比べて、トルクの大きな第6軸16上のギヤを支持する軸受(図示せず)の負荷を軽減できる。そのため、第6軸16上の複数のギヤにトルクが入力される場合に比べて、第6軸16上のギヤを支持する軸受を長寿命化できる。
【0068】
第2軸12及び第3軸13の両端に油圧ポンプ3,4がそれぞれ接続されているので、多く(本実施形態では4つ)の油圧ポンプ3,4を駆動できる。なお、第2軸12及び第3軸13に接続される油圧ポンプ3,4の数は、1~4台の範囲で適宜設定できる。
【0069】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0070】
実施形態では、変速機10の前進32速、後進8速の変速段について説明したが、これは一例であり、必ずしもこれに限られるものではない。段間比や操作性を考慮して、上記の変速段の一部を省略すること(例えば、
図5においてF17-F19を省略して前進29速、後進8速とすること等)は当然可能である。
【0071】
実施形態では、第6軸16に設けられたフロント出力部材5及びリア出力部材6から動力を出力する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第6軸16を省略して、フロント出力部材5及びリア出力部材6を第5軸15に設けることは当然可能である。また、第5軸15及び第6軸16を省略して、フロント出力部材5及びリア出力部材6を第4軸14に設けることは当然可能である。
【0072】
実施形態では、油圧駆動式の摩擦クラッチをつないでギヤを各軸と連結する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。摩擦クラッチに代えて、ドグクラッチ等のかみ合いクラッチを採用することは当然可能である。また、油圧駆動式のクラッチに代えて、非油圧系のクラッチを採用することは当然可能である。シンクロナイザを配置することは当然可能である。非油圧系のクラッチを採用して油圧駆動式のクラッチの数を減らすことにより、油圧駆動式のクラッチに特有の引き摺り抵抗を小さくできる。
【符号の説明】
【0073】
3,4 油圧ポンプ
10 変速機
11 第1軸、 12 第2軸、 13 第3軸、 14 第4軸、 15 第5軸
21 第1ギヤ、 22 第2ギヤ、 23 第3ギヤ、 24 第4ギヤ、 25 第5ギヤ、 26 第6ギヤ、 27 第7ギヤ、 28 第8ギヤ、 29 第9ギヤ、 30 第10ギヤ、 31 第11ギヤ、 32 第12ギヤ、 34 第14ギヤ、 38 第18ギヤ
51 第1クラッチ、 52 第2クラッチ、 54 第4クラッチ、 56 第6クラッチ