(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
B62D25/20 C
(21)【出願番号】P 2021044078
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 武宏
(72)【発明者】
【氏名】坪井 渉
(72)【発明者】
【氏名】中本 直希
(72)【発明者】
【氏名】穴田 竜也
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081280(JP,A)
【文献】特開2009-137435(JP,A)
【文献】特開2012-081844(JP,A)
【文献】特開2016-185803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延設されたフロントサイドフレームを有する車体前部構造において、
前記フロントサイドフレームは、
車体前後方向の後方側に、上下に延びるフランジを有してハット断面形状を呈するハット断面部と、
前記ハット断面部の前方側に、車幅方向外側に向かって拡がる突出部を有して成るU字断面形状の第1U字断面部と、
前記第1U字断面部の外壁に、当該第1U字断面部の上下方向の断面形状が拡大されるように、別体の矩形板状の上下断面拡大部を重ね合わせて成る第2U字断面部と、
前記第1U字断面部及び前記第2U字断面部によって形成される開口を閉塞するバックプレートとを備える
ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記上下断面拡大部は、前記フロントサイドフレームの車体後方側から前端に向かって上下方向に徐々に開くラッパ形状を成す
ことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記上下断面拡大部は、前記フロントサイドフレームの車体後方側から前端に向かって車幅外側に徐々に開くラッパ形状を成す
ことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記ハット断面部は、前突時に前記フロントサイドフレームを車幅方向に折り曲げる起点となる複数の折れ点を有し、
前記折れ点は、前後方向に互いに間隔を空けて少なくとも3つ設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記フロントサイドフレームの車幅外側に配備され、車体前後方向にアーチ状に湾曲するアッパメンバを更に有し、
前記アッパメンバにおいて前方側に下り傾斜する前端部は、前記フロントサイドフレームの近傍まで車幅内側方向に向けて折り曲げられ、
折り曲げられた前記前端部の側面と、当該フロントサイドフレームの前端側において外側にラッパ形状に突き出る突出部の側面とで平面視でV字形状となるV字空間が形成され、
前記V字空間に、前記前端部と前記突出部に架設された接合部材を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記接合部材は、側面視でV字状のパネルであって、車幅外側が前記アッパメンバの前端部の下面に結合され、車幅内側に上下方向に折り曲げ形成された側方曲げフランジを備え、側方曲げフランジが前記フロントサイドフレームの突出部の外面に結合されている
ことを特徴とする請求項5に記載の車体前部構造。
【請求項7】
前記接合部材は、前記フロントサイドフレームの突出部の下方側と、前記アッパメンバの前端部の下方側とを接合する第1接合部材と、前記フロントサイドフレームの突出部の上方側と、前記アッパメンバの前端部の上方側とを接合する第2接合部材とを備える
ことを特徴とする請求項5に記載の車体前部構造。
【請求項8】
前記第2接合部材は、前記フロントサイドフレームの突出部の上壁及び、前記バックプレートによる当該突出部の外側壁と、前記アッパメンバの車幅内側方向の内側壁とを接合して成る
ことを特徴とする請求項7に記載の車体前部構造。
【請求項9】
前記第2接合部材は、前記フロントサイドフレームの内部を、車幅方向の左右に分割するように車体前後方向に延在するバルクヘッドの上端側と結合する
ことを特徴とする請求項7に記載の車体前部構造。
【請求項10】
前記バルクヘッドは、前記フロントサイドフレームの内部を、当該フロントサイドフレームの外側壁から離間しながら外側壁に沿って後方側へ延在し、延在した後端部が当該フロントサイドフレームの内側壁に結合されている
ことを特徴とする請求項9に記載の車体前部構造。
【請求項11】
前記バルクヘッドの下端部は、前記フロントサイドフレームの外側壁の下端部と結合されている
ことを特徴とする請求項10に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体両側のフロントサイドフレームの前端部外側のSOT(Small Overlap)衝突での衝突エネルギーを吸収する車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
SOT衝突は、相手車両と角同士が当たる等のラップ量が少ない衝突である。SOT衝突での衝突エネルギーを吸収する車体前部構造として、例えば特許文献1に記載の構造がある。この構造は、車体の前方両側に配備されたアッパメンバの前部を、アッパメンバよりも車幅方向内側に配設されたフロントサイドフレームの前端部下面に上下に重ね合わせて結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許4875508号公報
【文献】特許6546065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造の車両では、アッパメンバの前部をフロントサイドフレーム(フレームともいう)の前端部下面に上下に重ね合わせて結合されているので、フレーム前端の上下の高さが高くなっており、自車より低い相手車両の前端が自車の前端に当たらず、すれ違ってしまうことを抑制できる。言い換えれば、すれ違いを抑制できる。この場合、自車のフレーム前端に相手車両が当たるのでフレームが折れ曲がって衝突エネルギーを吸収できる。しかし、フレームの外側でのSOT衝突ではフレームを折ることができず、衝突エネルギーを吸収できない。
【0005】
特許文献2に記載のような構造では、フロントサイドフレームの車両前後方向の複数の離間位置に折れ曲がり易い箇所が設けてある。このため、SOT衝突時にフレームを折ることができる。しかし、フレーム前端の上下の高さが低いので、自車と上下高さが異なる相手車両とのすれ違いを抑制できず、フレームを折ることができない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、自車のフロントサイドフレームの前端と高さが異なる相手車両とのすれ違いを抑制できると共に、フロントサイドフレームの前端部外側のSOT衝突による衝突エネルギーを吸収できる車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、車体前後方向に延設されたフロントサイドフレームを有する車体前部構造において、前記フロントサイドフレームは、車体前後方向の後方側に、上下に延びるフランジを有してハット断面形状を呈するハット断面部と、前記ハット断面部の前方側に、車幅方向外側に向かって凹形状の両端が拡がる突出部を有して成るU字断面形状のU字断面部と、前記U字断面部の外壁に、当該U字断面部の上下方向の断面形状が拡大されるように、別体の矩形板状の上下断面拡大部を重ね合わせて成る第2U字断面部と、前記U字断面部及び前記第2U字断面部によって形成される開口を閉塞するバックプレートとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、自車のフロントサイドフレームの前端と高さが異なる相手車両とのすれ違いを抑制できると共に、フロントサイドフレームの前端部外側のSOT衝突による衝突エネルギーを吸収できる車体前部構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の自動車の車体前部構造の側面図である。
【
図2】
図1に示す矢印IIで指し示す車体斜め前方側から車体前側を矢視した構造を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す連結プレート16を外した際の構造を示す斜視図である。
【
図5】
図1のV-V断面を上から見た断面図である。
【
図6】フロントサイドフレームの3点の折れ点を示す平面図である。
【
図7】車体左側のフロントサイドフレーム及びアッパメンバの平面図である。
【
図8】アッパメンバを背面側(下面側)から見た構成を示す斜視図である。
【
図10】
図9に矢印Xで示す下方側から斜めに見上げた、フロントサイドフレーム及びアッパメンバの接合部材等の背面の構成を示す斜視図である。
【
図12】アッパメンバの前端部及びフロントサイドフレームのバックプレートを含む突出部の車幅方向切断面と連結プレートとを車体後方側から見た斜視図である。
【
図13】アッパメンバの前端部とフロントサイドフレームの突出部とを第1接合部材及び第2接合部材により上下で挟み接合した構成を示す斜視図である。
【
図14】フロントサイドフレーム内を外側壁に離間しながら外側壁に沿って後方側へ延在するバルクヘッドを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態の構成>
本発明の実施形態について、
図1~
図14を参照して詳細に説明する。説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図中において、矢印で示す「前後」は自動車(図示せず)の前後方向、「左右」は自動車の幅方向、「上下」は鉛直上下方向をそれぞれ示している。
【0011】
図1は本実施形態の自動車の車体前部構造の側面図である。
図2は
図1に示す矢印IIで指し示す車体斜め前方側から車体前側を矢視した構造を示す斜視図である。
図3は
図2に示す連結プレート16を外した際の構造を示す斜視図である。
図4は
図1のIV-IV断面図である。
図5は
図1のV-V断面を上から見た断面図である。
【0012】
図1に示す車体前部構造10は、車体の両側に直線状に延設されたフロントサイドフレーム11(フレーム11)と、両側のフレーム11の車幅方向外側(外側ともいう)に延設されたアッパメンバ12とを備える。アッパメンバ12は、図示せぬタイヤの上方から車体前方部分に掛けてアーチ状に湾曲し、
図3に示すように、アッパメンバ12の車体における前端側が、フレーム11の前端側と隣り合わせで配設されている。
【0013】
図1に示すフレーム11は、フレーム11における前端よりも後方側に、上下に延びるフランジ11a,11bを有して概略ハット断面形状(
図4参照)となったハット断面部11cを備える。更に、フレーム11は、ハット断面部11cの前方側に、
図3に示すように、外側に向かって凹形状の両端が拡がる突出部11dを有して成る概略U字断面形状の第1U字断面部11eを備える。第1U字断面部11eには、ハット断面部11cのようなフランジ11a,11bが無い。
【0014】
また、フレーム11は、第1U字断面部11eの外壁の下方側に、第1U字断面部11eの上下方向の断面形状が拡大されるように、別体の矩形板状の上下断面拡大部13を重ね合わせて成る第2U字断面部14を備える。
【0015】
更に、フレーム11は、第1U字断面部11e及び第2U字断面部14によって形成される開口を閉塞するバックプレート15を備え、バックプレート15による開口の閉塞により車体前後方向に延在する中空フレーム形状となっている。更に、フレーム11の第2U字断面部14の前端とアッパメンバ12の前端とが、
図2に示すように、連結プレート16で連結されている。
【0016】
図1に示すように、上下断面拡大部13は、フレーム11の車体後方側から前端に向かって上下方向に徐々に開くラッパ形状を成している。ラッパ形状により相手車両とのすれ違い衝突時に、この荷重入力(矢印Y1)がラッパ形状をスムーズに伝わって、フレーム11の後方側のハット断面部11cへ伝達される。
【0017】
図5に示すように、上下断面拡大部13は、フレーム11の車体後方側から前端に向かって外側に徐々に開くラッパ形状を成している。このラッパ形状により、相手車両とのアッパメンバ12へのSOT衝突時に、SOT衝突による斜め方向の荷重入力がラッパ形状をスムーズに伝わって、フレーム11の後方側の折れ点11g,11h,11i(
図6)に向けて集中的に伝達される。
【0018】
図6のフレーム11を上から見た平面図に示すように、フレーム11のハット断面部11cは、車体前後方向に少なくとも3点の折れ点11g,11h,11iを有する。各折れ点11g,11h,11iは、く字状の谷部分であり、矢印Y2で示す方向の相手車両との衝突時に、破線11Zで示すようにフレーム11がジグザグ形状に折れ曲がるようになっている。更に説明すると、その衝突時に、ハット断面部11cの折れ点11gが矢印Ygで示す車幅方向の車体外側位置に折れ曲がり、折れ点11hが矢印Yhで示す車幅方向の車体内側位置に折れ曲がることで、フレーム11Zのようにジグザグ形状に折れ曲がる。
【0019】
図7は車体左側のフレーム11及びアッパメンバ12を上から見た平面図である。フレーム11よりも車幅方向外側のアッパメンバ12は、車体後方側からアーチ状に湾曲して下り傾斜する前端部12aを、矢印Y3で示す車幅内側方向に向けて折り曲げてある。
【0020】
フレーム11の前端側において、外側にラッパ形状に突き出る突出部11dの開口を閉塞する鉛直姿勢のバックプレート15(
図3)による突出部11dの側面11d1と、アッパメンバ12の前端部12aの側面12a1とでV字空間が形成されている。このV字空間を下方側から塞ぐ状態に接合部材17が、突出部11d及び前端部12aの下側に架設されている。
【0021】
接合部材17は、
図8のアッパメンバ12を背面側(下面側)から見た構成の通り、アッパメンバ12及びバックプレート15(突出部11dの側面11d1)に架設されると共に、連結プレート16にボルト及びナットで固定されている。
【0022】
図8のIX-IX断面図である
図9に示すように、接合部材17は、アッパメンバ12の前端部分の下面側に設けられ、接合部材17の前端部分が前方側に折れ曲がった前方曲げフランジ17aを備える。
【0023】
前方曲げフランジ17aの車体前方側である前面側は連結プレート16に当接され、前方曲げフランジ17aの裏面側(背面側)には、バンパビーム締結部を構成するナット18が固定されている。ナット18のネジ穴と重なる連結プレート16の位置には貫通穴が形成されており、この貫通穴を介して図示せぬバンパビームを固定するボルトが挿通され、ナット18に螺合固定される。
【0024】
接合部材17及びアッパメンバ12等の背面を、矢印Xで示すように、下方側から斜めに見上げた構成を
図10に示す。
【0025】
図10に示すように、アッパメンバ12は車幅方向の内側を向く断面L字形状の内側部材12cと、外側を向く断面L字形状の外側部材12dとを断面四角中空状に組み合わせた形状を成す。接合部材17は、右側からの側面視で、破線L5で示すように、V字状のパネルであって、アッパメンバ12の前端部12aの内側部材12cに結合されている。更に、接合部材17は、車体側方側に折れ曲がった側方曲げフランジ17bを備え、この側方曲げフランジ17bが、フレーム11の突出部11dを構成するバックプレート15の外面に結合されている。
【0026】
図10のXI-XI断面図である
図11に示すように、接合部材17は、アッパメンバ12の少なくとも一つの壁面としての内側部材12cの下面(下壁)を形成している。更に説明すると、アッパメンバ12の前端部12aは、水平に伸びる水平部を先端に備え、その水平部の下面(下壁)が接合部材17で構成されている。即ち、接合部材17は、
図10に示すアッパメンバ12の外側部材12dと、内側部材12cとに架設(
図11)され、内側部材12cとしての一壁面を形成している。
【0027】
図12はアッパメンバ12の前端部12a、及びフレーム11のバックプレート15を含む突出部11dの車幅方向切断面と、連結プレート16とを、車体後方側から見た斜視図である。
【0028】
図12に示すように、接合部材17は、フレーム11の突出部11dであるバックプレート15の下方側と、アッパメンバ12の前端部12aの下方側とを接合する第1接合部材17dを備える。更に、接合部材17は、フレーム11の突出部11dの上方側と、アッパメンバ12の前端部12aの上方側とを接合する第2接合部材17eを備える。
【0029】
第2接合部材17eは、
図3に示すように、フレーム11の突出部11dの上壁11j及び、バックプレート15による突出部11dの外側壁11kと、アッパメンバ12の内側壁12cとを接合している。第2接合部材17eは、
図12に示すように、突出部11dの上壁11jと接合されることで上壁11jの外側部分を構成している。この外側部分にバックプレート15が接合されている。
【0030】
更に、
図3に示すように、フレーム11は、この内部を車幅方向の左右に分割するように車体前後方向に沿って鉛直状に立設して延在するバルクヘッド19を備える。第2接合部材17eは、バルクヘッド19の上端側とも結合した構造となっている。
【0031】
図3に示すように、フレーム11は、上述した外側壁11kと、車幅内側方向を向く内側壁11mとを有する。バルクヘッド19は、フレーム11内を外側壁11kに離間しながら外側壁11kに沿って後方側へ延在し、
図14に示すように、その延在した後端部19bが内側壁11mに結合されている。その後端部19bは、この端が、破線で示すフレーム11の折れ点11nに位置する状態に結合されている。
【0032】
また、
図14に示すように、フレーム11の突出部11dは、後方側から前方側に向かって、双方向矢印H1,H2で示すように、上下の高さが高くなっている。
【0033】
図3に示すように、バルクヘッド19の下端部19aは、フレーム11の外側壁11kの下端部と結合されている。この結合により、フレーム11の車体前方側の突出部11dが上下に延びる大きな断面形状となる。
【0034】
<実施形態の効果>
次に、上述した本実施形態の車体前部構造の特徴構成及びその効果について説明する。車体前部構造10は、車幅方向内側に車体前後方向に延設されたフロントサイドフレーム11を有する。
【0035】
(1)車体前部構造10において、フレーム11は、車体前後方向の後方側に、上下に延びるフランジ11a,11bを有してハット断面形状を呈するハット断面部11cと、ハット断面部11cの前方側に、車幅方向外側に向かって拡がる突出部11dを有して成るU字断面形状の第1U字断面部11eとを備える。更に、フレーム11は、第1U字断面部11eの外壁に、第1U字断面部11eの上下方向の断面形状が拡大されるように、別体の矩形板状の上下断面拡大部13を重ね合わせて成る第2U字断面部14と、第1U字断面部11e及び第2U字断面部14によって形成される開口を閉塞するバックプレート15とを備える構成とした。
【0036】
この構成によれば、フレーム11の第2U字断面部14の構成要素である上下断面拡大部13が別体であるため、フレーム11のプレス金型をコスト高となる大型化や複雑化する必要が無くなる。また、フレーム11の前端側の第2U字断面部14が上下に拡大されて高くなっているので、自車と上下高さが異なる相手車両とのすれ違いを抑制できる。このため、自車のフレーム11の前端に相手車両が当たるのでフレーム11が折れ曲がって衝突エネルギーを吸収できる。
【0037】
また、フレーム11が、バックプレート15による第1U字断面部11e及び第2U字断面部14の開口の閉塞により車体前後方向に延在する中空フレーム形状となっている。この中空フレーム形状では、フレーム11の前端への衝突時(
図3に示す矢印Y1)に衝突エネルギーが第2U字断面部14及びハット断面部11cの順に効率良く伝わる。このため、バックプレート15とアッパメンバ12とを連結することで、アッパメンバ12にSOT衝突が生じた際にフレーム11を折り曲げて衝突エネルギーを吸収できる。
【0038】
(2)上下断面拡大部13は、フレーム11の車体後方側から前端に向かって上下方向に徐々に開くラッパ形状を成す構成とした。
【0039】
この構成によれば、相手車両とのすれ違い衝突時に、この荷重入力が上下断面拡大部13のラッパ形状を効率良く伝わって行く。このため、衝突時の入力荷重を効率良くフレーム11の後方側のハット断面部11cへ伝達できるので、フレーム11を折り曲げて衝突エネルギーを吸収できる。
【0040】
(3)上下断面拡大部13は、フレーム11の車体後方側から前端に向かって車幅外側に徐々に開くラッパ形状を成す構成とした。
【0041】
この構成によれば、そのラッパ形状により、相手車両とのアッパメンバ12へのSOT衝突時に、SOT衝突による斜め方向の荷重入力がラッパ形状をスムーズに伝わって、フレーム11の後方側の折れ点に向けて効率良く伝達できる。このため、フレーム11を折り曲げて衝突エネルギーを吸収できる。
【0042】
(4)フレーム11のハット断面部11cは、前突時にフレーム11を車幅方向に折り曲げる起点となる複数の折れ点11g,11h,11iを有し、折れ点11g,11h,11iは、前後方向に互いに間隔を空けて少なくとも3つ設けられている構成とした。
【0043】
この構成によれば、自車の相手車両との衝突時に、ハット断面部11cの折れ点11g,11h,11iが折れ曲がることで、フレーム11が、フレーム11Zで示すようにジグザグ形状に折れ曲がる。この折れ曲がりにより衝突エネルギーを吸収できる。
【0044】
(5)フレーム11の車幅外側に配備され、車体前後方向にアーチ状に湾曲するアッパメンバ12を更に有し、アッパメンバ12において前方側に下り傾斜する前端部12aは、フレーム11の近傍まで車幅内側方向に向けて折り曲げられ、折り曲げられた前端部12aの側面と、フレーム11の前端側において外側にラッパ形状に突き出る突出部11dの側面とで平面視で略V字形状となるV字空間が形成されている。V字空間に、前端部12aと突出部11dに架設された接合部材17を備える構成とした。
【0045】
この構成によれば、アッパメンバ12の前端部12aの側面12a1と、フレーム11の突出部11dの側面11d1とが車体前方側から後方側に向かって拡がるV字形状となっているので、SOT衝突時の荷重を、
図7に矢印Y4,Y5で示すように、フレーム11とアッパメンバ12とに分散できる。このため、フレーム11とアッパメンバ12との板厚を薄くして軽量化を図ることができる。
【0046】
また、接合部材17をアッパメンバ12の側面12a1とフレーム11の側面11d1とに架設して接合するので強固に接合できる。このため、接合部材17の車体前後方向の長さL3を、接合部材17の車体前後方向の後端から車体前端までの長さL4よりも短くできるので、車体前後方向の長さを短くできる。
【0047】
(6)接合部材17は、側面視でV字状のパネルであって、車幅外側がアッパメンバ12の前端部12aの下面に結合され、車幅内側に上下方向に折り曲げ形成された側方曲げフランジ17bを備え、側方曲げフランジ17bがフレーム11の突出部11dの外面に結合されている構成とした。
【0048】
この構成によれば、
図10に示すナット18を用いたバンパビーム締結部からの矢印Y4で示す相手車両との衝突時の荷重入力は、矢印Y5及びY6で示すように、アッパメンバ12の前端部12aの下面と、フレーム11の突出部11d(バックプレート15)の外面とに、側方曲げフランジ17bを介して荷重分散する。このため、SOT衝突の大荷重をフレーム11の突出部11dの外面に作用させることができるので、フレーム11を折り曲げて衝突エネルギーを吸収できる。
【0049】
(7)接合部材17は、フレーム11の突出部11d(バックプレート15)の下方側と、アッパメンバ12の前端部12aの下方側とを接合する第1接合部材17dと、フレーム11の突出部11dの上方側と、アッパメンバ12の前端部12aの上方側とを接合する第2接合部材17eとを備える構成とした。
【0050】
この構成によれば、第1接合部材17d及び第2接合部材17eの双方により、アッパメンバ12の前端部12aとフレーム11の突出部11dとを上下で挟んで接合している。このため、双方の結合強度が高まるので、
図13に側面視で水平線L7で示す水平なフレーム11に対して、アッパメンバ12が傾斜線L8で示す上向きに傾斜した構造であっても、SOT衝突荷重を、水平線L7及び傾斜線L8で示すように、V字分散することが容易となる。
【0051】
(8)第2接合部材17eは、フレーム11の突出部11dの上壁11j及び、バックプレート15による突出部11dの外側壁11kと、アッパメンバ12の内側壁12cとを接合して成る構成とした。
【0052】
この構成によれば、フレーム11の突出部11dの上壁11jの一部を、第2接合部材17eが担うため、フレーム11の軽量化を図ることができる。
【0053】
(9)第2接合部材17eは、フレーム11の内部を、車幅方向の左右に分割するように車体前後方向に延在するバルクヘッド19の上端側と結合する構成とした。
【0054】
この構成によれば、フレーム11の前端及び突出部11dの強度並びに剛性が、バルクヘッド19で向上するので、SOT衝突荷重による変形を抑制しながら、後方の折れ点11g,11h,11iに荷重伝達できる。
【0055】
(10)バルクヘッド19は、フレーム11の内部を、フレーム11の外側壁11kから離間しながら外側壁11kに沿って後方側へ延在し、延在した後端部19bがフレーム11の内側壁11mに結合されている構成とした。
【0056】
この構成によれば、フレーム11の突出部11dに入力されるSOT衝突荷重(
図1に示す矢印Y1)を、バルクヘッド19と外側壁11kにより、後方の折れ点11nの内外側壁11m,11kに荷重伝達できる。このため、フレーム11を内側凸状等に容易に折り曲げ、衝撃エネルギーを吸収できる。
【0057】
(11)
バルクヘッド19の下端部19aは、フレーム11の外側壁11kの下端部と結合されている構成とした。
【0058】
この構成によれば、フレーム11の突出部11dが上下に延びる大きな断面形状となるので、SOT衝突(矢印Y1)の入力量を増大できる。
【0059】
以上、本実施形態に係る車体構造について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 車体前部構造
11 フロントサイドフレーム
11Z ジグザグ形状のフロントサイドフレーム
11a,11b フランジ
11c ハット断面部
11d 突出部
11d1 側面
11e U字断面部
11g,11h,11i,11n 折れ点
11j 上壁
11k 外側壁
11m 内側壁
12 アッパメンバ
12a 前端部
12a1 側面
12c 内側壁
13 上下断面拡大部
14 第2U字断面部
15 バックプレート
17 接合部材
17a 前方曲げフランジ
17b 側方曲げフランジ
17d 第1接合部材
17e 第2接合部材
19 バルクヘッド
19a 下端部
19b 後端部