(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】電力半導体素子および電力半導体チップ
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20221122BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 657F
H01L29/78 655A
H01L29/78 652Q
H01L29/78 657A
H01L29/78 655G
H01L29/78 652F
H01L29/78 652C
H01L29/78 653C
(21)【出願番号】P 2021082747
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0058261
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507098483
【氏名又は名称】ヒュンダイ・モービス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ ジュ フワン
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-064005(JP,A)
【文献】特開2002-083963(JP,A)
【文献】特開2018-067624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、
前記半導体層の表面から前記半導体層の内部に所定の深さだけ窪むように形成され、第1の深さを有する一対のライン部および前記一対のライン部の間を連結し、前記第1の深さよりも浅い第2の深さを有する複数の連結部を含むラダー形状を有する少なくとも1つのトレンチと、
前記少なくとも1つのトレンチの前記一対のライン部の間および前記複数の連結部の間の前記半導体層に
位置するウェル領域と、
前
記一対のライン部の
うち少なくとも一方に接するように形成されるフローティング領域と、
前記少なくとも1つのトレンチの内壁上に形成されたゲート絶縁層と、
前記少なくとも1つのトレンチを埋め立てるように前記ゲート絶縁層上に形成され、前記一対のライン部を埋め立てて形成された第1の部分および前記複数の連結部を埋め立てて形成された第2の部分を含み、前記第2の部分の深さが前記第1の部分の深さよりも浅いゲート電極層と、
前記ウェル領域下部の前記半導体層に位置するドリフト領域と、を含み、
前記フローティング領域は、前記ライン部のうち少なくとも一方の底面全体を取り囲むように伸張され、該少なくとも一方の底面を前記ドリフト領域と分離し、
前記連結部の底面は、前記フローティング領域と離隔される、電力半導体素子。
【請求項2】
前記少なくとも1つのトレンチの前記連結部のそれぞれの幅は、前記一対のライン部のそれぞれの幅よりも大きく、
前記ゲート電極層の前記第2の部分の幅は、前記第1の部分の幅よりも大きい、請求項1に記載の電力半導体素子。
【請求項3】
前記ゲート電極層の前記第2の部分の深さは、前記ウェル領域よりも深い、請求項1に記載の電力半導体素子。
【請求項4】
前記ウェル領域内の前記ゲート電極層の前記第2の部分に隣接して、前記ゲート電極層の前記第1の部分の延び方向に沿って離隔配置されたソース領域またはエミッタ領域をさらに含む、請求項1に記載の電力半導体素子。
【請求項5】
前記ドリフト領域および前記ソース領域またはエミッタ領域は、第1導電型の不純物でドーピングされ、
前記ウェル領域および前記フローティング領域は、前記第1導電型の反対である第2導電型の不純物でドーピングされる、請求項
4に記載の電力半導体素子。
【請求項6】
メインセル領域およびセンサ領域を含む半導体層と、
前記メインセル領域に形成され、請求項
1~5のいずれか1項に記載の電力半導体素子を含む複数の電力半導体トランジスタと、
前記電力半導体トランジスタの電流をモニタリングするために、前記センサ領域に形成された複数の電流センサトランジスタと、
前記複数の電力半導体トランジスタのエミッタ電極と連結されるエミッタ端子と、
前記複数の電流センサトランジスタのエミッタ電極と連結される電流センサ端子と、
前記電力半導体トランジスタのゲート電極および前記複数の電流センサトランジスタのゲート電極と連結されるゲート端子とを含む、電力半導体チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、より詳しくは、電力伝達をスイッチングするための電力半導体素子および電力半導体チップに関する。
【背景技術】
【0002】
電力半導体素子は、高電圧および高電流の環境下で動作する半導体素子である。このような電力半導体素子は、高電力スイッチングが必要な分野、例えば、インバータ素子に用いられている。例えば、電力半導体素子としては、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT、Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力MOSFET(Power MOSFET)などが挙げられる。かかる電力半導体素子は、高電圧に対する耐圧特性が基本的に求められ、最近では付加的に高速スイッチング動作が求められている。
【0003】
かかる半導体素子は、チャネルから注入される電子とコレクタから注入される正孔が流れることで動作する。しかし、トレンチゲート型の電力半導体素子において、正孔がトレンチゲートに過剰に蓄積されると、ネガティブゲートチャージング(negative gate charging、NGC)現象が発生するとともに、ゲートの方向に変位電流(displacement current)が発生することになる。かかるトレンチゲート型の電力半導体素子は、ゲート-コレクタ間容量(Cgc)が大きいため、このようなネガティブゲートチャージング(NGC)の影響を多く受けることになり、スイッチングの安定性に課題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】大韓民国公開特許公報第2014-0057630号(2014.05.13.公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述の問題点を解決するためのものであって、高電圧に対する耐圧特性を確保しつつ、ネガティブゲートチャージングの影響を減少させ、動作の安定性を高めることができる電力半導体素子および電力半導体チップを提供することを目的とする。
【0006】
しかし、かかる課題は、例示的なものであって、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の一観点に係る電力半導体素子は、半導体層と、前記半導体層の表面から前記半導体層の内部に所定の深さだけ窪むように形成され、第1の深さを有する一対のライン部および前記一対のライン部の間を連結し、前記第1の深さよりも浅い第2の深さを有する複数の連結部を含むラダー形状を有する少なくとも1つのトレンチと、前記少なくとも1つのトレンチの前記一対のライン部の間および前記複数の連結部の間の前記半導体層に限定されたウェル領域と、前記少なくとも1つのトレンチの少なくとも前記一対のライン部の外側の前記半導体層に限定されたフローティング領域と、前記少なくとも1つのトレンチの内壁上に形成されたゲート絶縁層と、前記少なくとも1つのトレンチを埋め立てるように前記ゲート絶縁層上に形成され、前記一対のライン部を埋め立てて形成された第1の部分および前記複数の連結部を埋め立てて形成された第2の部分を含み、前記第2の部分の深さが前記第1の部分の深さよりも浅いゲート電極層と、を含む。
【0008】
前記電力半導体素子によると、前記少なくとも1つのトレンチの前記連結部のそれぞれの幅は、前記一対のライン部のそれぞれの幅よりも大きく、前記ゲート電極層の前記第2の部分の幅は、前記第1の部分の幅よりも大きくてもよい。
【0009】
前記電力半導体素子によると、前記フローティング領域は、前記ゲート電極層の前記第1の部分の底面を取り囲むように、前記少なくとも一対のライン部の下部に延びており、前記ゲート電極層の前記第2の部分の底面は、前記フローティング領域から露出してもよい。
【0010】
前記電力半導体素子によると、前記ゲート電極層の前記第2の部分の深さは、前記ウェル領域よりも深くてもよい。
【0011】
前記電力半導体素子によると、前記ウェル領域内の前記ゲート電極層の前記第2の部分に隣接して、前記ゲート電極層の前記第1の部分の延び方向に沿って離隔配置されたソース領域またはエミッタ領域をさらに含むことができる。
【0012】
前記電力半導体素子によると、前記ウェル領域の下部の前記半導体層に限定されたドリフト領域をさらに含むことができる。
【0013】
前記電力半導体素子によると、前記ドリフト領域および前記ソース領域またはエミッタ領域は、第1導電型の不純物でドーピングされ、前記ウェル領域および前記フローティング領域は、前記第1導電型の反対である第2導電型の不純物でドーピングされることができる。
【0014】
前記課題を解決するための本発明の他の観点に係る電力半導体チップは、メインセル領域およびセンサ領域を含む半導体層と、前記メインセル領域に形成され、前述の電力半導体素子を含む複数の電力半導体トランジスタと、前記電力半導体トランジスタの電流をモニタリングするために、前記センサ領域に形成された複数の電流センサトランジスタと、前記複数の電力半導体トランジスタのエミッタ電極と連結されるエミッタ端子と、前記複数の電流センサトランジスタのエミッタ電極と連結される電流センサ端子と、前記電力半導体トランジスタのゲート電極および前記複数の電流センサトランジスタのゲート電極と連結されるゲート端子と、を含む。
【発明の効果】
【0015】
前述のように構成された本発明の一実施形態に係る電力半導体素子および電力半導体チップによると、高電圧に対する耐圧特性を維持しながら、ネガティブゲートチャージング(NGC)現象を抑制して、スイッチングの安定性を高めることができる。
【0016】
もちろん、かかる効果は、例示的なものであり、かかる効果によって、本発明の範囲が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力半導体チップを示す概略平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電力半導体チップを示す回路図である。
【
図3】
図2の電力半導体チップの一部を示す回路図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る電力半導体素子を示す平面図である。
【
図5】
図4の電力半導体素子のV-V線で切り取った断面図である。
【
図6】
図4の電力半導体素子のVI-VI線で切り取った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付された図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明すると次の通りである。しかし、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現することができるものであって、以下の実施形態は、本発明の開示が完全であるようにして、通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。また、説明の便宜のために、図面では、少なくとも一部の構成要素は、その大きさが誇張または縮小され得る。図面において、同一の符号は同一の要素を示す。
【0019】
特に定義されない限り、ここで使用される全ての用語は、当該技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味で使用される。図面において、層および領域の大きさは、説明のために誇張されており、そのため、本発明の一般的な構造を説明するために提供される。
【0020】
同一の参照符号は、同一の構成要素を示す。層、領域または基板のような1つの構成が、他の構成の上(on)にあるとする場合、それは他の構成の真上のトレンチにあるか、またはその間に介在された他の構成が存在し得るものと理解されるだろう。これに対し、1つの構成が他の構成の「真上(directly on)」にあるとする場合、中間に介在する構成が存在しないものと理解される。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る電力半導体チップ50を示す概略平面図であり、
図2は、本発明の一実施形態に係る電力半導体チップ50を示す回路図であり、
図3は、
図2の電力半導体チップの一部を示す回路図である。
【0022】
図1を参照すると、電力半導体チップ50は、メインセル領域MCおよびセンサ領域SAを含む半導体層105を用いて形成されることができる。かかる電力半導体チップ50は、ウェハダイ(die)またはパッケージング構造を含むことができる。
【0023】
メインセル領域MCには、複数の電力半導体トランジスタ(power semiconductor transistors、
図3のPT)が形成されることができる。センサ領域SAには、電力半導体トランジスタPTの電流をモニタリングするために、複数の電流センサトランジスタ(
図3のST)が形成されることができる。
【0024】
例えば、電力半導体トランジスタPTおよび電流センサトランジスタSTは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)または電力MOSFET(power MOSFET)の構造を含むことができる。IGBTは、ゲート電極、エミッタ電極(emitter electrode)およびコレクタ電極(collector electrode)を含むことができる。
図2~
図3では、電力半導体トランジスタPTおよび電流センサトランジスタSTがIGBTである場合を例として説明する。
【0025】
図1~
図3をともに参照すると、電力半導体チップ50は、外部との連結のための複数の端子を含むことができる。
【0026】
例えば、電力半導体チップ50は、電力半導体トランジスタPTのエミッタ電極に連結されるエミッタ端子69、電力半導体トランジスタPTのケルビンエミッタ電極に連結されるケルビンエミッタ端子66、電流をモニタリングするための電流センサトランジスタSTのエミッタ電極と連結される電流センサ端子64、電力半導体トランジスタPTのゲート電極および電流センサトランジスタSTのゲート電極と連結されるゲート端子62、温度をモニタリングするための温度センサTCと連結される温度センサ端子67,68および/または電力半導体トランジスタPTおよび電流センサトランジスタSTのコレクタ電極と連結されるコレクタ端子61を含むことができる。
【0027】
図2において、コレクタ端子61は、
図1の半導体層105の背面上に形成されており、
図2において、エミッタ端子69は、
図1のメインセル領域MC上に形成されることができる。
【0028】
温度センサTCは、温度センサ端子67,68と連結されているジャンクションダイオード(junction diode)を含むことができる。ジャンクションダイオードは、少なくとも1つのn型不純物領域と少なくとも1つのp型不純物領域との接合構造、例えば、P-N接合構造、P-N-P接合構造、N-P-N接合構造などを含むことができる。
【0029】
本構造は、電力半導体チップ50内に温度センサTCが組み込まれている構造を例示的に説明しているが、この実施形態の変形された例では、温度センサTCが省略されることもある。
【0030】
電力半導体トランジスタPTは、エミッタ端子69とコレクタ端子61との間に接続され、電流センサトランジスタSTは、電流センサ端子64とコレクタ端子61との間に電力半導体トランジスタPTと一部並列的に接続される。電流センサトランジスタSTのゲート電極と電力半導体トランジスタPTのゲート電極とは、所定の抵抗を介してゲート端子62に共有して連結される。
【0031】
電流センサトランジスタSTは、電力半導体トランジスタPTと実質的に同じ構造で形成され、但し、所定の比で縮小されて形成され得る。これによって、電流センサトランジスタSTの出力電流をモニタリングすることで、電力半導体トランジスタPTの出力電流を間接にモニタリングすることができる。
【0032】
例えば、電力半導体トランジスタPTおよび/または電流センサトランジスタSTは、
図4~
図6の電力半導体素子100の構造を含むことができる。一部の実施形態では、電力半導体トランジスタPTと電力半導体素子100とが同じ意味で使用されることもできる。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態に係る電力半導体素子100を示す断面図であり、
図5は、
図4の電力半導体素子のV-V線で切り取った断面図であり、
図6は、
図4の電力半導体素子のVI-VI線で切り取った断面図である。
【0034】
図4~
図6を参照すると、半導体層105は、1つまたは複数の半導体物質層を示すことができ、例えば、半導体基板の一部および/または1つまたは多層のエピタキシャル層(epitaxial layer)を示すこともできる。
【0035】
少なくとも1つのトレンチ116は、半導体層105の表面から半導体層105の内部に所定の深さだけ窪むように形成されることができる。トレンチ116の数は、電力半導体素子100の性能に応じて適宜選択することができ、この実施形態の範囲を制限しない。
【0036】
トレンチ116は、一対のライン部116aと、一対のライン部116aの間を連結する複数の連結部116bを含むラダー(ladder)形状を有することができる。連結部116bは、ライン部116aの間に一定の間隔で離隔して形成されることができる。
【0037】
例えば、トレンチ116において、ライン部116aは、第1の深さD1を有し、連結部116bは、第2の深さD2を有することができる。第2の深さD2は、第1の深さD1よりも小さく、そのため、連結部116bの深さは、ライン部116aの深さよりも浅くてもよい。さらに、トレンチ116の連結部116bのそれぞれの幅W2は、ライン部116aのそれぞれの幅W1よりも大きくてもよい。かかる構造は、連結部116bの近くで電界(electric field)のストレスの緩和効果に関連している。
【0038】
さらに、トレンチ116は、電界が集中することを抑制するために、そのエッジ、例えば下端のエッジがラウンディング処理されることができる。
【0039】
例えば、半導体層105は、ドリフト領域107およびウェル領域110を含むことができる。さらに、半導体層105は、ウェル領域110内のエミッタ領域112をさらに含むことができる。ここで、エミッタ領域112は、ソース領域と呼ばれることもでき、以下ではエミッタ領域112は、ソース領域を意味することもできる。さらに、半導体層105は、フローティング領域125をさらに含むことができる。
【0040】
より具体的に説明すると、ウェル領域110は、トレンチ116のライン部116aの間および連結部116bの間の半導体層105に限定されることができる。即ち、ウェル領域110は、ラダー形状のトレンチ116によって取り囲まれる正方形の半導体層105の領域であってもよい。
【0041】
フローティング領域125は、トレンチ116のライン部116aの外側の半導体層105に限定されることができる。例えば、フローティング領域125は、ラダー形状のトレンチ116の外側の領域の半導体層105に形成されることができる。
【0042】
フローティング領域125は、電界緩和のために、トレンチ116のライン部116aの底面を取り囲むように、ライン部116aの下部にさらに延びることができる。但し、フローティング領域125は、連結部116bの下部には延びていないこともある。したがって、
図6に示すように、
図4のVI-VI線に沿って、ウェル領域110および連結部116bの下部には、フローティング領域125が存在しないことがある。
【0043】
図4で、ウェル領域110は、ライン部116aの延び方向、即ち、VI-VI線に沿って、連結部116bを挟み込んで離隔配置されることができ、フローティング領域125とウェル領域110とは、V-V線に沿ってライン部116aを挟み込んで交互に配置されることができる。
【0044】
例えば、ウェル領域110とフローティング領域125は、同一のタイプでドーピングされることができる。
【0045】
エミッタ領域112は、ウェル領域110内の所定の深さでトレンチ116に隣接して形成されることができる。例えば、エミッタ領域112は、ウェル領域110内のライン部116aに隣接している部分には形成されておらず、連結部116bに隣接している部分のみに形成されることができる。これによって、エミッタ領域112は、ライン部116aの延び方向、即ち、VI-VI線の方向に沿って、連結部116bに隣接しているウェル領域110に形成されることができる。
【0046】
例えば、エミッタ領域112とウェル領域110とは、互いに反対のタイプでドーピングされることができる。
【0047】
ドリフト領域107は、ウェル領域110の下部の半導体層105に限定されることができる。例えば、ドリフト領域107は、ウェル領域110に接して、トレンチ116の間に限定され、さらにフローティング領域125の下部および半導体層105の下面に延びることができる。
【0048】
例えば、ドリフト領域107およびエミッタ領域112は、第1導電型を有し、ウェル領域110およびフローティング領域125は、第2導電型を有することができる。第1導電型および第2導電型は、互いに反対の導電型を有しているが、n型およびp型のいずれか1つであってもよい。例えば、第1導電型がn型である場合、第2導電型はp型であり、その逆であってもよい。
【0049】
一部の実施形態で、ドリフト領域107は、第1導電型のエピタキシャル層として提供されることができ、ウェル領域110は、このようなエピタキシャル層に第2導電型の不純物をドーピングするか、または第2導電型のエピタキシャル層として形成することができる。エミッタ領域112は、ウェル領域110内に第1導電型の不純物をドーピングするか、または第1導電型のエピタキシャル層を付加的に形成して形成することができる。
【0050】
さらに、電力半導体素子100がIGBTである場合、コレクタ領域(図示せず)がドリフト領域107の下に提供され、コレクタ電極(図示せず)がコレクタ領域に連結されるように、コレクタ領域の下に提供されることができる。例えば、コレクタ領域128は、ドリフト領域107の下にドリフト領域107と異なる第2導電型を有するエピタキシャル層として提供されることができる。
【0051】
他の例として、電力半導体素子100が電力MOSFETである場合、ドリフト領域107の下にドレイン電極が連結されることができる。
【0052】
ゲート絶縁層118は、少なくとも1つのトレンチ116の内壁上に形成されることができる。例えば、ゲート絶縁層118は、トレンチ116の内壁上に均一な厚さで形成されることができる。
【0053】
ゲート電極層120は、少なくとも1つのトレンチ116を埋め立てるように、ゲート絶縁層118上に形成されることができる。例えば、ゲート電極層120は、半導体層105内に窪むように形成されることができ、かかる意味で、凹型またはトレンチ型を有するものと理解することができる。
【0054】
例えば、ゲート電極層120は、ライン部116aを埋め立てて形成された第1の部分120aおよび連結部116bを埋め立てて形成された第2の部分120bを含むことができる。
【0055】
トレンチ116内のゲート電極層120の形状は、トレンチ116の構造と対応することができる。したがって、トレンチ116の連結部116bの第2の深さD2がライン部116aの第1の深さD1よりも浅いため、ゲート電極層120の第2の部分120bの深さが第1の部分120aの深さよりも浅くてもよい。ゲート電極層120の第2の部分120bの深さは、ウェル領域110よりも深くてもよい。さらに、ゲート電極層120の第2の部分120bの幅は、第1の部分120aの幅よりも大きくてもよい。
【0056】
ゲート電極層120の平面上の配置は、トレンチ116の配置形状に従うことができ、したがって、ゲート電極層120は、
図4において、ラダー形状に配置されることができる。ゲート電極層120の数は、トレンチ116と同様に、電力半導体素子100の動作仕様に応じて適宜選択することができ、この実施形態の範囲を制限しない。
【0057】
さらに、エミッタ電極(図示せず)は、エミッタ領域112上に形成されることができる。エミッタ電極は、エミッタ領域112およびウェル領域110に共通に接続されることができる。半導体層105とエミッタ電極との間には、絶縁層130が介在されることができる。
【0058】
前述の構造によると、フローティング領域125は、ゲート電極層120の第1の部分120aの底面を取り囲むように、トレンチ116のライン部116aの下部に延びることができる。但し、ゲート電極層120の第2の部分120bの底面は、フローティング領域125に取り囲まれることなく、フローティング領域125から露出することができる。
【0059】
さらに、エミッタ領域112は、ウェル領域110内のゲート電極層120の第2の部分120bに隣接して、ゲート電極層120の第1の部分120aの延び方向に沿って離隔配置されることができる。
【0060】
前述の電力半導体素子100によると、ラダー形状のストライプ部分、即ち、トレンチ116のライン部116aおよびゲート電極層120の第1の部分120aの構造と、フローティング領域125の構造を通じて、トレンチ116の下部を保護し、ターン-オフ(turn-off)時の高い耐圧を維持することができる。
【0061】
さらに、エミッタ領域112をトレンチ116の連結部116bおよびゲート電極層120の第2の部分120bに隣接している部分のみに配置し、トレンチ116のライン部116aおよびゲート電極層120の第1の部分120aに隣接している部分には配置しないことによって、電力半導体素子100の動作時のホール(hole)の移動経路を変化させ、ゲート-コレクタ容量(Cgc)の値を減らすことができる。これによって、ネガティブゲートチャージング(NGC)現象を減らすことができ、スイッチングの安定性を高めることができる。
【0062】
また、ゲート電極層120の第2の部分120bの深さを浅くして、ゲート電極層120の第2の部分120bの幅を大きくすることによって、ゲート電極層120の第2の部分120bの下部の電界を緩和させ、ゲート-コレクタ容量(Cgc)の値を減らすことができる。
【0063】
さらに、ゲート電極層120の第1の部分120aの間隔がさらに狭くなると、電荷共有(charge sharing)現象の影響がさらに大きくなり、隣接している第1の部分120aの下部の等電位面が連結され、ゲート電極層120の下部で電界ストレスがさらに緩和されることができる。
【0064】
前述の説明は、電力半導体素子がIGBTである場合を想定して説明したが、電力MOSFETにもそのまま適用することができる。
【0065】
図1~
図3において、電力半導体チップ50は、
図4~
図6の電力半導体素子100を電力半導体トランジスタPTおよび/または電流センサトランジスタSTとして用いることができ、そのため、前述した電力半導体素子100の特徴を電力半導体チップ50にもそのまま適用することができる。
【0066】
したがって、前述した電力半導体素子100およびかかる電力半導体素子100を用いた電力半導体チップ50において、ラダー形状のトレンチ116およびゲート電極層120の形状を変えて、高電圧で耐圧を維持しつつもネガティブゲートチャージング現象を抑制し、スイッチングの安定性を高めることができることが分かる。
【0067】
本発明は、図面に示された実施形態を参考にして説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、これに基づいて様々な変形および均等な他の実施形態が可能であるという点を理解するだろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付された特許請求の範囲の技術的思想により定められるべきである。
【符号の説明】
【0068】
50 電力半導体チップ
100 電力半導体素子
105 半導体層
107 ドリフト領域
110 ウェル領域
112 エミッタ領域
118 ゲート絶縁層
120 ゲート電極層
125 フローティング領域
130 絶縁層