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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】配管溶接部の検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/952 20060101AFI20221122BHJP
   G01N 21/91 20060101ALI20221122BHJP
   G01N 29/04 20060101ALI20221122BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221122BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20221122BHJP
【FI】
G01N21/952
G01N21/91 A
G01N29/04
G01N21/91 B
G06T7/00 350C
G01N23/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021142647
(22)【出願日】2021-09-01
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 健三
(72)【発明者】
【氏名】石崖 隼士
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207703735(CN,U)
【文献】特開昭63-061947(JP,A)
【文献】実開平02-060861(JP,U)
【文献】特開平08-118017(JP,A)
【文献】特開昭53-107000(JP,A)
【文献】特開2000-180384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01N 29/00 - G01N 29/52
G06T 7/00 - G06T 7/90
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01B 15/00 - G01B 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接により接続された第1の配管と第2の配管の溶接部を撮影するカメラと、前記溶接部にレーザー光を照射して前記溶接部で反射したレーザー光を撮影することで画像を作成するレーザー光計測装置と、
前記第1の配管もしくは前記第2の配管の周囲に配置されるレール台と、前記レール台に沿って前記溶接部の周囲を移動するリングレールギアと、前記リングレールギアに前記カメラおよび前記レーザー光計測装置を固定する取付台と、を有する取付装置と、
前記カメラおよび前記レーザー光計測装置で撮影した画像に基づいて前記溶接部の溶接欠陥の有無を判断する検査部と、
を有する配管溶接部の検査装置。
【請求項2】
前記検査部は、前記カメラで撮影した前記溶接部の画像を示す画像情報に溶接欠陥有りもしくは溶接欠陥無しの情報を付加した教師ありデータおよび前記レーザー光計測装置で撮影した前記溶接部の画像を示す画像情報に溶接欠陥有りもしくは溶接欠陥無しの情報を付加した教師ありデータを用い、人工知能を用いた解析プログラムに基づいて、前記溶接部の溶接欠陥の有無を判断する、
請求項1に記載の配管溶接部の検査装置。
【請求項3】
前記カメラおよび前記レーザー光計測装置は、前記リングレールギアの所定の位置に固定されており、前記レーザー光計測装置は、前記カメラが撮影した前記溶接部の位置と同じ位置の画像を作成する、
請求項1または2に記載の配管溶接部の検査装置。
【請求項4】
前記検査部は、前記カメラで撮影した前記溶接部の指定された部分の画像を示す画像情報と、前記レーザー光計測装置で前記溶接部の前記指定された部分にレーザー光を照射して前記溶接部で反射したレーザー光を撮影した画像を示す画像情報と、を紐付けた情報に、溶接欠陥有りもしくは溶接欠陥無しの情報を付加した教師ありデータを用い、人工知能を用いた解析プログラムに基づいて前記溶接部の溶接欠陥の有無を判断する、
請求項3に記載の配管溶接部の検査装置。
【請求項5】
前記検査部は、前記カメラで撮影した前記溶接部の画像を示す画像情報および前記レーザー光計測装置で撮影した前記溶接部の画像を示す画像情報のそれぞれに、前記画像情報に対する前記溶接部の溶接欠陥の有無の判断結果の情報を付加した情報を前記教師ありデータに追加し、以後の溶接部の画像について溶接欠陥の有無を判断する、
請求項2または4に記載の配管溶接部の検査装置。
【請求項6】
前記検査部は、
浸透探傷試験により前記溶接部に浸透した検査液を現像した前記溶接部の画像を示す画像情報、磁粉浸透探傷試験により前記溶接部に付着した磁粉で表された前記溶接部の画像を示す画像情報、超音波探傷試験により計測した前記溶接部で反射した超音波による前記溶接部の画像を示す画像情報、放射線透過試験により得られた感光したフィルムによる前記溶接部の画像を示す画像情報、を入力する入力部を有し、
前記検査部は、
前記カメラで撮影した前記溶接部の画像を示す画像情報、前記レーザー光計測装置で撮影した前記溶接部の画像を示す画像情報、浸透探傷試験により取得した前記溶接部の画像を示す画像情報、磁粉浸透探傷試験により取得した前記溶接部の画像を示す画像情報、超音波探傷試験により取得した前記溶接部の画像を示す画像情報、放射線透過試験により取得した前記溶接部の画像を示す画像情報、の少なくとも何れか二つの情報を教師ありデータとして用いることにより、人工知能を用いた解析プログラムに基づいて、前記溶接部の溶接欠陥の有無を判断する、
請求項2に記載の配管溶接部の検査装置。
【請求項7】
前記リングレールギアは、モーター・エンコーダーによって駆動され、前記レール台に沿って前記溶接部の周囲を移動する、
請求項1に記載の配管溶接部の検査装置。
【請求項8】
前記取付台は、前記溶接部に対する前記カメラおよび前記レーザー光計測装置による撮影角度を調整する調整機構を有する、
請求項1に記載の配管溶接部の検査装置。
【請求項9】
前記教師ありデータは、溶接部のアンダーカット、余盛の高さ、脚長が異なる前記溶接部の複数の画像を示す画像情報それぞれに、溶接欠陥有りもしくは溶接欠陥無しの情報を付加することにより作成される、
請求項2または4に記載の配管溶接部の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管溶接部の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント設備においては多数の配管が存在し、それぞれの建設・改造工事において膨大な量の配管の溶接が行われる。これらの配管溶接部の非破壊試験として、溶接部表面を直接観察して溶接欠陥の有無を判断する外観検査、溶接部に検査液を浸透させ浸透した検査液を現像して欠陥部を示す画像を表示させることで溶接欠陥の有無を判断する浸透探傷試験がある。非破壊試験には、そのほかに、溶接部を磁石化させてそこに磁粉を付着させて磁粉で形成された画像から溶接欠陥の有無を判断する磁粉探傷試験、溶接部に超音波を照射して反射した超音波を画像化することで溶接欠陥の有無を判断する超音波探傷試験、放射線の漏れ量を画像化することで溶接欠陥の有無を判断する放射線透過試験などがある。
【0003】
これらの試験で取得した膨大な量の検査画像を検証して溶接欠陥を発見するには、膨大な作業時間を要する。また、各試験で得られた画像から溶接欠陥の有無を判断するためには、熟練者の優れた検査技術が必要となる。この問題を解決するために、近年では、人工知能(AI)を用いた検査技術の開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-024201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、可燃性ガスを通す配管では、微細な溶接欠陥であってもそこから可燃性ガスが漏れ、大きな事故の要因となる場合がある。したがって、溶接欠陥の判断には、溶接部の撮影部位を細かいピッチで移動させて撮影した膨大な量の画像を必要とする。例えば、直径1mの2本の配管を接続した溶接部の溶接欠陥を判断するために使用する検査画像の枚数は、千枚以上であることが好ましい。千枚以上の静止画像を撮影するためには膨大な作業時間を要する。作業者が溶接部の周囲をデジタルカメラで動画撮影し、撮影した動画から千枚以上の静止画像を生成することにより、画像の作成時間を低減することができる。しかしながら、作業者が溶接部の周囲を動画撮影した場合、カメラを移動させる速度や溶接部に対する撮影角度等の撮影条件を一定に保つことが困難である。撮影条件が一定でない状態で撮影された画像を使用して配管溶接部の溶接欠陥の有無を判断した場合、溶接欠陥の有無を判断するための検査の精度が低下する恐れがある。
【0006】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、配管溶接部の溶接欠陥の有無を判断するための検査の精度を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための実施形態に係る配管溶接部の検査装置は、カメラとレーザー光計測装置と取付装置と検査部とを有する。カメラは、溶接により接続された第1の配管と第2の配管の溶接部を撮影する。レーザー光計測装置は、溶接部にレーザー光を照射して溶接部で反射したレーザー光を撮影することで画像を作成する。取付装置は、第1の配管もしくは第2の配管の周囲に配置されるレール台と、レール台に沿って溶接部の周囲を移動するリングレールギアと、リングレールギアにカメラおよびレーザー光計測装置を固定する取付台と、を有する。検査部は、カメラおよびレーザー光計測装置で撮影した画像に基づいて溶接部の溶接欠陥の有無を判断する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る配管溶接部の検査装置のブロック図である。
図2】実施形態に係る取付装置の平面図である。
図3】実施形態に係る取付装置の正面図である。
図4】実施形態に係るリングレールギアについて説明するための図である。
図5】実施形態に係る配管溶接部の検査装置を用いた検査処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る配管溶接部の検査装置について、図を参照して説明する。説明にあたっては、相互に直行するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を適宜用いる。配管溶接部の検査装置は、溶接により接続された第1の配管と第2の配管の溶接部の溶接欠陥の有無を判断するための検査装置である。
【0010】
図1は、実施形態に係る配管溶接部の検査装置1のブロック図である。検査装置1は、カメラ11、レーザー光計測装置12、検査部20を有する。カメラ11およびレーザー光計測装置12は、後述する取付装置に取り付けられる。
【0011】
カメラ11は、第1の配管と第2の配管とが溶接により接続された溶接部を撮影する撮影装置である。カメラ11は、撮影した画像の画像情報を検査部20に送信する。カメラ11は、自動的にピントを調整する調整機構を有している。カメラ11のレンズの周囲には複数のLEDが設けられている。複数のLEDは、LEDによる光の照射方向がカメラ11の撮影方向(カメラの光軸)と一致するように配置されている。
【0012】
レーザー光計測装置12は、レーザー光を溶接部に向けて出力する出力部12aと溶接部で反射したレーザー光を受信する受信部12bとを有する。受信部12bは、溶接部で反射したレーザー光を撮影することで画像を作成するカメラである。受信部12bに使用するカメラには、カメラ11と同じカメラを使用することができる。ただし、受信部12bに使用するカメラには、LEDを配置しない。出力部12aは、溶接部に対して所定の角度(例えば、45度)でレーザー光が照射されるように配置される。所定の角度は、後述する取付台56を用いて調整する。受信部12bは、撮影方向が配管の中心を向くように配置される。溶接部に対するレーザー光の照射角度と溶接部で反射したレーザー光の受光角度とに角度差を設けることで、受信部で形成される画像には、溶接部のアンダーカットや余盛高さに応じた影が形成される。この影の形や大きさに基づいて溶接欠陥の有無を判断することができる。レーザー光の照射角度と受光角度との角度差を変えて撮影した画像により3次元画像を作成することで、溶接欠陥の有無を判断するための検査の精度を向上することができる。
【0013】
検査部20は、物理的には、CPU、記憶部、入力部および出力部を有するコンピュータである。記憶部には、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を用いた検査用アプリケーションソフトウエア(解析プログラム)、人工知能を用いた解析に使用する教師ありデータが記憶されている。検査部20は、人工知能を用いた検査用アプリケーションソフトウエアと各種の計測装置で撮影した溶接部の画像に基づいて、溶接部の溶接欠陥の有無を判断する。
【0014】
人工知能を用いた検査用アプリケーションソフトウエアは、市販のソフトウエアを使用することもできる。例えば、ニューラルネットワークで構成された機械学習、深層学習等のアルゴリズムを用いたソフトウエアを使用することができる。
【0015】
教師ありデータは、後述する各試験で撮影した溶接部の複数の画像それぞれについて、溶接欠陥無しの画像には溶接欠陥無しの情報を、溶接欠陥有りの画像には溶接欠陥有りの情報を付加したデータである。具体的には、教師ありデータは、溶接部のアンダーカット、余盛の高さ、脚長、ごく微小なピットなどが微妙に異なる複数の画像それぞれに、溶接欠陥有りもしくは溶接欠陥無しの情報を付加することにより作成される。溶接欠陥有りもしくは溶接欠陥無しの判断は、各種の検査画像及び試験結果に基づいて、熟練した技術者により行われる。教師ありデータは多いほど好ましい。
【0016】
検査部20は、入力部21,カメラ画像検査部22、レーザー画像検査部23、浸透探傷試験画像検査部24,磁粉探傷試験画像検査部25、超音波探傷試験画像検査部26,放射線浸透試験画像検査部27、出力部28を有する。
【0017】
入力部21は、ネットインタフェース、USBインタフェース等を備える。入力部21は、カメラ11で撮影した溶接部の画像、レーザー光計測装置12で撮影した溶接部の画像の画像情報を入力する。また、入力部21は、浸透探傷試験,磁粉探傷試験、超音波探傷試験,放射線浸透試験により取得した溶接部の画像の画像情報を入力する。
【0018】
浸透探傷試験では、溶接部に検査液を浸透させ、浸透した現像液を現像する。溶接部に欠陥がある場合、毛細管現象により検査液が溶接部に浸透する。浸透した検査液は周囲に広がるので、溶接欠陥個所が視認できない微細な穴の場合でも、溶接欠陥個所が視認可能な大きさの画像に拡大される。したがって、溶接欠陥個所を視認可能な画像として表示することができる。
【0019】
磁粉探傷試験では、配管内に磁石を配置する。配管の表面に欠陥があると磁束が欠陥箇所から漏洩する。配管の表面に磁粉を塗布すると、配管に欠陥がある場合、漏洩した磁束により漏洩箇所に磁粉が付着し、溶接欠陥個所を視認可能な画像として表示することができる。
【0020】
超音波探傷試験では、配管に超音波を照射し、反射した超音波の強度分布を画像として作成する。反射波の強度分布が一様でない場合、溶接欠陥がある可能性が高い。
【0021】
放射線浸透試験では、配管内に放射線源を配置し、接続部から浸透した放射線によりフィルムを感光することで画像を作成する。溶接欠陥がある場合、溶接部から浸透する放射線の強度が高くなる。フィルムの感光範囲が広いほど、溶接欠陥がある可能性が高い。
【0022】
カメラ画像検査部22は、溶接部をカメラ11で撮影した画像に溶接欠陥の有無の情報が付加された教師ありデータと、人工知能を用いた検査用アプリケーションソフトウエアに基づいて、溶接部をカメラ11で撮影した検査対象の複数の画像それぞれが「溶接欠陥有り」に属するか「溶接欠陥無し」に属するかを判断する。
【0023】
レーザー画像検査部23は、レーザー光計測装置12で撮影した溶接部の画像に溶接欠陥の有無の情報が付加された教師ありデータと、人工知能を用いた検査用アプリケーションソフトウエアに基づいて、レーザー光計測装置12で撮影した検査対象の溶接部の複数の画像それぞれが「溶接欠陥有り」に属するか「溶接欠陥無し」に属するかを判断する。
【0024】
浸透探傷試験画像検査部24は、浸透探傷試験で作成された溶接部の画像に溶接欠陥の有無の情報が付加された教師ありデータと、人工知能を用いた検査用アプリケーションソフトウエアに基づいて、検査対象の溶接部の複数の画像それぞれが「溶接欠陥有り」に属するか「溶接欠陥無し」に属するかを判断する。
【0025】
磁粉探傷試験画像検査部25は、磁粉探傷試験で作成された溶接部の画像に溶接欠陥の有無の情報が付加された教師ありデータと、人工知能を用いた検査用アプリケーションソフトウエアに基づいて、検査対象の溶接部の複数の画像それぞれが「溶接欠陥有り」に属するか「溶接欠陥無し」に属するかを判断する。
【0026】
超音波探傷試験画像検査部26は、超音波探傷試験で作成された溶接部の画像に溶接欠陥の有無の情報が付加された教師ありデータと、人工知能を用いた検査用アプリケーションソフトウエアに基づいて、検査対象の溶接部の複数の画像それぞれが「溶接欠陥有り」に属するか「溶接欠陥無し」に属するかを判断する。
【0027】
放射線浸透試験画像検査部27は、放射線浸透試験で作成された溶接部の画像に溶接欠陥の有無の情報が付加された教師ありデータと、人工知能を用いた検査用アプリケーションソフトウエアに基づいて、検査対象の溶接部の複数の画像それぞれが「溶接欠陥有り」に属するか「溶接欠陥無し」に属するかを判断する。
【0028】
出力部28は、液晶ディスプレイ、プリンター等で構成される。出力部28は、カメラ画像検査部22、レーザー画像検査部23、浸透探傷試験画像検査部24,磁粉探傷試験画像検査部25、超音波探傷試験画像検査部26,放射線浸透試験画像検査部27の少なくとも何れか一つが「溶接欠陥有り」と判断した場合、該当する溶接部について、「溶接欠陥有り」との検査結果を出力する。
【0029】
次に、取付装置50について説明する。図2は、取付装置50の平面図である。図3は、取付装置50の正面図である。図3では、第1の配管101と第2の配管102と溶接部を溶接部Wと記載している。ここでは、図面に記載されているが本願発明に関係しない部分の説明はしない。取付装置50は、カメラ11およびレーザー光計測装置12を溶接部の周囲に沿って移動させることで、カメラ11およびレーザー光計測装置12による溶接部の3次元画像の作成を可能にするための装置である。
【0030】
取付装置50は、レール台51,リングレールギア52,パンチ錠53,モーター・エンコーダー54,カメラ11をリングレールギア52に取り付ける取付台55,レーザー光計測装置12をリングレールギア52に取り付ける取付台56を備える。
【0031】
レール台51は、例えば鉄もしくはアルミニウム等の金属を素材として、リング状に形成された部材である。レール台51は、レール台本体511、リングレールギア52を保持する複数のレールガイド512、レールガイド512をレール台本体511に回転自在に保持する固定軸513を備える。
【0032】
レール台本体511は、リング状の部材を2分割したレール台本体511aと511bからなる。図2および図3では、中心線の左側に記載された部分がレール台本体511aであり、右側に記載された部分がレール台本体511bである。レール台本体511は、レール台本体511aと511bとをパンチ錠53で連結することでリング状の部材となる。
【0033】
レールガイド512は、金属もしくは樹脂で形成された部材である。レールガイド512は、図3に示されるように、Z軸方向の中央付近に、溝512aを有する。この溝512aは、リングレールギア52をガイドするための溝である。図2に示されるように、レールガイド512は、リングレールギア52の外周および内周に沿って複数個所に配置される。レールガイド512は、レール台本体511から-Z方向に突出して配置された固定軸513に保持され、固定軸513を回転軸として回転する。
【0034】
レール台51は、4本の装置保持脚58を有する(図2参照)。装置保持脚58は、配管の中心に向かってスライド可能なスライド部581と、配管の側面との接触面を形成する固定部582を有する(図3参照)。スライド部581は、配管の太さに応じた任意の位置で固定することができる。4本の装置保持脚58の固定部582を配管に接した状態でスライド部581を固定することで、レール台51は第1の配管101に固定される。装置保持脚58は、スライド部581があるので、レール台51を任意の太さの配管に固定することができる。
【0035】
図4は、リングレールギア52について説明するための図である。図4に示されるように、リングレールギア52は、リング状に形成された第1部材521と第2部材522からなる。第1部材521と第2部材522の内周半径は同じである。第2部材522の外周半径は、第1部材521の外周半径よりも大きい。第1部材521の内周面と第2部材522の内周面とがそろうようにして、第1部材521は、第2部材522の-Z側の面に結合されている。第1部材521の外周には、歯車が形成されている。図2および図3では、第1部材521の内周に歯車が形成されているが、図4では、後述する歯車との嵌合をわかりやすくするために、第1部材521の外周に歯車が形成されている図を記載している。第1部材521の内周に歯車を形成した方が装置を多少小型化できる。しかし、計測の精度に影響しないので、歯車は、第1部材521の内周と外周のどちらに設けてもよい。第2部材522の板厚(Z軸方向の厚さ)は、外周に向かって薄くなるように形成されている。第2部材522の外周の板厚が薄くなった部分は、突起部522aを形成している。
【0036】
リングレールギア52は、複数のレールガイド512の溝512aに第2部材522の突起部522aを嵌合させて配置される。なお、図4では、リングレールギア52の内周側に配置されるレールガイド512の記載を省略している。また、リングレールギア52もレール台本体511aと511bのように2つの部材から構成されているが、図4では2つの部材の接続部分の記載を省略している。
【0037】
図2および図3に戻り、モーター・エンコーダー54は、レール台51に固定されている。モーター・エンコーダー54は、蓄電池で動作する直流モーター541と歯車542を含んで構成されている(図3では、直流モーター541の記載を省略)。モーター・エンコーダー54は、図示しない制御部に搭載された計測用アプリケーションソフトウエアの指示に基づいて直流モーター541を回転させる。直流モーター541の回転軸は歯車542に接続されている。歯車542は、リングレールギア52の第1部材521の外周に形成された歯車と嵌合して配置される(図4参照)。モーター・エンコーダー54は、歯車542を回転させることとで、リングレールギア52をレール台51のレールガイド512に沿って回転させる。なお、モーター・エンコーダー54は、複数設けられてもよい。
【0038】
図2および図3に戻り、取付台55は、カメラ11をリングレールギア52に取り付けるための部材である。取付台55は、リングレールギア52に固定される。取付台55は、溶接部に対するカメラの撮影角度を調整する角度調整機構を有する。突合せ溶接やソケット溶接等の溶接条件に応じて撮影角度を調整することができる。また、取付台55は、溶接部とカメラ11との距離を調整する位置調整機構を有する。
【0039】
レーザー光計測装置12をリングレールギア52に取り付ける取付台56は、取付台55の設置位置に対して配管の中心線を挟んで180度離れた位置でリングレールギア52に固定される。取付台56は、溶接部に対するレーザー光の照射角度(XY平面上のレーザー光の照射方向と受光方向との角度、および、レーザー光の照射方向とZ軸との成す角度)を調整する角度調整機構561を有する。レーザー光計測装置12の出力部12aは、角度調整機構561に取り付けられる。レーザー光計測装置12の受信部12bは、撮影方向が配管の中心を向く方向となるように設置される。取付台56は、取付台55に角度調整機構561を追加することで構成することもできる。
【0040】
次に、図5を参照しながら、実施形態に係る配管溶接部の検査装置1を用いた検査処理について説明する。検査の前に、教師ありデータを作成して、検査装置1の記憶部に記憶しておく。具体的には、カメラ11で撮影した画像およびレーザー光計測装置12で撮影した画像について教師ありデータを作成し、記憶部に記憶する。また、浸透探傷試験,磁粉探傷試験、超音波探傷試験,放射線浸透試験により取得した画像についても教師ありデータを作成し、記憶部に記憶する。教師ありデータは多いほど好ましい。ここでは、浸透探傷試験,磁粉探傷試験、超音波探傷試験,放射線浸透試験は別途行われており、それぞれの試験結果の画像の画像情報が検査部20の入力部21に入力される場合について説明する。
【0041】
最初に、取付装置50を配管の溶接部近傍に固定する(ステップS11)。具体的には、2つに分割されたレール台51と2つに分割されたリングレールギア52を配管を挟んでパンチ錠53で結合する。そして、装置保持脚58を調整することで、取付装置50を配管の溶接部近傍に固定する。レールガイド512の溝512aにリングレールギア52の第2部材522の突起部522aを嵌合させ、レールガイド512をレール台本体511に固定する。また、モーター・エンコーダー54の歯車542がリングレールギア52の第1部材521の外周に形成された歯車と嵌合するように位置決めをする。
【0042】
次に、カメラ11を取付台55に固定し、溶接部に対するカメラ11の撮影角度を所定の角度に調整する。また、レーザー光計測装置12を取付台56に固定し、溶接部に対するレーザーの照射角度およびレーザーの受光角度を所定の角度に調整する(ステップS12)。

【0043】
次に、計測用アプリケーションソフトウエアの指示に基づいて、モーター・エンコーダー54によりリングレールギア52を配管の周囲に回転させる。カメラ11およびレーザー光計測装置12は、計測用アプリケーションソフトウエアの指示に基づいて、リングレールギア52の移動速度に対応した速度で溶接部の画像を撮影する。カメラ11およびレーザー光計測装置12は、リングレールギア52が所定の距離(例えば、0.1mm)移動するごとに1枚の画像を取得できるように溶接部の画像を撮影する(ステップS13)。所定の距離は、必要とされる検査精度に応じて決められる。
【0044】
カメラ11とレーザー光計測装置12の設置位置(例えば、180度離れた位置)が分かっているので、溶接部の任意の位置をカメラ11で撮影した画像と、同じ位置をレーザー光計測装置12で撮影した画像とを対応させることができる。具体的には、カメラ11とレーザー光計測装置12の設置位置、モーター・エンコーダー54の直流モーター541の回転量、およびカメラ11とレーザー光計測装置12の撮影タイミングとの関係に基づき、溶接部の任意の部分をカメラ11で撮影した画像と、同じ部分をレーザー光計測装置12で撮影した画像とを対応させる。カメラ11で撮影した画像と同じ部分を撮影したレーザー光計測装置12で撮影した画像とは、紐付けられて画像情報として記憶部に記憶される(ステップS14)。次に、必要に応じて、カメラ11の撮影角度、レーザー光計測装置12のレーザー照射角度を変えて、ステップS14の処理を繰り返す。カメラ11の撮影角度およびレーザー光計測装置12のレーザー照射角度を変えて撮影された画像も、溶接部の同じ部分を撮影した画像は、紐付けられて画像情報として記憶部に記憶される。撮影された画像それぞれは、その画像の溶接部における位置を特定可能な座標情報を付加されて記憶部に記憶される。
【0045】
次に、浸透探傷試験,磁粉探傷試験、超音波探傷試験,放射線浸透試験による画像がある場合、その画像情報を検査部20に入力する(ステップS15)。
【0046】
検査部20は、入力された画像情報について、教師ありデータと人工知能を用いた検査用アプリケーションソフトウエアに基づいて、溶接欠陥の有無を解析する(ステップS16)。具体的にはカメラ画像検査部22は、カメラ11で撮影された検査対象の溶接部の複数の画像それぞれが「溶接欠陥有り」に属するか「溶接欠陥無し」に属するかを判断する。レーザー画像検査部23は、レーザー光計測装置12で撮影した検査対象の溶接部の複数の画像それぞれが「溶接欠陥有り」に属するか「溶接欠陥無し」に属するかを判断する。カメラ11で撮影された検査対象の画像とレーザー光計測装置12で撮影した検査対象の溶接部の画像とは紐付けられているので、カメラ画像検査部22とレーザー画像検査部23とは、溶接部の同じ個所を撮影した画像に基づいて、溶接欠陥の有無を判断することができる。
【0047】
また、浸透探傷試験画像検査部24は、入力された検査対象の溶接部の複数の画像それぞれが「溶接欠陥有り」に属するか「溶接欠陥無し」に属するかを判断する。磁粉探傷試験画像検査部25は、入力された検査対象の溶接部の複数の画像それぞれが「溶接欠陥有り」に属するか「溶接欠陥無し」に属するかを判断する。超音波探傷試験画像検査部26は、入力された検査対象の溶接部の複数の画像それぞれが「溶接欠陥有り」に属するか「溶接欠陥無し」に属するかを判断する。放射線浸透試験画像検査部27は、入力された検査対象の溶接部の複数の画像それぞれが「溶接欠陥有り」に属するか「溶接欠陥無し」に属するかを判断する。
【0048】
そして、検査部20は、カメラ画像検査部22、レーザー画像検査部23、浸透探傷試験画像検査部24、磁粉探傷試験画像検査部25、超音波探傷試験画像検査部26、放射線浸透試験画像検査部27の何れかが、検査対象の複数の画像の何れかについて「溶接欠陥有り」と判断した場合、該当する溶接部に溶接欠陥があることを出力部28に出力する(ステップS17)。また、検査部20は、溶接欠陥有りと判断した根拠となる画像を、その画像の溶接部における位置を特定可能な座標情報とともに出力部28に出力する。
【0049】
検査部20は、カメラ11で撮影した画像の画像情報、レーザー光計測装置12で撮影した画像の画像情報、浸透探傷試験で取得した画像情報、磁粉浸透探傷試験で取得した画像情報、超音波探傷試験で取得した画像情報、超音波探傷試験で取得した画像情報、放射線透過試験で取得した画像情報、それぞれにステップS16もしくはステップS17で行った溶接部の溶接欠陥の有無の判断結果の情報を付加した情報を新たな教師ありデータとして、記憶部に記憶されている教師ありデータに追加して記憶する(ステップS18)。このように、教師ありデータを蓄積することで、以後の溶接部の溶接欠陥の有無を判断するための検査の精度を向上することができる。
【0050】
以上に説明したように、本実施形態に係る配管溶接部の検査装置1は、カメラ11およびレーザー光計測装置12を取付て溶接部の周囲を回転する取付装置50を有する。取付装置50は、第1の配管もしくは第2の配管の周囲に配置されるレール台51と、レール台51に沿って溶接部の周囲を移動するリングレールギア52と、リングレールギア52にカメラ11およびレーザー光計測装置12を固定する取付台55,56と、を有する。この取付装置50を使用することにより、カメラ11およびレーザー光計測装置12は、溶接部に対して一定の角度と距離および一定の間隔を維持して、溶接部の画像を撮影することができる。したがって、本実施形態に係る配管溶接部の検査装置1は、配管溶接部の溶接欠陥の検査に使用する画像の品質を向上することができ、配管溶接部の溶接欠陥の有無を判断するための検査の精度を向上することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る配管溶接部の検査装置1は、人工知能を用いた解析プログラムに基づいて溶接部の溶接欠陥を検出しているので、膨大な量の検査画像を検証する際の検査時間を短縮することができる。また、溶接欠陥の有無の判断には、熟練者の優れた検査技術を必要としない。
【0052】
また、本実施形態に係る配管溶接部の検査装置1は、溶接部の溶接欠陥の有無の判断結果の情報をそれぞれの検査画像の画像情報に付加することで新たな教師ありデータを作成し、新たに作成された教師ありデータを記憶部に記憶された教師ありデータに追加する。そして、追加された教師ありデータを含めて、以後の溶接部の溶接欠陥の有無の判断をする。このように、教師ありデータを増やすことにより、溶接部の溶接欠陥の有無を判断するための検査の精度を向上することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る配管溶接部の検査装置1は、カメラ11で撮影した画像の画像情報、レーザー光計測装置12で撮影した画像の画像情報、浸透探傷試験で作成した画像の画像情報、磁粉浸透探傷試験で作成した画像の画像情報、超音波探傷試験で作成した画像の画像情報、放射線透過試験で作成した画像の画像情報、のように複数の試験により作成した画像の画像情報について、人工知能を用いた解析プログラムに基づいて、溶接部の溶接欠陥の有無を判断する。これにより、溶接部の溶接欠陥の有無を判断するための検査の精度を向上することができる。
【0054】
なお、上記の説明では、検査部20が、カメラ画像検査部22、レーザー画像検査部23、浸透探傷試験画像検査部24,磁粉探傷試験画像検査部25、超音波探傷試験画像検査部26,放射線浸透試験画像検査部27を備える場合について説明したが、いずれかの検査部を省略することもできる。
【0055】
また、上記の説明では、教師ありデータの作成についての説明および検査装置1に溶接欠陥の有無の判断をさせるときの説明において、突合せ溶接やソケット溶接等の溶接条件、アーク溶接やガス溶接等の溶接条件、配管の材質や配管の大きさや厚さ等の条件、などを指定しない場合について説明した。これらの条件と紐付けて教師ありデータを作成し、検査装置1に溶接欠陥の有無の判断をさせるときに、これらの条件を指定して溶接欠陥の有無を判断することにより、検査精度の向上を期待することができる。
【0056】
また、上記の説明では、カメラ画像検査部22、レーザー画像検査部23、浸透探傷試験画像検査部24,磁粉探傷試験画像検査部25、超音波探傷試験画像検査部26,放射線浸透試験画像検査部27の少なくとも何れか一つが「溶接欠陥有り」と判断した場合に、該当する溶接部について、「溶接欠陥有り」との検査結果を出力する場合について説明した。他の実施形態としては、カメラ画像検査部22、レーザー画像検査部23、浸透探傷試験画像検査部24,磁粉探傷試験画像検査部25、超音波探傷試験画像検査部26,放射線浸透試験画像検査部27の二つ以上の検査部が「溶接欠陥有り」と判断した場合に、該当する溶接部について、「溶接欠陥有り」との検査結果を出力するようにしてもよい。
【0057】
また、上記の説明では、検査部20の記憶部に予め教師ありデータを記憶しておく場合について説明した。しかし、検査に使用する人工知能を用いた解析プログラムはこれに限定されない。例えば、深層学習のアルゴリズムを用いた人工知能の場合、学習が進むにしたがって、内部での判断に使用される数式のパラメータが適正化されていく。溶接欠陥の有無の判断の正解率が十分に高くなった状態(例えば、正解率が99.9%以上)のパラメータを有する人工知能を使用する場合、教師ありデータを使用しなくても、溶接欠陥の有無の判断を行うことができる。
【0058】
また、上記の説明では、取付装置50がカメラ11用の取付台55とレーザー光計測装置12用の取付台を備える場合について説明したが、取付台55に取り付けられたカメラ11を取り外し、レーザー光計測装置12を取付台55に取り付け、2回に分けてそれぞれの計測を行ってもよい。また、取付装置50が、超音波探傷試験等に使用する計測装置の取付台を備えてもよい。
【0059】
また、上記の説明では、レールガイド512が固定軸513によりレール台本体511に回転自在に保持される場合について説明したが、レールガイド512がレール台本体511に対して回転することなく固定されてもよい。
【0060】
(変形例1)
上記の説明では、カメラ11で撮影した画像とレーザー光計測装置12で撮影した画像のそれぞれに、溶接欠陥有りもしくは溶接欠陥無しの情報を付加して教師ありデータを作成する場合について説明した。他の実施形態として、カメラ11で撮影した溶接部の指定された部分の画像と、カメラ11で撮影した溶接部の部分と同じ部分にレーザー光を照射して溶接部で反射したレーザー光を撮影した画像とを紐付けた情報に、溶接欠陥有りもしくは溶接欠陥無しの情報を付加して教師ありデータを作成してもよい。カメラ11とレーザー光計測装置12とは、決められた位置(例えば、180度離れた位置)に配置されている。したがって、カメラ11とレーザー光計測装置12の設置位置、モーター・エンコーダー54の直流モーター541の回転量、およびカメラ11とレーザー光計測装置12の撮影タイミングとの関係に基づき、溶接部の任意の部分をカメラ11で撮影した画像と、同じ部分をレーザー光計測装置12で撮影した画像とを紐付けることができる。そして、溶接欠陥の有無を検査する際には、溶接部の同じ個所をカメラ11で撮影した画像とレーザー光計測装置12で撮影した画像とを紐付けた情報について、溶接欠陥の有無を判断する。この場合、カメラ画像検査部22とレーザー画像検査部23とは、一つの検査部となる。
【0061】
配管の溶接部の形状は溶接部ごとに様々である。また、ごみの付着等により変色することもある。溶接部に変色があっても、溶接欠陥とは言えない。したがって、カメラ11で撮影した画像のみで溶接欠陥の有無を判断した場合、判断の正解率をあげることは困難である。一方、レーザー光計測装置12で撮影した画像のみで溶接欠陥の有無を判断した場合、レーザー光の照射角度との関係で溶接欠陥を抽出できない場合もあり、判断の正解率をあげることは困難である。上記の実施形態で説明したように、人工知能による両者の判断結果の論理和によって、溶接欠陥の有無を判断することもできる。カメラ11で撮影した画像とレーザー光計測装置12で撮影した画像とを紐付けない場合、例えば、カメラ11で撮影した画像に対してカメラ画像検査部22が「溶接欠陥有り」と判断し、レーザー画像検査部23が同じ位置の画像に対して「溶接欠陥無し」と判断した場合、検査装置1は、「溶接欠陥有り」と判断する。溶接欠陥がない場合でも溶接部に変色がある場合、このように誤って判断される可能性が高い。
【0062】
これに対し、カメラ11で撮影した画像とレーザー光計測装置12で撮影した画像とを紐付けた場合、検査装置1の判断結果が変わる可能性が高い。カメラ11で撮影した画像とレーザー光計測装置12で撮影した画像とを紐付けた場合と両者を紐付けない場合とでは、画像から抽出される特徴量が変わる可能性が高い。また、カメラ11で撮影した画像とレーザー光計測装置12で撮影した画像とを紐付けた場合、深層学習のアルゴリズムを用いた人工知能では、深層学習における中間層のパラメータの値が溶接欠陥の判断に特有な値に変わる可能性が高い。よって、カメラ11で撮影した画像とレーザー光計測装置12で撮影した画像とを紐付けた教師ありデータを作成し、カメラ11で撮影した画像とレーザー光計測装置12で撮影した画像とを紐付けたデータについて、溶接欠陥の有無を判断することにより、検査精度の向上を期待することができる。
【0063】
(変形例2)
変形例1の説明では、溶接部の同じ個所をカメラ11で撮影した画像とレーザー光計測装置12で撮影した画像とを紐付け、紐付けられた画像に対して、溶接欠陥有りもしくは溶接欠陥無しの情報を付加して教師ありデータを作成する場合について説明した。他の実施形態として、カメラ11で撮影した画像の画像情報、レーザー光計測装置12で撮影した画像の画像情報、浸透探傷試験で作成した画像の画像情報、磁粉浸透探傷試験で作成した画像の画像情報、超音波探傷試験で作成した画像の画像情報、放射線透過試験で作成した画像の画像情報、の複数の試験により作成した画像の画像情報を任意の組み合わせで紐付けた情報に、溶接欠陥の有無の情報を付加して教師ありデータを作成することもできる。
【0064】
(変形例3)
変形例1および2に係る発明において、突合せ溶接やソケット溶接等の溶接条件、アーク溶接やガス溶接等の溶接条件、配管の材質や配管の大きさや厚さ等の条件、などの条件と紐付けて教師ありデータを作成する。そして、検査装置1に溶接欠陥の有無の判断をさせるときに、これらの条件を指定して溶接欠陥の有無を判断する。このように、溶接条件を指定して検査することにより、検査精度の向上を期待することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1…検査装置
11…カメラ
12…レーザー光計測装置
12a…出力部
12b…受信部
20…検査部
21…入力部
22…カメラ画像検査部
23…レーザー画像検査部
24…浸透探傷試験画像検査部
25…磁粉探傷試験画像検査部
26…超音波探傷試験画像検査部
27…放射線浸透試験画像検査部
28…出力部
50…取付装置
51…レール台
511、511a、511b…レール台本体
512…レールガイド
512a…溝
513…固定軸
52…リングレールギア
521…第1部材
522…第2部材
53…パンチ錠
54…モーター・エンコーダー
541…直流モーター
542…歯車
55…取付台
56…取付台
561…角度調整機構
58…装置保持脚
581…スライド部
582…固定部
101…第1の配管
102…第2の配管
W…溶接部
【要約】
【課題】配管溶接部の溶接欠陥の有無を判断するための検査の精度を向上する。
【解決手段】実施形態に係る配管溶接部の検査装置は、カメラとレーザー光計測装置と取付装置と検査部とを有する。カメラは、溶接により接続された第1の配管と第2の配管の溶接部を撮影する。レーザー光計測装置は、溶接部にレーザー光を照射して溶接部で反射したレーザー光を撮影することで画像を作成する。取付装置は、第1の配管もしくは第2の配管の周囲に配置されるレール台と、レール台に沿って溶接部の周囲を移動するリングレールギアと、リングレールギアにカメラおよびレーザー光計測装置を固定する取付台と、を有する。検査部は、カメラおよびレーザー光計測装置で撮影した画像に基づいて溶接部の溶接欠陥の有無を判断する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5