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特許7181366アルミニウム電解コンデンサ用電解液、およびそれを用いたアルミニウム電解コンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】アルミニウム電解コンデンサ用電解液、およびそれを用いたアルミニウム電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/035 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
H01G9/035
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021166675
(22)【出願日】2021-10-11
(62)【分割の表示】P 2019071853の分割
【原出願日】2016-02-25
(65)【公開番号】P2022002341
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2015048097
(32)【優先日】2015-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015225601
(32)【優先日】2015-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 孝四郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀基
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-071238(JP,A)
【文献】特開平03-126210(JP,A)
【文献】特開2011-003813(JP,A)
【文献】特開2012-028752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/035
H01G 9/145
H01G 11/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンのアルキレンオキサイド付加物(A)、2級または3級アミン(B)、カルボン酸(C)、および極性溶媒(D)を含有し、前記(A)中のアルキレンオキサイドがエチレンオキサイドのみであるか、又はエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのみであり、前記(A)において、グリセリンと反対側のアルキレンオキサイドの末端はいずれも水酸基であり、前記カルボン酸(C)が飽和脂肪族ポリカルボン酸であり、前記(B)および(C)の合計重量が、前記(A)~(D)の合計重量に対して10.5~12.1重量%であることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
【請求項2】
アルキレンオキサイド付加物(A)中のアルキレンオキサイドがエチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)の併用であり、EO/POのモル比が50/50~99/1である請求項1に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
【請求項3】
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加形式がランダム状の部位を含む請求項2に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
【請求項4】
(A)中のエチレンオキサイドの平均付加モル数が12.0~42.0である請求項1~3いずれかに記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
【請求項5】
(A)の数平均分子量が1,000~2,200である請求項1~4いずれかに記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
【請求項6】
(A)~(D)の合計重量に基づいて、(A)の含有量が5~40重量%である請求項1~5いずれかに記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
【請求項7】
請求項1~6いずれかに記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液を用いたアルミニウム電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウム電解コンデンサ用電解液および、それを用いたアルミニウム電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電解液を含むアルミニウム電解コンデンサはアルミニウム表面に誘電体としての酸化アルミニウムが設けられている陽極と、集電用の陰極と、陽極および陰極の間に配置された電解液を保持したセパレーターとが密封ケース内に収容された構造を有しており、巻回型、積層型の形状のものが広く知られている。これらのコンデンサでは、電解液が誘電体に直接接触して真の陰極として作用するため、電解液の種類はアルミニウム電解コンデンサの特性を大きく左右する。
【0003】
電解コンデンサには、エチレングリコールなどの極性溶媒と、アゼライン酸や1,6-デカンジカルボン酸のアンモニア塩が広く使用されている(例えば、特許文献1)。これらの電解液に、さらに火花電圧を上げる目的でポリビニルアルコールやポリオキシエチレングリコールを添加することも知られている(例えば、特許文献2)。
しかし、ポリビニルアルコールは極性溶媒(例えばエチレングリコール)に溶解せず、不均一系の電解液となってしまい、加熱によりさらに増粘し、高温での使用に問題がある。また、使用するポリオキシエチレングリコールは低分子量では火花電圧の向上効果が低く、高分子量化すると電導度が低下することが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-76974号公報
【文献】特開2008-78687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、火花電圧が高く、加熱後も電導度が低下せずに充分高いアルミニウム電解コンデンサ用に好適な電解液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、3~8価の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(A)、2級または3級アミン(B)、カルボン酸(C)、および極性溶媒(D)を含有することを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電解液;並びにそれを用いたアルミニウム電解コンデンサである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、火花電圧が高く、加熱処理後も電導度が低下せずに高く維持できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液には、3~8価の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(A)、2級または3級アミン(B)、カルボン酸(C)、および極性溶媒(D)が含まれる。
【0009】
本発明におけるアルキレンオキサイド付加物(A)は、3~8価の多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物であり、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド(以下、EOと略称することがある。)、プロピレンオキサイド(以下、POと略称することがある。)、ブチレンオキサイドなどが挙げられ、単独でも、2種以上を併用してもよい。
アルキレンオキサイド付加物(A)におけるアルキレンオキサイドの種類は、電極へ浸透しやすいという観点から、エチレンオキサイドを含むことが好ましい。
本発明において、アルキレンオキサイド付加物(A)は単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0010】
また、低温特性の観点で、エチレンオキサイドを、それ以外のアルキレンオキサイドと併用することが好ましい。火花電圧を高くする観点から、アルキレンオキサイド付加物(A)中のアルキレンオキサイドは、より好ましくは、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)の併用である。
その場合、電極へ浸透しやすくするという観点から、EO/POのそのモル比は、50/50~99/1が好ましく、より好ましくは、65/35~99/1である。
また、アルキレンオキサイド付加物(A)においては、アルキレンオキサイドの末端の多価アルコールと反対側の水酸基はアルキル基、アリル基などで置換されていてもよい。
EO/POのモル比は、水酸基価で全体の分子量を算出し、さらにプロトン核磁気共鳴装置(H-NMR)でPOのメチル基とEO、POのメチレン基のピーク面積比から算出できる。
【0011】
本発明における(A)は、3~8価の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物であるが、1価アルコールまたは2価アルコールのアルキレンオキサイド付加物では、電導度が不良となる。3~8価の多価アルコールは、好ましくは3~6価の多価アルコールである。3~8価の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、糖の還元から得られる多価アルコールが挙げられる。
【0012】
アルキレンオキサイド付加物(A)中のアルキレンオキサイドはエチレンオキサイドを含むことが好ましいが、(A)中のエチレンオキサイドの平均付加モル数が12.0~42.0であることがより好ましく、最も好ましくは、18.0~30.0モルである。平均付加モル数が12.0モル未満であると火花電圧の向上効果が低く、42.0モルを超えると粘度が上がりすぎて電導度が下がる。
エチレンオキサイドの平均付加モル数は、水酸基価で全体の分子量を算出し、さらにプロトン核磁気共鳴装置(H-NMR)でPOのメチル基とEO、POのメチレン基のピーク面積比から算出できる。
【0013】
3~8価の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(A)の数平均分子量は、電導度の観点から1,000~2,200が望ましい。なお、この数平均分子量は水酸基価から計算される数平均分子量を表す。水酸基価は、JIS-K 1557-1に規定される方法に準拠して測定される。
【0014】
アルキレンオキサイド付加物(A)の合成方法として、3~8価の多価アルコールに水酸化カリウム、または水酸化ナトリウム触媒のもとアルキレンオキサイドを反応させるのが一般的である。
【0015】
アルキレンオキサイドとしてEOとPOを併用する場合は、EO/POの付加形式はランダム状でもブロック状でもよいが、低温での溶解性の観点からランダム状の部位を含むことが好ましく、ランダム状がより好ましい。
EO/POの付加形式をランダム状にするには、あらかじめ、EOとPOをボンベ中で混合して、均一にし、得られた混合物を多価アルコールに滴下することによって作製できる。
一方、EO/POの付加形式をブロック状にするには、まず、EO(またはPO)を多価アルコールに反応させた後、圧力が低下し反応が終わったことを確認後、PO(またはEO)を反応させる。
【0016】
さらに、アルキレンオキサイドを2元ではなく3元で組み合わせてブロック状とランダム状とが共にある場合は、EO(またはPO)を多価アルコールに反応させた後、あらかじめ、EOとPOをボンベ中に均一にした混合物を滴下する。また、その反対に、あらかじめ、EOとPOをボンベ中に均一にした混合物を多価アルコールに滴下した後、EO(もしくは、PO)を反応させてもよい。
【0017】
本用途であるアルミニウム電解コンデンサ用途では、金属イオンはコンデンサのショートの原因となるため、電解液に含まれるカリウムまたは、ナトリウムを吸着処理等で、10ppm以下に好ましくは1ppm以下にする必要がある。本発明におけるアルキレンオキサイド付加物(A)も吸着処理でカリウム、またはナトリウムを低減している。
【0018】
アルミニウム電解コンデンサ用電解液には電解質を含有する必要があるが、本発明においては、電解質は2級または3級アミン(B)と、カルボン酸(C)を含有する。
電導度変化率を低くするために、アミン化合物は、2級アミンまたは3級アミンである。
【0019】
本発明における2級または3級アミン(B)は、具体的には、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどの2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミンなどの3級アミンなどが挙げられる。
好ましくはトリエチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミンである。また、2級または3級アミン(B)は、単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明におけるカルボン酸(C)としては、2~4価のポリカルボン酸(C1)、モノカルボン酸(C2)などが挙げられる。
カルボン酸(C)の炭素数は2~15が望ましく、さらに比電導度の観点から4~10が好ましい。カルボン酸(C)も、単独使用でも2種以上を併用してもよい。
以下に具体例を示す。
【0021】
2~4価のポリカルボン酸(C1)
コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,6-デカンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸などの脂肪族ポリカルボン酸;マレイン酸、シトラコン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和ポリカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸;チオジプロピオン酸などのS含有ポリカルボン酸など。
【0022】
モノカルボン酸(C2)
飽和モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エチルヘキサン酸などの脂肪族モノカルボン酸);アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸などの不飽和モノカルボン酸;安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸などの芳香族モノカルボン酸。
【0023】
これらの中で、脂肪族ポリカルボン酸が好ましく、2価の脂肪族カルボン酸がより好ましく、さらに、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,6-デカンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸が好ましい。もっとも好ましいのはアゼライン酸である。
【0024】
2級または3級アミン(B)とカルボン酸(C)の比率は任意であるが、(C)が2価の場合は、モル比で(B):(C)が、1.1:1~1.6:1が好ましく、カルボン酸(C)が1価の場合は、0.5:1~0.7:1の範囲が好ましい。
【0025】
2級または3級アミン(B)とカルボン酸(C)の合計重量は(A)~(D)の合計重量に対して5~40重量%が好ましく、6~30重量%がより好ましく、さらに好ましくは、10~20重量%である。
【0026】
本発明における極性溶媒(D)には、(1)アルコール、(2)アミド、(3)ラクトン、(4)ニトリル、(5)スルホンおよび(6)その他の極性の有機溶媒が含まれる。
【0027】
(1)アルコール
1価アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、アミノアルコール、フルフリルアルコールなど)、2価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコールなど)、3価アルコール(グリセリンなど)、4価以上のアルコール(ヘキシトールなど)など。
【0028】
(2)アミド
ホルムアミド(N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミドなど)、アセトアミド(N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-エチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミドなど)、プロピオンアミド(N,N-ジメチルプロピオンアミドなど)、ピロリドン(N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなど)、ヘキサメチルホスホリルアミドなど。
【0029】
(3)ラクトン
γ-ブチロラクトン(以下、GBLと記す。)、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトンなど。
【0030】
(4)ニトリル
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、ベンゾニトリルなど。
【0031】
(5)スルホン
スルホラン、ジメチルスルホキシド、エチルメチルスルホンなど。
【0032】
(6)その他の有機溶媒
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなど。
【0033】
極性溶媒(D)として使用する有機溶媒は、単独使用でもよいし2種以上を併用してもよい。これらのうち、アルコールが好ましく、2価アルコールがより好ましく、さらに好ましくはエチレングリコールである。
【0034】
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液中のアルキレンオキサイド付加物(A)の含有量は、(A)~(D)の合計重量に基づいて、耐電圧と電導度の観点から通常3~40重量%、好ましくは5~40重量%、より好ましくは5~30重量%である。3重量%未満であると、耐電圧を上げる効果が低く、40重量%を超えると、電導度が低くなる。
【0035】
2級または3級アミン(B)の含有量は、(A)~(D)の合計重量に基づいて、通常1~10重量%、好ましくは1.5~5重量%である。
カルボン酸(C)の含有量は、(A)~(D)の合計重量に基づいて、通常5~20重量%、好ましくは7~15重量%である。
極性溶媒(D)の含有量は、(A)~(D)の合計重量に基づいて、通常50~90重量%、好ましくは60~80重量%である。
【0036】
本発明の電解液のpHは通常8.0以下であり、好ましくは6.0~7.0であり、(B)、および(C)の添加量をpHがこの範囲となるような条件が選択される。
【0037】
本発明の電解液には必要により、電解液に通常用いられる種々の添加剤を添加することができる。添加剤は単独使用でもよいし2種以上を併用してもよい。
添加剤としては、ニトロ化合物(例えば、o-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸、o-ニトロフェノール、p-ニトロフェノールなど)、ホウ酸などを挙げることができる。その添加量は、比電導度と電解液への溶解度の観点から、電解液の重量に基づいて、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは0.1~2重量%がよい。
【0038】
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液の製造方法は特に限定されないが、例えば、2級または3級アミン(B)及びカルボン酸(C)を極性溶媒(D)に溶解させた溶液中に、アルキレンオキサイド付加物(A)を溶解させることで得ることができる。また、アルキレンオキサイド付加物(A)を極性溶媒(D)に溶解させた溶液と、2級または3級アミン(B)及びカルボン酸(C)を極性溶媒(D)に溶解させた溶液とを混合することによっても電解液を製造することができる。極性溶媒(D)に(A)~(C)を溶解させる方法としては、製造スケールにもよるが、例えば、通常の櫂型撹拌羽根を用いて、室温で撹拌する方法等が挙げられる。
【0039】
本発明の電解液は、アルミニウム電解コンデンサ用である。
本発明のアルミニウム電解コンデンサは、本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液を用いたことを特徴とする。
アルミニウム電解コンデンサとしては、特に限定されず、例えば、捲き取り形の電解コンデンサであって、陽極表面に酸化アルミニウムが形成された陽極(酸化アルミニウム箔)と陰極アルミニウム箔との間に、セパレーターを介在させて捲回することにより構成されたコンデンサが挙げられる。本発明の電解液を駆動用電解液としてセパレーターに含浸し、陽陰極と共に、有底筒状のアルミニウムケースに収納した後、アルミニウムケースの開口部を封口ゴムで密閉して電解コンデンサを構成することができる。
【0040】
次に本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例
【0041】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
数平均分子量は水酸基価から計算される数平均分子量である。水酸基価は、JIS-K 1557-1に規定される方法に準拠して測定した。
【0042】
製造例1
ソルビトール182重量部(1mol)に水酸化カリウム1.1重量部(0.02mol)を添加し、170℃でエチレンオキサイド1,056重量部(24mol)を反応させ、圧平衡に達したところで終点とした。
その後、カリウム除去のためにキョーワード600、およびキョーワード700(いずれも製品名、協和化学工業株式会社製の吸着剤)を用いて吸着処理を行い、カリウム含量1ppm以下であることも確認した。プロトン核磁気共鳴装置(H-NMR)チャートと、水酸基価でソルビトールのエチレンオキサイド24モル付加物(A-1)を得たことを確認した。(A-1)の数平均分子量は1,240であった。
【0043】
製造例2
ソルビトールをペンタエリスリトール136重量部(1mol)に変更した以外は、製造例1と同様にしてペンタエリスリトールのエチレンオキサイド24モル付加物(A-2)を得た。(A-2)の数平均分子量は1,100であった。
【0044】
製造例3
ソルビトールをグリセリン92重量部(1mol)に変更した以外は、製造例1と同様にしてグリセリンのエチレンオキサイド24モル付加物(A-3)を得た。(A-3)の数平均分子量は1,080であった。
【0045】
製造例4
エチレンオキサイド1,056重量部単独を、エチレンオキサイド1,056重量部(24mol)とプロピレンオキサイド174重量部(3mol)の混合物とした以外は製造例1と同様にしてソルビトールのエチレンオキサイド24モル/プロピレンオキサイド3モルのランダム付加物(A-4)を得た。(A-4)の数平均分子量は1,300であった。
【0046】
製造例5
ソルビトールをグリセリン92重量部(1mol)に変更し、エチレンオキサイド単独を、エチレンオキサイド660重量部(15mol)とプロピレンオキサイド812重量部(14mol)の混合物とした以外は製造例1と同様にしてグリセリンのエチレンオキサイド15モル/プロピレンオキサイド14モルのランダム付加物(A-5)を得た。(A-5)の数平均分子量は1,500であった。
【0047】
製造例6
ソルビトールをグリセリン92重量部(1mol)に変更し、エチレンオキサイド単独を、エチレンオキサイド1100重量部(25mol)とプロピレンオキサイド58重量部(1mol)の混合物とした以外は製造例1と同様にしてグリセリンのエチレンオキサイド25モル/プロピレンオキサイド1モルのランダム付加物(A-6)を得た。(A-6)の数平均分子量は1,300であった。
【0048】
比較製造例1
エチレングリコール62重量部(1mol)に水酸化カリウム1.1重量部(0.02mol)を添加し、170℃でエチレンオキサイド1,188重量部(27mol)を反応させ、圧平衡に達したところで終点とした。その後、カリウム除去のためにキョーワード600、およびキョーワード700(いずれも製品名、協和化学工業株式会社製の吸着剤)を用いて吸着処理を行い、カリウム含量1ppm以下であることも確認した。数平均分子量が1,200であるポリオキシエチレングリコール(A’-1)を得たことを確認した。
【0049】
実施例1~11
極性溶媒(D)としてのエチレングリコール(D-1)中で、表1に記載した配合部数(重量部)で、それぞれジエチルアミン(B-1)、ジメチルアミン(B-2)、トリエチルアミン(B-3)、トリメチルアミン(B-4)とアゼライン酸(C-1)、または1,6-デカンジカルボン酸(C-2)を室温で中和させ、溶解させた。その後、(A-1)~(A-6)を添加し、均一混合して、電解液(E-1)~(E-11)を得た。
【0050】
【表1】
【0051】
比較例1
実施例1における(A-1)を、比較製造例1で得た(A’-1)に変更する以外は実施例1と同様にして、比較のための電解液(E’-1)を得た。
【0052】
比較例2
実施例1における(B-1)をn-ブチルアミン(B’-2)に変更する以外は実施例1と同様にして、比較のための電解液(E’-2)を得た。
比較例3
表1に記載した配合部数(重量部)で、エチレングリコール(D-1)中にアゼライン酸(C-1)を加えて攪拌して分散させた後、アンモニアガス(B’-1)を吹き込みpHが6.9になって(C-1)が溶解したところで吹き込みの終点とした。その後、ソルビトールのエチレンオキサイド24モル付加物(A-1)を添加し均一混合させて、比較のための電解液(E’-3)を得た。
【0053】
比較例4
表1に記載した配合部数(重量部)で、エチレングリコール(D-1)中にアゼライン酸(C-1)を分散させた後、アンモニアガス(B’-1)を吹き込みpHが6.9になって(C-1)が溶解したところで吹き込みの終点とした。その後、ポバール(PVA-105(株式会社クラレ製))を添加し、120℃で2時間混合して溶解させて、比較のための電解液(E’-4)を得た。
【0054】
比較例5
表1に記載した配合部数(重量部)で、エチレングリコール(D-1)中で、ジエチルアミン(B-1)とアゼライン酸(C-1)を室温で中和させ、溶解させた。その後、ポバール(PVA-105(株式会社クラレ製))を添加し、120℃で2時間混合して溶解させて、比較のための電解液(E’-5)を得た。
【0055】
実施例1~11および比較例1~5で得た電解液を用い、以下に示す方法で、初期電導度、125℃で1,000時間経過後の電導度変化率、火花電圧を評価し、その結果を表1に記載した。
【0056】
<初期電導度と耐熱試験後の電導度変化率>
電導度計CM-40S(東亜電波工業株式会社製)を用いて、まず、実施例、比較例の電解液の30℃での初期電導度を測定した。
この評価条件では、初期電導度は、一般に0.9mS/cm以上が好ましい。
次に、電解液を耐圧容器に密閉し、125℃の乾燥機中で1,000時間放置して耐熱試験を実施した。耐圧容器から耐熱試験後の電解液を取り出し、同じく30℃での電導度を測定した。耐熱試験前後の電導度変化率(%)を算出した。
電導度変化率(%)=[(初期電導度-耐熱試験後の電導度)/初期電導度]×100
この評価条件では、電導度変化率(%)は、一般に30%以下が好ましい。
なお、ポバールを用いた比較例4、比較例5の電解液は、耐熱試験後ゲル状になっており、電導度を測定できなかった。
【0057】
<火花電圧>
陽極に10cmの高圧用化成エッチングアルミニウム箔、陰極に10cmのプレーンなアルミニウム箔を用い、25℃にて定電流法(2mA)を負荷したときの電解液の火花電圧(V)を測定した。
この評価条件では、火花電圧は一般に450V以上が好ましい。
【0058】
性能評価の結果は、表1の通り、本発明の実施例1~11の電解液は、初期電導度、電導度変化率、火花電圧の3項目がいずれも良好であった。
一方、本発明における(A)ではないポリオキシエチレングリコール(A’-1)を用いた比較例1は初期電導度が不良であった。2級アミン、3級アミンではなく1級アミンを用いた比較例2及びアンモニアガスを用いた比較例3の電解液は電導度変化率が不良であった。
また、本発明における(A)を使わずにポバールを用いた比較例5の電解液は耐熱試験後にゲル状になってしまい、電導度が測定できなかった(電導度変化率が不良)。
同じく、本発明における(A)を使わずにポバールを用い、さらに2級アミン、3級アミンではなくアンモニアガスを用いた比較例4の電解液も、耐熱試験後にゲル状になってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液、およびそれを用いたアルミニウム電解コンデンサは、劣化が少なく、好適に使用できる。
さらに、家電、車載などの長寿命・信頼性が求められる用途に好適である。