(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】放電加工機用電源装置の診断装置
(51)【国際特許分類】
B23H 1/02 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
B23H1/02 Z
(21)【出願番号】P 2021169869
(22)【出願日】2021-10-15
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝智
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-97312(JP,A)
【文献】特開平7-1238(JP,A)
【文献】特開2018-8355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電加工機によってワークを放電加工するために予め決定された間隙を設けて互いに対向するワーク及び電極から構成される極間にパルス状の電圧を印加する放電加工機用電源装置の診断装置であって、
放電加工機の導電部を介して放電加工機用電源装置の一方の側と導通可能な第1の接触子と、
ワークを配置したテーブルの導電部を介して放電加工機用電源装置の他方の側と導通可能であり、前記第1の接触子と接触又は離間可能な第2の接触子と、
前記第1の接触子と前記第2の接触子とが接触した状態において放電加工機用電源装置に直列に接続され、極間の絶縁破壊によって生じた電流を模擬した模擬電流を、放電加工機用電源装置の印加電圧に基づいて生成する模擬電流生成部と、
前記模擬電流を検出し、前記模擬電流に基づいて放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定を行う判定部と、
を備える、放電加工機用電源装置の診断装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記模擬電流の平均電流と前記模擬電流のオンタイム及びオフタイムのうちの少なくとも一つに基づいて放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定を行う、請求項1に記載の放電加工機用電源装置の診断装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記模擬電流を生成する前に、前記第1の接触子と前記第2の接触子とが接触した状態又は前記第1の接触子と前記第2の接触子とが接触しない状態において放電加工機用電源装置によって生成される極間の絶縁破壊前の電圧を模擬した模擬電圧を検出し、前記模擬電圧に基づいて放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定を行う、請求項1に記載の放電加工機用電源装置の診断装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記模擬電圧のピーク電圧と前記模擬電圧の立上り時間のうちの少なくとも一つに基づいて放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定を行う、請求項3に記載の放電加工機用電源装置の診断装置。
【請求項5】
前記模擬電流生成部は、放電加工機用電源装置に直列に接続された抵抗器を有し、前記抵抗器は、前記絶縁破壊が生じたときの極間の抵抗値に相当する抵抗値を有する、請求項3に記載の放電加工機用電源装置の診断装置。
【請求項6】
前記模擬電流生成部は、前記抵抗器に直列に接続されたスイッチング素子を更に有し、前記スイッチング素子は、前記模擬電圧を生成する際に放電加工機のNC装置によって開状態にされ、前記模擬電流を生成する際に放電加工機のNC装置によって閉状態にされる、請求項5に記載の放電加工機用電源装置の診断装置。
【請求項7】
前記スイッチング素子は、コンタクタスイッチである、請求項6に記載の放電加工機用電源装置の診断装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記第1の接触子と前記第2の接触子との接触不良の有無についての判定を行う、請求項1に記載の放電加工機用電源装置の診断装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記スイッチング素子の動作不良の有無についての判定を行う、請求項6に記載の放電加工機用電源装置の診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電加工機用電源装置の診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電加工機によってワークを放電加工(細穴放電加工、形彫放電加工等)するために、予め決定された間隙を設けて互いに対向するワーク及び電極から構成される極間にパルス状の電圧を印加する放電加工機用電源装置が使用される。このような放電加工機用電源装置は、電流を生成するための電圧を極間に印加するために極間に直列に接続した直流電源と、極間と直流電源の間に配置したスイッチング素子と、を備え、極間とスイッチング素子の間にケーブルが介在する。
【0003】
従来、ワークの加工中の極間の放電電圧、放電電流又はインピーダンスのレベルを検出し、放電電圧、放電電流又はインピーダンスの検出レベルが所定条件を満たさないときに異常放電が発生したと判断する放電加工機が提案されている(例えば、特許文献1)。このような放電加工機では、不良品が生じるのを回避するために、異常放電を除去した後に正常放電を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の放電加工機では、放電加工機用電源装置に故障のような異常がある場合にはワークの加工中に生じる異常放電を除去した後に正常放電を発生させることができない。異常がある放電加工機用電源装置を使用した放電加工機によってワークを放電加工した場合、不良品が生じるのを回避することができない。
【0006】
本発明の目的は、放電加工機によってワークを放電加工する前に放電加工機用電源装置の異常の有無についての診断を行うことができる放電加工機用電源装置の診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による放電加工機用電源装置の診断装置は、放電加工機によってワークを放電加工するために予め決定された間隙を設けて互いに対向するワーク及び電極から構成される極間にパルス状の電圧を印加する放電加工機用電源装置の診断装置であって、放電加工機の導電部を介して放電加工機用電源装置の一方の側と導通可能な第1の接触子と、ワークを配置したテーブルの導電部を介して放電加工機用電源装置の他方の側と導通可能であり、第1の接触子と接触又は離間可能な第2の接触子と、第1の接触子と第2の接触子とが接触した状態において放電加工機用電源装置に直列に接続され、極間の絶縁破壊によって生じた電流を模擬した模擬電流を、放電加工機用電源装置の印加電圧に基づいて生成する模擬電流生成部と、模擬電流を検出し、模擬電流に基づいて放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定を行う判定部と、を備える。
【0008】
本発明によれば、第1の接触子と第2の接触子とが接触した状態において放電加工機用電源装置に直列に接続された模擬電流生成部は、極間の絶縁破壊によって生じた電流を模擬した模擬電流を、放電加工機用電源装置の印加電圧に基づいて生成する。そして、判定部は、模擬電流を検出し、模擬電流に基づいて放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定を行う。極間の絶縁破壊によって生じた電流を模擬した模擬電流に基づいて放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定を行うので、放電加工機によるワークの放電加工前に放電加工機用電源装置の異常の有無についての診断を行うことができる。
【0009】
また、本発明によれば、放電加工機によってワークを放電加工する前に放電加工機用電源装置の異常の有無についての診断を行うことにより、放電加工機用電源装置に異常がある場合に放電加工機用電源装置の故障個所の修理、放電加工機用電源装置の交換等を行うことができる。放電加工機用電源装置の故障個所の修理、放電加工機用電源装置の交換等を行うことによって、放電加工機用電源装置を正常にすることができるので、異常がある放電加工機用電源装置を使用した放電加工機によるワークの放電加工によって不良品が生じるのを回避することができる。
【0010】
さらに、本発明によれば、異常がある放電加工機用電源装置を使用した放電加工機によるワークの放電加工によって不良品が生じるのを回避することができる。したがって、異常がある放電加工機用電源装置を使用した放電加工機によるワークの放電加工によって不良品が生じた際の点検のためのワークの加工の中断及び不良品の処分を必要としない。また、異常がある放電加工機用電源装置を使用した放電加工機によるワークの放電加工によって不良品が生じる際の電極の消耗を回避することができる。
【0011】
好適には、判定部は、模擬電流の平均電流と模擬電流のオンタイム及びオフタイムのうちの少なくとも一つに基づいて放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定を行う。放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定を模擬電流の平均電流と模擬電流のオンタイム及びオフタイムのうちの少なくとも一つに基づいて行うことによって、放電加工機によるワークの放電加工前に放電加工機用電源装置の異常の有無についての診断を正確に行うことができる。
【0012】
好適には、判定部は、模擬電流を生成する前に、第1の接触子と第2の接触子とが接触した状態又は第1の接触子と第2の接触子とが接触しない状態において放電加工機用電源装置によって生成される極間の絶縁破壊前の電圧を模擬した模擬電圧を検出し、模擬電圧に基づいて放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定を行う。これによって、模擬電流を生成する前に放電加工機用電源装置の異常の有無についての診断を行うことができる。
【0013】
好適には、判定部は、模擬電圧のピーク電圧と模擬電圧の立上り時間のうちの少なくとも一つに基づいて放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定を行う。放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定を模擬電圧のピーク電圧と模擬電圧の立上り時間のうちの少なくとも一つに基づいて行うことによって、模擬電流を生成する前に放電加工機用電源装置の異常の有無についての診断を正確に行うことができる。
【0014】
好適には、模擬電流生成部は、放電加工機用電源装置に直列に接続された抵抗器を有し、抵抗器は、絶縁破壊が生じたときの極間の抵抗値に相当する抵抗値を有する。このような抵抗器を使用することよって、模擬電流は、極間の絶縁破壊によって生じた電流を正確に模擬することができる。
【0015】
好適には、模擬電流生成部は、抵抗器に直列に接続されたスイッチング素子を更に有し、スイッチング素子は、模擬電圧を生成する際に放電加工機のNC装置によって開状態にされ、模擬電流を生成する際に放電加工機のNC装置によって閉状態にされる。このようなスイッチング素子を使用することによって、模擬電圧及び模擬電流を迅速に生成することができる。
【0016】
好適には、スイッチング素子は、コンタクタスイッチである。スイッチング素子としてコンタクタスイッチを使用することによって、放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定のばらつきを減少させることができる。
【0017】
好適には、判定部は、第1の接触子と第2の接触子との接触不良の有無についての判定を行う。このように第1の接触子と第2の接触子との接触不良の有無についての判定を行うことによって、第1の接触子と第2の接触子との接触不良がある場合に第1の接触子と第2の接触子との接触不良の個所の修理を行うことができる。
【0018】
好適には、判定部は、スイッチング素子の動作不良の有無についての判定を行う。このようにスイッチング素子の動作不良の有無についての判定を行うことによって、スイッチング素子の動作不良がある場合にスイッチング素子の交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施の形態による放電加工機用電源装置の診断装置を有するシステムを示す図である。
【
図2】
図1の放電加工機用電源装置の診断装置によって検出される模擬電圧を示す図である。
【
図3】
図1の放電加工機用電源装置の診断装置によって検出される模擬電流を示す図である。
【
図4】コンタクタスイッチの動作不良の有無及び接触子の接触不良の有無についての判定の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図5】コンタクタスイッチの動作不良の有無及び模擬電圧に基づく放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】コンタクタスイッチの動作不良の有無及び模擬電流に基づく放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図7】本発明の他の実施の形態による放電加工機用電源装置の診断装置を有するシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による放電加工機用電源装置の診断装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による放電加工機用電源装置の診断装置を有するシステムを示す図である。
図1において、診断装置1は、放電加工機用電源装置2の異常の有無についての診断を行う。すなわち、診断装置1は、放電加工機用電源装置2の異常の有無について判定し、異常がある場合には、放電加工機用電源装置2に異常がある旨のアラームを生成して表示する。診断装置1は、放電加工機用電源装置の診断装置の一例である。
【0021】
放電加工機用電源装置2は、加工槽3の中の放電加工液に浸漬されたテーブル4に配置されたワーク5を細穴放電加工機6によって放電加工する。このために、放電加工機用電源装置2は、予め決定された間隙を設けて互いに対向するワーク5及びパイプ電極7から構成される極間にケーブル8を介してパルス状の電圧を印加する。細穴放電加工機6は、放電加工機の一例である。パイプ電極7は、電極の一例である。
【0022】
放電加工機用電源装置2は、直流電源(図示せず)と、NMOSトランジスタのようなスイッチング素子(図示せず)と、を有する。放電加工機用電源装置2のスイッチング素子には、ワーク5の加工条件設定(この場合、細穴放電加工)、後に説明する診断条件等に対応するパルス発生条件に基づいてパルス発生回路9によって発生するパルス信号が入力される。放電加工機用電源装置2のスイッチング素子は、パルス信号に応じて、放電加工機用電源装置2の直流電源による細穴放電加工機6への給電の制御を行う。ワーク5の加工条件設定は、ワーク5の材質、パイプ電極7の材質、ワーク5の加工形状等に関連して決定される。パルス発生条件は、パルス列のパルスオンオフ時間、パルス列のパルス数、パルス休止時間等を含む。
【0023】
加工槽3には、テーブル4の他にスタンド21が配置される。スタンド21の上端には、絶縁部22が設けられる。テーブル4は、矢印Aに沿って旋回可能にワーク5を支持することができる傾斜テーブル23と、矢印Bに沿って旋回可能にワーク5を支持する回転テーブル24と、導電材料によって構成されるとともに回転テーブル24に設けられた導電部25と、を有する。
【0024】
細穴放電加工機6は、ワーク5を放電加工するために設けられる。細穴放電加工機6は、電極ホルダ31が装着された主軸装置32と、給電線33が内蔵されたガイドアーム34と、パイプ電極7に直接的に接触して給電するためにガイドアーム34の先端部に取り付けられることによって給電線33に導通(電気的に接続)した給電ベース35と、を備える。電極ホルダ31は、パイプ電極7を保持する。また、給電線33は、一端が放電加工機用電源装置2の一方の側(例えば、放電加工機用電源装置2の直流電源のプラス側)に接続されたケーブル8と導通する。給電線33及び給電ベース35は、放電加工機の導電部の一例である。
【0025】
主軸装置32は、細穴放電加工機6のサーボモータ(図示せず)によって、3次元座標系のX軸、Y軸及びZ軸に沿って移動可能である。ガイドアーム34及び給電ベース35は、細穴放電加工機6のサーボモータによって、主軸装置32に対してZ軸に平行な移動軸であるW軸に沿ってa方向又はb方向に移動可能である。
【0026】
診断装置1は、接触子11,12と、模擬電流生成部13と、電圧検出部としてのオペアンプ14と、電流検出部15と、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)16,17と、演算部18,19と、NC装置20と、を備える。
【0027】
接触子11は、給電ベース35に取り付けられ、給電線33、給電ベース35及びケーブル8を介して放電加工機用電源装置2の一方の側と導通する。
【0028】
接触子12は、絶縁部22の上に設けられ、導電部25を介して放電加工機用電源装置2の他方の側(例えば、放電加工機用電源装置2の直流電源のマイナス側)と導通可能である。導電部25は、テーブルの導電部の一例である。
【0029】
主軸装置32がスタンド21の真上でX軸、Y軸及びZ軸に沿って移動した後、接触子11がガイドアーム34及び給電ベース35と共にW軸に沿ってa方向又はb方向に移動することによって、接触子11と接触子12とが相対的に移動する。これによって、接触子12は、接触子11と接触又は離間可能となる。
【0030】
模擬電流生成部13は、接触子11と接触子12とが接触した状態であるときに放電加工機用電源装置2に直列に接続される。模擬電流生成部13は、コンタクタスイッチ13aと、抵抗器13bと、を有する。コンタクタスイッチ13aは、抵抗器13bに直列に接続される。コンタクタスイッチ13aは、スイッチング素子の一例である。抵抗器13bは、放電加工機用電源装置2に直列に接続され、極間に絶縁破壊が生じたときのワーク5とパイプ電極7の間の抵抗値に相当する抵抗値を有する。
【0031】
本実施の形態では、模擬電流生成部13は、接触子11と接触子12とが接触した状態であるとともにコンタクタスイッチ13aが閉状態であるときに、放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13に対する印加電圧に基づいて模擬電流Isimを生成する。模擬電流Isimは、極間の絶縁破壊によって生じた電流を模擬した電流である。
【0032】
電圧検出部は、放電加工機用電源装置2前後の電圧を、オペアンプ14を通して検出する。オペアンプ14は、放電加工機用電源装置2に並列に接続され、非反転入力部及び反転入力部と、ADC16の入力部に接続された出力部と、を有する。
【0033】
本実施の形態では、電圧検出部としてのオペアンプ14は、接触子11と接触子12とが接触した状態であるとともにコンタクタスイッチ13aが開状態であるときに、放電加工機用電源装置2によって生成される極間の絶縁破壊前の電圧を模擬した模擬電圧Vsimを検出する。そして、オペアンプ14は、検出した模擬電圧VsimをADC16の入力部に出力する。
【0034】
電流検出部15は、シャント抵抗器15aと、電流センスアンプ15bと、を有する。シャント抵抗器15aは、導電部25と放電加工機用電源装置2の間に接続される。電流センスアンプ15bは、抵抗器13bに流れる電流の値に対応するシャント抵抗器15aの両端の電圧を増幅してADC17の入力部に出力する。
【0035】
本実施の形態では、電流検出部15は、接触子11と接触子12とが接触した状態であるとともにコンタクタスイッチ13aが閉状態であるときに、極間の絶縁破壊によって生じた電流を模擬した模擬電流Isimの値に対応するシャント抵抗器15aの両端の電圧を検出する。そして、電流検出部15は、検出した電圧をADC17の入力部に出力する。
【0036】
ADC16は、電圧検出部としてのオペアンプ14が検出した模擬電圧Vsimをアナログ-デジタル変換し、アナログ-デジタル変換した模擬電圧Vsimを演算部18に出力する。ADC17は、電流検出部15が検出した電圧をアナログ-デジタル変換し、アナログ-デジタル変換した電圧を演算部19に出力する。
【0037】
演算部18,19は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)によって構成される。演算部18は、模擬電圧Vsimのピーク電圧及び模擬電圧Vsimの立上り時間を演算する。演算部19は、演算部19の記憶部(図示せず)に格納された電圧及び電流の関係を表すテーブルに基づいて電流センスアンプ15bから出力された電圧の値を電流の値に変換することによって、模擬電流Isimの値を取得する。
【0038】
そして、演算部19は、模擬電流Isimの平均電流並びに模擬電流Isimのオンタイム及びオフタイムを演算し、模擬電流Isimの平均電流並びに模擬電流Isimのオンタイム及びオフタイムのデータを演算部18に供給する。演算部18は、模擬電圧Vsimのピーク電圧、模擬電圧Vsimの立上り時間模擬電流Isimの平均電流並びに模擬電流Isimのオンタイム及びオフタイムのデータをNC装置20に供給する。
【0039】
NC装置20は、加工条件設定を記述したNCプログラムをNC装置20の記憶部(図示せず)から読み取るとともに解釈し、加工条件設定をパルス発生回路9に供給する。また、NC装置20は、主軸装置32をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に駆動するサーボモータ並びにガイドアーム34及び給電ベース35をW軸方向に駆動するサーボモータを制御する。また、NC装置20は、コンタクタスイッチ13aの開状態又は閉状態の制御を行う。
【0040】
本実施の形態では、NC装置20は、模擬電圧Vsimのピーク電圧、模擬電圧Vsimの立上り時間、模擬電流Isimの平均電流並びに模擬電流Isimのオンタイム及びオフタイムのデータに基づいて、放電加工機用電源装置2の異常の有無についての判定を行う。具体的には、NC装置20の記憶部は、上述したように放電加工機用電源装置2の異常の有無についての判定を行うための後に説明するコンピュータプログラムを格納する。NC装置20は、上述したように放電加工機用電源装置2の異常の有無についての判定を行うための回路を備えてもよい。電圧検出部としてのオペアンプ14、電流検出部15、ADC16,17、演算部18,19及びNC装置20の組合せは、判定部の一例である。
【0041】
図2は、
図1の放電加工機用電源装置の診断装置によって検出される模擬電圧を示す図である。NC装置20は、模擬電圧V
simのピーク電圧V
Pの値が予め決定された範囲にあるか否かを判定する。例えば、NC装置20は、ピーク電圧V
Pの値がピーク電圧の予め決定された基準値の95%以上105%以下であるか否かを判定する。模擬電圧V
simのピーク電圧V
Pの値が予め決定された範囲にある場合、NC装置20は、放電加工機用電源装置2に異常がないと判定する。それに対し、模擬電圧V
simのピーク電圧V
Pの値が予め決定された範囲にない場合、NC装置20は、放電加工機用電源装置2に異常があると判定する。そして、NC装置20は、細穴放電加工機6の動作を停止させ、放電加工機用電源装置2に異常がある旨のアラームをNC装置20の表示部(図示せず)に表示する。NC装置20の表示部は、例えば、タッチパネルディスプレイによって構成される。
【0042】
また、NC装置20は、模擬電圧Vsimの立上り時間trが予め決定された範囲にあるか否かを判定する。例えば、NC装置20は、立上り時間trが立上り時間trの予め決定された基準値の95%以上105%以下であるか否かを判定する。立上り時間trが予め決定された範囲にある場合、NC装置20は、放電加工機用電源装置2に異常がないと判定する。それに対し、立上り時間trが予め決定された範囲にない場合、NC装置20は、放電加工機用電源装置2に異常があると判定する。そして、NC装置20は、細穴放電加工機6の動作を停止させ、放電加工機用電源装置2に異常がある旨のアラームをNC装置20の表示部に表示する。
【0043】
図3は、
図1の放電加工機用電源装置の診断装置によって検出される模擬電流を示す図である。NC装置20は、模擬電流I
simの平均電流の値I
AVRが予め決定された範囲にあるか否かを判定する。例えば、NC装置20は、平均電流の値I
AVRが平均電流の予め決定された基準値の95%以上105%以下であるか否かを判定する。平均電流の値I
AVRが予め決定された範囲にある場合、NC装置20は、放電加工機用電源装置2に異常がないと判定する。それに対し、平均電流の値I
AVRが予め決定された範囲にない場合、NC装置20は、放電加工機用電源装置2に異常があると判定する。そして、NC装置20は、細穴放電加工機6の動作を停止させ、放電加工機用電源装置2に異常がある旨のアラームをNC装置20の表示部に表示する。
【0044】
また、NC装置20は、模擬電流IsimのオンタイムtONとオフタイムtOFFの両方が予め決定された範囲にあるか否かを判定する。例えば、NC装置20は、模擬電流IsimのオンタイムtONがオンタイムの予め決定された基準値の95%以上105%以下であり、かつ、模擬電流IsimのオフタイムtOFFがオフタイムの予め決定された基準値の95%以上105%以下であるか否かを判定する。模擬電流IsimのオンタイムtONとオフタイムtOFFの両方が予め決定された範囲にある場合、NC装置20は、放電加工機用電源装置2に異常がないと判定する。それに対し、模擬電流IsimのオンタイムtONとオフタイムtOFFのうちの少なくとも一方が予め決定された範囲にない場合、NC装置20は、放電加工機用電源装置2に異常があると判定する。そして、NC装置20は、細穴放電加工機6の動作を停止させ、放電加工機用電源装置2に異常がある旨のアラームをNC装置20の表示部に表示する。
【0045】
図4は、コンタクタスイッチの動作不良の有無及び接触子の接触不良の有無についての判定の動作を説明するためのフローチャートである。このフローは、NC装置20の記憶部に記憶されているコンタクタスイッチの動作不良の有無及び接触子の接触不良の有無についての判定のためのコンピュータプログラムに基づいてNC装置20によって実行される。また、このフローは、模擬電圧V
simに基づく放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定を行う前に接触子11と接触子12とが離間した状態で開始される。
【0046】
先ず、NC装置20は、コンタクタスイッチ13aを開状態にする(ステップS1)。次に、NC装置20は、ガイドアーム34及び給電ベース35をW軸に沿ってa方向に移動させることによって、接触子11が接触子12に接触した状態になるように接触子11を移動させる(ステップS2)。
【0047】
次に、NC装置20は、放電加工機用電源装置2の一方の側から他方の側までの経路が導通状態であるか否かの判定を行う(ステップS3)。放電加工機用電源装置2の一方の側から他方の側までの経路が導通状態であるか否かの判定は、例えば、放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づく電流に基づいて行われる。具体的には、放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づく電流の値が0であるか否かの判定が行われる。放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧は、NC装置20の指令に基づいてパルス発生回路9によって発生するパルス信号が放電加工機用電源装置2に入力されたときに生成される。
【0048】
放電加工機用電源装置2の一方の側から他方の側までの経路が導通状態である場合、すなわち、放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づく電流の値が0でない場合(ステップS3のYes)、NC装置20は、コンタクタスイッチの動作不良があると判定する。そして、NC装置20は、細穴放電加工機6の動作を停止させ、コンタクタスイッチの動作不良がある旨のアラームをNC装置20の表示部に表示する(ステップS4)。そして、NC装置20は、処理を終了する。
【0049】
放電加工機用電源装置2の一方の側から他方の側までの経路が導通状態でない場合、すなわち、放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づく電流の値が0である場合(ステップS3のN0)、NC装置20は、コンタクタスイッチ13aを閉状態にする(ステップS5)。
【0050】
次に、NC装置20は、放電加工機用電源装置2の一方の側から他方の側までの経路が導通状態であるか否かの判定を行う(ステップS6)。ステップS6で行われる判定は、ステップS4で行われる判定と同様である。
【0051】
放電加工機用電源装置2の一方の側から他方の側までの経路が導通状態でない場合(ステップS6のNo)、すなわち、放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づく電流の値が0である場合、NC装置20は、コンタクタスイッチの動作不良又は接触子の接触不良があると判定する。そして、NC装置20は、細穴放電加工機6の動作を停止させ、コンタクタスイッチの動作不良又は接触子の接触不良がある旨のアラームをNC装置20の表示部に表示する(ステップS7)。ステップS7の後、NC装置20は、処理を終了する。
【0052】
放電加工機用電源装置2の一方の側から他方の側までの経路が導通状態である場合、すなわち、放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づく電流の値が0でない場合(ステップS6のYes)、NC装置20は、診断条件を設定する(ステップS8)。診断条件は、放電加工機用電源装置の異常の有無についての診断後に実行される加工の種類(仕上げ加工、粗加工、細穴放電加工等)に応じて設定される放電加工機用電源装置2の印加電圧の大きさ及び供給電流の大きさ等である。ステップS8の後、NC装置20は、処理を終了する。
【0053】
図5は、コンタクタスイッチの動作不良の有無及び模擬電圧に基づく放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定の動作を説明するためのフローチャートである。このフローは、コンタクタスイッチの動作不良の有無及び模擬電圧に基づく放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定のためのコンピュータプログラムに基づいてNC装置20によって実行される。また、このフローは、NC装置20が診断条件を設定した後に接触子11と接触子12とが接触した状態で開始される。
【0054】
先ず、NC装置20は、コンタクタスイッチ13aを開状態にする(ステップS11)。次に、NC装置20は、放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づいて模擬電圧Vsimを生成するためのパルス信号を放電加工機用電源装置2に入力する旨の指令(パルス信号入力指令)をパルス発生回路9に送信する(ステップS12)。ステップS12で送信されるパルス信号入力指令は、診断条件に基づいて設定される。
【0055】
次に、NC装置20は、放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づく電流の値が0であるか否かの判定を行う(ステップS13)。放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づく電流の値が0でない場合(ステップS13のNo)、NC装置20は、コンタクタスイッチの動作不良があると判定する。そして、NC装置20は、細穴放電加工機6の動作を停止させ、コンタクタスイッチの動作不良がある旨のアラームをNC装置20の表示部に表示する(ステップS14)。ステップS14の後、NC装置20は、処理を終了する。
【0056】
放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づく電流の値が0である場合(ステップS13のYes)、NC装置20は、模擬電圧Vsimのピーク電圧VP及び立上り時間trを演算部18から取得する(ステップS15)。
【0057】
次に、NC装置20は、放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づいて模擬電圧Vsimを生成するためのパルス信号の放電加工機用電源装置2への入力を停止する旨の指令(パルス信号停止指令)をパルス発生回路9に送信する(ステップS16)。ステップS16で送信されるパルス信号停止指令は、診断条件に基づいて設定される。次に、NC装置20は、模擬電圧Vsimのピーク電圧VP及び立上り時間trをNC装置20の記憶部に記録する(ステップS17)。
【0058】
次に、NC装置20は、模擬電圧Vsimのピーク電圧VP及び立上り時間trに基づいて放電加工機用電源装置2の異常の有無についての判定を行う(ステップS18)。放電加工機用電源装置2に異常がある場合(ステップS18のYes)、NC装置20は、放電加工機用電源装置2の異常があると判定する。そして、NC装置20は、細穴放電加工機6の動作を停止させ、放電加工機用電源装置2の異常がある旨のアラームをNC装置20の表示部に表示する(ステップS19)。ステップS19の後、NC装置20は、処理を終了する。放電加工機用電源装置2に異常がない場合(ステップS18のNo)、NC装置20は、処理を終了する。
【0059】
図6は、コンタクタスイッチの動作不良の有無及び模擬電流に基づく放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定の動作を説明するためのフローチャートである。このフローは、コンタクタスイッチの動作不良の有無及び模擬電流に基づく放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定のためのコンピュータプログラムに基づいてNC装置20によって実行される。また、このフローは、
図5のフローチャートのステップS18で放電加工機用電源装置2に異常がないと判定された後に接触子11と接触子12とが接触した状態で開始される。
【0060】
先ず、NC装置20は、コンタクタスイッチ13aを閉状態にする(ステップS21)。次に、NC装置20は、放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づいて模擬電流Isimを生成するためのパルス信号を放電加工機用電源装置2に入力する旨の指令(パルス信号入力指令)をパルス発生回路9に送信する(ステップS22)。ステップS22で送信されるパルス信号入力指令は、診断条件に基づいて設定される。
【0061】
次に、NC装置20は、放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づく電流の値が0であるか否かの判定を行う(ステップS23)。放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づく電流の値が0である場合(ステップS13のYes)、NC装置20は、コンタクタスイッチの動作不良又は接触子の接触不良があると判定する。そして、NC装置20は、細穴放電加工機6の動作を停止させ、コンタクタスイッチの動作不良又は接触子の接触不良がある旨のアラームをNC装置20の表示部に表示する(ステップS24)。ステップS24の後、NC装置20は、処理を終了する。
【0062】
放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づく電流の値が0でない場合(ステップS23のNo)、NC装置20は、模擬電流IsimのオンタイムtON及びオフタイムtOFF並びに平均電流の値IAVRを演算部18から取得する(ステップS25)。
【0063】
次に、NC装置20は、放電加工機用電源装置2の模擬電流生成部13への印加電圧に基づいて模擬電流Isimを生成するためのパルス信号の放電加工機用電源装置2への入力を停止する旨の指令(パルス信号停止指令)をパルス発生回路9に送信する(ステップS26)。ステップS26で送信されるパルス信号停止指令は、診断条件に基づいて設定される。ステップS26の後、NC装置20は、模擬電流IsimのオンタイムtON及びオフタイムtOFF並びに平均電流の値IAVRをNC装置20の記憶部に記録する(ステップS27)。
【0064】
次に、NC装置20は、模擬電流I
simの平均電流の値I
AVR並びにオンタイムt
ON及びオフタイムt
OFFに基づいて放電加工機用電源装置2の異常の有無についての判定を行う(ステップS28)。放電加工機用電源装置2に異常がある場合(ステップS28のYes)、NC装置20は、放電加工機用電源装置2の異常があると判定する。そして、NC装置20は、細穴放電加工機6の動作を停止させ、放電加工機用電源装置2の異常がある旨のアラームをNC装置20の表示部に表示する(ステップS29)。ステップS29の後、NC装置20は、処理を終了する。放電加工機用電源装置2に異常がない場合(ステップS28のNo)、NC装置20は、処理を終了する。
図6のフローチャートのステップS28で放電加工機用電源装置2に異常がないと判定された場合、細穴放電加工機6によるワーク5の放電加工を開始することができる。
【0065】
本実施の形態によれば、模擬電流生成部13は、接触子11と接触子12とが接触した状態において、極間の絶縁破壊によって生じた電流を模擬した模擬電流Isimを、放電加工機用電源装置2の印加電圧に基づいて生成する。そして、NC装置20は、模擬電流Isimに基づいて放電加工機用電源装置2の異常の有無についての判定を行う。極間の絶縁破壊によって生じた電流を模擬した模擬電流Isimに基づいて放電加工機用電源装置2の異常の有無についての判定を行うので、細穴放電加工機6によるワーク5の放電加工前に放電加工機用電源装置2の異常の有無についての診断を行うことができる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、細穴放電加工機6によってワーク5を放電加工する前に放電加工機用電源装置2の異常の有無についての診断を行うことにより、放電加工機用電源装置2に異常がある場合に放電加工機用電源装置2の故障個所の修理、放電加工機用電源装置の交換等を行うことができる。放電加工機用電源装置2の故障個所の修理、放電加工機用電源装置の交換等を行うことによって、放電加工機用電源装置2を正常にすることができるので、異常がある放電加工機用電源装置2を使用した細穴放電加工機6によるワーク5の放電加工によって不良品が生じるのを回避することができる。
【0067】
また、本実施の形態によれば、異常がある放電加工機用電源装置2を使用した細穴放電加工機6によるワーク5の放電加工によって不良品が生じるのを回避することができる。したがって、異常がある放電加工機用電源装置2を使用した細穴放電加工機6によるワーク5の放電加工によって不良品が生じた際の点検のためのワーク5の加工の中断及び不良品の処分を必要としない。また、異常がある放電加工機用電源装置2を使用した細穴放電加工機6によるワーク5の放電加工によって不良品が生じる際のパイプ電極7の消耗を回避することができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、放電加工機用電源装置2の異常の有無についての判定を模擬電流Isimの平均電流の値IAVR並びにオンタイムtON及びオフタイムtOFFに基づいて行う。これによって、細穴放電加工機6によるワーク5の放電加工前に放電加工機用電源装置2の異常の有無についての診断を正確に行うことができる。
【0069】
また、本実施の形態によれば、模擬電圧Vsimに基づいて放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定を行うことによって、模擬電流Isimを生成する前に放電加工機用電源装置の異常の有無についての診断を行うことができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、模擬電圧Vsimのピーク電圧VP及び立上り時間trに基づいて放電加工機用電源装置の異常の有無についての判定を行うことによって、模擬電流Isimを生成する前に放電加工機用電源装置の異常の有無についての診断を正確に行うことができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、絶縁破壊が生じたときの極間の抵抗値に相当する抵抗値を有する抵抗器13bを使用することよって、模擬電流Isimは、極間の絶縁破壊によって生じた電流を正確に模擬することができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、模擬電圧Vsimを生成する際に開状態にされるとともに模擬電流Isimを生成する際に閉状態にされるコンタクタスイッチ13aを使用することによって、模擬電圧Vsim及び模擬電流Isimを迅速に生成することができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、コンタクタスイッチ13aを使用することによって、放電加工機用電源装置2の異常の有無についての判定のばらつきを減少させることができる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、第1の接触子と第2の接触子との接触不良の有無についての判定を行うことによって、第1の接触子と第2の接触子との接触不良がある場合に第1の接触子と第2の接触子との接触不良の個所の修理を行うことができる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、コンタクタスイッチ13aの動作不良の有無についての判定を行うことによって、コンタクタスイッチ13aの動作不良がある場合にコンタクタスイッチ13aの交換を行うことができる。
【0076】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。例えば、導電部25を、テーブル4の任意の位置に設けてもよい。また、接触子11と接触子12とが接触又は離間可能となるようにするために、絶縁部22を介して接触子12を設けたスタンド21をa方向又はb方向に移動自在にすることによって接触子11と接触子12とが相対的に移動できるようにしてもよい。この場合、接触子11を、細穴放電加工機6に固定されるとともにケーブル8を放電加工機用電源装置2の一方の側と導通可能になる導電部に設けてもよい。
【0077】
また、模擬電流生成部13を、放電加工機用電源装置2の一方の側から他方の側までの経路の任意の位置に配置してもよい。また、コンタクタスイッチ13a以外のスイッチング素子(例えば、NMOSトランジスタ)を使用してもよい。また、コンタクタスイッチ13aを省略し、コンタクタスイッチ13aによって行われるスイッチング動作を、接触子11と接触子12との接触又は離間によって行ってもよい。
【0078】
また、放電加工機用電源装置2の異常の有無についての判定を、模擬電圧Vsimのピーク電圧、模擬電圧Vsimの立上り時間、模擬電流Isimの平均電流並びに模擬電流Isimのオンタイム及びオフタイムのうちの少なくとも一つに基づいて行ってもよい。さらに、ピーク電流、電流分布、平均電圧、電圧分布、デューティファクタ、周波数等の異常性を判断できる他の要素を検出することによって、周波数等の放電加工機用電源装置2の異常の有無についての判定を行ってもよい。また、放電加工機用電源装置2の異常の有無についての判定をNC装置20以外の装置(例えば、演算部18)で行ってもよい。
【0079】
また、加工槽3に放電加工液がない状態で放電加工機用電源装置2の異常の有無についての判定を行ってもよい。また、ワーク5とパイプ電極7のうちの少なくとも一方がない状態で放電加工機用電源装置2の異常の有無についての判定を行ってもよい。さらに、コンタクタスイッチ13aの動作不良の有無についての判定又は接触子11,12の接触不良の有無についての判定を、ワーク5の加工前の任意の時点で行ってもよい。
【0080】
本発明は、上記実施の形態の細穴放電加工機6に限らず他の放電加工機に適用してもよい。例えば、本発明は、形彫放電加工機に適用してもよい。その一例を
図7に示す。
図7において、診断装置1’は、接触子11’,12’と、模擬電流生成部13と、電圧検出部としてのオペアンプ14と、電流検出部15と、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)16,17と、演算部18,19と、NC装置20と、を備える。ベッド41の上面にテーブル4’が固定され、テーブル4’の上面にワーク5’が取り付けられる。テーブル4’の周囲は、a’方向又はb’方向に昇降可能な加工槽3’で囲われ、形彫放電加工機6’によるワーク加工時には、加工槽3’が上昇し、放電加工液が供給される。ベッド41には、X軸方向及びY軸方向に移動可能なXYスライダ42が設けられ、XYスライダ42の先端部には、主軸装置32’がZ軸方向に移動可能に設けられる。主軸装置32’の下端には、電極ホルダ31’を介して電極7’が取り付けられる。形彫放電加工機6’による加工放電は、電極ホルダ31’の給電ベース35’に放電加工機用電源装置2の一方の側を接続し、テーブル4’の導電部25’に放電加工機用電源装置2の他方の側を接続し、極間にパルス電圧を印加し、放電加工液中でワーク5’と電極7’とを相対移動させることによって行われる。
【0081】
図1に示す実施の形態の接触子11,12に相当する
図7に示す実施の形態の接触子11’,12’は、電極ホルダ31’及びベッド41に立設されたスタンド21’の上部にそれぞれ設けられている。接触子12’は、絶縁部22’を介してスタンド21’に固定されている。接触子11’は、給電ベース35’を介して放電加工機用電源装置2の一方の側と導通する。接触子12’は、模擬電流生成部13を介してテーブル4’の導電部25’と導通し、結局は放電加工機用電源装置2の他方の側と導通可能である。
【0082】
形彫放電加工機6’による放電加工の前段階の加工槽3’が上昇して放電加工液が供給されるのに先立って、接触子11’,12’のX軸、Y軸及びZ軸に沿った相対移動により接触子11’,12’を接触させ、
図1に示す実施の形態について説明した方法と同様の方法で放電加工機用電源装置2の診断を行うことができる。また、模擬電流生成部13のコンタクタスイッチ13aの動作不良の有無及び接触子11’,12’の接触不良の有無についても、
図1に示す実施の形態について説明した方法と同様の方法で行うことができる。模擬電流生成部13、オペアンプ14,シャント抵抗器15a、電流センスアンプ15b、ADC16,17、演算部18,19、NC装置20、パルス発生回路9及び放電加工機用電源装置2の構成及び作用の説明は、
図1に示す実施の形態について説明したものと同一であるので省略する。
【符号の説明】
【0083】
1,1’ 診断装置
2 放電加工機用電源装置
3,3’ 加工槽
4,4’ テーブル
5,5’ ワーク
6 細穴放電加工機
6’ 形彫放電加工機
7 パイプ電極
7’ 電極
9 パルス発生回路
11,12,11’,12’ 接触子
13 模擬電流生成部
14 オペアンプ
15 電流検出部
18,19 演算部
20 NC装置
25 導電部
31,31’ 電極ホルダ
32,32’ 主軸装置
35,35’ 給電ベース
【要約】
【課題】 放電加工機によってワークを放電加工する前に放電加工機用電源装置の異常の有無についての診断を行うことができる放電加工機用電源装置の診断装置を提供する。
【解決手段】 模擬電流生成部13は、接触子11と接触子12とが接触した状態において放電加工機用電源装置2に直列に接続され、細穴放電加工機6によってワーク5を放電加工するために予め決定された間隙を設けて互いに対向するワーク5及びパイプ電極7から構成される極間の絶縁破壊によって生じた電流を模擬した模擬電流I
simを、放電加工機用電源装置2の印加電圧に基づいて生成する。NC装置20は、電流検出部15によって検出された模擬電流I
simに基づいて放電加工機用電源装置2の異常の有無についての判定を行う。
【選択図】
図1