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特許7181373自動車用風洞及び風洞を動作させるための方法
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  • 特許-自動車用風洞及び風洞を動作させるための方法 図1
  • 特許-自動車用風洞及び風洞を動作させるための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】自動車用風洞及び風洞を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20221122BHJP
   G01M 9/04 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G01M17/007 Z
G01M9/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021200590
(22)【出願日】2021-12-10
(65)【公開番号】P2022098460
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】10 2020 134 357.4
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100202647
【弁理士】
【氏名又は名称】寺町 健司
(72)【発明者】
【氏名】ティム カイザー
(72)【発明者】
【氏名】マルセル シュトラウブ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ニクラス ヘルバッハ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ジン ゴン
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-513747(JP,A)
【文献】特開2020-153672(JP,A)
【文献】特開平09-054010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0112528(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0298659(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108344553(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/007
G01M 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン(12)と、
前記ファン(12)によって生成された空気流が流れることができる試験セクション(14)と、
前記試験セクション(14)内の様々な自動車(2)を記録するための記録デバイス(16)と、
前記自動車(2)の空気力学的特性を決定するための試験デバイス(18)と、を備える自動車(2)用の風洞において、
前記記録デバイス(16)によって記録される前記自動車(2)の外側輪郭を検知するための光学検知デバイス(20)と、評価ユニット(22)と、連係ユニット(24)とが提供され、前記評価ユニット(22)が、前記光学検知デバイス(20)によって検知された前記自動車(2)の前記外側輪郭から車両構成を決定するように設計され、前記連係ユニット(24)が、前記評価ユニット(22)によって決定された前記自動車(2)の前記車両構成を、前記試験デバイス(18)によって決定された試験結果と連係するように設計されている
ことを特徴とする、風洞。
【請求項2】
前記光学検知デバイス(20)が、少なくとも1台のカメラ(30)を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の風洞。
【請求項3】
前記光学検知デバイス(20)が、6台のカメラ(30、32、34、36、38、40)を有し、前記カメラが、前記自動車(2)の周りに均等に分散して配置される
ことを特徴とする、請求項2に記載の風洞。
【請求項4】
前記評価ユニット(22)と相互作用するデータメモリ(42)が、様々な所定の車両構成を含んで提供され、前記評価ユニット(22)が、前記自動車(2)の前記検知された外側輪郭に基づいて、前記データメモリ(42)に記憶されている所定の車両構成の1つを決定する
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の風洞。
【請求項5】
前記データメモリ(42)がクラウドベースのデータメモリである
ことを特徴とする、請求項4に記載の風洞。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の風洞を部分的に自動で動作させるための方法であって、
前記光学検知デバイス(20)によって、前記自動車(2)の前記外側輪郭を検知するステップと、
前記評価ユニット(22)によって、前記自動車(2)の前記検知された外側輪郭を処理して評価するステップと、
前記評価ユニット(22)によって、自動車構成を決定するステップと、
前記試験デバイス(18)によって、試験し、試験結果を検知するステップと、
前記連係ユニット(24)によって、前記決定された車両構成を、前記決定された試験結果と連係するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンと、ファンによって生成された空気流が流れることができる試験セクションと、試験セクション内の様々な自動車を記録するための記録デバイスと、自動車の空気力学的特性を決定するための試験デバイスとを備える自動車用の風洞に関する。また、本発明は、風洞を動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような風洞は、特に自動車開発において使用されている。これは、風洞の試験セクションに自動車を配置し、ファンを使用して、できるだけ均一であり、自動車の周りを流れる乱流によって影響を及ぼされない空気流を試験セクションに導入することを含む。風洞での試験中、空気流が自動車の周りを流れ、空気流が及ぼす作用のうち、自動車に対する垂直方向の力を生成し、この垂直方向の力が試験デバイスによって検知される。この場合、自動車は、例えば、力測定ユニットを有する記録デバイスに配置され、この力測定ユニットが垂直方向の力を検知する。決定された垂直方向の力を使用して、例えば自動車の負の揚力を決定することができる。自動車の駆動軸に対するこの負の揚力は、自動車のコーナリング及び加速にとって重要である。また、試験中、試験セクションでの風速も決定される。収集された結果は、いわゆる抗力係数(cw値としても知られている)を決定するために使用される。cw値が小さいほど、自動車の空気力学的抵抗は低くなり、行程中の自動車の燃料消費は低くなる。そのような風洞は、例えば(特許文献1)に開示されている。
【0003】
実際の風洞試験を実施する前に、検査対象の自動車を測定し、自動車の厳密な外側輪郭を決定しなければならない。これも、風洞での試験の一部を成す。外側輪郭の測定及び決定は、通常、試験実施者によって手動で行われ、厳密な外側輪郭を試験実施者が手動で決定する。さらに、様々な車両構成を試験実施者が手動で決定し、試験レポートに手入力しなければならない。車両構成は、自動車の様々な設計を含むものとして理解され、自動車は、例えば、様々な空気偏向要素、存在する空気偏向要素の様々な位置、又は様々な車高を有することができる。
【0004】
そのような手順の欠点は、自動車の外側輪郭の手動決定、自動車構成の手動決定、及び決定されたデータの手入力に非常に時間がかかり、その結果、風洞での試験にかなり時間がかかることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第10 2011 054 434 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、外側輪郭の測定及び検知も含めた試験をより短時間で実施することができる試験デバイスを備える風洞を作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
記録デバイスによって記録された自動車の外側輪郭を検知するための光学検知デバイスと、評価ユニットと、連係ユニットとを提供し、評価ユニットが、光学検知デバイスによって検知された自動車の外側輪郭から車両構成を決定するように設計され、連係ユニットが、評価ユニットによって決定された自動車の車両構成を、試験デバイスによって決定された試験結果と連係するように設計されることによって、風洞での試験に必要な時間を大幅に短縮することができる。この場合、自動車の外側輪郭は、光学検知デバイスによって厳密に且つ非常に詳細に検知され、評価ユニットに伝送される。評価ユニットは、自動車の外側輪郭を決定し、それを使用して自動車構成を決定する。自動車構成は、自動車の周りの空気の流れ、したがってその空気力学的特性に影響を及ぼす全ての構成要素及び設定を含む。自動車構成は、例えば、様々な空気偏向要素、調整可能な空気偏向要素の場合にはそれらの空気偏向要素の現在位置、又は自動車のアンダーフロアと車道との間の距離を含む。自動車構成は、例えば車輪、特に自動車のホイールリムも含む。これは、車輪で生じる乱流により、車輪も自動車の周りの空気の流れに影響を及ぼすからである。評価ユニットによって決定された自動車構成は、連係ユニットによって、関連する試験の試験結果と連係され、その結果、自動車構成及び関連する試験結果を含む試験記録が自動的に作成される。
【0008】
自動的な検知、及び自動車構成と関連する試験結果との自動的な連係によって、試験に必要な時間を短縮することができる。さらに、試験実施者が車両データを不正確に入力することによるエラーを回避することができる。さらに、車両データと試験結果との間の不正確な割当てのエラーが確実に防止される。
【0009】
好ましくは、光学検知デバイスは、少なくとも1台のカメラを有し、外側輪郭を確実に且つ高解像度で検知することができ、したがって自動車の外側輪郭の全ての細かい詳細を検知することができる。
【0010】
好ましい設計では、光学検知デバイスは6台のカメラを有し、これらのカメラは自動車の周りに均等に分散して配置される。これは、外側輪郭全体を確実に検知できるようにする。この場合、個々のカメラによる多重記録が様々な詳細度で行われ、その後、自動車の外側輪郭を取得するためにカメラの記録が自動的に処理される。
【0011】
評価ユニットと相互作用するデータメモリが、様々な所定の車両構成を含んで提供され、評価ユニットが、自動車の検知された外側輪郭に基づいて、データメモリに記憶された所定の車両構成の1つを決定する。データメモリは、記憶された様々な車両構成を含み、それらの車両構成は、例えば車両モデルによって、特定の車両の特徴によって、又は特定の走行状態によって定義される。評価ユニットは、検知された外側輪郭をデータメモリに記憶された車両構成と比較し、この比較から、車両モデル、車両の特徴、例えば特定のスポイラ要素、及び自動車の走行状態を導出する。これは、例えば、自動車構成及び試験結果に基づいて取得された単一の車両モデルに関する様々な試験記録を容易に組み合わせて、この車両モデルのための一連の試験を形成できるようにする。
【0012】
好ましい設計では、データメモリは、クラウドベースのデータメモリである。クラウドベースのデータメモリは、評価ユニットとデータメモリとの間の容易な無線通信を可能にする。クラウドベースのデータメモリは、データメモリと評価ユニットとの間の双方向通信を容易に可能にする。自動車の検知された外側輪郭とデータメモリに記憶された車両構成とを比較するために、評価ユニットは、これに必要なデータをデータメモリから呼び出すことができる。さらに、評価ユニットは、決定された車両構成をデータメモリへ伝送することができ、それらの車両構成がデータメモリに記憶される。試験デバイスの試験結果もデータメモリに記憶されるということは、連係ユニットが、試験結果と車両構成とをデータメモリから呼び出して、それらを互いに連係することができることを意味する。
【0013】
この目的はまた、請求項1~5のいずれか一項に記載の風洞を部分的に自動で動作させるための方法によって達成される。まず、自動車の外側輪郭が光学検知デバイスによって検知され、検知された自動車の外側輪郭が評価ユニットによって処理されて評価され、自動車構成が決定される。その後、試験デバイスによって試験が実施され、試験結果が検知される。
【0014】
最後に、決定された車両構成が、決定された試験結果と連係される。この方法の利点については、前の段落を参照されたい。
【0015】
そのような風洞、及び風洞を動作させるためのそのような部分的に自動化された方法は、風洞での試験に必要な時間を短縮できるようにし、試験実施者が車両データを不正確に入力することによるエラーを回避することができるようにする。
【0016】
本発明の例示的実施形態を、図面に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】風洞を概略的に示す図である。
図2図1の風洞での試験対象の自動車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、図2に示される自動車2又は自動車2のモデルの空気力学的検査のための風洞10を示す。風洞10は、例えば、いわゆる閉鎖回流式風洞として形成される。空気流は、ファンデバイス12によって生成され、空気供給デバイス13によって風洞10の風洞縮流部15に供給される。風洞縮流部15は、空気流を加速させ、自動車2が配置されている試験セクション14へ空気流を向ける。自動車2を記録するために、4つの車輪受取りユニット(図1には図示せず)を有する記録デバイス16が試験セクション14に提供される。試験セクション14の下流に収集部17が配置される。収集部17は、風洞縮流部15から流出する空気流を排気デバイス19によってファンデバイス12に送り返す。
【0019】
さらに、風洞10は試験デバイス18を備え、この試験デバイス18は、制御ユニット26と、流速を検知するためのセンサ27と、自動車2に作用する力、特に負の揚力を決定するための試験ユニット28とを備える。
【0020】
自動車2の空気力学的特性を評価するためには、実際の試験の前に自動車2の外側輪郭を決定しなければならない。これは、試験デバイス18の試験値と、空気力学的特性を変える自動車2の構成要素との関係を確立することができるようにするために必要である。通常、自動車2の外側輪郭の検知、及び試験デバイス18の試験値に対する自動車2の検知された外側輪郭の割当ては、試験実施者によって手動で行われる。このプロセスは時間がかかり、且つエラーが生じやすい。
【0021】
本発明によれば、風洞10は、光学検知デバイス20、評価ユニット22、及び連係ユニット24を備える。
【0022】
光学検知デバイス20は、6台のカメラ30、32、34、36、38、40を有し、これらのカメラは試験セクション14の領域内に配置される。カメラ30、32、34、36、38、40は、自動車2の外側輪郭が完全に検知されるように、自動車2の周りに分散して配置される。カメラ30、32、34、36、38、40は、評価ユニット22に通信接続され、カメラ30、32、34、36、38、40によって検知された画像は、評価ユニット22に伝送され、評価ユニット22で評価される。
【0023】
評価ユニット22は、カメラ30、32、34、36、38、40の画像から自動車2の外側輪郭を作成する。その後、評価ユニット22は、自動車構成を決定する。これは、自動車2の決定された外側輪郭をクラウドベースのデータベース42に記憶された多数の自動車構成と比較し、自動車2の外側輪郭に合致する自動車構成を決定することを含む。自動車構成は、車両の周りの空気の流れ、したがってその空気力学的特性に影響を及ぼす全ての構成要素及び設定を含む。これらの構成要素及び設定は、例えば、図2に示される可変式リヤスポイラ54とその現在位置、サイドシル56、自動車2の車高H、及び/又は車輪58の設計を含む。車両構成は、外側輪郭に存在する様々な吸気口及び空気偏向構成要素も含む。
【0024】
風洞10は連係ユニット24も備え、連係ユニット24は、一方では試験デバイス18に、他方では評価ユニット22に接続されている。連係ユニット24は、風洞10に配置された検査対象の自動車2の決定された自動車構成を評価ユニット22から受信する。さらに、連係ユニット24は、試験デバイス18の試験結果を受信する。連係ユニット24は、決定された自動車構成と、試験デバイス18の関連する試験結果とを自動で連係し、全ての関連特性、すなわち試験値及び自動車構成を含む風洞試験の試験記録を作成する。
【0025】
連係ユニット24及び試験デバイス18は、同様にデータベース42に接続され、評価ユニット22と、試験デバイス18と、連係ユニット24との間の接続は、データベース42を介して行われる。ここで、データベース42は、評価ユニット22と双方向に接続され、したがって、評価ユニット22は、一方では、自動車2の決定された外側輪郭に基づいて車両構成を決定するためにデータを呼び出すことができ、他方では、データ、特に決定された自動車構成をデータベース42に伝送することができる。試験デバイス18は、試験結果をデータベース42に伝送し、データベース42に試験結果が記憶される。連係ユニット24は、記憶された試験デバイスの試験結果と、風洞10に配置された自動車2の関連する自動車構成とをデータベース42から呼び出し、それらを互いに連係し、試験記録を作成する。
【0026】
自動車の特性、すなわち自動車構成と関連する試験結果とを互いに自動で結合するクローズドシステムを形成する光学検知デバイス20、評価ユニット22、試験デバイス18、及び連係ユニット24を備える風洞10のそのような設計により、風洞での試験に必要な時間を短縮することができ、外側輪郭の不正確な検知によって引き起こされるエラーを回避することができる。
【0027】
記載した実施形態以外の他の構造実施形態も可能であり、主請求項の保護範囲に入る。例えば、光学検知デバイス20又は記録デバイス16を異なる設計にすることができる。
【符号の説明】
【0028】
2 自動車
12 ファン
14 試験セクション
16 記録デバイス
18 試験デバイス
20 光学検知デバイス
22 評価ユニット
24 連係ユニット
30、32、34、36、38、40 カメラ
42 データメモリ
図1
図2