IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モラレイ リサーチ インコーポレイテッドの特許一覧

特許7181387微小液滴を形成するためのマイクロピペットチップ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】微小液滴を形成するためのマイクロピペットチップ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20221122BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20221122BHJP
   B01L 3/02 20060101ALI20221122BHJP
   B01F 23/41 20220101ALI20221122BHJP
   B01F 25/46 20220101ALI20221122BHJP
【FI】
C12M1/00 A
G01N35/10 A
B01L3/02 D
B01F23/41
B01F25/46
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021514392
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 CA2019051330
(87)【国際公開番号】W WO2020069603
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】16/148,282
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522013474
【氏名又は名称】モラレイ リサーチ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】シャオ、 リーフォン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ユアン ミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 ユアンジー
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-524171(JP,A)
【文献】特開2007-268350(JP,A)
【文献】特開2005-186026(JP,A)
【文献】特開2007-105678(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0076353(US,A1)
【文献】国際公開第2018/031691(WO,A1)
【文献】特表2018-511466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 3/02
B01F 23/40-47
B01F 25/40^46
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルポリメラーゼ連鎖反応用微小液滴乳液を生成するための微小液滴乳化器であって、
a)入口と出口を有するマイクロピペット、
b)前記マイクロピペットの前記出口に取り付けられるように開放する頂部を有し、かつ複数のほぼ扁平なマイクロチャネルを有し、各前記ほぼ扁平なマイクロチャネルは長さ、および高さと幅を持つ断面形状を有する、微小液滴生成器ヘッド、
c)前記微小液滴生成器が挿入された、連続相液体を含むチャンバー
を含むことで、分散相液体を前記微小液滴生成器ヘッドを通って前記複数のほぼ扁平なマイクロチャネルを流れるようにさせることにより、前記チャンバー内で前記連続相液体において前記分散相液体の複数の微小液滴が生成し、そしてこれによって各前記微小液滴の大きさはいずれも各前記ほぼ扁平なマイクロチャネルの前記断面形状、前記長さ、および前記微小液滴生成器ヘッドの材料によって限定される前記微小液滴の接触角によって制御する、微小液滴乳化器。
【請求項2】
各前記ほぼ扁平なマイクロチャネルはいずれも比較的に大きい孔につながり、前記比較的に大きい孔のサイズは所定の直径を有する微小液滴が形成し、かつこれによって前記連続相液体が前記比較的に大きい孔に入って前記比較的に大きい孔の内部における前記微小液滴の遮断過程を加速させるように設定されている請求項1に記載の微小液滴乳化器。
【請求項3】
前記比較的に大きい孔は円柱形または楕円形または矩形である請求項2に記載の微小液滴乳化器。
【請求項4】
各前記ほぼ扁平なマイクロチャネルはいずれも二次マイクロチャネルに連結する一次マイクロチャネルを含み、かつ前記二次マイクロチャネルは前記一次マイクロチャネルに対して横方向にある請求項1に記載の微小液滴乳化器。
【請求項5】
各前記ほぼ扁平なマイクロチャネルはいずれも二次マイクロチャネルおよび三次マイクロチャネルに連結する一次マイクロチャネルを含み、前記二次マイクロチャネルおよび前記三次マイクロチャネルは前記一次マイクロチャネルとともに星状の断面形状をなす請求項1に記載の微小液滴乳化器。
【請求項6】
前記微小液滴生成器ヘッドはほぼ平坦な底壁を有し、かつ前記複数のほぼ扁平なマイクロチャネルは前記ほぼ平坦な底壁に形成している請求項1に記載の微小液滴乳化器。
【請求項7】
前記微小液滴生成器ヘッドはほぼ平坦な底壁および複数の側壁を有し、かつ前記複数のほぼ扁平なマイクロチャネルは前記底壁および前記複数の側壁に形成している請求項1に記載の微小液滴乳化器。
【請求項8】
前記マイクロピペットの前記出口の直径は少なくとも1 mmである請求項1に記載の微小液滴乳化器。
【請求項9】
前記マイクロピペットの体積は10 μl~1 mlの範囲内である請求項1に記載の微小液滴乳化器。
【請求項10】
前記微小液滴の集合または生成の中断を避けるように、前記複数のほぼ扁平なマイクロチャネルの数およびパターンは所定のもので、そのうちの2つの隣接するマイクロチャネルの間の間隔は微小液滴の所定の直径の少なくとも2倍、好適に3~5倍である請求項1に記載の微小液滴乳化器。
【請求項11】
前記チャンバーは前記マイクロピペットの前記出口を覆うピペットキャップで、かつ前記ピペットキャップに油溶液が充填されており、前記ピペットキャップ内において前記微小液滴乳液が生成する請求項1に記載の微小液滴乳化器。
【請求項12】
前記高さは10~200ミクロンの範囲内で、前記幅は1~100ミクロンの範囲内で、かつ前記長さは10~500ミクロンの範囲内である請求項1に記載の微小液滴乳化器。
【請求項13】
各前記マイクロチャネルの前記断面形状は矩形または楕円形である請求項1に記載の微小液滴乳化器。
【請求項14】
各前記ほぼ扁平なマイクロチャネルのアスペクト比は前記高さを前記幅で割ったものと定義され、前記アスペクト比は3~40の範囲内である請求項1に記載の微小液滴乳化器。
【請求項15】
前記分散相液体は水性溶液で、かつ前記連続相液体は油性溶液である請求項1に記載の微小液滴乳化器。
【請求項16】
前記微小液滴生成器ヘッドは疎水性材料で製造されている請求項1に記載の微小液滴乳化器。
【請求項17】
デジタルポリメラーゼ連鎖反応用微小液滴乳液を生成するための微小液滴乳化器であって、
a)入口側と出口側を有するマイクロピペットで、前記出口側は前記マイクロピペットの壁に1組の出口の開口が切ってあるもの、
b)サイズが前記1組の出口の開口への取り付けに適する1組の膜で、各膜は複数のほぼ扁平なマイクロチャネルを有し、各前記ほぼ扁平なマイクロチャネルはいずれも長さ、および幅と高さを持つ断面形状を有するもの、
c)前記マイクロピペットを覆ってかつ連続相液体を含むマイクロピペットキャップ
を含むことで、前記マイクロピペットキャップの内部で連続相液体において分散液体相の微小液滴乳液が形成するように散相液体をマイクロピペットを通るようにさせる微小液滴乳化器。
【請求項18】
各前記ほぼ扁平なマイクロチャネルはいずれも二次マイクロチャネルに連結する一次マイクロチャネルを含み、かつ前記二次マイクロチャネルは前記一次マイクロチャネルに対して横方向にある請求項17に記載の微小液滴乳化器。
【請求項19】
各前記ほぼ扁平なマイクロチャネルは二次マイクロチャネルおよび三次マイクロチャネルに連結する一次マイクロチャネルを含み、前記二次マイクロチャネルおよび前記三次マイクロチャネルは前記一次マイクロチャネルとともに星状の断面形状をなす請求項17に記載の微小液滴乳化器。
【請求項20】
前記1組の膜は疎水性材料で製造されており、各前記微小液滴が大きい接触角になるためのものである請求項17に記載の微小液滴乳化器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、乳化のための装置に関し、特に、デジタルPCRのための均一な微小液滴を形成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)は、核酸(たとえばDNA、cDNAやRNA)に対して直接定量およびクローニング・増幅を行うシステムである。通常のPCRは、一般的に、核酸の量を測定するためのもので、そして各サンプルに対して単独な反応をさせることによって行われる。dPCR方法を使用すると、サンプルに対して単独な反応をさせることもできるが、当該サンプルは大量の区画に分画され、そして当該反応はそれぞれ各区画において行われる。このような分画により、核酸の量についてより確実な収集と高感度の測定ができる。
【0003】
dPCRでは、サンプルを分画することで、当該サンプルにおける単一の核酸分子が多くの単独な領域に局在化して集中する。単一の核酸分子の捕獲または分離はマイクロプレート、毛細管、乳液の分散相および小型化チャンバーのアレイの中、ならびに核酸が結合した表面において行われる。サンプルの分画により、分子群がポアソン分布に従うと仮定して異なる分子の数を推算することができる。その結果、各区画のサンプルにそれぞれ「0」または「1」個の分子が含まれ、あるいは陰性または陽性反応になっている。PCR増幅後、PCR最終産物の陽性反応を示す領域を計数することによって核酸を定量することができる。通常のPCRでは、PCR増幅のサイクル数が初期コピー数に正比例する。しかし、dPCRでは、初期サンプル量が増幅のサイクル数によって決まるわけではないため、不確かな指数データに対する依存して標的核酸を定量することをなくし、そして絶対的な定量が提供される。
【0004】
本発明の目的は、液滴デジタルPCR(Droplet Digital PCR)のための乳化微小液滴を形成することにある。液滴が生成する間では、液滴の均一性を制御することが難しい。デジタルPCRは、通常、マイクロレアクターになれるように、非常に小さい液滴が必要である。液滴形成の品質は多くの因子に影響される。PCRでは、液滴の大きさは通常10~500μmの範囲内で、好適な液滴の数は10,000,000未満で、満足できないと検出コストが高くなる。消耗品として、液滴生成器の製造コストはデジタルPCRにおけるその使用を阻碍する可能性がある。そのため、本発明は高均一性で、高効率で、低コストでより簡単に液滴を生成する新規な方法を提供する。
【0005】
デジタルPCRが提案されて以来、既に数百種の方法および装置が発明されてきた。典型的な装置は米国BioRADからのddPCRである。ddPCRは、液滴を生成するクロスフローを有するマイクロ流体チャネルが導入されている。それに近い方法はRainDrop dPCRシステムに使用され、当該システムはまたマイクロ流体チャネルによってPCRのための液滴を生成する。STILLAのNaicaシステムはマイクロ流体チップにおいて特殊な幾何構造で大量に均一な液滴を生成する。これらの装置は現在のデジタルPCR市場における典型的な製品で、そしていずれもマイクロチップの様態でサンプルを分散させる。
【0006】
現在の方法では、剪断力か自発的な液滴生成方法によって液滴を生成する。多くの方法では、クロスフローで連続相を分散相に剪断する。一部の方法では、マイクロチャネルの幾何構造に依存し、分散相に圧力をかけることによって液滴に自己破砕させる。後者の方法では、少ないエネルギーが消耗され、そしてより制御しやすい。
【0007】
上記方法は大量の既存技術の装置に使用されている。たとえば、US6281254では、階段状構造によって自発的に液滴を生成させる。このようなチップにおいて、所定のアスペクト比を有するマイクロチャネルが2つの層の間で位置合わせたドックによって形成している。液糸(liquid thread)がチャネルを通る時、体積が変化することによってフローが崩れて一連の液滴になる。
【0008】
CN107427788AおよびJP2018511466Aでは、そのチップにも液滴が生成するように階段状構造が使用されている。従来の一段の階段状構造と比べ、当該装置は複数段の階段を有する。
【0009】
US20130078164A1およびUS20150258543A1では、連続的な幾何変化を有するチャネル構造に斜めの傾斜度が使用されている。このような場合、表面張力によって扁平な糸が断裂して一連の液滴になる。US9816133では、大量に液滴を生成するように1組のこのようなチャネルが構築されている。US20080314761A1およびUS20180085762A1では、類似する方法が使用されている。
【0010】
多くの既存技術のシステムでは、チップにおいてマイクロチャネルが構築されている。そのため、このような乳化は階段乳化またはマイクロチャネル乳化と呼ばれている。この種類の扁平チャネル構造は膜にも使用することができる。US20090264550では、熱伸長膜のための製造方法であって、初期のマイクロチャネルを扁平マイクロチャネルに、たとえば、箱を矩形に、または円形を楕円形に変形させることができる方法が提案された。
【0011】
既存技術は主に特定のアスペクト比を有する幾何構造に基づいたものである。このような構造により、表面張力が液滴を生成する主な動力になる。クロスフローがない場合、一方的なエネルギーの入力によって分散相にかけることが必要で、そして液滴の大きさおよび均一性が幾何パラメーターのみによって決まる。
【0012】
現在の使用可能な装置および発明に関する問題は、いずれもマイクロチップにおいて自発的な液滴形成方法を実現させることである。しかし、このようなマイクロチップの製造は高価であるため、完成品が高くなる。
【0013】
本発明は、微小液滴を生成する簡単な方法を提供し、複雑なマイクロ流体技術が必要ではない。本発明では、改良された従来のピペットチップを利用し、流体をPCR装置に移すために使用する。ピペットチップは安価で、そして一般的に多くの医学および生物学における応用に用いられる。本発明は、効果的に従来の通常の定量PCR装置をデジタルPCR機器にアップグレードすることができる。本発明で提案されたマイクロピペットチップによれば、容易に均一な液滴を生成して熱循環を行うことができる。単層画像処理方法を合わせると、デジタルPCRの全コストがまた大幅に低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】中国特許公開番号CN107427788A
【文献】日本特許公開番号JP2018511466A
【文献】米国特許公開番号US20130078164A1
【文献】米国特許公開番号US20150258543A1
【文献】米国特許公開番号US20080314761A1
【文献】米国特許公開番号US20180085762A1
【文献】米国特許公開番号US20090264550
【発明の概要】
【0015】
ミクロン級液滴の乳液を生成するための微小液滴乳化器を公開する。当該微小液滴乳化器は、マイクロピペット、マイクロピペットに取り付けられた微小液滴生成器ヘッド、および中に乳液が形成した連続相液体チャンバーを含む。当該微小液滴生成器ヘッドは、複数の扁平マイクロチャネルを含み、当該複数の扁平マイクロチャネルは液体がその中を通った時に液滴が形成するようになっている。液滴生成器ヘッドをマイクロピペットに取り付けるのに、従来のピペットチップを切断することによって先端孔を拡大する必要がある。所望の出口孔を有する任意のサイズのマイクロピペットを製造することができる。
微小液滴生成器ヘッドは複数の扁平マイクロチャネルを含む。「扁平」は大きいアスペクト比(すなわち、大きい横縦比)を有する断面形状と定義されている。
【0016】
本発明の一つの実施形態において、一連のマイクロチャネルのみが存在する。また、もう一つの実施形態において、各マイクロチャネルはより大きいマイクロチャネルまたは孔につながる。これは2つの異なる膜を互いに粘着させることによって実現する。一方の膜は比較的に小さいマイクロチャネルを、もう一方の膜は比較的に大きいマイクロチャネルを有する。チャネルの位置を合わせて2つの膜を粘着させることにより、本発明の2チャンバーシステムが構築される。マイクロチャネルは扁平(スリット状または短冊状)である。
【0017】
本発明のもう一つの実施形態において、第二膜におけるマイクロチャネルは横方向で第一膜におけるマイクロチャネルを覆っている。液体がこのようなクロスチャネルシステムに流れ込むと、顕著な液滴の変形により、その流れはすぐに途切れる。
【0018】
本発明は主にデジタルPCRの応用における液滴の形成に使用される。ピペットチップに基づいたデジタルPCR製品に用いられる既存技術はない。マニュアル操作も自動化制御も容易に実現できる。一つのチップでも複数のチップても液滴のバッチ形成の実現に使用できる。
本装置は遺伝テスト、医学と生物学研究実験室および遺伝疾患と癌の臨床診断に有用である。
【0019】
本発明の一つの目的は、デジタルPCR用装置を提供することである。既存の自発乳化と比べ、マイクロピペットチップに基づいた本発明によれば、従来のqPCRをデジタルPCRにアップグレードすることが可能になることで、液滴の生成は特定の応用においてより便利になり、デジタルPCRのコストが低下する。液滴形成機能を有するピペットチップを使用すると、PCRはより幅広く実験室におけるマニュアル操作または質量分析における自動操作に使用されるようになる。
本発明のもう一つの目的は、デジタルPCR用の低コストで、迅速で、より便利で操作しやすい装置を提供することである。
【0020】
本発明のもう一つの目的は、デジタルPCRのコストが最小限に、デジタルPCRの応用が最大限になって容易に従来のqPCRシステムが取り入れられるように、液滴の形成を実現するために簡易な方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下、提供された図面を合わせて本明細書の実施形態を説明するが、これらの図面は請求の範囲を制限するものではなく、説明のために提供されたもので、ここで、同様の表示は同様の要素を表し、そして各図面は以下のようになる。
図1】は本発明の微小液滴乳化器である。
図2A】はピペットに取り付けられた微小液滴生成器ヘッドを示す。
図2B】は微小液滴生成器ヘッドの底壁に位置する一連の扁平マイクロチャネルを示す。
図3A】は微小液滴生成器ヘッドの斜視図である。
図3B】は扁平マイクロチャネルのパターンを有する微小液滴生成器ヘッドの底壁を示す。
図4】はハイスループット毛細管チップを示す。
図5A】は輪郭の表面における膜支持部材に用いられる毛細管チップの構造を示す。
図5B】は輪郭膜における扁平マイクロチャネルアレイを示す。
図6】はチューブとチップの取り付け方を示し、チューブの回転またはチップの上下である。
図7A】は円形チャネルおよび円形孔のパターンを有する両面エッチングパターンを示す。
図7B】は円形孔の断面図を示す。
図7C】は円形孔の断面の等角図を示す。
図8A】は矩形階段状孔を有する両面エッチングパターンを示す。
図8B】は矩形孔の断面図を示す。
図9A】は交差階段状孔を有する両面エッチングパターンを示す。
図9B】は交差孔からの断面図を示す。
図9C】は第一平面における交差孔からの断面図を示す。
図9D】は第二平面における交差孔からの断面図を示す。
図10A】はパターン6の組み合わせ交差孔の平面図を示す。
図10B】は平面6におけるパターン6の組み合わせ孔からの断面の等角図を示す。
図11A】はパターン7の組み合わせ交差孔の平面図を示す。
図11B】は平面6におけるパターン7の組み合わせ孔からの断面の等角図を示す。
図12A】は本装置における液滴形成の過程を示す。
図12B】は本装置における液滴形成の過程を示す。
図12C】は本装置における液滴形成の過程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面は徹底的に例示するか、本発明を公開された精確な形態に限定するためのものではない。もちろん、修正および変更によって本発明を実践することができ、そして公開された技術は請求項およびその同等物のみによって制限される。
【0023】
各実施形態の一つまたは複数に基づき、以下の図面を参照して本明細書で公開された技術を詳しく説明する。図面の提供は説明のためにすぎず、そして公開された技術の典型的または例示的な実施形態のみを描いている。これらの図面の提供は読者が公開された技術を理解するようにするためで、その幅、範囲または適用性に対する制限と見なすべきではない。もちろん、明確さおよび図示の便宜上で、これらの図面は必ず比例して描かれたものではない。
【0024】
本発明は、マイクロピペットで微小液滴乳液を実現する方法を提供する。図1~3はマイクロピペット102に取り付けられた微小液滴生成器100を示す。ピペットキャップ106または任意の連続相液体を含むチャンバー内で微小液滴が形成するように、分散相液体104がマイクロピペット102および微小液滴生成器100を通るようになっている。
【0025】
当該装置を製造するために、直径が少なくとも3 mmの円形断面が形成するように、標準の200 μlピペット102の先端孔から切断する。10 μl、20 μl、50 μl、500 μlおよび1 mlの体積を含む、任意のほかのサイズのピペットを使用してもよい。その後、粘着、圧入のような取り付けシステムによって微小液滴生成器ヘッド310(図3A)をマイクロピペット102のチップに取り付ける。微小液滴生成器ヘッドは基本的に複数の扁平マイクロチャネル206を有する特定の構造を持つマイクロ流体ソケットヘッドまたは膜である。マイクロチャネルは大きいアスペクト比(高さ/幅)を有し、ここで、高さは10~200ミクロンの範囲内で、幅は1~100ミクロンの範囲内で、そして長さは10~500ミクロンの範囲内である。所要の液滴の直径により、マイクロチャネルの数は百から数百でもよい。マイクロチャネルの間隔が隣接する液滴の集合または液滴形成の遮断がないような最小距離である以外、マイクロチャネルのパターンにほかの要求がない。
【0026】
図2Aは頂部入口側204から開放してかつその出口側206に複数のチャネルがあるソケット202を含む、微小液滴生成器ヘッド200を示す。チャネル206は図2Bに示す。チャネルの正面図は図3Aおよび3Bに示す。チャネルは、通常、液体がバランスの取れた球形から離れるように細長である。液体が非円形のチャネルを通るようにすると、非円形の液体の集まりで去る。非円形の液体の集まりは不安定で、そして表面張力の作用下で迅速に変形する。表面張力がジェット流の曲率と反比例の関係にあるため(すなわち、σ/rで、ここで、σは液体の表面張力係数で、rは液体帯の曲率である)、液体の集まりが狭いほど、変形が速くなる。そのため、大きい断面のアスペクト比を有するマイクロチャネルを提供する。
【0027】
ハイスループットを有する本発明のもう一つの実施形態は図4A、4Bおよび4Cに示す。このような場合、チップ400は、底壁410および複数の側壁420といった複数の壁を有する。すべての表面において高い液滴生成速度が可能になるように孔が構築されている。
【0028】
図5は本発明のもう一つの実施形態を示す。マイクロピペット500を底部開口510および複数の側開口520があるようにカットする。マイクロチャネルを有する底部膜530およびマイクロチャネルを有する複数の側面膜540をマイクロピペットの開口に挿入する。これによって微小液滴生成器を持つ統合式マイクロピペットが提供される。一旦マイクロチャネルがマイクロピペットに取り付けられると、ピペットチップ610がマイクロピペット500に挿入されて図6に示されるようなロックイン位置に回転される。マイクロピペットで水性液体を注入することにより、ピペットチップの内部で乳化した液滴になる。
【0029】
本発明のもう一つの実施形態は図7および8で示される階段乳化に基づいたパターンである。図7は各扁平マイクロチャネル710の端部に大きめの円柱形チャネル720を設けていること示し、これは液滴の遮断に役立つ。膜における階段状構造のマイクロチャネルは、液滴が自発的にチップから落ちるように、不安定な効果が生じるようにエッチングされてもよい。流れを遮断させるために、比較的に大きいチャネルの断面の面積が比較的に小さいチャネルの断面の面積の少なくとも2倍である必要がある。図8は各マイクロチャネル810の端部における大きめの矩形チャネル820を示す。
【0030】
図9A~9Dおよび10A~10Bは2つの交差チャネルを用いた本発明のもう一つの実施形態を示す。第一チャネル910および1010は微小液滴生成器ヘッドの内部から、アスペクト比が大きい液体流が形成するようになっている。これらのアスペクト比が大きい水性液体流が突然に第一チャネル950および1050に対する横方向における二次のチャネル920および1020に入る。そのため、液体の中心部を横方向に入らせることで、交差液体流になる。ノズルの出口において、交差状の断面を有する液体流が生成する。そのため、表面張力が曲率が大きい領域から内部へ液体を押すことにより、液滴が遮断される。いま液体付着点に4つの角があるため、迅速に遮断して小さい液滴が形成する。
【0031】
図11Aおよび11Bは星状のチャネル1100を用いた本発明のもう一つの実施形態を示す。当該構造において、液体は星状で出ることで、6つの高曲率の角がある。各マイクロチャネル1110はほかの2つのマイクロチャネル1120および1130と交差し、このほかの2つのマイクロチャネル1120および1130は初期マイクロチャネル1110とともに星状の断面を形成する。そのため、さらに遮断の過程を加速し、ひいてはより小さい液滴になる。
【0032】
本マイクロチャネルにおける液滴形成の過程は図12A~12Cに示す。図12Aはマイクロチャネル1212の内部の水流1210を示す。チャネルのアスペクト比が大きいため、チャネルの内部で放物線流1214が形成する。連続相は粘度が水よりも高い油であるため、一旦油1216がチャネルに入ると、そこに留まり、液体にチャネルの内部からチャネルの外部へ延伸する紡錘型変形領域1218が形成する。そのため、水流が放物線になる。チャネルに油が入らず、水性液体が充満していることもある。一旦水性液体が連続油性液体チャンバー1220に入ると、表面張力によって懸垂の液滴1222が破砕して球形微小液滴1224になる。付着した液滴の頸部領域1226が小さいため、当該液滴が容易にノズルから離れ、油内において液滴になる。
【0033】
同装置のもう一つの実施形態において、図12Bに示すように、比較的に小さいチャネル1232の出口に比較的に大きいチャネル1230があることで、ほぼ比較的に大きいチャネル1230になるまで、液滴の形状が楕円形1234に強いられることがわかる。これは、比較的に大きいチャネル1240の内部における油が液滴が球形になることを防ぐ理由である。ピペットチップの油貯蔵器に開放する液滴の頂部がより球形になり、底部および付着部が楕円形に維持するため、油が液滴の下方に捕獲されて液滴のすべての方向における膨大を阻止する。当該2チャンバーシステムは液滴の分離を加速することで、油においてより小さい液滴が形成する。図12Cは楕円形または楕球形の大きいチャンバー1250を用いた本発明のもう一つの実施形態を示す。図12Bについて説明された類似する効果によって微小液滴がコア液体から快速に砕けて出る。
【0034】
マイクロチャネルのアスペクト比はチャネルの幅に対するチャネルの高さの比と定義され、チャネルの高さが140ミクロンで、チャネルの幅が4.3ミクロンである場合、アスペクト比は32.6になる。アスペクト比の範囲が3.0超の場合、3~40の範囲内でもよい。
【0035】
チャネルのサイズおよび形状は液体がチャネルから離れると液体の液滴への破砕が促進されるように設計されている。液滴が形成時に集合することを防ぐように、チャネルの数および間隔を決定する。チャネルが互いに近すぎると、液滴が接触して集合する。微細孔の間の間隔は液滴の直径によって決まり、そして液滴の直径の2倍で、好適に液滴の直径の3~5倍である。同様に、5ミクロン~200ミクロンの範囲内にある液滴の直径について、単位面積あたりに生成する液滴の数が1平方センチメートルあたりに10~20,000の範囲内にある。
【0036】
マイクロチャネルのサイズが小さいため、外部の液体がチップに戻ってはならない。そのため、連続相液体はもう1つの開口端105からチップに注入し、ピペットのキャップまたはチャンバーに充満する。
【0037】
分散相液体をチップに注入する場合、エアロック(air lock)がチップに充満する液体の注入を阻止する。そのため、液体流を駆動する外部圧力、そして液体がソケットヘッドの微細孔の内表面に到達するようにチップにおける残留空気を排出することが必要である。なお、マイクロチャネルの深さはチップの深さよりも遥かに小さく、そしてマイクロチャネルにおける残留空気の体積は無視してもよい。
【0038】
空気を排出した後、一旦分散相液体がマイクロピペットに充満すると、連続相液体を含むチャンバー(たとえばピペットキャップ)にチップを浸漬する。分散相を扁平マイクロチャネルへ駆動する圧力を維持したまま、連続相と接触すると、液体が自発的に微小液滴に破砕して乳化した液滴になる。微小液滴は重力の作用下でチューブの底部に流れる。
【0039】
微小液滴は1~100μl/分の広い流速の範囲内で生成することができる。ポンプのポンピング速度を変えることにより、液滴の大きさに影響せず、容易に分散相の流速を変えることができる。微小液滴の数および生成速度は連続相の乳化性能、液滴の大きさおよびマイクロチャネルの数によって決まる。たとえば、アスペクト比が3.0~20の範囲内にある一つのマイクロチャネルは5~30 Hzの範囲内の周波数で50~300ミクロンの範囲内の液滴の直径が得られる。通常、チャネルの大きさと時間が同様の場合、階段状の組み合わせチャネルは簡易なマイクロチャネルよりも、星状の組み合わせチャネルは階段状の組み合わせチャネルよりも、多く液滴が生成する。
【0040】
形成する微小液滴の大きさは以下の要素によって決まる。(i)微小液滴生成器の材料で、当該材料で微小液滴のチャネルの出口における接触角が決まり、好適に疎水材料である。(ii)マイクロチャネルの形状で、好適に扁平な形状、たとえば矩形や楕円形である。(iii)マイクロチャネルの断面のアスペクト比で、好適に3:1よりも大きい。(iv)マイクロチャネルの深さで、チャネルにおいて自発的に破砕するようなものである。
【0041】
以下、適切な液滴を提供できるノイズの範囲を示す。
【0042】
本マイクロチャネル装置において液滴が形成する主な原理は以下の通りである。液体が直通のマイクロチャネルを通るようにすることにより、孔の出口において液滴が形成する。これはエッジに基づいた液滴形成(Edge Based Droplet Generation)と呼ばれる。液滴は重力の作用下でピペットチップの底部に落ちる(水性液滴が周囲の油よりも重いため)。液滴孔の出口に粘着することがあるため、液滴を孔の表面から分離したり、連続相に分散させたりするために外部流が必要かもしれない。これは液滴がチップから落ちるように簡単にピペットを揺らすことによって実現することができる。
【0043】
液滴が形成した後、熱循環機において加熱して液滴を含むチューブを増幅することができる。その後、増幅した乳液を読み取り装置のチップに注ぐ。読み取り装置は、通常、気圧制御システム、光学画像捕獲および単層チップ(ここで、すべての液滴が入口・出口の気圧の制御によって観察領域に導入される)からなる。システムのエッジおよび中心線の流体が垂直運動を維持するように、エッジの流速を遅くするためにエッジの形状を曲線のエッジに変更する。
【0044】
光学観察の操作の詳細は、まず、ホルダーにチューブを置き、さらに室温に戻った後にキャップを開ける。読み取り器のチップを取ってチューブを完全に覆い、さらにホルダーとチップを一体に組み立てる。
【0045】
組み合わせたチップを逆さに傾け、チューブにおける乳液がチップの読み取り器へ流れる。出口における気圧を制御することにより、すべての乳液が単層の観察領域に敷かれる。光学画像カメラで観察領域全体をスキャンして絶対的な定量分析報告を出す。このような毛細管に基づき、通常の定量PCRは容易に絶対定量PCRにアップグレードすることができる。
【0046】
従来のピペットチップの代わりに毛細管チップを使用することにより、サンプルが標準チューブに分散されて従来のqPCR装置において熱循環し、独特な単層イメージングプロセスのみで、容易に絶対定量PCRを実現することができる。
【0047】
本発明は、別途に液滴読み取り器ユニットを添加するのみで、通常の定量PCRを液滴デジタルPCRにアップグレードする実行可能な方法を提供する。本発明は、ユーザーの投資を削減して効果的に既存の機器を利用する。
【0048】
前記内容は本発明の原理を説明するのみとされる。また、当業者は容易に多くの修正や変更に想到することができるため、本発明を示されたか説明された明確な構造や操作に制限することが望ましくなく、よって本発明の範囲に入るすべての適切な修正や同等物を使用することができる。
【0049】
以上の説明について、もちろん、本発明の部品のサイズ、形状、様態、材料、機能および操作手段、組み立ておよび使用の面における最適な関係は当業者にとってわかりやすくて容易に想到できるとされ、そして図面で示されたか明細書で説明された内容と同じ効果のすべての関係は本発明に含まれる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C