(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】触媒、その製造方法、それを含む電極、それを含む膜-電極アセンブリー、及びそれを含む燃料電池
(51)【国際特許分類】
B01J 27/13 20060101AFI20221122BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20221122BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20221122BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20221122BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20221122BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20221122BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20221122BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20221122BHJP
【FI】
B01J27/13 M
H01M4/90 M
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/92
H01M4/88 K
B01J37/08
B01J37/04 102
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2021529336
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 KR2019017771
(87)【国際公開番号】W WO2020138800
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】10-2018-0169074
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョンホ
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-223196(JP,A)
【文献】特開2014-011154(JP,A)
【文献】特開2019-194977(JP,A)
【文献】特開2002-320854(JP,A)
【文献】国際公開第2010/033111(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/126077(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/146453(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
H01M 4/86-4/98
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子が担持されている担体を準備する段階;
前記金属粒子は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)及び白金-Me合金からなる群から選ばれる少なくとも一つを含み、前記Meは、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ガリウム(Ga)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ランタン(La)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)及びロジウム(Rh)からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、
有機フッ素化合物単量体である前駆体と、前記金属粒子が担持されている担体とを混合して混合物を得る段階-前記混合によって、前記前駆体が前記金属粒子の表面と前記担体の表面のそれぞれにコーティングされる-;及び
前記混合物を100~300℃の温度で熱処理する段階-前記熱処理によって、前記金属粒子の表面及び前記担体の表面のそれぞれにフッ素(F)基が形成される-
を含み、
前記有機フッ素化合物単量体はR-Fxを含み、前記Rは、アルキル基、アリール基、ベンジル基、ビニル基又はアシル基であり、前記xは1~6の整数である、
燃料電池の電極用触媒の製造方法。
【請求項2】
前記混合段階において、前記前駆体と、前記金属粒子が担持されている担体の重量比は、1:2~1:50である、請求項
1に記載の
燃料電池の電極用触媒の製造方法。
【請求項3】
前記混合は、均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー及び共鳴音響混合器からなる群から選ばれる少なくとも一つを用いて行われる、請求項
1に記載の
燃料電池の電極用触媒の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理は、不活性気体雰囲気で2~4時間行われる、請求項
1に記載の
燃料電池の電極用触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒、その製造方法、それを含む電極、それを含む膜-電極アセンブリー、及びそれを含む燃料電池に関し、特に、表面にフッ素(F)基を有することによってイオノマーとの界面特性が向上して優れた性能及び耐久性を有する触媒、その製造方法、それを含む電極、それを含む膜-電極アセンブリー、及びそれを含む燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(fuel cell)は、メタノール、エタノール、天然気体のような炭化水素系の物質中に含まれている水素と酸素の化学反応エネルギーを電気エネルギーに直接変換させる発電システムである。かかる燃料電池の代表例としては、高分子電解質燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell,PEMFC)を挙げることができる。前記PEMFCは、次世代エネルギ源として脚光を浴びており、特に、環境へのやさしさという利点から、自動車関連分野で商用化に向けた研究が活発に行われている。
【0003】
前記燃料電池システムにおいて、電気を実質的に発生させる膜-電極アセンブリー(Membrane Electrode Assembly,MEA)は、水素イオン伝導性高分子を含む高分子電解質膜を挟んでアノード(燃料極又は酸化電極ともいう。)とカソード(空気極又は還元電極ともいう。)が位置する構造を有する。各電極は、触媒、イオノマー、溶媒及び添加剤の混合物によって形成されるが、前記触媒は、燃料電池の活性及び耐久性を決定する主要因子である。
【0004】
一般に、金属触媒の使用量を減らしながらも触媒活性を向上させるために、担体に担持された金属粒子を含む触媒が燃料電池用に使用される。
【0005】
担体上に担持される前記金属粒子は、(i)そのサイズが小さく、(ii)担体に均一に分散されて広い領域の触媒活性点(active site)を提供し、(iii)酸化還元反応が起きる表面積が広い必要がある。
【0006】
一方、前記担体は、広い表面積、大きい細孔体積、及び高い電気伝導度を有しなければならない。
【0007】
現在、多く使用されている炭素担体は、不規則的な広範囲な細孔構造、低い細孔体積、低い電気伝導度などの問題点がある。
【0008】
アノード及びカソードに広く使用される金属粒子は、貴金属である白金を主原料として含むが、これは非常に高価であるため、電気化学的触媒活性を大きく減少させないで担持量を減少させる必要性がある。このような触媒反応は主に液相や気相でなされるので、触媒活性を向上させるためには金属粒子の単位重さ当たりの比表面積を最大化させなければならない。そのために最も効果的な方法が金属粒子のサイズを最小化することである。
【0009】
したがって、触媒の活性面積を増加させるためには、金属粒子を担体に担持する方法及び担体材料の特性などが重要に作用する。
【0010】
担体の製造に多く使用されている炭素材料は、カーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブなどがあり、それに対する多くの研究と開発が試みられてきた。特に、最近では、カーボンブラックを様々な物質でドーピング又は活性化させて触媒を製造する方法などが燃料電池用触媒の製造に用いられている。しかしながら、このような方法などで製造された触媒は、触媒自体の活性は向上した結果を示すが、電極として具現する場合には活性の向上が十分でない問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一側面は、表面にフッ素(F)基を有することによってイオノマーとの界面特性が向上し、優れた性能及び耐久性を有する触媒を提供することである。
【0012】
本発明の他の側面は、前記触媒の製造方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の側面は、前記触媒を含む電極を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の側面は、前記電極を含む膜-電極アセンブリーを提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の側面は、前記膜-電極アセンブリーを含む燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一側面によって、担体;該担体に担持された金属粒子;及び前記担体の表面及び前記金属粒子の表面のそれぞれに形成されているフッ素(F)基を含む、触媒が提供される。
【0017】
前記担体は、カーボンブラック、多孔性炭素、炭素繊維、炭素ナノチューブ、炭素ナノホーン及びグラフェンからなる群から選ばれてよい。
【0018】
前記金属粒子は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)及び白金-Me合金からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むことができ、前記Meは、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ガリウム(Ga)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ランタン(La)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)及びロジウム(Rh)からなる群から選ばれる少なくとも一つであってよい。
【0019】
一方、本発明の他の側面によって、金属粒子が担持されている担体を準備する段階;有機フッ素化合物単量体又は無機フッ素化合物である前駆体と、前記金属粒子が担持されている担体とを混合して混合物を得る段階-前記混合によって、前記前駆体が前記金属粒子の表面と前記担体の表面のそれぞれにコーティングされる-;及び前記混合物を100~300℃の温度で熱処理する段階-前記熱処理によって、前記金属粒子の表面及び前記担体の表面のそれぞれにフッ素(F)基が形成される-を含む、触媒の製造方法が提供される。
【0020】
前記混合段階において、前記前駆体と、前記金属粒子が担持されている担体の重量比は、1:2~1:50であってよい。
【0021】
前記有機フッ素化合物単量体はR-Fxを含むことができ、前記Rは、アルキル基、アリール基、ベンジル基、ビニル基又はアシル基であってよく、前記xは、1~6の整数であってよい。
【0022】
前記無機フッ素化合物は、M-Fxを含むことができ、前記Mは、H、NH4、Ca、Si、P、B及びAlからなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2以上の化合物であってよく、前記xは1~6の整数であってよい。
【0023】
前記混合は、均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー及び共鳴音響混合器からなる群から選ばれるいずれか一つを用いて行われてよい。
【0024】
前記熱処理は、不活性気体雰囲気で2~4時間行われてよい。
【0025】
本発明のさらに他の側面によって、前述した触媒及びイオノマーを含む電極が提供される。
【0026】
本発明のさらに他の側面によって、アノード;カソード;及び前記アノードと前記カソードとの間のイオン交換膜を含み、前記アノードと前記カソードのうち少なくとも一方は、前述の電極である、膜-電極アセンブリーが提供される。
【0027】
本発明のさらに他の側面によって、前述の膜-電極アセンブリーを含む燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明の触媒は、担体とその上に担持された金属粒子のそれぞれの表面がフッ素(F)基で改質されることによって触媒とイオノマー間の界面特性が向上し、触媒の性能及び耐久性を向上させることができる。また、種々の担体特性によってその用途に合わせて金属粒子の比表面積を適切に調節して多様に応用でき、前記金属粒子の材料である貴金属の使用量を減らすことによって経済性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】従来の触媒と本発明の一実施例に係る触媒を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリーをを示す概略断面図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る燃料電池の全体的な構成を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施例1による触媒の元素分析結果を示す図である。
【
図5】本発明の比較例2による触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図6】本発明の実施例2による触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図7】本発明の比較例3による触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図8】本発明の実施例3による触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図9】本発明の比較例1による触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図10】本発明の実施例4による触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図11】本発明の実施例1と比較例1による触媒のBET分析結果を比較して示すグラフである。
【
図12】本発明の実施例1と比較例1による触媒のXRD分析結果を比較して示すグラフである。
【
図13】本発明の実施例2と比較例2による触媒のBET分析結果を比較して示すグラフである。
【
図14】本発明の実施例2と比較例2による触媒のXRD分析結果を比較して示すグラフである。
【
図15】本発明の実施例3と比較例3による触媒のBET分析結果を比較して示すグラフである。
【
図16】本発明の実施例3と比較例3による触媒のXRD分析結果を比較して示すグラフである。
【
図17】本発明の実施例4と比較例1による触媒のBET分析結果を比較して示すグラフである。
【
図18】本発明の実施例4と比較例1による触媒のXRD分析結果を比較して示すグラフである。
【
図19】本発明の実施例1と比較例1による触媒をそれぞれ含む電極のCV(Cyclovoltammetry)活性測定結果を示すグラフである。
【
図20】本発明の実施例2と比較例2による触媒をそれぞれ含む電極のCV(Cyclovoltammetry)活性測定結果を示すグラフである。
【
図21】本発明の実施例3と比較例3による触媒をそれぞれ含む電極のCV(Cyclovoltammetry)活性測定結果を示すグラフである。
【
図22】本発明の実施例4と比較例1による触媒をそれぞれ含む電極のCV(Cyclovoltammetry)活性測定結果を示すグラフである。
【
図23】本発明の実施例1の触媒、比較例1の触媒、及び比較例4の触媒をそれぞれ含む電極のCV(Cyclovoltammetry)活性特定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。ただし、これらは例示として提示されるものであり、これによって本発明が制限されることはなく、本発明は、後述する特許請求の範囲の範ちゅうによって定義されるだけである。
【0031】
図1は、従来の触媒と本発明の一実施例に係る触媒を模式的に示す図である。
図1を参照すると、本発明の一実施例に係る触媒は、担体1;該担体1に担持された金属粒子2;及び前記担体1の表面及び前記金属粒子2の表面のそれぞれに形成されているフッ素(F)基を含む。
【0032】
本発明の前記担体1は、(i)炭素系担体、(ii)ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、セリアなどの多孔性無機酸化物、(iii)ゼオライトなどから選択されてよい。前記炭素系担体は、カーボンブラック(carbon black)、多孔性炭素(porous carbon)、炭素ナノチューブ(carbon nano tube,CNT)、炭素ナノホーン(carbon nano horn)、グラフェン(graphene)、スーパーピー(super P)、炭素繊維(carbon fiber)、炭素シート(carbon sheet)、ケッチェンブラック(Ketjen Black)、アセチレンブラック(acetylene black)、炭素球体(carbon sphere)、炭素リボン(carbon ribbon)、フラーレン(fullerene)、活性炭素及びこれらの2つ以上の組合せから選択されてよいが、これに限定されるものではなく、本発明の技術分野で使用可能な如何なる担体も使用可能である。
【0033】
前記担体1に担持された金属粒子2は、前記担体1の表面上に位置してもよく、前記担体1の内部気孔(pore)を埋めながら担体1の内部に浸透してもよい。
【0034】
水素酸化反応及び/又は酸素還元反応に触媒として使用可能なものであればいずれも前記金属粒子2として使用可能である。例えば、前記金属粒子2は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、及び白金-Me合金からなる群から選ばれる少なくとも一つの白金系金属を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0035】
前記Meは、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ガリウム(Ga)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ランタン(La)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)及びロジウム(Rh)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素である。すなわち、前記Meが1個の金属元素である場合、前記白金-Me合金は二元合金(binary alloy)であり、前記Meが2個の金属元素である場合、前記白金-Me合金は三元合金(ternary alloy)であり、前記Meが3個以上の金属元素である場合、前記白金-Me合金は多元合金(multi-component alloy)である。
【0036】
前記金属粒子2は、前記触媒全重量の10重量%~80重量%で前記触媒に含まれてよい。前記金属粒子2の含有量が10重量%未満であると、触媒活性が低下することがあり、前記金属粒子2の含有量が80重量%を超えると、前記金属粒子2の凝集によって活性面積が減って触媒活性が却って低下することがある。
【0037】
前記フッ素(F)基はフッ素原子のみからなる官能基であり、触媒の表面において肉眼では識別されず、触媒の撥水層として適用される従来のフッ素含有高分子樹脂コーティング層とは区別される。
【0038】
触媒の表面にフッ素基が形成されていることによって(すなわち、担体1の表面及び金属粒子2の表面がフッ素基で改質されることによって)イオノマーとの結合力が向上し、触媒の性能及び耐久性が極大化し得る。
【0039】
本発明の触媒の製造方法は、金属粒子2が担持されている担体1を準備する段階;有機フッ素化合物単量体又は無機フッ素化合物である前駆体と、前記金属粒子2が担持されている担体1とを混合して混合物を得る段階-前記混合によって、前記前駆体が前記金属粒子2の表面と前記担体1の表面のそれぞれにコーティングされる-;及び前記混合物を熱処理する段階-前記熱処理によって、前記金属粒子2の表面及び前記担体1の表面のそれぞれにフッ素(F)基が形成される-を含む。
【0040】
本発明によれば、触媒表面にフッ素基を形成させることによって触媒の性能を極大化できるので、触媒使用量を減らし、経済性を確保することができる。
【0041】
前記金属粒子2が担持されている担体1は、市販品を購入したり、或いは前記担体1に前記金属粒子2を担持させて製造することによって準備することができる。前記担体1に前記金属粒子2を担持させる工程は、当該分野で広く知られた内容であるので、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0042】
前記混合段階において、前記前駆体と、前記金属粒子2が担持されている担体1の重量比は、1:2~1:50であってよい。前記重量比が前記数値範囲を超える程度に多量の前駆体が使用されると、副反応及び触媒変質の問題が発生し得る。一方、前記重量比が前記数値範囲を外れる程度に少量の前駆体が使用されると、十分のフッ素処理効果が得られず、好ましくない。
【0043】
一方、本発明によれば、金属粒子2と担体1の表面にフッ素基を形成させるためのフッ素含有前駆体として、フッ素含有ポリマーを使用せず、有機フッ素化合物単量体又は無機フッ素化合物を使用する。
【0044】
フッ素含有ポリマーを前駆体として使用すると、担体1の表面の他に金属粒子2の表面の少なくとも一部も前記ポリマーでコーティングされる。厚いポリマーコーティング層は触媒活性を低下させる。また、前記コーティング層がポリマーで形成されるため、触媒の全表面を均一にコーティングし難い。また、熱処理後には触媒の表面上にフッ素基が存在しないため、本発明の目的を達成し難い。
【0045】
本発明の方法に使用可能な前記有機フッ素化合物単量体は、R-Fxを含むことができる。前記Rは、アルキル基、アリール基、ベンジル基、ビニル基又はアシル基であってよく、前記xは1~6の整数であってよい。より具体的に、前記有機フッ素化合物単量体は、C2H5F(フッ化エチル)、C7H7F(フッ化ベンジル)、CH3COF(フッ化アセチル)、(CNF)3(フッ化シアヌル)、C2H3F(フッ化ビニル)、(CH3)4NF(フッ化テトラメチルアンモニウム)、又はこれらの2以上の混合物であってよいが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本発明の方法に使用可能な前記無機フッ素化合物は、M-Fxを含むことができる。前記Mは、H、NH4、Ca、Si、P、B及びAlからなる群から選ばれるいずれか一つ又はこれらのうち2以上の化合物であってよく、前記xは1~6の整数であってよい。より具体的に、前記無機フッ素化合物は、HF、NH4F、CaF2、SiF6、PF3、PF5、(NH4)2SiF6、ClF6、NH4BF4、(NH4)2AlF6、又はこれらのうち2種以上の混合物であってよいが、これらに限定されるものではない。フッ素含有前駆体としてHFを使用する場合には取扱に注意を要する。
【0047】
金属粒子が担持されている担体を有機フッ素化合物単量体又は無機フッ素化合物と混合する段階は、均質混合器(homogenizer)、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー及び共鳴音響混合器からなる群から選ばれる少なくとも一つを用いて行うことができる。このような均質な混合によって、前記金属粒子2の表面と前記担体1の表面のそれぞれに前記前駆体が均一にコーティングされ得る。
【0048】
前記熱処理は、不活性気体(例えば、窒素ガス)雰囲気で行われてよい。このような熱処理によって前記金属粒子2の表面及び前記担体1の表面のそれぞれにフッ素基が均一に形成され得る。
【0049】
(i)前記担体1の種類及び/又は含有量、(ii)前記金属粒子2の種類及び/又は含有量、(iii)前記前駆体の種類及び/又は含有量、及び/又は(iv)前記熱処理工程の温度及び/又は時間を調整することによって、最適化された比表面積を有する触媒を得ることができる。
【0050】
前記熱処理温度は100~300℃であってよく、より好ましくは200℃程度であってよい。前記熱処理温度が100℃未満である場合、触媒の表面にフッ素基が不安定な状態で形成され、燃料電池作動中に流失する恐れがあり、300℃を超える場合、触媒の金属粒子2の凝集などによって性能が低下することがある。
【0051】
そして、前記熱処理時間は2~4時間でよく、より好ましくは3時間程度でよい。前記熱処理を2時間未満で行う場合、熱処理効果がない恐れがあり、4時間を超えて行う場合、触媒の金属粒子2の凝集などによって性能が低下することがある。
【0052】
本発明の電極は、前述した本発明の触媒;及び前記触媒と混合されたイオノマーを含む。
【0053】
前記イオノマーは、プロトンのような陽イオンを交換できる陽イオン交換基を有する陽イオン伝導体であるか、又はヒドロキシイオン、カーボネート又はバイカーボネートのような陰イオンを交換できる陰イオン交換基を有する陰イオン伝導体であってよい。
【0054】
前記陽イオン交換基は、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基及びこれらの組合せからなる群から選ばれるいずれか一つであってよく、一般に、スルホン酸基又はカルボキシル基であってよい。
【0055】
前記陽イオン伝導体は、前記陽イオン交換基を含み、主鎖にフッ素を含むフルオロ系高分子;ベンズイミダゾール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリホスファゼン又はポリフェニルキノキサリンなどの炭化水素系高分子;ポリスチレン-グラフト-エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、又はポリスチレン-グラフト-ポリテトラフルオロエチレン共重合体などの部分フッ素化された高分子;スルホンイミドなどを挙げることができる。
【0056】
より具体的に、前記陽イオン伝導体が水素イオン陽イオン伝導体である場合、前記高分子は、側鎖に、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる陽イオン交換基を含むことができ、その具体的な例には、ポリ(ペルフルオロスルホン酸)、ポリ(ペルフルオロカルボン酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体、脱フッ素化された硫化ポリエーテルケトン又はそれらの混合物を含むフルオロ系高分子;スルホン化されたポリイミド(sulfonated polyimide,S-PI)、スルホン化されたポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone,S-PAES)、スルホン化されたポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone,SPEEK)、スルホン化されたポリベンズイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole,SPBI)、スルホン化されたポリスルホン(sulfonated polysulfone,S-PSU)、スルホン化されたポリスチレン(sulfonated polystyrene,S-PS)、スルホン化されたポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)、スルホン化されたポリキノキサリン(sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化されたポリケトン(sulfonated polyketone)、スルホン化されたポリフェニレンオキシド(sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化されたポリエーテルスルホン(sulfonated polyether sulfone)、スルホン化されたポリエーテルケトン(sulfonated polyether ketone)、スルホン化されたポリフェニレンスルホン(sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィド(sulfonated polyphenylene sulfide)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィドスルホン(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィドスルホンニトリル(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテル(sulfonated polyarylene ether)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、ポリアリーレンエーテルスルホンケトン(sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)、及びこれらの混合物を含む炭化水素系高分子を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0057】
また、前記陽イオン伝導体は、側鎖末端の陽イオン交換基においてHをNa、K、Li、Cs又はテトラブチルアンモニウムに置換してもよい。前記側鎖末端の陽イオン交換基においてHをNaに置換する場合には、炭素構造体組成物の製造時にNaOHを、テトラブチルアンモニウムに置換する場合にはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドを使って置換し、K、Li又はCsも適切な化合物を使って置換することができる。前記置換方法は当該分野に広く知られた内容であるので、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0058】
前記陽イオン伝導体は、単一物又は混合物の形態で使用可能であり、また、選択的にイオン交換膜との接着力をより向上させる目的で非伝導性化合物と共に使用されてもよい。その使用量は使用目的に合わせて調節して使用することが好ましい。
【0059】
前記非伝導性化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン/テトラフルオロエチレン(ethylene/tetrafluoroethylene(ETFE))、エチレンクロロトリフリオロ-エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(PVdF-HFP)、ドデシルベンゼンスルホン酸及びソルビトール(sorbitol)からなる群から選ばれる1種以上のものを使用することができる。
【0060】
前記陰イオン伝導体としては、一般に、金属水酸化物がドープされたポリマーを使用することができ、具体的に、金属水酸化物がドープされたポリ(エーテルスルホン)、ポリスチレン、ビニル系ポリマー、ポリ(ビニルクロリド)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ベンズイミダゾール)又はポリ(エチレングリコール)などを使用することができる。
【0061】
また、前記イオノマーの商用化された例には、ナフィオン、アクイヴィオンなどを挙げることができる。
【0062】
前記イオノマーは、前記電極全重量に対して20~45重量%で含まれてよく、具体的に25~38重量%で含まれてよい。前記イオノマーの含有量が20重量%未満の場合には燃料電池の性能が低下することがあり、45重量%を超える場合にはイオノマーの過剰によってイオノマー間凝集部分が発生することがある。
【0063】
前記電極の製造方法は、前記触媒及び前記イオノマーを含む電極形成用組成物を製造する段階、そして前記電極形成用組成物をコーティングして電極を製造する段階を含む。
【0064】
まず、前記触媒及び前記イオノマーを含む電極形成用組成物を製造する。
【0065】
前記電極形成用組成物は、前記触媒及び前記イオノマーを溶媒に添加した後、超音波分散、撹拌、3ロールミル、遊星撹拌、高圧分散及びこれらの混合法から選ばれるいずれか一つの分散法を用いて製造することができる。
【0066】
また、前記触媒は、浸漬溶液に分散させた後に前記イオノマーと混合してもよく、固形分の状態で前記イオノマーに添加してもよい。
【0067】
前記溶媒は、水、親水性溶媒、有機溶媒及びこれらの一つ以上の混合物からなる群から選ばれる溶媒であってよい。
【0068】
前記親水性溶媒は、炭素数1~12の直鎖状、分枝状の飽和又は不飽和炭化水素を主鎖として含むアルコール、ケトン、アルデヒド、カーボネート、カルボキシレート、カルボン酸、エーテル及びアミドから構成された群から選ばれる一つ以上の官能基を有するものであってよく、これらは、脂環式又は芳香族環式化合物を主鎖の少なくとも一部として含むことができる。具体的な例として、アルコールにはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エトキシエタノール、n-プロピルアルコール、ブチルアルコール、1,2-プロパンジオール、1-ペンタノール、1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオールなど;ケトンにはヘプタノン、オクタノンなど;アルデヒドにはベンズアルデヒド、ドルアルデヒドなど;エステルにはメチルペンタノエート 、エチル-2-ヒドロキシプロパノエートなど;カルボン酸にはペンタン酸、ヘプタノ酸など;エーテルにはメトキシベンゼン、ジメトキシプロパンなど;アミドにはプロパンアミド、ブチルアミド、ジメチルアセトアミドなどがある。
【0069】
前記有機溶媒は、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン及びこれらの混合物から選択することができる。
【0070】
前記溶媒は、前記電極形成用組成物の全重量に対して80重量%~95重量%で含まれてよく、80重量%未満であると、固形分の含有量が高すぎ、電極コーティング時に亀裂及び高粘度による分散問題があり得、95重量%を超えると、電極活性に不利であり得る。
【0071】
次に、前記電極形成用組成物をコーティングして電極を製造する。
【0072】
前記電極を製造する段階は、具体的な一例示として、前記電極形成用組成物を離型フィルムにコーティングして電極を製造し、前記電極をイオン交換膜に転写する段階をさらに含むことができる。
【0073】
前記電極形成用組成物を前記離型フィルム上にコーティングする時には、前記活物質が分散された電極形成用組成物を、連続的又は間欠的にコーター(coater)に移送させた後、離型フィルム上に1μm~200μmの乾燥厚に均一に塗布することが好ましい。
【0074】
より詳細には、前記電極形成用組成物の粘性に応じてポンプから連続してダイ(die)、グラビア(gravure)、バー(bar)、コンマコータ(comma coater)などのコーターに移送した後、スロットダイコーティング、バーコーティング、コンマコーティング、スクリーンプリンティング、スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、ブラシなどの方法を用いて、デカールフィルム上に電極層の乾燥厚が1μm~200μm、より好ましくは3μm~20μmとなるように均一に塗布し、一定の温度で維持された乾燥炉を通過させながら溶媒を揮発させる。
【0075】
前記電極形成用組成物を1μm未満の厚さにコーティングする場合、触媒含有量が小さいため活性が落ちることがあり、200μmを超える厚さにコーティングする場合には、イオン及び電子の移動距離が増加して抵抗が増加することがある。
【0076】
前記乾燥工程は、25℃~90℃で12時間以上乾燥させることであってよい。前記乾燥温度が25℃未満であり、乾燥時間が12時間未満である場合には、十分に乾燥した電極を形成できない問題が発生することがあり、90℃を超える温度で乾燥させると、電極の亀裂などが発生することがある。
【0077】
ただし、前記電極形成用組成物を塗布及び乾燥する方法は、上記に限定されない。
【0078】
選択的に、前記電極形成用組成物を乾燥させて電極を製造する段階後には、乾燥した電極及び離型フィルムを必要なサイズにカットしてイオン交換膜に接合する段階をさらに含むことができる。
【0079】
前記イオン交換膜はイオン伝導体を含む。前記イオン伝導体は、プロトンのような陽イオンを伝達できる作用基を有する陽イオン伝導体であってもよく、又はヒドロキシイオン、カーボネート又はバイカーボネートのような陰イオンを伝達できる作用基を有する陰イオン伝導体であってもよい。前記陽イオン伝導体及び前記陰イオン伝導体に関する説明は、前記イオノマーにおける説明と同一であり、反復説明は省略する。
【0080】
一方、前記イオン交換膜は、e-PTFEのようなフッ素系多孔性支持体又は電気放射などによって製造された多孔性ナノウェブ支持体などの孔隙を前記イオン伝導体が埋めている強化膜の形態であってもよい。
【0081】
前記電極と前記イオン交換膜を接合する方法は、一例として転写方法を用いることができ、前記転写方法は、金属プレス単独、又は金属プレスにシリコンゴム材などのようなゴム材の軟質板を重ねて熱と圧力を加えるホットプレッシング(hot pressing)方法で行われてよい。
【0082】
前記転写方法は、80℃~150℃及び50kgf/cm2~200kgf/cm2の条件で行われてよい。80℃、50kgf/cm2未満の条件でホットプレッシングする場合、離型フィルム上の前記電極の転写が適切に行われないことがあり、150℃を超える場合には、前記イオン交換膜の高分子が燃えながら前記電極の構造変性が起きる恐れがあり、200kgf/cm2を超える条件でホットプレッシングする場合、前記電極の転写効果よりも前記電極を圧着する効果が大きくなり、転写が適切に行われないことがある。
【0083】
本発明の膜-電極アセンブリーは、アノード;カソード;及び前記アノードと前記カソードとの間に位置する前記イオン交換膜を含み、前記アノード及び前記カソードの少なくとも一方は、前述した本発明に係る電極である。
【0084】
前記電極、該電極の製造方法に関する説明、及び前記イオン交換膜に対する説明は、前述した通りであり、反復説明は省略する。
【0085】
図2は、本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリーを示す概略断面図である。
図2を参照して説明すると、前記膜-電極アセンブリー100は、前記イオン交換膜50、及び該イオン交換膜50の両面にそれぞれ配置される前記電極20,20’を含む。前記電極20,20’は、電極基材40,40’と、該電極基材40,40’の表面に形成された触媒層30,30’を含み、前記電極基材40,40’と前記触媒層30,30’との間に、前記電極基材40,40’における物質拡散を容易にするために、炭素粉末、カーボンブラックなどの導電性微細粒子を含む微細気孔層(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0086】
前記膜-電極アセンブリー100において、前記イオン交換膜50の一面に配置され、前記電極基材40を通って前記触媒層30に伝達された燃料から水素イオンと電子を生成させる酸化反応を起こす電極20をアノードとし、前記イオン交換膜50の他面に配置され、前記イオン交換膜50を通って供給された水素イオンと、電極基材40’を通って前記触媒層30’に伝達された酸化剤とから水を生成させる還元反応を起こす電極20’をカソードとする。
【0087】
前記アノード20の触媒層30と前記カソード20’の触媒層30’の少なくとも一方は、前記説明した本発明の一実施例に係る触媒を含む。
【0088】
前記電極基材40,40’には、水素又は酸素が円滑に供給されるような多孔性の導電性基材を使用することができる。その代表例として、炭素ペーパー(carbon paper)、炭素布(carbon cloth)、炭素フェルト(carbon felt)又は金属布(繊維状態の金属布で構成された多孔性のフィルム又は高分子繊維で形成された布の表面に金属フィルムが形成されたものをいう。)が使用できるが、これに限定されるものではない。また、前記電極基材40,40’は、フッ素系樹脂で撥水処理したものを使用することが、燃料電池の駆動時に発生する水によって反応物拡散効率が低下することを防止することができ、好ましい。前記フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリペルフルオロアルキルビニルエーテル、ポリペルフルオロスルホニルフルオリドアルコキシビニルエーテル、フッ素化エチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene)、ポリクロロトリフルオロエチレン又はそれらのコポリマーを使用することができる。
【0089】
前記膜-電極アセンブリー100は、前記アノード20及び/又はカソード20’として本発明の一実施例に係る電極を使用する以外は、通常の膜-電極アセンブリーの製造方法によって製造することができる。
【0090】
本発明の燃料電池は、前述した本発明の膜-電極アセンブリーを含む。
【0091】
図3は、本発明の一実施例に係る燃料電池の全体的な構成を示す模式図である。
図3を参照すると、前記燃料電池200は、燃料と水が混合された混合燃料を供給する燃料供給部210、前記混合燃料を改質して、水素ガスを含む改質ガスを発生させる改質部220、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスが酸化剤と電気化学的な反応を起こして電気エネルギーを発生させるスタック230、及び酸化剤を前記改質部220及び前記スタック230に供給する酸化剤供給部240を含む。
【0092】
前記スタック230は、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスと酸化剤供給部240から供給される酸化剤との酸化/還元反応を誘導して電気エネルギーを発生させる複数の単位セルを備える。
【0093】
それぞれの単位セルは電気を発生させる単位のセルを意味し、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤中の酸素を酸化/還元させる前記膜-電極アセンブリーと、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤を膜-電極アセンブリーに供給するための分離板(又は、バイポーラプレート(bipolar plate)ともいい、以下、‘分離板’と称する。)を含む。前記分離板は、前記膜-電極アセンブリーを挟んでその両側に配置される。このとき、前記スタックの最外側にそれぞれ位置する分離板を、特にエンドプレートと称することもある。
【0094】
前記分離板のうち、一つのエンドプレートには、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスを注入するためのパイプ形状の第1供給管231と、酸素ガスを注入するためのパイプ形状の第2供給管232が備えられ、他のエンドプレートには、複数の単位セルで最終的に無反応で残った水素ガスを含む改質ガスを外部に排出させるための第1排出管233と、上述の単位セルで最終的に無反応で残った酸化剤を外部に排出させるための第2排出管234が備えられる。
【0095】
前記電極は、上述の燃料電池用膜-電極アセンブリーの他にも、二次電池又はキャパシタなどの様々な分野に適用可能である。
【0096】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記する実施例は本発明を具体的に例示又は説明するためのものに過ぎず、それらによって本発明が制限されるものではない。また、ここに記載されていない内容は、当該技術の分野における熟練した者であれば十分に技術的に類推できるものであり、その説明を省略する。
【0097】
1.製造例:触媒の製造
(1)実施例1:無機フッ素化合物前駆体を用いた触媒の製造
商用Pt/C触媒1.0gと、無機フッ素化合物前駆体であるNH4F 0.1gを反応容器に入れた。次に、均質混合器(homogenizer)を用いて前記商用触媒と前駆体を均質に混合した。このようにして得られた混合物を、窒素雰囲気で200℃の温度で3時間熱処理し、表面にフッ素基が形成された触媒を製造した。
【0098】
(2)実施例2:無機フッ素化合物前駆体を用いた触媒の製造
商用PtCo/C触媒1.0gと、無機フッ素化合物前駆体であるNH4F 0.1gを反応容器に入れた。次に、均質混合器(homogenizer)を用いて前記商用触媒と前駆体を均質に混合した。このようにして得られた混合物を、窒素雰囲気で200℃の温度で3時間熱処理し、表面にフッ素基が形成された触媒を製造した。
【0099】
(3)実施例3:無機フッ素化合物前駆体を用いた触媒の製造
高耐久性担体を用いた商用Pt/GC(Graphitic carbon)触媒1.0gと、無機フッ素化合物前駆体であるNH4F 0.1gを反応容器に入れた。次に、均質混合器(homogenizer)を用いて前記商用触媒と前駆体を均質に混合した。このようにして得られた混合物を、窒素雰囲気で200℃の温度で3時間熱処理し、表面にフッ素基が形成された触媒を製造した。
【0100】
(4)実施例4:有機フッ素化合物単量体前駆体を用いた触媒の製造
商用Pt/C触媒1.0g、有機フッ素化合物単量体前駆体であるフッ化ベンジル0.1g、及び架橋剤であるホルムアルデヒド0.05gを反応容器に入れた。次に、均質混合器(homogenizer)を用いて前記商用触媒、前駆体及び架橋剤を均質に混合した。このようにして得られた混合物を、窒素雰囲気で200℃の温度で3時間熱処理し、表面にフッ素基が形成された触媒を製造した。
【0101】
(5)比較例1:商用触媒(Pt/C)
商用Pt/C触媒1.0gを使用した。
【0102】
(6)比較例2:商用触媒(PtCo/C)
商用PtCo/C触媒1.0gを使用した。
【0103】
(7)比較例3:商用触媒(Pt/GC)
商用Pt/GC触媒1.0gを使用した。
【0104】
(8)比較例4:表面フッ化処理された担体を用いた触媒の製造
商用炭素担体0.5gと、無機フッ素化合物前駆体であるNH4F 0.05gを反応容器に入れた。次に、均質混合器(homogenizer)を用いて前記商用炭素担体と前駆体を均質に混合した。このようにして得られた混合物を、窒素雰囲気で200℃の温度で3時間熱処理し、表面にフッ素基が形成された担体を製造した。
【0105】
次に、前記表面フッ化処理された担体を水に均一に分散させた後、金属粒子前駆体であるH2PtCl6溶液5mlを、前記担体が分散されている水に投入した。その後、還元剤であるNaBH4溶液を入れて金属粒子を還元させた後、乾燥及び回収して触媒を製造した。
【0106】
2.実験例1:触媒の透過電子顕微鏡観察及び元素分析結果
前記実施例1で製造された触媒の元素分析結果を
図4に示した。前記元素分析は、透過電子顕微鏡(TEM)のSTEM(Scanning transmission electron microscopy)モードでEDS(Energy dispersive spectrometry)分析によって確認した。
図4を参照すると、金属粒子(Pt)の表面及び担体(C)の表面に均一にフッ素基が形成されていることが確認できる。
【0107】
そして、前記比較例2と実施例2で製造された触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真を
図5及び
図6に示した。
図5及び
図6を参照すると、PtCo/C触媒の場合、2回の反復実験の結果、フッ素処理前(
図5)とフッ素処理後(
図6)の触媒に変化がないことから、本発明のフッ素処理が金属粒子には大きく影響を与えずに、表面にフッ素基が形成されたPtCo/C触媒が製造されたことが確認できる。
【0108】
また、前記比較例3と実施例3で製造された触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真を
図7及び
図8に示した。
図7及び
図8を参照すると、高耐久性担体を用いたPt/GC触媒の場合、2回の反復実験の結果、フッ素処理前(
図7)には小さな金属粒子の形態を示すが、フッ素処理後(
図8)には金属粒子が互いに凝集しながら成長する傾向を示した。したがって、高耐久性担体を用いる場合には、前駆体の調節、熱処理温度及び時間を調節して最適化する必要がある。
【0109】
一方、前記比較例1と実施例4で製造された触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真を
図9及び
図10に示した。
図9及び
図10を参照すると、Pt/C商用触媒の場合、フッ素処理前(
図9)とフッ素処理後(
図10)の触媒に大きい変化がないことから、金属粒子には大きく影響を与えていないことが分かる。しかし、触媒粒子の周辺部に非結晶性層が見られることから、一部のフッ素含有樹脂層が前記触媒の表面に共に存在していることが確認できる。
【0110】
3.実験例2:触媒のBET及びXRD分析結果
実施例1と比較例1で製造された触媒のBET及びXRD分析結果をそれぞれ、
図11及び
図12に示した。
図11を参照すると、Pt/C触媒の場合、フッ素処理後、すなわち、表面にフッ素基が形成された実施例1触媒の比表面積とマイクロ気孔が減少した結果が導出された。このような結果から、フッ素処理によって触媒が安定化されたことが確認できる。そして、
図12を参照すると、フッ素処理前と後のXRD結果に大差がないことから、前記フッ素処理が金属粒子には影響を与えていないことが確認できる。
【0111】
実施例2と比較例2で製造された触媒のBET及びXRD分析結果をそれぞれ、
図13及び
図14に示した。
図13を参照すると、PtCo/C触媒も、フッ素処理後、すなわち、表面にフッ素基が形成された実施例2触媒の比表面積とマイクロ気孔が減少した結果が導出された。このような結果から、フッ素処理によって触媒が安定化されたことが確認できる。そして、
図14を参照すると、フッ素処理前と後のXRD結果に大差がないことから、前記フッ素処理が金属粒子には影響を与えていないことが確認できる。
【0112】
実施例3と比較例3で製造された触媒のBET及びXRD分析結果をそれぞれ、
図15及び
図16に示した。
図15及び
図16を参照すると、高耐久性担体を用いたPt/GC触媒では、フッ素処理後、すなわち、表面にフッ素基が形成された実施例3触媒の比表面積とマイクロ気孔が増加した結果が導出された。これは、前駆体が商用触媒の各担体を離間させ、マイクロ細孔を増加させる役割を担ったためと推定され、このため、金属粒子の離脱によって金属粒子間の凝集が誘発され、XRD結果もTEM結果と同様に、金属粒子のサイズが増加した結果が導出された。
【0113】
実施例4と比較例1で製造された触媒のBET及びXRD分析結果をそれぞれ、
図17及び
図18に示した。
図17を参照すると、有機前駆体を用いてPt/C触媒の表面にフッ素基を形成させた実施例4の触媒の比表面積とマイクロ気孔が減少した結果が導出された。このような結果から、フッ素処理によって触媒が安定化されたことが確認できる。一方、触媒の表面に形成されたフッ素含有樹脂層の影響からマクロ気孔は増加した結果を示した。そして、
図18を参照すると、フッ素処理前と後のXRD結果に大差がないことから、前記フッ素処理が金属粒子には影響を与えていないことが確認できる。
【0114】
4.実験例3:CV(Cyclovoltammetry)評価
イオノマーとイソプロパノールを混合して製造された溶液に、前記実施例と比較例で製造された触媒をそれぞれ添加後に超音波処理し、電極形成用組成物を製造した。
【0115】
次に、前記電極形成用組成物をグラッシーカーボン素材の回転ディスク電極に塗布した後に乾燥させ、作業電極(活性面積0.196cm2)を製造した。
【0116】
前記作業電極、基準電極としてAg/AgCl電極、相対電極として白金線を用いた電気化学測定装置を用いて、1MのHClO4電解質溶液でCV(cyclovoltammetry)活性を測定した。
【0117】
図19は、実施例1と比較例1による触媒をそれぞれ含む電極のCV(Cyclovoltammetry)活性測定結果を示すグラフであり、
図20は、実施例2と比較例2による触媒をそれぞれ含む電極のCV活性測定結果を示すグラフであり、
図21は、実施例3と比較例3による触媒をそれぞれ含む電極のCV活性測定結果を示すグラフである。
【0118】
図19~
図21を参照すると、実施例1~3のいずれにおいても、電気化学的活性面積(ECSA)が増加したことが確認できる。実施例1及び実施例2では、比較例1及び比較例2のそれぞれに比べて水素脱着曲線がより大きく形成され、電気化学的活性面積(ECSA)もそれぞれ12%、11%増加した。これは、触媒の表面に形成されたフッ素基によってイオノマーと触媒とがよりよく結合したことを示唆する。実施例3では、TEMとXRD結果からは、金属粒子のサイズが増加して性能が減少すると予想されたが、実施例3も、比較例3と比較して電気化学的活性面積(ECSA)が増加した。これは、熱処理過程から生成された追加気孔による容量(capacitance)増加が原因であると判断される。
【0119】
図22は、実施例4と比較例1による触媒をそれぞれ含む電極のCV活性測定結果を示すグラフである。
図22を参照すると、有機化合物前駆体を用いてフッ素処理した実施例4でも、比較例1と比較して、電気化学的活性面積(ECSA)が増加した。これは、前述したように、触媒の表面に形成されたフッ素基によってイオノマーと触媒とがよりよく結合したことを示唆する。一方、水素吸着曲線の位置が変更されたことはフッ素含有樹脂層の影響であると判断されるが、さらなる原因究明が必要である。
【0120】
図23は、実施例1、比較例1及び比較例4による触媒をそれぞれ含む電極のCV活性測定結果を示すグラフである。
図23を参照すると、表面フッ化処理された担体を用いて触媒を製造した比較例4では、既存の商用触媒である比較例1に比べて却って活性が低下したことが確認できる。