(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】血液処理フィルター
(51)【国際特許分類】
A61M 1/02 20060101AFI20221122BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61M1/02 100
B01D39/16 A
B01D39/16 E
(21)【出願番号】P 2021530737
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2020026962
(87)【国際公開番号】W WO2021006331
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2019129435
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 和彦
(72)【発明者】
【氏名】横溝 朋久
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/039400(WO,A1)
【文献】国際公開第02/004045(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/204289(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/196651(WO,A1)
【文献】特表2017-508553(JP,A)
【文献】川端 季雄,通気性測定装置の開発とその応用,繊維機械学会誌,日本,1987年,Vol. 40, No. 6,pp. 41-49
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
B01D 39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項4】
前記濾材が、フィルター構成単位A2を含むフィルター層X2を更に含み、
前記フィルター層X2が、前記入口部と前記フィルター層Yとの間に配置されており、
前記フィルター構成単位A2の厚みあたりの通気抵抗が、5.0Pa・s/m
2以上9.0Pa・s/m
2未満であり、
前記フィルター層X2の通気抵抗が、4.0kPa・s/m以上である、
請求項1~3のいずれかに記載の血液処理フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液成分を含む液体または血液から凝集物や白血球等の好ましくない成分を除去するための血液処理フィルターに関する。
本発明は、特に、輸血用の全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤などから副作用の原因となる微小凝集物や白血球を除去するための血液処理フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤等の血液成分製剤の原料としては、ドナーから採血された全血が使用されるところ、全血には、種々の輸血副作用の原因となる微小凝集物や白血球等の好ましくない成分が含まれる。そのため、一般に、採血後や血液成分製剤の使用の前に、好ましくない成分の除去が行われる。
全血や血液成分製剤から白血球等の好ましくない成分を除去する方法としては、操作が簡便であること、コストが安いことなどから、不織布等の繊維集合体や連続気孔を有する多孔構造体などからなる濾材を含む血液処理フィルターを用いるフィルター法が普及している。
【0003】
従来、血液処理フィルターは、不織布や多孔質体からなる濾材をポリカーボネート等の硬質容器に充填したものが広く使われてきたが、容器のガス透過性が低いため、採血分離セットの滅菌工程として広く使われている蒸気滅菌を適用し難いという問題があった。また、クローズドシステムには、採血後にまず全血製剤から白血球を除去し、血液処理フィルターを切り離してから成分分離のための遠心分離操作を行う場合と、全血を遠心分離によって複数の血液成分に分離した後に白血球除去を行う場合とがあり、後者の場合には血液処理フィルターも採血分離セットと共に遠心される。この際、硬質の容器がバッグや導管にダメージを与えたり、硬質容器自身が遠心時のストレスに耐えられずに破損したりする可能性があった。
【0004】
これらの問題点を解決する方法として、採血分離セットのバッグに使用されているものと同一または類似の、可撓性かつ蒸気透過性に優れる素材を容器に用いた「可撓性の血液処理フィルター」が開発されている。
【0005】
通常、血液処理フィルターで血液を処理する際は、処理されるべき血液製剤が入っており、導管を介してフィルターの血液入口側に接続されたバッグを、フィルターよりも20cmから100cm程高い位置に置き、重力の作用によって血液製剤をフィルターに通し、フィルターの血液出口側に導管を介して接続された回収バッグに濾過後の血液製剤を収容する。濾過の最中には濾材の抵抗によって圧力損失が生じ、フィルター入口側の空間は陽圧となる。可撓性容器からなるフィルターの場合、容器が可撓性であるが故、この陽圧によって容器は風船状に膨らみ、濾材は出口側の容器に押しつけられる傾向がある。
【0006】
また、通常は、フィルターよりも50cm~100cm低い位置に、血液フィルターで処理された後の血液を収納するためのバッグを置くが、血液が重力の作用で下流側の流路を移動することによって、フィルターの出口側は陰圧となる傾向を示し、可撓性容器が濾材に密着しやすくなる。
【0007】
つまり、可撓性容器を用いたフィルターでは、濾材は二重の力によって出口側容器と密着する傾向が強く、その為に血液の流れが阻害されて十分な濾過流速および濾過性能が得られない問題のあることが以前から指摘されていた。
【0008】
白血球除去フィルターの性能として、白血球除去性能・血液流れ性・血液回収量が評価され、そのバランスを良好に発揮することが重要である。しかし、特に白血球除去性能と血液流れ性は上記理由からその両立が問題であった。
【0009】
この問題を解決する方法として、特許文献1には濾材と出口側容器との間に流路確保部材として流路確保シートを配置することによって、濾過中に出口側可撓性容器と濾材との間で密着していない連続した空隙を形成し、濾過流速と白血球除去性能を両立させるという技術を開示している。
【0010】
また、特許文献2には流路確保部材として出口側容器と接する濾材の最下流の位置に特定の特性を有するフィルター構成要素からなるフィルター層を特定の厚みで配置することで濾過中に濾材と出口側容器が密着する場合でも、該フィルター層内に空隙が形成され、該フィルター層内を濾材の厚み方向に対して直角方向に流れることで(高い)濾過流速を可能とさせる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第5524340号公報
【文献】特許第4172631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1では、流路確保部材自身が白血球除去性能を有さないため白血球除去性能を最大限高められない。また、流路確保シートによって、流路や第一シール部と第二シール部の間に残留する血液により被処理液の回収量ロスが増加する問題があった。
【0013】
特許文献2では、出口側容器と接する濾材の最下流の位置に流路確保部材として配置したフィルター層が、濾材出口側と出口側の可撓性容器シートとの張り付き時に圧縮されても内部に流路を保持できる一方で、流れを向上させるためにフィルター層(流路確保部材)量を増加させると、被処理液の回収量ロスが増大してしまう問題があった。また、濾材量を減少させると、白血球除去能が低下してしまい、白血球除去性能、濾過流速、血液回収量をすべて同時に高い性能で発揮できない問題があった。
【0014】
これらの技術が製品として使えるレベルは達成しているが、そのバランスには改善の余地がある。
【0015】
本発明は、白血球除去性能、濾過時間(濾過速度)、及び血液回収の全てにおいて優れた血液処理フィルターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、血液の流れ方向において、上流から下流に向かって、比較的密なフィルター層、比較的疎なフィルター層、及び流路確保部材を順に配置した血液処理フィルターを使用することによって、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
つまり、本発明は、以下に関するものである。
[1]
血液の入口部及び出口部を有する可撓性容器と、
前記可撓性容器内の、前記入口部と前記出口部との間に配置された濾材と、
前記可撓性容器内の、前記濾材と前記出口部との間に配置された流路確保部材と、
を含む、血液処理フィルターであって、
前記濾材が、
フィルター構成単位A1を含むフィルター層X1と、
フィルター構成単位Bを含むフィルター層Yと、
を含み、
前記フィルター層X1が、前記フィルター層Yと前記流路確保部材との間に配置されており、
前記フィルター構成単位A1の厚みあたりの通気抵抗が、5.0Pa・s/m2以上9.0Pa・s/m2未満であり、
前記フィルター構成単位Bの厚みあたりの通気抵抗が、9.0Pa・s/m2以上であり、
前記フィルター層X1の通気抵抗が、4.0kPa・s/m以上20.0kPa・s/m以下であり、
前記濾材の通気抵抗が、55.0kPa・s/m以上75.0kPa・s/m未満である、
血液処理フィルター。
[2]
前記流路確保部材が、
フィルター構成単位Pを含むフィルター層Zを含み、
前記フィルター構成単位Pの厚みあたりの通気抵抗が、0.5Pa・s/m2未満であり、
前記フィルター層Zの通気抵抗が、0.08kPa・s/m以上0.16kPa・s/m以下である、
[1]に記載の血液処理フィルター。
[3]
前記フィルター層Zの通気抵抗が、0.08kPa・s/m以上0.12kPa・s/m以下である、[2]に記載の血液処理フィルター。
[4]
前記濾材が、フィルター構成単位A2を含むフィルター層X2を更に含み、
前記フィルター層X2が、前記入口部と前記フィルター層Yとの間に配置されており、
前記フィルター構成単位A2の厚みあたりの通気抵抗が、5.0Pa・s/m2以上9.0Pa・s/m2未満であり、
前記フィルター層X2の通気抵抗が、4.0kPa・s/m以上である、
[1]~[3]のいずれかに記載の血液処理フィルター。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、白血球除去性能、濾過時間(濾過速度)、及び血液回収の全てにおいて優れた血液処理フィルターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例で実施した血液処理フィルターの白血球除去性能試験に使用した実験装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態(以下、本実施の形態という。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0021】
以下、特に明記しない限り、「血液」の用語には、血液及び血液成分含有液体が含まれるものとする。血液成分含有液体としては、例えば、血液製剤が挙げられる。血液製剤としては、例えば、全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤等が挙げられる。
【0022】
<血液処理フィルター>
本発明の一実施形態は、血液の入口部及び出口部を有する可撓性容器と、
前記可撓性容器内の、前記入口部と前記出口部との間に配置された濾材と、
前記可撓性容器内の、前記濾材と前記出口部との間に配置された流路確保部材と、
を含む、血液処理フィルターであって、
前記濾材が、
フィルター構成単位A1を含むフィルター層X1と、
フィルター構成単位Bを含むフィルター層Yと、
を含み、
前記フィルター層X1が、前記フィルター層Yと前記流路確保部材との間に配置されており、
前記フィルター構成単位A1の厚みあたりの通気抵抗が、5.0Pa・s/m2以上9.0Pa・s/m2未満であり、
前記フィルター構成単位Bの厚みあたりの通気抵抗が、9.0Pa・s/m2以上であり、
前記フィルター層X1の通気抵抗が、4.0kPa・s/m以上20.0kPa・s/m以下であり、
前記濾材の通気抵抗が、55.0kPa・s/m以上75.0kPa・s/m未満である、
血液処理フィルターに関する。このような構成を採用することによって、白血球除去性能、濾過速度、及び血液回収の全てにおいて優れた性能を発揮することができる。
【0023】
本実施形態に係る血液処理フィルターでは、可撓性容器の入口部から出口部に向かって、フィルター層Y、フィルター層X1、及び流路確保部材が順に配置されている。そのため、処理すべき血液は、入口部を通って可撓性容器に入り、フィルター層Y、フィルター層X1、及び流路確保部材を順に通過し、出口部を通って可撓性容器から出る。
【0024】
本発明の効果を損なわない範囲において、濾材は更なるフィルター層を含んでいてもよい。例えば、濾材は、フィルター構成単位A2を含むフィルター層X2を更に含んでいることが好ましい。また、フィルター層X2は、入口部とフィルター層Yとの間に配置されていることが好ましい。この実施形態では、処理すべき血液は、入口部を通って可撓性容器に入り、フィルター層X2、フィルター層Y、フィルター層X1、及び流路確保部材を順に通過し、出口部を通って可撓性容器から出る。
【0025】
本実施形態の血液処理フィルターの形状は特に限定されないが、例えば国際公開第2015/050216号の
図14に記載された血液処理フィルターのように、濾材と可撓性容器から構成され、濾材の周縁部近傍が全周に渡って可撓性容器と一体化されたシール区域を有することが好ましく、さらに、濾材の周縁部近傍全周と可撓性容器とが一体化されて形成された第一のシール区域と、第一のシール区域の外側全周に渡って入口側可撓性容器と出口側可撓性容器とが一体化されて形成された第二のシール区域と、第一のシール区域と第二のシール区域との間に非シール区域とを有することが好ましい。
【0026】
血液処理フィルターの外形は、矩形状、円盤状、長円盤状、楕円状などの様々態様を採用できるが、製造時の材料ロスを少なくするためには矩形状が好ましく、従って、以下の実施形態では矩形状を例に説明する。
【0027】
[可撓性容器]
可撓性容器は、可撓性樹脂のシート状成型物または円筒状成型物から成型された容器であることが好ましい。可撓性樹脂は、可撓性合成樹脂であることが好ましく、可撓性熱可塑性樹脂であることが更に好ましい。可撓性樹脂は、濾材と熱的性質及び電気的性質が類似したものが良い。可撓性樹脂としては、例えば、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン及びポリプロピレンのようなポリオレフィン、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体の水添物、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体またはその水添物等の熱可塑性エラストマー、及び、熱可塑性エラストマーとポリオレフィン、エチレン-エチルアクリレート等の軟化剤との混合物等が挙げられる。可撓性樹脂は、好ましくは、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン、及び、これらを主成分とする熱可塑性エラストマーであり、更に好ましくは軟質ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンである。また、引張弾性率が7N/mm2~13N/mm2、厚みが0.2mm~0.6mmである材で作製された可撓性容器であることがより好ましい。引張弾性率は、引張試験を行ったとき、引張応力(試料に加わった単位面積当たりの荷重)とひずみ(試料の引張方向への伸び率)の関係が直線関係である範囲内における、引張応力とこれに対応するひずみの比である。実際には、JIS K 7113(プラスチックの引張試験方法)に従い、オートグラフ(島津製作所(株)製、型式AG-5KNI)とロードセル(島津製作所(
株)製、型式SLBL-500N)を用いて可撓性容器素材の引張試験を行い、データ処理ソフト「TRAPEZIUM」(島津製作所(株)製)を用いて、応力-ひずみ曲線の変形開始点における接線の傾斜を求めることにより引張弾性率を得た。
【0028】
[濾材]
濾材は、血液を処理する部材であり、より具体的には、血液から凝集物や白血球等の好ましくない成分を除去する部材である。濾材は、少なくともフィルター層X1及びフィルター層Yを含み、フィルター層X1、フィルター層X2及びフィルター層Yを含むことが好ましく、フィルター層X1、フィルター層X2及びフィルター層Yのみから構成されることが更に好ましい。
【0029】
フィルター層は、フィルター構成単位を含む。フィルター構成単位の数が1である場合、それ自体がフィルター層を構成する。フィルター構成単位の数が2以上である場合、複数のフィルター構成単位が積層して、フィルター層を構成する。フィルター構成単位の数は、フィルター層が所定の通気抵抗を有するように選択される。
【0030】
フィルター層X1はフィルター構成単位A1を含む。フィルター層X1は、フィルター構成単位A1に加えて、更なるフィルター構成単位を含んでいてもよいが、1以上のフィルター構成単位A1のみから構成されることが好ましい。
【0031】
フィルター層X2はフィルター構成単位A2を含む。フィルター層X2は、フィルター構成単位A2に加えて、更なるフィルター構成単位を含んでいてもよいが、1以上のフィルター構成単位A2のみから構成されることが好ましい。
【0032】
フィルター層Yはフィルター構成単位Bを含む。フィルター層Yは、フィルター構成単位Bに加えて、更なるフィルター構成単位を含んでいてもよいが、1以上のフィルター構成単位Bのみから構成されることが好ましい。
【0033】
フィルター構成単位の形状は、血液を濾過し得る細孔を有し、所定の通気抵抗を有するものであれば特に限定されないが、好ましくは天然繊維、合成繊維、ガラス繊維等からなる編布、織布、不織布などの繊維状媒体、多孔膜、三次元網目状連続孔を有するスポンジ状構造物である。
【0034】
フィルター構成単位の材料は、血球にダメージを与えにくいものであれば特に限定されない。フィルター構成単位の材料としては、例えば、有機高分子材料、無機高分子材料、金属等が挙げられる。その中でも有機高分子材料は切断等の加工性に優れるために好ましい。フィルター構成単位の具体的な材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ弗化ビニル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリスルホン、ポリ弗化ビニリデン、ポリトリフルオロクロロビニル、弗化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、ポリエーテル-ポリアミドブロック共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、セルロース、セルロースアセテート等が挙げられ、好ましくはポリエステル、ポリオレフィンであり、特に好ましくはポリエステルである。
【0035】
フィルター構成単位A1、フィルター構成単位A2、及びフィルター構成単位Bの形状は、それぞれが所定の通気抵抗を有していれば、同一であってもよいし、異なっていてもよい。特に限定するものではないが、フィルター構成単位A1、フィルター構成単位A2、及びフィルター構成単位Bの形状は、繊維状媒体であることが好ましく、不織布であることが更に好ましい。
【0036】
フィルター構成単位A1、フィルター構成単位A2、及びフィルター構成単位Bの材料は、それぞれが所定の通気抵抗を有していれば、同一であってもよいし、異なっていてもよい。特に限定するものではないが、フィルター構成単位A1、フィルター構成単位A2、及びフィルター構成単位Bの材料は、ポリエステルであることが好ましい。
【0037】
フィルター構成単位A1の厚みあたりの通気抵抗は、5.0Pa・s/m2以上9.0Pa・s/m2未満であり、好ましくは5.0Pa・s/m2以上8.0Pa・s/m2未満である。フィルター構成単位A1の厚みあたりの通気抵抗を上記範囲とすることによって、濾過時に濾材が出口部側の容器と密着する場合でも、フィルター構成単位A1内の流路が維持されるため、血液の流れが阻害されず、十分な濾過流速および濾過性能が得られると考えらえる。本願において、フィルター構成単位A1の厚みあたりの通気抵抗を5.0Pa・s/m2未満とすると、十分な白血球除去性能を得られず、濾過後残存白血球数が5.5Logを超過する。フィルター構成単位A1の厚みあたりの通気抵抗を9.0Pa・s/m2以上とすると、十分な濾過流速が得られず、濾過時間が27分以上となる。
【0038】
フィルター構成単位A2の厚みあたりの通気抵抗は、好ましくは5.0Pa・s/m2以上9.0Pa・s/m2未満であり、より好ましくは5.0Pa・s/m2以上8.0Pa・s/m2未満である。フィルター構成単位A2の厚みあたりの通気抵抗を上記範囲とすることによって、白血球除去性能、濾過速度において優れた性能を発揮する。
【0039】
フィルター構成単位Bの厚みあたりの通気抵抗は、9.0Pa・s/m2以上であり、好ましくは9.0Pa・s/m2以上30.0Pa・s/m2未満であり、より好ましくは12.0Pa・s/m2以上20.0Pa・s/m2未満である。フィルター構成単位Bの厚みあたりの通気抵抗を上記範囲とすることによって、白血球除去性能において優れた性能を発揮する。本願において、フィルター構成単位Bの厚みあたりの通気抵抗を9.0Pa・s/m2未満とすると、十分な白血球除去性能を得られず、濾過後残存白血球数が5.5Logを超過する。
【0040】
フィルター層X1の通気抵抗は、4.0kPa・s/m以上20.0kPa・s/m以下であり、好ましくは11.0kPa・s/m以上16.0kPa・s/m未満である。フィルター層X1の通気抵抗を上記範囲とすることによって、白血球除去性能、濾過速度、及び血液回収の全てにおいて優れた性能を発揮することができる。本願において、フィルター層X1の通気抵抗を4.0kPa・s/m未満とすると、フィルター構成単位A1の適正な設計であってもフィルター構成単位A1の量が不足することにより、十分な濾過流速が得られず、濾過時間が27分以上となる。また、フィルター層X1の通気抵抗を20.0kPa・s/m2以上とすると、白血球除去性能を得られず、濾過後残存白血球数が5.5Logを超過するか、フィルター内での残血量が増加し、血液回収量が低下する。
【0041】
フィルター層X2の通気抵抗は、好ましくは4.0kPa・s/m以上であり、より好ましくは11.0kPa・s/m以上16.0kPa・s/m未満である。フィルター層X2の通気抵抗を上記範囲とすることによって、白血球除去性能、濾過速度において優れた性能を発揮する。
【0042】
濾材の通気抵抗(濾材を構成する全てのフィルター層の通気抵抗の合計)は、55.0kPa・s/m以上75.0kPa・s/m未満であり、好ましくは60.0kPa・s/m以上67.0kPa・s/m未満である。濾材の通気抵抗を上記範囲とすることによって、適度な濾過速度で、血液処理フィルターとして期待される白血球除去性能を発揮することができる。本願において、濾材の通気抵抗を55.0kPa・s/m未満とすると、前記フィルター構成単位A1、A2、Bおよび前記フィルター層X1、X2、Yが本願記載の設計であっても、濾過流速が過度に高くなり、十分な白血球除去性能を得られず、濾過後残存白血球数が5.5Logを超過する。また、濾材の通気抵抗を75.0kPa・s/m2以上とすると、前記フィルター構成単位A1、A2、Bおよび前記フィルター層X1、X2、Yが本願記載の設計であっても、濾過流速が過度に低下し、濾過時間が27分以上となる。
【0043】
本明細書において「通気抵抗」(kPa・s/m)とは、試料(濾材、フィルター層、又はフィルター構成単位)に一定流量の空気を通した時に生じる差圧として測定される値である。通気抵抗は、実施例に記載の方法により測定される。
【0044】
フィルター構成単位の「厚みあたりの通気抵抗」(Pa・s/m2)とは、フィルター構成単位の「通気抵抗」(kPa・s/m)をフィルター構成単位の「厚み」(mm)で除した値である。フィルター構成単位の「厚み」(mm)は、実施例に記載の方法により測定される。
【0045】
フィルター構成単位の通気抵抗を制御する方法は特に限定されない。例えば、フィルター構成単位が不織布である場合には、不織布の繊維径や密度などを変化させることによって、通気抵抗を調節することができる。不織布の目付や密度が同じ場合には、不織布の繊維径を細くすることによって、例えば比表面積が上昇して、通気抵抗が高くなると考えられる。不織布の繊維径が同じ場合には、密度を高めることによって、例えば孔径が小さくなり、通気抵抗が高くなると考えられる。
【0046】
不織布の繊維径や密度は、不織布の製造条件に基づいて、調節することができる。繊維構造の調節が容易な不織布の製造方法としては、メルトブロー法が挙げられる。例えば、樹脂粘度、溶融温度、単孔あたりの吐出量、加熱気体温度、加熱気体圧力、紡口と集積ネットの距離などの紡糸因子を検討することにより、所望の通気抵抗を有する不織布を得ることができる。また、公知情報(例えば、「不織布の基礎と応用」 P.119-127、平成5年8月25日発行、社団法人 日本繊維機械協会等)を基本として、製造条件を適宜変更することによって、適切な通気抵抗を有する不織布を製造することができる。
【0047】
製品としての濾材に組み込まれているフィルター構成単位の通気抵抗及び厚みを測定する場合には、製品を分解してフィルター構成単位を取り出し、各フィルター構成単位の通気抵抗及び厚みを測定する。但し、厚みを測定する箇所は、フィルター構成単位の溶着部から1cm以上離れた箇所とする。具体的には、濾過面の周縁部近傍で、濾材を容器から切り離し、濾材が複数のフィルター構成単位から構成されている場合には、これらを相互に剥がして、各フィルター構成単位を得る。製品中のフィルター構成単位は、他のフィルター構成単位と分離可能に一体化している。
【0048】
通気抵抗が高いということは、空気が通過しにくいことを意味する。例えば、濾材が繊維で構成されている場合には、繊維が密な又は均一な状態で絡まっていることを示唆する。そのため、血液は流れにくく、血球の目詰まりが増加し、処理速度が低下する傾向にある。
一方、通気抵抗が低いということは、空気が通過しやすいことを意味する。例えば、濾材が繊維で構成されている場合には、繊維が疎な又は不均一な状態で絡まっていることを示唆する。そのため、血液は流れやすいが、白血球との接触回数が減少し、白血球除去性能が低下する傾向にある。
【0049】
通気抵抗が異なるフィルター構成単位を特定の配置で組み合わせて使用することによって濾過速度及び白血球除去性能が向上する理由は明らかではない。流路確保部材の上流側に、特定の特性を有するフィルター構成単位を特定の厚みで配置すると、濾過時に出口部側の可撓性容器が濾材へ密着しても、濾材内の血液流路が損なわれず、濾過流速が高まるのではないかと推測される。さらに、このことは有効濾過面積を向上させることにも寄与すると考えられ、その結果、疎な構造のフィルター構成単位であっても、白血球除去能が発揮されたのではないかと推測される。しかし、本発明はこれらの推測機序によって限定されるものではない。
本願において、前記フィルター層X2、Y、流路確保部材の順に配置した設計では、濾過流速および白血球除去性能を十分に得られず、濾過後残存白血球数が5.5Logを超過し、濾過時間が27分以上となる。
【0050】
[流路確保部材]
流路確保部材は、濾材と出口部との間に配置されている部材すべてを指す。流路確保部材は、濾材と出口部側の可撓性容器との濾過中の密着によって血液の流れが遮られることを抑制できるものであれば特に限定されない。流路確保部材としては、例えば、流路確保シート、フィルター層等が挙げられる。また、流路確保部材として、例えば、濾材と容器との密着を防止するためにこれらの間に配置されたチューブ(例えば、欧州特許第0526678号明細書)、容器内面に設けられた凹凸部(特開平11-216179号公報)、濾材と容器との間に挿入されたニットファイバー製スクリーン(国際公開第95/017236号パンフレット)、濾材と容器との間に挿入された可撓性フレームシート(国際公開第2015/050216号パンフレット)等を挙げることもできる。
流路確保部材は濾過中に出口側可撓性容器と濾材との間で密着していない連続した空隙を形成し、濾過流速の向上および有効濾過面積の向上に寄与する。本願において、流路確保部材を用いない場合、濾過流速が十分に得られず、濾過時間が27分以上となり、また、有効濾過面積が低下し、白血球除去能が5.5Log以上となる。
【0051】
流路確保部材は、フィルター構成単位Pを含むフィルター層Zを含むことが好ましい。フィルター層Zは、フィルター構成単位Pに加えて、更なるフィルター構成単位を含んでいてもよいが、1以上のフィルター構成単位Pのみから構成されることが好ましい。
【0052】
フィルター構成単位Pの形状及び材料としては、上記[濾材]の項目において記載したものが挙げられる。フィルター構成単位Pの形状は、繊維状媒体であることが好ましく、不織布であることが更に好ましい。フィルター構成単位Pの材料は、ポリエステルであることが好ましい。
【0053】
フィルター構成単位Pの厚みあたりの通気抵抗は、好ましくは0.5Pa・s/m2未満であり、より好ましくは0.1Pa・s/m2以上0.5Pa・s/m2未満である。フィルター構成単位Pの厚みあたりの通気抵抗を上記範囲とすることによって、濾過流速において優れた性能を発揮する。
【0054】
フィルター層Zの通気抵抗は、好ましくは0.08kPa・s/m以上0.16kPa・s/m以下であり、より好ましくは0.08kPa・s/m以上0.12kPa・s/m以下である。フィルター層Zの通気抵抗を上記範囲とすることによって、濾材の量を減らして、血液処理フィルター内に血液が残留するリスクを減らすことができる。
【0055】
<血液処理フィルターの製造方法>
紡糸したフィルター構成単位A1及びBをぞれぞれ積層し、フィルター層X1及びYを得、フィルター層Y及びX1並びに流路確保部材を順に積層する。必要に応じて、フィルター構成単位A2を積層し、フィルター層X2を得、フィルター層X2をフィルター層Yと隣接するように積層する。この積層体を、例えば、刃、超音波カッターまたはレーザーカッターを用いて所定のサイズに切断して濾材とする。
【0056】
濾材、流路確保部材、及び可撓性容器との一体化方法は、特に限定されず、従来の血液処理フィルターと同様に一体化すればよい。例えば、以下で説明するように、国際公開第2015/050216号の
図1~3に記載された血液処理フィルター(流路確保部材として可撓性フレームを使用)のように一体化することができる。入口部を有する可撓性容器、及び出口部を有する可撓性容器を、濾材の周縁に沿って、濾材を挟んだ状態で帯状にシールして一体化するる。濾材の周縁に沿ったこの帯状の接着領域は内側シール部(第一シール部)である。内側シール部は、濾材の周縁端部を含まないように設けられている。内側シール部よりも内側は、血液が流動する濾過部となる。
【0057】
入口部を有する可撓性容器、及び出口部を有する可撓性容器の周縁は、帯状にシールされて一体化されおり、その結果、矩形環状の外側シール部(第二シール部)が形成される。なお、内側シール部、及び外側シール部の形成は、高周波溶着を利用して行うことができるが、これに限定するものではなく、超音波溶着、熱溶着などのあらゆる接着技術を用いることができる。
【0058】
血液の入口と出口は、射出成型などの方法によりあらかじめ可撓性容器と一体化して形成させてもよく、あるいは、押し出し成型されたシート状フィルムや円筒状のフィルム成型物に穴やスリットを形成し、ここに、別途射出成型や押出成型などにより成型された入口用と出口用の部品を、接着剤やヒートシールあるいは高周波溶着などの公知の技術によって、液密かつ連通させた状態で接続させてもよい。蒸気滅菌時に容器変形が起こりにくく、製造工程が容易であるという理由から後者がより好ましい。
【0059】
また、シート状または円筒状のフィルムに管状物を含む入口用及び出口用の部品を液密に取り付ける場合、入口用及び出口用の部品の材質は、シート状または円筒状のフィルムと同質でも良く、別の材質でも良い。別の材質であるとき、入口と出口がそれぞれシート状または円筒状のフィルムと隙間無く液密に接合可能で取扱性等に支障がなければ、材質は特に限定されない。しかし、大量生産に適するヒートシールや高周波溶着により接合する場合は、シート状または円筒状のフィルムと熱的及び電気的性質が近いものが好ましい。
軟質ポリ塩化ビニルのような誘電率の比較的高い材料同士の場合には高周波溶着により好適な接合が可能であり、ポリオレフィンのような誘電率が低く低融点の材料同士の場合にはヒートシールにより好適な接合が可能である。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
血液処理フィルターの物性及び性能は、以下の方法によって測定した。
【0061】
(濾材、フィルター層及びフィルター構成単位の通気抵抗の測定)
通気性試験装置(カトーテック株式会社製、KES-F8-AP1)の通気穴(通気穴面積2πcm2(φ1.414cm))の上に、5cm×20cmのサイズの試料(濾材、フィルター層、又はフィルター構成単位)を載せ、空気を8πcm3/sで約10秒間通気させたときに生じる圧力損失(kPa・s/m)(試料で区切られた両側の圧力差)を測定し、通気抵抗とした。
【0062】
(フィルター構成単位の厚みの測定)
フィルター構成要素から、5cm×20cmのサイズの試料を切り出し、これをダイヤルシックネスゲージ(型番:G、メーカー:尾崎製作所)に載せ、その厚み(mm)を測定した。
【0063】
(フィルター構成単位の厚みあたりの通気抵抗の測定)
前記「(濾材、フィルター層及びフィルター構成単位の通気抵抗の測定)」のとおりに測定したフィルター構成単位の通気抵抗(kPa・s/m)を、前記「(フィルター構成単位の厚みの測定)」のとおりに測定したフィルター構成単位の厚みで(mm)で除して、フィルター構成単位の厚みあたりの通気抵抗を求めた。
【0064】
(血液処理フィルターの白血球除去性能)
血液製剤として欧州基準(the Guide to the Preparation,Use and Quality Assurance of Blood Components第19版(2017年))に従って調製された赤血球製剤を用い、これを落差110cmの自然落差で実施例、比較例の血液処理フィルターを用いて濾過、回収し、濾過後血液製剤を得た。ここで、落差とは、赤血球製剤の入った濾過前バッグの最下部から赤血球製剤の濾過後回収バッグの最下部までとした(
図1)。
次いで、濾過後の血液製剤中の白血球濃度をべクトンデッキンソン社(BD社)製白血球数測定用キット「LeucoCOUNT」及びBD社製フローサイトメーター FACS CantoIIを使用して測定し、以下の計算式に従い、濾過後残存白血球数(rWBC)を算出し、血液処理フィルターの白血球除去性能の指標とした。
rWBC=log(濾過後血液製剤中の白血球濃度×濾過後血液製剤の量)
[評価基準]
◎:5.0未満
〇:5.0以上5.5未満
×:5.5以上
【0065】
(濾過時間)
前記「(血液処理フィルターの白血球除去性能)」において、赤血球製剤を血液処理フィルターに流し始めてから濾過後赤血球製剤の回収バッグの質量増加が停止するまでに要した時間(分)を濾過時間(分)とした。なお、回収バッグの質量増加の停止とは、回収バッグの質量を濾過開始から1分毎に測定し、回収バッグの質量変化が0.1g以下となった時点をさす。本実施例では、質量増加の停止と判断した最終の1分は濾過時間に含んで算出した。
[評価基準]
◎:24分未満
〇:24分以上27分未満
×:27分以上
【0066】
(血液回収量)
血液回収量の指標として血液ロス量(濾過前血液量と濾過後血液量の差)を評価した。濾過前の赤血球製剤および赤血球保存液が入ったバッグセットの重量から空状態の同形態バッグセットの重量を引くことにより、濾過前血液量を算出した。濾過後、血液処理フィルターと回収バッグとをつなぐ回路を、血液処理フィルターの出口より5cm離れた地点で切り離した。そうして得た回収バッグ重量から空状態の同形態の回収バッグ重量を引くことにより、濾過後血液量を算出した。
[評価基準]
◎:25ml未満
〇:25ml以上30ml未満
×:30ml以上
【0067】
(実施例1~5)
フィルター構成単位A1、及びフィルター構成単位Bとして、メルトブロー法により製造された不織布を用いた。フィルター構成単位Pとして、スパンボンド法により製造された不織布を用いた。
フィルター構成単位A1として、厚み:0.42(mm)、厚みあたりの通気抵抗:5.2(Pa・s/m2)であるPBT不織布、また、フィルター構成単位Bとして、厚み:0.41(mm)、厚みあたりの通気抵抗:10.4(Pa・s/m2)であるPBT不織布、フィルター構成単位Pとして厚み:0.20(mm)、厚みあたりの通気抵抗:0.20(Pa・s/m2)であるポリエチレンテレフタレート不織布を、各々表1に示す枚数および順番にて重ね、積層体とし、レーザーカッターを用いて91cm×74cmのサイズに切断して濾材を作成した。
この濾材を、血液の入口部又は出口部となるポートを有する2枚の可撓性ポリ塩化ビニル樹脂シートの間に挟み、高周波溶着機を用いて、濾材と可撓性シートの周縁部分を溶着、一体化させた。なお、溶着部の内側は、縦の寸法が74mm、横の寸法が57mmであって、角部分が曲線である長方形の有効濾過部分であり、有効濾過面積は42cm2であった。さらに可撓性シートの周縁部分を溶着、一体化させ、血液処理フィルターを作製した。該血液処理フィルターに対して115℃、59分間高圧蒸気滅菌を実施した後、前述の白血球除去性能試験を行った。
【0068】
(実施例6~10、15、17)
フィルター構成単位A1として、厚み:0.42(mm)、厚みあたりの通気抵抗:7.3(Pa・s/m2)であるPBT不織布を用いること以外は、実施例1と同様の方法で、血液処理フィルターを作成し、白血球除去性能試験を行った。
【0069】
(実施例11~13)
フィルター構成単位A1として、厚み:0.42(mm)、厚みあたりの通気抵抗:8.7(Pa・s/m2)であるPBT不織布を用いること以外は、実施例1と同様の方法で、血液処理フィルターを作成し、白血球除去性能試験を行った。
【0070】
(実施例14)
フィルター構成単位Bとして、厚み:0.41(mm)、厚みあたりの通気抵抗:12.7(Pa・s/m2)であるPBT不織布を用いること以外は、実施例6と同様の方法で、血液処理フィルターを作成し、白血球除去性能試験を行った。
【0071】
(実施例16、18)
フィルター構成単位A2として、メルトブロー法により製造された不織布を用いた。
フィルター構成単位A2として、厚み:0.42(mm)、厚みあたりの通気抵抗:7.3(Pa・s/m2)であるPBT不織布を用いること以外は、実施例14と同様の方法で、血液処理フィルターを作成し、白血球除去性能試験を行った。
【0072】
(実施例19)
フィルター構成単位A1及びA2、並びにフィルター構成単位Bとして、メルトブロー法により製造された不織布を用いた。流路確保部材として、国際公開第2015/050216号に記載されているような、可撓性ポリ塩化ビニル樹脂製の入口側フレームシート及び出口側フレームシートを用いた。
フィルター構成単位A1及びA2として、厚み:0.42(mm)、厚みあたりの通気抵抗:7.3(Pa・s/m2)であるPBT不織布を使用した。フィルター要素Bとして、厚み:0.41(mm)、厚みあたりの通気抵抗:12.7(Pa・s/m2)であるPBT不織布を使用した。フィルター構成単位A1及びA2、並びにフィルター構成単位Bを、表3に示す枚数および順番にて重ね、積層体とし、レーザーカッターを用いて91cm×74cmのサイズに切断して濾材を作成した。
この濾材を、可撓性ポリ塩化ビニル樹脂製の入口側フレームシート及び出口側フレームシートの間に挟み、高周波溶着機を用いて、濾材の周縁部を溶着、一体化させた。なお、溶着部の内側は、縦の寸法が74mm、横の寸法が57mmであって、角部分が曲線である長方形の有効濾過部分であり、有効濾過面積は42cm2であった。さらに、血液の入口部又は出口部となるポートを有する2枚の可撓性ポリ塩化ビニル樹脂シートの間に入口側フレームシート、及び出口側フレームシートを挟み、高周波溶着機を用いて、可撓性シートの周縁部分を溶着、一体化させ血液処理フィルターを作製した。該血液処理フィルターに対して115℃、59分間高圧蒸気滅菌を実施した後、前述の各種試験を行った。
【0073】
(比較例1、2)
表4に示すように各フィルター層を構成する各フィルター構成単位の枚数を変更した以外は、実施例6~10と同様の方法で評価した。
【0074】
(比較例3、10)
表4又は表5に示すように各フィルター層を構成する各フィルター構成単位の枚数を変更した以外は、実施例14と同様の方法で評価した。
【0075】
(比較例4)
表4に示すように各フィルター層を構成する各フィルター構成単位の枚数を変更した以外は、実施例15と同様の方法で評価した。
【0076】
(比較例5)
表4に示すように各フィルター層を構成する各フィルター構成単位の枚数を変更した以外は、実施例16と同様の方法で評価した。
【0077】
(比較例6)
表4に示すように各フィルター層を構成する各フィルター構成単位の枚数を変更した以外は、実施例19と同様の方法で評価した。
【0078】
(比較例7)
表5に示すようにフィルター構成単位A1として、厚み:0.42(mm)、厚みあたりの通気抵抗:4.5(Pa・s/m2)であるPBT不織布を用いること以外は、実施例4と同様の方法で、血液処理フィルターを作成し、白血球除去性能試験を行った。
【0079】
(比較例8)
表5に示すようにフィルター構成単位A1として、厚み:0.42(mm)、厚みあたりの通気抵抗:9.2(Pa・s/m2)であるPBT不織布を用いること以外は、実施例1と同様の方法で、血液処理フィルターを作成し、白血球除去性能試験を行った。
【0080】
(比較例9、11、12)
表5に示すようにフィルター構成単位Bとして、厚み:0.41(mm)、厚みあたりの通気抵抗:8.8(Pa・s/m2)、各フィルター層を構成する各フィルター構成単位の枚数を変更した以外は、実施例6~10と同様の方法で評価した。
【0081】
(比較例13)
フィルター構成単位A2、並びにフィルター構成単位Bとして、メルトブロー法により製造された不織布を用いた。
フィルター構成単位A2として、厚み:0.42(mm)、厚みあたりの通気抵抗:7.3(Pa・s/m
2)であるPBT不織布を使用した。フィルター要素Bとして、厚み:0.41(mm)、厚みあたりの通気抵抗:12.7(Pa・s/m
2)であるPBT不織布を使用した。フィルター構成単位A2、並びにフィルター構成単位Bを、表5に示す枚数および順番にて重ね、積層体とし、レーザーカッターを用いて91cm×74cmのサイズに切断して濾材を作成した。
この濾材を、実施例1と同様の方法で血液処理フィルターを作成し、白血球除去性能試験を行った。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の血液処理フィルターは、血液成分を含む液体または血液から凝集物や白血球等の好ましくない成分を除去するための血液処理フィルターとして用いることができる。
とりわけ、輸血用の全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤などから副作用の原因となる微小凝集物や白血球を除去する目的で用いられる、使い捨ての血液処理フィルターとして好適に用いることができる。