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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】塗装装置および塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20221122BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20221122BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20221122BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20221122BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
B05D7/00 K
B05D3/00 D
B05D1/26 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021543086
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032768
(87)【国際公開番号】W WO2021040028
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019159144
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】穂積 大輔
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-047569(JP,A)
【文献】特開2007-117963(JP,A)
【文献】特開2017-154135(JP,A)
【文献】特開2005-138013(JP,A)
【文献】特開2018-131876(JP,A)
【文献】特開2015-168061(JP,A)
【文献】特開2015-168202(JP,A)
【文献】国際公開第2021/039292(WO,A1)
【文献】特表2012-506305(JP,A)
【文献】国際公開第2021/020577(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-21/00
B05D 1/00-7/26
B41J 2/01
2/165-2/20
2/21-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる凹部を有する被塗装物を塗装する塗装装置であって、
ノズル面を有するヘッドと、
前記ヘッドを保持するアームと、
前記アームを介して前記ヘッドの動きを制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記第1方向に沿う前記ヘッドの第1成分の長さが、前記第1成分に交差する前記ヘッドの第2成分の長さよりも大きくなるように前記ノズル面と前記凹部とを対向させながら、前記第1方向に前記ヘッドを移動させ、
前記ヘッドは、前記ノズル面が、前記凹部の内面と向かい合うように揺動す
塗装装置。
【請求項2】
前記制御部は、
平面視した前記ヘッドの長さ方向に交差する幅方向が前記第1方向に沿うように前記ノズル面と前記凹部以外の前記被塗装物とを対向させながら、前記第1方向に前記ヘッドを移動させる
請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
前記制御部は、
平面視した前記ヘッドの長さ方向が前記第1方向に沿うように前記ノズル面と前記凹部とを対向させながら、前記第1方向に前記ヘッドを移動させる
請求項1または2に記載の塗装装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記凹部の側面に対応する塗装材料の吐出量が、側面以外に対応する前記塗装材料の吐出量よりも大きくなるように前記ノズル面からの前記塗装材料の吐出を異ならせる
請求項1~3のいずれか1つに記載の塗装装置。
【請求項5】
前記ノズル面は、塗装材料を吐出する複数の吐出孔を有する第1領域と、前記第1領域を囲む第2領域とを有し、
前記第1方向に交差する第2方向の長さは、前記第1領域の方が、前記凹部よりも大きい
請求項1~のいずれか1つに記載の塗装装置。
【請求項6】
前記第1方向に交差する第2方向の長さは、前記ノズル面の方が、前記凹部よりも大きい
請求項1~のいずれか1つに記載の塗装装置。
【請求項7】
前記ノズル面は、前記ヘッドの長さ方向に並ぶ複数の吐出孔を1単位とする行を前記ヘッドの幅方向に複数有し、
互いに隣り合う前記行の間隔が最大となるときの対応する吐出孔同士の前記長さ方向の距離をx、前記幅方向の距離をyとしたとき、前記第1方向に交差する第2方向に対する前記ヘッドの長さ方向の角度θが、tanθ≧(x/y)の関係を有する
請求項1~のいずれか1つに記載の塗装装置。
【請求項8】
前記塗装装置を用いて塗装された塗装膜の厚みは、前記凹部の方が、前記凹部が位置しない部分よりも大きい
請求項1~7のいずれか1つに記載の塗装装置
【請求項9】
前記塗装膜の厚みは、前記凹部の側面の方が、前記凹部が位置しない部分よりも大きい
請求項に記載の塗装装置
【請求項10】
前記塗装膜の厚みは、前記凹部の側面のうち、ヘッド側の端部に位置する角部の方が、前記凹部が位置しない部分よりも大きい
請求項またはに記載の塗装装置
【請求項11】
第1方向に延びる凹部を有する被塗装物を塗装する塗装方法であって、
前記第1方向に沿うヘッドの第1成分の長さが、前記第1成分に交差する前記ヘッドの第2成分の長さよりも大きくなるように前記ヘッドのノズル面と前記凹部とを対向させる工程と、
前記第1方向に前記ヘッドを移動させる工程と
前記ノズル面が前記凹部の内面と向かい合うように前記ヘッドを揺動させる工程と
を含む塗装方法。
【請求項12】
前記塗装方法を用いて塗装された塗装膜の厚みは、前記凹部の方が、前記凹部が位置しない部分よりも大きい
請求項11に記載の塗装方法。
【請求項13】
前記塗装膜の厚みは、前記凹部の側面の方が、前記凹部が位置しない部分よりも大きい
請求項12に記載の塗装方法。
【請求項14】
前記塗装膜の厚みは、前記凹部の側面のうち、ヘッド側の端部に位置する角部の方が、前記凹部が位置しない部分よりも大きい
請求項12または13に記載の塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、塗装装置および塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式を利用した塗装装置が知られている。このようなインクジェット方式の塗装装置には、塗装材料を吐出させるためのヘッドが搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-202781号公報
【文献】特開2018-202344号公報
【発明の概要】
【0004】
実施形態の一態様に係る塗装装置は、第1方向に延びる凹部を有する被塗装物を塗装する。塗装装置は、ヘッドと、アームと、制御部とを備える。ヘッドは、ノズル面を有する。アームは、前記ヘッドを保持する。制御部は、前記アームを介して前記ヘッドの動きを制御する。前記制御部は、前記第1方向に沿う前記ヘッドの第1成分の長さが、前記第1成分に交差する前記ヘッドの第2成分の長さよりも大きい姿勢で、前記ノズル面と前記凹部とを対向させながら、前記第1方向に前記ヘッドを移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、実施形態に係る塗装装置の説明図である。
図2図2は、塗装された被塗装物の一例を示す断面図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る塗装装置が有するヘッドの一例を示す平面図である。
図4図4は、第2の実施形態に係る塗装装置による凹部の塗装例を示す断面図である。
図5A図5Aは、塗装材料の吐出手法を比較する説明図である。
図5B図5Bは、塗装材料の吐出手法を比較する説明図である。
図6図6は、第3の実施形態に係る塗装装置による凹部の塗装例を示す説明図である。
図7A図7Aは、第4の実施形態に係る塗装装置が有するヘッドと凹部との関係を示す説明図である。
図7B図7Bは、塗装装置が有するヘッドと凹部との関係を示す説明図である。
図8図8は、第5の実施形態に係る塗装装置が有するヘッドの一例を示す平面図である。
図9図9は、ヘッドのノズル面の一例を示す平面図である。
図10図10は、第6の実施形態に係る塗装装置が有するヘッドと凹部との関係を示す説明図である。
図11A図11Aは、実施形態に係る塗装体の一例を示す断面図である。
図11B図11Bは、実施形態に係る塗装体の一例を示す断面図である。
図11C図11Cは、実施形態に係る塗装体の一例を示す断面図である。
図12図12は、被塗装物の他の一例を示す断面図である。
図13A図13Aは、実施形態の変形例に係る塗装体の一例を示す断面図である。
図13B図13Bは、実施形態の変形例に係る塗装体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する塗装装置および塗装方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0007】
<塗装装置の構成>
まず、図1を参照して実施形態に係る塗装装置の概要について説明する。図1は、実施形態に係る塗装装置の説明図である。なお、説明を分かりやすくするために、図1には、鉛直上向きを正方向とし、鉛直下向きを負方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。また、図1に示す塗装装置1と同様の構成については同じ符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0008】
図1に示すように、塗装装置1は、ヘッド10と、ロボット20と、制御装置40とを備える。ヘッド10は、例えば、バルブ方式、ピエゾ方式、またはサーマル方式のインクジェットヘッドを用いることができる。ヘッド10として、ピエゾ方式、またはサーマル方式のインクジェットヘッドを用いると、高解像度化を実現しやすい。
【0009】
ヘッド10は、ロボット20に固定されている。ヘッド10は、制御装置40によって制御されるロボット20の動作に応じて移動する。
【0010】
ヘッド10は、ノズル面12に位置する複数の吐出孔11から吐出した塗装材料を、ノズル面12と対向する被塗装物30の表面に着弾させることにより、被塗装物30を塗装する。
【0011】
ヘッド10には、図示しないタンクから塗装材料が供給される。ヘッド10は、タンクから供給される塗装材料を吐出する。塗装材料は、揮発成分と不揮発成分とを含む混合物であり、流動性を有する。なお、タンクは、ヘッド10に収容された図示しないリザーバであってもよい。
【0012】
揮発成分は、例えば、水、有機溶剤、アルコールなどであり、例えば粘度や表面張力といった塗装材料の物性を調整する。不揮発成分は、例えば、顔料、樹脂材料、添加剤を含む。顔料は、所望する塗装色に応じて使用される1または複数の着色顔料を含む。樹脂材料は、被塗装物30に付着して成膜する。添加剤は、例えば耐候性等を目的として添加される機能性材料である。
【0013】
なお、吐出孔11に供給される塗装材料は、複数の着色顔料または塗装材料を所定の割合で混合させて所望の塗装色が発現するように調製されたものである。
【0014】
ロボット20は、ヘッド10を保持する。ロボット20は、例えば、6軸の多関節ロボットである。ロボット20は、例えば、垂直多関節ロボットまたは水平多関節ロボットであってもよい。ロボット20は、複数のアーム21を有し、アーム21の先端には、ヘッド10が固定されている。ロボット20は、床面や壁面、天井面などに固定される。なお、保持したヘッド10を適切に移動させることができれば、ロボット20が有するアーム21の自由度に制限はない。
【0015】
制御装置40は、塗装装置1を制御する。制御装置40は、塗装装置1を制御する制御部41と、記憶部45とを含む。制御部41は、吐出制御部42と、動作制御部43とを含む。
【0016】
制御部41は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Desk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種回路を含む。かかるコンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部41として機能する。また、制御部41をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成してもよい。
【0017】
吐出制御部42は、記憶部45に記憶された設定情報に基づいてヘッド10を制御し、複数の吐出孔11から被塗装物30に向けて塗装材料を吐出させる。動作制御部43は、記憶部45に記憶された設定情報に基づいて複数のアーム21の動作を制御し、アーム21を介してヘッド10の動きを制御する。ヘッド10と被塗装物30との間の距離は、例えば、0.5~14mm程度に保持される。なお、塗装材料の吐出を含むヘッド10の詳細な動きについては後述する。
【0018】
記憶部45は、例えば、ROMおよびHDDに対応する。ROMおよびHDDは、制御装置40における各種制御のための設定情報を記憶することができる。記憶部45は、ヘッド10による塗装材料の吐出制御に関する情報を記憶する。また、記憶部45は、複数のアーム21の動作制御に関する情報を記憶する。なお、記憶部45は、図示しない端末装置を用いたユーザの教示作業によって入力されたデータを、ロボット20を動作させるための教示データとして記憶してもよい。また、制御部41は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して設定情報を取得することとしてもよい。
【0019】
被塗装物30は、例えば、車体である。被塗装物30は、図示しない搬送装置に載置され、搬出入が行われる。実施形態に係る塗装装置1は、搬送装置を停止させた状態で被塗装物30を塗装する。なお、塗装装置1は、搬送と停止を繰り返し行う被塗装物30を塗装するものであってもよく、被塗装物30の搬送に並行して塗装するものであってもよい。
【0020】
図2は、塗装された被塗装物の一例を示す断面図である。図2に示す被塗装物30は、基材31と、プライマ層32と、第1塗装層33とを含む。基材31は、例えば所定の形状に加工された鋼板であり、必要に応じて電着処理が施されて防錆性が付与される。プライマ層32は、例えば耐候性、発色性、耐剥離性を付与するために設けられる。第1塗装層33は、例えば、平滑性および耐候性を有し、所望の塗装色を付与するベース層である。第1塗装層33の表面が、実施形態に係る塗装装置1で塗装される被塗装面30aとなる。
【0021】
被塗装面30aである第1塗装層33上には、第2塗装層34が位置している。第2塗装層34は、第1塗装層33とは異なる塗装色を有する塗装材料によって、第1塗装層33の一部を覆うように位置する。これにより、被塗装物30は、第2塗装層34が位置する領域36と、第2塗装層34が位置せずに第1塗装層33が露出した領域35とが第2塗装層34の端部37を境界として並ぶいわゆるツートーンカラーに塗装が施された塗装体38となる。
【0022】
図2に示した例では、塗装装置1は、第1塗装層33上の被塗装面30aに第2塗装層34を位置させるとして説明したが、これに限らず、例えばプライマ層32上の塗装面32aに第1塗装層33を位置させる場合に塗装装置1を適用してもよい。
【0023】
なお、塗装体38は、図2に示した例に限られない。例えば、領域35,36の表面に図示しない被覆層が位置してもよい。また、第2塗装層34を有さず、第1塗装層33のみを有してもよく、第1塗装層33の全面に第2塗装層34が位置してもよい。さらに、被塗装物30または塗装体38が、1または複数の図示しない層をさらに有してもよい。
【0024】
<第1の実施形態>
図3は、第1の実施形態に係る塗装装置が有するヘッドの一例を示す説明図である。図3は、ヘッド10およびヘッド10のノズル面12(図1参照)と対向する被塗装物30をZ軸正方向側から見た平面図に相当する。なお、説明を容易にするために、被塗装物30は、例えば車体のルーフなど、XY平面に沿う平面形状であるとする。
【0025】
また、被塗装物30は、第1方向としてのY軸方向に沿って延びる凹部が位置する部分51と、凹部が位置しない部分52とを有する。部分51は、例えば車体のルーフに位置するルーフレール取付用の溝である。
【0026】
また、以下に説明する各実施形態では、ヘッド10が被塗装面30a上に第2塗装層34を位置させる塗装材料を吐出する場合を例に挙げて説明する。また、以下に説明する各実施形態に係る塗装装置1は、ヘッド10の動作を除いて共通の構成を有している。このため、例えばロボット20や制御装置40など、ヘッド10を除く他の構成は図示を省略する。
【0027】
図3に示すヘッド10-1は、長さ方向がY軸方向に沿うように位置し、部分51とノズル面12(図1参照)とを対向させた状態で、Y軸方向に移動する。ヘッド10-1は、長さ方向への移動によって狭い範囲の被塗装面30aに対する塗装材料の吐出量を増やすことができる。このため、かかるヘッド10-1を用いると、部分52と比較して被塗装面30aとの距離が大きくなる部分51(凹部)であっても、見栄えよく塗装することができる。
【0028】
これに対し、ヘッド10-2は、長さ方向が第1方向に交差する第2方向としてのX軸方向に沿うように位置し、部分52とノズル面12(図1参照)とを対向させた状態で、Y軸方向に移動する。これにより、ヘッド10-2は、長さ方向に交差する幅方向への1回の移動によってヘッド10-2のサイズに対して広範囲の被塗装面30aを見栄えよく塗装することができる。このため、部分52の塗装に適している。
【0029】
ここで、ヘッド10-1,10-2を用いて、例えば、1m/分以上5m/分以下の面積塗装速度を達成すればよい。このような面積塗装速度を達成するためには、部分52を塗装するヘッド10-2の印画領域の長さを100mmとしたときに、ヘッド10-2のY軸方向への移動速度v2は、例えば1.67×10mm/s以上41.67×10mm/s以下の所定の速度とすればよい。
【0030】
また、部分51を塗装するヘッド10-1のY軸方向への移動速度v1は、ヘッド10-1の長さ方向の大きさをa、長さ方向に交差する幅方向の大きさをbとしたとき、v1≦v2×(a/b)とすることができる。このように、本実施形態に係る塗装装置によれば、移動速度v1、v2を規定することにより、被塗装面30aの全体にわたり見栄えよく塗装することができる。
【0031】
このように凹部の有無に応じてヘッド10の姿勢を変更して位置させることにより、被塗装面30aの全体にわたって見栄えが良くなる。このため、塗装品質を向上することができる。なお、図3に示したヘッド10-1、10-2は、例えば図1に示す塗装装置1が有する1つのヘッド10を制御して、塗装する部分に応じた姿勢となるように位置させることを意味したものである。ただし、塗装装置1が、ヘッド10-1、10-2をそれぞれ個別に有してもよい。
【0032】
また、塗装装置1が有するヘッド10の解像度は、例えば、150dpi(dots per inch)以上とすることができる。より好ましくは、ヘッド10の解像度は、300dpi以上である。ヘッド10の解像度が、150dpi以上であることにより、レベリング性が向上し、塗装膜の品質が向上する。なお、必ずしもヘッド10の解像度は150dpi以上でなくてもよい。
【0033】
<第2の実施形態>
図4は、第2の実施形態に係る塗装装置による凹部の塗装例を示す断面図である。図4に示すように、部分51の側面としての第1面51aでは、部分51の底面としての第2面51bおよび部分52と比較して、塗装材料の吐出量が異なる。具体的には、本実施形態に係る塗装装置は、第1面51aに対応する塗装材料の吐出量が、第1面51a以外に対応する塗装材料の吐出量よりも大きくなるようにヘッド10からの塗装材料の吐出滴の大きさを異ならせる。一例としては、第1面51aに吐出される吐出滴16aを、他の部分に吐出される吐出滴16bよりも大きくする。
【0034】
一般に、ヘッド10のノズル面12(図1参照)に対して交差する方向に位置する第1面51aは、第1面51a以外の部分と比較して吐出滴のわずかな位置ずれによる影響が大きく、塗装が難しい。そこで、本実施形態に係る塗装装置は、第1面51aに対応する塗装材料の吐出量を他の部分と比較して大きくすることにより、吐出滴が位置ずれした場合であっても、他の吐出滴が位置ずれした部分をカバーすることができ、塗装精度が向上する。このため、本実施形態に係る塗装装置によれば、塗装品質を向上することができる。
【0035】
ここで、塗装材料の吐出滴を大きくする手法の具体例について、図5A図5Bを用いて説明する。図5A図5Bは、塗装材料の吐出手法を比較する説明図である。なお、図5A図5Bでは、図示による説明を簡単にするために、ヘッド10のノズル面12に対して交差する方向に位置する第1面51aの代わりに、ノズル面12と対向して位置する被塗装面30aを示している。
【0036】
図5Aに示す例では、ヘッド10のノズル面12から吐出された塗装材料16a1に対応する大きさの吐出滴16aが被塗装面30a上に位置する。すなわち、塗装材料16a1の吐出量は、吐出滴16aの大きさに対応している。図5Aに示すヘッド10は、例えば、吐出滴16bを吐出するヘッド10とは別に用意するとよい。このため、実施形態に係る塗装装置1は、吐出滴の大きさの異なる複数のヘッド10を含むことができる。
【0037】
一方、図5Bに示す例では、ヘッド10のノズル面12から吐出された塗装材料16a2のサイズが、吐出滴16aよりも小さい点で図5Aに示す例と相違する。塗装材料16a2の吐出間隔を制御して、被塗装面30aに到達するまでに複数の塗装材料16a2を合一させることで、塗装材料16a2よりも大きな吐出滴16aを被塗装面30a上に位置させることができる。このため、実施形態に係る塗装装置1は、吐出制御部42がノズル面12からの吐出間隔を制御することにより、1種類のヘッド10で端部領域36cおよび中央領域36dを塗装することができる。
【0038】
図4に戻り、凹部の幅、すなわち、部分51のX軸方向に沿う長さwは、凹部の深さ、すなわち第1面51aのZ軸方向に沿う長さd以上とすることができる。このような形状を有する凹部であれば、見栄えよく塗装させやすい。ただし、吐出滴16aの大きさを適切に制御することにより、d>wとなる部分51であっても、塗装品質を向上することができる。
【0039】
<第3の実施形態>
図6は、第3の実施形態に係る塗装装置による凹部の塗装例を示す説明図である。本実施形態に係る塗装装置1が有するヘッド10は、ノズル面12が、凹部の内面、すなわち第1面51aおよび第2面51bと向かい合うように位置P1から位置P2まで揺動する。このようにヘッド10を揺動させることにより、第1面51aおよび第2面51bだけでなく、第1面51aおよび第2面51bが交差する隅部51cについても塗装材料を適切に行き渡らせやすくなる。このため、塗装品質を向上することができる。
【0040】
<第4の実施形態>
図7A図7Bは、塗装装置が有するヘッドと凹部との関係を示す説明図である。図7Bに示すヘッド10は、X軸方向に沿うノズル面12の長さL1が、部分51の長さwよりも小さい。このため、ヘッド10の周囲からの気流61が部分51の内部に入り込みやすくなる。これにより、ノズル面12から吐出される塗装材料が所望する位置からずれて部分51の内部に到達し、塗装品質が低下しやすくなる。
【0041】
これに対し、図7Aに示すように、第4の実施形態に係る塗装装置が有するヘッド10は、X軸方向に沿うヘッド10のノズル面12の長さL1が、部分51の長さwよりも大きい。このため、ノズル面12がヘッド10の周囲からの気流61の進入を妨げ、部分51の内部に入り込みにくくなる。これにより、本実施形態に係る塗装装置によれば、部分51の内部における塗装品質が向上する。
【0042】
ここで、本実施形態に係る塗装装置が有するヘッド10と凹部との間隔、すなわちノズル面12と部分52との間隔d1(図7参照)は、例えば、0.5~14mm程度とすることができる。このように間隔d1を規定することにより、気流61の進入を妨げやすくなる。
【0043】
<第5の実施形態>
図8は、第5の実施形態に係る塗装装置が有するヘッドの一例を示す平面図である。図8に示すヘッド10-3は、長さ方向に交差する幅方向の寸法が、部分51のX軸方向に沿う長さよりも小さい。このようなヘッド10-3では、Y軸方向への1回の移動により部分51をすべて塗装できるよう、ヘッド10-3の長さ方向を、Y軸方向に対して傾けるとよい。このとき、ヘッド10-3は、Y軸方向の長さ、すなわちX軸方向に投影した第1成分の長さa1が、X軸方向の長さ、すなわちY軸方向に投影した第2成分の長さb1よりも大きくなるように角度θを規定すると、部分51の内部における塗装品質が向上する。
【0044】
また、角度θは、ノズル面12に位置する吐出孔11の配列に基づいて設定してもよい。図9は、ヘッドのノズル面の一例を示す平面図である。
【0045】
図9に示すように、ノズル面12は、ヘッド10-3の長さ方向、ここではX軸方向に沿って並ぶ複数の吐出孔11を1単位とする行を、ヘッド10-3の幅方向、ここではY軸方向に複数有している。このとき、互いに隣り合う行の間隔が最大となるときの対応する吐出孔11同士の長さ方向の距離をx、幅方向の距離をyとしたとき、X軸方向に対するヘッド10-3の長さ方向の傾き、すなわち角度θが、例えばtanθ≧(x/y)の関係を有する。このように角度θを規定することにより、例えば隣り合う行間の隙間が大きい場合であっても、近接する吐出孔11から吐出される吐出滴が隙間を埋めることで塗装スジが生じにくくなり、塗装品質が向上する。
【0046】
<第6の実施形態>
図10は、第6の実施形態に係る塗装装置が有するヘッドと凹部との関係を示す説明図である。図10に示すように、本実施形態に係る塗装装置1が有するヘッド10のノズル面12は、塗装材料を吐出する複数の吐出孔11を有する第1領域R1と、第1領域R1を囲む第2領域R2とを有する。このとき、第1領域R1のX軸方向の長さL2を、部分51のX軸方向の長さwよりも大きくすることにより、Y軸方向への1回の移動によって部分51の全体を塗装することができる。このため、生産性が向上する。特に、L2-W≧3mmとすると、部分51の塗装ムラの発生がさらに低減する。
【0047】
<塗装膜>
次に、上記の各実施形態に係る塗装装置1によって塗装された塗装膜について説明する。図11A図11Cは、実施形態に係る塗装体の一例を示す断面図である。
【0048】
図11Aに示す塗装体38は、凹部の底面としての第2面51b上に位置する塗装膜としての第2塗装層34の厚みt2が、凹部が位置しない部分52上に位置する第2塗装層34の厚みt1よりも大きい。このように厚みt2を大きくすることにより、例えば部分51にルーフレールなどの部材を取り付ける場合であっても、第2塗装層34が剥離しにくい。このため、実施形態に係る塗装膜によれば、塗装品質が向上するとともに、塗装体38の環境強度が向上する。
【0049】
また、図11Bに示す塗装体38は、凹部の側面としての第1面51a上に位置する第2塗装層34のX軸方向の幅w1が、凹部が位置しない部分52上に位置する第2塗装層34の厚みt1よりも大きい。このように幅w1を大きくすることにより、例えば部分51にルーフレールなどの部材を取り付ける場合であっても、第2塗装層34が剥離しにくい。このため、実施形態に係る塗装膜によれば、塗装品質が向上するとともに、塗装体38の環境強度が向上する。
【0050】
また、図11Cに示す塗装体38は、凹部の側面としての第1面51aのうち、ヘッド側の端部に位置する角部53上に、Z軸方向に突出する凸部33aを有する。これにより、角部53上に位置する第2塗装層34のZ軸方向の厚み(t1+t3)は、凹部が位置しない部分52上に位置する第2塗装層34の厚みt1よりも大きくなる。このように角部53上に位置する第2塗装層34の厚みを大きくすることにより、例えば部分51にルーフレールなどの部材を取り付ける場合であっても、第2塗装層34が剥離しにくい。このため、実施形態に係る塗装膜によれば、塗装品質が向上するとともに、塗装体38の環境強度が向上する。
【0051】
<変形例>
上記した各実施形態では、被塗装物30は第1方向に延びる凹部を有するとして説明したが、これに限らず、例えば第1方向に延びる凸部を有してもよい。図12は、被塗装物の他の一例を示す断面図である。また、図13A図13Bは、実施形態の変形例に係る塗装体の一例を示す断面図である。
【0052】
図12に示す被塗装物30は、第1方向としてのY軸方向に沿って延びる凸部が位置する部分51Aと、凸部が位置しない部分52Aとを有する。部分51は、例えばボルテックスジェネレータ、あるいはコルゲートルーフである。
【0053】
また、図13Aに示す塗装体38は、凸部としての部分51A上に位置する第2塗装層34の厚みt12が、凸部が位置しない部分52A上に位置する第2塗装層34の厚みt11よりも大きい。このように厚みt12を大きくすることにより、例えば部分51Aに部材を取り付ける場合であっても、第2塗装層34が剥離しにくい。このため、実施形態に係る塗装膜によれば、塗装品質が向上するとともに、塗装体38の環境強度が向上する。
【0054】
また、図13Bに示す塗装体38は、凸部としての部分51Aに位置する第2塗装層34のX軸方向の幅w11が、凸部が位置しない部分52A上に位置する第2塗装層34の厚みt11よりも大きい。このように幅w11を大きくすることにより、例えば部分51Aに部材を取り付ける場合であっても、第2塗装層34が剥離しにくい。このため、実施形態に係る塗装膜によれば、塗装品質が向上するとともに、塗装体38の環境強度が向上する。
【0055】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、単色の塗装材料を吐出する1つのヘッド10を備える塗装装置1について説明したが、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)といった基本色の塗装材料を吐出するヘッド10をそれぞれ保持するロボット20を備えてもよい。
【0056】
また、上述の実施形態では、被塗装面30a上をZ軸正方向側から塗装する例について示したが、これに限らず、例えばZ軸負方向側から塗装してもよく、YZ平面またはZX平面に沿うように位置する側面を被塗装面30aとしてもよい。さらに、Z軸に対して斜めに位置する被塗装面30aを塗装する場合に塗装装置1を適用してもよい。
【0057】
また、各実施形態のうち2つ以上を適宜組み合わせてもよい。
【0058】
以上のように、実施形態に係る塗装装置1は、第1方向に延びる凹部を有する被塗装物30を塗装する。塗装装置1は、ヘッド10と、アーム21と、制御部41とを備える。ヘッド10は、ノズル面12を有する。アーム21は、ヘッド10を保持する。制御部41は、アーム21を介してヘッド10の動きを制御する。制御部41は、第1方向に沿うヘッド10の第1成分の長さが、第1成分に交差するヘッド10の第2成分の長さよりも大きい姿勢で、ノズル面12と凹部とを対向させながら、第1方向にヘッド10を移動させる。このため、塗装品質を向上できる。
【0059】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 塗装装置
10 ヘッド
11 吐出孔
12 ノズル面
16a,16b 吐出滴
20 ロボット
21 アーム
30 被塗装物
30a 被塗装面
40 制御装置
41 制御部
42 吐出制御部
43 動作制御部
45 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B