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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】流体ダイのメモリ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20221122BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/01 401
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021543220
(86)(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 US2019016780
(87)【国際公開番号】W WO2020162910
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ング,ブーン,ビン
(72)【発明者】
【氏名】ネス,エリック,ディー
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー,ジェイムズ,マイケル
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-230374(JP,A)
【文献】特開平11-207948(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009902(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/064271(WO,A1)
【文献】特開2002-014870(JP,A)
【文献】国際公開第2014/133534(WO,A1)
【文献】特開2002-232113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体分配デバイス構成部品であって:
各々がメモリを含む複数の流体ダイ;
複数の流体ダイのそれぞれの流体ダイに対してそれぞれの制御情報を提供するための複数の制御入力;および
複数の流体ダイに接続されたデータバスを含み、データバスは複数の流体ダイのメモリのデータを流体分配デバイス構成部品の出力に提供し、
複数の流体ダイのそれぞれの流体ダイのそれぞれのメモリの各々は、それぞれの流体ダイに特有のデータを記憶する第1の部分、および複数の流体ダイによって共有される共通データを記憶する第2の部分を含む、流体分配デバイス構成部品。
【請求項2】
共通データは複数の流体ダイのメモリにわたって分散される、請求項の流体分配デバイス構成部品。
【請求項3】
データバスは複数の流体ダイのメモリおよび流体分配デバイス構成部品の出力に結合され、複数の流体ダイのメモリによって共有されている、請求項1または2の流体分配デバイス構成部品。
【請求項4】
流体ダイは流体アクチュエータを含み、そして制御入力は流体アクチュエータおよびメモリによって共有される請求項1から3のいずれか1の流体分配デバイス構成部品。
【請求項5】
データバスは流体分配デバイス構成部品の出力へとデータをアナログ形態で提供する請求項1から4のいずれか1の流体分配デバイス構成部品。
【請求項6】
複数の制御入力の第1の制御入力は複数の流体ダイの第1の流体ダイを個別に制御し、そして複数の制御入力の第2の制御入力は複数の流体ダイの第2の流体ダイを個別に制御する請求項1から5のいずれか1の流体分配デバイス構成部品。
【請求項7】
第1の制御入力は第1の流体ダイの流体アクチュエータを付勢するための制御情報を含むデータパケットを提供し、そして第2の制御入力は第2の流体ダイの流体アクチュエータを付勢するための制御情報を含むデータパケットを提供する、請求項6の流体分配デバイス構成部品。
【請求項8】
複数の流体ダイによって共有される制御信号入力をさらに含む請求項1から7のいずれか1の流体分配デバイス構成部品。
【請求項9】
流体ダイは流体アクチュエータを含み、複数の制御入力は複数のデータパケットを受信するデータ入力を含み、各々のデータパケットはそれぞれの流体ダイの流体アクチュエータおよびメモリによって共有される、請求項1から3のいずれか1の流体分配デバイス構成部品。
【請求項10】
複数の制御入力はさらに、複数の流体ダイによって共有される入力を含む、請求項9の流体分配デバイス構成部品。
【請求項11】
複数の流体ダイによって共有される入力は、クロック入力、噴射入力、およびモード入力の少なくとも1つを含む、請求項10の流体分配デバイス構成部品。
【請求項12】
各々のデータパケットは、対応する流体ダイの流体アクチュエータを付勢するための制御情報を含む、請求項9から11のいずれか1の流体分配デバイス構成部品。
【請求項13】
各々のデータパケットは、対応する流体ダイのメモリにアクセスするための制御情報を含む、請求項9から12のいずれか1の流体分配デバイス構成部品。
【請求項14】
複数の流体ダイの各々のメモリは不揮発性メモリを含む請求項1から13のいずれか1の流体分配デバイス構成部品。
【請求項15】
流体分配システムであって:
請求項1から14のいずれか1の流体分配デバイス構成部品;
流体分配デバイス構成部品を受容する支持構造体;および
コントローラを含み、コントローラは:
流体分配デバイス構成部品の対応する制御入力を使用して、複数の流体ダイのそれぞれの流体ダイに対して制御情報を提供し、そして
流体分配デバイス構成部品のデータバス上で、複数の流体ダイメモリからのデータを受信する、流体分配システム。
【請求項16】
流体分配デバイス構成部品は第1の流体分配デバイスであり、支持構造体は不揮発性メモリを含む流体ダイを含んでいる第2の流体分配デバイス構成部品を受容し、そして支持構造体は、第1の流体分配デバイス構成部品および第2の流体分配デバイス構成部品の流体ダイのデータが伝送されるグローバルデータバスを含む、請求項15の流体分配システム。
【請求項17】
流体分配デバイス構成部品を形成するための方法であって:
基板上に、各々がメモリを含む複数の流体ダイを提供し;
複数の流体ダイのそれぞれの流体ダイについてそれぞれの制御情報を受信するために、流体分配デバイス構成部品の複数の制御入力を提供し;そして
複数の流体ダイに接続されたデータバスを介して、複数の流体ダイのメモリのデータを受信するために、流体分配デバイス構成部品の出力を提供し、
複数の流体ダイのそれぞれの流体ダイのそれぞれのメモリの各々は、それぞれの流体ダイに特有のデータを記憶する第1の部分、および複数の流体ダイによって共有される共通データを記憶する第2の部分を含む、方法。
【請求項18】
複数の制御入力の第1の制御入力は制御情報を複数の流体ダイの第1の流体ダイに対して個別に受信し、そして複数の制御入力の第2の制御入力は制御情報を複数の流体ダイの第2の流体ダイに対して個別に受信する、請求項17の方法。
【請求項19】
第1の制御入力において受信した制御情報は、第1の流体ダイの流体アクチュエータの付勢を制御するための情報を含み、そして第2の制御入力において受信した制御情報は、第2の流体ダイの流体アクチュエータの付勢を制御するための情報を含む、請求項18の方法。
【請求項20】
流体分配デバイス構成部品に制御信号入力を提供することをさらに含み、制御信号入力は複数の流体ダイによって共有される、請求項17から19のいずれかの方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
流体分配システムは、目標に向けて流体を分配することができる。幾つかの例では、流体分配システムは、2次元(2D)印刷システムまたは3次元(3D)印刷システムのような印刷システムを含むことができる。印刷システムはプリントヘッドデバイスを含むことができ、プリントヘッドデバイスは印刷流体の分配を生じさせる流体アクチュエータを含む。
【図面の簡単な説明】
【0002】
本開示の幾つかの実施形態が、以下の図面に関連して記述される。
【0003】
図1は、幾つかの例による流体分配システムのブロック図である。
【0004】
図2は、幾つかの例による、それぞれにメモリを備えた流体ダイの配置のブロック図である。
【0005】
図3は、さらなる例による、メモリを含む対応する流体ダイを備えた複数の流体分配デバイスの配置のブロック図である。
【0006】
図4は、幾つかの例による流体分配デバイスの部品のブロック図である。
【0007】
図5は、幾つかの例による流体分配システムのブロック図である。
【0008】
図6は、幾つかの例によるプロセスの流れ図である。
【0009】
図面全体を通じて、同一の参照番号は、必ずしも同一ではないが類似した要素を指している。図面は必ずしも縮尺通りではなく、幾つかの部品の大きさは、図示された例をより明確に示すために誇張されている場合がある。さらにまた、図面は説明と一貫性のある例および/または実施形態を提示するものである;しかしながら、説明は図面に提示された例および/または実施形態に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示において、「ある」、「あの」、または「その」といった用語の使用は、文脈が明らかに異なるものを指しているのでない限り、複数形をも包含することを意図している。また、「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」、「有する」、「有している」といった用語は、本開示で使用されるとき、言及された要素が存在することを特定するが、他の要素の存在または追加を排除するものではない。
【0011】
流体分配デバイスは流体アクチュエータを含むことができ、流体アクチュエータは付勢されると流体の分配(例、吐出または他の流れ)を生じさせる。例えば流体の分配は、付勢された流体アクチュエータによる、流体分配デバイスのノズルのそれぞれからの流体液滴の吐出を含むことができる。他の例においては、付勢された流体アクチュエータ(ポンプのような)は、流体管路または流体チャンバを介しての流体の流れを生じさせることができる。かくして、流体アクチュエータを付勢して流体を分配することは、流体アクチュエータを付勢してノズルから流体を吐出させること、または流体アクチュエータを付勢して流体管路、流体チャンバ、およびその他のような流れ構造を介して流体の流れを生じさせることを指している。
【0012】
流体アクチュエータを付勢することはまた、流体アクチュエータの噴射として参照されることができる。幾つかの例では、流体アクチュエータは、ヒーター抵抗のような加熱素子を含むサーマル系流体アクチュエータを含んでいる。加熱素子が付勢されると、加熱素子は熱を発生し、この熱は流体の気化を生じさせてサーマル系流体アクチュエータに近接する気泡(例、蒸気気泡)の核生成を行うことができ、これが次いで、ノズルのオリフィスからの吐出、または流体管路または流体チャンバを介しての流れのような、ある量の流体の分配を生じさせる。他の例においては、流体アクチュエータは圧電(ピエゾ)膜系の流体アクチュエータであってよく、これは付勢されると機械力を適用して、ある量の流体を分配する。
【0013】
流体分配デバイスがノズルを含む例においては、各々のノズルは、噴射チャンバとしても参照される流体チャンバを含んでいる。加えて、ノズルは流体が分配時に通過されるオリフィス、流体アクチュエータ、およびセンサーを含むことができる。各々の流体チャンバは、それぞれのノズルによって分配される流体を提供する。
【0014】
一般に、流体アクチュエータは吐出型の流体アクチュエータであって、ノズルのオリフィスを介するなどにより流体の吐出を生じさせることができ、或いは非吐出型の流体アクチュエータであって、流体の流れを生じさせることができる。
【0015】
幾つかの例では、流体分配デバイスはプリントヘッドの形態であることができ、プリントカートリッジ、キャリッジ、およびその他に取り付けることができる。さらなる例においては、流体分配デバイスは流体ダイの形態であることができる。「ダイ」とは、回路、流体チャンバ、および流体管路を作製するために基板上に種々の層が形成されたアセンブリを指している。複数の流体ダイを支持構造体に対して装着または取着することができる。他の例においては、流体分配デバイスは流体ダイスライバーの形態であることができ、これは例えば、長さ対幅の比(L/W)が少なくとも3である、薄い基板(例、650マイクロメートル(μm)またはそれ未満程度の厚さを有している)を含んでいる。他の例においては、ダイスライバーは異なる大きさを有することができる。複数の流体ダイスライバーを、例えば一体型の成形構造体中に成形することができる。
【0016】
本開示においては、「流体分配デバイスの部品」は、流体分配デバイスそれ自体、或いは流体分配デバイスの一部をなし、または流体分配デバイスに取着され、または流体分配デバイスに結合された部品を指すことができる。
【0017】
流体分配デバイスは、データを記憶するための不揮発性メモリを含むことができる。「不揮発性メモリ」とは、メモリから電力が取り除かれた場合でもメモリに記憶されたデータを保持することのできるメモリを指している。不揮発性メモリに記憶することのできるデータの例には、流体分配デバイスについての識別情報(例、シリアル番号または他の識別子)、デバイスの部品の特徴(ブランド名、色の情報、ライセンス情報、その他の如き)、流量の情報のような流体の流れ特性、流体分配デバイスを構成するための構成情報、流体分配デバイスに対するアクセスを安全にするために使用されるセキュリティ情報、およびその他が含まれる。データは任意の仕方で暗号化され、スクランブルされ、またはエンコードされてよい。
【0018】
本開示の幾つかの実施形態によれば、流体分配デバイスは複数の流体ダイを含み、流体ダイの各々はそれぞれメモリ(不揮発性メモリを含む)を含んでいる。複数の流体ダイのメモリの利用効率を改善するために、各々のメモリの第1の部分は対応する流体ダイに特有のデータを記憶するように使用可能であり、そして各々のメモリの第2の部分は複数の流体ダイによって共有される共通データを記憶するように使用可能である。また、流体分配デバイスは複数の制御入力を含み、それらは複数の流体ダイのそれぞれの流体ダイに対して制御情報を提供することができる。流体分配デバイスは、流体ダイのメモリによって共有される共有バスを含み、かくしてメモリからのデータは流体分配デバイスから出力されることができる。
【0019】
図1は、幾つかの例による流体分配システム100のブロック図である。流体分配システム100は、2D印刷システムまたは3D印刷システムのような印刷システムであることができる。他の例においては、流体分配システム100は、異なる種類の流体分配システムであることができる。他の種類の流体分配システムの例には、流体検出システム、医用システム、車両、流体流れ制御システム、およびその他で使用されてるシステムが含まれる。
【0020】
流体分配システム100は流体分配デバイス102を含み、これは流体分配システム100のキャリッジ103(または他の種類の支持構造体)に装着することができる。幾つかの例では、流体分配デバイス102は、キャリッジ103に対して着脱可能に設けられた流体カートリッジ(例、プリントカートリッジ)に取着することができる。他の例においては、流体分配デバイス102はキャリッジ103に対して固定的に設けることができる。
【0021】
流体分配デバイス102は、目標106に向けて流体を分配するためのオリフィスを含んでいる。幾つかの例では、キャリッジ103および目標106は互いに対して移動可能(キャリッジ103が移動可能または目標106が移動可能、或いはキャリッジ103および目標106の両方が移動可能)である。
【0022】
2D印刷システムにおいては、流体分配デバイス102は、紙媒体、プラスチック媒体、およびその他のような印刷媒体上へと印刷流体(例、インク)を吐出するプリントヘッドを含んでいる。
【0023】
3D印刷システムにおいては、流体分配デバイス102は、印刷目標の上へと種々の異なる液体剤の任意のものを吐出可能なプリントヘッドを含んでおり、そこでは液体剤は以下のいずれかまたは幾つかの組み合わせを含むことができる:インク、造形材料の層の粉体を溶融または融合させるのに使用される剤、造形材料の層の細部を仕上げるための剤(例えば造形材料の層の縁部または形状を規定することにより)、およびその他。3D印刷システムにおいては、3D目標は、3D印刷システムの造形プラットフォーム上に造形材料の連続する層を堆積することによって構築される。造形材料の各々の層は、プリントヘッドからの印刷流体を使用することによって処理可能であり、所望の形状、テクスチャ、および/または造形材料の層の他の特徴が形成される。
【0024】
流体分配デバイス102は、複数の流体ダイ108-1-108-N(N≧2)を含んでいる。流体ダイ108-1-108-Nは、流体アクチュエータのアレイ110-1-110-Nのそれぞれ、および不揮発性メモリ112-1-112-Nのそれぞれを含んでいる。例えば、流体ダイ108-1は流体アクチュエータのアレイ110-1および不揮発性メモリ112-1を含んでおり、そして流体ダイ108-Nは流体アクチュエータのアレイ110-Nおよび不揮発性メモリ112-Nを含んでいる。
【0025】
流体アクチュエータのアレイ108-i(i=1からN)は、流体アクチュエータのカラム、または流体アクチュエータの複数のカラムを含むことができる。幾つかの例では、流体アクチュエータ108-iは複数のプリミティブへと編成可能であり、そこにおいて各々のプリミティブは特定の数の流体アクチュエータを含んでいる。流体アクチュエータ108-iはノズルの一部分であることができ、または流体管路、流体チャンバ、およびその他のような、他の種類の流れ構造に関連していることができる。各々の流体アクチュエータは、流体分配システム100内のコントローラ(例、システムコントローラ110)によって提供される、それぞれに異なるアドレスによって選択される。
【0026】
本願で用いるところでは、「コントローラ」はハードウェア処理回路を指すことができ、これはマイクロプロセッサ、マルチコアマイクロプロセッサのコア、マイクロコントローラ、プログラマブル集積回路(例、アプリケーションプログラマブル集積回路(ASIC)、その他)、プログラマブルゲートアレイ、デジタル信号プロセッサ、幾つもの個別のハードウェア部品(例、タイマー、カウンター、状態マシン、その他)、または別のハードウェア処理回路のいずれか、または幾つかの組み合わせを含むことができる。コントローラはまた、タイマー、カウンター、状態マシン、ラッチ、バッファ、およびその他のような、個別の部品を含むことができる。或いはまた、「コントローラ」は、ハードウェア処理回路と、ハードウェア処理回路上で実行可能な機械可読式の命令(ソフトウェアおよび/またはファームウェア)との組み合わせを指すことができる。
【0027】
図1はシステムコントローラ110を1つのブロックとして示しているが、システムコントローラ110は実際には、それぞれにタスクを実行する複数のコントローラを表すことができることが留意される。例えば、システムコントローラ110は複数のASICを使用して実施可能であり、そこでは1つのASICはキャリッジ103上に配置可能であり、そして別のASICは流体分配動作(例、印刷動作)を制御するための主たるASICであることができる。
【0028】
流体分配デバイス102は、種々の入力130と、そして検知インタフェース132(例えば、電流および電圧またはデータを入出力するための)とを含んでいる。例においては、検知インタフェース132は入力電流または入力電圧を受信することができ、そして対応する電圧または電流を出力することができる。他の例においては、他の形態の入力/出力を検知インタフェース132において行うことができる。
【0029】
入力130はプログラミング電圧(「VPP」と称する)入力134を含み、これは入力電圧をメモリ電圧生成器116に提供する。幾つかの例では、メモリ電圧生成器116は入力電圧VPP134をプログラミング電圧に変換するコンバータを含むことができ、プログラミング電圧は、不揮発性メモリ112-iまたは複数の不揮発性メモリ112-iの選択されたメモリセルのプログラミングを行うために印加される
【0030】
他の例においては、メモリ電圧生成器116は省略することができ、入力電圧VPP134を不揮発性メモリのメモリセルのプログラミングのために使用することができる。
【0031】
入力130はまた、クロック入力136を含んでおり、これは流体分配デバイス102内の種々の回路に提供されるクロック信号をもたらす。入力130はまた、システムコントローラ110によって提供される制御データ(例、データパケットの形態にある)を受信するためのデータ入力138を含んでいる。データ入力138で受信されるデータパケットは、選択された流体アクチュエータ108の付勢を制御するために使用可能な制御情報を含んでいる。また、以下でさらに説明するように、データパケットは流体分配デバイスの動作モードを設定するための情報を含むことができ、そこでの動作モードは、流体分配デバイスの流体アクチュエータの選択的な付勢のための流体動作モード、または不揮発性メモリにデータを書き込みまたは読み出しするためのメモリアクセスモードを含むことができる。
【0032】
さらなる例として、システムコントローラ110からのデータ入力138において受信されるデータパケットに含まれる制御情報は、プリミティブデータおよびアドレスデータを含んでいる。プリミティブデータは、流体分配デバイス102内の流体アクチュエータ108がプリミティブに配置されている例において提供される。より一般的には、プリミティブデータはまた、「噴射データ」として称されることができ、これは流体動作モードの間にプリミティブ内での流体アクチュエータ(または流体アクチュエータ)の付勢または非付勢を制御するために使用されるデータである。
【0033】
流体アクチュエータ108-iがプリミティブへとグループ化される例においては、プリミティブデータは、プリミティブに対して噴射パルスが伝達された場合に、プリミティブ中のどの流体アクチュエータ(単数または複数)が付勢されるかを表すための、対応したビットを含むことができる。噴射パルスは、付勢されている噴射入力140において受信される噴射信号に対応する。
【0034】
アドレスデータはアドレスビットを含み、これは付勢すべき流体アクチュエータ108-iを選択するためのアドレスを規定する。流体アクチュエータ108-iがプリミティブへとグループ化される例においては、各々のプリミティブは流体アクチュエータのセットを含み、そしてプリミティブの流体アクチュエータは、アドレスビットによって表されるところの、それぞれ異なるアドレスによって選択される。
【0035】
流体分配デバイス102がメモリアクセスモードに設定された場合(例、メモリ書き込みモードまたはメモリ読み出しモード)、データ入力138において受信されるデータパケットは、書き込みまたは読み出しされる不揮発性メモリのメモリセルを選択することができる。かくして、データ入力138は、流体アクチュエータを付勢するため、または不揮発性メモリにアクセスするための、それぞれの制御情報を受信するために、流体ダイの流体アクチュエータおよび不揮発性メモリの両者によって共有される制御信号である。
【0036】
制御情報はまた、システムコントローラ110によって流体分配デバイス102に伝達されるデータパケットに含めることができる、他の情報を含むことができる。
【0037】
入力130はさらにモード入力142を含んでおり、これはメモリアクセスモードにおいて、流体分配デバイス102を設定するためのシーケンスの一部として使用可能なモード信号を受信する。
【0038】
他の例においては、流体分配デバイス102の入力130は、付加的な入力または代替的な入力を含むことができる。
【0039】
クロック入力136、データ入力138、噴射入力140、およびモード入力142は、流体分配デバイス102に対して制御情報を提供する制御入力の例である。
【0040】
流体分配デバイス102はまたデータバス160を含んでおり、これに対して不揮発性メモリ112-1-112-Nが結合されている。不揮発性メモリ112-1-112-Nはデータバス160に直接接続されることができ、または代替的には、不揮発性メモリ112-1-112-Nをデータバス160に接続するために、流体ダイ108-1-108-Nのそれぞれに中間回路を設けることができる。
【0041】
データバス160はさらに、検知インタフェース132に接続される。かくして、不揮発性メモリ112-1-112-Nから読み出されたデータは、データバス160上で検知インタフェース132に通信され、またはシステムコントローラ110へと出力されることができる。
【0042】
本願で用いるところでは、データバス160上で通信される「データ」という用語は、データバス160上で通信されるアナログ信号(例、電流または電圧の形態)を含むことができる。他の例においては、データはデジタルデータを指すことができる。
【0043】
図1に示された配置においては、不揮発性メモリ112-1-112-Nは共通のデータバス160を共有し、データバスは流体分配デバイス102の出力(検知インタフェース132の形態)に結合されている。
【0044】
データ入力138は、複数のサブセットを含むことができる。例えば、データ入力138は複数のデータ入力部分D1からDNに分割することができ、ここで各々のデータ入力部分Di(i=1からN)は、個々の流体ダイ108-iのそれぞれに対して提供される。例えば、データ入力部分D1は流体ダイ108-1に接続され(しかし流体ダイ108-Nを含む他の流体ダイのどれにも接続されない)、そしてデータ入力部分DNは流体ダイ108-Nに接続される(しかし流体ダイ108-1を含む他の流体ダイのどれにも接続されない)。データ入力部分D1は流体ダイ108-1に対して提供されたデータパケットを受信可能であり、そしてデータ入力部分DNは流体ダイ108-Nに対して提供されたデータパケットを受信可能である。幾つかの例では、各々のデータ入力部分Diは1ビットからなっている。他の例においては、各々のデータ入力部分Diは、複数ビットからなることができる。
【0045】
幾つかの例では、データバス160は、複数の流体ダイ108-1-108-Nの複数の不揮発性メモリ112-1-112-Nのデータを通信するように共有されることができ、他方で個々の制御入力(D1からDNの形態)は、個々の流体ダイ108-1-108-Nのそれぞれに対して提供される。クロック入力136、噴射入力140、およびモード入力142は、複数の流体ダイ108-1-108-Nによって共有される制御入力である。
【0046】
流体分配デバイス102はさらに記憶媒体150を含んでおり、これはレジスタまたはラッチの形態であることができ、データ入力138の対応するデータ入力部分D1からDNにおいて受信したデータパケットを記憶する。幾つかの例では、記憶媒体150はシフトレジスタを含むことができる。各々のシフトレジスタは、クロック入力136において受信したクロック信号の連続的な付勢に際して、それぞれのデータ入力部分Diで受信したデータパケットのビットをシフトレジスタ内へとシリアルに入力する。他の例においては、記憶媒体150はレジスタを含むことができ、レジスタの各々は、データパケットの全ビットをレジスタ内へと一度にロードすることができる。
【0047】
さらなる例においては、記憶媒体150はシフトレジスタおよびラッチを含むことができ、その場合はデータパケットがシフトレジスタ内にシフトインされた後に、シフトレジスタの内容が対応するラッチに提供されて記憶されることができる。「ラッチ」は、データをバッファするための記憶素子を指すことができる。
【0048】
流体分配デバイス102はさらに、流体分配デバイス102の一部であるデバイスコントローラ152を含んでいる。デバイスコントローラ152は、流体分配デバイス102のモードを設定すること、選択された流体アクチュエータ108の付勢を制御すること、不揮発性メモリ112の書き込みまたは読み出しを制御すること、およびその他といった、流体分配デバイス102の種々の動作を行うことができる。
【0049】
デバイスコントローラ152は、ASIC、プログラマブルゲートアレイ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、およびその他の形態であることができ、或いは、協同して制御タスクを行う個々の部品の形態であることができる。
【0050】
図1は、流体分配デバイス102の入力130および検知インタフェース132がシステムコントローラ110に結合していることを示している。幾つかの例では、キャリッジ103は電気的相互接続を含んでおり、これは流体分配デバイス102がキャリッジ130に取着された場合に、入力130および検知インタフェース132に接続することができる。システムコントローラ110は次いで、バスまたは別のリンクを介するなどにより、キャリッジ103に対して接続される。
【0051】
図2は、3つの流体ダイ108-1、108-2、および108-3が流体分配デバイス102上に設けられた、例示的な配置のブロック図である。図2においては特定の数の流体ダイが示されているが、他の例においては、異なる数の流体ダイを使用することができる。
【0052】
流体ダイ108-1から108-3は、それぞれに不揮発性メモリ110-1から110-3を含んでいる。各々の不揮発性メモリは、ダイに特有の情報を記憶するための第1の領域と、共有情報(共通情報とも称する)を記憶するための第2の領域へと分割することができる。例えば、不揮発性メモリ110-1は、ダイ特有領域202-1、および共有領域204-1に分割される。同様に、不揮発性メモリ110-2はダイ特有領域202-2および共有領域204-2に分割され、そして不揮発性メモリ110-3はダイ特有領域202-3および共有領域204-3に分割される。さらなる例においては、各々の不揮発性メモリは2つよりも多い別々の領域に分割されることができる。
【0053】
ダイ特有領域202-1、202-2、または202-3の各々は、対応する流体ダイ108-1、108-2、または108-3に特有の情報を記憶する。ダイに特有の情報の例には、流体ダイがその上に形成されたウエーハに関するウエーハロット情報、流体ダイの製造日付、およびその他が含まれ得る。
【0054】
共有領域204-1、204-2、および204-3には、共通情報を記憶することができる。共通情報は、流体分配デバイス102に関している。例えば、共通情報は、流体分配デバイス102が使用される地理的領域の情報、流体分配デバイス102の生成情報、流体分配デバイス102の流体レベル(例、プリントカートリッジのインクレベル)の追跡情報、およびその他を含むことができる。共通情報は、共有領域204-1、204-2、および204-3にわたって分散した仕方で記憶されることができる。
【0055】
図3は、複数の流体分配デバイス302および304を含む例示的な配置のブロック図である。例えば、流体分配デバイス302および304はそれぞれ、プリントカートリッジのようなプリントヘッドアセンブリを含むことができる。幾つかの例では、流体分配デバイス302は、異なる色のインクを分配するための流体ダイのような、流体ダイ306-1、306-2、および306-3を含むことができる。流体分配デバイス304は、ブラックのような異なる色のインクを分配するための流体ダイのような、流体ダイ308を含むことができる。流体分配デバイス302および304は、それぞれ特定の数の流体ダイを示しているが、他の例においては、対応する流体分配デバイス302および304に、異なる数の流体ダイを含むことができる。さらにまた、2つよりも多い流体分配デバイスを提供することができる。
【0056】
流体ダイ306-1、306-2、306-3、および308は、それぞれに不揮発性メモリ307-1、307-2、307-3、および309を含んでいる。
【0057】
流体分配デバイス302は検知インタフェース310を含み、そして流体分配デバイス304は検知インタフェース312を含んでいる。検知インタフェース310および312は、グローバルバス314上で検知パッド316に結合されている。検知パッド316はシステムコントローラ110に接続されている。不揮発性メモリ307-1、307-2、307-3、および309から読み出されたデータは、それぞれの検知インタフェース310および312によってグローバルバス314へと出力可能であり、グローバルバスは次いで、データを検知パッド316に提供する。
【0058】
例えば、グローバル検知インタフェースおよびグローバルバス314は、図1に示されたキャリッジ103上の回路配置318(例、プリント回路配置)の一部であることができる。
【0059】
回路配置318はまた、VPPパッド322、クロックパッド324、データパッド326、噴射パッド328、およびモードパッド330を含む、他の入力320を含むことができる。VPPパッド322は、プログラミング電圧(VPP)を流体分配デバイス302および304のVPP入力に提供することができる。クロックパッド324は、クロック信号を流体分配デバイス302および304のクロック入力に提供することができる。データパッド326は、制御情報(データパケット)を流体分配デバイス302および304のデータ入力に提供することができる。データパッド326は、対応するデータ入力部分(例、図1に示したD1からDN)のそれぞれのデータ部分を、流体分配デバイス302または304の各々に対して提供することができることに留意されたい。かくして、流体ダイ306-1、306-2、306-3、および308がグローバルバス314を共有している間に、流体ダイ306-1、306-2、306-3、および308はデータパッド326のデータ部分から個別の制御情報を受信する。
【0060】
噴射パッド328は噴射信号を流体分配デバイス302および304の噴射入力に対して提供する。モードパッド330はモード信号を流体分配デバイス302および304のモード入力に対して提供する。
【0061】
図4は、複数の流体ダイ402-1から402-N(N≧2)を含む、流体分配デバイス構成部品400のブロック図である。各々の流体ダイ402-i(i=1からN)は、それぞれのメモリ404-i(図1に示す112-1-112-N)を含んでいる。
【0062】
流体分配デバイス構成部品400は複数の制御入力406を含み、流体ダイ402-1から402-Nのそれぞれに対して制御情報をそれぞれ提供する。
【0063】
データバス408が流体ダイ402-1から402-Nに接続されている。データバス408は、流体ダイ402-1から402-Nのメモリ404-1から404-Nのデータを、流体分配デバイス構成部品400の出力410へと提供する。
【0064】
図5は、不揮発性メモリ514を含む複数の流体ダイ512を有する流体分配デバイス510を受容する支持構造体502(例、図1のキャリッジ103)を含む、流体分配システム500のブロック図である。
【0065】
流体分配システム500は、種々のタスクを行うためのコントローラ504(例、図1のシステムコントローラ110)を含んでいる。コントローラ504のタスクには、制御情報提供タスク506が含まれており、これは流体分配デバイスの対応する制御入力を使用して、流体分配デバイスのそれぞれの流体ダイに対して制御情報を提供するものである。
【0066】
コントローラ504のタスクにはさらに、不揮発性メモリデータ受信タスク508が含まれており、これは流体ダイ512の不揮発性メモリ514からのデータを、流体分配デバイス510の共有データバス516上で受信するものである。
【0067】
図6は、流体分配デバイス構成部品を形成するためのプロセスの流れ図である。このプロセスは(602において)、基板上に、各々がメモリを含む複数の流体ダイを提供することを含んでいる。このプロセスは(604において)、それぞれの流体ダイについてそれぞれの制御情報を受信するために、流体分配デバイス構成部品の複数の制御入力を提供することを含んでいる。このプロセスは(606において)、複数の流体ダイに接続されたデータバスを介して、流体ダイのメモリのデータを受信するために、流体分配デバイス構成部品の出力を提供することを含んでいる。
【0068】
以上の記載においては、本願に開示された主題の理解をもたらすために、数多くの詳細事項を説明している。しかしながら、これらの詳細事項の幾つかを欠いても、実施が行われてよい。他の実施形態は、上述した詳細事項からの修正および変更を含んでいてよい。添付の特許請求の範囲は、そうした修正および変更をカバーすることを意図している。

図1
図2
図3
図4
図5
図6