(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】オレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法、オレフィン類重合用触媒の製造方法及びオレフィン類重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 4/65 20060101AFI20221122BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C08F4/65
C08F10/00 510
(21)【出願番号】P 2021560880
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2021024104
(87)【国際公開番号】W WO2022014298
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2021-10-13
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】魚住 俊也
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲平
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/132806(WO,A1)
【文献】特開2006-28483(JP,A)
【文献】特開平3-294304(JP,A)
【文献】特開平1-115909(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2287208(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/44 - 4/82
C08F 10/00 - 10/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)下記一般式(1);
(R
1)
kC
6H
4-k(COOR
2)(COOR
3) (1)
(式中、R
1は、炭素数1~8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。R
2及びR
3は、炭素数1~12のアルキル基を示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、置換基R
1の数kは、0、1又は2であり、kが2の場合、複数のR
1は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表わされるフタル酸エステル化合物(A)から選ばれる一種又は二種以上の化合物と、マグネシウム化合物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて第一の接触生成物を得る第一の工程、
(ii)前記(i)工程で得られた第一の接触生成物に対し、さらに下記一般式(2);
【化1】
(式中、R
4~R
9は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R
10及びR
11は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、またこれらは互いに結合して環を形成していてもよい。)
で表されるジエーテル化合物(B)から選ばれる一種又は二種以上の化合物を相互に接触させて第二の接触生成物を得た後、得られた第二の接触生成物を洗浄する第二の工程、
(iii)前記洗浄後の第二の接触生成物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて接触生成物を得た後、得られた接触生成物を洗浄し、洗浄後の接触生成物に対し、さらに前記一般式(1)で表されるフタル酸エステル化合物(A)から選ばれる一種又は二種以上の化合物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて、第三の接触生成物を得る第三の工程
を順次施すことを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法
。
【請求項2】
(I)請求項
1に記載の
製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分及び
(II)下記一般式(3);
R
12
pAlQ
3-p (3)
(式中、pは、0<p≦3の実数である。R
12は、炭素数1~6のアルキル基を示し、R
12が複数存在する場合、複数のR
12は互いに同一であっても異なっていてもよい。Qは、水素原子又はハロゲンであり、Qが複数存在する場合、複数のQは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
から選択される一種又は二種以上の有機アルミニウム化合物
を相互に接触させて、接触生成物を得る
ことを特徴とするオレフィン類重合用触媒の製造方法。
【請求項3】
請求項
2に記載の
製造方法で得られたオレフィン類重合用触媒を用いてオレフィン類の重合を行うことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法、オレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒、オレフィン類重合用触媒の製造方法及びオレフィン類重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プロピレンなどのオレフィン類の重合においては、マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須成分として含む固体触媒成分が知られている。また、係る固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物から成るオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類を重合もしくは共重合させる方法が数多く提案されている。
【0003】
これらのオレフィン類重合用触媒の中で、特にフタル酸エステルを典型例とする内部電子供与性化合物が担持された固体状チタン触媒成分(固体触媒成分)と、助触媒成分として有機アルミニウム化合物と、少なくとも一つのSi-OR(式中、Rは炭化水素基である)結合を含むケイ素化合物とを用いた場合に優れた重合活性と立体特異性を発現することが報告されている(特許文献1、特許文献2及び特許文献3)。上記特許文献も含めフタル酸エステルを電子供与性化合物とすることが好ましい例が多数報告されている。
【0004】
また、内部電子供与性化合物として特定の1,3-ジエーテル化合物を用いた固体触媒成分が報告されている(特許文献4)。
【0005】
一方、近年、自動車の内装部材等に使用されるポリプロピレン樹脂から発生するオレフィンオリゴマーなどの揮発性有機化合物(VOC)によって、臭気を生じるようになっており、VOCの発生を抑制し得るオレフィン類重合体を容易に製造可能なオレフィン類重合用触媒が求められるようになっている。
【0006】
しかしながら、従来のフタル酸エステル化合物やジエーテル化合物を内部電子供与性化合物とする固体触媒成分を用いた場合と同等以上の重合活性を有し、嵩密度に優れオレフィンオリゴマーの含有量が低いオレフィン重合体を製造可能な固体触媒成分は報告されるに至っていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭58-83006号公報
【文献】特開昭56-811号公報
【文献】特開昭63-3010号公報
【文献】特開2009-263678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況下、本発明は、従来のフタル酸エステル化合物やジエーテル化合物を内部電子供与性化合物とする固体触媒成分を用いた場合と同等以上の重合活性を有し、嵩密度に優れオレフィンオリゴマーの含有量が低いオレフィン重合体を製造可能なオレフィン類重合用固体触媒成分を提供するとともに、オレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法、オレフィン類重合用触媒、オレフィン類重合用触媒の製造方法及びオレフィン類重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術課題を解決すべく、本発明者等が鋭意検討を重ねた結果、
(i)特定のフタル酸エステル化合物(A)から選ばれる一種又は二種以上の化合物と、マグネシウム化合物とハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて第一の接触生成物を得る第一の工程、
(ii)上記(i)工程で得られた第一の接触生成物に対し、さらに特定のジエーテル化合物(B)から選ばれる一種又は二種以上の化合物を相互に接触させた後、得られた第二の接触生成物を洗浄する第二の工程、
(iii)前記洗浄後の第二の接触生成物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて接触生成物を得た後、得られた接触生成物を洗浄し、洗浄後の接触生成物に対し、さらに前記一般式(1)で表されるフタル酸エステル化合物(A)から選ばれる一種又は二種以上の化合物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて、第三の接触生成物を得る第三の工程
を順次施して得られるオレフィン類重合用固体触媒成分により、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)(i)下記一般式(1);
(R
1)
kC
6H
4-k(COOR
2)(COOR
3) (1)
(式中、R
1は、炭素数1~8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。R
2及びR
3は、炭素数1~12のアルキル基を示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、置換基R
1の数kは、0、1又は2であり、kが2の場合、複数のR
1は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表わされるフタル酸エステル化合物(A)から選ばれる一種又は二種以上の化合物と、マグネシウム化合物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて第一の接触生成物を得る第一の工程、
(ii)前記(i)工程で得られた第一の接触生成物に対し、さらに下記一般式(2);
【化1】
(式中、R
4~R
9は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R
10及びR
11は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、またこれらは互いに結合して環を形成していてもよい。)
で表されるジエーテル化合物(B)から選ばれる一種又は二種以上の化合物を相互に接触させて第二の接触生成物を得た後、得られた第二の接触生成物を洗浄する第二の工程、
(iii)前記洗浄後の第二の接触生成物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて接触生成物を得た後、得られた接触生成物を洗浄し、洗浄後の接触生成物に対し、さらに前記一般式(1)で表されるフタル酸エステル化合物(A)から選ばれる一種又は二種以上の化合物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて、第三の接触生成物を得る第三の工程
を順次施すことを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法、
(2)(i)下記一般式(1);
(R
1)
kC
6H
4-k(COOR
2)(COOR
3) (1)
(式中、R
1は、炭素数1~8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。R
2及びR
3は、炭素数1~12のアルキル基を示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、置換基R
1の数kは、0、1又は2であり、kが2の場合、複数のR
1は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表わされるフタル酸エステル化合物(A)から選ばれる一種又は二種以上の化合物と、マグネシウム化合物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて第一の接触生成物を得る第一の工程、
(ii)前記(i)工程で得られた第一の接触生成物に対し、さらに下記一般式(2);
【化2】
(式中、R
4~R
9は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R
10及びR
11は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、またこれらは互いに結合して環を形成していてもよい。)
で表されるジエーテル化合物(B)から選ばれる一種又は二種以上の化合物を相互に接触させて第二の接触生成物を得た後、得られた第二の接触生成物を洗浄する第二の工程、
(iii)前記洗浄後の第二の接触生成物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて接触生成物を得た後、得られた接触生成物を洗浄し、洗浄後の接触生成物に対し、さらに前記一般式(1)で表されるフタル酸エステル化合物(A)から選ばれる一種又は二種以上の化合物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて、第三の接触生成物を得る第三の工程
を順次施すことにより得られる
ことを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分、
(3)チタン、マグネシウム、ハロゲン及び内部電子供与性化合物を含むオレフィン類重合用固体触媒成分であって、
前記内部電子供与性化合物が、下記一般式(1);
(R
1)
kC
6H
4-k(COOR
2)(COOR
3) (1)
(式中、R
1は、炭素数1~8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。R
2及びR
3は、炭素数1~12のアルキル基を示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、置換基R
1の数kは、0、1又は2であり、kが2の場合、各R
1は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表わされるフタル酸エステル化合物(A)から選ばれる一種又は二種以上の化合物及び下記一般式(2);
【化3】
(式中、R
4~R
9は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R
10及びR
11は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、またこれらは互いに結合して環を形成していてもよい。)で表されるジエーテル化合物(B)から選ばれる一種又は二種以上の化合物を含み、
オレフィン類重合用固体触媒成分1g当たりのフタル酸エステル化合物(A)及びジエーテル化合物(B)の合計量が0.5~1.2ミリモルであり、
フタル酸エステル化合物(A)の全モル量/ジエーテル化合物(B)の全モル量で表される比が0.5~1.2である
ことを特徴とする上記(2)項に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、
(4)(I)請求項2に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分及び
(II)下記一般式(3);
R
12
pAlQ
3-p (3)
(式中、pは、0<p≦3の実数である。R
12は、炭素数1~6のアルキル基を示し、R
12が複数存在する場合、複数のR
12は互いに同一であっても異なっていてもよい。Qは、水素原子又はハロゲンを示し、Qが複数存在する場合、複数のQは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
から選択される一種又は二種以上の有機アルミニウム化合物
を含むことを特徴とするオレフィン類重合用触媒、
(5)(I)上記(2)項に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、
(II)下記一般式(3);
R
12
pAlQ
3-p (3)
(式中、pは、0<p≦3の実数である。R
12は、炭素数1~6のアルキル基を示し、R
12が複数存在する場合、複数のR
12は互いに同一であっても異なっていてもよい。Qは、水素原子又はハロゲンを示し、Qが複数存在する場合、複数のQは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
から選択される一種又は二種以上の有機アルミニウム化合物及び
(III)外部電子供与性化合物
を含むことを特徴とする上記(4)項に記載のオレフィン類重合用触媒、
(6)前記(III)外部電子供与性化合物が、
下記一般式(2);
【化4】
(式中、R
4~R
9は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R
10及びR
11は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、またこれらは互いに結合して環を形成していてもよい。)
で表されるジエーテル化合物(B)、
下記一般式(4);
R
13
qSi(OR
14)
4-q (4)
(式中、R
13は、炭素数1~12のアルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、フェニル基、炭素数1~12のアルキルアミノ基、炭素数1~12のジアルキルアミノ基のいずれかを示す。qは、0≦q≦3の整数であり、qが2以上の場合、複数のR
13は互いに同一であっても異なっていてもよい。R
14は、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、R
14が複数存在する場合、複数のR
14は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表される有機ケイ素化合物及び
下記一般式(5);
(R
15R
16N)
sSiR
17
4-s (5)
(式中、R
15及びR
16は、水素原子、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、アリール基を示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、またこれらは互いに結合して環を形成していてもよい。R
17は、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数1~20の直鎖状又は分岐状アルコキシ基、ビニルオキシ基、アリロキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、及びそれらの誘導体を示し、R
17が複数存在する場合、複数のR
17は互いに同一であっても異なっていてもよい。sは、1から3の整数であり、R
15R
16N基が複数存在する場合、複数のR
15R
16N基は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表される有機ケイ素化合物から選択される一種又は二種以上である
ことを特徴とする上記(5)項に記載のオレフィン類重合用触媒、
(7)(I)上記(2)項に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分及び
(II)下記一般式(3);
R
12
pAlQ
3-p (3)
(式中、pは、0<p≦3の実数である。R
12は、炭素数1~6のアルキル基を示し、R
12が複数存在する場合、複数のR
12は互いに同一であっても異なっていてもよい。Qは、水素原子又はハロゲンであり、Qが複数存在する場合、複数のQは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
から選択される一種又は二種以上の有機アルミニウム化合物
を相互に接触させて、接触生成物を得る
ことを特徴とするオレフィン類重合用触媒の製造方法、
(8)上記(4)項~(6)項のいずれかに記載のオレフィン類重合用触媒を用いてオレフィン類の重合を行う
ことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法
を提供するものである。
なお、以下、オレフィン類重合用固体触媒成分を、適宜、固体触媒成分と称するものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フタル酸エステル化合物やジエーテル化合物を内部電子供与性化合物とする固体触媒成分を用いた場合と同等以上の重合活性を有し、嵩密度に優れオレフィンオリゴマーの含有量が低いオレフィン重合体を製造可能なオレフィン類重合用固体触媒成分を提供できるとともに、オレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法、オレフィン類重合用触媒、オレフィン類重合用触媒の製造方法及びオレフィン類重合体の製造方法を提供することができる。
【0012】
先ず、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法は、
(i)下記一般式(1);
(R
1)
kC
6H
4-k(COOR
2)(COOR
3) (1)
(式中、R
1は、炭素数1~8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。R
2及びR
3は、炭素数1~12のアルキル基を示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、置換基R
1の数kは、0、1又は2であり、kが2の場合、複数のR
1は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表わされるフタル酸エステル化合物(A)から選ばれる一種又は二種以上の化合物と、マグネシウム化合物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて第一の接触生成物を得る第一の工程、
(ii)前記(i)工程で得られた第一の接触生成物に対し、さらに下記一般式(2);
【化5】
(式中、R
4~R
9は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R
10及びR
11は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、またこれらは互いに結合して環を形成していてもよい。)
で表されるジエーテル化合物(B)から選ばれる一種又は二種以上の化合物を相互に接触させて第二の接触生成物を得た後、得られた第二の接触生成物を洗浄する第二の工程、
(iii)前記洗浄後の第二の接触生成物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて接触生成物を得た後、得られた接触生成物を洗浄し、洗浄後の接触生成物に対し、さらに前記一般式(1)で表されるフタル酸エステル化合物(A)から選ばれる一種又は二種以上の化合物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて、第三の接触生成物を得る第三の工程
を順次施すことを特徴とするものである。
【0013】
下記一般式(1)
(R1)kC6H4-k(COOR2)(COOR3) (1)
で表わされるフタル酸エステル化合物(A)において、R1は、炭素数1~8のアルキル基又はハロゲン原子である。
R1が炭素数1~8のアルキル基である場合、炭素数1~8のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が挙げられる。
R1がハロゲン原子である場合、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素等が挙げられる。これらの中では、塩素、臭素又はヨウ素が好ましく、塩素又は臭素がより好ましい。
【0014】
置換基R1の数kは0、1又は2であり、kが2の場合、複数のR1は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0015】
一般式(1)で表わされるフタル酸エステル化合物(A)において、R2及びR3は、炭素数1~12のアルキル基であり、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。
【0016】
一般式(1)で表わされるフタル酸エステル化合物(A)としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ(n-プロピル)、フタル酸ジ(iso-プロピル)、フタル酸ジ(n-ブチル)、フタル酸ジ(iso-ブチル)、ブロモフタル酸ジ(n-ブチル)、メチルフタル酸ジ(iso-プロピル)、ジエチルフタル酸ジ(iso-ブチル)、フタル酸エチル(n-ブチル)、フタル酸エチル(iso-ブチル)、フタル酸エチル(n-プロピル)、フタル酸(n-プロピル)(n-ブチル)等が挙げられる。
これらの中では、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ(n-プロピル)、フタル酸ジ(iso-プロピル)、フタル酸ジ(n-ブチル)、フタル酸ジ(iso-ブチル)が好ましい。
これらのフタル酸エステル化合物(A)は、単独で、又は2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0017】
第一の工程で使用するマグネシウム化合物としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウム、脂肪酸マグネシウム等から選ばれる一種又は二種以上が挙げられる。
これらの中では、ジハロゲン化マグネシウム、ジハロゲン化マグネシウムとジアルコキシマグネシウムの混合物、ジアルコキシマグネシウムが好ましく、特にジアルコキシマグネシウムが好ましい。
【0018】
ジアルコキシマグネシウムとしては、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられる。また、これらのジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲン又はハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させてなるものでもよい。また、上記のジアルコキシマグネシウムは、単独で、又は2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0019】
更に、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、マグネシウム化合物としてジアルコキシマグネシウムを用いる場合は、顆粒状又は粉末状であることが好ましく、その形状は不定形あるいは球状のものを使用し得る。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、重合時により良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の問題が解消される。
【0020】
第一の工程で使用するハロゲン含有チタン化合物としては、例えば、下記一般式(6);
Ti(OR18)jX4-j (6)
(式中、R18は、炭素数1~10の炭化水素基を示す。OR18基が複数存在する場合、複数のR18は互いに同一であっても異なっていてもよい。Xは、ハロゲン基を示し、Xが複数存在する場合、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。jは、0又は1~4の整数である。)で表わされる4価のチタン化合物を挙げられる。
【0021】
前記一般式(6)で表わされる4価のチタン化合物としては、アルコキシチタン、チタンハライド、アルコキシチタンハライド群から選ばれる一種又は二種以上が挙げられる。
上記4価のチタン化合物として、具体的には、チタンテトラフルオライド、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライド、アルコキシチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n-ブトキシチタントリクロライド等のアルコキシチタントリハライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ-n-ブトキシチタンジクロライド、等のジアルコキシチタンジハライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ-n-ブトキシチタンクロライド等のトリアルコキシチタンハライドが挙げられる。
これらの中では、ハロゲン含有チタン化合物が好ましく、特にチタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライドが好ましく、チタンテトラクロライドが最も好ましい。
これらのチタン化合物は、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることもできる。さらに、これら一般式(6)で表わされる4価のチタン化合物は、炭化水素化合物あるいはハロゲン化炭化水素化合物等に希釈して使用してもよい。
【0022】
第一の工程において、フタル酸エステル化合物(A)、マグネシウム化合物及びハロゲン含有チタン化合物を接触させる処理は、不活性有機溶媒の存在下に行うことが好ましい。
上記不活性有機溶媒としては、常温(20℃)下で液体でかつ沸点50~150℃であるものが好ましく、常温下で液体でかつ沸点50~150℃である芳香族炭化水素化合物又は飽和炭化水素化合物がより好ましく、常温下で液体でかつ沸点50~150℃である、直鎖状炭化水素、分岐状脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素から選ばれる一種又は二種以上がさらに好ましい。
上記不活性有機溶媒として、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の直鎖脂肪族炭化水素化合物、メチルヘプタン等の分岐状脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物等から選ばれる一種以上が挙げられる。
上記不活性有機溶媒のうち、常温下で液体で、沸点が50~150℃である芳香族炭化水素化合物が、得られる固体触媒成分の活性を向上させ、得られる重合体の立体規則性を向上させることができるため、好適である。
【0023】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第一の工程において、フタル酸エステル化合物(A)、マグネシウム化合物及びハロゲン含有チタン化合物を、適宜不活性有機溶媒の存在下に混合することにより、接触させることができる。
【0024】
第一の工程においては、フタル酸エステル化合物(A)、マグネシウム化合物及びハロゲン含有チタン化合物を接触させ、適宜反応させる。
上記接触時の温度は、-20~60℃が好ましく、-20~40℃がより好ましく、-10~30℃がさらに好ましく、-10~20℃が一層好ましい。また、接触時間は、1分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、30分間~6時間がさらに好ましく、30分間~5時間が一層好ましく、1~4時間がより一層好ましい。
【0025】
第一の工程において、フタル酸エステル化合物(A)、マグネシウム化合物及びハロゲン含有チタン化合物を接触させる際、マグネシウム化合物1モルに対するハロゲン含有チタン化合物の使用量は、0.5~100モルであることが好ましく、1~50モルであることがより好ましく、1~10モルであることがさらに好ましい。
【0026】
第一の工程において、フタル酸エステル化合物(A)、マグネシウム化合物及びハロゲン含有チタン化合物を接触させる際、マグネシウム化合物1モルに対するフタル酸エステル化合物(A)の使用量は、0.01~10モルであることが好ましく、0.01~1モルであることがより好ましく、0.02~0.6モルであることがさらに好ましい。
また、第一の工程で不活性有機溶媒を使用する場合、不活性有機溶媒の使用量は、マグネシウム化合物1モルに対し、0.001~500モルであることが好ましく、0.5~100モルであることがより好ましく、1.0~20モルであることがさらに好ましい。
【0027】
第一の工程において、各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行うことが好ましい。
【0028】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、上記第一の工程で得られた第一の接触生成物に対し、さらに下記一般式(2);
【化6】
(式中、R
4~R
9は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R
10及びR
11は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、またこれらは互いに結合して環を形成していてもよい。)
で表されるジエーテル化合物(B)から選ばれる一種又は二種以上の化合物を相互に接触させて第二の接触生成物を得た後、得られた第二の接触生成物を洗浄する第二の工程を施す。
【0029】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法の第二の工程で使用される一般式(2)で表されるジエーテル化合物(B)において、R4~R9は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかである。これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
一般式(2)中のR4~R9のいずれかが炭素数1~6の直鎖状アルキル基である場合、炭素数1~6の直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
上記一般式(2)中のR4~R9のいずれかが炭素数3~6の分岐状アルキル基である場合、炭素数3~6の分岐状アルキル基としては、例えばiso-プロピル基、iso-ブチル基、t-ブチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、iso-ヘキシル基等が挙げられる。
一般式(2)中のR4~R9のいずれかが炭素数3~6のシクロアルキル基である場合、炭素数3~6のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。
【0031】
一般式(2)中のR10及びR11は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかであり、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、R10及びR11は、互いに結合して環を形成していてもよい。
一般式(2)中のR10又はR11が、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基又は炭素数3~6のシクロアルキル基である場合、その具体例としては、R4~R9の説明で挙げたものと同様の基が挙げられる。
【0032】
一般式(2)で表されるジエーテル化合物(B)としては、2-iso-プロピル-2-iso-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジ-iso-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-iso-プロピル-2-iso-ペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)1,3-ジメトキシプロパン、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン等が挙げられる。
【0033】
これ等の中では、2-iso-プロピル-2-iso-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジ-iso-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-iso-プロピル-2-iso-ペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレンが好ましい。
これらのジエーテル化合物(B)は、単独で、又は2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0034】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第二の工程において、第一の工程で得られた第一の接触生成物に対し、ジエーテル化合物(B)を接触させて第二の接触生成物を得る。
第二の工程において、ジエーテル化合物(B)は、適宜、第一の工程で例示したものと同様の不活性有機溶媒の存在下に混合することにより、好適に接触させることができる。
【0035】
第二の工程において各成分を接触させ、適宜反応させる条件は、特に制限されないが、上記接触時の温度は、60~200℃が好ましく、60~160℃がより好ましく、80~140℃がさらに好ましく、80~120℃が一層好ましい。また、接触時間は、1分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、30分間~6時間がさらに好ましく、30分間~5時間が一層好ましく、1~4時間がより一層好ましい。
【0036】
第二の工程において、第一の工程で得られた第一の接触生成物に対してジエーテル化合物(B)を接触させる際、(第一の工程で加えた)マグネシウム化合物1モルに対するジエーテル化合物(B)の使用量のモル比(ジエーテル化合物(B)のモル量/マグネシウム化合物のモル量)は、0.001~10であることが好ましく、0.002~1であることがより好ましく、0.003~0.6であることがさらに好ましい。
【0037】
また、第二の工程において、第一の工程で得られた第一の接触生成物に対してジエーテル化合物(B)を接触させる際、(第一の工程で加えた)フタル酸エステル化合物(A)1モルに対するジエーテル化合物(B)の使用量のモル比(ジエーテル化合物(B)のモル量/フタル酸エステル化合物(A)のモル量)は、0.01~0.9であることが好ましく、0.01~0.6であることがより好ましく、0.02~0.4であることがさらに好ましい。
【0038】
ジエーテル化合物(B)のモル量/フタル酸エステル化合物(A)のモル量で表わされる比が上記範囲内にあることにより、ジエーテル化合物(B)とハロゲン含有チタン化合物からなる錯化合物が過剰に形成されることを抑制し易くなり、得られる固体触媒成分を用いてオレフィン類を重合させたときに、重合活性や立体規則性を容易に向上させることができる。
【0039】
また、第二の工程で不活性有機溶媒を使用する場合、不活性有機溶媒の使用量は、(第一の工程で加えた)マグネシウム化合物1モルに対し、0.001~500モルであることが好ましく、0.5~100モルであることがより好ましく、1.0~20モルであることがさらに好ましい。
【0040】
なお、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、反応の効率性等を考慮して、マグネシウム化合物は第一の工程で必要量の全量を反応系に加えることが好ましく、第二の工程においては、マグネシウム化合物を反応系に加えないことが好ましい。
【0041】
第二の工程において、各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行うことが好ましい。
上記接触処理終了後、反応液を静置し、適宜、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)としたり、さらに熱風乾燥等により乾燥状態にした上で、洗浄処理することが好ましい。
【0042】
また、第二の工程においては、第一の工程で加えられたハロゲン含有チタン化合物が十分に存在することから、ハロゲン含有チタン化合物は使用しないことが好ましい。
【0043】
第二の工程においては、上記接触処理終了後、得られた反応物を洗浄処理する。
上記洗浄処理は、通常洗浄液を用いて行われる。
洗浄液としては、上記不活性有機溶媒と同様のものを挙げることができ、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の常温下で液体、かつ、沸点が50~150℃の直鎖脂肪族炭化水素化合物や、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の常温下で液体、かつ、沸点が50~150℃の環式脂肪族炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、オルトジクロロベンゼン等の常温下で液体、かつ、沸点が50~150℃の芳香族炭化水素化合物等から選ばれる一種以上が好ましい。
上記洗浄液を使用することにより、反応物中から、副生成物や不純物を容易に溶解し、除去することができる。
【0044】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、第二の工程における洗浄処理は、0~150℃の温度下で行うことが好ましく、60~150℃の温度下で行うことがより好ましく、80~130℃の温度下で行うことがさらに好ましく、90~130℃の温度下で行うことが一層好ましく、90~120℃の温度下で行うことがより一層好ましい。
【0045】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、洗浄処理は、反応生成物に対して所望量の洗浄液を加えて攪拌した後、フィルトレーション法(濾過法)もしくはデカンテーション法により、液相を除去することにより行うことが好ましい。
また、後述するように、洗浄回数が複数回(2回以上)である場合には、反応生成物に対して最後に添加した洗浄液を除去することなく、そのまま次工程の反応に供することもできる。
【0046】
第二の工程において、洗浄液の使用量は、第二の接触生成物1gあたり1~500mLであることが好ましく、3~200mLであることがより好ましく、5~100mLであることがさらに好ましい。
【0047】
洗浄回数は複数回であってもよく、洗浄回数は1~20回が好ましく、2~15回がより好ましく、2~10回がさらに好ましい。
洗浄回数が複数回である場合であっても、洗浄液は、洗浄ごとに上述した量を使用することが好ましい。
【0048】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第二の工程において各成分を接触させた後、洗浄処理することにより、第二の接触生成物中に残留する未反応原料成分や反応副生成物(アルコキシチタンハライドや四塩化チタン-カルボン酸錯体等)の不純物を除去することができる。
上記反応終了後、適宜、洗浄処理後の懸濁液を静置し、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)としたり、さらに熱風乾燥等により乾燥状態にしてもよいし、懸濁液の状態のまま第三の工程に供してもよい。懸濁液の状態のまま第三の工程に供した場合には、乾燥処理を省略できるとともに、第三の工程において不活性有機溶媒を加えることを省略することができる。
【0049】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、上記洗浄後の第二の接触生成物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて接触生成物を得た後、得られた接触生成物を洗浄し、洗浄後の接触生成物に対し、さらに前記一般式(1)で表されるフタル酸エステル化合物(A)から選ばれる一種又は二種以上の化合物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて、第三の接触生成物を得る第三の工程を施す。
【0050】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、上記洗浄後の第二の接触生成物に対して接触させる一般式(1)で表されるフタル酸エステル化合物(A)や、ハロゲン含有チタン化合物の詳細は、上述したとおりである。
第三の工程において接触させるフタル酸エステル化合物(A)や、ハロゲン含有チタン化合物は、各々、第一の工程で使用したものと同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0051】
第三の工程においてハロゲン含有チタン化合物を接触させる条件は、特に制限されず、具体的には、第一の工程と同様の接触条件を挙げることができる。
【0052】
第三の工程において、洗浄後の第二の接触生成物に対してハロゲン含有チタン化合物を接触させて接触生成物を得る際、(第一の工程で加えた)マグネシウム化合物1モルに対するハロゲン含有チタン化合物の使用量は、0.5~100モルであることが好ましく、1~50モルであることがより好ましく、1~10モルであることがさらに好ましい。
【0053】
第三の工程において、洗浄後の第二の接触生成物に対してハロゲン含有チタン化合物を接触させて接触生成物を得る際に不活性有機溶媒を使用する場合、不活性有機溶媒の使用量は、(第一の工程で加えた)マグネシウム化合物1モルに対し、0.001~500モルであることが好ましく、0.5~100モルであることがより好ましく、1.0~20モルであることがさらに好ましい。
【0054】
第三の工程において、洗浄後の接触生成物に対し、フタル酸エステル化合物(A)やハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させる際、フタル酸エステル化合物(A)やハロゲン含有チタン化合物を接触させる条件は特に制限されず、具体的には、第一の工程と同様の接触条件を挙げることができる。
【0055】
第三の工程において、上記洗浄後の接触生成物に対して、フタル酸エステル化合物(A)を接触させ、適宜反応させる際、(第一の工程で加えた)マグネシウム化合物1モルに対するフタル酸エステル化合物(A)の使用量の比(フタル酸エステル化合物(A)のモル量/マグネシウム化合物のモル量)は、0.001~10であることが好ましく、0.002~1であることがより好ましく、0.003~0.6であることがさらに好ましい。
【0056】
また、第三の工程において、上記洗浄後の接触生成物に対して、フタル酸エステル化合物(A)を接触させる際、第一の工程で加えたフタル酸エステル化合物(A)1モルに対する第三の工程で加えるフタル酸エステル化合物(A)の使用量のモル比(第三の工程で加えるフタル酸エステル化合物(A)のモル量/第一の工程で加えたフタル酸エステル化合物(A)のモル量)は、0.01~0.9であることが好ましく、0.01~0.6であることがより好ましく、0.02~0.4であることがさらに好ましい。
第三の工程で加えるフタル酸エステル化合物(A)のモル量/第一の工程で加えたフタル酸エステル化合物(A)のモル量で表わされる比が上記範囲内にあることにより、第三の工程で加えるフタル酸エステル化合物(A)とハロゲン含有チタン化合物からなる錯化合物が過剰に形成されることを抑制し易くなり、得られる固体触媒成分を用いてオレフィン類を重合させたときに、重合活性や得られる重合体の立体規則性を容易に向上させることができる。
【0057】
また、第三の工程で使用するフタル酸エステル化合物(A)のモル量は、第一の工程で使用したフタル酸エステル化合物(A)のモル量よりも少なく、第二の工程で使用したジエーテル化合物(B)のモル量と同じか又は少ないことが好ましい。
すなわち、以下の関係を満たすことが好ましい。
第一の工程で使用したフタル酸エステル化合物(A)のモル量>第二の工程で使用したジエーテル化合物(B)のモル量≧第三の工程で使用するフタル酸エステル化合物(A)のモル量
【0058】
第三の工程において、上記洗浄後の接触生成物にフタル酸エステル化合物(A)とハロゲン含有チタン化合物とを接触させて第三の接触生成物を得る際に不活性有機溶媒を使用する場合、不活性有機溶媒の使用量は、(第一の工程で加えた)マグネシウム化合物1モルに対し、0.001~500モルであることが好ましく、0.5~100モルであることがより好ましく、1.0~20モルであることがさらに好ましい。
【0059】
また、上述したように、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、反応の効率性等を考慮して、マグネシウム化合物は第一の工程で必要量の全量を反応系に加えることが好ましく、第三の工程においては、マグネシウム化合物を反応系に加えないことが好ましい。
【0060】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、使用するハロゲン含有チタン化合物の全量のうち、第一の工程及び第三の工程等においてその一部づつを分割して接触させることにより、高い立体規則性を示す重合体を生成し得るハロゲン含有チタン化合物を高効率で固体触媒成分に導入することができる。
【0061】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、得られるオレフィン類重合用固体触媒成分1g当たり、フタル酸エステル化合物(A)及びジエーテル化合物(B)の合計量が、0.5~1.2ミリモルとなるように接触処理することが好ましく、0.6~1.2ミリモルとなるように接触することがより好ましく、0.8~1.2ミリモルとなるように接触処理することがさらに好ましい。
【0062】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、フタル酸エステル化合物(A)の全使用量(モル量)/ジエーテル化合物(B)の全使用量(モル量)で表される比が、0.5~1.2であることが好ましく、0.5~1.0であることがより好ましく、0.5~0.8であることがさらに好ましい。
【0063】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、各工程において、一般式(1)で表されるフタル酸エステル化合物(A)及び一般式(2)で表されるジエーテル化合物(B)以外の追加の内部電子供与性化合物を用いてもよい。
このような追加の内部電子供与性化合物としては、酸ハライド類、酸アミド類、ニトリル類、酸無水物及びフタル酸エステル化合物(A)以外のコハク酸エステル類、マレイン酸エステル類、マロン酸エステル類、グルタル酸エステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステル類、シクロへキセンジカルボン酸エステル類などの有機酸エステルなどが挙げられる。
このような追加の電子供与性化合物は、単独で、又は2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0064】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法で用いられる内部電子供与性化合物は、オレフィン類重合用固体触媒成分の調製時に電子供与性化合物として作用するものである。
【0065】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、ポリシロキサンを併用してもよい。ポリシロキサンを用いることにより生成ポリマーの立体規則性あるいは結晶性を向上させることができ、さらには生成ポリマーの微粉を低減することが可能となる。
ポリシロキサンは、主鎖にシロキサン結合(-Si-O-結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02~100cm2/s(2~10000センチストークス)、より好ましくは0.03~5cm2/s(3~500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
【0066】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10~80%のメチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0067】
本発明に係る製造方法において、第三の工程を施して得られたオレフィン類重合用固体触媒成分は、該固体触媒成分に対する重量比で1/3以下、好ましくは1/20~1/6になるまで残留する溶媒を除くことで粉末状固体成分とし、気流分級等の手段により該粉末固体成分に混在する粒径11μm以下の微粉を除去することが好ましい。
【0068】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法として、具体的には、
フタル酸エステル化合物(A)と、ジアルコキシマグネシウムと、ハロゲン化チタンと、直鎖状炭化水素又は分岐状脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素から選ばれる一種又は二種以上の炭化水素溶媒とを、容器にそれぞれ装入して撹拌機等で混合し、これらを相互に接触させて第一の接触生成物を得る第一の工程、
第一の接触生成物を含む容器に、ジエーテル化合物(B)と、直鎖状炭化水素又は分岐状脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素から選ばれる一種又は二種以上の炭化水素溶媒とをそれぞれ装入して撹拌機等で混合し、これらを相互に接触させて第二の接触生成物を得た後に、この第二の接触生成物を、直鎖状炭化水素又は分岐状脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素から選ばれる一種又は二種以上の炭化水素溶媒で洗浄する第二の工程、
洗浄済みの第二の接触生成物を含む容器に、ハロゲン含有チタン化合物を装入して接触生成物を得た後、得られた接触生成物を洗浄し、洗浄後の接触生成物に対し、さらにフタル酸エステル化合物(A)と、ハロゲン化チタンと、直鎖状炭化水素又は分岐状脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素から選ばれる一種又は二種以上の炭化水素溶媒とをそれぞれ装入して撹拌機等で混合し、これらを相互に接触させて第三の接触生成物を得た後、この第三の接触生成物を、直鎖状炭化水素又は分岐状脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素から選ばれる一種又は二種以上の炭化水素溶媒で洗浄する第三の工程、
を順次施してオレフィン類重合用固体触媒成分を得る方法
が挙げられる。
【0069】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、第一の工程と第三の工程においてフタル酸エステル化合物(A)を用い、第二の工程においてジエーテル化合物(B)を用いることにより、得られるオレフィン類重合用固体触媒成分中におけるフタル酸エステル化合物(A)の全モル量/ジエーテル化合物(B)の全モル量で表される比を、後述する範囲内に容易に制御することができるとともに、オレフィン類重合用固体触媒成分におけるフタル酸エステル化合物(A)及びジエーテル化合物(B)のそれぞれを、担体上の最適な場所に最適な量で容易に担持させ得ると考えられる。
その結果、本発明に係る製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分を用いることにより、オレフィン類重合体の形成時に、高立体規則性でオレフィンオリゴマーの含有量が低いオレフィン類重合体を製造可能な活性種を高効率で形成することができる。
このため、本発明に係る製造方法によれば、フタル酸エステル化合物やジエーテル化合物を内部電子供与性化合物とする固体触媒成分を用いた場合と同等以上の重合活性を有し、嵩密度に優れオレフィンオリゴマーの含有量が低いオレフィン重合体を製造可能なオレフィン類重合用固体触媒成分を提供することができる。
【0070】
本発明に係る製造方法により、以下に述べる本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分を得ることができる。本発明に係る製造方法により得られるオレフィン類重合用固体触媒成分の詳細は、後述するとおりである。
【0071】
本発明によれば、フタル酸エステル化合物やジエーテル化合物を内部電子供与性化合物とする固体触媒成分を用いた場合と同等以上の重合活性を有し、嵩密度に優れオレフィンオリゴマーの含有量が低いオレフィン重合体を製造可能なオレフィン類重合用固体触媒成分を簡便に製造する方法を提供することができる。
【0072】
次に、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、
(i)下記一般式(1);
(R
1)
kC
6H
4-k(COOR
2)(COOR
3) (1)
(式中、R
1は、炭素数1~8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。R
2及びR
3は、炭素数1~12のアルキル基を示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、置換基R
1の数kは、0、1又は2であり、kが2の場合、複数のR
1は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表わされるフタル酸エステル化合物(A)から選ばれる一種又は二種以上の化合物と、マグネシウム化合物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて第一の接触生成物を得る第一の工程、
(ii)前記(i)工程で得られた第一の接触生成物に対し、さらに下記一般式(2);
【化7】
(式中、R
4~R
9は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R
10及びR
11は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、またこれらは互いに結合して環を形成していてもよい。)
で表されるジエーテル化合物(B)から選ばれる一種又は二種以上の化合物を相互に接触させて第二の接触生成物を得た後、得られた第二の接触生成物を洗浄する第二の工程、
(iii)前記洗浄後の第二の接触生成物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて接触生成物を得た後、得られた接触生成物を洗浄し、洗浄後の接触生成物に対し、さらに前記一般式(1)で表されるフタル酸エステル化合物(A)から選ばれる一種又は二種以上の化合物と、ハロゲン含有チタン化合物とを相互に接触させて、第三の接触生成物を得る第三の工程
を順次施すことにより得られる
ことを特徴とするものである。
【0073】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、その製造方法により表されるものであり、係る製造方法の詳細は、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法の説明で詳述したとおりである。
【0074】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分としては、
チタン、マグネシウム、ハロゲン及び内部電子供与性化合物を含むオレフィン類重合用固体触媒成分であって、
前記内部電子供与性化合物が、下記一般式(1);
(R
1)
kC
6H
4-k(COOR
2)(COOR
3) (1)
(式中、R
1は、炭素数1~8のアルキル基又はハロゲン原子を示す。R
2及びR
3は、炭素数1~12のアルキル基を示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、置換基R
1の数kは、0、1又は2であり、kが2の場合、各R
1は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表わされるフタル酸エステル化合物(A)から選ばれる一種又は二種以上の化合物及び下記一般式(2);
【化8】
(式中、R
4~R
9は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R
10及びR
11は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、またこれらは互いに結合して環を形成していてもよい。)で表されるジエーテル化合物(B)から選ばれる一種又は二種以上の化合物を含み、
オレフィン類重合用固体触媒成分1g当たりのフタル酸エステル化合物(A)及びジエーテル化合物(B)の合計量が0.5~1.2ミリモルであり、
フタル酸エステル化合物(A)の全モル量/ジエーテル化合物(B)の全モル量で表される比が0.5~1.2である
ものが好ましい。
【0075】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与性化合物である上記一般式(1)で表されるフタル酸エステル化合物(A)と上記一般式(2)で表されるジエーテル化合物(B)とを必須成分として含む。
【0076】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、マグネシウム、チタン及び電子供与性化合物とともに含まれるハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素等が挙げられる。これ等の中では、塩素、臭素又はヨウ素が好ましく、塩素又はヨウ素がより好ましい。
【0077】
また、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分中のチタン、マグネシウム、ハロゲン、フタル酸エステル化合物(A)及びジエーテル化合物(B)の含有量は、本願発明の効果を奏する限り、特に規定されない。
【0078】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、オレフィン類重合用固体触媒成分1g当たりのフタル酸エステル化合物(A)及びジエーテル化合物(B)の合計量は、0.5~1.2ミリモルであることが好ましく、0.6~1.2ミリモルであることがより好ましく、0.8~1.2ミリモルであることがさらに好ましい。
【0079】
オレフィン類重合用固体触媒成分1g当たりのフタル酸エステル化合物(A)及びジエーテル化合物(B)の合計量が上記範囲内にあることにより、触媒活性を高度に維持するために最適な量のチタンを担体表面上に固定化することができる。
【0080】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、フタル酸エステル化合物(A)の全モル量/ジエーテル化合物(B)の全モル量で表される比は、0.5~1.2であることが好ましく、0.5~1.0であることがより好ましく、0.5~0.8であることがさらに好ましい。
【0081】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、フタル酸エステル化合物(A)の全モル量/ジエーテル化合物(B)の全モル量で表される比が上記範囲内にあることにより、フタル酸エステル化合物(A)及びジエーテル化合物(B)のそれぞれが、担体上の最適な場所に最適な量で担持される。このようなオレフィン類重合用固体触媒成分を用いることにより、オレフィン類重合体の形成時に、高立体規則性でオレフィンオリゴマーの含有量が低いオレフィン類重合体を製造可能な活性種を高効率で形成することができる。
このため、本発明によれば、フタル酸エステル化合物やジエーテル化合物を内部電子供与性化合物とする固体触媒成分を用いた場合と同等以上の重合活性を有し、嵩密度に優れオレフィンオリゴマーの含有量が低いオレフィン重合体を製造可能なオレフィン類重合用固体触媒成分を提供することができる。
【0082】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、チタン含有量は、0.1~10重量%が好ましく、0.5~8.0重量%がより好ましく、1.0~8.0重量%がさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、マグネシウム含有量は、10~70重量%が好ましく、10~50重量%がより好ましく、15~40重量%がさらに好ましく、15~25重量%が一層好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、ハロゲン含有量は、20~84.2重量%が好ましく、30~80重量%がより好ましく、40~75重量%がさらに好ましく、45~75重量%が一層好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、フタル酸エステル化合物(A)の含有量は、3.3~40.9重量%が好ましく、3.8~30.1重量%がより好ましく、3.8~21.4重量%がさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、ジエーテル化合物(B)の含有量は、2.4~20重量%が好ましく、3.0~18.0重量%がより好ましく、4.0~17.0重量%がさらに好ましい。
【0083】
本出願書類において、オレフィン類重合用固体触媒成分中に含まれるチタンの含有率は、JIS 8311-1997「チタン鉱石中のチタン定量方法」に記載の方法(酸化還元滴定)に準じて測定した値を意味する。
【0084】
本出願書類において、オレフィン類重合用固体触媒成分中に含まれるハロゲンの含有率は、オレフィン類重合用固体触媒成分を硫酸と純水の混合溶液で処理して水溶液とした後、所定量を分取し、硝酸銀標準溶液でハロゲンを滴定する硝酸銀滴定法によって測定した値を意味する。
【0085】
本明細書において、オレフィン類重合用固体触媒成分中に含まれるフタル酸エステル化合物(A)や、ジエーテル化合物(B)等の内部電子供与性化合物の含有量ないし含有率は、オレフィン類重合用固体触媒を加水分解した後、芳香族溶剤を用いて内部電子供与性化合物を抽出し、この溶液をガスクロマトグラフィーFID(Flame Ionization Detector、水素炎イオン化型検出器)法によって測定した値を意味する。
【0086】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、本発明に係る製造方法により好適に製造することができる。
【0087】
本発明によれば、フタル酸エステル化合物やジエーテル化合物を内部電子供与性化合物とする固体触媒成分を用いた場合と同等以上の重合活性を有し、嵩密度に優れオレフィンオリゴマーの含有量が低いオレフィン重合体を製造可能なオレフィン類重合用固体触媒成分を提供することができる。
【0088】
次に、本発明に係るオレフィン類重合用触媒について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、
(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分及び
(II)下記一般式(3);
R12
pAlQ3-p (3)
(式中、pは、0<p≦3の実数である。R12は、炭素数1~6のアルキル基を示し、R12が複数存在する場合、複数のR12は互いに同一であっても異なっていてもよい。Qは、水素原子又はハロゲンを示し、Qが複数存在する場合、複数のQは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
から選択される一種又は二種以上の有機アルミニウム化合物
を含むことを特徴とするものである。
【0089】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒を構成する(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の詳細は、上述したとおりである。
【0090】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、(II)有機アルミニウム化合物は、下記一般式(3);
R12
pAlQ3-p (3)
(式中、pは、0<p≦3の実数である。R12は、炭素数1~6のアルキル基を示し、R12が複数存在する場合、複数のR12は互いに同一であっても異なっていてもよい。Qは、水素原子又はハロゲンを示し、Qが複数存在する場合、複数のQは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表わされるものである。
【0091】
このような(II)有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド等のハロゲン化アルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド等から選ばれる一種又は二種以上が挙げられ、ジエチルアルミニウムクロライド等のハロゲン化アルキルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム等から選ばれる一種又は二種以上が好ましく、トリエチルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウムから選ばれる一種又は二種以上がより好ましい。
【0092】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分及び(II)有機アルミニウム化合物とともに、さらに(III)外部電子供与性化合物を含むものであってもよい。
【0093】
上記(III)外部電子供与性化合物としては、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物が挙げられ、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、iso-シアネート類、有機ケイ素化合物等が挙げられ、中でもSi-O-C結合を有する有機ケイ素化合物又はSi-N-C結合を有するアミノシラン化合物等が挙げられる。
上記のなかでも、安息香酸エチル、p-メトキシ安息香酸エチル、p-エトキシ安息香酸エチル、p-トルイル酸メチル、p-トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のエステル類、1,3-ジエーテル類、Si-O-C結合を含む有機ケイ素化合物、Si-N-C結合を含むアミノシラン化合物が好ましく、Si-O-C結合を有する有機ケイ素化合物、Si-N-C結合を有するアミノシラン化合物、1,3-ジエーテル類が特に好ましい。
【0094】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、(III)外部電子供与性化合物としては、
前記(III)外部電子供与性化合物が、
下記一般式(2);
【化9】
(式中、R
4~R
9は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R
10及びR
11は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基、炭素数3~6の分岐状アルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかを示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、またこれらは互いに結合して環を形成していてもよい。)
で表されるジエーテル化合物(B)、
下記一般式(4);
R
13
qSi(OR
14)
4-q (4)
(式中、R
13は、炭素数1~12のアルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、フェニル基、炭素数1~12のアルキルアミノ基、炭素数1~12のジアルキルアミノ基のいずれかを示す。qは、0≦q≦3の整数であり、qが2以上の場合、複数のR
13は互いに同一であっても異なっていてもよい。R
14は、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、R
14が複数存在する場合、複数のR
14は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表される有機ケイ素化合物及び
下記一般式(5);
(R
15R
16N)
sSiR
17
4-s (5)
(式中、R
15及びR
16は、水素原子、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、アリール基を示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、またこれらは互いに結合して環を形成していてもよい。R
17は、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数1~20の直鎖状又は分岐状アルコキシ基、ビニルオキシ基、アリロキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、及びそれらの誘導体を示し、R
17が複数存在する場合、複数のR
17は互いに同一であっても異なっていてもよい。sは、1から3の整数であり、R
15R
16N基が複数存在する場合、複数のR
15R
16N基は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表される有機ケイ素化合物から選択される一種又は二種以上である
ことが好ましい。
【0095】
外部電子供与性化合物が一般式(2)で表されるジエーテル化合物(B)である場合、係るジエーテル化合物(B)の詳細は、上述したとおりである。
【0096】
一般式(4)や一般式(5)で表される有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、アルキル(シクロアルキル)アルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、シクロアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、テトラキス(アルキルアミノ)シラン、アルキルトリス(アルキルアミノ)シラン、ジアルキルビス(アルキルアミノ)シラン、トリアルキル(アルキルアミノ)シラン等を挙げることができる。
【0097】
一般式(4)や一般式(5)で表される有機ケイ素化合物として、具体的には、フェニルトリメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、ジ-iso-プロピルジメトキシシラン、iso-プロピル-iso-ブチルジメトキシシラン、ジ-iso-ペンチルジメトキシシラン、ビス(2-エチルヘキシル)ジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ビス(エチルアミノ)メチルエチルシラン、t-ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ジシクロヘキシルビス(エチルアミノ)シラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(メチルアミノ)(メチルシクロペンチルアミノ)メチルシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、エチル(イソキノリノ)ジメトキシシラン等が挙げられる。
【0098】
中でも、一般式(4)や一般式(5)で表される有機ケイ素化合物としては、フェニルトリメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、ジ-iso-プロピルジメトキシシラン、iso-プロピル-iso-ブチルジメトキシシラン、ジ-iso-ペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t-ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ジシクロヘキシルビス(エチルアミノ)シラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン等が好ましい。
【0099】
また、上記(III)外部電子供与性化合物として、上記一般式(2)で表わされるジエーテル化合物、一般式(4)で表わされる有機ケイ素化合物及び一般式(5)で表わされる有機ケイ素化合物の中から2種以上を選択し、組み合わせて用いることもできる。
【0100】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、各成分の含有比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではない。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、上記(I)オレフィン類重合用固体触媒成分中のチタン原子1モル当たり、上記(II)有機アルミニウム化合物を、1~2000モル含むものであることが好ましく、50~1000モル含むものであることがより好ましい。
また、本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、上記(II)有機アルミニウム化合物1モル当たり、上記(III)外部電子供与性化合物を、0.002~10モル含むものであることが好ましく、0.01~2モル含むものであることがより好ましく、0.01~0.5モル含むものであることがさらに好ましい。
【0101】
本発明によれば、フタル酸エステル化合物やジエーテル化合物を内部電子供与性化合物とする固体触媒成分を用いた場合と同等以上の重合活性を有し、嵩密度に優れオレフィンオリゴマーの含有量が低いオレフィン重合体を製造可能なオレフィン類重合用触媒を提供することができる。
【0102】
次に、本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法は、
(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分及び
(II)下記一般式(3);
R12
pAlQ3-p (3)
(式中、pは、0<p≦3の実数である。R12は、炭素数1~6のアルキル基を示し、R12が複数存在する場合、複数のR12は互いに同一であっても異なっていてもよい。Qは、水素原子又はハロゲンであり、Qが複数存在する場合、複数のQは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
から選択される一種又は二種以上の有機アルミニウム化合物
を相互に接触させて、接触生成物を得る
ことを特徴とするものである。
(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分及び(II)一般式(3)で表される有機アルミニウム化合物の詳細は、上述したとおりである。
【0103】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法においては、(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分及び(II)一般式(3)で表される有機アルミニウム化合物とともに、(III)外部電子供与性化合物を相互に接触させて、接触生成物を得ることが好ましい。
(III)外部電子供与性化合物の詳細は、上述したとおりである。
【0104】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法においては、(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分、(II)一般式(3)で表わされる有機アルミニウム化合物及び任意に使用される(III)外部電子供与性化合物をオレフィン類不存在下で接触させることにより調製してもよいし、以下に記述するように、オレフィン類存在下で(重合系内で)接触させて接触生成物を得てもよく、オレフィン類存在下で(重合系内で)接触させて接触生成物を得ることが好ましい。
【0105】
本発明によれば、フタル酸エステル化合物やジエーテル化合物を内部電子供与性化合物とする固体触媒成分を用いた場合と同等以上の重合活性を有し、嵩密度に優れオレフィンオリゴマーの含有量が低いオレフィン重合体を製造可能なオレフィン類重合用触媒を簡便に製造する方法を提供することができる。
【0106】
次に、本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法は、本発明に係るオレフィン類重合用触媒を用いてオレフィン類の重合を行うことを特徴とするものである。
【0107】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法においては、本発明に係るオレフィン類重合用触媒を用いてオレフィン類の単独重合又は共重合を行うことにより、目的とするオレフィン類重合体を製造することができる。
【0108】
オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられ、これらのオレフィン類は一種又は二種以上使用することができる。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン及び1-ブテンから選ばれる一種又は二種以上以上が好ましく、プロピレンがより好ましい。
【0109】
プロピレンの重合を行う場合、他のオレフィン類との共重合を行なうこともできる。共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられ、これらは一種又は二種以上使用することができる。オレフィン類としては、エチレン及び1-ブテンから選ばれる一種又は二種以上が好ましい。
【0110】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法で使用される、本発明に係るオレフィン類重合用触媒の詳細は上述したとおりである。
オレフィン類の重合に使用されるオレフィン類重合用触媒の構成成分比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されない。
通常、上記オレフィン類重合用触媒を構成する(II)有機アルミニウム化合物が、(I)オレフィン類重合用固体触媒成分中のチタン原子1モル当たり、1~2000モルであることが好ましく、50~1000モルであることがより好ましい。また、上記オレフィン類重合用触媒を構成する(III)外部電子供与性化合物が、(II)有機アルミニウム化合物1モル当たり、0.002~10モルであることが好ましく、0.01~2モルであることがより好ましく、0.01~0.5モルであることがさらに好ましい。
【0111】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法においては、(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分、(II)一般式(3)で表わされる有機アルミニウム化合物及び任意に使用される(III)外部電子供与性化合物をオレフィン類存在下で(重合系内で)接触させて接触生成物(オレフィン類重合用触媒)を調製しつつ、オレフィン類を重合することが好ましい。
【0112】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類重合用触媒を調製しつつオレフィン類を重合する場合、オレフィン類重合用触媒を構成する各成分の装入、接触順序は任意に選択することができる。
例えば、重合系内にまず(II)有機アルミニウム化合物を装入し、次いで(I)オレフィン類重合用固体触媒成分を装入することが望ましい。
また、オレフィン類重合用触媒として(III)外部電子供与性化合物を含むものを使用する場合は、重合系内にまず(II)有機アルミニウム化合物を装入し、次いで(III)外部電子供与性化合物を装入した後、(I)オレフィン類重合用固体触媒成分を装入することが望ましい。
【0113】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも実施することができ、またプロピレン等のオレフィンモノマーは、気体及び液体のいずれの状態でも用いることができる。
【0114】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、重合温度は200℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、重合圧力は10MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましい。
また、本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法は、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に、重合反応は一段で行なってもよいし、二段以上で行なってもよい。
【0115】
加えて、本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、本発明に係るオレフィン類重合用触媒を用いてオレフィン類を重合するに当たり(本重合とも称する)、触媒活性、立体規則性及び生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行うことが好ましく、予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
【0116】
予備重合を行うに際して、上記オレフィン類重合用触媒を構成する各成分及びモノマー(オレフィン類)の接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に、先ず(II)有機アルミニウム化合物を装入し、次いで(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分を装入、接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を単独で、又はプロピレン等のオレフィン類及びその他のオレフィン類を一種又は二種以上混合したものを接触させることが好ましい。
上記予備重合において、予備重合系内にさらに(III)外部電子供与性化合物を装入する場合、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に、先ず(II)有機アルミニウム化合物を装入し、次いで(III)外部電子供与性化合物を装入、接触させ、更に(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を単独で、又はプロピレン等のオレフィン類及びその他のオレフィン類を一種又は二種以上混合したものを接触させることが好ましい。
【0117】
なお、(III)外部電子供与性化合物を組み合わせて予備重合を行なう場合は、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず(II)有機アルミニウム化合物を装入し、次いで(III)外部電子供与性化合物を接触させ、更に(I)オレフィン類重合用固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン、又はプロピレンと1種あるいは2種以上の他のオレフィン類の混合物を接触させる方法が望ましい。
【0118】
プロピレンブロック共重合体を製造する場合は、2段階以上の多段重合により行い、通常第1段目で重合用触媒を用いてプロピレンを重合し、第2段目でエチレン及びプロピレンを共重合することにより得られる。第2段目あるいはこれ以降の重合時にプロピレン以外のα-オレフィンを共存あるいは単独で重合させることも可能である。α-オレフィンの例としては、エチレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン、1-ヘキセン、1-オクテン等が挙げられる。
具体的には、第1段目でポリプロピレン部の割合が20~80重量%になるように重合温度及び時間を調整して重合を行ない、次いで第2段目において、エチレン及びプロピレンあるいは他のα-オレフィンを導入し、エチレン-プロピレンゴム(EPR)などのゴム部割合が20~80重量%になるように重合する。第1段目及び第2段目における重合温度は共に、200℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。重合圧力は、10MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましい。また、各重合段階での重合時間あるいは連続重合の場合、滞留時間は通常1分~5時間である。
【0119】
重合方法としては、シクロヘキサン、ヘプタン等の不活性炭化水素化合物の溶媒を使用するスラリー重合法、液化プロピレン等の溶媒を使用するバルク重合法、及び実質的に溶媒を使用しない気相重合法が挙げられる。好ましい重合方法としては、バルク重合法、気相重合法等を挙げることができる。
【0120】
本発明によれば、フタル酸エステル化合物やジエーテル化合物を内部電子供与性化合物とする固体触媒成分を用いた場合と同等以上の重合活性の下で、嵩密度に優れオレフィンオリゴマーの含有量が低いオレフィン重合体を製造する方法を提供することができる。
【実施例】
【0121】
以下、本発明の実施例及び比較例と対比しつつ具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例及び比較例により制限されるものではない。
【0122】
また、以下に示す成分分析、物性評価及び重合評価は、各々以下の方法により測定したものである。
【0123】
(チタンの含有量の測定方法)
オレフィン類重合用固体触媒成分中のチタンの含有量は、JIS 8311-1997「チタン鉱石中のチタン定量方法」(酸化還元滴定)に準じて測定した。
【0124】
(内部電子供与性化合物の含有量及びモル数の測定方法)
オレフィン類重合用固体触媒成分中の内部電子供与性化合物の含有量は、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、GC-2014)を用いて下記測定条件にて測定した。
また、オレフィン類重合用固体触媒成分1g当たりの内部電子供与性化合物のモル数は、内部電子供与性化合物の含有量を測定したときに、該内部電子供与性化合物の標準溶液に基づいて測定した検量線により求めた。
<測定条件>
・カラム:キャピラリーカラム(I.D. 0.32mm×Lenght30m df1.00μm IntertCap1、ジーエルサイエンス(株)社製)
・検出器:FID(Flame Ionization Detector,水素炎イオン化型検出器)
・キャリアガス:ヘリウム、流量7mL/分
・測定温度:気化室280℃、カラム225℃、検出器280℃、又は気化室265℃、カラム180℃、検出器265℃
【0125】
(オレフィン類重合用固体触媒成分の粒度分布測定方法)
レーザー回折式粒度分布測定装置(Malvern社製、マスターサイザー3000)を用いて、固体触媒成分を分散圧0.4barの気流に分散させ、自動測定により2回測定を行い、粒度分布を測定した。
各測定において、積算体積分率10%の粒子径(D10)、積算体積分率50%の粒子径(D50)及び積算体積分率90%の粒子径(D90)を求め、各々の平均値を、得られたオレフィン類重合用固体触媒成分のD10、D50、D90とした。
また、上記D10、D50及びD90の値から、下記式(6)よりSPANを算出した。
SPAN=(D90-D10)/D50 (6)
さらに、上記粒度分布より、111μm以上の粒子(粗粉)の存在割合(体積%)を求めた。
【0126】
(PP重合活性(固体触媒成分1g当たりの重合活性)の測定方法)
オレフィン類重合用固体触媒成分1g当たりの重合活性(PP重合活性)は、下記式(α)により算出した。即ち、PP重合活性は、オレフィン類重合用固体触媒成分1g当たり、重合時間1時間当たりの重合体生成量(g)を示すものである。
PP重合活性(g-PP/(g-cat・時間))=(生成重合体量(g)/(固体触媒成分(g)・1時間)) (α)
【0127】
(重合体の嵩密度(BD))
得られた重合体の嵩密度(BD)は、JIS K-6721:1997に従って測定した。
【0128】
(オリゴマー量の測定方法)
ソックスレー抽出器に、ホモポリプロピレン重合により得られた5.0gの未乾燥の重合体(ポリプロピレン)と、100mLのクロロホルムを装入し、外部温度をクロロホルムの沸点(約80℃)以上とすることにより、抽出部のクロロホルムの温度を沸点下(60℃)に維持しつつ、4時間かけて重合体を抽出した。その後、抽出液の液温を23℃まで冷却し、抽出液中に含まれるオリゴマー成分(C6~C21)の量をガスクロマトグラフ((株)島津製作所製、GC-2014)を用いて2,4-ジメチルヘプタンを基準物質として求めた。
【0129】
(実施例1)
<オレフィン類重合用固体触媒成分の調製>
(i) 攪拌装置を備え、窒素ガスで置換された内容積500mLのフラスコに、ジエトキシマグネシウム20g(175ミリモル)、トルエン140mL、四塩化チタン40mL、フタル酸ジプロピル17.3ミリモル(4.3g)を加えて第一の接触生成物を得た。
(ii)上記第一の接触生成物を昇温し、昇温途中の90℃で2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン16.8ミリモル(3.6g)を加え、さらに昇温して113℃とし同温度を保持した状態で180分間反応させた。反応終了後、反応生成物である第二の接触生成物を100℃のトルエン187mLで4回洗浄した。
(iii)次に、上記洗浄後の第二の接触生成物に対し、新たに四塩化チタン15容量%のトルエン溶液200mLを加えて、100℃に昇温し、120分間攪拌して反応させた後、得られた接触生成物を108℃のトルエンで1回洗浄した。次いで、上記洗浄後の接触生成物に対し、新たにフタル酸ジプロピル2.0ミリモル(0.5g)を含む四塩化チタン10容量%のトルエン溶液200mLを加えて、108℃に昇温し、60分間攪拌し反応させ、反応後、得られた第三の接触生成物を100℃のトルエンで2回洗浄した。その後、60℃のn-ヘプタン151mLで7回洗浄し、固液を分離してオレフィン類重合用固体触媒成分を得た。
得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析及び物性評価を行った結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
なお、実施例1においては、内部電子供与性化合物のうち、フタレート(A)としてフタル酸ジプロピルを用い、ジエーテル(B)として2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパンを用いた。
【0130】
<オレフィン類重合用触媒の形成及びプロピレンホモ重合体の形成>
窒素ガスで置換された内容積2.0リットルの攪拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32ミリモル、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモル及び上記固体触媒成分をチタン原子換算で0.0026ミリモル装入して、オレフィン類重合用触媒を形成した。
その後、水素ガス3.0リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行って、プロピレンホモ重合体を得た。
得られたプロピレンホモ重合体の重合評価及びオリゴマー量の評価を行った結果を表3に示す。
【0131】
(実施例2)
シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルに代えて、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.01ミリモルとプロピルトリエトキシシラン(PTES)0.12ミリモルの混合液を用いた以外は、実施例1と同様にオレフィン類重合用固体触媒成分を調製し、この固体触媒成分からオレフィン類重合用触媒の形成及び重合反応を行って、プロピレンホモ重合体を得た。
このとき得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析及び物性評価結果を表1及び表2にそれぞれ示すとともに、得られたプロピレンホモ重合体の重合評価及びオリゴマー量の評価結果を表3に示す。
【0132】
(実施例3)
シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルに代えて、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン(DCPBEAS)0.13ミリモルを用い、水素ガス3.0リットルに代えて水素ガス1.5リットルを用いた以外は、実施例1と同様にオレフィン類重合用固体触媒成分を調製し、この固体触媒成分からオレフィン類重合用触媒の形成及び重合反応を行って、プロピレンホモ重合体を得た。
このとき得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析及び物性評価結果を表1及び表2にそれぞれ示すとともに、得られたプロピレンホモ重合体の重合評価及びオリゴマー量の評価結果を表3に示す。
【0133】
(実施例4)
2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン16.8ミリモルに代えて、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン(BMMF)16.8ミリモル(4.3g)を用いた以外は、実施例1と同様に固体触媒成分を調製し、この固体触媒成分からオレフィン類重合用触媒の形成及び重合反応を行って、プロピレンホモ重合体を得た。
このとき得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析及び物性評価結果を表1及び表2にそれぞれ示すとともに、得られたプロピレンホモ重合体の重合評価及びオリゴマー量の評価結果を表3に示す。
【0134】
(比較例1)
実施例1の工程(ii)において、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン16.8ミリモルの代わりに、フタル酸ジプロピル16.8ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分を調製し、この固体触媒成分からオレフィン類重合用触媒の形成及び重合反応を行って、プロピレンホモ重合体を得た。
このとき得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析及び物性評価結果を表1及び表2にそれぞれ示すとともに、得られたプロピレンホモ重合体の重合評価及びオリゴマー量の評価結果を表3に示す。
【0135】
(比較例2)
実施例1の工程(i)において、フタル酸ジプロピル17.3ミリモルに代えて2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン17.6ミリモルを用い、実施例1の工程(iii)において、フタル酸ジプロピル2.0ミリモル(0.5g)を含む四塩化チタン10容量%のトルエン溶液200mLに代えて、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン2.0ミリモル(0.4g)を含む四塩化チタン10容量%のトルエン溶液200mLを用いた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分を調製し、この固体触媒成分からオレフィン類重合用触媒の形成及び重合反応を行って、プロピレンホモ重合体を得た。
このとき得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析及び物性評価結果を表1及び表2にそれぞれ示すとともに、得られたプロピレンホモ重合体の重合評価及びオリゴマー量の評価結果を表3に示す。
【0136】
(比較例3)
(i)攪拌装置を備え、窒素ガスで充分に置換された内容積500mLのフラスコに、ジエトキシマグネシウム20g(175ミリモル)、トルエン140mL、四塩化チタン40mL、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン17.3ミリモル(3.7g)を加えて、第一の接触生成物を得た。
(ii)上記第一の接触生成物を昇温し、昇温途中の90℃でフタル酸ジプロピル16.8ミリモル(4.3g)を加え、さらに昇温して113℃とし同温度を保持した状態で180分間反応して第二の接触生成物を得た。反応終了後、第二の接触生成物を108℃のトルエン187mLで4回洗浄した。
(iii)次に、上記洗浄後の第二の接触生成物に四塩化チタン濃度15容量%のトルエン溶液200mLを加えて108℃に昇温し、120分間攪拌して反応させ、第三の接触生成物を得た。反応終了後、得られた第三の接触生成物を100℃のトルエンで1回洗浄した。
次に、上記洗浄処理を施した第三の接触生成物に対し、新たに2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン2.0ミリモル(0.4g)を含む四塩化チタン10容量%のトルエン溶液200mLを加えて108℃に昇温し、60分間攪拌して反応させた。
反応終了後、得られた生成物を100℃のトルエンで2回洗浄し、次いで、60℃のn-ヘプタン151mLで7回洗浄し、固液を分離してオレフィン類重合用固体触媒成分を得た。
得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析及び物性評価を行った結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
次いで、実施例1と同様にしてオレフィン類重合用触媒の形成及び重合反応を行って、プロピレンホモ重合体を得た。
このとき得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析及び物性評価結果を表1及び表2にそれぞれ示すとともに、得られたプロピレンホモ重合体の重合評価及びオリゴマー量の評価結果を表3に示す。
【0137】
(比較例4)
(i)攪拌装置を備え、窒素ガスで充分に置換された内容積500mLのフラスコに、ジエトキシマグネシウム20g(175ミリモル)、トルエン140mL、四塩化チタン40mL、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン17.3ミリモル(4.4g)、フタル酸ジプロピル16.8ミリモル(4.3g)を加えて、第一の接触生成物を得た。
(ii)上記第一の接触生成物を110℃まで昇温し、同温度を維持した状態で180分間反応して第二の接触生成物を得た。反応終了後、得られた第二の接触生成物を100℃のトルエン187mLで4回洗浄した。
(iii)次に、上記洗浄後の第二の接触生成物に四塩化チタン濃度15容量%のトルエン溶液200mLを加えて100℃に昇温し、15分間攪拌して反応させ第三の接触生成物を得た。反応終了後、得られた第三の接触生成物を100℃のトルエンで1回洗浄した。
次に、上記洗浄処理を施した第三の接触生成物に対し、新たにフタル酸ジプロピル2.0ミリモル(0.5g)を含む四塩化チタン10容量%のトルエン溶液200mLを加えて100℃に昇温し、15分間攪拌して反応させた。
反応終了後、得られた生成物を100℃のトルエンで1回洗浄し、次いで、60℃のn-ヘプタン151mLで6回洗浄し、固液を分離してオレフィン類重合用固体触媒成分を得た。
得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析及び物性評価を行った結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
次いで、実施例1と同様にしてオレフィン類重合用触媒の形成及び重合反応を行って、プロピレンホモ重合体を得た。
このとき得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析及び物性評価結果を表1及び表2にそれぞれ示すとともに、得られたプロピレンホモ重合体の重合評価及びオリゴマー量の評価結果を表3に示す。
【0138】
(比較例5)
実施例1の工程(ii)において、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン16.8ミリモルに代えてフタル酸ジプロピル16.8ミリモルを用い、実施例1の工程(iii)において、フタル酸ジプロピル2.0ミリモル(0.5g)を含む四塩化チタン10容量%のトルエン溶液200mLに代えて、フタル酸ジプロピル16.8ミリモル及び2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン2.0ミリモル(0.4g)を含む四塩化チタン10容量%のトルエン溶液200mLを用いた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分を調製し、この固体触媒成分からオレフィン類重合用触媒の形成及び重合反応を行って、プロピレンホモ重合体を得た。
このときの評価結果を表1~3にそれぞれ示す。
【0139】
(比較例6)
実施例1の工程(i)において、ジエトキシマグネシウム20g(175ミリモル)、トルエン140mL、四塩化チタン40mLのみを加えて第一の接触生成物を得、実施例1の工程(ii)において、上記第一の接触生成物を昇温し、昇温途中の80℃でフタル酸ジプロピル17.3ミリモルと2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン16.8ミリモルを加え、さらに昇温して113℃とした以外は、実施例1と同様にオレフィン類重合用固体触媒成分を調製し、得られた固体触媒成分を用いてオレフィン類重合用触媒の形成及び重合反応を行って、プロピレンホモ重合体を得た。
このとき得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析及び物性評価結果を表1及び表2にそれぞれ示すとともに、得られたプロピレンホモ重合体の重合評価及びオリゴマー量の評価結果を表3に示す。
【0140】
(比較例7)
実施例1の工程(i)において、ジエトキシマグネシウム20g(175ミリモル)、トルエン140mL、四塩化チタン40mL、フタル酸ジプロピル17.3ミリモルと2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン16.8ミリモルを添加して第1の接触生成物を得、実施例1の工程(ii)において、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパンを加えなかった以外は、実施例1と同様にオレフィン類重合用固体触媒成分を調製し、得られた固体触媒成分を用いてオレフィン類重合用触媒の形成及び重合反応を行って、プロピレンホモ重合体を得た。
このとき得られたオレフィン類重合用固体触媒成分の成分分析及び物性評価結果を表1及び表2にそれぞれ示すとともに、得られたプロピレンホモ重合体の重合評価及びオリゴマー量の評価結果を表3に示す。
【0141】
【表1】
<略語の説明>
・Ti:オレフィン類重合用固体触媒成分中のチタン
・(A):オレフィン類重合用固体触媒成分中の内部電子供与性化合物(フタル酸エステル化合物)・・・フタル酸ジプロピル
・(B):オレフィン類重合用固体触媒成分中の内部電子供与性化合物(ジエーテル化合物)・・・2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン
【0142】
【0143】
【0144】
表1~表3より、実施例1~実施例4においては、本発明に係る固体触媒成分を用いているために、フタル酸エステル化合物やジエーテル化合物を内部電子供与性化合物とする固体触媒成分を用いた場合と同等以上の重合活性を有し、嵩密度に優れオレフィンオリゴマーの含有量が低いオレフィン重合体を製造し得ることが分かる。
【0145】
一方、比較例1~比較例7で用いた固体触媒成分は、ジエーテル化合物(B)を有していなかったり(比較例1)、フタル酸エステル化合物(A)を有していなかったり(比較例2)、第1の工程及び第3の工程でフタル酸エステル化合物(A)と接触させずかつ第2の工程でジエーテル化合物(B)と接触させずに得られたものであったり(比較例3)、第2の工程でジエーテル化合物(B)と接触させずに得られたものであったり(比較例4、比較例5)、第1の工程でフタル酸エステル化合物(A)と接触させずに得られたものであったり(比較例6)、第2の工程でジエーテル化合物(B)と接触させずに得られたものである(比較例7)。
このため、表3より、比較例1~比較例7においては、フタル酸エステル化合物やジエーテル化合物を内部電子供与性化合物とする固体触媒成分を用いた場合と同等以上の重合活性を有するか、及び/又は同等以上の嵩密度を有する重合体が得られる場合であっても、得られる重合体のオレフィンオリゴマーが多いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明によれば、フタル酸エステル化合物やジエーテル化合物を内部電子供与性化合物とする固体触媒成分を用いた場合と同等以上の重合活性を有し、嵩密度に優れオレフィンオリゴマーの含有量が低いオレフィン重合体を製造可能なオレフィン類重合用固体触媒成分を提供できるとともに、オレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法、オレフィン類重合用触媒、オレフィン類重合用触媒の製造方法及びオレフィン類重合体の製造方法を提供することができる。