IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャネル・パルファム・ボーテの特許一覧

特許7181431ヤブツバキの水アルコール抽出物及びそれを含む化粧用組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ヤブツバキの水アルコール抽出物及びそれを含む化粧用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20221122BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022051414
(22)【出願日】2022-03-28
(65)【公開番号】P2022153335
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】21305389
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521440585
【氏名又は名称】シャネル・パルファム・ボーテ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・コカンドー
(72)【発明者】
【氏名】アンヌ・ロシニョール-カステラ
(72)【発明者】
【氏名】ノエミ・ルモワン
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-516441(JP,A)
【文献】特開2013-053108(JP,A)
【文献】特表2017-522354(JP,A)
【文献】特開2009-155317(JP,A)
【文献】特開2020-158424(JP,A)
【文献】国際公開第2010/112760(WO,A1)
【文献】特開2018-158910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K36/00
A23L5/40-5/49
A23L31/00-33/29
Mintel GNPD
CAplus/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤブツバキの花の水アルコール抽出物を調製する方法であって、以下の工程:
i. 脂肪物質又は脂肪物質の混合物に、前記脂肪物質の融点を超える温度で、酸素を含まない雰囲気下で、ツバキの花の粉末を含浸させて、次いで分離して、ツバキの花の油性抽出物及びこうして抽出された花の残留粉末を得る工程
ii. 酸素を含まない雰囲気下で、アルコール及び水の混合物をベースとした抽出溶媒によって、工程i.で得られた花の前記残留粉末を含浸させる工程
iii. 酸素を含まない雰囲気下で、超音波によって花の前記残留粉末を抽出する工程
iv. 酸素を含まない雰囲気下で、前記抽出溶媒中に前記粉末を浸軟させる工程
v. ツバキの花の前記水アルコール抽出物を清澄化する工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程i.、工程ii.、工程iii.、及び工程iv.が、窒素雰囲気下で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ヤブツバキの花の前記粉末が、-20℃から-80℃の間の温度で粉砕することによって得られる分散性製品の形態である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程iが、脂肪物質又は脂肪物質の混合物を用いて、前記脂肪物質の融点又は前記混合物の融点を超える温度で、酸素を含まない雰囲気下で実行される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ツバキの花の前記粉末が、品種ヤブツバキアルバ・プレナに由来する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程i.で使用される前記1種又は複数の脂肪物質が、室温で液体である植物油、25℃から40℃の間の融点を有する植物バター、又は40℃を超える融点を有する植物ワックスであり、前記脂肪物質が、ツバキ油、ナタネ油、ヒマワリ油、オリーブ油、ゴマ油、杏仁油、ブドウ種子油、甘扁桃油、サフラワー油、ヘーゼルナッツ油、アルガン油、マスカットローズ油、月見草油、ルリジサ油、液体ホホバワックス、及びその混合物の中から選択される油である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程ii.で使用される前記抽出溶媒が、ポリオール及び水の混合物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程ii.で使用される前記抽出溶媒のアルコール:水の体積比が、95/5から50/50の間である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
超音波支援抽出の工程iii.が、15分から60分の間の時間長で、100kHz未満のキャビテーション周波数で実行される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記清澄化する工程v.が、濾過によって、2つの段階:
5ミクロン未満の孔を有する濾布での、第1の遠心微細濾過、次いで
1ミクロン未満の孔を有する濾過プレートでの、第2の清澄化微細濾過
で実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程i.、工程ii.、工程iii.、及び/又は工程iv.が、光、又はいかなる酸化放射線の不在下で行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
糖、カメリオシドA、及びカメリオシドBの混合物を主に含み、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法によって得られる、ヤブツバキの花の水アルコール抽出物。
【請求項13】
前記糖及び前記カメリオシドが、抽出物中に質量比およそ2:1で存在する、請求項12に記載の水アルコール抽出物。
【請求項14】
前記ツバキの花が品種ヤブツバキアルバ・プレナに由来する、請求項12又は13に記載の水アルコール抽出物。
【請求項15】
生理学的に許容できる媒体中に、請求項12から14のいずれか一項に記載のヤブツバキの花の、少なくとも1種の抽出物を含む、化粧用組成物。
【請求項16】
鎮静化活性成分としての、請求項12から14のいずれか一項に記載のヤブツバキの花の抽出物の非治療的化粧用使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、オイルベース抽出法によって前処理されたツバキの花の、水アルコール溶媒を用いた抽出によって得ることができることを特徴とする、ヤブツバキ(Camellia japonica)の花の抽出物、並びにヒトの肌の炎症を鎮静化し、及び/又は低減するための、化粧品における上記抽出物の使用である。
【背景技術】
【0002】
肌は、環境に対する、体の初めの保護バリアである。それ故に、肌は、不快な肌の反応、又は極めて強い、若しくはより重大な反応の場合では肌のかぶれ及び/若しくは炎症の現象をもたらし得る、多数の外部の攻撃を受ける。
【0003】
不快な肌の反応、又は肌のかぶれ反応及び/若しくは炎症反応は、特に化学製品、例えば洗浄剤との接触によって誘発されることがあり、又は機械的作用、例えば、シェービング、剥離、ピーリング、脱毛から生じることもある。それらは、温度、気候、紫外線放射、又は大気汚染の結果でもあり得る。
【0004】
化粧品分野で新規の鎮静化剤の必要性が常にある。皮膚科分野で肌のかぶれ反応及び/又は炎症反応を治療し、及び/又は低減することが可能な新規の作用剤の必要性も存在する。
【0005】
それ故に、本発明の目的は、特殊な方法によって得られる、鎮静化及び抗炎症性の化粧品特性を有する、ヤブツバキの新規の抽出物を提案することである。
【0006】
出願人は、既に、その国際的な出願の国際公開第2011/083110号において、肌の乾燥に有効に対処するための、ツバキの水アルコール抽出物の実現を提案した。確かに、その出願において、得られたツバキの水アルコール抽出物は、処理されたケラチノサイトで、HSP32 mRNAの発現を刺激し、HSP27タンパク質の発現を刺激し、PPAR-β/δタンパク質の発現を刺激することによって作用する。
【0007】
しかし、こうした抽出物は、正常なヒトのケラチノサイトの炎症関連経路に含まれる遺伝子では作用せず、肌の炎症を低減せず、鎮静化剤として作用しない。
【0008】
したがって、正常なヒトのケラチノサイトの炎症関連経路に含まれる遺伝子の発現を阻害することによって肌に対する抗炎症作用を有する、現在販売されているヤブツバキの花の抽出物について未確認の、新規の、肌への鎮静化特性を有するヤブツバキの花の水アルコール抽出物を調製する特定の方法を開発したことが、出願人の功績である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2011/083110号
【文献】国際公開第2016/016515号
【文献】国際公開第2010112760号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の1つの目的は、第1の態様によれば、ヤブツバキの花の水アルコール抽出物を調製する、特定の方法であって、以下の工程:
i. 脂肪物質又は脂肪物質の混合物に、上記脂肪物質の融点を超える温度で、酸素を含まない、又は酸素を本質的に含まない雰囲気下で、好ましくは油中で、ツバキの花の粉末を含浸させて、次いで分離して、ツバキの花の油性抽出物及びこうして抽出された花の残留粉末を得る工程
ii. 酸素を含まない、又は酸素を本質的に含まない雰囲気下で、アルコール及び水の混合物をベースとした抽出溶媒によって、工程i.で得られた花の残留粉末を含浸させる工程
iii. 酸素を含まない、又は酸素を本質的に含まない雰囲気下で、特に、低周波数の超音波によって、花の上記残留粉末を抽出する工程
iv. 酸素を含まない、又は酸素を本質的に含まない雰囲気下で、抽出溶媒中に固体残留分を浸軟させる工程
v. 例えば微細濾過によって、ツバキの花の水アルコール抽出物を清澄化する工程
を含む、方法である。
【0011】
本発明の別の目的は、第2の態様によれば、好ましくは上記の方法によって得られる、糖、カメリオシドA、及びカメリオシドBの混合物を主に含む、ヤブツバキの花の水アルコール抽出物である。
【0012】
本発明の別の目的は、第3の態様によれば、生理学的に許容できる媒体中のヤブツバキの花の、少なくとも1種のこうした抽出物を含む化粧用組成物である。
【0013】
本発明の最終の目的は、第4の態様によれば、鎮静化及び/又は抗炎症性の活性成分としての、ヤブツバキの花の上記抽出物の非治療的化粧用使用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ヤブツバキ
ツバキは、ヒマラヤ山脈から日本及びインドネシアまでの東アジア及び南アジアを起源とする、ツバキ科(Theaceae family)の顕花植物の属である。とりわけ、ツバキの花は、その抗菌性、抗酸化性、抗炎症性、収斂性、及び強壮性の特性が認識されている。その属に含有される種の数は、植物学者によって異なり、100から250種の間で変動する。特に、白色の花、特にアルバ・プレナ(Alba plena)品種、暗褐色から黒赤タイプの色の極めて暗い赤色であるヤブツバキの花、特にブラックマジック、黒椿、ブラックドミノ、崑崙黒、紺侘助、黒侘助、ムラサキノウエ、及びサーヴィクターデービス(Sir Victor Davis)の品種、並びに品種名がナイトライダー又はブラックオパールである、黒椿からの交配ツバキの花を挙げることができる。ブラックマジック品種及びナイトライダー品種は、フランスのヤブツバキの最も一般的な品種である。ツバキの花の色は、pH、及び土壌又は基質中に存在する金属及び半金属に応じて変わることができる。ツバキは、一般に2月中旬から4月までに開花する。しかし、ホルモン処理により早ければ10月に開花させることも可能である。
【0015】
本発明の抽出物は、ヤブツバキの花、好ましくは、特にアルバ・プレナ品種の白色の花から得られる。好ましくは、本発明で使用されるヤブツバキの花はフランスで栽培される。
【0016】
ヤブツバキの花は、好ましくは分散性粉末の形態である。分散性は、ツバキの花の粉末が、微細分散可能な、解離形態であること、例えば、原材料が、粒子形態、好ましくは粉末状であることを意味すると理解される。例えば、新鮮なツバキの花を、最初に茎から切り離し、次いで、開いて、乾燥ラックに平らに置く。次いで、それらを、暗所の室温で、又は35℃より低い温度での通風乾燥機でのいずれかの穏やかな条件下で脱水させる。花は、好ましくは、80%より多い、好ましくは85%より多い固形分が得られるまで乾燥させる。
【0017】
次いで、花は、従来当業者に公知のあらゆる粉砕法によって、例えば、室温で、切断ミルにおいて、又は好ましい一実施形態によれば、低温粉砕によって分散性粉末に変えられる。低温粉砕について、花は、好ましくは、密閉されたサーモスタット制御式筺体において-80℃まで冷却され、細かい、均斉のとれた粉末を得るように、-20℃から-80℃の間の温度で、プロペラ混合機で直ちに粉砕される。凍結保存により、有利なことに有効な粉砕を確実なものにし、均一な粉末を得、粉末の着色を制限し、花に含有される分子の鎮静化特性のより良好な保護を保証することが可能になる。
【0018】
好ましくは、本発明の抽出物を調製するのに使用されるヤブツバキの花の分散性粉末は、500μm未満、好ましくは300μm未満の平均粒径を有する。ヤブツバキの花の粉末は、優しい花の香り及び乳白色から赤茶色の範囲の色を有する。
【0019】
ヤブツバキの花の水アルコール抽出物を調製する方法
本発明の本質的な特徴によれば、ツバキ抽出物を調製する方法の工程i.、工程ii.、工程iii.、及び工程iv.は、酸素を含まない、又は酸素を本質的に含まない雰囲気中で実行される。これは、不活性ガス下、若しくは不活性雰囲気下、又は真空下、若しくは部分真空下での作業を意味する。残留酸素含量は、加熱処理の温度に影響を受け易い酸化反応を引き起こさないように十分に低くあらねばならない。それ故に、これらの工程は、不活性雰囲気下、例えば窒素下、好ましくは持続的な窒素スイーピング(constant nitrogen sweeping)を用いて実行することができ、存在する酸素又は生成可能な酸素の抽出を可能にする。窒素流を介した、連続的な酸素抽出を備えた密閉反応器を用いることができる。加熱処理の少なくとも開始時に窒素流と組み合わせて、窒素スパージングを実行することもできる。これらの工程は、真空下で実行することもできる。このように進めることにより、追加の利点、すなわち、混合物での部分的な脱臭効果を伴う揮発性物質のエントレインメントが与えられる。
【0020】
好ましい一実施形態によれば、工程i.、工程ii.、工程iii.、及び/又は工程iv.は、密閉反応器で、光、又はいかなる酸化放射線の不在下で、例えばUVの不在下で行われる。
【0021】
工程i.脂肪物質によるツバキの花の含浸
本発明の1つの目的は、ツバキの花の水アルコール抽出物を調製する方法であって、脂肪物質又は脂肪物質の混合物に、上記脂肪物質の融点を超える温度で、酸素を含まない、又は酸素を本質的に含まない雰囲気下で、好ましくは油中で、ツバキの花の粉末を含浸させて、次いで分離して、ツバキの花の油性抽出物及びこうして抽出された花からの固体残留分を得る第1の工程i.を含む、方法である。
【0022】
ツバキの油性抽出物の調製を可能にし、ツバキの花の残留粉末(副産物)を得ることをもたらす方法は、例えば、出願国際公開第2016/016515号に詳細に記載されている。
【0023】
特に、抽出溶媒として使用される脂肪物質は、優先的には、植物起源のものであり、室温(20~25℃)で液体である植物油、25℃から40℃の間の融点を有する植物バター、又は40℃を超える融点を有する植物ワックスであってもよい。好ましい一実施形態によれば、抽出溶媒として使用される脂肪物質は、室温より低い温度で液体であり、特に、およそ20℃の温度で液体である植物油である。
【0024】
本発明の抽出物を得るために使用され得る油の例として、ツバキ油、ナタネ油、ヒマワリ油、オリーブ油、ゴマ油、杏仁油、ブドウ種子油、甘扁桃油、サフラワー油、ヘーゼルナッツ油、アルガン油、マスカットローズ油、月見草油、ルリジサ油、液体ホホバワックス、及びその混合物を挙げることができる。好ましくは、オメガ-6多価不飽和脂肪酸の源であり、膜流動性及び肌の水和で積極的な役割を果たし得る油が選択されることになる。
【0025】
工程i.は、使用される脂肪物質又は脂肪物質の混合物の融点以上の温度で実行される。特に、温度は、有利なことに、この融点から融点+20℃の間、好ましくは融点+10℃の間である。室温(20~25℃)は、脂肪物質、例えば、この温度で液体である油に完全に好適である。工程i.の時間長は、1時間から48時間の間、好ましくは5時間から40時間の間、より好ましくは12時間から36時間の間、更により好ましくは20時間から30時間の間であることができ、特に好ましい一実施形態によれば、含浸させる工程i.の時間長は、およそ24時間である。
【0026】
工程i.は、酸素を含まない、又は酸素を本質的に含まない雰囲気下で、好ましくは窒素で飽和させた雰囲気下で実行される。
【0027】
脂肪物質によるツバキの花の粉末の含浸を可能にする方法は、脂肪物質中に、酸素を含まない、又は酸素を本質的に含まない雰囲気中で、上記物質の融点を超える温度で、ツバキの花の粉末を微粒分散させる工程i.2.を含むこともできる。
【0028】
この工程i.2.は、超音波キャビテーションにより混合物を処理することによって実行することができる。超音波下でのキャビテーション及び分散は、好ましくは、特に100kHz未満、好ましくはおよそ20~30kHzの、キャビテーション用の低周波数超音波発生器を備えた密閉反応器で実行される。
【0029】
工程i.2.の超音波処理の時間長は、特に2分から30分の間、好ましくは10分から20分の間である。
【0030】
工程i.2.は、有利なことに、室温で、又は使用される1種又は複数の脂肪物質の融点を超える温度で実行される。温度は、有利なことに、この融点から融点+20℃の間、好ましくは融点+10℃の間である。室温(20~25℃)は、この温度で液体である油に理想的である。
【0031】
本発明のツバキの花抽出物を得る方法は、酸素を含まない、又は酸素を本質的に含まない雰囲気下で、80℃から180℃の間の温度で、1分から10分の間の時間、上記ツバキの花の粉末の、工程i.又は工程i.2.で得られた混合物を、上記1種又は複数の脂肪物質と共に加熱する工程i.3.も含むこともできる。
【0032】
好ましい一実施形態において、工程i.3.の温度は、80℃から150℃の間、好ましくは90℃から130℃の間である。
【0033】
加熱する工程i.3.は、1~10分、好ましくは1~5分、より好ましくは1~3分の範囲の極めて短い時間長で実行され、この時間長は、処理温度に到達したとき、この温度が維持される時間に対応する。温度上昇時間もまた極めて短く、特に5分以下、好ましくは1~5分、より好ましくは1~3分である。
【0034】
急速な熱的加熱のあらゆる装置を使用することができ、好ましい一実施形態において、熱的処理は、マイクロ波によって行われる。密閉反応器内でのマイクロ波源の使用により、極めて短い時間で所望の温度に到達することが可能になる。高温加熱はまた、使用される脂肪物質の可溶化能を増大させ、ツバキの花の粉末と上記脂肪物質との間の接触を促進することを可能にし、故に抽出収率を上げる。好ましい一実施形態によれば、工程i.3.の加熱で使用されるマイクロ波発生器は、混合物1キログラム当たり500~10000ワット、好ましくは混合物1キログラム当たりおよそ700~1500ワット、より好ましくは混合物1キログラム当たりおよそ1000ワットの範囲の出力を有する。
【0035】
特定の一実施形態によれば、脱酸素剤又は酸素還元化合物は、工程i.3.中、又はその直前に添加される。故に、純粋アスコルビン酸、塩の形態のビタミンC、例えばアスコルビン酸ナトリウム若しくはパルミチン酸アスコルビル、遊離形態若しくはエステルのクエン酸若しくは乳酸、又はレシチン、又はこれらの化合物の組み合わせを添加することが可能である。個々の量0.01~1重量%を混合物に添加することになり、好ましくは0.1~0.5重量%を混合物に添加することになる。
【0036】
工程i.、工程i.2.、及び/又は工程i.3.は、有利なことに、光、又はいかなる酸化放射線の不在下で、例えばUVの不在下で実行されて、感光性分子の光酸化及び分解のリスクを制限する。
【0037】
工程i.、工程i.2.、及び/又は工程i.3.は、密閉反応器で、混合物の撹拌の有無にかかわらず、好ましくは撹拌しながら実行することができる。
【0038】
一実施形態によれば、方法は、工程i.、工程i.2.、及び/又は工程i.3.を組み合わせたシーケンスで構成され、工程i.2.及び工程i.3の順序は重要ではなく、それぞれの工程が少なくともそれぞれ一度実行される。
【0039】
工程i.を仕上げるために、油性抽出物及びヤブツバキの花の残留粉末の分離の、1種又は複数の工程i.4が実施される。これらの分離法は、例えば、濾過、デカンテーション、遠心分離、スピン乾燥、又はこれらの技術の組み合わせの中から選択することができる。好ましくは、分離は、遠心分離又は濾過によって実行される。この分離工程は、40℃から60℃の間の温度で、10μm未満、好ましくは5μm以下の孔を有する濾布を取り付けた遠心分離機で、500rpmから2500rpmの間、好ましくは1000rpmから1500rpmの間の速度で実行することができる。
【0040】
1種又は複数の分離工程は、ヤブツバキの花の残留粉末からの油性抽出物を分離することを可能にし、同時に視覚的に清澄な、懸濁液中に微粒子を含まない油性抽出物を得ることを可能にする。
【0041】
工程i.、工程i.2.、工程i.3.、及び/又は工程i.4.の終点で、故に、事前にオイルベース抽出法を施された、ツバキの花の油性抽出物及びツバキの花の残留粉末が得られる。
【0042】
本発明の方法において使用される、この花の残留粉末は、茶色の均一な外観の、液体中で容易に分散する、脂肪質植物ベースケーク、又は濾過ケークの形態である。
【0043】
工程ii.ツバキの花の残留粉末の含浸
工程i.の終点で、本発明の方法は、酸素を含まない、又は酸素を本質的に含まない雰囲気下で、アルコール及び水の混合物をベースとした抽出溶媒によって、工程i.で得られた花の残留粉末(ケーク)を含浸させる工程ii.を実施する。
【0044】
ツバキの花の残留粉末の含浸は、水と混合した、少なくとも1種のモノアルコール、例えば、エタノール、メタノール、若しくはイソプロパノール、及び/又は少なくとも1種のグリコール、例えば、プロピレングリコール(プロパンジオール)若しくはジプロピレングリコールを使用した、アルコール抽出によって実行することができる。
【0045】
抽出は、水及びアルコール以外の、いかなる溶媒もない状態で実行される。
【0046】
工程ii.で使用される溶媒は、好ましくはポリオール及び水の混合物、より好ましくはプロパンジオール及び水の混合物である。
【0047】
好ましい一実施形態によれば、工程ii.で使用される抽出溶媒の、アルコール:水の体積比は、95%/5%から50%/50%の間、好ましくは90%/10%から70%/30%の間、より好ましくは85%/15%から75%/25%の間である。
【0048】
含浸は、一般に、室温、すなわち20℃から25℃の間、およそ15分~2時間、好ましくは30分~1時間の時間で、前述された溶媒の1種又は複数において、ツバキの花の残留粉末を分散させることによって、又は穏やかに撹拌することによって実行される。
【0049】
溶媒/材料の(体積/重量)比は、例えば、1:1から20:1の間、好ましくは5:1から10:1の間であってもよい。
【0050】
この分散及び混合の工程は、植物抽出物の分野で一般的であり、当業者は、その一般的な知見に基づいて、パラメーターを調節し、撹拌及び分散のツールを選択することができる。
【0051】
工程iii.花の残留粉末の超音波支援抽出
次いで、本発明の方法は、酸素を含まない、又は酸素を本質的に含まない雰囲気下で、超音波キャビテーションによって花の残留粉末を抽出する工程を実施する。
【0052】
この工程iii.は、抽出溶媒中の、ツバキの花の残留粉末の均一な微粒分散を可能にするだけでなく、上記花の植物細胞を破裂させることができ、これらの細胞に含有された分子を放出する。超音波下でのキャビテーション及び分散は、好ましくは、特に100kHz未満、好ましくはおよそ20~30kHzの、キャビテーション用の低周波数超音波発生器を備えた密閉反応器で実行される。
【0053】
超音波処理の時間長は、特に15分から60分の間、好ましくは30分から40分の間である。
【0054】
工程iii.は、有利なことに、酸素を含まない、又は酸素を本質的に含まない雰囲気下で、室温(20℃から25℃の間)で実行される。
【0055】
工程iv.ツバキの花の残留粉末の浸軟
超音波支援抽出が実行されたとき、本発明の方法は、抽出溶媒中に花の残留粉末を浸軟させる工程iv.を実施し、それにより、抽出された分子を水アルコール溶媒中に拡散させることができる。
【0056】
この工程は、花の粉末及び抽出溶媒の混合物を30分から3時間の間、好ましくは1時間から2時間の間の時間、放置しておく工程で構成される。
【0057】
工程iv.は、有利なことに、室温(20℃から25℃の間)で、酸素を含まない、又は酸素を本質的に含まない雰囲気下で実行される。
【0058】
工程v.水アルコール抽出物の清澄化
仕上げるために、本発明の方法は、水アルコール抽出物の清澄化の、1種又は複数の工程を含む。
【0059】
清澄化は、当業者に公知の全ての機械的分離を意味すると理解される。
【0060】
それらは、例えば、濾過、デカンテーション、遠心分離、スピン乾燥、又はこれらの技術の組み合わせの中から選択することができる。
【0061】
好ましくは、分離は、濾過によって、より好ましくは微細濾過によって、2つの段階:
- 5ミクロン未満、好ましくは1ミクロン以下の孔を有する濾布での、スピニングと称される、第1の遠心微細濾過、次いで、
- 1ミクロン未満、好ましくは0.2ミクロン以下の孔を有する濾過プレートでの、第2の清澄化微細濾過
で実行される。
【0062】
遠心微細濾過は、遠心分離及び濾過の同時使用を意味すると理解される。混合物を、液相が通り抜ける濾布を取り付けたステンレス鋼ボールに置き、故に固相がバスケット内に留まりながら清澄化される。この操作は、20℃から25℃の間の温度で、5μm未満、好ましくは1μm以下の孔を有する濾布を取り付けた遠心分離機で、500rpmから2500rpmの間、好ましくは1000rpmから1500rpmの間の速度で実行することができる。
【0063】
清澄化微細濾過は、液体中の懸濁液に存在する極めて細かい粒子の分離を確実にするための、1ミクロン以下の孔を有する、不活性材料で作製されたプレートの使用を意味すると理解される。プレートの孔が0.2ミクロン以下である場合、濾過により、液体中に存在する微生物も取り除かれ、濾過は殺菌であると言われる。この操作は、20℃から25℃の間の温度で、0.2μmの孔を有する濾過プレートを取り付けた濾板で実行することができる。液体は、ポンプによって、又は窒素による陽圧の生成によって進めることができる。
【0064】
清澄化工程により、見た目に実質的に清澄な、懸濁した微粒子を含まない、水アルコール抽出物を得ることが可能になる。
【0065】
ヤブツバキの花の水アルコール抽出物
本出願の目的である本発明はまた、糖、カメリオシドA、及びカメリオシドBの混合物を主に含むツバキの花の水アルコール抽出物にも及ぶ。
【0066】
【化1】
【0067】
抽出物中に存在する糖は、好ましくは、グルコース、フラクトース、及びその混合物、好ましくはグルコースとフラクトースとの混合物の中から選択される。
【0068】
本発明の目的である、ヤブツバキの花の水アルコール抽出物は、抽出物中に、糖及びカメリオシドを質量比およそ2:1で含む。
【0069】
本発明の目的である、ヤブツバキの花の水アルコール抽出物は、特に、上記の方法によって得ることができる。
【0070】
ヤブツバキの花の抽出物は、本発明に従って、非治療的化粧用用途のために、肌への鎮静化及び/又は抗炎症性の効果のために使用される。
【0071】
本発明の抽出物の鎮静化及び/又は抗炎症性の効果は、当業者に周知の通常の技術に従った、正常なヒトのケラチノサイトの炎症関連経路に含まれる遺伝子の発現の低減によって、特に認めることができる。
【0072】
正常なヒトのケラチノサイトの炎症関連経路に含まれる遺伝子には、B2M(ベータ-2-ミクログロブリン)、HLA-B(主要組織適合性複合体、クラスI、B)、IL1A(インターロイキン1アルファ)、SERPINE1(セルピンファミリーEメンバー1)、ACVR1B(アクチビンA受容体タイプ1B)、CEBPB(CCAATエンハンサー結合タンパク質ベータ)、TNF(腫瘍壊死因子)、及びHLA-DQB1(主要組織適合性複合体、クラスII、DQベータ1)が挙げられる。
【0073】
化粧用組成物
本発明のさらなる目的は、生理学的に許容できる媒体中に、少なくとも1種のヤブツバキの花抽出物を含む化粧用組成物である。
【0074】
好ましくは、ヤブツバキの花抽出物を含有する、本発明の組成物は、炎症を起こした、好ましくは非病的な肌に塗布される。それは、有利なことに、顔、首、手、場合により胸郭上部の肌に、或いは体のいずれの部分にも塗布することができる。この抽出物を含有する組成物は、顔、首、手、場合により胸郭上部、更には体の全体に、朝及び/又は晩に塗布することができる。
【0075】
本発明で使用される組成物は、一般的に、上記の抽出物に加えて、生理学的に許容できる、好ましくは化粧用に許容できる媒体を含み、毒性、不適合性、不安定性、又はアレルギー応答のリスクなしで、ヒトの肌との接触に使用するのに好適なものであり、特に、不快症状(赤み、こわばり、ヒリヒリ感)の感覚を引き起こさないものであることを意味する。
【0076】
有利なことに、上記の化粧用又は皮膚科用の組成物は、粉末、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、懸濁液、溶液、ローション、クリーム、水ゲル若しくは水アルコールゲル、フォーム、セラム、エアロゾル用の溶液若しくは分散体、又は脂質小胞の分散体の形態であってもよい。
【0077】
エマルジョンの場合、それは、油中水又は水中油のエマルジョンであってもよい。
【0078】
本発明の化粧用又は皮膚科用の組成物は、様々な成分及び投与の形態に従って選択された溶媒も含むことができる。
【0079】
例には、水(好ましくは脱塩水若しくはフローラルウォーター)、又はアルコール、例えばエタノールが挙げられる。
【0080】
上記化粧用組成物はまた、本発明の抽出物に加えて以下を含むこともできる:
- 分野で一般的な、少なくとも1種の添加剤、例えば、エモリエント又は保湿剤、ゲル化剤及び/又は増粘剤、界面活性剤、油、活性剤、着色剤、防腐剤、酸化防止剤、活性剤、有機粉末又は無機粉末、日焼け止め剤、及びフレグランスの中から選択される、少なくとも1種の化合物
- 1種又は複数の保湿剤、例えば、ポリオール(グリセリン、ジグリセリン、プロパンジオール、カプリリルグリコール、ペンチレングリコール、ヘキサンジオール)、糖、グリコサミノグリカン、例えばヒアルロン酸及びその塩及びエステル、並びにポリクオタニウム、例えばLipidure-PMB。上記保湿剤は、組成物中に、組成物の全重量に対して、およそ0~30%、好ましくは0.005~10%の含量で存在することになる。
- 例えば、エステル、例えば、ホホバエステル、脂肪酸のエステル及び脂肪族アルコールのエステル(ミリスチン酸オクチルドデシル、トリエチルヘキサノイン、炭酸ジカプリリル、イソステアリン酸イソステアリル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル)、バター、例えば、シアバター(LIPEX SHEASOFT、LIPEX SHEA-U、LIPEX SHEA、LIPEX SHEALIGHT、LIPEX SHEA TRISの名称で販売されている、シア(butyrospernum parkii)バター抽出物、シアバターエチルエステル)又はモリンガバター(モリンガ油/硬化モリンガ油エステル)、ワックス(フサアカシア花ワックス及びヒマワリ種子ワックス(helianthus annuus seed cera seed wax)、C10~18トリグリセリド)、植物油、フィトスクアラン(phytosqualane)、アルカン(ウンデカン、トリデカン)の中から選択され得る、1種又は複数の皮膚軟化剤。上記皮膚軟化剤は、組成物中に、組成物の全重量に対して、およそ0.1~30%、好ましくは0.5~10%の含量で存在することになる。
- 例えば、セルロース誘導体、植物起源のガム(グアー、イナゴマメ、アルギン酸塩、カラギーナン、ペクチン)、微生物起源のガム(キサンタン)、クレイ(ラポナイト)、架橋又は非架橋の、親水性又は両親媒性の、ホモポリマー及びコポリマーである、アクリロイル-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)及び/又はアクリルアミド及び/又はアクリル酸及び/又はアクリル酸の塩若しくはエステル(ARISTOFLEX AVC、Aristoflex AVS、Aristoflex HMB、SIMULGEL NS、Simulgel EG、Simulgel 600、Simulgel 800、Pemulen、carbopol、Sepiplus 400、Seppimax zen、Sepiplus S、COSMEDIA SPの名称で販売されている)の中から選択される、水性相のための、1種又は複数のゲル化剤及び/又は増粘剤。上記ゲル化剤及び/又は増粘剤は、組成物中に、組成物の全重量に対して、およそ0.1~10%の含量で存在することになる。
- 1種又は複数の界面活性剤、例えば、レシチン、ポリグリセロール誘導体、糖誘導体(MONTANOV 68、MONTANOV 202、Montanov 82、MONTANOV L、EASYNOVの名称で販売されている、グルコシド又はキシロシドの誘導体)、リン酸塩(SENSANOV WRの名称で販売されているC20~22リン酸アルキル)。上記界面活性剤は、組成物の全重量に対して、およそ0.1~8重量%、好ましくは0.5~3重量%の含量で存在することになる。
- 例えば、ビタミン、例えば、ビタミンC及びその誘導体(アスコルビルグルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸、テトライソパルミチン酸アスコルビル)、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンB3、又はナイアシンアミド、パンテノール、微量元素、アラントイン、アデノシン、ペプチド(NP RIGIN、MATRIXYL 3000、IDEALIFT、EYESERYLの名称で販売されている、パルミトイルテトラペプチド-7、パルミトイルトリペプチド-1、パルミトイルペンタペプチド-4、アセチルジペプチド-1セチルエステル、アセチルテトラペプチド-5)、植物抽出物(スペインカンゾウ(glycyrrhiza glabra)抽出物、ツボクサ(centella asiatica)葉抽出物、ライムギ(secale cereale)種子抽出物)、酵母抽出物、アルファヒドロキシ酸、例えばグリコール酸又は乳酸、トラネキサム酸及びその誘導体、例えば、セチルトラネキサムエステル等の中から選択される、生物学的活性を有し、生物学的部位を介して、肌での有効性を有する、天然起源、バイオテクノロジー起源、又は合成起源の、1種又は複数の活性剤。上記活性剤は、組成物中に、組成物の全重量に対して、およそ0.1~10%の含量で存在することになる。
【0081】
化粧品で通常使用される、他の添加剤、特に、技術分野で周知の防腐剤、酸化防止剤、又はフレグランスも本発明の組成物中に存在し得る。
【0082】
当業者は、これらの可能な添加剤の全ての中から、組成物がその特性の全てを保持するように、組成物中に添加される添加剤の種類及び量を選択することができる。
【0083】
本発明の別の目的は、ヒトの肌において鎮静化及び/又は炎症の低減のための、上記のヤブツバキの花抽出物又は上記の化粧用組成物の化粧用使用である。
【0084】
本実施形態において、抽出物又は組成物は、非病的な炎症を起こした肌に塗布される。
【0085】
本発明は、以下の非限定的な例によって説明されることになる。
【実施例1】
【0086】
本発明に従った、ヤブツバキアルバ・プレナの水アルコール抽出物の調製
工程i.
発明者らは、初めに、出願国際公開第2010112760号の実施例1に記載された条件の下、ツバキの花のオイルベース抽出法を実行した。
【0087】
工程ii.
工程i.の終点で得られた花の残留粉末を、質量比1:8で、プロパンジオール80%及び分析等級の水20%で構成される混合物中に混合する。混合は、プロペラ撹拌機を備えたステンレス鋼反応器で実行される。窒素流下で撹拌しながら、粉末を、密閉反応器で、室温で45分間、抽出混合物中に分散させる。
【0088】
工程iii.
次いで、窒素流下の密閉反応器で、混合物に超音波キャビテーションを25kHzで30分間施す。
【0089】
工程iv.
次いで、窒素流下の密閉反応器で、混合物を撹拌せずに室温で2時間放置する。
【0090】
工程v.
浸軟工程iv.の後、混合物を、1ミクロンの孔を有する濾布でスピンさせる。次いで、水アルコール抽出物を、0.2ミクロンの孔を有するプレートを備えた濾板で濾過する。スピニング微細濾過及びプレート微細濾過を室温で実行する。
【0091】
最終の水アルコール抽出物は、清澄な、均一な、橙黄色の流体であり、花のフレグランスを有する。それは、使用されるまで低温で保存されるべきである。
【実施例2】
【0092】
実施例1で得られたツバキ抽出物で処理された、正常なヒトのケラチノサイトの炎症関連経路の阻害
手順:3人の異なるドナーからの、正常なヒトの表皮ケラチノサイトを、24-ウェルプレートに植え付け、ケラチノサイト-SFM(k-SFM)添加培地において、37℃及びCO25%で48時間培養した。次いで、細胞を、実施例1で調製されたツバキ抽出物0.1%のある場合、又はない場合(未処理条件)で48時間インキュベートした。それぞれの条件を2回実行した。全RNAは、TriPure Isolation Reagent(登録商標)を使用して、供給元によって推薦された手順に従って抽出された。相補的なDNAを合成し、トランスクリプトームをAffymetrix GeneChip Human Transcriptome Array2.0チップで構築した。遺伝子の発現が少なくとも2の因子で調節された、遺伝子のバイオインフォマティクス解析をIngenuityパスウェイ解析ソフトウェア(IPA(登録商標)、QIAGEN社)を用いて実行した。このソフトウェアは、Ingenuity Knowledgeデータベースにおいて、分子対分子相互作用(molecule-to-molecule interaction)、生物学的ネットワーク、及び正準パスウェイについての情報を集める。
【0093】
結果:本発明の水アルコールツバキ抽出物によって有意に阻害される細胞機能は、主に、炎症性免疫応答に含まれる経路である。これらの様々な経路に含まれる遺伝子、及び本発明の水アルコールツバキ抽出物による、それら遺伝子の阻害レベル対未処理の対照(発現レベル>2)をTable I(表1)に報告する。
【0094】
【表1】
【0095】
解析は、カットオフ2を有するIPAで実施した:発現レベル<-2又は発現レベル>2を有する全ての標的を解析で考慮し、有効に、有意に調節されると考える。
【0096】
HLA-Bは主要組織適合性複合体の一部であり、B2Mは、この複合体に関連すると知られており、制御にも寄与する。
【0097】
ケラチノサイトは、炎症誘発性サイトカン、例えばTNF-α及びIL-1αの分泌を介して、炎症応答の開始に寄与する。ケラチノサイトはまた、肌の免疫の役割も担う。確かに、ケラチノサイトは、エフェクター免疫細胞に対して抗原を提示することに含まれる主な組織適合性分子(B2M、HLA-B、HLA-DQB1等)を発現する。他方で、肌が受ける加齢及び様々なストレスで、一部の細胞は、炎症性肌環境を生じる、ストレスメッセンジャー(例えば、炎症誘発性インターロイキンIL-1α、遺伝子SERPINE1、CEPBβ等とコードされるプラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1))を分泌することが可能になる。
【0098】
肌の炎症に含まれる様々な遺伝子の発現を阻害する、その能力によって、本発明の白色ツバキの水アルコール抽出物は、鎮静化化粧品の可能性を有する。
【実施例3】
【0099】
化粧用組成物
以下の組成物は、当業者にとって従来の方法で調製することができる。以下に示す量は、重量パーセントで表される。成分は、そのINCI名称によって識別される。
【0100】
A - 油/水ゲルエマルジョン
【0101】
【表2A】
【0102】
【表2B】
【0103】
B - 油/水クリームエマルジョン
【0104】
【表3A】
【0105】
【表3B】
【0106】
これらの組成物は、肌に毎日、朝及び/又は晩に塗布することができる。