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特許7181438病理学的タウ種に結合する抗体及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】病理学的タウ種に結合する抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20221122BHJP
   C07K 1/13 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221122BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221122BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221122BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20221122BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20221122BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20221122BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
C07K16/18
C07K1/13
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P25/00
A61P25/28
A61P21/02
A61P25/14
A61P25/16
C12N15/13 ZNA
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022506054
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-23
(86)【国際出願番号】 IB2020057415
(87)【国際公開番号】W WO2021024209
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】62/883,605
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521525697
【氏名又は名称】アプリノイア セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ミン-クエイ
(72)【発明者】
【氏名】タイ,チン-イン
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/110571(WO,A1)
【文献】特開2018-139530(JP,A)
【文献】国際公開第2018/010073(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された抗タウ抗体又はその抗原結合性部分であって、
a)i)配列番号59のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1;ii)配列番号70のアミノ酸配列を含むCDR2;及びiii)配列番号81のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域;並びに
b)iv)配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR1;v)配列番号93のアミノ酸配列を含むCDR2;及びvi)配列番号105のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、抗体又は抗原結合性部分。
【請求項2】
重鎖可変領域が、配列番号106のアミノ酸配列又は配列番号106に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体又は抗原結合性部分。
【請求項3】
軽鎖可変領域が、配列番号107のアミノ酸配列又は配列番号107に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体又は抗原結合性部分。
【請求項4】
重鎖可変領域が、配列番号106のアミノ酸配列又は配列番号106に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変領域が、配列番号107のアミノ酸配列又は配列番号107に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体又は抗原結合性部分。
【請求項5】
重鎖可変領域が、配列番号106のアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変領域が、配列番号107のアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の抗体又は抗原結合性部分。
【請求項6】
重鎖可変領域が、配列番号12のアミノ酸配列又は配列番号12に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変領域が、配列番号24のアミノ酸配列又は配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体又は抗原結合性部分。
【請求項7】
単離された抗タウ抗体又はその抗原結合性部分であって、
a)i)配列番号50のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1;ii)配列番号61のアミノ酸配列を含むCDR2;及びiii)配列番号72のアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域;並びに
b)iv)配列番号83のアミノ酸配列を含むCDR1;v)配列番号91のアミノ酸配列を含むCDR2;及びvi)配列番号97のアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、抗体又は抗原結合性部分。
【請求項8】
重鎖可変領域が、配列番号3のアミノ酸配列又は配列番号3に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の抗体又は抗原結合性部分。
【請求項9】
軽鎖可変領域が、配列番号15のアミノ酸配列又は配列番号15に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の抗体又は抗原結合性部分。
【請求項10】
重鎖可変領域が、配列番号3のアミノ酸配列又は配列番号3に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変領域が、配列番号15のアミノ酸配列又は配列番号15に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の抗体又は抗原結合性部分。
【請求項11】
重鎖可変領域が、配列番号3のアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変領域が、配列番号15のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の抗体又は抗原結合性部分。
【請求項12】
重鎖可変領域が、配列番号2のアミノ酸配列又は配列番号2に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変領域が、配列番号14のアミノ酸配列又は配列番号14に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の抗体又は抗原結合性部分。
【請求項13】
モノクローナル抗体である、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性部分。
【請求項14】
正常なヒトタウ種と比べて病理学的ヒトタウ種に優先的に結合する、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性部分。
【請求項15】
病理学的ヒトタウ種が、
タウオパチー脳からのものであるか、
タウ凝集物、又は異常にリン酸化されたタウ、又は両方であるか、
脳のシナプスに蓄積した、タウ凝集物、又は異常にリン酸化されたもの、又は両方であるか、又は
タウオパチー脳のシナプスに蓄積した、タウ凝集物、又は異常にリン酸化されたもの、又は両方である、請求項14に記載の抗体又は抗原結合性部分。
【請求項16】
ヒト2N4Rタウアイソフォームのアミノ酸残基R230、T231、S237、T245、K281、及びS289に結合する、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性部分。
【請求項17】
ヒト2N4Rタウアイソフォームのアミノ酸残基S131、K132、T135、S137、及びR155に結合する、請求項7~12のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性部分。
【請求項18】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性部分及び検出可能な標識を含む、標識された抗体。
【請求項19】
請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性部分及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月6日に出願された米国仮出願第62/883,605号に対する優先権を主張し、該仮出願は全体が全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、056239_501001WO_ST25.txtという名称のASCIIテキストファイルとしてコンピュータ読取り可能な形態の配列表を含有し、該ファイルは55,716バイトのサイズであり、2020年8月1日に作成され、本出願と共にePCTを介して電子的に提出される。配列表は、参照により全体が本明細書に組み込まれ、本開示の部分を形成する。
【0003】
本開示は、一般に、病理学的タウ種に結合する抗体に関し、これには、該抗体に関する組成物及び方法、例えばタウの病理学的凝集と関連付けられる神経変性疾患を治療するための組成物及び方法が含まれる。
【背景技術】
【0004】
神経変性疾患は各年に5000万人の米国人に影響していると概算され、医療費における計り知れない個人的料金及び数千億ドルもの年間経済コスト並びに生産性の損失を要求している。タウオパチーは、ヒト脳におけるタウタンパク質の病理学的凝集と関連付けられる神経変性疾患のクラスであり、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病(HD)、パーキンソン病(PD)、ピック病(PiD)、及び進行性核上麻痺(PSP)を含む。タウオパチーにおいて、タウの凝集はプリオン様の方式で脳を通じて拡大し、これは例えばAD脳において見られるようなものであり(Braak, H., & Braak, E. V. A. (1995). Neurobiology of aging、16(3)、271~278頁; Braak, H.ら(2006). Acta neuropathologica、112(4)、389~404頁)、AD脳では、タウ病理は一貫した時空間的パターンで現れる。タウは、通常、高度に可溶性の細胞質タンパク質であるが、アルツハイマー病において、タウは異常にリン酸化され、シナプスに蓄積してシナプス毒性を発揮する。主に短い原線維からなるタウ繁殖シード(Tau propagation seeds)が、大規模な細胞タウ病理を欠いた脳領域のシナプス画分中で有意に富化されていることが見出されており、タウシードは、シナプス接続されたニューロンネットワークに沿ってヒト脳を通じて拡大することができることを指し示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
凝集したタウ種の除去を目的とする多くの治療アプローチが研究されてきた又は現在研究されているが、そのような神経変性疾患の進行を停止させ、予防し、又は逆転させるための有効な治療は現在存在しない。したがって、これらの神経変性疾患の進行を緩慢化させること及び/又はそれらが発症するのを予防することができる医薬剤に対する緊急の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このセクションは本開示の一般的要約を提供し、その全範囲もその特徴の全ても包括するものではない。本出願は、抗タウ抗体又はその抗原結合性部分(例えば、単離された抗タウ抗体又はその抗原結合性部分)を提供する。理論に縛られるものではないが、一部の実施形態において、抗タウ抗体又はその抗原結合性部分は、ヒトタウオパチー障害においてより豊富に存在するタウ凝集物に選択的に結合することができる。一部の実施形態において、抗タウ抗体又はその抗原結合性部分は、タウシード形成及び/又はタウ凝集物を阻害することができ、そのためそのようなヒトタウオパチーの開始及び/又は拡大を予防することができる。
【0007】
1つの態様において、抗タウ抗体又はその抗原結合性部分(例えば、単離された抗タウ抗体又はその抗原結合性部分)であって、a)i)配列番号49~59のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号49~59のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む相補性決定領域(CDR)1;ii)配列番号60~70のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号60~70のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR2;及び/若しくはiii)配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR3を含む重鎖可変領域;並びに/又はb)iv)配列番号82~90のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号82~90のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR1;v)配列番号91~95のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号91~95のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR2;及び/若しくはvi)配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、抗タウ抗体又はその抗原結合性部分(例えば、単離された抗タウ抗体又はその抗原結合性部分)が本明細書において提供される。
【0008】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、1)重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号50、61、及び72のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号50、61、及び72のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号83、91、及び97のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号83、91、及び97のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;2)重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号49、60、及び71のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号49、60、及び71のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号82、91、及び96のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号82、91、及び96のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;3)重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号51、62、及び73のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号51、62、及び73のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号84、91、及び98のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号84、91、及び98のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;4)重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号52、63、及び74のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号52、63、及び74のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号85、92、及び99のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号85、92、及び99のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;5)重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号53、64、及び75
のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号53、64、及び75のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号86、93、及び100のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号86、93、及び100のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;6)重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号54、65、及び76のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号54、65、及び76のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号87、93、及び101のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号87、93、及び101のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;7)重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号55、66、及び77のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号55、66、及び77のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号83、91、及び102のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号83、91、及び102のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;8)重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号56、67、及び78のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号56、67、及び78のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号88、94、及び103のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号88、94、及び103のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;9)重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号57、68、及び79のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号57、68、及び79のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖可
変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号89、91、及び98のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号89、91、及び98のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;10)重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号58、69、及び80のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号58、69、及び80のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号90、95、及び104のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号90、95、及び104のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;又は11)重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号59、70、及び81のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号59、70、及び81のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号87、93、及び105のアミノ酸配列、若しくはそれぞれ配列番号87、93、及び105のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0009】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号50、61、及び72のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号50、61、及び72のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号83、91、及び97のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号83、91、及び97のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0010】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号50、61、及び72のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号83、91、及び97のアミノ酸配列を含む。
【0011】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号59、70、及び81のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号59、70、及び81のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号87、93、及び105のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号87、93、及び105のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0012】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号59、70、及び81のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号87、93、及び105のアミノ酸配列を含む。
【0013】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、重鎖可変領域は、配列番号1~12及び106のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号1~12及び106のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに/又は軽鎖可変領域は、配列番号13~24及び107のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号13~24及び107のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0014】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、1)重鎖可変領域は、配列番号3のアミノ酸配列若しくは配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖可変領域は、配列番号15のアミノ酸配列若しくは配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;2)重鎖可変領域は、配列番号2のアミノ酸配列若しくは配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖可変領域は、配列番号14のアミノ酸配列若しくは配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;3)重鎖可変領域は、配列番号1のアミノ酸配列若しくは配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖可変領域は、配列番号13のアミノ酸配列若しくは配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;4)重鎖可変領域は、配列番号4のアミノ酸配列若しくは配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖可変領域は、配列番号16のアミノ酸配列若しくは配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;5)重鎖可変領域は、配列番号5のアミノ酸配列若しくは配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖可変領域は、配列番号17のアミノ酸配列若しくは配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;6)重鎖可変領域は、配列番号6のアミノ酸配列若しくは配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖可変領域は、配列番号18のアミノ酸配列若しくは配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;7)重鎖可変領域は、配列番号7のアミノ酸配列若しくは配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖可変領域は、配列番号19のアミノ酸配列若しくは配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;8)重鎖可変領域は、配列番号8のアミノ酸配列若しくは配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖可変領域は、配列番号20のアミノ酸配列若しくは配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;9)重鎖可変領域は、配列番号9のアミノ酸配列若しくは配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖可変領域は、配列番号21のアミノ酸配列若しくは配列番号21のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;10)重鎖可変領域は、配列番号10のアミノ酸配列若しくは配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖可変領域は、配列番号22のアミノ酸配列若しくは配列番号22のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;11)重鎖可変領域は、配列番号11のアミノ酸配列若しくは配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖可変領域は、配列番号23のアミノ酸配列若しくは配列番号23のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;12)重鎖可変領域は、配列番号12のアミノ酸配列若しくは配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖可変領域は、配列番号24のアミノ酸配列若しくは配列番号24のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;又は13)重鎖可変領域は、配列番号106のアミノ酸配列若しくは配列番号106のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖可変領域は、配列番号107のアミノ酸配列若しくは配列番号107のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、重鎖可変領域は、配列番号3のアミノ酸配列又は配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖可変領域は、配列番号15のアミノ酸配列又は配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0015】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、重鎖可変領域は配列番号3のアミノ酸配列を含み;及び軽鎖可変領域は配列番号15のアミノ酸配列を含む。
【0016】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、重鎖可変領域は、配列番号106のアミノ酸配列又は配列番号106のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖可変領域は、配列番号107のアミノ酸配列又は配列番号107のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0017】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、重鎖可変領域は配列番号106のアミノ酸配列を含み;及び軽鎖可変領域は配列番号107のアミノ酸配列を含む。
【0018】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分はモノクローナル抗体である。
【0019】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分は、ヒト、ヒト化、又はキメラ抗体である。一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分は、好ましくは、正常なヒトタウ種と比べて病理学的ヒトタウ種に結合する。一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分は、正常なヒトタウ種と比べて病理学的ヒトタウ種に特異的に結合する。一部の実施形態において、病理学的ヒトタウ種は、アルツハイマー病(AD)、進行性核上麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、及びピック病(PiD)からなる群から選択されるタウオパチーからのものである。一部の実施形態において、病理学的ヒトタウ種は、アルツハイマー病(AD)、進行性核上麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、及びピック病(PiD)からなる群から選択されるタウオパチー脳からのものである。一部の実施形態において、病理学的ヒトタウ種は、タウ1A型、IB型、11A型、若しくはMB型;誤秩序タウ(misordered Tau);誤無秩序タウ(mis-disordered Tau);サルコシル不溶性タウ;細胞外タウ沈着物;タウ凝集物;対らせん状細線維(paired helical filaments);神経原線維病理;又は切断型タウ若しくは全長タウの高リン酸化形態である。一部の実施形態において、病理学的ヒトタウ種は高リン酸化及びサルコシル不溶性タウ種である。一部の実施形態において、病理学的ヒトタウ種は、タウオパチー脳のシナプスに蓄積したタウ凝集物及び/又は異常にリン酸化されたものである。
【0020】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分は、ヒトアルツハイマー病(AD)脳溶解液からの高リン酸化及びサルコシル不溶性64kDタウ種に結合する。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合性部分は、i)ヒトAD脳溶解液からのサルコシル不溶性58kD及び/若しくは68kDタウ種に更に結合し;並びに/又はii)ヒトAD脳溶解液からの140kD及び/若しくは170kDタウ種に結合しない。
【0021】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分は、IgGl、IgG2、IgG3又はIgG4抗体である。一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分はIgGl又はIgG4抗体である。
【0022】
別の態様において、上記の実施形態のいずれかによる抗体又は抗原結合性部分をコードする単離された核酸が本明細書において提供される。
【0023】
別の態様において、上記の実施形態のいずれかによる核酸を含む宿主細胞が本明細書において提供される。
【0024】
別の態様において、抗体又は抗原結合性部分を製造する方法であって、抗体又は抗原結合性部分を製造するために好適な条件下で上記の実施形態のいずれかによる宿主細胞を培養することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0025】
別の態様において、上記の実施形態のいずれかによる抗体又は抗原結合性部分及び第2の治療剤を含むイムノコンジュゲートが本明細書において提供される。
【0026】
別の態様において、上記の実施形態のいずれかによる抗体又は抗原結合性部分及び検出可能な標識を含む標識された抗体が本明細書において提供される。
【0027】
別の態様において、上記の実施形態のいずれかによる抗体又は抗原結合性部分及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が本明細書において提供される。
【0028】
別の態様において、対象においてタウタンパク質関連疾患を治療又は予防する方法であって、対象に上記の実施形態のいずれかによる抗体若しくは抗原結合性部分又は上記の実施形態のいずれかによる医薬組成物を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0029】
別の態様において、タウタンパク質関連疾患を有する又はそれを発症するリスクがある対象において認知記憶能力を保持若しくは増加させ又は記憶喪失を緩慢化させる方法であって、対象に上記の実施形態のいずれかによる抗体若しくは抗原結合性部分又は上記の実施形態のいずれかによる医薬組成物を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0030】
別の態様において、タウタンパク質関連疾患を有する又はそれを発症するリスクがある対象においてタウタンパク質のレベルを低減させる方法であって、対象に上記の実施形態のいずれかによる抗体若しくは抗原結合性部分又は上記の実施形態のいずれかによる医薬組成物を投与することを含み、i)非リン酸化タウタンパク質、リン酸化タウタンパク質、及び/若しくは高リン酸化タウタンパク質のレベルが、抗体若しくは抗原結合性部分の投与の前の対象におけるそれらのレベルと比較して対象において低減され;並びに/又はii)病理学的タウ種のレベルが、抗体若しくは抗原結合性部分の投与の前の対象におけるそのレベルと比較して対象において低減される、方法が本明細書において提供される。一部の実施形態において、タウタンパク質関連疾患を有する又はそれを発症するリスクがある対象においてタウタンパク質凝集物のレベルを低減させる方法は、対象に上記の実施形態のいずれかによる抗体若しくは抗原結合性部分又は上記の実施形態のいずれかによる医薬組成物を投与することを含み、i)非リン酸化タウタンパク質、リン酸化タウタンパク質、及び/若しくは高リン酸化タウタンパク質のレベルは、抗体若しくは抗原結合性部分の投与の前の対象におけるそれらのレベルと比較して対象において低減され;並びに/又はii)病理学的タウ種のレベルは、抗体若しくは抗原結合性部分の投与の前の対象におけるそのレベルと比較して対象において低減される。一部の実施形態において、タウタンパク質凝集物及び/又は異常リン酸化タウのレベルは、抗体又は抗原結合性部分の投与の前の対象におけるそれらのレベルと比較して対象において低減される。
【0031】
別の態様において、タウタンパク質関連疾患を有する又はそれを発症するリスクがある対象においてタウ凝集物の増殖を阻害し及び/又は逆転させる方法であって、対象に上記の実施形態のいずれかによる抗体若しくは抗原結合性部分又は上記の実施形態のいずれかによる医薬組成物を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。一部の実施形態において、タウタンパク質関連疾患を有する又はそれを発症するリスクがある対象においてタウ凝集物の増殖を阻害する方法は、対象に上記の実施形態のいずれかによる抗体若しくは抗原結合性部分又は上記の実施形態のいずれかによる医薬組成物を投与することを含む。
【0032】
別の態様において、タウタンパク質関連疾患を有する又はそれを発症するリスクがある対象においてタウシード形成を阻害し及び/又は逆転させる方法であって、対象に上記の実施形態のいずれかによる抗体若しくは抗原結合性部分又は上記の実施形態のいずれかによる医薬組成物を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。一部の実施形態において、タウタンパク質関連疾患を有する又はそれを発症するリスクがある対象においてタウシード形成を阻害する方法は、対象に上記の実施形態のいずれかによる抗体若しくは抗原結合性部分又は上記の実施形態のいずれかによる医薬組成物を投与することを含む。
【0033】
一部の実施形態において、上記の方法のいずれかによれば、タウタンパク質関連疾患はタウオパチーである。
【0034】
一部の実施形態において、タウオパチーは神経変性タウオパチーである。一部の実施形態において、タウオパチーは、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病(HD)、パーキンソン病(PD)、クロイツフェルト-ヤコブ病、拳闘家認知症、ダウン症候群、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー病、英国型認知症、デンマーク型認知症、封入体筋炎、プリオンタンパク質脳アミロイド血管障害、外傷性脳傷害、グアムパーキンソニズム-認知症複合体、神経原線維タングルを伴う非グアム島運動ニューロン疾患、嗜銀顆粒性認知症、大脳皮質基底核変性症、石灰化を伴うびまん性神経原線維タングル、前頭側頭型認知症、第17染色体に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、ハラーフォルデン-シュパッツ病、多系統萎縮症(multiple system atrophy)、ニーマン-ピック病C型、淡蒼球-橋-黒質変性症(Pallido-ponto-nigral degeneration)、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上麻痺、亜急性硬化性全脳炎、神経原繊維変化型認知症(Tangle-only dementia)、グリア細胞球状封入体を伴う白質タウオパチー、前頭側頭型認知症、脳炎後パーキンソニズム、第17染色体に連鎖したパーキンソニズム、及び筋強直性ジストロフィーからなる群から選択される。一部の実施形態において、タウオパチーは、アルツハイマー病(AD)、進行性核上麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、又はピック病(PiD)である。
【0035】
一部の実施形態において、上記の方法のいずれかによれば、方法は、対象に少なくとも1つの追加の療法を投与することを更に含む。一部の実施形態において、少なくとも1つの追加の療法は、神経保護剤、神経学的薬物、コルチコステロイド、抗生物質、抗ウイルス剤、抗タウ抗体、タウ阻害剤、抗アミロイドベータ抗体、ベータ-アミロイド凝集阻害剤、抗BACEl抗体、及びBACE1阻害剤から選択される。一部の実施形態において、少なくとも1つの追加の療法は、神経学的薬物、コルチコステロイド、抗生物質、抗ウイルス剤、抗タウ抗体、タウ阻害剤、抗アミロイドベータ抗体、ベータ-アミロイド凝集阻害剤、抗BACEl抗体、及びBACE1阻害剤から選択される。一部の実施形態において、少なくとも1つの追加の療法は、神経変性疾患の開始の遅延、進行の緩慢化又は症状の寛解を含めて、神経変性疾患の予防的又は治療的処置のための併用療法における使用のための神経保護剤である。
【0036】
一部の実施形態において、上記の方法のいずれかによれば、対象は、タウタンパク質関連疾患を有する又はそれを発症するリスクがあると診断される。一部の実施形態において、対象は、アルツハイマー病(AD)、進行性核上麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、及びピック病(PiD)からなる群から選択されるタウオパチーを有する又はそれを発症するリスクがあると診断される。
【0037】
別の態様において、試料中の病理学的ヒトタウを検出する方法であって、i)試料を上記の実施形態のいずれかによる抗体若しくは抗原結合性部分と接触させること及び抗体若しくは抗原結合性部分を直接的若しくは間接的に検出すること;又はii)試料を標識された上記の実施形態のいずれかによる抗体若しくは抗原結合性部分と接触させること及び標識を検出することを含む、方法が本明細書において提供される。一部の実施形態において、病理学的ヒトタウは、アルツハイマー病(AD)、進行性核上麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、及びピック病(PiD)からなる群から選択されるタウオパチーからのものである。一部の実施形態において、病理学的ヒトタウは、アルツハイマー病(AD)、進行性核上麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、及びピック病(PiD)からなる群から選択されるタウオパチー脳からのものである。一部の実施形態において、病理学的ヒトタウは、タウ1A型、IB型、11A型、若しくはMB型;誤秩序タウ;誤無秩序タウ;サルコシル不溶性タウ;細胞外タウ沈着物;タウ凝集物;対らせん状細線維;神経原線維病理;又は切断型タウ若しくは全長タウの高リン酸化形態である。一部の実施形態において、病理学的ヒトタウは高リン酸化及びサルコシル不溶性タウである。一部の実施形態において、試料は、脳試料、脳脊髄液試料、又は血液試料である。一部の実施形態において、検出することは、試料中の病理学的ヒトタウの存在についての情報を含むリードアウトを生成することを含む。一部の実施形態において、試料は対象からのものであり、及び方法は、対象がタウオパチーを有するかどうか、又はタウオパチーを発症する可能性があるかどうかをリードアウトに基づいて診断することを更に含む。
【0038】
以上の要約は実例的なものに過ぎず、いかなる意味でも限定的であることは意図されない。本明細書に記載の実例的な実施形態及び特徴に加えて、本開示の更なる態様、実施形態、目的及び特徴は、図面及び詳細な説明及び請求項から全的に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1A図1A~1Bは、HT7、mAb005、及びmAb037によるrTg4510及びWT脳溶解液のウエスタンブロット分析を示す。
図1B図1Aの続きである。
図2A図2A~2Bは、HT7、mAb005及びmAb037によるAD及びND脳溶解液のウエスタンブロット分析を示す。
図2B図2Aの続きである。
図3A図3A~3Bは、HT7、mAb005及びmAb037によるサルコシル可溶性及び不溶性画分におけるAD脳のウエスタンブロット分析を示す。
図3B図3Aの続きである。
図4A図4Aは細胞内分画化を示す。
図4B図4Bは、HT7、mAb005及び参照抗体のドットブロット分析を示す。
図4C図4Cは、mAb005(「005」)、mAb011(「011」)、mAb013(「013」)、mAb010(「010」)、mAb032(「032」)、mAb037(「037」)、mAb020(「020」)、mAb008(「008」)、mAb025(「025」)、mAb033(「033」)、及びmAb004(「004」)のドットブロット分析を示す。
図5A図5A及び図5Bは、様々な脳組織に対するドットブロットアッセイを示す。図5Aは、非認知症(「ND」)、アルツハイマー病(「AD」)、進行性核上麻痺(「PSP」)、大脳皮質基底核変性症(「CBD」)、又はピック病(「PiD」)脳の中脳、視床、被殻、上前頭回、及び前頭皮質領域におけるAT8及びHT7の結果を示す。図5Bは、非認知症(「ND」)、アルツハイマー病(「AD」)、進行性核上麻痺(「PSP」)、大脳皮質基底核変性症(「CBD」)、又はピック病(「PiD」)脳の中脳、視床、被殻、上前頭回、前頭皮質、及び小脳領域におけるmAb005、HT7、及び参照抗体の結果を示す。
図5B図5Aの続きである。
図5C図5Cは、mAb005(「005」)、mAb011(「011」)、mAb013(「013」)、mAb010(「010」)、mAb032(「032」)、mAb037(「037」)、mAb020(「020」)、mAb008(「008」)、mAb025(「025」)、mAb033(「033」)、及びmAb004(「004」)のドットブロットアッセイを示す。
図6A図6Aは、HT7及びAT8を用いたND及びAD脳溶解液のスクロース勾配遠心分離(SGC)及びウエスタンブロット分析を示す。
図6B図6Bは、HT7、AT8、シナプトフィジン、GAPDH、及びmAb005を用いたND及びAD脳溶解液のSGC及びドットブロット分析を示す。
図7A図7Aは、HT7を用いたND及びAD脳溶解液のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及びウエスタンブロット分析を示す。
図7B図7Bは、HT7、AT8、シナプトフィジン(「Synapt」)、GAPDH、mAb005、及び参照抗体を用いたND及びAD脳溶解液のSEC及びドットブロット分析を示す。
図8A図8Aは、mAb005、HT7、AT8、及び参照抗体を用いた1~6か月齢rTg4510(Tg)及び野生型(WT)マウス脳溶解液のドットブロット分析を示す。
図8B図8Bは、mAb005を用いてプロービングした2.5~6か月齢Tg脳溶解液のSEC及びドットブロット分析を示す。
図9A図9Aは、シナプス接続された脳領域を通じて拡大するタウの図式的な表現を示す(Brettschneider, J.ら(2015). Nature Reviews Neuroscience、16(2)、109)からの改変)。
図9B図9Bは、ヒト脳切片の指し示される脳領域のmAb005(RAA7とも称される)を用いた免疫組織化学(IHC)染色を、上に標識されるそれらの疾患状態(ND対AD)、ブラークステージ(I~VI)、及びIDと共に示す。輪郭を描いた写真は、mAb005で標識されたタウタングルについて陽性シグナルを示す。
図9C図9Cは、ヒト脳切片の指し示される脳領域のmAb005(RAA7とも称される)及びmAb037を用いた免疫組織化学(IHC)染色を、上に標識されるそれらの疾患状態(ND対AD)、ブラークステージ(I~VI)、及びIDと共に示す。
図9D図9Dは、指し示されるPSP脳組織のmAb005を用いたIHC染色を示し、組織の各々について陽性mAb005シグナルを示している。
図9E図9Eは、指し示される4つのPSP脳組織のmAb005及びmAb037を用いたIHC染色を示し、組織の各々について陽性mAb005シグナルを示している。
図10A図10A~10Bは、mAb005によるrTg4510脳のIHC染色を示す。図10Aは、3か月時のTg脳における染色を示す。図10Bは、6か月時のTg脳における染色を示す。
図10B図10Aの続きである。
図11A図11A及び図11Bは、3-mo rTg4510動物への腹腔内注射(i.p.)後のC2N-8E12(参照AbbVie)及びmAb005の要約グラフを示す(n=4~5匹の動物;平均±SD)。
図11B図11Aの続きである。
図12A図12Aは、AD及びND脳ホモジネートに対する元々のマウスクローンmAb005及びヒト化mAb005の結合親和性を示す。
図12B図12Bは、AD及びND脳ホモジネートに対する元々のマウスクローンmAb037及びヒト化mAb037の結合親和性を示す。
図13A図13A~13Bは、タウシード形成能力に対するmAb005及びmAb037の効果を示す。図13Aは、mAb005及びアイソタイプ対照(「mIgG」)あり及びなしでのタウ及びDAPI染色を示す。図13Bは、mAb005及びmAb037あり及びなしでのタウ及びDAPI染色を示す。
図13B図13Aの続きである。
図13C図13C~13Eは、mAb005免疫枯渇アッセイの結果を示す。図13Cはタウスポット対mAb005抗体濃度を示し;図13Dはタウ枯渇対mAb005抗体濃度を示し;図13Eは、mAb005又はマウスIgGアイソタイプ対照を用いた処置後のウエスタンブロット染色を示す。
図13D図13Cの続きである。
図13E図13Dの続きである。
図14図14は、架橋連結質量分析を使用するコンホメーショナルエピトープマッピングによるmAb005及びmAb037の特徴付けを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、病理学的(疾患関連)タウ種に結合することができる抗体に関し、これにはそのような抗体に由来する抗原結合性部分(例えば、抗体の抗原結合性断片)が含まれる。正常な(健常な)タウ種への最小の結合を有する病理学的タウ種に結合する抗体が非常に望まれている。ヒト病理学的タウ種に結合し、並びに正常及び病理学的タウ種の間で識別することができる抗体及び抗原結合性部分が本明細書において提供される。本明細書に記載の抗体は、タウオパチー脳のシナプス画分に位置するタウ種、例えば不溶性タウ種に優先的に結合することが見出されており、シナプス喪失はタウオパチーにおける早期の病理学的事象であるので、これらの結果は、診療所(臨床)における使用のための抗体並びにその抗原結合性誘導体(例えばmAb005及びmAb037のヒト化型)の好適性を示唆し、それらは、ヒトタウオパチー患者の脳において正常/生理学的タウ種に対する最小の効果と共に病理学的タウのクリアランスをもたらす潜在能力を有する。タウシード形成及び/又は増殖を排除及び/又は予防するために本明細書に記載の抗体及び抗原結合性部分を使用する方法、並びにタウオパチー、例えばアルツハイマー病(AD)、進行性核上麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、又はピック病(PiD)を治療又は予防するために本明細書に記載の抗体及び抗原結合性部分を使用する方法もまた提供される。
【0041】
以下の詳細な説明において、本出願の部分を形成する添付の図面が参照される。図面において、文脈が他に規定しなければ、類似した記号は類似した構成要素を一般に同定する。詳細な説明、図面、及び請求項に記載の実例的な選択肢は、限定的であることを意味しない。他の選択肢が使用されてもよく、本明細書に提示される主題の精神又は範囲から離れることなく他の変更が為され得る。本明細書に一般に記載され、図面に図示される態様は、多様な異なる構成でアレンジ、置換、組合せ、及び設計され得ることが容易に理解され、これらの全ては明示的に意図され、本出願の部分を為す。
【0042】
他に定義されなければ、本明細書において使用される全ての技術用語、表記、及び他の科学用語又は学術用語は、本出願が関する技術分野の当業者により一般的に理解される意味を有する。一部の場合において、一般的に理解される意味を有する用語が明確性のため及び/又は即時の参照のために本明細書において定義されるが、そのような定義を含めることは、当該技術分野において一般に理解されるものに対する実質的な差異を表すと必然的に解釈されるべきではない。本明細書において記載又は参照される技術及び手順の多くはよく理解されており、当業者により従来の方法論を使用して一般的に用いられている。
【0043】
定義
「病理学的タウ」及び「疾患タウ」という用語は、病理学的タウコンフォーマー及び構造物を含み、以下の全てを含むがこれらに限定されない:タウ1A型、IB型、11A型、及びMB型(WO2004/007547において詳細に記載される)、誤秩序タウ、誤無秩序タウ(モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー)、誤無秩序可溶性タウ、サルコシル不溶性タウ、細胞外タウ沈着物、タウ凝集物、対合したらせんタウフィラメント、タウ神経原線維病理、例えば神経原線維病変、タングル、スレッド、原線維、及び軸索スフェロイド、切断型若しくは全長タウの高度にリン酸化された形態、又は本明細書に記載の抗体及び/若しくはタウ結合性断片により検出可能なAD若しくは別のタウオパチーと関連付けられるタウの任意の他の形態。「タウオパチー」という用語は、患者の脳における微小管関連タンパク質タウの異常な形態の出現が付随する全ての神経学的疾患を含むがそれに限定されない。該用語は、以下の疾患を含むがこれらに限定されない:アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病(HD)、パーキンソン病(PD)、クロイツフェルト-ヤコブ病、拳闘家認知症、ダウン症候群、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー病、英国型認知症、デンマーク型認知症、封入体筋炎、プリオンタンパク質脳アミロイド血管障害、外傷性脳傷害、グアムパーキンソニズム-認知症複合体、神経原線維タングルを伴う非グアム島運動ニューロン疾患、嗜銀顆粒性認知症、大脳皮質基底核変性症、石灰化を伴うびまん性神経原線維タングル、前頭側頭型認知症、第17染色体に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、ハラーフォルデン-シュパッツ病、多系統萎縮症、ニーマン-ピック病C型、淡蒼球-橋-黒質変性症、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上麻痺、亜急性硬化性全脳炎、神経原繊維変化型認知症、グリア細胞球状封入体を伴う白質タウオパチー、前頭側頭型認知症、脳炎後パーキンソニズム、第17染色体に連鎖したパーキンソニズム、及び筋強直性ジストロフィーからなる群から選択される。例えば、Goedert, M.ら、(2010). Trends in neurosciences、33(7)、317~325頁を参照。
【0044】
「タウタンパク質関連疾患」及び「タウタンパク質関連疾患又は障害」という用語は、本明細書において使用される場合、タウ媒介性又はタウ関連性の神経変性疾患及び/又は神経変性性病理学的状態であって、特に、タウオパチーである並びに/又はタウオパチーと関連付けられる及び/若しくはタウオパチーが付随する、好ましくはタウ凝集物と関連付けられる及び/若しくはタウ凝集物が付随する疾患若しくは病理学的状態である神経変性疾患及び/又は神経変性性病理学的状態であることが意味される。
【0045】
「可溶性タウ」又は「可溶性タウタンパク質」という用語は、本明細書において使用される場合、タウタンパク質/ペプチド、タウ様ペプチド/タンパク質、改変型若しくは切断型タウペプチド/タンパク質、及び/又はタウペプチド/タンパク質の他の誘導体のモノマー及び/又はオリゴマーを含有する可溶化されたタンパク質種を含むことが意味される。
【0046】
「不溶性タウ」又は「不溶性タウタンパク質」という用語は、本明細書において使用される場合、in vitroの水性培地中及びin vivoの哺乳動物身体中、より特には哺乳動物脳中の両方で不溶性であるオリゴマー又はポリマー構造を形成する凝集したタウペプチド/タンパク質、タウ様ペプチド/タンパク質、改変型若しくは切断型タウペプチド/タンパク質、及び/又はタウペプチド/タンパク質の他の誘導体を含有するタンパク質種を含むことが意味される。「不溶性タウ」は神経原線維タングル(NFT)を特に含む。
【0047】
「親和性成熟」抗体は、1つ以上の超可変領域(HVR)中の1つ以上の変更を有しない親抗体と比較して、そのような変更を有する抗体であって、そのような変更が、抗原に対する抗体の親和性における向上を結果としてもたらすものを指す。
【0048】
本明細書における「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、所望の抗原結合活性を呈する限り、以下に限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含めて、様々な抗体構造を包含する。
【0049】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の部分を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0050】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の部分が異なる供給源又は種に由来する抗体を指す。
【0051】
「エフェクター機能」は、抗体アイソタイプと共に変動する、抗体のFc領域に帰せられる生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、以下が挙げられる:Clq結合及び補体依存性細胞傷害性(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方調節;並びにB細胞活性化。
【0052】
剤、例えば、薬学的製剤の「有効量」は、所望の治療的又は予防的な結果を達成するための、必要な投薬量及び時間的期間における、有効な量を指す。
【0053】
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。該用語は、ネイティブ配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、重鎖のCys226から、又はPro230から、カルボキシル末端まで伸長する。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在してもよいし、又は存在しなくてもよい。本明細書において他に指定されなければ、Fc領域又は定常領域中のアミノ酸残基のナンバリングは、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed. Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD、1991に記載されるような、EUインデックスとも呼ばれるEUナンバリングシステムによる。
【0054】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基又は相補性決定領域(CDR)以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは一般に4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。よって、HVR及びFR配列は、VH(又はVL)中で以下の配列:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4において一般に現れる。
【0055】
「超可変領域」又は「HVR」という用語は、本明細書において使用される場合、配列中の超可変の(「相補性決定領域」若しくは「CDR」)及び/又は構造的に定義されるループを形成する(「超可変ループ」)及び/又は抗原接触残基を含有する(「抗原接触」)抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般に、抗体は、VH中に3つ(H1、H2、H3)、及びVL中に3つ(L1、L2、L3)の6つのHVR又はCDRを含む。
【0056】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全体抗体」という用語は本明細書において交換可能に使用され、ネイティブな抗体構造に実質的に類似した構造を有する又は本明細書において定義されるようなFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0057】
「宿主細胞」、「宿主細胞系」、及び「宿主細胞培養物」という用語は交換可能に使用され、外因性核酸が導入される細胞を指し、これにはそのような細胞の子孫が含まれる。宿主細胞は「形質転換体」及び「形質転換細胞」を含み、これらは、初代形質転換細胞及び継代の回数に関わらずそれらに由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸内容物が完全に同一でなくてもよく、突然変異を含有してもよい。元々形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物学的活性を有する突然変異体子孫が本明細書に含まれる。
【0058】
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗原への抗体の結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。ネイティブな抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は類似した構造を一般に有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)又は相補性決定領域(CDR)を含む。
【0059】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基及びヒトFRからのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、HVR(例えば、CDR)の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のものに対応する、少なくとも1つの、典型的には2つの、可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも部分を含んでもよい。「ヒト化型」の抗体、例えば、非ヒト抗体は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0060】
「単離された」抗体は、その天然の環境の成分から分離された抗体である。
【0061】
「単離された」核酸は、その天然の環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、その核酸分子を普通に含有するが、核酸分子が染色体外に又はその天然の染色体位置とは異なる染色体位置において存在する細胞中に含有される核酸分子を含む。
【0062】
「抗体をコードする核酸」は、抗体重鎖及び軽鎖(又はこれらの断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、これには、単一のベクター又は別々のベクター中のそのような核酸分子、及び宿主細胞中の1つ以上の位置において存在するそのような核酸分子が含まれる。
【0063】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、集団の個々の抗体が、起こり得るバリアント抗体、例えば、天然に存在する突然変異を含有する又はモノクローナル抗体調製物の製造の間に生じるバリアント抗体を除いて、同一である及び/又は同じエピトープに結合する場合であり、そのようなバリアントは一般に微量で存在する。異なる決定因子(エピトープ)に方向付けられた異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定因子に方向付けられている。例えば、本発明にしたがって使用されるモノクローナル抗体は様々な技術によって作製されてもよく、該技術としては、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージ-ディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン座位の全て又は部分を含有するトランスジェニック動物を利用する方法が挙げられるがこれらに限定されず、そのような方法及びモノクローナル抗体を作製するための他の例示的な方法は本明細書に記載されている。
【0064】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列をアライメントし、必要な場合にはギャップを導入して最大配列同一性パーセントを達成した後の、配列同一性の部分としていかなる保存的置換も考慮しない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、例えば、公開されているコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して、当業者の技術的範囲内である様々なやり方で達成することができる。当業者は、比較されている配列の全長にかけて最大のアライメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含めて、配列をアライメントするための適切なパラメーターを決定することができる。
【0065】
「医薬組成物」又は「薬学的製剤」という用語は、含有される活性成分の生物学的活性が有効であることを可能とし、及び製剤が投与される対象にたいして許容できない毒性である追加の成分を含有しないような形態である調製物を指す。
【0066】
「薬学的に許容される担体」は、対象に対して非毒性の、活性成分以外の医薬組成物中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、緩衝剤、賦形剤、安定化剤、及び防腐剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0067】
「治療」、及び「治療する」などの用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを一般に意味するために本明細書において使用される。効果は、疾患若しくはその症状を完全若しくは部分的に予防するという点で予防的であってもよく、並びに/又は疾患及び/若しくは疾患に帰せられる有害効果に対する部分的若しくは完全な治癒の点で治療的であってもよい。「治療」は、本明細書において使用される場合、哺乳動物における疾患又は症状の任意の治療をカバーし、(a)疾患若しくは症状を罹患する素因を有し得るが、それを有するとはまだ診断されていない対象において疾患若しくは症状が起こることを予防すること;(b)疾患若しくは症状を阻害すること、例えば、その発症を停止させること;又は(c)疾患を緩和すること、例えば、疾患の退縮を引き起こすことを含む。治療剤は、疾患の開始の前、間、又は後に投与されてもよい。一部の実施形態において、治療は、1つ以上の症状を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はより高い%で阻害する。一部の実施形態において、治療は、1つ以上の症状を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はより高い%で緩和する。
【0068】
本明細書において使用される場合、「予防する」は、疾患の徴候が対象において検出可能となる前の対象への療法の投与(例えば、抗タウ抗体又はその抗原結合性部分の投与)に関する。対象は、疾患又は障害を発症するリスクがある個体、例えば疾患又は障害の発症又は開始と関連付けられることが公知の1つ以上のリスク因子を有する個体であってもよい。一部の実施形態において、予防は、1つ以上のリスク因子を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はより高い%で低減させる。例えば、一部の実施形態において、予防は、当該技術分野において公知であるようなタウオパチーを発症する遺伝学的リスク因子を有する対象のリスクを低減させる。例えば、Avila, J.ら、Front. Aging Neurosci. 2015; 7:99を参照。
【0069】
「個体」及び「対象」という用語は本明細書において交換可能に使用され、任意の哺乳動物対象、例えば、ヒトを指す。一部の場合において、診断、治療、又は療法が所望される対象はヒト患者である。
【0070】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限及び下限の間の、文脈が他に明確に規定しなければ下限の単位の10分の1までの、各介在する値、並びにその記載される範囲内の任意の他の記載される又は介在する値が本開示に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、より小さい範囲に独立して含まれることができ、記載される範囲内の任意の特に除外される限度を条件として、本開示に包含される。記載される範囲が限度の1つ又は両方を含む場合、それらの含まれる限度のいずれか又は両方を除外した範囲もまた本開示に含まれる。
【0071】
ある特定の範囲は、「約」という用語に先行された数値と共に本明細書において提示される。「約」という用語は、それが先行する正確な数の他に、該用語が先行する数に近い又はおおよそその数である数のための文字上のサポートを提供するために本明細書において使用される。数が特に記載される数に近い又はそのおおよそその数であるかどうかの決定において、近い又はおおよその記載されない数は、それが提示される文脈において、特に記載される数の実質的な均等を提供する数であってもよい。
【0072】
明確性のために別々の実施形態の文脈において記載される本開示のある特定の特徴はまた単一の実施形態において組合せで提供され得ることが理解される。反対に、簡潔性のために単一の実施形態の文脈において記載される本開示の様々な特徴はまた、別々に又は任意の好適な部分的組合せで提供されてもよい。本開示に関する実施形態の全ての組合せは本開示に特に包含され、各及びあらゆる組合せが個々に及び明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。追加的に、様々な実施形態及びその要素の全ての部分的組合せもまた本開示に特に包含され、各及びあらゆるそのような部分的組合せが本明細書に個々に及び明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。
【0073】
抗タウ抗体
1つの態様において、1つ以上の病理学的タウ種(そのような病理学的タウ種は本明細書において「pタウ」と称されることもあり、そのような抗体は本明細書において「抗pタウ抗体」と称されることもある)に結合する抗体(例えば、単離された抗体)又は抗原結合性部分(例えば、抗原結合性抗体断片)が本明細書において提供される。一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、1つ以上の病理学的タウ種及び1つ以上の正常なタウ種の間で識別することができる。一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、対応する健常な脳試料からのタウ種と比較してタウオパチー脳試料(例えば、アルツハイマー病(AD)、進行性核上麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、又はピック病(PiD)脳からの試料)からのタウ種に優先的に結合する。一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、参照抗タウ抗体(例えば、HT7、C2N-8E12、又はBIIB092)と比較してタウオパチー脳試料からのより多くの病理学的タウ種に結合する。一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、参照抗タウ抗体と比較して健常な脳試料からのより少ない正常なタウ種に結合する。一部の実施形態において、参照抗タウ抗体は、HT7、C2N-8E12(国際公開第2015/200806号パンフレットを参照)、又はBIIB092(米国特許第9,567,395号明細書を参照)である。一部の実施形態において、タウオパチー脳試料は、AD、PSP、CBD、又はPiD脳試料である。一部の実施形態において、脳試料は、シナプス画分及び/又はそのサルコシル不溶性画分を含めて、全脳溶解液又は前頭皮質溶解液である。一部の実施形態において、脳試料は、脳溶解液のサルコシル不溶性シナプス画分である。
【0074】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、タウトランスジェニックマウスrTg4510脳溶解液からの高リン酸化64kDタウ種に結合する。一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、rTg4510脳溶解液からの140kDタウ種に結合しない。一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、rTg4510脳溶解液からの170kBタウ種に結合しない。
【0075】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、ヒトAD脳試料からの高リン酸化及びサルコシル不溶性64kDタウ種に結合する。一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、ヒトAD脳試料からの58kDタウ種に結合する。一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、ヒトAD脳試料からの68kDタウ種に結合する。一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、ヒトAD脳試料からの140kDタウ種に結合しない。一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、ヒトAD脳試料からの170kDタウ種に結合しない。一部の実施形態において、脳試料は、脳溶解液、例えば全脳、前頭皮質、中脳、視床、被殻、又は上前頭回組織から調製された溶解液である。一部の実施形態において、脳試料は、脳溶解液、例えば全脳、前頭皮質、中脳、視床、被殻、又は上前頭回組織から調製された溶解液のサルコシル不溶性画分である。
【0076】
例示的な抗pタウ抗体
一部の実施形態において、a)配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む相補性決定領域(CDR)3を含む重鎖可変領域;並びに/又はb)配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は、配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して3つ以下のミスマッチを有するそのバリアントを含むCDR3を含み;並びに/又はb)軽鎖可変領域は、配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して3つ以下のミスマッチを有するそのバリアントを含むCDR3を含む。一部の実施形態において、重鎖可変領域は、配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3を含み;並びに/又はb)軽鎖可変領域は、配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3を含む。
【0077】
一部の実施形態において、CDR3を含む重鎖可変領域及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR3が、配列番号72のアミノ酸配列又は配列番号72のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖CDR3が、配列番号97のアミノ酸配列又は配列番号97のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR3は配列番号72のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3は配列番号97のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、並びに軽鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、重鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号50及び61のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号50及び61のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号83及び91のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号83及び91のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態において、重鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号50及び61のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号83及び91のアミノ酸配列を含む。
【0078】
一部の実施形態において、CDR3を含む重鎖可変領域及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR3が、配列番号71のアミノ酸配列又は配列番号71のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖CDR3が、配列番号96のアミノ酸配列又は配列番号96のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR3は配列番号71のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3は配列番号96のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、並びに軽鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、重鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号49及び60のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号49及び60のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号82及び91のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号82及び91のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態において、重鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号49及び60のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号82及び91のアミノ酸配列を含む。
【0079】
一部の実施形態において、CDR3を含む重鎖可変領域及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR3が、配列番号73のアミノ酸配列又は配列番号73のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖CDR3が、配列番号98のアミノ酸配列又は配列番号98のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR3は配列番号73のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3は配列番号98のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、並びに軽鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、重鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号51及び62のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号51及び62のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号84及び91のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号84及び91のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態において、重鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号51及び62のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号84及び91のアミノ酸配列を含む。
【0080】
一部の実施形態において、CDR3を含む重鎖可変領域及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR3が、配列番号74のアミノ酸配列又は配列番号74のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖CDR3が、配列番号99のアミノ酸配列又は配列番号99のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR3は配列番号74のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3は配列番号99のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、並びに軽鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、重鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号52及び63のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号52及び63のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号85及び92のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号85及び92のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態において、重鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号52及び63のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号85及び92のアミノ酸配列を含む。
【0081】
一部の実施形態において、CDR3を含む重鎖可変領域及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR3が、配列番号75のアミノ酸配列又は配列番号75のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖CDR3が、配列番号100のアミノ酸配列又は配列番号100のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR3は配列番号75のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3は配列番号100のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、並びに軽鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、重鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号53及び64のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号53及び64のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号86及び93のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号86及び93のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態において、重鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号53及び64のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号86及び93のアミノ酸配列を含む。
【0082】
一部の実施形態において、CDR3を含む重鎖可変領域及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR3が、配列番号76のアミノ酸配列又は配列番号76のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖CDR3が、配列番号101のアミノ酸配列又は配列番号101のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR3は配列番号76のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3は配列番号101のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、並びに軽鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、重鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号54及び65のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号54及び65のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号87及び93のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号87及び93のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態において、重鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号54及び65のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号87及び93のアミノ酸配列を含む。
【0083】
一部の実施形態において、CDR3を含む重鎖可変領域及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR3が、配列番号77のアミノ酸配列又は配列番号77のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖CDR3が、配列番号102のアミノ酸配列又は配列番号102のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR3は配列番号77のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3は配列番号102のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、並びに軽鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、重鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号55及び66のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号55及び66のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号83及び91のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号83及び91のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態において、重鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号55及び66のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号83及び91のアミノ酸配列を含む。
【0084】
一部の実施形態において、CDR3を含む重鎖可変領域及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR3が、配列番号78のアミノ酸配列又は配列番号78のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖CDR3が、配列番号103のアミノ酸配列又は配列番号103のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR3は配列番号78のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3は配列番号103のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、並びに軽鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、重鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号56及び67のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号56及び67のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号88及び94のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号88及び94のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態において、重鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号56及び67のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号88及び94のアミノ酸配列を含む。
【0085】
一部の実施形態において、CDR3を含む重鎖可変領域及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR3が、配列番号79のアミノ酸配列又は配列番号79のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖CDR3が、配列番号98のアミノ酸配列又は配列番号98のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR3は配列番号79のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3は配列番号98のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、並びに軽鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、重鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号57及び68のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号57及び68のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号89及び91のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号89及び91のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態において、重鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号57及び68のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号89及び91のアミノ酸配列を含む。
【0086】
一部の実施形態において、CDR3を含む重鎖可変領域及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR3が、配列番号80のアミノ酸配列又は配列番号80のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖CDR3が、配列番号104のアミノ酸配列又は配列番号104のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR3は配列番号80のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3は配列番号104のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、並びに軽鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、重鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号58及び69のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号58及び69のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号90及び95のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号90及び95のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態において、重鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号58及び69のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号90及び95のアミノ酸配列を含む。
【0087】
一部の実施形態において、CDR3を含む重鎖可変領域及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR3が、配列番号81のアミノ酸配列又は配列番号81のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;及び軽鎖CDR3が、配列番号105のアミノ酸配列又は配列番号105のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR3は配列番号81のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3は配列番号105のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、並びに軽鎖可変領域はCDR1及びCDR2を更に含み、重鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号59及び70のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号59及び70のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2は、それぞれ配列番号87及び93のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号87及び93のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態において、重鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号59及び70のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1及びCDR2はそれぞれ配列番号87及び93のアミノ酸配列を含む。
【0088】
一部の実施形態において、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、a)i)配列番号49~59のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号49~59のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR1;ii)配列番号60~70のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号60~70のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR2;及び/若しくはiii)配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR3を含む重鎖可変領域;並びに/又はb)iv)配列番号82~90のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号82~90のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR1;v)配列番号91~95のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号91~95のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR2;及び/若しくはvi)配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、抗タウ抗体又はその抗原結合性部分(例えば、単離された抗タウ抗体又はその抗原結合性部分)が本明細書において提供される。一部の実施形態において、a)重鎖可変領域は、i)配列番号49~59のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号49~59のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して3つ以下のミスマッチを有するそのバリアントを含むCDR1;ii)配列番号60~70のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号60~70のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して3つ以下のミスマッチを有するそのバリアントを含むCDR2;及び/若しくはiii)配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して3つ以下のミスマッチを有するそのバリアントを含むCDR3を含み;並びに/又はb)軽鎖可変領域は、iv)配列番号82~90のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号82~90のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して3つ以下のミスマッチを有するそのバリアントを含むCDR1;v)配列番号91~95のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号91~95のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して3つ以下のミスマッチを有するそのバリアントを含むCDR2;及び/若しくはvi)配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列と比較して3つ以下のミスマッチを有するそのバリアントを含むCDR3を含む。一部の実施形態において、a)重鎖可変領域は、i)配列番号49~59のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1;ii)配列番号60~70のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2;及び/若しくはiii)配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3を含み;並びに/又はb)軽鎖可変領域は、iv)配列番号82~90のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR1;v)配列番号91~95のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR2;及び/若しくはvi)配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR3を含む。一部の実施形態において、重鎖及び/又は軽鎖CDR配列は、表1及び表2に示される所与の抗体クローンについて指し示される通りである。
【0089】
一部の実施形態において、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変領域並びにCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号50、61、及び72のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号50、61、及び72のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号83、91、及び97のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号83、91、及び97のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号50、61、及び72のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号83、91、及び97のアミノ酸配列を含む。
【0090】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号50、61、及び72のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号50、61、及び72のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号83、91、及び97のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号83、91、及び97のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0091】
一部の実施形態において、上記の抗タウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号50、61、及び72のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号83、91、及び97のアミノ酸配列を含む。
【0092】
一部の実施形態において、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変領域並びにCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号49、60、及び71のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号49、60、及び71のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号82、91、及び96のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号82、91、及び96のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号49、60、及び71のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号82、91、及び96のアミノ酸配列を含む。
【0093】
一部の実施形態において、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変領域並びにCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号51、62、及び73のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号51、62、及び73のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号84、91、及び98のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号84、91、及び98のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号51、62、及び73のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号84、91、及び98のアミノ酸配列を含む。
【0094】
一部の実施形態において、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変領域並びにCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号52、63、及び74のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号52、63、及び74のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号85、92、及び99のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号85、92、及び99のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号52、63、及び74のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号85、92、及び99のアミノ酸配列を含む。
【0095】
一部の実施形態において、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変領域並びにCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号53、64、及び75のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号53、64、及び75のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号86、93、及び100のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号86、93、及び100のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号53、64、及び75のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号86、93、及び100のアミノ酸配列を含む。
【0096】
一部の実施形態において、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変領域並びにCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号54、65、及び76のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号54、65、及び76のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号87、93、及び101のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号87、93、及び101のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号54、65、及び76のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号87、93、及び101のアミノ酸配列を含む。
【0097】
一部の実施形態において、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変領域並びにCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号55、66、及び77のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号55、66、及び77のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号83、91、及び102のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号83、91、及び102のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号55、66、及び77のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号83、91、及び102のアミノ酸配列を含む。
【0098】
一部の実施形態において、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変領域並びにCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号56、67、及び78のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号56、67、及び78のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号88、94、及び103のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号88、94、及び103のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号56、67、及び78のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号88、94、及び103のアミノ酸配列を含む。
【0099】
一部の実施形態において、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変領域並びにCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号57、68、及び79のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号57、68、及び79のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号89、91、及び98のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号89、91、及び98のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号57、68、及び79のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号89、91、及び98のアミノ酸配列を含む。
【0100】
一部の実施形態において、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変領域並びにCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号58、69、及び80のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号58、69、及び80のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号90、95、及び104のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号90、95、及び104のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号58、69、及び80のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号90、95、及び104のアミノ酸配列を含む。
【0101】
一部の実施形態において、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖可変領域並びにCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分であって、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号59、70、及び81のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号59、70、及び81のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3が、それぞれ配列番号87、93、及び105のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号87、93、及び105のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号59、70、及び81のアミノ酸配列を含み;並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ配列番号87、93、及び105のアミノ酸配列を含む。
【0102】
一部の実施形態において、配列番号1~12のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号1~12のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;及び/又は配列番号13~24のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号13~24のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、可変領域が、本明細書に開示される参照アミノ酸配列のバリアントを含む場合、可変領域中のCDRの各々は、参照アミノ酸配列中の対応するCDRに対して少なくとも80%の配列同一性を有する。一部の実施形態において、可変領域中のCDRの各々は、参照アミノ酸配列中の対応するCDRに対して100%の配列同一性を有する。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号1~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;及び/又は軽鎖可変領域は配列番号13~24のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖及び軽鎖可変領域は、表3に示される所与の抗体クローンについて指し示される通りである。
【0103】
一部の実施形態において、配列番号1のアミノ酸配列若しくは配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;及び/又は配列番号13のアミノ酸配列若しくは配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号1のアミノ酸配列を含み;及び/又は軽鎖可変領域は配列番号13のアミノ酸配列を含む。
【0104】
一部の実施形態において、配列番号2のアミノ酸配列若しくは配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;及び/又は配列番号14のアミノ酸配列若しくは配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号2のアミノ酸配列を含み;及び/又は軽鎖可変領域は配列番号14のアミノ酸配列を含む。
【0105】
一部の実施形態において、配列番号3のアミノ酸配列若しくは配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;及び/又は配列番号15のアミノ酸配列若しくは配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号3のアミノ酸配列を含み;及び/又は軽鎖可変領域は配列番号15のアミノ酸配列を含む。
【0106】
一部の実施形態において、配列番号4のアミノ酸配列若しくは配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;及び/又は配列番号16のアミノ酸配列若しくは配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号4のアミノ酸配列を含み;及び/又は軽鎖可変領域は配列番号16のアミノ酸配列を含む。
【0107】
一部の実施形態において、配列番号5のアミノ酸配列若しくは配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;及び/又は配列番号17のアミノ酸配列若しくは配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号5のアミノ酸配列を含み;及び/又は軽鎖可変領域は配列番号17のアミノ酸配列を含む。
【0108】
一部の実施形態において、配列番号6のアミノ酸配列若しくは配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;及び/又は配列番号18のアミノ酸配列若しくは配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号6のアミノ酸配列を含み;及び/又は軽鎖可変領域は配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0109】
一部の実施形態において、配列番号7のアミノ酸配列若しくは配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;及び/又は配列番号19のアミノ酸配列若しくは配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号7のアミノ酸配列を含み;及び/又は軽鎖可変領域は配列番号19のアミノ酸配列を含む。
【0110】
一部の実施形態において、配列番号8のアミノ酸配列若しくは配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;及び/又は配列番号20のアミノ酸配列若しくは配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号8のアミノ酸配列を含み;及び/又は軽鎖可変領域は配列番号20のアミノ酸配列を含む。
【0111】
一部の実施形態において、配列番号9のアミノ酸配列若しくは配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;及び/又は配列番号21のアミノ酸配列若しくは配列番号21のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号9のアミノ酸配列を含み;及び/又は軽鎖可変領域は配列番号21のアミノ酸配列を含む。
【0112】
一部の実施形態において、配列番号10のアミノ酸配列若しくは配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;及び/又は配列番号22のアミノ酸配列若しくは配列番号22のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号10のアミノ酸配列を含み;及び/又は軽鎖可変領域は配列番号22のアミノ酸配列を含む。
【0113】
一部の実施形態において、配列番号11のアミノ酸配列若しくは配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;及び/又は配列番号23のアミノ酸配列若しくは配列番号23のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号11のアミノ酸配列を含み;及び/又は軽鎖可変領域は配列番号23のアミノ酸配列を含む。
【0114】
一部の実施形態において、配列番号12のアミノ酸配列若しくは配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;及び/又は配列番号24のアミノ酸配列若しくは配列番号24のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号12のアミノ酸配列を含み;及び/又は軽鎖可変領域は配列番号24のアミノ酸配列を含む。
【0115】
一部の実施形態において、配列番号106のアミノ酸配列若しくは配列番号106のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;及び/又は配列番号107のアミノ酸配列若しくは配列番号107のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号106のアミノ酸配列を含み;及び/又は軽鎖可変領域は配列番号107のアミノ酸配列を含む。
【0116】
一部の実施形態において、mAb004、mAb005、mAb008、mAb010、mAb011、mAb013、mAb020、mAb025、mAb032、mAb035、又はmAb037による以下の重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列並びに軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される:
【0117】
【表1】
【0118】
【表2-1】
【表2-2】
【0119】
一部の実施形態において、mAb004、mAb005、ヒト化mAb005、mAb008、mAb010、mAb011、mAb013、mAb020、mAb025、mAb032、mAb035、mAb037、又はヒト化mAb037による以下の重鎖可変(VH)配列及び軽鎖可変(VL)配列を含む抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される:
【0120】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0121】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分はモノクローナル抗体である。
【0122】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分は、ヒト、ヒト化、又はキメラ抗体である。
【0123】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分は、抗体断片、例えば、na Fv、Fab、Fab'、scFv、ダイアボディ、又はF(ab')2断片である。
【0124】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分は全長抗体である。
【0125】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分は1つ以上の病理学的ヒトタウ種に結合する。一部の実施形態において、病理学的ヒトタウ種は、アルツハイマー病(AD)、進行性核上麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、及びピック病(PiD)からなる群から選択されるタウオパチーからのものである。一部の実施形態において、病理学的ヒトタウ種は、アルツハイマー病(AD)、進行性核上麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、及びピック病(PiD)からなる群から選択されるタウオパチー脳からのものである。
【0126】
一部の実施形態において、病理学的ヒトタウ種は、タウ1A型、IB型、11A型、及びMB型;誤秩序タウ;誤無秩序タウ;サルコシル不溶性タウ;細胞外タウ沈着物;タウ凝集物;対らせん状細線維;神経原線維病理;並びに切断型タウ又は全長タウの高リン酸化形態のうちの1つ以上である。一部の実施形態において、病理学的ヒトタウは高リン酸化及びサルコシル不溶性タウである。一部の実施形態において、タウタンパク質は凝集し、及び/又は異常リン酸化タウである。一部の実施形態において、タウ凝集物及び/又は異常リン酸化タウは脳のシナプスに蓄積している。一部の実施形態において、タウ凝集物及び/又は異常リン酸化タウはタウオパチー脳のシナプスに蓄積している。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合性部分は、1つ以上の病理学的タウ種及び1つ以上の正常なタウ種の間で識別することができる。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合性部分は、対応する健常な脳試料からのタウ種と比較してタウオパチー脳試料(例えば、アルツハイマー病(AD)、進行性核上麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、又はピック病(PiD)脳からの試料)からのタウ種に優先的に結合する。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合性部分は、参照抗タウ抗体(例えば、HT7、C2N-8E12、又はBIIB092)と比較してタウオパチー脳試料からのより多くの病理学的タウ種に結合する。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合性部分は、参照抗タウ抗体と比較して健常な脳試料からのより少ない正常なタウ種に結合する。一部の実施形態において、参照抗タウ抗体は、HT7、C2N-8E12、又はBIIB092である。一部の実施形態において、タウオパチー脳試料は、AD、PSP、CBD、又はPiD脳試料である。一部の実施形態において、脳試料は、シナプス画分及び/又はそのサルコシル不溶性画分を含めて、全脳溶解液又は前頭皮質溶解液である。一部の実施形態において、脳試料は、脳溶解液のサルコシル不溶性シナプス画分である。
【0127】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分はIgGl又はIgG4抗体である。
【0128】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分は、タウシード形成を阻害することができる。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与後の阻害は、当該技術分野において公知の任意のアッセイにより測定された場合に、参照抗体又は抗原結合性部分の投与後よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%高い。
【0129】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分は、タウ増殖を阻害することができる。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与後の阻害は、当該技術分野において公知の任意のアッセイにより測定された場合に、参照抗体又は抗原結合性部分の投与後よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%高い。
【0130】
一部の実施形態において、本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分のいずれかによれば、抗体又は抗原結合性部分は、ある特定の分子量のタウ種に結合することができる。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、約64kD、約140kD、及び/又は約170kDのタウ種に結合することができる。
【0131】
抗体親和性
ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗pタウ抗体は、≦1μΜ、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、又は<0.001nMの解離定数(KD)を有する。KDは、当該技術分野において公知の任意の技術を使用して測定することができる。
【0132】
ヒト化抗体
非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しながらヒトに対する免疫原性を低減させるためにヒト化されてもよい。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(又はその部分)が非ヒト抗体に由来し、FR(又はその部分)がヒト抗体配列に由来する1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、場合により、ヒト定常領域の少なくとも部分を含む。一部の実施形態において、ヒト化抗体中の一部のFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を回復又は向上させるために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。
【0133】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro及びFransson、Front. Biosci. 13: 1619~1633頁(2008)において総説されており、例えば、Riechmannら、Nature 332:323~329頁(1988); Queenら、Proc. Nat 'lAcad. Sci. USA 86: 10029~10033頁(1989);米国特許第5,821,337号明細書、同第7,527,791号明細書、同第6,982,321号明細書、及び同第7,087,409号明細書;Kashmiriら、Methods 36:25~34頁(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフト化を記載する);Padlan、Mol. Immunol. 28:489~498頁(1991)(「リサーフェシング」を記載する);Dall'Acquaら、Methods 36:43~60頁(2005)(「FRシャッフリング」を記載する);及びOsbournら、Methods 36:61~68頁(2005)及びKlimkaら、Br. J. Cancer、83:252~260頁(2000)(FRシャッフリングの「ガイド化選択」アプローチを記載する)において更に記載されている。
【0134】
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域としては、「最良適合」方法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Simsら、J. Immunol. 151 :2296 (1993)を参照);軽鎖又は重鎖可変領域の特定の亜群のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89:4285 (1992);及びPrestaら、J. Immunol、151 :2623 (1993)を参照);ヒト成熟(体細胞突然変異)フレームワーク領域又はヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro及びFransson、Front. Biosci. 13: 1619~1633頁(2008)を参照);並びにFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Bacaら、J. Biol. Chem. 272: 10678~10684頁(1997)及びRosokら、J. Biol. Chem. 271: 22611~22618頁(1996)を参照)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0135】
一部の実施形態において、ヒト化mAb004、mAb005、mAb008、mAb010、mAb011、mAb013、mAb020、mAb025、mAb032、mAb035、又はmAb037であるヒト化抗pタウ抗体(例えば、単離された抗pタウ抗体)又はその抗原結合性部分が本明細書において提供される。一部の実施形態において、ヒト化抗pタウ抗体はヒト化mAb005である。一部の実施形態において、ヒト化抗pタウ抗体はヒト化mAb037である。
【0136】
一部の実施形態において、ヒト化抗pタウ抗体は、以下のヒト化mAb005又はヒト化mAb037による以下の重鎖可変(VH)配列及び軽鎖可変(VL)配列を有する:
【0137】
【表4】
【0138】
ライブラリー由来抗体
本発明の抗体は、所望の活性又は活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより単離されてもよい。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成するため及び所望の結合的特徴を有する抗体についてそのようなライブラリーをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野において公知である。そのような方法は、例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology 178: 1~37頁(O'Brienら編、Human Press、Totowa、NJ、2001)において総説されており、例えば、McCaffertyら、Nature 348:552~554頁; Clacksonら、Nature 352: 624~628頁(1991); Marksら、J. Mol. Biol. 222: 581~597頁(1992); Marks及びBradbury、m Methods in Molecular Biology 248: 161~175頁(Lo編、Human Press、Totowa、NJ、2003); Sidhuら、J. Mol. Biol. 338(2): 299~310頁(2004); Leeら、J. Mol. Biol. 340(5): 1073~1093頁(2004); Fellouse、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101 (34): 12467~12472頁(2004);並びにLeeら、J. Immunol. Methods 284(1 -2): 1 19~132頁(2004)において更に記載されている。
【0139】
ある特定のファージディスプレイ方法において、VH及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別々にクローニングされ、ファージライブラリー中で無作為に組み換えられ、それが次に、Winterら、Ann. Rev. Immunol、12: 433~455頁(1994)に記載されるように抗原結合性ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、単鎖Fv(scFv)断片又はFab断片のいずれかとして抗体断片を提示する。免疫化された供給源からのライブラリーは、ハイブリドーマの構築を要求することなく免疫原に対する高親和性抗体を提供する。代替的に、Griffithsら、EMBO J、12: 725~734頁(1993)に記載されるように、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、いかなる免疫化もなしに広範な非自己及び自己抗原に対する抗体の単一の供給源を提供することができる。最後に、Hoogenboom及びWinter、J. Mol. Biol, 227: 381~388頁(1992)に記載されるように、ナイーブライブラリーはまた、幹細胞からの非組換えV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダムな配列を含有するPCRプライマーを使用して、高度に可変のCDR3領域をコードし、及びin vitroで組換えを達成することにより合成的に作製することができる。ヒト抗体ファージライブラリーを記載する特許文献としては、例えば、米国特許第5,750,373号明細書、並びに米国特許出願公開第2005/0079574号明細書、同第2005/0119455号明細書、同第2005/0266000号明細書、同第2007/0117126号明細書、同第2007/0160598号明細書、同第2007/0237764号明細書、同第2007/0292936号明細書、及び同第2009/0002360号明細書が挙げられる。
【0140】
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体又は抗体断片は、本明細書においてヒト抗体又はヒト抗体断片と考えられる。
【0141】
多重特異性抗体
ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態において、結合特異性のうちの1つはタウに対するものであり、他方は任意の他の抗原に対するものである。ある特定の実施形態において、結合特異性のうちの1つはタウに対するものであり、他方はアミロイドベータに対するものである。ある特定の実施形態において、二重特異性抗体はタウの2つの異なるエピトープに結合してもよい。二重特異性抗体はまた、タウを発現する細胞に細胞毒性剤を局在化させるために使用されてもよい。二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片として調製され得る。
【0142】
多重特異性抗体を作製するための技術としては、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組換え共発現(Milstein及びCuello、Nature 305: 537 (1983))、国際公開第93/08829号パンフレット、及びTrauneckerら、EMBO J. 10: 3655 (1991)を参照)、並びに「ノブ-イン-ホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号明細書を参照)が挙げられるがこれらに限定されない。多重特異性抗体はまた、抗体Fc-ヘテロダイマー分子を作製するための静電ステアリング効果の操作(国際公開第2009/089004 A1号パンフレット);2つ又はそれより多くの抗体又は断片の架橋(例えば、米国特許第4,676,980号明細書、及びBrennanら、Science、229: 81 (1985)を参照);二重特異性抗体を製造するためのロイシンジッパーの使用(例えば、Kostelnyら、J. Immunol、148(5): 1547~1553頁(1992)を参照);二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術の使用(例えば、Hollingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90:6444~6448頁(1993)を参照);並びに単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用(例えば、Gruberら、J. Immunol、152:5368 (1994)を参照);並びに例えば、Tuttら、J. Immunol. 147: 60 (1991)に記載されるような三重特異性抗体の調製により作製されてもよい。
【0143】
抗体バリアント
ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗体のアミノ酸配列バリアントが意図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を向上させることが望ましいことがある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することにより、又はペプチド合成により調製されてもよい。そのような改変は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。最終構築物が所望の特徴、例えば、抗原結合性を有する限り、最終構築物に到達するために欠失、挿入、及び置換の任意の組合せを行うことができる。
【0144】
ある特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換、例えば保存的置換を有する抗体バリアントが提供される。置換的突然変異誘発のための関心対象の部位としてはHVR及びFRが挙げられる。アミノ酸置換が関心対象の抗体に導入され、生成物は、所望の活性、例えば、抗原結合性の保持/向上、免疫原性の減少、又はADCC若しくはCDCの向上についてスクリーニングされてもよい。
【0145】
置換バリアントの1つの種類は、親抗体(例えばヒト化又はヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、更なる研究のために選択される、結果としてもたらされたバリアントは、親抗体と比べてある特定の生物学的特性における改変(例えば、向上)(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)を有し、及び/又は親抗体のある特定の生物学的特性を実質的に保持している。例示的な置換バリアントは親和性成熟抗体であり、これは、好都合には、例えば、ファージディスプレイベースの親和性成熟技術、例えば本明細書に記載の技術を使用して、生成されてもよい。簡潔に述べれば、1つ以上のHVR残基を突然変異させ、バリアント抗体をファージ上に提示させ、特定の生物学的活性(例えば結合親和性)についてスクリーニングする。
【0146】
変更(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を向上させるために、HVR中で為されてもよい。そのような変更は、HVR「ホットスポット」、即ち、体細胞成熟プロセスの間に高い頻度で突然変異を起こすコドンによりコードされる残基(例えば、Chowdhury、Methods Mol. Biol. 207: 179~196頁(2008)を参照)、及び/又は抗原と接触する残基において為されてもよく、結果としてもたらされるバリアントVH又はVLは結合親和性について試験されてもよい。二次的なライブラリーを構築し、それから再選択を行うことによる親和性成熟が、例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology 178: 1~37頁(O'Brienら編、Human Press、Totowa、NJ、(2001)において記載されている。親和性成熟の一部の実施形態において、多様性は、様々な方法のいずれか(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、又はオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発)により成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。二次的なライブラリーが次に作出される。ライブラリーが次にスクリーニングされて、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントが同定される。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、1回に4~6個の残基)が無作為化されるHVR特異的アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基が、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発又はモデリングを使用して、特異的に同定されてもよい。特にCDR-H3及びCDR-L3が多くの場合に標的化される。
【0147】
ある特定の実施形態において、置換、挿入、又は欠失は、そのような変更が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で行われてもよい。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的変更(例えば、本明細書において提供されるような保存的置換)はHVR中で行われてもよい。そのような変更は、例えば、HVR中の抗原接触残基の外側であってもよい。上記に提供されるバリアントVH及びVL配列のある特定の実施形態において、各HVRのいずれかは変更されていない、又は1つ、2つ若しくは3つ以下のアミノ酸置換を含有する。
【0148】
突然変異誘発のために標的化され得る抗体の残基又は領域の同定のための有用な方法は、Cunningham及びWells (1989) Science、244: 1081~1085頁に記載されるように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法において、標的残基の残基又は群(例えば、荷電性残基、例えばarg、asp、his、lys、及びglu)が同定され、中性の又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)により置き換えられて、抗原との抗体の相互作用が影響されるかどうかが決定される。更なる置換が、初期置換に対して機能的な感受性を実証したアミノ酸位置において導入されてもよい。代替的に、又は追加的に、抗原-抗体複合体の結晶構造により抗体及び抗原の間の接触点が同定される。そのような接触残基及び隣接する残基が標的化され、置換のための候補として排除されてもよい。バリアントは、それらが所望の特性を含有するかどうかを決定するためにスクリーニングされてもよい。
【0149】
アミノ酸配列の挿入としては、1残基から100又はそれより多くの残基を含有するポリペプチドまでの長さの範囲内のアミノ及び/又はカルボキシル末端融合の他に、単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、酵素(例えばADEPTのため)又は抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの抗体のN又はC末端の融合が挙げられる。
【0150】
ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少させるように変更される。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、好都合には、1つ以上のグリコシル化部位が作出又は除去されるようにアミノ酸配列を変更することにより達成されてもよい。
【0151】
抗体がFc領域を含む場合、それに取り付けられた炭水化物が変更されてもよい。哺乳動物細胞により産生されるネイティブな抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN連結により一般に取り付けられる分岐した、二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wrightら、TIBTECH 15:26~32頁(1997)を参照。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸の他に、二分岐オリゴ糖構造の「ステム」中のGlcNAcに取り付けられたフコースを含んでもよい。一部の実施形態において、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、ある特定の向上した特性を有する抗体バリアントを作出するために為されてもよい。
【0152】
一部の実施形態において、Fc領域に(直接的又は間接的に)取り付けられたフコースを欠いた炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、そのような抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%又は20%~40%であってもよい。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号パンフレットに記載されるように、MALDI-TOF質量分析により測定される、Asn297に取り付けられた全ての糖構造(例えば、複雑な、ハイブリッド及び高マンノース構造)の合計と比べた、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を算出することにより決定される。Asn297は、Fc領域中の約297位(Fc領域残基のEuナンバリング)に位置するアスパラギン残基を指すが、抗体中の軽微な配列バリエーションに起因して、Asn297はまた、297位の約±3アミノ酸上流又は下流、即ち、294位及び300位の間に位置してもよい。そのようなフコシル化バリアントは、向上したADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号明細書(Presta, L.);同第2004/0093621号明細書(Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltdを参照)。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体バリアントに関する刊行物の例としては、米国特許出願公開第2003/0157108号明細書;国際公開第2000/61739号パンフレット;国際公開第2001/29246号パンフレット;米国特許出願公開第2003/0115614号明細書;米国特許出願公開第2002/0164328号明細書;米国特許出願公開第2004/0093621号明細書;米国特許出願公開第2004/0132140号明細書;米国特許出願公開第2004/0110704号明細書;米国特許出願公開第2004/0110282号明細書;米国特許出願公開第2004/0109865号明細書;国際公開第2003/085119号パンフレット;国際公開第2003/084570号パンフレット;国際公開第2005/035586号パンフレット;国際公開第2005/035778号パンフレット;国際公開第2005/053742号パンフレット;国際公開第2002/031140号パンフレット;Okazakiら、J. Mol. Biol. 336: 1239~1249頁(2004); Yamane-Ohnukiら、Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞系の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLed 3 CHO細胞(Ripkaら、Arch. Biochem. Biophys. 249:533~545頁(1986);米国特許出願公開第2003/0157108 Al号明細書、Presta, L.;及び国際公開第2004/056312 Al号パンフレット、Adamsら、特に実施例11)、並びにノックアウト細胞系、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnukiら、Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004); Kanda, Y.ら、Biotechnol. Bioeng., 94(4):680~688頁(2006);及び国際公開第2003/085107号パンフレットを参照)が挙げられる。
【0153】
例えば、抗体のFc領域に取り付けられた二分岐オリゴ糖がGlcNAcによりバイセクトされている、バイセクト型オリゴ糖を有する抗体バリアントが更に提供される。そのような抗体バリアントは、低減したフコシル化及び/又は向上したADCC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば、国際公開第2003/011878号パンフレット(Jean-Mairetら);米国特許第6,602,684号明細書(Umanaら);及び米国特許出願公開第2005/0123546号明細書(Umanaら)に記載されている。Fc領域に取り付けられたオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントもまた提供される。そのような抗体バリアントは、向上したCDC機能を有し得る。そのような抗体バリアントは、例えば、国際公開第1997/30087号パンフレット(Patelら);国際公開第1998/58964号パンフレット(Raju, S.);及び国際公開第1999/22764号パンフレット(Raju, S.)に記載されている。
【0154】
ある特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸改変が本明細書において提供される抗体のFc領域に導入され、それによりFc領域バリアントを生成してもよい。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置においてアミノ酸改変(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgGl、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含んでもよい。
【0155】
ある特定の実施形態において、本発明は、全てではなく一部のエフェクター機能を有する抗体バリアントを意図し、これにより、in vivoでの抗体の半減期が重要であるがある特定のエフェクター機能(例えば補体及びADCC)が不必要又は有害である応用のための望ましい候補となる。in vitro及び/又はin vivo細胞傷害性アッセイを実行してCDC及び/又はADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体がFcyR結合を欠くが(それゆえADCC活性を欠くと思われるが)、FcRn結合能力を保持することを確実にすることができる。ADCCを媒介するための主な細胞、NK細胞はFcyRIIIのみを発現する一方、単球はFcyRI、FcyRII及びFCYRIIIを発現する。造血細胞上のFCR発現は、Ravetch及びKinet、Annu. Rev. Immunol. 9:457~492頁(1991)の第464頁Table 3において要約されている。関心対象の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号明細書(例えば、Hellstrom, I.ら、Proc. Nat 'l Acad. Sci. USA 83:7059~7063頁(1986))及びHellstrom, I.ら、Proc. Nat 'l Acad. Sci. USA 82: 1499~1502頁(1985)を参照);米国特許第5,821,337号明細書(Bruggemann, M.ら、J. Exp. Med. 166: 1351~1361頁(1987)を参照)に記載されている。代替的に、非放射性アッセイ方法が用いられてもよい(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View、CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、Madison、WI)を参照)。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的に、又は追加的に、関心対象の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、動物モデル、例えばClynesら、Proc. Nat 'l Acad. Sci. USA 95:652~656頁(1998)に開示されるような動物モデルにおいて評価されてもよい。抗体がClqに結合できず、それゆえCDC活性を欠くことを確認するためにClq結合アッセイもまた実行され得る。例えば、国際公開第2006/029879号パンフレット及び国際公開第2005/100402号パンフレットにおけるClq及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが行われてもよい(例えば、Gazzano-Santoroら、J. Immunol. Methods 202: 163 (1996); Cragg, M.S.ら、Blood 101: 1045-1052 (2003);並びにCragg, M.S.及びM.J. Glennie、Blood 103:2738~2743頁(2004)を参照)。FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期の決定もまた、当該技術分野において公知の方法を使用して行うことができる(例えば、Petkova, S.B.ら、Int 'l. Immunol. 18(12): 1759~1769頁(2006)を参照)。
【0156】
低減したエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327及び329のうちの1つ以上の置換を有するものが挙げられる(米国特許第6,737,056号明細書)。そのようなFc突然変異体としては、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうちの2つ又はそれより多くにおいて置換を有するFc突然変異体が挙げられ、これには、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc突然変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号明細書)。
【0157】
FcRへの向上又は減少した結合を有するある特定の抗体バリアントが記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号明細書;国際公開第2004/056312号パンフレット、及びShieldsら、J. Biol. Chem. 9(2): 6591~6604頁(2001)を参照)。
【0158】
ある特定の実施形態において、抗体バリアントは、ADCCを向上させる1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333、及び/又は334(残基のEUナンバリング)における置換を有するFc領域を含む。
【0159】
一部の実施形態において、例えば、米国特許第6,194,551号明細書、国際公開第99/51642号パンフレット、及びIdusogieら、J. Immunol. 164: 4178~4184頁(2000)に記載されるように、変更(即ち、向上又は減少のいずれか)されたClq結合及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)を結果としてもたらすFc領域中の変更が為される。
【0160】
増加した半減期、及び母系IgGの胎児への移入の原因となる向上した新生児Fc受容体(FcRn)への結合を有する抗体(Guyerら、J. Immunol. 117:587 (1976)及びKimら、J. Immunol. 24:249 (1994))が米国特許出願公開第2005/0014934 A1号明細書(Hintonら)に記載されている。それらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を向上させる1つ以上の置換を有するFc領域を含む。そのようなFcバリアントとしては、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434のうちの1つ以上における置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが挙げられる(米国特許第7,371,826号明細書)。
【0161】
Fc領域バリアントの他の例に関してDuncan & Winter、Nature 322:738~40頁(1988);米国特許第5,648,260号明細書;米国特許第5,624,821号明細書;及び国際公開第94/29351号パンフレットも参照。
【0162】
ある特定の実施形態において、システイン操作された抗体、例えば、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換された「thioMAb」を作出することが望ましいことがある。特定の実施形態において、置換される残基は、抗体の接近可能な部位に存在する。それらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基がそれにより抗体の接近可能な部位に位置し、それを使用して、抗体を他の部分、例えば薬物部分又はリンカー-薬物部分にコンジュゲート化して、本明細書において更に記載されるようにイムノコンジュゲートを作出することができる。ある特定の実施形態において、以下の残基のうちのいずれか1つ以上がシステインで置換されてもよい:軽鎖のV205(Kabatナンバリング);重鎖のAl l 8(EUナンバリング);及び重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン操作された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号明細書に記載されるように生成されてもよい。
【0163】
ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗体は、当該技術分野において公知及び容易に利用可能な追加の非タンパク質性部分を含有するように更に改変されてもよい。抗体の誘導体化のために好適な部分としては水溶性ポリマーが挙げられるがそれに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/マレイン酸無水物コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0164】
ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因して製造における利点を有し得る。ポリマーは任意の分子量であってもよく、分岐又は非分岐であってもよい。抗体に取り付けられるポリマーの数は様々であってよく、1つより多くのポリマーが取り付けられる場合、それらは同じ又は異なる分子であり得る。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数及び/又は種類は、向上させるべき抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が定義された条件下の療法において使用されるかどうかなどが挙げられるがこれらに限定されない考慮に基づいて決定され得る。
【0165】
別の実施形態において、抗体、及び放射線への曝露により選択的に加熱され得る非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。一部の実施形態において、非タンパク質性部分はカーボンナノチューブである(Kamら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600~11605頁(2005))。放射線は任意の波長であってもよく、通常の細胞を害しないが、抗体-非タンパク質性部分の近位にある細胞が殺傷される温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長が挙げられるがこれに限定されない。
【0166】
アッセイ
本明細書において提供される抗pタウ抗体及び抗原結合性部分は、当該技術分野において公知の様々なアッセイにより同定され、それらの物理的/化学的特性及び/又は生物学的活性についてスクリーニングされ、及び/又は特徴付けられてもよい。
【0167】
1つの態様において、本発明の抗体又は抗原結合性部分は、例えば、公知の方法、例えばELISA、ウエスタンブロットなどによりその抗原結合活性について試験される。
【0168】
別の態様において、競合アッセイを使用して、タウへの結合について本明細書に記載の抗体又は抗原結合性部分と競合する抗体又は抗原結合性部分を同定してもよい。抗体が結合するエピトープをマッピングする詳細な例示的な方法は、Morris (1996)、「Epitope Mapping Protocols」、Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press、Totowa、NJ)において提供される。
【0169】
例示的な競合アッセイにおいて、固定化されたタウ種(例えば、病理学的タウ種)が、タウ種に結合する第1の標識された抗体(例えば、本明細書に任意の記載の抗体、例えばmAb005及びmAb037)並びにタウ種への結合について第1の抗体と競合するその能力について試験されている第2の非標識抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体はハイブリドーマ上清中に存在してもよい。対照として、固定化されたタウ種は、第1の標識された抗体を含むが第2の非標識抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。タウ種への第1の抗体の結合にとって許容的な条件下でのインキュベーション後に、過剰な未結合の抗体が除去され、固定化されたタウ種と会合した標識の量が測定される。固定化されたタウ種と会合した標識の量が対照試料中と比べて試験試料中で実質的に低減している場合、第2の抗体はタウ種への結合について第1の抗体と競合することが指し示される。Harlow及びLane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch. 14 (Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY)を参照。
【0170】
1つの態様において、生物学的活性を有する抗タウ抗体を同定するためのアッセイが提供される。生物学的活性は、例えば、複数の形態のタウ(例えば、モノマータウ、オリゴマータウ、非リン酸化タウ、及びリン酸化タウ)へのそのような抗体の結合、並びにタウタンパク質(例えば、脳中、例えば、脳のシナプス、皮質及び/又は海馬中の、全タウ、全可溶性タウ、可溶性非リン酸化タウ、可溶性リン酸化タウ、全不溶性タウ、不溶性非リン酸化タウ、不溶性リン酸化タウ、高リン酸化タウ、又は高リン酸化タウを含有する対らせん状細線維)のレベルを低減させることを含んでもよい。
【0171】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、そのような生物学的活性について試験される。例えば、タウオパチーの動物モデル、例えばタウトランスジェニックマウス(例えば、P301L)を使用して、脳切片への、例えば、トランスジェニックマウスの脳中の病理学的タウ種(例えば、神経原線維タングル)への抗タウ抗体の結合を検出することができる。更に、タウオパチーの動物モデル、例えばタウトランスジェニックマウス(例えば、P301L)を抗タウ抗体で処置することができ、実験当該技術分野において公知の技術を使用して、そのような処置がマウス脳中(例えば、脳皮質及び/又は海馬中)のタウタンパク質(例えば、全タウ、全可溶性タウ、可溶性リン酸化タウ、可溶性非リン酸化タウ、全不溶性タウ、不溶性リン酸化タウ、不溶性非リン酸化タウ、高リン酸化タウ、又は高リン酸化タウを含有する対らせん状細線維)のレベルを低減させるかどうかを評価することができる。
【0172】
イムノコンジュゲート
本発明はまた、1つ以上の他の治療剤又は放射活性同位体にコンジュゲート化した本明細書における抗タウ抗体を含むイムノコンジュゲートを提供する。
【0173】
一部の実施形態において、イムノコンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲート化して放射性コンジュゲートを形成した本明細書に記載されるような抗体又は抗原結合性部分を含む。様々な放射活性同位体が放射性コンジュゲートの製造のために利用可能である。例としては、At211、1131、1125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射活性同位体が挙げられる。放射性コンジュゲートが検出のために使用される場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えばtc99m若しくは1123、又は核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、mriとしても公知)のためのスピン標識、例えば再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン若しくは鉄を含んでもよい。
【0174】
抗体又は抗原結合性部分のコンジュゲートは、様々な機能的タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-l-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの機能的誘導体(例えばアジプイミド酸ジメチルHC1)、活性エステル(例えばスベリン酸ジサクシンイミジル)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えばビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えばl,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製されてもよい。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら、Science 238: 1098 (1987)に記載されるように調製され得る。炭素-14標識l-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、抗体への放射性ヌクレオチドのコンジュゲート化のための例示的なキレート剤である。国際公開第94/11026号パンフレットを参照。リンカーは、細胞中での細胞傷害性薬物の放出を促す「切断可能なリンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光解離性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chariら、Cancer Res. 52: 127~131頁(1992);米国特許第5,208,020号明細書)が使用されてもよい。
【0175】
本明細書におけるイムノコンジュゲートは、(例えば、Pierce Biotechnology Inc.、Rockford、IL.、U.S.A.)から商業的に入手可能な、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)が挙げられるがこれらに限定されないクロスリンカー試薬を用いて調製されるそのようなコンジュゲートを明示的に意図するがそれに限定されない。
【0176】
核酸
別の態様において、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる抗pタウ抗体又は抗原結合性部分をコードする核酸が本明細書において提供される。一部の実施形態において、そのような核酸はベクター(例えば、組換え発現ベクター)である。
【0177】
一部の実施形態において、抗pタウ抗体又はその抗原結合性部分をコードする核酸であって、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分が、a)i)配列番号49~59のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号49~59のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR1;ii)配列番号60~70のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号60~70のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR2;及び/若しくはiii)配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR3を含む重鎖可変領域;並びに/又はb)iv)配列番号82~90のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号82~90のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR1;v)配列番号91~95のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号91~95のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR2;及び/若しくはvi)配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、核酸が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖及び/又は軽鎖CDR配列は、表1及び表2に示される所与の抗体クローンについて指し示される通りである。
【0178】
一部の実施形態において、抗pタウ抗体又はその抗原結合性部分をコードする核酸であって、抗pタウ抗体又はその抗原結合性部分が、配列番号1~12及び106のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号1~12及び106のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;並びに/又は配列番号13~24及び107のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号13~24及び107のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む、核酸が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号1~12及び106のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;並びに/又は軽鎖可変領域は配列番号13~24及び107のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖及び軽鎖可変領域は、表3に示される所与の抗体クローンについて指し示される通りである。
【0179】
一部の実施形態において、抗pタウ抗体又はその抗原結合性部分をコードする核酸であって、核酸が、重鎖可変領域をコードする第1のコーディング配列を含み、第1のコーディング配列が、配列番号25~36及び108のいずれか1つのヌクレオチド配列若しくは配列番号25~36及び108のいずれか1つのヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに/又は、核酸が、軽鎖可変領域をコードする第2のコーディング配列を含み、第2のコーディング配列が、配列番号37~48及び109のいずれか1つのヌクレオチド配列若しくは配列番号37~48及び109のいずれか1つのヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、核酸が本明細書において提供される。一部の実施形態において、第1のコーディング配列は、配列番号25~36及び108のいずれか1つのヌクレオチド配列を含み;並びに/又は、第2のコーディング配列は、配列番号37~48及び109のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。
【0180】
一部の実施形態において、抗pタウ抗体又はその抗原結合性部分をコードする核酸であって、核酸が、重鎖可変領域をコードする第1のコーディング配列、及び軽鎖可変領域をコードする第2のコーディング配列を含み、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が、以下の核酸配列によりコードされるmAb004、mAb005、ヒト化mAb005、mAb008、mAb010、mAb011、mAb013、mAb020、mAb025、mAb032、mAb033、mAb037、又はヒト化mAb037のうちのいずれか1つである、核酸が本明細書において提供される:
【0181】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【0182】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0183】
一部の実施形態において、任意の本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分をコードする核酸によれば、核酸はベクターである。一部の実施形態において、ベクターは、宿主細胞における抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の発現のための発現ベクターである。意図される発現ベクターとしては、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、AAV、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、及びレトロウイルス、例えばラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、及び乳腺腫瘍ウイルスに由来するベクター)に基づくウイルスベクター並びに他の組換えベクターが挙げられるがこれらに限定されない。宿主細胞と適合性である限り、他のベクターを使用することができる。
【0184】
一部の実施形態において、本明細書に記載の実施形態のいずれかによるベクターは1つ以上の転写及び/又は翻訳制御エレメントを含む。利用される宿主/ベクターシステムに依存して、構成的及び誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めて、多数の好適な転写及び翻訳制御エレメントのいずれも発現ベクターにおいて使用することができる。
【0185】
一部の実施形態において、本明細書に記載の実施形態のいずれかによるベクターは、翻訳開始のためのリボソーム結合部位及び転写ターミネーターを含む。一部の実施形態において、ベクターは、発現を増幅させるための適切な配列を含む。一部の実施形態において、ベクターは、関心対象のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に融合したネイティブでないタグ(例えば、ヒスチジンタグ、ヘマグルチニンタグ、緑色蛍光タンパク質など)(例えば、抗原結合性構築物)をコードするヌクレオチド配列を含み、そのためタグを含む融合タンパク質の発現が可能となる。
【0186】
一部の実施形態において、プロモーターを含む本明細書に記載のベクターのいずれかによれば、プロモーターは、誘導性プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター、テトラサイクリン調節性プロモーター、ステロイド調節性プロモーター、金属調節性プロモーター、エストロゲン受容体調節性プロモーターなど)又は構成的プロモーター(例えば、CMVプロモーター、UBCプロモーターなど)である。一部の実施形態において、プロモーターは、空間的に制限された及び/又は時間的に制限されたプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、細胞種特異的プロモーターなど)である。
【0187】
コドン最適化
一部の実施形態において、本明細書に記載されるような抗pタウ抗体又は抗原結合性部分をコードする核酸は、コドン最適化されている、例えば、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分が発現される特有の宿主細胞に基づいてコドン最適化されている。本開示の任意のヌクレオチド配列は、関心対象の任意の種における発現のためにコドン最適化され得ることが当業者により理解される。コドン最適化は当該技術分野において周知であり、種特異的なコドン用法表を使用するコドン用法バイアスのためのヌクレオチド配列の改変を伴う。コドン用法表は、関心対象の種について最も高発現される遺伝子の配列解析に基づいて生成され得る。ヌクレオチド配列の改変は、ネイティブなポリヌクレオチド配列中に存在するコドンと種特異的なコドン用法表を比較することにより決定され得る。
【0188】
コドン最適化のための戦略及び方法論は当該技術分野において公知であり、様々なシステムのために利用可能である。一部の実施形態において、本明細書に記載の核酸は、宿主細胞における発現の増加のためにコドン最適化されている。
【0189】
当該技術分野においてよく理解されているように、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、ネイティブなヌクレオチド配列に対して100%より低い(例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%より低い)同一性を有するが、元々のネイティブなヌクレオチド配列によりコードされるものと同じ機能を有するポリペプチドを依然としてコードするヌクレオチド配列を結果としてもたらす。
【0190】
宿主細胞
別の態様において、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる抗pタウ抗体又は抗原結合性部分を含む又は発現することができる宿主細胞が本明細書において提供される。一部の実施形態において、宿主細胞は、本明細書に記載されるような抗pタウ抗体又は抗原結合性部分をコードする核酸(例えば、ベクター)、例えば異種核酸を含む。一部の実施形態において、宿主細胞は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。
【0191】
抗pタウ抗体又は抗原結合性部分をコードするベクターのクローニング又は発現のための好適な宿主細胞としては、原核及び真核細胞が挙げられる。例えば、抗体又はその抗原結合性部分は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合に、細菌中で製造されてもよい。細菌中での抗体断片及びポリペプチドの発現について、例えば、米国特許第5,648,237号明細書、同第5,789,199号明細書、及び同第5,840,523号明細書を参照。(大腸菌(E. coli)中での抗体断片の発現を記載するCharlton、Methods in Molecular Biology、Vol. 248 (B.K.C. Lo編、Humana Press、Totowa、NJ、2003)、245~254頁も参照)。発現後に、抗体又は抗原結合性部分は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離されてもよく、更に精製され得る。
【0192】
原核生物に加えて、真核性微小生物、例えば糸状真菌又は酵母は、抗体をコードするベクターのための好適なクローニング又は発現宿主であり、これには、そのグリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的又は完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体の産生を結果としてもたらす真菌及び酵母株が含まれる。Gemgross、Nat. Biotech. 22: 1409~1414頁(2004)、及びLiら、Nat. Biotech. 24:210~215頁(2006)を参照。
【0193】
グリコシル化された抗体の発現のための好適な宿主細胞はまた多細胞生物に由来してもよい。昆虫細胞と組み合わせて、特にはスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために使用され得る多数のバキュロウイルス株が同定されている。
【0194】
植物細胞培養物もまた宿主として利用され得る。例えば、米国特許第5,959,177号明細書、同第6,040,498号明細書、同第6,420,548号明細書、同第7,125,978号明細書、及び同第6,417,429号明細書(トランスジェニック植物において抗体を製造するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載する)を参照。
【0195】
脊椎動物細胞もまた宿主として使用され得る。例えば、懸濁状態での増殖のために適合された哺乳動物細胞系は有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞系の例としては、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1系(COS-7);ヒト胎児腎臓系(例えば、Grahamら、J. Gen Virol. 36:59 (1977)において記載されるような293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather、Biol. Reprod. 23:243~251頁(1980)において記載されるようなTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝細胞(BRL 3 A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562);例えば、Matherら、Annals N. Y. Acad. Sci. 383:44~68頁(1982)において記載されるようなTRI細胞;MRC 5細胞;及びFS4細胞が挙げられる。他の有用な哺乳動物宿主細胞系としては、DHFR” CHO細胞(Urlaubら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980))を含めて、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;並びに骨髄腫細胞系、例えばY0、NSO及びSp2/0が挙げられる。抗体製造のために好適なある特定の哺乳動物宿主細胞系の総説について、例えば、Yazaki及びWu、Methods in Molecular Biology、Vol. 248 (B.K.C. Lo編、Humana Press、Totowa、NJ)、255~268頁(2003)を参照。
【0196】
一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分をコードする核酸を含む宿主細胞であって、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分が、a)i)配列番号49~59のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号49~59のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR1;ii)配列番号60~70のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号60~70のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR2;及び/若しくはiii)配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR3を含む重鎖可変領域;並びに/又はb)iv)配列番号82~90のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号82~90のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR1;v)配列番号91~95のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号91~95のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR2;及び/若しくはvi)配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、宿主細胞が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖及び/又は軽鎖CDR配列は、表1及び表2に示される所与の抗体クローンについて指し示される通りである。
【0197】
一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分をコードする核酸を含む宿主細胞であって、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分が、配列番号1~12及び106のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号1~12及び106のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;並びに/又は配列番号13~24及び107のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号13~24及び107のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む、宿主細胞が本明細書において提供される。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号1~12及び106のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;並びに/又は軽鎖可変領域は配列番号13~24及び107のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖及び軽鎖可変領域は、表3に示される所与の抗体クローンについて指し示される通りである。
【0198】
一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分をコードする核酸を含む宿主細胞であって、核酸が、重鎖可変領域をコードする第1のコーディング配列を含み、第1のコーディング配列が、配列番号25~36及び108のいずれか1つのヌクレオチド配列若しくは配列番号25~36及び108のいずれか1つのヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含み;並びに/又は、核酸が、軽鎖可変領域をコードする第2のコーディング配列を含み、第2のコーディング配列が、配列番号37~48及び109のいずれか1つのヌクレオチド配列若しくは配列番号37~48及び109のいずれか1つのヌクレオチド配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、宿主細胞が本明細書において提供される。一部の実施形態において、第1のコーディング配列は、配列番号25~36及び108のいずれか1つのヌクレオチド配列を含み;並びに/又は、第2のコーディング配列は、配列番号37~48及び109のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。
【0199】
本明細書に記載されるような核酸及びベクターは、十分に開発されたトランスフェクション技術(例えば、Angel, M.ら、(2010). PLoS ONE、5(7):e11756を参照);並びに商業的に入手可能なQiagenのTransMessenger(登録商標)試薬、StemgentのStemfect(商標) RNA Transfection Kit、及びMims BioのTransiT(登録商標)-mRNA Transfection Kitを使用して細胞に提供されてもよい。Beumer, K. J.ら、(2008). Proc. Natl. Acad. Sci. USA、105(50):19821~19826頁も参照。宿主細胞に核酸を移入するために有用な多くのベクター、例えば、プラスミド、コスミド、ミニサークル、ファージ、ウイルスなどが利用可能である。核酸を含むベクターは、エピソーム的に、例えば、プラスミド、ミニサークルDNA、ウイルス、例えばサイトメガロウイルス、アデノウイルスなどとして維持されてもよく、又はそれらは、相同組換え又はランダム組込みを通じて、宿主細胞ゲノムに組み込まれてもよく、後者は例えば、レトロウイルス由来ベクター、例えばMMLV、HIV-1、ALVなどである。
【0200】
ベクターは細胞に直接的に提供されてもよい。換言すれば、ベクターが細胞に取り込まれるように細胞をベクターと接触させる。エレクトロポレーション、塩化カルシウムトランスフェクション、微量注射、及びリポフェクションを含めて、細胞をプラスミドである核酸ベクターと接触させる方法は当該技術分野において周知である。ウイルスベクターの送達のために、本明細書に記載されるような核酸を含むウイルス粒子と細胞を接触させる。レトロウイルス、例えば、レンチウイルスは、本開示の方法にとって特に好適である。一般的に使用されるレトロウイルスベクターは「欠陥性」であり、例えば、生産的感染のために要求されるウイルスタンパク質を製造できない。むしろ、ベクターの複製はパッケージング細胞系中での増殖を要求する。関心対象の核酸を含むウイルス粒子を生成するために、該核酸を含むレトロウイルス核酸は、パッケージング細胞系によりウイルスカプシド中にパッケージングされる。異なるパッケージング細胞系は、カプシドに組み込まれる異なるエンベロープタンパク質(エコトロピック、アンホトロピック又はゼノトロッピック)を提供し、このエンベロープタンパク質は、細胞についてのウイルス粒子の特異性を決定する(マウス及びラットについてエコトロピック;ヒト、イヌ及びマウスを含むほとんどの哺乳動物細胞種についてアンホトロピック;並びにマウス細胞を除くほとんどの哺乳動物細胞種についてゼノトロッピック)。パッケージングされたウイルス粒子により細胞が標的化されることを確実にするために適切なパッケージング細胞系が使用され得る。初期化因子をコードする核酸を含むレトロウイルスベクターをパッケージング細胞系に導入し、パッケージング系により生成されるウイルス粒子を収集する方法は当該技術分野において周知である。核酸はまた、直接的な微量注射(例えば、ゼブラフィッシュ胚へのRNAの注射)により導入され得る。
【0201】
ベクターは、一般に、関心対象の核酸の発現の駆動、即ち、転写活性化のための好適なプロモーターを含む。換言すれば、関心対象の核酸はプロモーターに作動可能に連結される。これは、遍在的に活性のプロモーター、例えば、CMV-13-アクチンプロモーター、又は誘導性プロモーター、例えば特定の細胞集団において活性である、若しくは薬物、例えばテトラサイクリンの存在に応答するプロモーターを含んでもよい。転写活性化により、転写が少なくとも約10倍(例えば少なくとも約100倍、1000倍、又はより大きい倍数のいずれか)宿主細胞中での基礎レベルを上回って増加されることが意図される。追加的に、ベクターは、宿主細胞中の選択マーカーをコードする核酸配列を含んでもよい。
【0202】
本開示の方法
抗pタウ抗体又は抗原結合性部分を調製する方法
本明細書に記載されるような抗体及びその抗原結合性部分は、例えば、米国特許第4,816,567号明細書に記載されるように、組換え法及び組成物を使用して製造されてもよい。一部の実施形態において、方法は、本明細書に記載の抗pタウ抗体又は抗原結合性部分をコードする核酸を用いる。一部の実施形態において、核酸は1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)である。一部の実施形態において、そのような核酸を含む宿主細胞が用いられる。1つのそのような実施形態において、宿主細胞は、(1)抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分の軽鎖可変領域を含むアミノ酸配列及び抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分の重鎖可変領域を含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、又は(2)抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分の軽鎖可変領域を含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分の重鎖可変領域を含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、それで形質転換されている)。一部の実施形態において、宿主細胞は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分を調製する方法が提供され、方法は、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の発現のために好適な条件下で、本明細書において提供されるような抗pタウ抗体又は抗原結合性部分をコードする核酸を含む宿主細胞を培養すること、及び場合により、宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から抗pタウ抗体又は抗原結合性部分を回収することを含む。
【0203】
抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の組換え製造のために、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分をコードする核酸、例えば、本明細書に記載されるような核酸が単離され、更なるクローニング及び/又は宿主細胞中での発現のために1つ以上のベクターに挿入される。そのような核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離及びシークエンシングされ得る。
【0204】
別の態様において、本明細書に記載の方法のいずれかにしたがって調製された抗pタウ抗体又は抗原結合性部分が本明細書において提供される。
【0205】
病理学的タウを検出する方法
ある特定の実施形態において、本明細書において提供される任意の抗pタウ抗体は、生物学的試料中の1つ以上の病理学的タウ種の存在を検出するために有用である。「検出する」という用語は、本明細書において使用される場合、定量的又は定性的な検出を包含する。ある特定の実施形態において、生物学的試料は、細胞又は組織、例えば脳脊髄液、脳の細胞若しくは組織(例えば、脳皮質若しくは海馬)、又は血液を含む。一部の実施形態において、生物学的試料は脳脊髄液である。
【0206】
一部の実施形態において、診断又は検出の方法における使用のための抗pタウ抗体が提供される。更なる態様において、生物学的試料中の1つ以上の病理学的タウ種の存在を検出する方法が提供される。ある特定の実施形態において、方法は、1つ以上の病理学的タウ種への抗pタウ抗体の結合のために許容的な条件下で本明細書に記載されるような抗pタウ抗体と生物学的試料を接触させること、及び複合体が抗pタウ抗体及び1つ以上の病理学的タウ種の間で形成されるかどうかを検出することを含む。そのような方法はin vitro又はin vivoの方法であってもよい。更に、試験生物学的試料中の抗pタウ抗体及び1つ以上の病理学的タウ種の間で形成される複合体は、対照生物学的試料(例えば、1以上の健常対象からの生物学的試料)中で形成される複合体と比較され得る。試験生物学的試料中の抗pタウ抗体及び1つ以上の病理学的タウ種の間で形成される複合体の量はまた、定量化され、対照生物学的試料(例えば、1以上の健常対象からの生物学的試料)中で形成される複合体の量又は健常対象において形成されることが既知である複合体の平均量と比較され得る。
【0207】
一部の実施形態において、抗pタウ抗体は、抗pタウ抗体を用いる療法、例えば、1つ以上の病理学的タウ種が患者の選択のためのバイオマーカーである療法のために適格な対象を選択するために使用される。例えば、一部の実施形態において、抗pタウ抗体は、対象がタウタンパク質疾患若しくは障害を有するかどうか、又は対象がタウタンパク質疾患若しくは障害に高リスクである(若しくはその素因を有する)かどうかを検出するために使用される。
【0208】
一部の実施形態において、1つ以上の病理学的タウ種は、タウ1A型、IB型、11 A型、及びMB型;誤秩序タウ;誤無秩序タウ;サルコシル不溶性タウ;細胞外タウ沈着物;タウ凝集物;対らせん状細線維;神経原線維病理;並びに切断型タウ又は全長タウの高リン酸化形態から選択される。一部の実施形態において、1つ以上の病理学的タウ種は高リン酸化及びサルコシル不溶性タウを含む。
【0209】
本発明の抗体を使用して診断され得る例示的な疾患又は障害としては、タウタンパク質関連疾患又は障害、及び1つ以上の病理学的タウ種の形成により引き起こされる又はそれと関連付けられる疾患又は障害が挙げられる。一部の実施形態において、本発明の抗体を使用して診断され得る疾患又は障害としては、推論、状況判断、記憶能力、学習、及び/又は特別なナビゲーションを含む認知機能の障害又は喪失において現れるタウタンパク質関連疾患又は障害が挙げられる。特に、本発明の抗体を使用して診断され得る疾患又は障害としては、タウオパチー、例えば神経変性タウオパチーが挙げられる。本発明の抗体を使用して診断され得る例示的な疾患又は障害としては、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病(HD)、パーキンソン病(PD)、クロイツフェルト-ヤコブ病、拳闘家認知症、ダウン症候群、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー病、英国型認知症、デンマーク型認知症、封入体筋炎、プリオンタンパク質脳アミロイド血管障害、外傷性脳傷害、グアムパーキンソニズム-認知症複合体、神経原線維タングルを伴う非グアム島運動ニューロン疾患、嗜銀顆粒性認知症、大脳皮質基底核変性症、石灰化を伴うびまん性神経原線維タングル、前頭側頭型認知症、第17染色体に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、ハラーフォルデン-シュパッツ病、多系統萎縮症(multiple system atrophy)、ニーマン-ピック病C型、淡蒼球-橋-黒質変性症(Pallido-ponto-nigral degeneration)、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上麻痺、亜急性硬化性全脳炎、神経原繊維変化型認知症(Tangle-only dementia)、グリア細胞球状封入体を伴う白質タウオパチー、前頭側頭型認知症、脳炎後パーキンソニズム、第17染色体に連鎖したパーキンソニズム、及び筋強直性ジストロフィーが挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態において、本発明の抗体を使用して診断され得る障害は、アルツハイマー病(AD)、進行性核上麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、又はピック病(PiD)である。
【0210】
ある特定の実施形態において、標識された抗pタウ抗体が提供される。標識としては、直接的に検出される標識又は部分(例えば蛍光、発色団、高電子密度、化学発光、及び放射性標識)の他に、例えば、酵素反応又は分子相互作用を通じて、間接的に検出される部分、例えば酵素又はリガンドが挙げられるがこれらに限定されない。例示的な標識としては、放射性同位体2P、14C、1251、H、及びmI、フルオロフォア、例えば希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号明細書)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化する酵素、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、又はミクロペルオキシダーゼと連結された、複素環式オキシダーゼ、例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、並びに安定なフリーラジカルなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0211】
タウタンパク質関連疾患を治療する方法
本開示の一部の態様において、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、対象においてタウタンパク質関連疾患を治療又は予防する目的のために用いられる。一部の実施形態において、疾患はタウオパチーである。一部の実施形態において、タウオパチーは神経変性タウオパチーである。一部の実施形態において、タウオパチーは、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病(HD)、パーキンソン病(PD)、クロイツフェルト-ヤコブ病、拳闘家認知症、ダウン症候群、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー病、英国型認知症、デンマーク型認知症、封入体筋炎、プリオンタンパク質脳アミロイド血管障害、外傷性脳傷害、グアムパーキンソニズム-認知症複合体、神経原線維タングルを伴う非グアム島運動ニューロン疾患、嗜銀顆粒性認知症、大脳皮質基底核変性症、石灰化を伴うびまん性神経原線維タングル、前頭側頭型認知症、第17染色体に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、ハラーフォルデン-シュパッツ病、多系統萎縮症(multiple system atrophy)、ニーマン-ピック病C型、淡蒼球-橋-黒質変性症(Pallido-ponto-nigral degeneration)、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上麻痺、亜急性硬化性全脳炎、神経原繊維変化型認知症(Tangle-only dementia)、グリア細胞球状封入体を伴う白質タウオパチー、前頭側頭型認知症、脳炎後パーキンソニズム、第17染色体に連鎖したパーキンソニズム、及び筋強直性ジストロフィーからなる群から選択される。抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分、抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分をコードする核酸、及び/又は抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分を発現することができる宿主細胞を含むものを含む、様々な製剤に組み込まれ得る。より特には、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、適切な薬学的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせることにより医薬組成物に製剤化され得る。一部の実施形態において、対象への抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与は、以下の効果のうちの1つ以上を有する:認知記憶能力の保持又は増加、記憶喪失の緩慢化、タウタンパク質のレベルにおける低減、タウ凝集物の増殖の阻害及び/又は逆転、並びにタウシード形成の阻害及び/又は逆転。一部の実施形態において、対象への抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与は、以下の効果のうちの1つ以上を有する:認知記憶能力の保持又は増加、記憶喪失の緩慢化、タウタンパク質のレベルにおける低減、タウ凝集物の増殖の阻害、及びタウシード形成の阻害。一部の実施形態において、投与後の効果における変化は、当該技術分野において公知のアッセイにより測定された場合に、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与前よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%低い。一部の実施形態において、投与後の効果における変化は、当該技術分野において公知のアッセイにより測定された場合に、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与前よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%高い。
【0212】
一部の実施形態において、それを必要とする対象においてタウオパチーを治療又は予防する方法であって、対象に本明細書に記載の実施形態のいずれかによる抗pタウ抗体又は抗原結合性部分を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。一部の実施形態において、対象への抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与は、以下の効果のうちの1つ以上を有する:認知記憶能力の保持又は増加、記憶喪失の緩慢化、タウタンパク質のレベルにおける低減、タウ凝集物の増殖の阻害及び/又は逆転、並びにタウシード形成の阻害及び/又は逆転。一部の実施形態において、対象への抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与は、以下の効果のうちの1つ以上を有する:認知記憶能力の保持又は増加、記憶喪失の緩慢化、タウタンパク質凝集物のレベルにおける低減、タウ凝集物の増殖の阻害、及びタウシード形成の阻害。一部の実施形態において、投与後の効果における変化は、当該技術分野において公知のアッセイにより測定された場合に、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与前よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%低い。一部の実施形態において、投与後の効果における変化は、当該技術分野において公知のアッセイにより測定された場合に、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与前よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%高い。
【0213】
一部の実施形態において、タウタンパク質関連疾患を有する又はそれを発症するリスクがある対象において認知記憶能力を保持若しくは増加させ又は記憶喪失を緩慢化させる方法であって、対象に本明細書に記載の実施形態のいずれかによる抗pタウ抗体又は抗原結合性部分を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
【0214】
一部の実施形態において、タウタンパク質関連疾患を有する又はそれを発症するリスクがある対象においてタウタンパク質のレベルを低減させる方法であって、対象に本明細書に記載の実施形態のいずれかによる抗pタウ抗体又は抗原結合性部分を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。一部の実施形態において、タウタンパク質関連疾患を有する又はそれを発症するリスクがある対象においてタウタンパク質凝集物のレベルを低減させる方法であって、対象に本明細書に記載の実施形態のいずれかによる抗pタウ抗体又は抗原結合性部分を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。一部の実施形態において、非リン酸化タウタンパク質、リン酸化タウタンパク質、及び/又は高リン酸化タウタンパク質のレベルは、抗体又は抗原結合性部分の投与の前の対象におけるそれらのレベルと比較して対象において低減される。一部の実施形態において、タウ凝集物及び/又は異常リン酸化タウタンパク質は脳のシナプスに蓄積している。一部の実施形態において、タウ凝集物及び/又は異常リン酸化タウタンパク質はタウオパチー脳のシナプスに蓄積している。一部の実施形態において、病理学的タウ種のレベルは、抗体又は抗原結合性部分の投与の前の対象におけるそのレベルと比較して対象において低減される。一部の実施形態において、投与後の効果における変化は、当該技術分野において公知のアッセイにより測定された場合に、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与前よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%低い。
【0215】
一部の実施形態において、タウタンパク質関連疾患を有する又はそれを発症するリスクがある対象においてタウ凝集物の増殖を阻害し及び/又は逆転させる方法であって、対象に本明細書に記載の実施形態のいずれかによる抗pタウ抗体又は抗原結合性部分を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。一部の実施形態において、タウタンパク質関連疾患を有する又はそれを発症するリスクがある対象においてタウ凝集物の増殖を阻害する方法であって、対象に本明細書に記載の実施形態のいずれかによる抗pタウ抗体又は抗原結合性部分を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。一部の実施形態において、投与後の効果における変化は、当該技術分野において公知のアッセイにより測定された場合に、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与前よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%低い。
【0216】
一部の実施形態において、タウタンパク質関連疾患を有する又はそれを発症するリスクがある対象においてタウシード形成を阻害し及び/又は逆転させる方法であって、対象に本明細書に記載の実施形態のいずれかによる抗pタウ抗体又は抗原結合性部分を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。一部の実施形態において、タウタンパク質関連疾患を有する又はそれを発症するリスクがある対象においてタウシード形成を阻害する方法であって、対象に本明細書に記載の実施形態のいずれかによる抗pタウ抗体又は抗原結合性部分を投与することを含む、方法が本明細書において提供される。一部の実施形態において、投与後の効果における変化は、当該技術分野において公知のアッセイにより測定された場合に、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与前よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%低い。
【0217】
一部の実施形態において、対象への抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与を含む方法のいずれかによれば、タウタンパク質関連疾患はタウオパチーである。一部の実施形態において、タウオパチーは神経変性タウオパチーである。一部の実施形態において、タウオパチーは、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病(HD)、パーキンソン病(PD)、クロイツフェルト-ヤコブ病、拳闘家認知症、ダウン症候群、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー病、英国型認知症、デンマーク型認知症、封入体筋炎、プリオンタンパク質脳アミロイド血管障害、外傷性脳傷害、グアムパーキンソニズム-認知症複合体、神経原線維タングルを伴う非グアム島運動ニューロン疾患、嗜銀顆粒性認知症、大脳皮質基底核変性症、石灰化を伴うびまん性神経原線維タングル、前頭側頭型認知症、第17染色体に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、ハラーフォルデン-シュパッツ病、多系統萎縮症(multiple system atrophy)、ニーマン-ピック病C型、淡蒼球-橋-黒質変性症(Pallido-ponto-nigral degeneration)、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上麻痺、亜急性硬化性全脳炎、神経原繊維変化型認知症(Tangle-only dementia)、グリア細胞球状封入体を伴う白質タウオパチー、前頭側頭型認知症、脳炎後パーキンソニズム、第17染色体に連鎖したパーキンソニズム、及び筋強直性ジストロフィーからなる群から選択される。
【0218】
一部の実施形態において、対象への抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与を含む方法のいずれかによれば、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分、抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分をコードする核酸、及び/又は抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分を発現することができる宿主細胞を含む製剤に組み込まれる。一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、適切な薬学的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせることにより医薬組成物に製剤化される。
【0219】
一部の実施形態において、対象への抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与を含む方法のいずれかによれば、方法は、対象に少なくとも1つの追加の治療剤、例えば生物学的に活性の物質又は化合物を投与することを更に含み、該治療剤としては、例えば、タウオパチー並びに/又はアミロイドーシス、アミロイド若しくはアミロイド様タンパク質、例えばアルツハイマー病に関与するアミロイドβタンパク質と関連付けられる疾患及び障害の群の薬物療法において使用される公知の化合物が挙げられる。一部の実施形態において、少なくとも1つの追加の治療剤は、神経学的薬物、コルチコステロイド、抗生物質、抗ウイルス剤、抗pタウ抗体、タウ阻害剤、抗アミロイドベータ抗体、ベータ-アミロイド凝集阻害剤、抗BACEl抗体、及びBACE1阻害剤から選択される。一部の実施形態において、少なくとも1つの追加の治療剤は、ニューロン伝達増強剤、精神療法薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、カルシウム-チャネルブロッカー、生体アミン、ベンゾジアゼピン精神安定剤、アセチルコリン合成、貯蔵若しくは放出増強剤、アセチルコリンポストシナプス受容体アゴニスト、モノアミンオキシダーゼ-A若しくは-B阻害剤、N-メチル-D-アスパラギン酸グルタミン酸受容体アンタゴニスト、非ステロイド性抗炎症性薬物、抗オキシダント、セロトニン作動性受容体アンタゴニスト、又は他の治療剤から選択される。特に、生物活性剤又は化合物は、酸化ストレスに対する化合物、抗アポトーシス化合物、金属キレーター、DNA修復の阻害剤、例えばピレンゼピン及び代謝物、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸(3 APS)、1,3-プロパンジスルホネート(1,3PDS)、セクレターゼ活性化因子、ベータ-及びガンマ-セクレターゼ阻害剤、タウタンパク質、抗タウ抗体(国際公開第2012049570号パンフレット、国際公開第2014028777号パンフレット、国際公開第2014165271号パンフレット、国際公開第2014100600号パンフレット、国際公開第2015200806号パンフレット、米国特許第8,980,270号明細書及び同第8,980,271号明細書に開示される抗体が挙げられるがこれらに限定されない)、神経伝達物質、ベータシート破壊剤、抗炎症性分子、「非定型抗精神病剤」、例えばクロザピン、ジプラシドン、リスペリドン、アリピプラゾール若しくはオランザピンなど又はコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)、例えばタクリン、リバスチグミン、ドネペジル、及び/若しくはガランタミン並びに他の薬物及び栄養サプリメント、例えば、ビタミンB 12、システイン、アセチルコリンの前駆体、レシチン、コリン、ギンコ・ビローバ、アセチル-L-カルニチン、イデベノン、プロペントフィリン、又はキサンチン誘導体などから選択される少なくとも1つの化合物を含んでもよい。
【0220】
上記に記載されるそのような併用療法は、組み合わせた投与(2つ又はそれより多くの治療剤が同じ又は別々の製剤中に含まれる)、及び別々の投与を包含し、後者の場合、本発明の抗体の投与は、追加の治療剤又は剤の投与の前、同時、及び/又は後に行われ得る。一部の実施形態において、抗pタウ抗体の投与及び追加の治療剤の投与は、互いの約1か月以内、又は約1、2若しくは3週以内、又は約1、2、3、4、5、若しくは6日以内に行われる。
【0221】
一部の実施形態において、対象への抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与を含む方法のいずれかによれば、対象は、タウタンパク質関連疾患、例えば、本明細書に記載のものを含めて、タウオパチーを有する又はそれを発症するリスクがあると診断される。一部の実施形態において、対象は、アルツハイマー病(AD)、進行性核上麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、及びピック病(PiD)からなる群から選択されるタウオパチーを有する又はそれを発症するリスクがあると診断される。
【0222】
一部の実施形態において、対象への抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与を含む方法のいずれかによれば、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分は、a)i)配列番号49~59のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号49~59のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR1;ii)配列番号60~70のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号60~70のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR2;及び/若しくはiii)配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号71~81のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR3を含む重鎖可変領域;並びに/又はb)iv)配列番号82~90のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号82~90のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR1;v)配列番号91~95のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号91~95のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR2;及び/若しくはvi)配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号96~105のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、重鎖及び/又は軽鎖CDR配列は、表1及び表2に示される所与の抗体クローンについて指し示される通りである。
【0223】
一部の実施形態において、対象への抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与を含む方法のいずれかによれば、抗pタウ抗体又はその抗原結合性部分は、配列番号1~12及び106のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号1~12及び106のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖可変領域;並びに/又は配列番号13~24及び107のいずれか1つのアミノ酸配列若しくは配列番号13~24及び107のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、重鎖可変領域は配列番号1~12及び106のいずれか1つのアミノ酸配列を含み;並びに/又は軽鎖可変領域は配列番号13~24及び107のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖及び軽鎖可変領域は、表3に示される所与の抗体クローンについて指し示される通りである。
【0224】
本発明の抗体(及び任意の追加の治療剤)は、任意の好適な手段により投与することができ、該手段としては、非経口、肺内、及び鼻腔内、並びに、局所的な治療のために所望される場合、病巣内投与が挙げられる。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与を含む。投薬は任意の好適な経路により、例えば、注射、例えば静脈内又は皮下注射により行うことができ、これは部分的に、投与が短期であるのかそれとも慢性的であるのかに依存する。一部の実施形態において、対象への抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与は静脈内である。一部の実施形態において、対象への抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の投与は皮下である。様々な時点にかけての単回又は複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むがこれらに限定されない、様々な投薬スケジュールが本明細書において意図される。
【0225】
本発明の抗体は、良質な医学のための原則と合致する様式で製剤化、投薬、及び投与されてもよい。この文脈における考慮のための要因としては、治療されている特定の障害、治療されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的な条件、障害の原因、剤の送達の部位、投与の方法、投与のスケジュール、及び医師に知られる他の要因が挙げられる。抗体は、その必要はないが場合により、問題とする障害を予防又は治療するために現在使用されている1つ以上の剤と共に製剤化される。そのような他の剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害又は治療の種類、及び上記に議論される他の要因に依存する。これらは、一般に、本明細書に記載されるものと同じ投薬量及び投与経路、又は本明細書に記載の投薬量の約1~99%、又は適切であると経験的/臨床的に決定される任意の投薬量及び任意の経路において使用される。
【0226】
疾患の予防又は治療のために、本発明の抗体の適切な投薬量(単独で又は1つ以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的又は治療目的のいずれのために投与されるのか、先行する療法、患者の臨床歴及び抗体に対する応答、並びに主治医の自由裁量に依存する。抗体は、好適には、1回で又は一連の治療にかけて患者に投与される。疾患の種類及び重症度に依存して、約1μg/kg~15mg/kg(例えば0.lmg/kg~10mg/kg)の抗体が、例えば、1つ以上の別々の投与によるのか、それとも連続注入によるのかに関わらず、患者への投与のための初期候補投薬量であり得る。1つの典型的な1日当たりの投薬量は、上記の要因に依存して、約1μg/kg~100mg/kgの範囲内又はより多くであり得る。数日又はより長期にかけての繰返しの投与のために、条件に依存して、治療は、一般に、疾患症状の所望の抑制が起こるまで持続されてもよい。抗体の1つの例示的な投薬量は約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲内である。そのため、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg若しくは10mg/kg(又はこれらの任意の組合せ)の1つ以上の用量が患者に投与されてもよい。そのような用量は、間欠的に、例えば、週毎又は3週毎に投与されてもよい(例えば、患者は抗体の約2~約20、又は例えば、約6の用量を与えられる)。初期のより高い負荷用量、続いて1つ以上のより低い用量が投与されてもよい。しかしながら、他の投薬レジメンが有用なことがある。この療法の進行は従来の技術及びアッセイによりモニターされ得る。
【0227】
上記の任意の製剤又は治療方法は、抗pタウ抗体の代わりに又はそれに加えて本発明のイムノコンジュゲートを使用して実行されてもよいことが理解される。
【0228】
一部の実施形態において、対象におけるタウタンパク質関連疾患の治療における使用のための、例えばタウタンパク質関連疾患の治療用の医薬の製造における使用のための、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分、抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分をコードする核酸、及び/又は抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分を発現することができる宿主細胞が本明細書において提供される。一部の実施形態において、疾患は、本明細書に記載のタウオパチーのいずれかを含めて、タウオパチーである。
【0229】
組成物
別の態様において、本明細書に記載されるような抗pタウ抗体又は抗原結合性部分;本明細書に記載されるような抗pタウ抗体又は抗原結合性部分をコードする核酸;及び本明細書に記載されるような抗pタウ抗体又は抗原結合性部分を発現することができる宿主細胞のうちの1つ以上を含む組成物が本明細書において提供される。一部の実施形態において、組成物は医薬組成物であり、薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体を更に含む。
【0230】
一部の実施形態において、薬学的に許容される媒体中に存在する本明細書に記載の実施形態のいずれかによる抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分、抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分をコードする核酸、及び/又は抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分を発現することができる宿主細胞を含む薬学的調製物又は組成物が本明細書において提供される。「薬学的に許容される媒体」は、連邦若しくは州政府の規制機関により承認された、又は哺乳動物、例えばヒトにおける使用のために米国薬局方若しくは他の一般に認識される薬局方において列記される媒体であってもよい。「媒体」という用語は、本開示の化合物がそれと共に哺乳動物への投与のために製剤化される希釈剤、佐剤、賦形剤、又は担体を指す。そのような薬学的媒体は、脂質、例えば、リポソーム、例えば、リポソームデンドリマー;液体、例えば水及び油、例えば石油、動物、植物又は合成起源のもの、例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、及びゴマ油など、食塩水;アカシアガム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、並びに尿素などであり得る。追加的に、助剤、安定化剤、増稠剤、潤滑剤及び着色剤が使用されてもよい。医薬組成物は、固体、半固体、液体又は気体形態の調製物、例えば錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル、マイクロスフェア、及びエアロゾルに製剤化されてもよい。そのため、抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分、抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分をコードする核酸、及び/又は抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分を発現することができる宿主細胞の投与は、静脈内、経口、口腔、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経皮、気管内、眼内投与などを含めて、様々なやり方で達成され得る。例えば、抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分、抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分をコードする核酸、及び/又は抗pタウ抗体若しくは抗原結合性部分を発現することができる宿主細胞の投与は静脈内又は皮下投与により達成され得る。一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の組成物は対象への静脈内投与のために好適である。一部の実施形態において、抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の組成物は対象への皮下投与のために好適である。活性剤は、投与後に全身性であってもよく、又は局所投与、壁内投与の使用、若しくは埋込みの部位において活性用量を保持するために作用するインプラントの使用により局在化されてもよい。活性剤は、即時の活性のために製剤化されてもよく、又は持続放出のために製剤化されてもよい。
【0231】
医薬組成物は、所望される製剤に依存して、薬学的に許容される、非毒性の希釈剤の担体を含むことができ、これは、動物又はヒトへの投与のために医薬組成物を製剤化するために一般的に使用される媒体として定義される。希釈剤は、組合せの生物学的活性に影響しないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、緩衝水、生理食塩水、PBS、リンゲル溶液、デキストロース溶液、及びハンクス溶液である。追加的に、医薬組成物又は製剤は、他の担体、佐剤、又は非毒性、非治療性、非免疫原性の安定化剤、及び賦形剤などを含むことができる。組成物はまた、生理学的条件に近似させるための追加の物質、例えばpH調整剤、緩衝化剤、毒性調整剤、湿潤剤及び界面活性剤を含むことができる。
【0232】
組成物はまた、様々な安定化剤のいずれか、例えば抗酸化剤などを含むことができる。医薬組成物がポリペプチドを含む場合、ポリペプチドは、ポリペプチドのin vivo安定性を増強する、又はその薬理学的特性を他に増強する(例えば、ポリペプチドの半減期を増加させる、その毒性を低減させる、及び/若しくは溶解性若しくは吸収を増強する)様々な周知の化合物と複合体化させることができる。そのような修飾又は複合体化剤の例としては、スルフェート、グルコネート、シトレート及びホスフェートが挙げられる。組成物の核酸又はポリペプチドはまた、それらのin vivo属性を増強する分子と複合体化させることができる。そのような分子としては、例えば、炭水化物、ポリアミン、アミノ酸、他のペプチド、イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン)、及び脂質が挙げられる。
【0233】
キット
別の態様において、本明細書に記載の方法を実行するためのキットが本明細書において提供される。キットは、本明細書に記載されるような抗pタウ抗体又は抗原結合性部分;本明細書に記載されるような抗pタウ抗体又は抗原結合性部分をコードする核酸;及び本明細書に記載されるような抗pタウ抗体又は抗原結合性部分を発現することができる宿主細胞のうちの1つ以上を含むことができる。一部の実施形態において、キットは、キットの構成要素の1つ以上を再構成及び/又は希釈するための試薬を更に含む。
【0234】
本明細書に記載されるようなキットは1つ以上の追加の試薬を更に含むことができ、そのような追加の試薬は、希釈緩衝剤;再構成溶液;洗浄緩衝液;対照試薬;対照発現ベクター又はポリリボヌクレオチド;及びDNAからの抗pタウ抗体又は抗原結合性部分のin vitro製造のための試薬などから選択することができる。
【0235】
キットの構成要素は、別々の容器中にあることができ、又は単一の容器中に組み合わせることができる。
【0236】
上記の構成要素に加えて、キットは、キットの構成要素を使用して方法を実施するための使用説明書を更に含むことができる。例えば、一部の実施形態において、キットは、対象への抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の静脈内投与のための指示を含む。一部の実施形態において、キットは、対象への抗pタウ抗体又は抗原結合性部分の皮下投与のための指示を含む。方法を実施するための使用説明書は、一般に、好適な記録媒体上に記録される。例えば、使用説明書は、基材、例えば紙又はプラスチックなどに印刷されてもよい。そのため、使用説明書は、パッケージ挿入物としてキット中、キット又はその構成要素の容器のラベル中(例えば、包装又は内部包装に付随している)などに存在してもよい。一部の実施形態において、使用説明書は、好適なコンピュータ読取り可能なストレージ媒体、例えば、CD-ROM、ディスク、フラッシュドライブなど上に存在する電子的ストレージデータファイルとして存在する。更に他の実施形態において、実際の使用説明書はキット中に存在せず、リモートの供給元から、例えば、インターネットを介して、使用説明書を得るための手段が提供される。この実施形態の例は、使用説明書を閲覧することができ、及び/又は使用説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。使用説明書と同様に、使用説明書を得るためのこの手段は、好適な基材上に記録される。
【0237】
[実施例]
本発明の実施は、他に指し示されなければ、当業者に周知の、分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、及び免疫学の従来技術を用いる。そのような技術は、文献、例えばSambrook, J., & Russell, D. W. (2012). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (4th ed.). Cold Spring Harbor、NY: Cold Spring Harbor Laboratory及びSambrook, J., & Russel, D. W. (2001). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd ed.). Cold Spring Harbor、NY: Cold Spring Harbor Laboratory (まとめて「Sambrook」として本明細書において参照される); Ausubel, F. M. (1987). Current Protocols in Molecular Biology. New York、NY: Wiley (2014年を通じた補足を含む); Bollag, D. M.ら、(1996). Protein Methods. New York、NY: Wiley-Liss; Huang, L.ら、(2005). Nonviral Vectors for Gene Therapy. San Diego: Academic Press; Kaplitt, M. G.ら、(1995). Viral Vectors: Gene Therapy and Neuroscience Applications. San Diego、CA: Academic Press; Lefkovits, I. (1997). The Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques. San Diego、CA: Academic Press; Doyle, A.ら、(1998). Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology. New York、NY: Wiley; Mullis, K. B.、Ferre, F. & Gibbs, R. (1994). PCR: The Polymerase Chain Reaction. Boston: Birkhauser Publisher; Greenfield, E. A. (2014). Antibodies: A Laboratory Manual (2nd ed.). New York、NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press; Beaucage, S. L.ら、(2000). Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry. New York、NY: Wiley (2014年を通じた補足を含む);並びにMakrides, S. C. (2003). Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells. Amsterdam、NL: Elsevier Sciences B.V.において十分に説明されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0238】
追加の実施形態が以下の実施例において更に詳細に開示され、これらの実施例は実例のために提供され、本開示又は特許請求の範囲の範囲を限定することは決して意図されない。
【0239】
材料及び方法
ヒト脳溶解液の調製
指し示されるような脳組織は、Banner Health Institute(AZ、USA)から購入した。3人のAD(アルツハイマー病、ブラークステージV&VI)患者及び3人のND(非認知症、ブラークステージIII)個体の前頭皮質から脳ホモジネートを調製した。溶解緩衝液(50mMのTris pH 8.0、274mMのNaCl、5mMのKCl、2mMのEGTA、2mMのEDTA、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤(Pierce、88668))を脳組織に約5ml/gで加えた。ZrO2ビーズを次に加え、Bullet Blender (Next Advance)をレベル9で2分間セットしてホモジネートを生成させた。ホモジネートを4℃で15分間13,000×gでスピンした。上清を全溶解液として収集した。タンパク質濃度をブラッドフォードタンパク質アッセイにより決定した。
【0240】
S1及びP2画分を生成するためのサルコシル抽出
0.9mlの溶解緩衝液中の1mgの全溶解液を0.1mlの10% N-ラウリルサルコシン(溶解緩衝液中に溶解)と室温で1時間インキュベートした。混合物を4℃で20分間150,000×gでスピンした。上清をS1画分として収集した一方、ペレットを500μlのPBSに再懸濁し、4℃で20分間150,000×gでスピンした。100μlのPBSを使用してペレットをP2として再懸濁させた。
【0241】
ウエスタンブロット
凍結した脳溶解液を氷上で解凍し、15μgをアリコート化し、PBSを15μLまで加えた。5μLのNuPAGE(登録商標)LDS sample buffer(Invitrogen)及び2μLのNuPAGE(登録商標) Sample Reducing Agent(Invitrogen)を次に加え、チューブを100℃で5分間煮沸した。煮沸した試料をMini Gel Tank(Invitrogen)中のBolt(商標) 4-12% Bis-Tris Plus Gelsのウェルにロードした。PageRuler prestained protein ladder(Invitrogen)を分子量マーカーとしてロードして150Vに設定した定電圧でのタンパク質泳動の進行を可視化した。色素の先端がゲルの外に泳動した後に、ゲルの進行を停止させ、続いてiBlot 2 Dry Blotting System(Invitrogen)の予め設定したP0プログラム(20V、1分;23V、4分;25V、2分)を使用して予め切断したPVDF膜にタンパク質バンドを転写させた。膜を次にブロッキング緩衝液(LI-COR)により室温で30分間ブロッキングした。0.2μg/mLの第1の抗体(ブロッキング緩衝液中に調製)を膜と共に室温で1時間インキュベートした。膜をPBSを用いて5分間室温で3回洗浄した。二次抗体(LI-COR、ブロッキング緩衝液により1:10,000に希釈)を膜と共に室温で1時間インキュベートした。膜を再びPBSを用いて5分間室温で3回洗浄した。Odyssey Imaging Systemsでのスキャニングを行って膜上のタンパク質を可視化した。
【0242】
ウエスタンブロットによるS1及びP2タウ定量化
簡潔に述べれば、組換え全長タウ(1.25~40ngタウ、2倍の増分)、S1及びP2を還元剤(Invitrogen、NP009)、LDS試料緩衝液(Invitrogen、NP007)と混合し、100℃で5分間煮沸した。試料をBolt(商標)4-12% Bis-Tris Plus Gels(Invitrogen、NW04125BOX)により分離させ、iBlot 2 Dry Blotting System(Invitrogen)によりPVDF膜に転写した。段階希釈した組換え全長タウタンパク質の強度を使用して軟正曲線をプロットし、線形回帰の式を使用して試料中のタウ濃度を決定した。
【0243】
シナプトニューロソーム及びサイトゾル調製
脳小片を冷えた緩衝液A((25mMのHEPES、pH7.5、120mMのNaCl、5mMのKCl、1mMのMgCl2、2mMのCaCl2、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤(Thermo、88668)を新たに加えた))と共に冷えた2mLのガラスホモジナイザーに移した。テフロンの乳棒を撹拌モーターに取り付け、速度を170rpmに設定した。最初に、短いストロークを適用して大きい断片が残らなくなるまで組織を完全に破砕し、次に7回のアップ及びダウンストロークを適用してホモジナイズを行った。80μmフィルター(Millipore、#NY8002500)を有する3mLのシリンジにホモジネートを加え、ホモジネートを穏やかに押して80μmフィルターに通すことにより濾過した。濾過したホモジネートを5μmフィルターを有するシリンジに穏やかにロードした。濾液を1000gで10分間スピンし、ペレット及び上清をP1及びS1として収集した。P1を緩衝液Aにより洗浄し、1000gで10分間スピンした。ペレットをシナプトニューロソーム画分として収集した。S1を100,000gで30分間遠心分離して全ての細胞小器官を除去し、上清をサイトゾル画分として収集した。
【0244】
[実施例1]
病理学的タウ種に結合する抗体の選択
従来のハイブリドーマ技術を用いることにより病理学的タウ種に結合する抗体を生成させた。抗体を表1~3に記載されるように同定した。
【0245】
【表7】
【0246】
【表8-1】
【表8-2】
【0247】
【表9-1】
【表9-2】
【0248】
[実施例2]
タウトランスジェニックマウスrTg4510の脳における抗体結合プロファイル
タウオパチー脳中のタウタンパク質へのmAb005の結合プロファイルを評価するために、トランスジェニックマウスrTg4510(ヒトタウオパチーにおいて観察されるタウ病理及び著しい神経変性を表現型コピーするP301L突然変異を含有する抑制型のヒトタウを発現するマウスモデル)及び対照野生型脳溶解液からの脳溶解液をウエスタンブロットにより分析した。図1は、HT7(抗ヒトタウ抗体、ThermoFisher)又はmAb005により染色されたrTg4510及びWT脳溶解液のウエスタンブロットを示す。6か月齢rTg4510(Tg)及び年齢マッチ野生型(WT)脳をTris緩衝液中でホモジナイズし、HT7(左パネル)及びmAb005(右パネル)に対するウエスタンブロット分析のために処理した。Tg試料中のヒトタウ種に対するmAb005の特異性を明らかにするために過剰露光画像を含めた。
【0249】
mAb005は43、55、及び64kDタウ種のみを認識した(図1A~1B、mAb005パネル)一方、HT7(エピトープ:ヒトタウ159~163a.a.、PPGQK)は全ての43、55、及び64kDタウ種の他に、一部の高分子量種(140/170kD)を認識した(図1A~1B、HT7パネル)ことを結果は示す。mAb037に対するウエスタンブロット分析はmAb005と同等のプロファイルを示した。結論として、mAb005は、rTg4510マウス脳中の高リン酸化64kD形態を含むヒトタウ種を特異的に認識したが、WTマウスタウ種を認識しなかった。更に、140/170kDタウ種はmAb005により認識されなかった。
【0250】
[実施例3]
ND脳と比較したAD脳における抗体結合プロファイル
健常及び疾患ヒト脳組織中のmAb005及びmAb037により認識されるヒトタウ種を更に特徴付けるために、AD脳溶解液及び非認知症(ND)脳試料を使用し、HT7、mAb005及びmAb037染色を用いてウエスタンブロットアッセイを行った。図2A~2Bは、HT7、mAb005及びmAb037により染色されたAD及びND脳溶解液のウエスタンブロットを示す。3つのND(非認知症;ブラークステージIII)及び3つのAD(アルツハイマー病、ブラークステージV~VI)凍結前頭皮質をBanner Sun Health Research Institute(AZ、USA)から得、Tris緩衝液中での均質化のために等量の組織を解剖し、次にその後のタンパク質定量化のために合わせた。15μgの全溶解液をSDS-PAGEにより分離し、HT7(左パネル)、mAb005(中央パネル)及びmAb037(右パネル)についてウエスタンブロット分析を実行した(図2B)。アステリスクは64kDタウ種を表し、ブラケットは140/170kDタウ種を表す。弱いシグナルを明らかにするために過剰露光画像を示す。
【0251】
ND脳試料において、少数のタウ種(45kD~62kDのMW)がmAb005及びmAb037により認識された一方、より多くのタウ種(30kD~68kDのMW)がHT7により認識された。AD脳溶解液において、mAb005及びmAb037は2つのタウ種(MW:64及び68kD)を更に認識した。特に、64kD種(図2A~2B、アステリスクの印をしたバンド)は、高リン酸化及びサルコシル不溶性の病理学的タウ種に対応することが公知である。追加的に、AD試料中のHT7陽性140/170kDタウ種はmAb005により検出されなかったが、mAb037により検出された(図2B、「037」)。結論として、mAb005及びmAb037は、AD脳における64kD病理関連種を含めて、病理学的タウ種の亜集団(45~68kDのMW)を認識する。
【0252】
[実施例4]
ADヒト脳のサルコシル可溶性及び不溶性画分における抗体結合プロファイル
mAb005及びmAb037は、タウのサルコシル不溶性高リン酸化形態に対応する、AD疾患脳中の64kDタウ種に結合するので、高速遠心分離を使用する分画により調製された10%サルコシル抽出AD脳溶解液に対してウエスタンブロット分析を実行した。図3A~3Bはサルコシル可溶性及び不溶性AD脳画分のウエスタンブロットを示す。実施例3に記載のAD脳溶解液を10%サルコシル抽出に供し、続いて150k×gの遠心分離を行って上清1(S1)及びペレット1(P1)を得た。P1をPBSに再懸濁し、再びスピンしてペレット2(P2)を得た。S1はサルコシル可溶性画分を表し、P2はサルコシル不溶性画分を表す。ウエスタンブロットのために10ngのタウに正規化した後にS1及びP2の両方をロードした。2.5~40ngの2倍段階希釈液中の精製されたモノマータウタンパク質と共にこれらの画分の別々のウエスタンブロットによりこれらの画分におけるタウレベル測定値を得た。定量化は、Odyssey Imaging Systems(LI-COR)により行った。アステリスクは64kDタウ種を表し、ブラケットは140/170kDタウ種を表す。ある特定のタウ種へのmAb005及びmAb037の結合の欠如を確認するために過剰露光画像を示す(図3B、「037」)。サルコシル不溶性画分(P2)中の64kDタウ種へのmAb005の結合(図3A~3B、アステリスク)以外に、68及び58kDの2つの主要なタウ種もまた検出された。少数のサルコシル可溶性(S1)タウ種のみがmAb005により認識され、45、57及び59kDとして同定されるそれらの分子量は、P2画分において認識されたタウ種とは異なる。mAb005とは異なり、HT7及びmAb037は、S1又はP2画分中に存在するタウ種に対する選好性を示さず、より大きい数のS1画分中のタウ種を認識した。要約すると、mAb005は、AD脳のサルコシル不溶性画分中の3つの主要なタウ種、58、64、及び68kDを優先的に認識した一方、HT7及びmAb037はそのような選好性を示さなかった。
【0253】
[実施例5]
ND及びADヒト脳溶解液のサイトゾル及びシナプトニューロソーム画分における抗体結合プロファイル
病理学的タウは、AD脳においてシナプスに蓄積することが公知である(Tai, H. C.ら、(2012). The American journal of pathology、181(4)、1426~1435頁)。ドットブロット分析を行って、mAb005に認識されるタウ種はシナプスにおいて富化されているかどうか、及びウエスタンブロットにより同定されたmAb005に認識されるタウ種は非変性条件下のドットブロットにより検出され得るかどうかを調べた。
【0254】
図4は、細胞内分画化プロトコールの図式及びドットブロット分析の結果を示す。実施例3に記載のAD及びND脳溶解液を、図4Aに描写されるように細胞内分画化に供した。サイトゾル及びシナプトニューロソームの分離を2回の濾過及び数回の遠心分離により実行した。各画分中のタンパク質レベルをブラッドフォードタンパク質アッセイ(Bio-Rad)により測定し、等量のタンパク質(0.4μg)をニトロセルロース膜の小片にスポッティングし、膜のための短い空気乾燥期間の後にイムノブロッティングを行った。シナプスマーカー、シナプトフィジン、及びサイトゾルマーカー、GAPDHの富化がそれぞれシナプトニューロソーム及びサイトゾル画分において観察された(図4B)。略語:Cy:サイトゾル;Cy adj.:並べた比較を促すための低減量のロードされたサイトゾル;Sy:シナプトニューロソーム。2つの参照抗タウ抗体、C2N-8E12(ABBV-8E12、AbbVie)(図4B中の「参照AbbVie」)及びBIIB092(旧名BMS-986168/IPN007、Biogen)(図4B中の「参照Biogen」)を並べた比較のために含めた。図4Bに示されるように、mAb005は、AD脳のシナプスに局在化したタウ種への優先的な結合を示したがND脳のものへは優先的な結合を示さなかった一方、両方の参照抗体はND又はADに関わらずサイトゾルタウ種への優先的な結合を示した。更に、mAb005は、先行する発見と合致して、AD全脳溶解液中のタウ種への優先的な結合を示した一方、両方の参照抗体はND全脳溶解液中のタウ種への優先的な結合を示した。サルコシル不溶性画分(P2)及びサルコシル可溶性画分(S1)を実施例4に記載されるようにAD脳から調製し、ドットブロットにより同様に分析した(図4B、右パネル)。mAb005はADサルコシル不溶性画分(P2)中のタウ種への優先的な結合を示した一方、両方の参照抗体はADサルコシル可溶性画分(S1)中のタウ種への優先的な結合を示した。
【0255】
図4Cは、mAb005(「005」)、mAb008(「008」)、mAb010(「010」)、mAb011(「011」)、mAb013(「013」)、mAb020(「020」)、mAb025(「025」)、mAb032(「032」)、及びmAb037(「037」)は、AD脳のシナプスに局在化したタウ種への優先的な結合を呈するが、ND脳のものにはそうでないことを示した。シナプス選好性を実証するために、上から下への各抗体についての平均値により示される3つの独立した実験からSyとCyとの比を測定した。更に、本明細書に記載の抗体は、先行する発見と合致して、AD全脳溶解液中のタウ種への優先的な結合を示した一方、両方の参照抗体はND全脳溶解液中のタウ種への優先的な結合を示した。
【0256】
[実施例6]
タウオパチーヒト脳溶解液における抗体結合プロファイル
病理学的タウ種は、AD、進行性核上麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、及びピック病(PiD)を含めて、いくつかのタウオパチーにおいて蓄積することが文献において示されている。mAb005がAD以外のタウオパチーにおけるタウ種を認識するかどうかを調べるために、PSP、CBD、及びPiD脳からの凍結脳組織をドットブロット分析のためにBanner Sun Health Research Institute(AZ、USA)から得た。これらの様々な組織の脳溶解液中の病理学的タウ種の存在を、AT8抗体を使用してドットブロットアッセイにより最初に検証した。全ての疾患脳溶解液は、各々の脳領域のND対照と比べて著明なAT8シグナルを示し(図5A、上2つの行)、これらの試料中の病理学的タウの存在を裏付けた一方、HT7シグナルはそのような差異を示さなかった。次に、mAb005並びに参照抗体C2N-8E12及びBIIB092の結合をドットブロットアッセイにより分析した。mAb005は、対応する対照ND脳溶解液と比べて全ての疾患脳溶解液においてより高いシグナルを示した一方、HT7及び2つの参照抗体はそのような識別を示さなかった(図5B)。
【0257】
病理学的タウのレベルは、図5AにおけるAT8シグナルにより指し示されるように異なる脳領域にわたり変動し、図5BにおけるmAb005シグナルは類似したバリエーションを示した。しかしながら、mAb005は、PSP視床及び被殻試料における実質的なシグナルの検出により実証されるように、AT8とは異なるエピトープを認識する。図5Cは、mAb005(「005」)、mAb011(「011」)、mAb013(「013」)、mAb010(「010」)、mAb032(「032」)、mAb037(「037」)、mAb020(「020」)、mAb008(「008」)、mAb025(「025」)、mAb033(「033」)、及びmAb004(「004」)に対するドットブロットアッセイを示す。結論として、mAb005、mAb011、mAb013、mAb010、mAb032、mAb037、mAb020、mAb008、mAb025、mAb033、及びmAb004は、試験された全てのタウオパチー、即ちAD、PSP、CBD及びPiDにおいて病理学的タウ種をよく認識した。顕著なことに、mAb005、mAb011、mAb013、mAb010、mAb032、mAb037、mAb020、及びmAb008は、他の疾患からの試料と比べてAD及びPiD試料においてより強いシグナルを示し、mAb005、mAb011、mAb013、mAb010、mAb032、mAb037、mAb020、及びmAb008陽性タウ種は他のタウオパチーよりもAD及びPiDにおいてより豊富に存在することを示唆した。
【0258】
[実施例7]
スクロース勾配分画AD及びND脳溶解液における抗体結合プロファイル
シードコンピテント形態の病理学的タウ種がスクロース勾配分画タウトランスジェニックマウス脳溶解液の高密度画分中に見出されている(Jacksonら、2016 JN)。スクロース勾配分析を行って、ヒト脳溶解液中のmAb005陽性タウ種の密度を評価した。図6Aは、低~高密度のスクロース勾配分画ND及びAD脳溶解液からのHT7及びAT8の両方に陽性のタウ種の分布を示す。高密度タウ種はAD試料中で両方の抗体について認められ、報告された結果と合致した。非変性条件下でのスクロース勾配分画脳溶解液のドットブロットアッセイを次に、HT7、AT8、シナプトフィジン、GAPDH、及びmAb005を含む抗体を用いて行った(図6B)。
【0259】
図6Aは、ND及びAD脳溶解液のスクロース勾配遠心分離(SGC)及びウエスタンブロット分析を示す。SGCは、3mLの2mg/mL ND及びAD脳溶解液(実施例3に記載されるように3人の対象からの試料を合わせることにより調製した)を、7.5mLのスクロース溶液(10~50%、1.5mL/層)を含有する新たに調製されたSW41遠心分離チューブにロードすることにより行った。チューブを次に4℃で4時間250k×gでスピンし、上から下までピペッティングすることにより各画分を収集した。熱変性後の各分画されたND及びAD試料のウエスタンブロット分析を、HT7及びAT8を使用して行った。
【0260】
図6Bは、ND及びAD脳溶解液のSGC及びドットブロット分析を示す。HT7、AT8、シナプトフィジン、GAPDH、及びmAb005を用いてプロービングして、熱変性なしのSGC分画試料に対してドットブロット分析を行った。HT7は、ウエスタンブロットにおいて全ての画分にわたりAT8に類似したシグナルの変動パターンを有した(図6A)一方、上部及び10%画分の両方におけるAT8シグナルはドットブロットにおいて存在しなかった。シナプスマーカーであるシナプトフィジンはほぼ20~50%において存在したが、サイトゾルマーカーGAPDHは上部から20%までの低密度画分においてより富化されていた。
【0261】
要約すると、mAb005陽性タウ種は、最も高い密度の画分(50%)における増加したシグナルと共にADにおける全ての画分中に存在することが観察され、mAb005陽性タウ種は、HT7及びAT8よりも、広く多様な性質を有する複数の複合体に組み込まれることを示唆した。
【0262】
[実施例8]
SEC分画AD及びND脳溶解液における抗体結合プロファイル
mAb005陽性タウ種の複雑な性質への洞察を得るために、ND及びAD脳溶解液のSEC分析を行って、分子量にしたがって異なるタウ種を分離した。
【0263】
図7Aは、ND及びAD脳溶解液のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及びウエスタンブロット分析を示す。HT7のウエスタンブロット分析を試料の熱変性後に行って、各画分中の様々なタウ断片のサイズを明らかにした。分子サイズマーカーによる軟正は、画分11、15及び17はそれぞれ769kD、158kD及び約66kDに対応することを明らかにした。なお、カラムの詰まりを予防するために、非常に大きい凝集物はSECの前に要求される事前フィルターステップに起因して除外された。HT7によるウエスタンブロット分析(図7A)を、収集された画分について行った。8~10の画分(>670kD)におけるHT7シグナルはAD試料においてのみ著明であった。顕著なことに、64及び140/170kDのこれらの熱変性安定なタウ種は8~10の画分中にのみ存在し、AD脳に由来するこれらの画分は、非変性条件において670kDを越え、熱変性後であっても64及び140/170kDのMWを有する非常に安定な病理学的タウ種を含有することを指し示した。
【0264】
次に、HT7、AT8、シナプトフィジン(Synapt)、GAPDH、mAb005、C2N-8E12(参照AbbVie)及びBIIB092(参照Biogen)についてのSEC画分のドットブロット分析を行った。図7Bは、ND及びAD脳溶解液のSEC及びドットブロット分析を示す。熱変性なしの等体積の各画分を全てのドットブロット分析のためにNC膜にスポッティングし、HT7、AT8、シナプトフィジン(Synapt)、GAPDH、mAb005、C2N-8E12(参照AbbVie)及びBIIB092(参照Biogen)を用いてプロービングした。
【0265】
mAb005及びAT8の両方は、試験されたタウ抗体の中で全ての画分にわたり8~10の画分において最も著明なシグナルを示し、mAb005陽性タウ種は、ミスフォールドしたタウ及び他のタンパク質を含有する分子量(>679kD)のより大きい複合体中のADタウに特有であることを実証した。顕著なことに、シナプトフィジンシグナルもまた、mAb005陽性の画分に対応する8~10の画分において著明であり、図4の結果と合致して、大きい複合体中の多くのmAb005陽性タウ種はシナプス中に存在することを示唆した。更に、サイトゾルマーカーGAPDHシグナルは16~21の画分において最も著明であった。最後に、AbbVie及びBiogenからの両方の参照抗体は、AD及びNDの両方の試料において13~22の画分のタウ種に結合し、それらの結合する種は、AD及びNDの両方においてより小さい複合体中に見出されることを実証した。
【0266】
[実施例9]
SEC分画タウトランスジェニックマウスrTg4510脳溶解液における抗体結合プロファイル
タウトランスジェニック動物において、病理学的タウ種は、年齢と共により凝集した形態に進化した(Bergerら、2007 JN)。mAb005陽性タウ種もまたrTg4510マウス脳において年齢と共により大きいタンパク質複合体に組み込まれるかどうかを決定するために、2.5~6か月齢WT及びTg動物から抽出された脳溶解液についてSEC分析を行った。この分析の前に、HT7、AT8、C2N-8E12及びBIIB092の他のタウ抗体との比較において、ドットブロット分析においてmAb005陽性種についての病理学的タウタンパク質レベルに対する年齢依存性を調べた。
【0267】
図8Aは、1~6か月齢rTg4510(Tg)及び野生型(WT)マウス脳溶解液のドットブロット分析を示す。等量のタンパク質をNC膜にスポッティングし、mAb005、HT7、AT8、C2N-8E12及びBIIB092抗体を用いてプロービングした。1~6か月齢のrTg4510を使用してmAb005及びAT8についてシグナルの年齢依存性の増加を見出した(図8A)。しかしながら、HT7、C2N-8E12及びBIIB092抗体は全ての年齢にわたり等しいレベルのシグナルを呈した。
【0268】
次に、mAb005を用いてプロービングしたドットブロット研究と組み合わせて2.5~6か月齢Tg動物に対して脳溶解液のSEC分析を行った。図8Bは、mAb005を用いてプロービングした2.5~6か月齢Tg脳溶解液のSEC及びドットブロット分析を示す。ピーク分布を強調するために過剰露光画像を含めた。マウス二次抗体のみを用いてプロービングした対照ドットは16~19の画分においてある程度の非特異的シグナルを示した。
【0269】
670kDを超えるはるかにより高い分子量の画分へのmAb005陽性タウシグナルのピークシフトが2.5-moの画分10から6-moの画分9に対して観察された(図8B)。更に、14~19の画分においてmAb005陽性タウシグナルは6-mo Tgマウスにおいてより少ない画分により制限され、ほぼバックグラウンドレベルであり、Tg動物における加齢プロセスの間のタウ複合体形成における変化を示唆した。
【0270】
[実施例10]
PSP及びAD脳の免疫組織化学分析
mAb005及びmAb037は領域特異的及びブラークステージ特異的な方式で疾患脳における病理学的タウに結合できるのかどうかを決定するために、Banner Sun Health Research Institute(AZ、USA)の経験のある神経病理学者Dr. Thomas Beachとの契約を通じてAD及びPSP脳切片において免疫組織化学分析を行った。
【0271】
図9Aは、シナプス接続された脳領域を通じて拡大するタウの図式的な表現を示す(Brettschneiderら、2015 Nat Rev Neurosciからの改変)。図9B~9Cは、ヒト脳切片の指し示される脳領域の拡大写真を、上に標識されるそれらの疾患状態(ND対AD)、ブラークステージ(I~VI)及びIDと共に示す。輪郭を描いた写真は、mAb005(別名RAA7)標識タウタングルについて陽性シグナルを示す。ND個体を含む全てのブラークステージにおける点状及び拡散したシグナルにより示されるようなmAb005及びmAb037標識タウタングルは、疾患開始前の病理学的タウ種への結合におけるmAb005及びmab037の能力を指し示す。図9Dは、PSP脳組織はmAb005シグナルについて全て陽性であることを指し示した。図9Eは、4人の患者からのPSP脳組織はmAb005及びmAb037シグナルについて全て陽性であることを指し示した。被殻、淡蒼球及びマイネルト基底核を含む3つの脳領域を染色したところ、mAb005及びmAb037により認識されるタウタングルを有する星状膠細胞及びニューロンを示した。
【0272】
mAb005抗体はAD脳溶解液中のシナプスにおいて富化されているので(図4B)、mAb005陽性タウタングルは、疾患進行の間に移行嗅内領域から等皮質領域までの図9Aにおいて描写されるような接続された脳領域中に出現する可能性がある。この概念と合致して、mAb005陽性タウ沈着は2人の臨床的にNDの個体の嗅内皮質領域においてブラークステージIIIもの早期に観察された一方、より強いmAb005シグナルが臨床的にADの脳において見出された(図9B、青で囲った画像)。嗅内皮質とシナプス接続された海馬CA1領域において、mAb005シグナルはND脳においてIIIもの早期という類似したブラークステージにおいて出現した。しかしながら、前頭前皮質において、mAb005シグナルは弱く、後期ブラークステージまで続かず、そのタウ種はこの脳領域においてより少量であることを示唆した。他方、PSP脳において、mAB005は、被殻、淡蒼球及び基底核中のそれぞれ房飾星状膠細胞、オリゴデンドロサイト及びニューロンにおけるタウタングルを認識した(図9C)。以上を合わせると、mAb005は、嗅内皮質-海馬接続領域の他にPSPにおいて早期のブラークステージIIIにおいて選好性と共にADにおけるタウタングルを認識すると結論される。
【0273】
[実施例11]
rTg4510脳の免疫組織化学分析
次に、(1)mAb005染色パターンにおける年齢依存性の変化;(2)海馬体における細胞体対軸索樹状突起間区画における相対的なシグナルを明らかにするために3-及び6-moのrTg4510脳切片におけるmAb005陽性タウ種の局在性を調べた。WT画像においてほとんど又は全くシグナルがなくなるようにWT及びTgの両方の脳切片に閾値を適用した後のmAb005特異的シグナルを図10に示した。
【0274】
図10A~10Bは、mAb005によるrTg4510脳の免疫組織化学染色を示す。図10Aは、3か月時の染色を示す。図10Bは、6か月時の染色を示す。30μmの厚さの凍結した脳切片を、記載されたもの(Evilsizorら、2015 J Vis Exp)と類似した自由浮遊切片免疫染色を使用してmAb005抗体と共にインキュベートした。画像をImageXpress Micro XLS(Molecular Device)により取得した。略語:WT:野生型、Tg:rTg4510、sub:鉤状回、SO:多形細胞層、SP:錐体細胞層、SR:透明層、SL-M:網状分子層、CA:アンモン角。
【0275】
rTg4510マウス脳における報告されたタウ過剰発現パターン(SantaCruzら、2005 Science)と合致して、著明なmAb005シグナルが海馬-皮質領域において観察された。海馬体において、弱いmAb005シグナルが細胞体(錐体細胞層、SP)において観察された一方、軸索樹状突起間区画において均一に強いシグナルが3-mo画像において観察され、mAb005陽性タウ種は神経突起に優先的に局在化されることを実証した。追加的に、mAb005シグナルは6-mo脳切片において海馬-皮質領域の全体を通じてタウタングル構造を強く特徴付け、mAb005陽性タウ種は神経原線維タングル中に存在することを指し示した。
【0276】
[実施例12]
血漿タウレベルを使用したサロゲート応答研究
タウ抗体治療動物及びヒトにおける1つの独特のin-vivo応答は、抗体の腹腔内注射後48時間での血漿タウレベルにおける急速な増加である(Yanamandraら、2017 Sci Trans Med)。mAb005はrTg4510タウトランスジェニック動物においてそのような応答を誘発できるかどうかを探索するために、3-mo動物においてC2N-8E12及びmAb005の腹腔内注射を行い、Simoa HD-1 Analyzer Quanterixと共にHuman Total Tau kitにより血漿タウレベルを定量化した。
【0277】
図11A~11Bは、3-mo rTg4510動物への腹腔内注射(i.p.)後のC2N-8E12及びmAb005の要約グラフを示す(n=4~5匹の動物;平均±SD)。A、10及び50mg/kg C2N-8E12の注射後2、4及び8日におけるタウレベルの変化。B、10及び25mg/kg mAb005の注射後2、4、6及び8日におけるタウレベルの変化。左列のグラフ:pg/mLでの血漿タウの絶対量、右列のグラフ:注射前と比較したタウレベルの相対増加倍数。色でコード化したドットは各々の動物についての各データ点を表す。
【0278】
文献と合致して、C2N-8E12は、2日目に10及び50mg/kgの抗体の用量で注射された動物においてそれぞれ約20倍及び約40倍の差異と共に血漿タウレベルを増加させた(図11A)。しかしながら、10及び25mg/kgの用量でmAb005を注射された動物において血漿タウレベルの明らかな増加は観察されなかった(図11B)。mAb005を注射された動物において血漿タウレベルを検出できなかったことは、いくつかの理由、例えば血漿中に存在するmAb005陽性タウ種の量が血漿における検出限界より低かったこと、Human Total Tau kitにおけるタウ抗体がmAb005陽性タウ種を検出できなかったこと、又はエピトープがmAb005結合によりマスキングされ、それがQuanterixタウ抗体による検出をできなくしたことに起因する可能性がある。
【0279】
[実施例13]
ヒト化mAb005及びmAb037の選択及び特徴付け
mAb005の治療的な使用を促すために、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)の相補性決定領域(CDR)をヒトIgG4 S228P骨格(無Fab-アーム交換突然変異体、Silvaら、2015 JBC)にグラフトすることによりmAb005及びmAb037のヒト化を行った。CDRの周囲の近くの残基に4点突然変異を導入して、結果としてもたらされるバリアントの機能性を保存した。次にドットブロット分析を行って、各バリアントのEC50を決定し、元々のマウス/キメラクローンと比較した他に、NDタウタンパク質と比較してADタウタンパク質に対する特異性を可視化した。
【0280】
図12A~12Bは、AD及びND脳ホモジネートに対するマウスmAb005及びmAb037、並びにmAb005及びmAb037のヒト化バリアント(表1~3に示される)の結合親和性を示す。ドットブロット実験は、3連でのND及びAD全脳溶解液のスポッティングにより行い、抗体溶液は6×10-8Mの最大濃度から2の希釈係数により段階的に希釈した。要約グラフは3つの独立した実験の平均±SDを表す。
【0281】
ヒト化mAb005は、ADに対して4.3×10-10MのEC50値を有する結合親和性を呈し、これは4.0×10-10Mの元々のマウスクローンのEC50値に近く、ヒト化mAb005バリアントは元々のマウスクローンに類似した方式で結合親和性及び結合特異性を維持したことを結果は示した。ヒト化mAb037は、ADに対して9.5×10-10MのEC50値を有する結合親和性を呈し、これは5.4×10-10Mの元々のマウスクローンのEC50値に近く、ヒト化mAb037バリアントは元々のマウスクローンに類似した方式で結合親和性及び結合特異性を維持した。
【0282】
[実施例14]
mAb005及びmAb037はタウシード形成能力を遮断した
本明細書に記載の抗体、例えばmAb005、008、010、011、013、020、025、032及び037は、タウ拡大と高度に関連付けられるシナプスのタウ(DeVosら、2018 Front Neurosci)を優先的に認識したので、タウシード形成アッセイを行ってタウシード形成増殖に対するmAb005及びmAb037の効果を決定した。
【0283】
mAb005及びmAb037がタウ増殖を阻害できるかどうかを研究するために、HEK293細胞(タウ-LM細胞)中でそのN末端にGFPをタグ付加した突然変異体タウ(ΔK280/P301L/V337M)の4Rリピートドメインを安定的に発現させることによりレポーターシステムを確立した(Najla.、2012 J Biol Chem)。133.3nMから2倍段階希釈したアイソタイプ対照マウスIgG、mAb005又はmAb037を最初に6か月齢rTg4510脳溶解液と混合した。抗体-溶解液混合物をタウ-LM細胞と共に24時間インキュベートした。溶解液を細胞と共に48時間インキュベートし、細胞を固定し、DAPIで染色した後にタウスポット形成のイメージングを行った。タウスポットの数(GFP陽性シグナルにより表される)及び細胞数(DAPI陽性スポットにより表される)をImageXpress Micro Confocalにより調べた。タウスポットの数を細胞数により正規化し、「無溶解液」条件についての値を引くことにより調整した(N=3、平均±SD)。タウスポットの数を細胞数により正規化し、「無溶解液」条件についての値を引くことにより調整した(N=3、平均±SD)。mAb005について72.2×10-9MのEC50値及びmAb037について22.91×10-9MのEC50値が得られ、対照IgG試料と比べた阻害の効力を定量化した。これらの結果は、mAb005に認識されるタウ及びmab037に認識されるタウはタウ増殖と高度に関連付けられることを示唆する。(図13A~13B)
【0284】
133.3nMから2倍段階希釈された抗体の濃度を用いて、mAb005及びアイソタイプ対照マウスIgGをコンジュゲート化したプロテインGビーズにより6か月齢rTg4510脳溶解液を免疫枯渇した。免疫枯渇後に、溶解液をタウ-LM細胞と共に24時間インキュベートした。更なる24時間の後に、細胞を固定し、DAPIで染色した。溶解液を細胞と共に48時間インキュベートした後にタウスポット形成のイメージングを行った。図13C。タウスポットの数及び細胞数(DAPI)をImageXpress Micro Confocalにより調べた。タウスポットの数を細胞数により正規化し、「無溶解液」条件についての値を引くことにより調整した(N=3:平均±SD)。図13D。免疫枯渇した溶解液中の凝集したタウのレベルをタウHTRF凝集アッセイにより測定した(N=3:平均±SD)。図13E。免疫沈降させたビーズをウエスタンブロットアッセイにより分析した。膜をHT7抗体(汎タウ抗体)でブロッティングし、Odyssey infrared Imaging System(LI-COR)によりスキャンした。図13B及び図13Cは3つの独立した実験についての結果を要約する。
【0285】
mAb005免疫枯渇溶解液をタウ-LM細胞に適用した場合、タウスポットの数は0.62±0.76nMのEC50値と共に濃度依存性の方式で減少した(図13C)。タウ凝集物HTRFアッセイ(Cisbio)も使用して、mAb005免疫枯渇溶解液中の凝集したタウのレベルを二重に確認した(図13D)。mAb005をアイソタイプ対照マウスIgGと比較した場合、mAb005は1.12±0.18nMのEC50値と共に脳溶解液中の凝集したタウをほぼ消失させた。最後に、ウエスタンブロットアッセイを使用して、mAb005がrTg4510脳溶解液中のタウを捕捉できることを確認した(図13E)。興味深いことに、mAb005は、タウを捕捉しただけでなく、55kDタウと比較して64kDタウを優先的に富化させた。先行する研究によれば、64kDタウはリン酸化タウを含有し、高分子量画分中に優勢に存在し(Zdenek.、2007 J Neurosci)、該画分は強いタウ増殖活性を含有する(Shuko.、2015 Nature Communications)。これらの結果は、mAb005に認識されるタウはタウ増殖と高度に関連付けられることを示唆する。
【0286】
[実施例15]
架橋連結質量分析を使用したコンホメーショナルエピトープマッピングによるmAb005及びmAb037の特徴付け
mAb005及びmAb037のコンホメーション結合モチーフについての詳細な見解を得るために、架橋連結質量分析を使用するコンホメーショナルエピトープマッピングを応用して、これらの抗タウ抗体により認識されるコンホメーショナルエピトープを同定した(図14)。
【0287】
CovalX Instrument Incorporatedにより行われる架橋連結質量分析を研究において応用した。アルツハイマー病患者から単離された界面活性剤不溶性タウ凝集物を研究において抗原として使用した。抗体、それぞれmAb005及びmAb037、並びにタウ凝集物を重水素化クロスリンカーと共にインキュベートした。架橋化学後に抗体/抗原複合体は極めて安定であったため、複数の酵素(並行して利用された5つ)及び消化条件を複合体に適用して多くの異なるオーバーラップペプチドを得た。ペプチドの同定は、高分解能Orbitrap(商標)質量分析及びMS/MS技術を使用して行った。架橋されたペプチドの同定は、架橋試薬に連結された質量タグを使用して決定した。MS/MS断片化の後に、生成されたデータをXQuest及びStavrosソフトウェアを使用して分析した。
【0288】
mAb005及びmAb037は、タウの中央領域及び微小管結合ドメインに位置するポリペプチドの領域に結合することを結果は示した。特に、mAb005は、ヒト2N4Rタウアイソフォーム中のアミノ酸S131、K132、T135、S137及びR155を含むドメインに結合し、mAb037は、ヒト2N4Rタウアイソフォーム中のアミノ酸R230、T231、S237、T245、K281及びS289を含むドメインに結合する。
【0289】
本開示の特定の選択肢を開示してきたが、様々な改変及び組合せが添付の請求項の真の精神及び範囲内で意図されることが理解されるべきである。したがって、本明細書において提示される正確な要約及び開示に限定されることは意図されない。
配列表
【0290】
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表10-4】
【表10-5】
【表10-6】
【表10-7】
【表10-8】
【表10-9】
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図14
【配列表】
0007181438000001.app