(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】焼鈍分離剤用酸化マグネシウム及び方向性電磁鋼板
(51)【国際特許分類】
C21D 8/12 20060101AFI20221122BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20221122BHJP
C23C 22/00 20060101ALI20221122BHJP
H01F 1/147 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C21D8/12 B
C21D9/46 501B
C23C22/00 A
H01F1/147 183
(21)【出願番号】P 2022542043
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016406
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2021060801
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108764
【氏名又は名称】タテホ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】小川 晴大
(72)【発明者】
【氏名】芝田 宙宜
(72)【発明者】
【氏名】塘 啓祐
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-171387(JP,A)
【文献】特開2002-309378(JP,A)
【文献】特開2008-260668(JP,A)
【文献】特開平06-101059(JP,A)
【文献】特開昭53-015205(JP,A)
【文献】国際公開第2008/047999(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 8/12, 9/46
C01F 1/00-17/38
C23C 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CAA40%が50秒以上170秒以下であり、pHスタット法において反応率20mol%に到達するまでの時間(T2)と反応率10mol%に到達するまでの時間(T1)の比(T2/T1)が3.0以上
11.0未満である、焼鈍分離剤用酸化マグネシウム。
【請求項2】
BET比表面積が12.0m
2/g以上30.0m
2/g以下、Clの含有量が500ppm以下、体積基準の累積50%粒子径(D
50)が0.5μm以上7.0μm以下である、請求項
1記載の焼鈍分離剤用酸化マグネシウム。
【請求項3】
Zn、Zr、Ni、Co、及びMnの合計含有量が200ppm以上10000ppm以下である、請求項1
または2記載の焼鈍分離剤用酸化マグネシウム。
【請求項4】
Znの含有量が200ppm以上10000ppm以下である、請求項1
または2記載の焼鈍分離剤用酸化マグネシウム。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを含む焼鈍分離剤。
【請求項6】
鋼板表面にSiO
2被膜を形成する工程と、
請求項
5に記載の焼鈍分離剤をSiO
2被膜の表面に塗布し、焼鈍することにより、鋼板表面にフォルステライト被膜を形成する工程と
を含む、方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼鈍分離剤用の酸化マグネシウム(MgO)及び方向性電磁鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器や発電機に使用される方向性電磁鋼板は、一般に、ケイ素(Si)を約3%含有する珪素鋼を、熱間圧延し、次いで最終板厚に冷間圧延し、次いで脱炭焼鈍、仕上げ焼鈍して、製造される。脱炭焼鈍(一次再結晶焼鈍)では、鋼板表面にSiO2被膜を形成し、その表面に焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを含むスラリーを塗布して乾燥させ、コイル状に巻取った後、仕上げ焼鈍することにより、SiO2とMgOが反応してフォルステライト(Mg2SiO4)被膜が鋼板表面に形成される。このフォルステライト被膜は、鋼板表面に張力を付加し、鉄損を低減して磁気特性を向上させ、また鋼板に絶縁性を付与する役割を果たす。
【0003】
このフォルステライト被膜が製品の外観や電気絶縁性の良否を決定し、さらには市場価値を左右する。被膜の生成過程は鋼板表層のインヒビター分解挙動、ひいては2次再結晶に影響する結果として、被膜の良否が製品の磁気特性の良否に影響を与える。さらに、被膜の外観は、方向性電磁鋼板の製品としての最終的な外観を左右する。そのため、被膜の外観は製品価値にも影響を与え、製品歩留まりに及ぼす影響も大きく、被膜が不均一な場合は製品の製造歩止りを低下させる。したがって、かかる被膜の特性を向上させることは方向性電磁鋼板の製造技術において重要な位置をしめている。
【0004】
従来、方向性電磁鋼板の特性を向上するために、焼鈍分離剤用酸化マグネシウムについての研究が行われ、品質改善のために、様々な工夫がなされている。
【0005】
例えば、フォルステライト被膜は最終仕上げ焼鈍時に形成されることから、このときの被膜形成反応の活性を調節することが重要である。そこで、焼鈍分離剤用酸化マグネシウムの活性度に着目した研究がなされている。従来、酸化マグネシウムの活性度を表す指標のひとつとして、クエン酸活性度(CAA:Citric Acid Activity)を用いた評価が一般的に用いられてきた。CAAは、所定温度(例えば303K)の0.4規定のクエン酸水溶液中に、指示薬フェノールフタレインを混合し、最終反応当量の酸化マグネシウムを投入して攪拌したときの、クエン酸水溶液が中性になるまでの時間で表わされる。このCAAは、方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤として使用される酸化マグネシウムの評価指標になり得ることが経験的に知られている。他方、CAAはあくまでMgOと方向性電磁鋼板表面のサブスケールとの反応活性を近似的に表すものであって、ある最終反応率における1点の評価であり、活性度分布の広がりは反映されないことから、例えばCAA40%の値が近しい2種の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムであってもその被膜形成能が異なってくる場合があることもよく知られている。
【0006】
このため、CAAの活性度分布の広がりも考慮した焼鈍分離剤用酸化マグネシウムが提案されている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、CAA40%及びCAA80%の活性度、粒子径又は比表面積などをそれぞれ所定値に限定した焼鈍分離剤用酸化マグネシウムの発明が開示されている。また、更に、特許文献3には、CAA70%、CAA70%とCAA40%との比、粒子径、比表面積などを、それぞれ所定値に限定した方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平06-033138号公報
【文献】特開平11-158558号公報
【文献】特開平11-269555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した従来の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムでは方向性電磁鋼板の被膜不良の発生を完全には防止できておらず、被膜特性に優れた方向性電磁鋼板を安定して得ることができないことから信頼性を欠いていた。すなわち、十分な性能を有する焼鈍分離剤用酸化マグネシウムは未だ見出されていない。
【0009】
そこで本発明は、被膜特性に優れた方向性電磁鋼板を得るための焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを提供することを目的とする。具体的には、鋼板の表面に被膜の外観、被膜の密着性に優れたフォルステライト被膜を形成することができる焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを提供することを目的とする。また、本発明は、上記の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを用いた方向性電磁鋼板の製造方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、これまで着目されてこなかった焼鈍分離剤用酸化マグネシウム粉末のいわゆる高活性部分に着目して鋭意研究を行うこととし、とくにCAAよりも酸化マグネシウムの高活性部分を厳密に評価可能な方法であるpHスタット法を用いて詳細な検討を行った結果、いわゆる中活性領域の指標とされるCAA40%の値が同程度の酸化マグネシウムの中でも、抑制された初期反応性を有する酸化マグネシウムが、被膜の外観、被膜の密着性に優れた方向性電磁鋼板を得るのにより適した酸化マグネシウムであることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、CAA40%が50秒以上170秒以下であり、pHスタット法において反応率20mol%に到達するまでの時間(T2)と反応率10mol%に到達するまでの時間(T1)の比(T2/T1)が3.0以上である、焼鈍分離剤用酸化マグネシウムにある。
【0012】
また、本発明には、CAA40%が50秒以上170秒以下であり、pHスタット法において反応率20mol%に到達するまでの時間(T2)と反応率10mol%に到達するまでの時間(T1)の比(T2/T1)が3.0以上11.0未満である、焼鈍分離剤用酸化マグネシウムも含まれる。
【0013】
さらに、本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムは、BET比表面積が12.0m2/g以上30.0m2/g以下、Clの含有量が500ppm以下、体積基準の累積50%粒子径(D50)が0.5μm以上7.0μm以下であることが好ましい。BET比表面積、Cl含有量、D50が所定の範囲であることにより、鋼板の表面に被膜の外観、被膜の密着性に優れたフォルステライト被膜を形成することができる焼鈍分離剤用酸化マグネシウムをより確実に得ることができる。
【0014】
さらに、本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムは、Zn、Zr、Ni、Co、及びMnの合計含有量が200ppm以上10000ppm以下であることが好ましく、Znの含有量が200ppm以上10000ppm以下であることがより好ましい。また、Znの含有量が200ppm以上9000ppm以下であることもより好ましい。上記元素を所定の範囲で含有させることにより、酸化マグネシウムの初期反応性を抑制することができる。これにより、鋼板の表面に被膜の外観、被膜の密着性に優れたフォルステライト被膜を形成することができる焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを得ることができる。
【0015】
また、本発明の要旨は、上述の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを含む焼鈍分離剤にある。本発明の焼鈍分離剤を用いることにより、磁気特性及び絶縁特性に優れた方向性電磁鋼板を製造することができる。
【0016】
また、本発明の要旨は、鋼板表面にSiO2被膜を形成する工程と、上述の焼鈍分離剤をSiO2被膜の表面に塗布し、焼鈍することにより、鋼板表面にフォルステライト被膜を形成する工程とを含む、方向性電磁鋼板の製造方法にある。本発明の製造方法により、磁気特性及び絶縁特性に優れた方向性電磁鋼板を製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、磁気特性及び絶縁特性に優れた方向性電磁鋼板を得るための焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを提供することができる。具体的には、本発明によれば、鋼板の表面に、被膜の外観、被膜の密着性に優れたフォルステライト被膜を形成することができる焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムは、CAA40%が50秒以上170秒以下であり、pHスタット法において反応率20mol%に到達するまでの時間(T2)と反応率10mol%に到達するまでの時間(T1)の比(T2/T1)が3.0以上である。また、比(T2/T1)は、3.0以上11.0未満であることが好ましい。
【0019】
本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムの初期反応性は、以下のpHスタット法により測定される。従来のCAAによる測定では、活性度の高い領域の測定を精度よく行うことが困難であった。本発明では、pHスタット法を用いており、酸化マグネシウムの初期反応性がより厳密に測定され、制御されている。
【0020】
pHスタット法は、アルカリ(本発明において、酸化マグネシウム)と酸(本発明において、クエン酸)との反応の際、pHを所定の値に維持するようにして、酸またはアルカリ溶液の投入量(消費量)、経過時間等を記録・測定するものであり、市販の一般的なpHスタット装置を使用して実施することができる。本発明におけるpHスタット法による測定は以下の通り行う。まず、200mLビーカーに100mLの脱イオン水を入れ、恒温槽にセットし、285Kに保持する。pH電極をセットし、マグネチックスターラーを用いて800rpmで攪拌しながら、秤量した酸化マグネシウム粉末400mgを投入し、すぐに0.4N・クエン酸水溶液の滴下を開始する。滴下開始後、pHを10に維持し、クエン酸水溶液の消費量と経過時間を測定し、反応率10mol%に到達するまでの時間(T1)、反応率20mol%に到達するまでの時間(T2)を求める。ここで、反応率10mol%に到達するまでの時間(T1)は、測定に供した酸化マグネシウムの10mol%に相当する量の酸化マグネシウムとの反応に必要なクエン酸水溶液の滴下に要した時間をいい、反応率20mol%に到達するまでの時間(T2)は、測定に供した酸化マグネシウムの20mol%に相当する量の酸化マグネシウムとの反応に必要なクエン酸水溶液の滴下に要した時間をいう。
【0021】
本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムは、pHスタット法において反応率20mol%に到達するまでの時間(T2)と反応率10mol%に到達するまでの時間(T1)の比(T2/T1)が3.0以上である。また、好ましくは、3.3以上であり、より好ましくは3.5以上である。また、比(T2/T1)の上限は、例えば、11.0未満であり、好ましくは10.5未満であり、より好ましくは10.0未満である。比(T2/T1)の範囲は、例えば、3.0以上11.0未満であり、好ましくは、3.3以上10.5未満であり、より好ましくは3.5以上10.0未満である。
【0022】
T2とT1の比(T2/T1)の値が大きいことは、反応率が10mol%に達した時点から反応率が20mol%に達する時点に至るまでの時間が長いことをあらわし、すなわち酸化マグネシウムの初期反応性が抑制されていることを示す。
【0023】
(T2/T1)が、3.0以上である酸化マグネシウムは、初期反応性が十分に抑制されており、鋼板の表面に、被膜の外観、被膜の密着性に優れたフォルステライト被膜を形成することができる。(T2/T1)が、3.0未満である酸化マグネシウムは、初期反応性が十分に抑制されておらず、鋼板の表面に、被膜の外観、被膜の密着性に優れたフォルステライト被膜を形成することができない。一方、(T2/T1)が、11.0以上である酸化マグネシウムは、初期反応性が抑制されすぎており、鋼板の表面に、被膜の外観、被膜の密着性に優れたフォルステライト被膜を形成することができない。
【0024】
本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムにおいて、(T2/T1)の比は、種々の方法で調整することができ、例えば前駆体水酸化マグネシウムの二次粒子径の調整、前駆体水酸化マグネシウムの焼成条件の調整、金属元素の添加、または複数の酸化マグネシウム粉末を混合することにより(T2/T1)の比を調整するなどの方法があるが、これらに限定されない。例えば、焼鈍分離剤用酸化マグネシウムに金属元素としてZn、Zr、Ni、Co、Mnを所定の範囲で含有させることによって調整を行うことができ、典型的には、一定量のZn、Zr、Ni、Co、Mnを添加することによって(T2/T1)の値が増加するように調整できる。中でも、Znを好ましく用いることで(T2/T1)の比の調整を安定的に行うことができ、典型的には一定量のZnを添加することによって(T2/T1)の値が増加するように調整できる。
【0025】
また、上記Zn、Zr、Ni、CoおよびMnの合計含有量は、200ppm~10000ppmであることが望ましい。好ましい含有量としては、例えば、以下が例示できる。好ましくは、250ppm~9500ppmであり、より好ましくは300ppm~9000ppmである。また、好ましくは、250ppm~8000ppmであり、より好ましくは300ppm~6000ppmである。合計含有量が200ppm未満であると、初期反応性は十分に低減せず、(T2/T1)が3.0以上となるような酸化マグネシウムが得られない。合計含有量が10000ppmを超えると、酸化マグネシウムの焼結性や被膜形成、さらには被膜性状に与える影響が大きくなり、被膜不良の原因となる。Zn、Zr、Ni、CoおよびMnの含有量は、公知の方法によって制御可能であり、例えば、後述する微量含有物の量を制御する方法によって制御できる。上記Zn、Zr、Ni、CoおよびMnは、これらの酸化物、水酸化物、塩化物、硫化物、炭酸塩、硫酸塩等の形態で、焼鈍分離剤用酸化マグネシウムの前駆体に添加することができる。とくにZnを添加する場合、塩化亜鉛及び/又は酸化亜鉛を使用することが好ましい。なお、明細書中ppmとは、特に断りのない限り、質量ppmを意味する。
【0026】
なお、T1の値は、850秒以上が好ましく、870秒以上がより好ましく、890秒以上がさらに好ましい。また、5000秒以下が好ましく、4800秒以下がより好ましく、4500秒以下がさらに好ましい。範囲としては、850~5000秒が好ましく、870~4800秒がより好ましく、890~4500秒がさらに好ましい。T1の値が850秒より小さいと、ごく初期の反応性が高すぎて鋼板の表面に、被膜の外観、被膜の密着性に優れたフォルステライト被膜を形成することができない。一方で、T1の値が5000秒より大きいと、ごく初期の反応性が低すぎて、鋼板の表面に、被膜の外観、被膜の密着性に優れたフォルステライト被膜を形成することができない。
【0027】
CAAは固相-液相反応により、実際の電磁鋼板の表面で起こる二酸化ケイ素と酸化マグネシウムとの固相-固相反応の反応性を、経験的にシミュレートしており、一次粒子を含む酸化マグネシウム粒子の反応性を測定するものである。なかでも、前述のとおり、CAA40%は中活性領域の指標として用いられている。酸化マグネシウムのCAA40%が170秒より大きければ、酸化マグネシウム粒子の反応性が悪く、フォルステライト被膜形成速度が遅くなることから、十分な被膜が形成されず、方向性電磁鋼板の鉄損及び磁束密度の特性が悪くなる。他方、酸化マグネシウムのCAA40%が50秒未満であれば、酸化マグネシウム粒子の反応性が速くなりすぎ、均一なフォルステライト被膜ができなくなり、方向性電磁鋼板の被膜の外観、被膜の密着性が悪くなる。すなわち、CAA40%は50秒未満では水和量が大きくなりすぎ、一方170秒を超えると反応性が低すぎて、いずれの場合も良好な被膜特性が得られない。よって、本発明においてCAA40%は、50秒以上170秒以下であり、好ましくは50~150秒の範囲、より好ましくは60~130秒の範囲とする。
【0028】
本発明の酸化マグネシウムのBET比表面積は12.0m2/g以上30.0m2/g以下であることが好ましく、12.0m2/g以上23.0m2/g以下であることがより好ましい。酸化マグネシウムのBET比表面積が12.0m2/g未満の場合、酸化マグネシウムの一次粒子径が粗大になり、酸化マグネシウム粒子の反応性が悪くなって、フォルステライト被膜生成率が低下し、また酸化マグネシウムの粒子が粗大なため、酸で除去した際の残留物が残りやすくなる。酸化マグネシウムのBET比表面積が30.0m2/gより大きくなると、酸化マグネシウムの一次粒子径が小さくなり、酸化マグネシウム粒子の反応性が速くなりすぎて、均一なフォルステライト被膜ができにくくなる傾向がある。
【0029】
体積基準の累積50%粒子径(D50)は0.5μm以上7.0μm以下が好ましい。体積基準の累積50%粒子径(D50)が0.5μmより小さいと、活性が高く、粉体の初期反応性を抑制することが困難となりやすい。体積基準の累積50%粒子径(D50)が7.0μmを超えると、酸化マグネシウムの一次粒子径が粗大になり、酸化マグネシウム粒子の反応性が悪くなるため、フォルステライト被膜形成速度が遅くなり、十分な被膜が形成されにくくなる。より好ましいD50は0.7μm以上6.0μm以下であり、さらに好ましくは1.0μm以上5.0μm以下である。
【0030】
本発明の酸化マグネシウムは、前述の亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)の他、例えば、カルシウム(Ca)、珪素(Si)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、リン(P)、ホウ素(B)、硫黄(S)、フッ素(F)、及び塩素(Cl)等の微量含有物を含むことができる。
【0031】
本発明の酸化マグネシウムがカルシウム(Ca)を含む場合、カルシウムの含有量は、CaO換算で0.2~2.0質量%であることが好ましい。本発明の酸化マグネシウムが珪素(Si)を含む場合、珪素の含有量は、0.05~0.5質量%であることが好ましい。本発明の酸化マグネシウムがアルミニウム(Al)を含む場合、アルミニウムの含有量は、0.01~0.5質量%であることが好ましい。本発明の酸化マグネシウムが鉄(Fe)を含む場合、鉄の含有量は、0.01~0.5質量%であることが好ましい。本発明の酸化マグネシウムがリン(P)を含む場合、リンの含有量は、P2O3換算で0.01~0.15質量%であることが好ましい。本発明の酸化マグネシウムがホウ素(B)を含む場合、ホウ素の含有量は、0.04~0.15質量%であることが好ましい。本発明の酸化マグネシウムが硫黄(S)を含む場合、硫黄の含有量は、SO3換算で0.01~1.5質量%であることが好ましい。本発明の酸化マグネシウムがフッ素(F)を含む場合、フッ素の含有量は、0.05質量%以下であることが好ましい。本発明の酸化マグネシウムが塩素(Cl)を含む場合、塩素の含有量は、500ppm以下であることが好ましく、400ppm以下がより好ましく、300ppm以下がさらに好ましい。
【0032】
本発明において、酸化マグネシウムの製造方法は公知の方法を用いることができる。例えば、原料として塩化マグネシウムを用い、この水溶液に水酸化カルシウムをスラリーの状態で添加し反応させ、水酸化マグネシウムを形成する。次いで、この水酸化マグネシウムを、ろ過、水洗、乾燥させた後、加熱炉で焼成し、酸化マグネシウムを形成し、これを所望の粒径まで粉砕して、製造することができる。
【0033】
また、水酸化カルシウムの代わりに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸基を有するアルカリ性化合物を用いることもできる。また、海水、潅水、苦汁等のような塩化マグネシウム含有水溶液を反応器に導入し、1773~2273Kで直接酸化マグネシウムと塩酸を生成させるアマン法(Aman process)により酸化マグネシウムを生成させ、これを所望の粒径まで粉砕して、酸化マグネシウムを製造することができる。
【0034】
更に、鉱物マグネサイトを焼成して得た酸化マグネシウムを、水和させ、得られた水酸化マグネシウムを焼成し、これを所望の粒径まで粉砕して、酸化マグネシウムを製造することもできる。
【0035】
MgO中の微量含有物の量は、公知の方法により制御できる。MgO中の微量含有物の量を制御する方法としては、例えば、MgO中の微量含有物の量が所定の範囲となるように、粗生成物の製造工程中に、又は得られた粗生成物の微量含有物量を最終焼成前に制御することにより行うことができる。粗生成物の製造工程中での制御は、例えば、原料に含まれる微量含有物の量を分析し、その結果を踏まえ、制御する対象の微量含有物が所定量となるように、湿式又は乾式で添加するか、湿式で除去することにより制御することができる。微量含有物の添加は、例えば、添加する元素を混合し、乾燥させることにより行うことができる。また、微量含有物の除去は、例えば、湿式で過剰な含有物を物理的に洗浄するか、化学的に分離することにより行うことができる。化学的な分離は、例えば、可溶性の水和物を形成させて、溶解させ、ろ過し、洗浄して分離するか、又は不溶性の化合物を形成させて、析出させ、析出物を吸着して分離することにより行うことができる。最終焼成前での粗生成物の微量含有物量の制御は、例えば、異なる組成を有する粗生成物を組み合わせて混合することで、微量含有物が所定の範囲となるように微量元素の量の過不足を調整し、これを最終焼成することにより制御できる。更に、微量含有元素の量を制御するため、いずれの場合も、粗生成物MgOを製造し、得られたMgOを分析した後、微量含有元素の量に関する個々の結果に応じて、上記の手順を繰り返し、組み合わせることができる。また、最終焼成後のMgOに対象の微量含有物を混合する方法によっても、MgO中の微量含有物の量を制御できる。
【0036】
酸化マグネシウムのD50、BET比表面積及びCAA40%は、公知の方法により調整でき、例えば、次のような方法により行うことができる。すなわち、水酸化マグネシウムの製造工程中の反応温度及びアルカリ源の濃度を調整することにより、水酸化マグネシウムの一次粒子径及び二次粒子径を制御し、酸化マグネシウムのD50、BET比表面積及びCAA40%を調整することができる。また、粒子径を制御した水酸化マグネシウムの焼成温度及び時間を制御することによっても、酸化マグネシウムのD50、BET比表面積及びCAA40%を調整することができる。また、D50、BET比表面積及びCAA40%の調整方法として、粉砕後のD50、BET比表面積及びCAA40%を測定し、複数回焼成を行うことでも調整することができる。更に、焼成した酸化マグネシウムを、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、インパクトクラッシャー、ロールクラッシャー、カッターミル、スタンプミル、リングミル、ローラーミル、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、回転ミル、振動ミル、遊星ミル、ボールミル等の粉砕機を使用して粉砕することによっても、酸化マグネシウムの粉砕後のD50、BET比表面積及びCAA40%を調整することができる。また、D50、BET比表面積及びCAA40%の調整方法として、粉砕後のD50、BET比表面積及びCAA40%を測定し、複数回粉砕を行うことでも調整することができる。また、分級機を内蔵した粉砕機を用いても酸化マグネシウムのD50、BET比表面積及びCAA40%を調整することができる。また、複数の酸化マグネシウム粉末を組み合わせて、それらを混合することによっても、D50、BET比表面積及びCAA40%の調整することができる。
【0037】
本発明の方向性電磁鋼板は、例えば、下記のような方法で製造することができる。方向性電磁鋼板はSi 2.5~4.5%を含有するケイ素鋼スラブを熱間圧延し、酸洗後、冷間圧延を行うか、中間焼鈍をはさむ2回冷間圧延を行って、所定の板厚に調整する。次に、冷間圧延したコイルを923~1173Kの湿潤水素雰囲気中で、脱炭を兼ねた再結晶焼鈍を行い、このとき鋼板表面にシリカ(SiO2)を主成分とする酸化被膜を形成させる。本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを含む焼鈍分離剤を水に均一に分散させ、水スラリーを得て、この鋼板上に、水スラリーを、ロールコーティング又はスプレーを用いて連続的に塗布し、約573Kで乾燥させる。こうして処理された鋼板コイルを、例えば、1473Kで20時間の最終仕上げ焼鈍を行って、鋼板表面にフォルステライト被膜(Mg2SiO4)を形成する。フォルステライト被膜は、絶縁被膜であるとともに、鋼板表面に張力を付与して、方向性電磁鋼板の鉄損値を向上させることができる。
【実施例】
【0038】
下記の実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。
【0039】
<測定方法・試験方法>
(1)金属元素の含有量の測定方法
測定試料を完全に酸溶解させた後、超純水で希釈し、ICP発光分光分析装置(PS3520 VDD 株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、試料中の金属元素の含有量を測定した。
【0040】
(2)塩素(Cl)の含有量の測定方法
測定試料を硝酸に溶解した後、超純水で希釈し、分光光度計(UV-2550 島津製作所製)を用いて質量を測定することで、試料中の塩素(Cl)濃度を算出した。
【0041】
(3)BET比表面積の測定方法
比表面積測定装置(商品名:Macsorb、Mountech Co., Ltd.製)を使用して、ガス吸着法(BET法)によりBET比表面積を測定した。
【0042】
(4)体積基準の累積50%粒子径(D50)の測定方法
測定試料をメタノールに分散し、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(MT3300EX-II LEEDS & NORTHRUP製)を用いて、試料の体積基準の累積50%粒子径(D50)を測定した。その際、出力40Wの超音波で180秒間分散した。
【0043】
(5)CAA40%の測定方法
0.4Nのクエン酸溶液100mLと、指示薬として適量(2mL)の1%フェノールフタレイン液とを、200mLビーカーに入れ、液温を303Kに調整し、マグネチックスターラーを使用して700rpmで攪拌しながら、クエン酸溶液中に40%の最終反応当量の酸化マグネシウム(2.0g)を投入して、最終反応までの時間、つまりクエン酸が消費され溶液が中性となるまでの時間を測定した。
【0044】
(6)初期反応性評価(pHスタット法)
初期反応性は市販のpHスタット装置(東亜ディーケーケー株式会社製自動滴定装置:AUT-701)を用いて、pHスタット法で評価した。具体的には、まず、200mLビーカーに100mLの脱イオン水を入れ、恒温槽にセットし、285Kに保持した。pH電極をセットし、マグネチックスターラーを用いて800rpmで攪拌しながら、秤量した試料粉末400mgを投入し、すぐに0.4N・クエン酸水溶液の滴下を開始した。滴下開始後、pHを10に維持しつつ、反応率が10mol%及び20mol%となる量のクエン酸水溶液が消費されるのに要した時間(秒)を測定した。本測定条件の場合、試料粉末400mg(約0.1mol)に対して、反応率10mol%となる0.4N・クエン酸水溶液の量は5mL、反応率20mol%となる0.4N・クエン酸水溶液の量は10mLである。
【0045】
(7)試験用鋼板の作成
試験試料供試鋼として、方向性電磁鋼板用の珪素鋼スラブを、公知の方法で熱間圧延、冷間圧延を行って、最終板厚0.28mmとし、更に、窒素25%+水素75%の湿潤雰囲気中で脱炭焼鈍した鋼板を用いた。脱炭焼鈍前の鋼板の組成は、質量%で、C:0.01%、Si:3.29%、Mn:0.09%、Al:0.03%、S:0.07%、N:0.0053%、残部は不可避的な不純物とFeである。この鋼板上に酸化マグネシウムを塗布して、フォルステライト被膜の被膜特性を調査した。
【0046】
具体的には、本発明の酸化マグネシウム又は比較例の酸化マグネシウムをスラリー状にして、乾燥後の重量で14g/m2になるように鋼板に塗布し、乾燥後、1473Kで20.0時間の最終仕上げ焼鈍を行った。最終仕上げ焼鈍が終了したのち冷却し、鋼板を水洗し、塩酸水溶液で酸洗浄した後、再度水洗して、乾燥させ、鋼板上にフォルステライト被膜を形成させた。
【0047】
(8)フォルステライト被膜外観の評価
フォルステライト被膜の外観は、洗浄後の被膜の外観から判断した。すなわち、灰色のフォルステライト被膜が、均一に厚く形成されている場合を◎、被膜が均一であるがやや薄く形成されている場合を○、被膜が不均一で薄いが、下地の鋼板が露出している部分がない場合、もしくは被膜が不均一で非常に薄く、下地の鋼板が明らかに露出した部分がある場合を×とした。
【0048】
(9)フォルステライト被膜の密着性の評価
フォルステライト被膜の密着性は、被膜状態から判断した。すなわち、被膜が均一に形成され、剥離部位が存在しない場合、もしくは被膜が僅かに不均一であるが、剥離部分が存在しない場合を○、被膜が不均一で、ピンホール状の剥離部位が存在する場合、もしくは被膜が不均一で、明確な剥離部位が存在する場合を×とした。
【0049】
<実施例1>
濃度2.0mol/Lのマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が1.2mol/Lになるように添加し、混合液を得た。混合液を600rpmで攪拌しながら323Kにて7.0時間反応させた。その後、フィルタープレスで濾過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムに、塩化亜鉛(関東化学製、試薬特級)を焼成後の酸化マグネシウム中のZnが720ppmとなるように混合した後、ロータリーキルンにより1173Kで0.5時間焼成したのち粉砕し、実施例1の酸化マグネシウム粉末を得た。なお、焼成は、酸化マグネシウムのCAA40%が70~90秒の範囲となる条件で行った。
【0050】
<実施例2>
塩化亜鉛(特級)を焼成後の酸化マグネシウム中のZnが2250ppmとなるように混合した以外は、実施例1と同様にして、酸化マグネシウム粉末を得た。
【0051】
<実施例3>
塩化亜鉛(特級)を焼成後の酸化マグネシウム中のZnが4300ppmとなるように混合した以外は、実施例1と同様にして、酸化マグネシウム粉末を得た。
【0052】
<比較例1>
塩化亜鉛(特級)を混合しなかった以外は、実施例1と同様にして、酸化マグネシウム粉末を得た。
【0053】
得られた実施例1~3及び比較例1の酸化マグネシウム粉末について、上記のとおり、含有成分等の測定を行い、また、これら酸化マグネシウム粉末を用いて得た方向性電磁鋼板の評価を実施した。結果を表1に示す。なお、表に示す以外の金属元素については、通常の不純物レベルの含有量であった。
【0054】
【0055】
表1から明らかなように、pHスタット法により求めた(T2/T1)の値が3.0以上の酸化マグネシウム(実施例1~3)を用いて形成したフォルステライト被膜は、(a)被膜の外観、(b)被膜の密着性について優れていることが明らかとなった。一方、pHスタット法により求めた(T2/T1)の値が3.0未満の酸化マグネシウム(比較例1)を用いて形成したフォルステライト被膜は、(a)被膜の外観、(b)被膜の密着性ともに劣っていた。
【0056】
<実施例4>
濃度2.0mol/Lのマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が1.2mol/Lになるように添加し、混合液を得た。この混合液に塩化亜鉛(関東化学製、試薬特級)を焼成後の酸化マグネシウム中のZnが8800ppmとなるように混合した後、混合液を600rpmで攪拌しながら323Kにて7.0時間反応させ、その後フィルタープレスで濾過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンにより1173Kで0.5時間焼成したのち粉砕し、実施例4の酸化マグネシウム粉末を得た。なお、焼成は、酸化マグネシウムのCAA40%が70~95秒の範囲となる条件で行った。
【0057】
<実施例5>
塩化亜鉛に代えて、酸化亜鉛(和光純薬製、試薬特級)を、焼成後の酸化マグネシウム中のZnが5250ppmとなるように混合した以外は、実施例4と同様にして、酸化マグネシウム粉末を得た。
【0058】
<実施例6>
塩化亜鉛を混合しなかった以外は、実施例4と同様にして、酸化マグネシウム粉末を得て、これにZnが5150ppmとなるように酸化亜鉛(和光純薬製、試薬特級)を混合することで、目的の酸化マグネシウム粉末を得た。
【0059】
<比較例2>
塩化亜鉛(特級)を焼成後の酸化マグネシウム中のZnが10300ppmとなるように混合した以外は、実施例4と同様にして、酸化マグネシウム粉末を得た。
【0060】
得られた実施例4~6及び比較例2の酸化マグネシウム粉末について、上記のとおり、含有成分等の測定を行い、また、これら酸化マグネシウム粉末を用いて得た方向性電磁鋼板の評価を実施した。結果を表2に示す。なお、表に示す以外の金属元素については、通常の不純物レベルの含有量であった。
【0061】
【0062】
表1および表2から明らかなように、pHスタット法により求めた(T2/T1)の値が3.0以上11.0未満の酸化マグネシウム(実施例1~6)を用いて形成したフォルステライト被膜は、(a)被膜の外観、(b)被膜の密着性について優れていることが明らかとなった。一方、pHスタット法により求めた(T2/T1)の値が3.0未満の酸化マグネシウム(比較例1)を用いて形成したフォルステライト被膜、及び(T2/T1)の値が11.0以上の酸化マグネシウム(比較例2)を用いて形成したフォルステライト被膜は、(a)被膜の外観、(b)被膜の密着性ともに劣っていた。
【0063】
以上のことから、本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムによれば、優れたフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板を製造することができることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、被膜特性に優れた方向性電磁鋼板を提供することができる焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを提供できる。
【要約】
本発明の目的は、被膜特性に優れた方向性電磁鋼板を得るための焼鈍分離剤用酸化マグネシウムの提供である。
本発明は、CAA40%が50秒以上170秒以下であり、pHスタット法において反応率20mol%に到達するまでの時間(T2)と反応率10mol%に到達するまでの時間(T1)の比(T2/T1)が3.0以上である、焼鈍分離剤用酸化マグネシウムである。