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特許7181442環状ペプチド化合物を含む製剤及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】環状ペプチド化合物を含む製剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/12 20060101AFI20221122BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20221122BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20221122BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221122BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20221122BHJP
   C07K 7/50 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
A61K38/12
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/44
A61P43/00 111
A61P35/00
A61K47/12
A61K47/22
A61K9/48
C07K7/50
【請求項の数】 63
(21)【出願番号】P 2022548967
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 JP2022019540
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2021079015
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】植戸 隆充
(72)【発明者】
【氏名】久保木 友香理
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/100132(WO,A1)
【文献】特許第6880352(JP,B2)
【文献】薬剤学,Vol.70 Suppl.,2010年,p.192(P-5)
【文献】日本薬剤学会年会講演要旨集,Vol.29,2014年,p.193(P20-32)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61K 47/00
A61K 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物と、液体添加剤を含有し、
前記液体添加剤が、疎水性界面活性剤および親水性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記疎水性界面活性剤が、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、および疎水性ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、親水性ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩、およびカプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリドからなる群より選択される少なくとも1種である、組成物。
【請求項2】
前記液体添加剤が、前記疎水性界面活性剤、および前記親水性界面活性剤の組み合わせである、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
前記疎水性界面活性剤のHLB値が0以上10未満であり、前記親水性界面活性剤のHLB値が10以上30以下である、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
前記疎水性界面活性剤が、プロピレングリコール脂肪酸エステルである、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
前記プロピレングリコール脂肪酸エステルが、モノカプロン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸プロピレングリコール、モノカプリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノミリスチン酸プロピレングリコール、モノパルミチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、およびモノオレイン酸プロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記プロピレングリコール脂肪酸エステルが、モノカプリル酸プロピレングリコールである、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
前記親水性界面活性剤が、ポリオキシエチレンヒマシ油である、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリオキシエチレンヒマシ油が、ポリオキシル30ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、およびポリオキシル40ヒマシ油からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリオキシエチレンヒマシ油が、ポリオキシル35ヒマシ油である、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
前記親水性界面活性剤が、ポリオキシエチレンヒマシ油である、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
前記親水性界面活性剤が、ポリオキシル35ヒマシ油である、請求項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が油性成分を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項13】
前記油性成分が、脂肪酸、アシルグリセロール、植物油およびこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記油性成分が、脂肪酸である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記脂肪酸が、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記脂肪酸が、オレイン酸である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
組成物が、脂肪酸をさらに含む、請求項に記載の組成物。
【請求項19】
組成物が、脂肪酸をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項20】
組成物が、オレイン酸をさらに含む、請求項に記載の組成物。
【請求項21】
組成物が、オレイン酸をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項22】
組成物が、抗酸化剤をさらに含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
組成物が、抗酸化剤をさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項24】
組成物が、抗酸化剤をさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項25】
組成物が、抗酸化剤をさらに含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
前記抗酸化剤が、dl-α-トコフェロールである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記抗酸化剤が、dl-α-トコフェロール、ブチレート化ヒドロキシトルエン、ブチレート化ヒドロキシアニソール、プロピルガレート、没食子酸プロピル、医薬として許容されうるキノン、アスタキサンチン、およびD-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項22に記載の組成物。
【請求項28】
前記抗酸化剤が、dl-α-トコフェロールである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の組成物全体に対する含有率が、10重量%以下である、請求項に記載の組成物。
【請求項30】
前記液体添加剤の組成物全体に対する含有率が、50重量%以上97重量%以下である、請求項に記載の組成物。
【請求項31】
前記液体添加剤の、前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物に対する重量比が、5以上である、請求項に記載の組成物。
【請求項32】
前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の組成物全体に対する含有率が、10重量%以下であり、前記液体添加剤の組成物全体に対する含有率が、50重量%以上97重量%以下である、請求項13に記載の組成物。
【請求項33】
前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の組成物全体に対する含有率が、10重量%以下であり、前記液体添加剤の組成物全体に対する含有率が、50重量%以上97重量%以下である、請求項19に記載の組成物。
【請求項34】
前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の組成物全体に対する含有率が、10重量%以下であり、前記液体添加剤の組成物全体に対する含有率が、50重量%以上97重量%以下である、請求項21に記載の組成物。
【請求項35】
前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の組成物全体に対する含有率が、10重量%以下であり、前記液体添加剤の組成物全体に対する含有率が、50重量%以上97重量%以下である、請求項23に記載の組成物。
【請求項36】
前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の組成物全体に対する含有率が、10重量%以下であり、前記液体添加剤の組成物全体に対する含有率が、50重量%以上97重量%以下である、請求項24に記載の組成物。
【請求項37】
前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の組成物全体に対する含有率が、10重量%以下であり、前記液体添加剤の組成物全体に対する含有率が、50重量%以上97重量%以下である、請求項25に記載の組成物。
【請求項38】
前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の組成物全体に対する含有率が、10重量%以下であり、前記液体添加剤の組成物全体に対する含有率が、50重量%以上97重量%以下である、請求項26に記載の組成物。
【請求項39】
前記油性成分の組成物全体に対する含有率が、1重量%以上40重量%以下である、請求項12に記載の組成物。
【請求項40】
前記脂肪酸の組成物全体に対する含有率が、1重量%以上40重量%以下である、請求項13に記載の組成物。
【請求項41】
前記脂肪酸の組成物全体に対する含有率が、1重量%以上40重量%以下である、請求項19に記載の組成物。
【請求項42】
前記オレイン酸の組成物全体に対する含有率が、1重量%以上40重量%以下である、請求項21に記載の組成物。
【請求項43】
前記油性成分の組成物全体に対する含有率が、1重量%以上40重量%以下である、請求項23に記載の組成物。
【請求項44】
前記脂肪酸の組成物全体に対する含有率が、1重量%以上40重量%以下である、請求項24に記載の組成物。
【請求項45】
前記オレイン酸の組成物全体に対する含有率が、1重量%以上40重量%以下である、請求項25に記載の組成物。
【請求項46】
前記オレイン酸の組成物全体に対する含有率が、1重量%以上40重量%以下である、請求項26に記載の組成物。
【請求項47】
請求項1~46のいずれか一項に記載の組成物を含有する、医薬製剤。
【請求項48】
前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物が、式(1)で表される化合物の水和物である、請求項47に記載の医薬製剤。
【請求項49】
前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物が、式(1)で表される化合物である、請求項47に記載の医薬製剤。
【請求項50】
前記製剤の剤型がカプセル剤である、請求項47に記載の医薬製剤。
【請求項51】
前記製剤の剤形がカプセル剤である、請求項48に記載の医薬製剤。
【請求項52】
前記製剤の剤形がカプセル剤である、請求項49に記載の医薬製剤。
【請求項53】
下記の工程を含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の組成物の製造方法;
(1)下記式(1):
【化2】

で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物、および液体添加剤を提供する工程
ここで、前記液体添加剤は、疎水性界面活性剤および親水性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記疎水性界面活性剤が、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、および疎水性ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、親水性ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩、およびカプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリドからなる群より選択される少なくとも1種である
(2)該式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物、および液体添加剤を混合する工程;および、
(3)該式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物が溶解した組成物を得る工程。
【請求項54】
前記工程(1)において提供される式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物が、式(1)で表される化合物の水和物である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法により前記組成物を提供する工程、および該組成物を製剤化して、医薬製剤を提供する工程、を含む、医薬製剤の製造方法。
【請求項56】
請求項54に記載の方法により前記組成物を提供する工程、および該組成物をカプセルに充填して、カプセル製剤を提供する工程、を含む、カプセル製剤の製造方法。
【請求項57】
前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折 において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のうちの、少なくとも7つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折 において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のうちの、少なくとも10個のピークを含む粉末X線回折パターンを有する、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折 において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のピークを含む粉末X線回折パターンを有する、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、14.752°、14.968°、15.895°、16.190°、16.643°、17.813°、および19.424°(±0.2°)のうちの、少なくとも7つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、請求項54に記載の方法。
【請求項61】
前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、14.752°、14.968°、15.895°、16.190°、16.643°、17.813°、および19.424°(±0.2°)のうちの、少なくとも10個のピークを含む粉末X線回折パターンを有する、請求項54に記載の方法。
【請求項62】
前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、14.752°、14.968°、15.895°、16.190°、16.643°、17.813°、および19.424°(±0.2°)のうちの、少なくとも13個のピークを含む粉末X線回折パターンを有する、請求項54に記載の方法。
【請求項63】
前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、14.752°、14.968°、15.895°、16.190°、16.643°、17.813°、および19.424°(±0.2°)のピークを含む粉末X線回折パターンを有する、請求項54に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、KRAS阻害活性を有する環状ペプチド化合物を含む製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来経口薬として用いられてきた化合物は、リピンスキーの法則として知られているように、分子量が500g/mol以下であることが望ましいとされてきた(非特許文献1)。近年、分子量が500g/molを超える化合物が、従来の低分子化合物では相互作用することが困難であり、タフターゲットと呼ばれている標的タンパクの表面での相互作用、すなわちタンパク-タンパク相互作用阻害等に寄与し得ることが知られるようになってきた。これらの分子は、経口薬として用いられてきた分子量が500g/mol以下の低分子でもなく、抗体医薬品のように分子量が100000g/molを超える高分子でもない、中分子化合物(分子量500-2000g/mol)と呼ばれ、タフターゲットに対する創薬を実現し得る、新たなモダリティとして注目されている(非特許文献2)。
【0003】
高血糖症の治療に用いられているインスリンのように、天然アミノ酸からなるペプチドは、代謝安定性に乏しく、従来はペプチドを経口薬として開発することは困難とされてきた。しかし、ペプチドの環化や、ペプチド中にN-メチルアミノ酸に例示される非天然アミノ酸を用いることにより、ペプチドの代謝安定性や膜透過性が向上することが見出されてきた(非特許文献3、4)。
【0004】
非天然アミノ酸を含む環状ペプチドの中でも、特にN-置換アミノ酸を含む環状ペプチドが代謝安定性や膜透過性を有し得る、すなわちドラッグライクネスを有し得ることが知られるようになってきた(特許文献1)。
【0005】
非天然型アミノ酸を含む環状ペプチドのライブラリ化合物が、タンパク-タンパク相互作用の阻害剤の創生に有用であることが示唆されている(非特許文献5)。
【0006】
非天然型アミノ酸を含む環状ペプチドが医薬品として利用できる程度の膜透過性と代謝安定性を有するドラッグライクな分子であるための条件についても明らかにされ、医薬品モダリティとしての環状ペプチドの注目度はさらに高まっている(特許文献2、3)。
【0007】
特許文献6には薬理作用を示す環状ペプチドが開示されている。また、特許文献6には、シクロスポリンの製剤化技術について開示されている。ソマトスタチンの経口製剤化についての研究もおこなわれている(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2013/100132号
【文献】国際公開第2018/225864号
【文献】国際公開第2020/122182号
【文献】国際公開第2012/122059号
【文献】国際公開第2017/181061号
【文献】国際公開第2018/031730号
【文献】国際公開第2016/071515号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Adv. Drug Del. Rev. 1997, 23, 3-25.
【文献】Future Med. Chem., 2009, 1, 1289-1310.
【文献】Acc. Chem. Res., 2008, 41, 1331-1342.
【文献】Angew. Chem. Int. Ed., 2013, 52, 254-269.
【文献】Chem. Rev., 2019, 119, 10360-10391.
【文献】Ther. Deliv. (2017) 8(10), 867-878.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、非天然アミノ酸を含む環状化合物の製剤を提供することを課題とする。本発明は、効率的なRAS阻害作用を持つ環状化合物の製剤を製造する方法を提供することを課題とする。
【0011】
特許文献4では、RASとSOSの結合阻害が記載されており、また特許文献5では、RASと結合する化合物と競合するペプチドが記載されているが、これらの文献には、薬理作用、とくに腫瘍細胞に対する作用は示されていない。また、これらの文献には、ドラッグライクなペプチドは記載されていない。
【0012】
特許文献6、7では環状ペプチドの製剤化に関する記載があるが、いずれも特定の化合物の製剤化について、記載されているに過ぎない。
【0013】
非特許文献2には、医薬として用いられているペプチドが記載されているが、ドラッグライクなペプチドに関する記載や、RAS変異がんに有用なペプチドは記載されていない。
【0014】
非特許文献3,4には、N-メチルアミノ酸を含むペプチドが医薬として適応されうることが記載されているが、RAS変異がんに有用なペプチドは記載されていない。
【0015】
非特許文献5には、環状ペプチドが医薬として適応され得ることが記載されているが、RAS変異がんに有用なペプチドは記載されていない。
【0016】
非特許文献6では、ソマトスタチンが例示され、経口製剤化に必要な要素について述べられているが、単にソマトスタチンについて述べられているに過ぎない。
【0017】
したがって、非天然アミノ酸を含む環状化合物に対して、医薬として優れた製剤を提供することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、有効成分に特定の添加剤を加えることにより、医薬として用いることのできる製剤化を行うことができることを見出した。特定の添加剤として、界面活性剤が有効であり、好ましくは疎水性界面活性剤および親水性界面活性剤を組み合わせて用いることが有効であることを見出した。さらに、油性成分を添加することにより、製剤としてより有効なものとすることができることを見出した。有効成分とこれらの添加剤を混合したものを、製剤化して特定の剤型をもつ製剤に用いることができることを見出した。
【0019】
本発明に係る製剤は、製剤中での有効成分の安定性や製剤からの溶出性に優れていることを見出した。
【0020】
すなわち、本発明は、以下に関する。
〔1〕下記式(1):
で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物と、液体添加剤、および任意で油性成分を含有する、組成物。
〔2〕前記液体添加剤が、界面活性剤である、〔1〕に記載の組成物。
〔3〕前記界面活性剤が、疎水性界面活性剤、および親水性界面活性剤の組み合わせである、〔2〕に記載の組成物。
〔4〕前記疎水性界面活性剤のHLB値が0以上10未満であり、前記親水性界面活性剤のHLB値が10以上30以下である、〔3〕に記載の組成物。
〔5〕前記疎水性界面活性剤が、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、および疎水性ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群より選択される少なくとも1種である、〔3〕または〔4〕に記載の組成物。
〔6〕前記疎水性界面活性剤が、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種である、〔3〕~〔5〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔7〕前記疎水性界面活性剤が、プロピレングリコール脂肪酸エステルを含む、〔3〕~〔6〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔8〕前記プロピレングリコール脂肪酸エステルが、モノカプロン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸プロピレングリコール、モノカプリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノミリスチン酸プロピレングリコール、モノパルミチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、およびモノオレイン酸プロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、〔5〕に記載の組成物。
〔9〕前記グリセリン脂肪酸エステルが、モノカプロン酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、およびモノリノール酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種である、〔5〕に記載の組成物。
〔10〕前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、モノオレイン酸ジグリセリルである、〔5〕に記載の組成物。
〔11〕前記ソルビタン脂肪酸エステルが、モノカプリル酸ソルビタン、モノカプリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノミリスチン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、およびトリオレイン酸ソルビタンからなる群より選択される少なくとも1種である、〔5〕に記載の組成物。
〔12〕前記疎水性ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 5およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 10からなる群より選択される少なくとも1種である、〔5〕に記載の組成物。
〔13〕前記疎水性界面活性剤が、モノカプリル酸プロピレングリコールである、〔3〕~〔7〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔14〕前記親水性界面活性剤が、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、親水性ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩、カプリロカプロイルポリオキシル-8 グリセリド、およびこれらのいずれかの組合せからなる群より選択される少なくとも1種である、〔3〕~〔13〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔15〕前記親水性界面活性剤が、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩、カプリロカプロイルポリオキシル-8 グリセリド、およびこれらのいずれかの組合せからなる群より選択される少なくとも1種である、〔3〕~〔14〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔16〕前記親水性界面活性剤が、ポリオキシエチレンヒマシ油を含む、〔3〕~〔15〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔17〕前記ポリエチレングリコール脂肪酸エステルが、ポリオキシエチレンヒドロキシステアレート、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、およびステアリン酸ポリオキシル40からなる群より選択される少なくとも1種である、〔14〕に記載の組成物。
〔18〕前記ポリオキシエチレンヒマシ油が、ポリオキシル30ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、およびポリオキシル40ヒマシ油からなる群から選択される少なくとも1種である、〔14〕に記載の組成物。
〔19〕前記ポリオキシエチレンヒマシ油が、ポリオキシル35ヒマシ油である、〔14〕に記載の組成物。
〔20〕前記親水性ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60からなる群より選択される少なくとも1種である、〔14〕に記載の組成物。
〔21〕前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、およびポリソルベート80からなる群より選択される少なくとも1種である、〔14〕に記載の組成物。
〔22〕前記親水性界面活性剤が、ポリオキシル35ヒマシ油、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩、カプリロカプロイルポリオキシル-8 グリセリド、ポリソルベート80、およびこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種である、〔3〕~〔15〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔23〕前記親水性界面活性剤が、ポリオキシル35ヒマシ油を含む、〔3〕~〔15〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔24〕前記疎水性界面活性剤がプロピレングリコール脂肪酸エステルであり、前記親水性界面活性剤がポリオキシエチレンヒマシ油を含む、〔3〕に記載の組成物。
〔25〕前記疎水性界面活性剤がモノカプリル酸プロピレングリコールであり、前記親水性界面活性剤がポリオキシル35ヒマシ油、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩、カプリロカプロイルポリオキシル-8 グリセリド、ポリソルベート80、およびこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種である、〔3〕に記載の組成物。
〔26〕前記疎水性界面活性剤がモノカプリル酸プロピレングリコールであり、前記親水性界面活性剤がポリオキシル35ヒマシ油を含む、〔3〕に記載の組成物。
〔27〕組成物が油性成分を含む、〔1〕~〔26〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔28〕前記油性成分が、脂肪酸、アシルグリセロール、植物油およびこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種である、〔1〕~〔27〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔29〕前記油性成分が、脂肪酸、アシルグリセロール、およびこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種である、〔1〕~〔28〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔30〕前記油性成分が脂肪酸を含む、〔1〕~〔29〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔31〕前記脂肪酸が、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸からなる群より選択される少なくとも1種である、〔28〕に記載の組成物。
〔32〕前記脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸からなる群より選択される少なくとも1種である、〔28〕に記載の組成物。
〔33〕前記アシルグリセロールが、トリアセチン、トリブチリン、トリカプロイン、トリカプリリン、トリカプリン、トリパルミチン、トリパルミトレイン、トリステアリン酸グリセリン、トリオレイン、トリリノレイン、トリリノレニン、および中鎖脂肪酸トリグリセリドからなる群より選択される少なくとも1種である、〔28〕に記載の組成物。
〔34〕前記アシルグリセロールがトリアセチンである、〔28〕に記載の組成物。
〔35〕前記植物油が、オリーブ油、アーモンド油、ヤシ油、カカオ脂、マカデミアナッツ油、アボカド油、サフラワー油、ダイズ油、アマニ油、ナタネ油、ヒマシ油、コーン油、およびパーム油からなる群より選択される少なくとも1種である、〔28〕に記載の組成物。
〔36〕前記油性成分が、オレイン酸またはトリアセチンである、〔1〕~〔35〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔37〕前記油性成分が、オレイン酸である、〔1〕~〔36〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔38〕疎水性界面活性剤としてプロピレングリコール脂肪酸エステルを含み、親水性界面活性剤としてポリオキシエチレンヒマシ油を含み、油性成分として脂肪酸を含む、〔3〕に記載の組成物。
〔39〕疎水性界面活性剤としてモノカプリル酸プロピレングリコールを含み、親水性界面活性剤としてポリオキシル35ヒマシ油を含み、油性成分としてオレイン酸を含む、〔3〕に記載の組成物。
〔40〕さらに抗酸化剤を含む、〔1〕~〔39〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔41〕前記抗酸化剤が、dl-α-トコフェロール、ブチレート化ヒドロキシトルエン、ブチレート化ヒドロキシアニソール、プロピルガレート、没食子酸プロピル、医薬として許容されうるキノン、アスタキサンチン、およびD-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩からなる群より選択される少なくとも1種である、〔40〕に記載の組成物。
〔42〕さらに可溶化剤を含む、〔1〕~〔41〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔43〕前記可溶化剤が、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種である、〔42〕に記載の組成物。
〔44〕前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物が、式(1)で表される化合物またはその水和物である、〔1〕~〔43〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔45〕前記水和物が、式(1)で表される化合物の水和物である、〔44〕に記載の組成物。
〔46〕前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物が、式(1)で表される化合物である、〔44〕に記載の組成物。
〔47〕前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の組成物全体に対する含有率が、10重量%以下である、〔1〕~〔46〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔48〕前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の組成物全体に対する含有率が、8重量%以下である、〔1〕~〔47〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔49〕前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の組成物全体に対する含有率が、7重量%以下である、〔1〕~〔48〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔50〕前記液体添加剤の組成物全体に対する含有率が、50重量%以上97重量%以下である、〔1〕~〔49〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔51〕前記液体添加剤の組成物全体に対する含有率が、55重量%以上96重量%以下である、〔1〕~〔50〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔52〕前記液体添加剤の組成物全体に対する含有率が、70重量%以上90重量%以下である、〔1〕~〔51〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔53〕前記疎水性界面活性剤の組成物全体に対する含有率が、20重量%以上70重量%以下である、〔3〕~〔52〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔54〕前記疎水性界面活性剤の組成物全体に対する含有率が、25重量%以上65重量%以下である、〔3〕~〔53〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔55〕前記疎水性界面活性剤の組成物全体に対する含有率が、30重量%以上55重量%以下である、〔3〕~〔54〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔56〕前記親水性界面活性剤の組成物全体に対する含有率が、20重量%以上40重量%以下である、〔3〕~〔55〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔57〕前記親水性界面活性剤の組成物全体に対する含有率が、25重量%以上35重量%以下である、〔3〕~〔56〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔58〕前記親水性界面活性剤の組成物全体に対する含有率が、28重量%以上33重量%以下である、〔3〕~〔57〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔59〕前記油性成分の組成物全体に対する含有率が、0重量%以上50重量%以下である、〔1〕~〔58〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔60〕前記油性成分の組成物全体に対する含有率が、1重量%以上40重量%以下である、〔1〕~〔59〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔61〕前記油性成分の組成物全体に対する含有率が、10重量%以上20重量%以下である、〔1〕~〔60〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔62〕前記油性成分が、脂肪酸を含む、〔1〕~〔61〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔63〕前記疎水性界面活性剤の前記親水性界面活性剤に対する重量比が、0.5~3.0である、〔3〕~〔62〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔64〕前記疎水性界面活性剤の前記親水性界面活性剤に対する重量比が、1.0~2.5である、〔3〕~〔63〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔65〕前記疎水性界面活性剤の前記親水性界面活性剤に対する重量比が、1.5~2.0である、〔3〕~〔64〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔66〕前記液体添加剤の、前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物に対する重量比が、5以上である、〔1〕~〔65〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔67〕前記液体添加剤の、前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物に対する重量比が、10以上である、〔1〕~〔66〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔68〕前記液体添加剤の、前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物に対する重量比が、5~2000である、〔1〕~〔66〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔69〕前記液体添加剤および前記油性成分の合計の、前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物に対する重量比が、10以上である、〔1〕~〔68〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔70〕前記液体添加剤および前記油性成分の合計の、前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物に対する重量比が、10~2000である、〔1〕~〔69〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔71〕前記液体添加剤および前記油性成分の合計の、前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物に対する重量比が、10~1000である、〔1〕~〔70〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔72〕前記組成物が液体である、〔1〕~〔71〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔73〕前記組成物を水に分散させたときに形成される液滴の平均粒子径が、200nm未満である、〔1〕~〔72〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔74〕前記液滴の平均粒子径が、10nm以上200nm未満である、〔73〕に記載の組成物。
〔75〕前記液滴の平均粒子径が、50nm以上200nm以下である、〔74〕に記載の組成物。
〔76〕〔1〕~〔75〕のいずれか一項に記載の組成物を含有する、医薬製剤。
〔77〕前記製剤の剤型がカプセル剤である、〔76〕に記載の医薬製剤。
〔78〕下記の工程を含む、〔1〕~〔75〕のいずれか1項に記載の組成物の製造方法;
(1)下記式(1):
で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物、液体添加剤、および任意で油性成分を提供する工程;
(2)該式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物、液体添加剤、および任意で油性成分を混合する工程;および、
(3)該式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物が溶解した組成物を得る工程。
〔79〕前記工程(1)において提供される式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物が、式(1)で表される化合物の水和物である、〔78〕に記載の方法。
〔80〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のうちの、少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔80-1〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折 において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のうちの、少なくとも2つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔80-2〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折 において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のうちの、少なくとも3つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔80-3〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折 において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のうちの、少なくとも4つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔80-4〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折 において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のうちの、少なくとも5つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔80-5〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折 において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のうちの、少なくとも6つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔80-6〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折 において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のうちの、少なくとも7つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔80-7〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折 において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のうちの、少なくとも8つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔80-8〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折 において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のうちの、少なくとも9つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔80-9〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折 において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のうちの、少なくとも10個のピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔80-10〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折 において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のうちの、少なくとも11個のピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔80-11〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折 において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のうちの、少なくとも12個のピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔80-12〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折 において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔81〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、7.921°、9.956°、10.435°11.729°、12.704°、15.895°、および16.643°(±0.2°)のうちの、少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔81-1〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、7.921°、9.956°、10.435°11.729°、12.704°、15.895°、および16.643°(±0.2°)のうちの、少なくとも2つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔81-2〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、7.921°、9.956°、10.435°11.729°、12.704°、15.895°、および16.643°(±0.2°)のうちの、少なくとも3つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔81-3〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、7.921°、9.956°、10.435°11.729°、12.704°、15.895°、および16.643°(±0.2°)のうちの、少なくとも4つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔81-4〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、7.921°、9.956°、10.435°11.729°、12.704°、15.895°、および16.643°(±0.2°)のうちの、少なくとも5つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔81-5〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、7.921°、9.956°、10.435°11.729°、12.704°、15.895°、および16.643°(±0.2°)のうちの、少なくとも6つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔81-6〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、7.921°、9.956°、10.435°11.729°、12.704°、15.895°、および16.643°(±0.2°)のピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔81-7〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、14.752°、14.968°、15.895°、16.190°、16.643°、17.813°、および19.424°(±0.2°)のうちの、少なくとも7つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔81-8〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、14.752°、14.968°、15.895°、16.190°、16.643°、17.813°、および19.424°(±0.2°)のうちの、少なくとも10個のピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔81-9〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、14.752°、14.968°、15.895°、16.190°、16.643°、17.813°、および19.424°(±0.2°)のうちの、少なくとも13個のピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔81-10〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、14.752°、14.968°、15.895°、16.190°、16.643°、17.813°、および19.424°(±0.2°)のうちの、少なくとも15個のピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔81-10〕前記式(1)で表される化合物の水和物が結晶であり、該結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、14.752°、14.968°、15.895°、16.190°、16.643°、17.813°、および19.424°(±0.2°)のピークを含む粉末X線回折パターンを有する、〔79〕に記載の方法。
〔82〕〔1〕~〔75〕のいずれか1項に記載の組成物を提供する工程、および該組成物を製剤化して、医薬製剤を提供する工程、を含む、医薬製剤の製造方法。
〔83〕〔1〕~〔75〕のいずれか1項に記載の組成物を提供する工程、および該組成物をカプセルに充填して、カプセル製剤を提供する工程、を含む、カプセル製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る組成物は、製剤として必要な種々の特性に優れる。例えば、本発明に係る組成物は、液体状の組成物が乳化して液滴を形成した場合に望ましい粒子特性を有し、安定性や分散性に極めて優れるとともに、体内への吸収性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、調製例3で得られた化合物1の水和物結晶(Form C)の粉末X線回折測定の結果を示すグラフである。縦軸は回折強度であり、横軸は回折角2θ(°)である。
図2図2は、化合物1の水和物結晶(Form C)の熱重量・示差熱分析の結果を示す。横軸は温度(℃)および測定時間(分)であり、右縦軸は熱重量分析におけるサンプルの重量変化(mg)である。左縦軸は示差熱分析において観測された熱流(mW)を表す。
図3図3は、化合物1の水和物結晶(Form C)の単結晶X線構造解析による結晶構造を示す。
図4図4は、化合物1の水和物結晶(Form C)の動的水蒸気吸着測定の結果を示す。縦軸は重量変化(%)であり、横軸は相対湿度(%)である。図4において、「Cycle1 Sorp」(黒ダイヤモンド印)はサイクル1での吸着を示し、「Cycle1 Desorp」(黒四角印)はサイクル1での脱離を示し、「Cycle2 Sorp」(黒三角印)はサイクル2での吸着を示し、「Cycle2 Desorp」(黒四角印)はサイクル2での脱離を示す。
図5図5は、本発明に係る製剤(製剤C、製剤F)および比較例(製剤AJ)の空腹時人工腸液(FaSSIF)への分散度の時間的変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の組成物は、下記式(1):
で表される化合物(「(5S,8S,11S,15S,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8-((S)-sec-ブチル)-18-シクロペンチル-29-(3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-36-エチル-11-イソブチル-N,N,5,6,12,16,19,33-オクタメチル-35-(4-メチルベンジル)-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37-ウンデカオキソテトラトリアコンタヒドロ-2H,4H-スピロ[アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-21,1'-シクロペンタン]-15-カルボキサミド」、以下「化合物1」ということがある。)、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物と、液体添加剤とを含有する。
【0024】
さらに、本発明に係る組成物は、任意で油性成分を含有し、好ましくは油性成分を含有する。
【0025】
化合物(有効成分)
本発明で用い得る化合物は、前記式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物である。化合物1の塩は、好ましくはその化学的もしくは薬学的に許容される塩であることができる。また本発明で用い得る化合物1またはその塩は、それらの溶媒和物、好ましくはその化学的もしくは薬学的に許容される溶媒和物であることができる。本発明で用いられる化合物は、組成物中においては、好ましくは専らフリー体の態様であり得るが、組成物の態様によっては、塩または溶媒和物の態様を含む場合がある。
【0026】
本発明において、化合物1の塩には、例えば、塩酸塩;臭化水素酸塩;ヨウ化水素酸塩;リン酸塩;ホスホン酸塩;硫酸塩;メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などのスルホン酸塩;酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、サリチル酸塩などのカルボン酸塩;または、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩などのアンモニウム塩などが含まれる。これらの塩は、たとえば、当該化合物1と、医薬品の製造に使用可能である酸または塩基とを接触させることにより製造される。
【0027】
本発明において、溶媒和物とは、化合物が溶媒とともに、一つの分子集団を形成したものをさし、医薬の投与に付随して摂取が許容される溶媒により形成された溶媒和物であれば特に限定されない。その例としては、水和物、アルコール和物(エタノール和物、メタノール和物、1-プロパノール和物、2-プロノール和物など)、ジメチルスルホキシドなどの単独の溶媒との溶媒和物だけでなく、化合物1分子に対して複数個の溶媒と溶媒和物を形成したもの、または化合物1分子に対して複数種類の溶媒と溶媒和物を形成したものなどが挙げられる。溶媒が水であれば水和物と言う。本発明の化合物の溶媒和物としては、水和物が好ましく、そのような水和物として具体的には1~10水和物、好ましくは1~5水和物、さらに好ましくは1~3水和物が挙げられる。本発明で使用される化合物1の水和物は、温度や湿度などの周囲環境によって化合物1に結合する水分子が脱着することにより、水分子の数が変化し得る。
【0028】
本発明において使用し得る、化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物は、結晶、非晶質またはその混合物の形態で提供され得、好ましくは、化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物は、結晶形態で提供され得る。本発明において使用し得る、化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の結晶としては、好ましくは化合物1の水和物の結晶(Form Cともよぶ)が挙げられる。
【0029】
化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の結晶は、当該技術分野で公知の技術、例えば粉末X線回折(XRPD)、水分測定法(例えばカールフィッシャー法)、走査型電子顕微鏡(SEM)分析、固体NMR、又は示差走査熱量測定(DSC)のような熱技術、又はいずれかその他の標準的定量測定法によって特徴付けできる。
【0030】
粉末X線回折における回折角2θは、好ましくはCuKα放射線を用いて測定した回折ピークである。
【0031】
例えば、本発明において使用し得る、化合物1の水和物の結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、下記のうちの少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する。
4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、17.813°(±0.2°)
【0032】
回折角2θの表記において、列記された回折角2θの最後に「(±0.2°)」と記載されている場合は、列記された全ての回折角2θにおいて、記載された各値に対して±0.2°の範囲が許容されることを意味する。
【0033】
本発明で用いる化合物1には、化合物1の全ての同位体を含む。化合物1の同位体は、少なくとも1個の原子が、原子番号(陽子数)が同じで、質量数(陽子と中性子の数の和)が異なる原子により、天然の存在比とは異なる存在比で置換されたものである。化合物1に含まれる同位体の例としては、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、フッ素原子があり、それぞれ、H、H、13C、14C、15N、17O、18O、18F等が含まれる。特に、Hや14Cのような、放射能を発して崩壊する放射性同位体は、医薬品あるいは化合物の体内組織分布試験等の際、有用である。安定同位体は、崩壊を起こさず、時間の経過により存在量がほとんど変わらず、放射能もないため、安全に使用することができる。化合物1の同位体は、合成で用いている試薬を、対応する同位体を含む試薬に置き換えることにより、常法に従って変換することができる。化合物1の塩の形成に用いられる酸、または塩基、並びに化合物1の溶媒和物の形成に用いられる溶媒も全ての同位体を含みうる。
【0034】
液体添加剤
本発明に係る組成物に用い得る「液体添加剤」は、医薬的に許容されるものであり、本発明で用いる化合物を溶解させることのできる添加剤である。本発明においては、「液体添加剤」とは、添加剤が組成物中において溶解した状態にあることを意味し、組成物の製造の原料として提供される段階において溶解していないものは、他の成分との混合や加熱等により製造過程で溶解させて、本発明に係る組成物の一成分とし得る。液体添加剤としては、室温において液体である添加剤を好ましく使用することができる。
本明細書において、「室温」は、本技術分野における通常の意味で用いられ特に限定されないが、特段の記載がない限り、例えば、好ましくは1~30℃、より好ましくは15~28℃程度である。
【0035】
本発明で用いることのできる液体添加剤としては、好ましくは界面活性剤が挙げられ、界面活性剤としては、好ましくは疎水性界面活性剤と親水性界面活性剤が挙げられる。本発明においては、疎水性界面活性剤と親水性界面活性剤とを組み合わせて用いることが望ましい。
【0036】
本発明で用い得る疎水性界面活性剤および親水性界面活性剤においては、好ましくは、疎水性界面活性剤のHLB値(Hydrophilic-Lipophilic Balance値)は、好ましくは10未満であり、より好ましくは0以上10未満であり、親水性界面活性剤のHLB値は、好ましくは10以上であり、より好ましくは10以上30以下、さらに好ましくは10以上20以下であるものを用いることが望ましい。HLB値は、界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値であり、当業者において公知であり、例えば、グリフィン法、アトラス法、デイビス法などで知られる方法に基づく値を採用することができる。
【0037】
疎水性界面活性剤としては、好ましくは、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、および疎水性ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。疎水性界面活性剤としては、より好ましくはプロピレングリコール脂肪酸エステル、またはソルビタン脂肪酸エステルを用いることができ、さらに好ましくはプロピレングリコール脂肪酸エステルを用いることができる。
【0038】
プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、好ましくは、モノカプロン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸プロピレングリコール、モノカプリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノミリスチン酸プロピレングリコール、モノパルミチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、およびモノオレイン酸プロピレングリコールが挙げられる。これらのうち、より好ましくはモノカプリル酸プロピレングリコールを用いることができる。
【0039】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、好ましくは、モノカプロン酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、およびモノリノール酸グリセリルなどが挙げられる。
【0040】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、好ましくは、モノオレイン酸ジグリセリルが挙げられる。
【0041】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、好ましくは、モノカプリル酸ソルビタン、モノカプリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノミリスチン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、およびトリオレイン酸ソルビタンなどが挙げられる。
【0042】
本明細書において、疎水性ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とは、疎水性のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、例えばHLB値が好ましくは10未満、より好ましくは0以上10未満のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。疎水性ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、好ましくは、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10などが挙げられる。
【0043】
親水性界面活性剤としては、好ましくは、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、親水性ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリドなどが挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。親水性界面活性剤としては、より好ましくはポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド、またはこれらの組合せを用いることができ、さらに好ましくはポリオキシエチレンヒマシ油を用いることができる。
【0044】
ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、好ましくは、ポリオキシエチレンヒドロキシステアレート、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、およびステアリン酸ポリオキシル40などが挙げられる。
【0045】
ポリオキシエチレンヒマシ油としては、このましくはポリオキシル30ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40ヒマシ油などが挙げられ、より好ましくはポリオキシル35ヒマシ油が挙げられる。
【0046】
本明細書において、親水性ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とは、親水性のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、例えばHLB値が好ましくは10以上、より好ましくは10以上30以下、さらに好ましくは10以上20以下のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である。親水性ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、好ましくは、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60などが挙げられる。
【0047】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、好ましくは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、およびポリソルベート80などが挙げられる。
【0048】
親水性界面活性剤としては、さらに好ましくはポリオキシル35ヒマシ油、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド、ポリソルベート80、またはこれらの組合せを望ましく用いることができる。
【0049】
界面活性剤は、疎水性界面活性剤として、好ましくはモノカプリル酸プロピレングリコールを用い、親水性界面活性剤として、好ましくはポリオキシル35ヒマシ油、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド、ポリソルベート80、またはこれらの組合せを用いることができる。
【0050】
界面活性剤は、好ましくは、疎水性界面活性剤としてプロピレングリコール脂肪酸エステルを用い、親水性界面活性剤として少なくともポリオキシエチレンヒマシ油を含有させることが望ましく、特に好ましくは、界面活性剤は、疎水性界面活性剤としてモノカプリル酸プロピレングリコールを用い、親水性界面活性剤として少なくともポリオキシル35ヒマシ油を含有させることが望ましい。
【0051】
油性成分
本発明に係る組成物においては、油性成分を含有させることができる。油性成分としては、好ましくは、脂肪酸、アシルグリセロール、植物油およびこれらの組合せが挙げられる。油性成分としては、さらに好ましくは脂肪酸またはアシルグリセロールを用いることができ、より好ましくは脂肪酸を用いることができる。
【0052】
脂肪酸としては、好ましくは、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸などが挙げられる。これらのうち、より好ましくはオレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸が挙げられ、さらに好ましくはオレイン酸が挙げられる。
【0053】
アシルグリセロールとしては、好ましくは、トリアセチン、トリブチリン、トリカプロイン、トリカプリリン、トリカプリン、トリパルミチン、トリパルミトレイン、トリステアリン酸グリセリン、トリオレイン、トリリノレイン、トリリノレニン、および中鎖脂肪酸トリグリセリドなどが挙げられる。これらのうち、より好ましくはトリアセチンが挙げられる。
【0054】
植物油としては、オリーブ油、アーモンド油、ヤシ油、カカオ脂、マカデミアナッツ油、アボカド油、サフラワー油、ダイズ油、アマニ油、ナタネ油、ヒマシ油、コーン油、およびパーム油などが挙げられる。
【0055】
このような油性成分としては、好ましくはオレイン酸、トリアセチン、またはこれらの組合せを用いることができ、さらに好ましくはオレイン酸を用いることが望ましい。
【0056】
本発明の組成物においては、界面活性剤としては、好ましくは、疎水性界面活性剤としてプロピレングリコール脂肪酸エステルを用い、親水性界面活性剤として少なくともポリオキシエチレンヒマシ油を含有させ、油性成分として脂肪酸を用いることが望ましく、特に好ましくは、界面活性剤は、疎水性界面活性剤としてモノカプリル酸プロピレングリコールを用い、親水性界面活性剤として少なくともポリオキシル35ヒマシ油を含有させ、油性成分としてオレイン酸を用いることが望ましい。
【0057】
本発明に係る組成物は、さらに抗酸化剤を含むことができる。抗酸化剤としては、好ましくは、dl-α-トコフェロール、ブチレート化ヒドロキシトルエン、ブチレート化ヒドロキシアニソール、プロピルガレート、没食子酸プロピル、医薬として許容されうるキノン、アスタキサンチン、およびD-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩など、ならびにこれらの組合せが挙げられる。抗酸化剤としては、より好ましくは、dl-α-トコフェロールが挙げられる。
【0058】
本発明に係る組成物は、さらに可溶化剤を含むことができる。可溶化剤としては、好ましくは、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびこれらの組合せなどが挙げられる。可溶化剤としては、より好ましくはエタノールまたはプロピレングリコールであり、さらに好ましくはプロピレングリコールである。
【0059】
本発明に係る組成物においては、化合物1、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の含有量は、液体添加剤および任意に用いる油性成分中に溶解し、一定の有効性を発揮し得る濃度であればよく、その含有率は特に限定されないが、化合物1、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の組成物全体に対する含有率は、上限値は、好ましくは、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、または2重量%以下、より好ましくは10重量%以下、8重量%以下、7重量%以下とすることができる。含有率の下限値は、特に限定されないが、好ましくは、ゼロ%を超える量、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、または1重量%以上とすることができ、より好ましくは、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、または0.5重量%以上とすることができる。さらに含有率は、上記下限値および上限値の任意の組合せの範囲とすることができる。例えば、含有率の範囲は、好ましくは、0.1重量%以上10重量%以下、0.2重量%以上10重量%以下、0.3重量%以上10重量%以下、0.4重量%以上10重量%以下、0.5重量%以上10重量%以下などとすることができる。
【0060】
本発明に係る組成物においては、液体添加剤、好ましくは界面活性剤が、化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物が溶解し得るように含有されればよく、その含有率は特に限定されないが、液体添加剤の組成物全体に対する含有率は、好ましくは50重量%以上97重量%以下、より好ましくは55重量%以上96重量%以下、さらに好ましくは70重量%以上90重量%以下とすることができる。
【0061】
本発明に係る組成物においては、疎水性界面活性剤の組成物全体に対する含有率は、好ましくは20重量%以上70重量%以下、より好ましくは25重量%以上65重量%以下、さらに好ましくは30重量%以上55重量%以下とすることができる。
【0062】
本発明に係る組成物においては、親水性界面活性剤の組成物全体に対する含有率は、好ましくは20重量%以上40重量%以下、より好ましくは25重量%以上35重量%以下、さらに好ましくは28重量%以上33重量%以下とすることができる。
【0063】
本発明に係る組成物においては、疎水性界面活性剤の親水性界面活性剤に対する重量比(疎水性界面活性剤/親水性界面活性剤)は、好ましくは0.5~3.0、より好ましくは1.0~2.5、さらに好ましくは1.5~2.0である。
【0064】
本発明に係る組成物においては、油性成分の組成物全体に対する含有率は、好ましくは0重量%以上50重量%以下、より好ましくは1重量%以上40重量%以下、さらに好ましくは10重量%以上20重量%以下である。
【0065】
本発明に係る組成物において抗酸化剤を含有させる場合、抗酸化剤の組成物全体に対する含有率は、製剤の医薬特性に悪影響を与えない範囲で特に限定されないが、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上5重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以上5重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以上2重量%以下程度である。
【0066】
本発明に係る組成物において可溶化剤を含有させる場合、可溶化剤の組成物全体に対する含有率は、製剤の医薬特性に悪影響を与えない範囲で特に限定されないが、好ましくは1重量%以上20重量%以下、より好ましくは2重量%以上15重量%以下程度である。
【0067】
本発明に係る組成物においては、式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物に対する、液体添加剤の重量比(液体添加剤/化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物)は、化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物が溶解し得ればよく、特に限定されないが、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。当該重量比の上限値は特に限定されないが、例えば、好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下とすることができる。当該重量比は、下限値および上限値の任意の組合せの範囲とすることができ、例えば重量比は、好ましくは5~2000、より好ましくは10~2000、さらに好ましくは10~1000とすることができる。液体添加剤は好ましくは界面活性剤である。
【0068】
本発明に係る組成物においては、式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物に対する、液体添加剤および前記油性成分の合計の重量比(液体添加剤および前記油性成分の合計/化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物)は、化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物が溶解し得えればよく、特に限定されないが、好ましくは10以上である。当該重量比の上限値は特に限定されないが、例えば、好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下とすることができる。当該重量比は、下限値および上限値の任意の組合せの範囲とすることができ、例えば重量比は、好ましくは10~2000、より好ましくは10~2000とすることができる。液体添加剤は好ましくは界面活性剤である。
【0069】
本発明の組成物の形態は、液体、ゲル状、あるいは半固体であり得、好ましくは液体である。
【0070】
本発明に係る組成物は、組成物を水等の液体中に分散させたときに形成される液滴の平均粒子径が小さく、粒子径分布の幅が狭いという特徴を有する。
【0071】
例えば、本発明の組成物および水を混合した混合溶液に関し、一定の希釈倍率(例えば、組成物が混合溶液全体に対して0.01~1体積%)下、組成物の撹拌や混合などの取扱いに適した温度、および/または組成物中に含まれる物質の安定性に影響のない温度、たとえば室温付近(約25℃)で混合溶液を撹拌し、本発明の組成物を溶液中に分散させたときに形成される液滴の平均粒子径が、好ましくは200nm未満、より好ましくは10nm以上200nm未満、さらに好ましく50nm以上200nm未満である。また、本発明の組成物は、粒子径分布を表す指標である多分散性指数(polydispersity index、PDI)が、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下である。組成物中の化合物の平均粒子径および多分散性指数は、動的光散乱法(DLS:Dynamic Light Scattering)等の公知の方法を用いて求めることができる。
【0072】
また、例えば、体内の模擬環境(例えば、腸溶性製剤の崩壊試験に用いられる、日本薬局方溶出試験第1液, pH1.2、体内模擬温度(例えば36~37℃))の溶液を使用した場合の混合溶液に関しても、一定の希釈倍率下(例えば、組成物が混合溶液全体に対して0.01~1体積%)、で撹拌して本発明の組成物を溶液に分散させたときに形成される液滴の粒子径分布は、同様に、液滴の平均粒子径が小さく、粒子径分布の幅が狭いという特徴を奏し得る。すなわち、消化管内でも平均粒子径が小さく、粒子径分布の幅が狭い液滴を形成しうる。
【0073】
このような、本発明の組成物は、液体中において優れた分散性を有し得るとともに、優れた体内吸収性を有し得る。
【0074】
<医薬製剤>
本発明に係る医薬製剤は、本発明の化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物と、液体添加剤、および任意で油性成分を含有する組成物を含む、医薬製剤である。
【0075】
本発明に係る医薬製剤は、本発明の化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物と、液体添加剤、および任意で油性成分、さらに任意で抗酸化剤、可溶化剤などに加えて、医薬的に許容し得る担体を導入することで製造することができる。製剤化には通常用いられる賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、pH調製剤、防腐剤などを使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製剤化することができる。
【0076】
本発明にかかる製剤の投与は、経口投与、または非経口投与のどちらでもよい。好ましくは経口投与であるが、投与方法は経口投与に拘らない。
【0077】
例えば、経口製剤を製造するには、本発明の化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物、液体添加剤、任意の油性成分などに、さらに必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤などを加えた後、常法により液剤、カプセル剤等とする。本発明の組成物は、好ましくは液体であることから、液体製剤においては、注射剤またはカプセル剤とすることができる。
【0078】
本発明の組成物をカプセル剤とする場合、カプセルは、カプセル製剤において通常用いられているものを用いることができる。
【0079】
カプセルの種類は特に限定されず、本技術分野において通常使用されるものを用いることができる。例えば、カプセルとしては、硬カプセル(ハードカプセル)、軟カプセル(ソフトカプセル)などが挙げられる。ハードカプセルは、通常、キャップとボディとからなり、製剤を充てんしたボディにキャップを被せて製造することができる。ハードカプセルの原料としては、例えば、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、あるいはこれらの混合物などを含むものを好ましく用いることができ、その大きさは、9号、5号、4号、3号、2号、1号、0号、00号、000号などの規格により規定し得る。ソフトカプセルは、例えば製剤をゼラチン等の基剤で包み込んで製造することができる。ソフトカプセルの原料としては、例えば、ゼラチン、でん粉、カラギーナン、寒天、グリセリン、ソルビトール、あるいはこれらの混合物などを含むものを好ましく用いることができる。
【0080】
賦形剤としては、例えば乳糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、二酸化ケイ素などが挙げられる。
【0081】
結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックポリマー、メグルミンなどが挙げられる。
【0082】
崩壊剤としては、例えば澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース・カルシウム等が挙げられる。
【0083】
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が挙げられる。
【0084】
着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末等が用いられる。
【0085】
シロップ剤や注射用製剤等の液剤を製造する際には、本発明で用いる化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物にpH調整剤、溶解剤、等張化剤などと、必要に応じて溶解補助剤、安定化剤などを加えて、常法により製剤化する。
【0086】
例えば、非経口投与としては、具体的には、注射剤型、経鼻投与剤型、経肺投与剤型、経皮投与型などが挙げられる。注射剤型の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などにより全身または局部的に投与することができる。経鼻投与剤型の例としては、例えば製剤中の有効成分を鼻腔粘膜からの吸収させることまたは鼻腔を通じて製剤を投与することなどにより、全身または局部的に投与することができる。経肺投与剤型の例としては、例えば気管を通じて製剤を肺に投与することなどにより、全身または局部的に投与することができる。経皮投与型の例としては、例えば皮膚に製剤を貼付することなどにより、全身または局部的に投与することができる。
【0087】
また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。本発明で用いる化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物を含有する医薬製剤の投与量としては、例えば、一回につき体重1kgあたり0.001mgから100mgの範囲で選ぶことが可能である。あるいは、例えば、患者あたり0.1から1000mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができるが、これらの数値に必ずしも制限されるものではない。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0088】
<組成物および医薬製剤の製造方法>
本発明に係る組成物の製造方法は、
(1)下記式(1):
で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物、液体添加剤、および任意で油性成分を提供する工程(工程1);
(2)該式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物、液体添加剤、および任意で油性成分を混合する工程(工程2);および、
(3)該式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物が溶解した組成物を得る工程(工程3)を含む。
【0089】
本発明の組成物の製造方法において、工程(1)で供給される化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物は、好ましくは、式(1)で表される化合物の水和物であり、より好ましくは式(1)で表される化合物の1以上の水分子が含まれることが望ましい。式(1)で表される化合物の水和物中に含まれる水分子の数は、温度や湿度などの周囲の環境により脱着しうる。
【0090】
さらに、本発明の組成物の製造方法において、工程(1)で供給される化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物は、好ましくは化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物1の結晶であり、より好ましくは式(1)で表される化合物の水和物の結晶である。式(1)で表される化合物の水和物の結晶中の水分子は、1以上の水分子が含まれることが望ましいが、水分子の数は、温度や湿度などの周囲の環境により脱着しうることは前述のとおりである。
【0091】
式(1)で表される化合物の水和物の結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、14.752°、14.968°、15.895°、16.190°、16.643°、17.813°、および19.424°(±0.2°)のうちの、少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折パターンを有することができる。
【0092】
式(1)で表される化合物の水和物の結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のうちの、少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折パターンを有することができる。
【0093】
式(1)で表される化合物の水和物の結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、7.921°、9.956°、10.435°11.729°、12.704°、15.895°、および16.643°(±0.2°)のうちの、少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折パターンを有することができる。
【0094】
式(1)で表される化合物の水和物の結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、7.921°、9.956°、10.435°11.729°、12.704°、15.895°、および16.643°(±0.2°)のうちの、少なくとも2つのピークを含む粉末X線回折パターンを有することができる。
【0095】
式(1)で表される化合物の水和物の結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、7.921°、9.956°、10.435°11.729°、12.704°、15.895°、および16.643°(±0.2°)のうちの、少なくとも3つのピークを含む粉末X線回折パターンを有することができる。
【0096】
式(1)で表される化合物の水和物の結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、7.921°、9.956°、10.435°11.729°、12.704°、15.895°、および16.643°(±0.2°)のうちの、少なくとも4つのピークを含む粉末X線回折パターンを有することができる。
【0097】
式(1)で表される化合物の水和物の結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、7.921°、9.956°、10.435°11.729°、12.704°、15.895°、および16.643°(±0.2°)のうちの、少なくとも5つのピークを含む粉末X線回折パターンを有することができる。
【0098】
式(1)で表される化合物の水和物の結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、7.921°、9.956°、10.435°11.729°、12.704°、15.895°、および16.643°(±0.2°)のうちの、少なくとも6つのピークを含む粉末X線回折パターンを有することができる。
【0099】
式(1)で表される化合物の水和物の結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、7.921°、9.956°、10.435°11.729°、12.704°、15.895°、および16.643°(±0.2°)のピークを含む粉末X線回折パターンを有することが好ましい。
【0100】
式(1)で表される化合物の水和物の結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)のピークを含む粉末X線回折パターンを有することがより好ましい。
【0101】
式(1)で表される化合物の水和物の結晶は、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、14.752°、14.968°、15.895°、16.190°、16.643°、17.813°、および19.424°(±0.2°)のピークを含む粉末X線回折パターンを有することがさらに好ましい。
【0102】
本発明の、粉末X線回折による分析は、例えば、日本薬局方(第十五改正)に記載されている「粉末X線回折測定法」などの常法に従って行うことができる。また、日本薬局方によれば、同一結晶形では通例、回折角2θは±0.2°の範囲内で一致すると説明されている。したがって、粉末X線回折におけるピークの回折角が完全に一致する結晶だけでなく、ピークの回折角が±0.2°程度の誤差で一致する結晶も本発明に含まれる。
【0103】
化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物、液体添加剤、および油性成分などの各成分の使用割合は、上述のとおりである。
【0104】
各成分を混合する工程においては、式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物、液体添加剤、および任意で油性成分の各成分、さらに、必要に応じ医薬品の賦形剤等として通常用いられる成分を、公知の攪拌混合装置等に投入して混合する。
【0105】
各成分の混合温度および混合時間は成分に悪影響を与えない範囲であれば特に限定されない。たとえば、混合温度は、好ましくは0~50℃、より好ましくは10~30℃であり、混合時間は、好ましくは5分~60分程度である。
【0106】
本発明に係る医薬製剤の製造方法は、本発明の組成物を提供する工程、および該組成物を製剤化して、医薬製剤を提供する工程を含むことができる。
【0107】
本発明に係る医薬製剤の製造方法は、本発明の組成物を提供する工程、および該組成物をカプセルに充填して、カプセル製剤を製造する工程を含むことができる。
【0108】
本発明に係る医薬製剤の製造方法は、前記組成物の製造方法より得られた組成物をカプセルに充填して、カプセル製剤を提供する工程を含むことができる。すなわち、前記組成物の製造方法における工程(1)~(3)により得られた組成物をカプセルに充填して、カプセル製剤を提供する工程を含むことができる。
【0109】
本発明において、「および/または」との用語の意義は、「および」と「または」が適宜組み合わされたあらゆる組合せを含む。具体的には、例えば、「A、B、および/またはC」には、以下の7通りのバリエーションが含まれる;(i)A、(ii)B、(iii)C、(iv)AおよびB、(v)AおよびC、(vi)BおよびC、(vii)A、B、およびC。
【0110】
本明細書において、「約」という用語は、数値と組み合わせて使用される場合、その数値の+10%および-10%の値の範囲を意味する。
【0111】
本明細書において、範囲を示す「~」とはその両端の値を含み、例えば、「A~B」は、A以上であり、かつB以下である範囲を意味する。
【0112】
本明細書における分子量の単位は「g/mol」である。本明細書においては分子量の単位を省略することがある。
【0113】
本明細書および特許請求の範囲の両方における冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」の使用は、本明細書において特に示されるかまたは文脈によって明確に否定されない限り、単数形および複数形の両方を包含するように解釈されるものとする。
【0114】
本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例
【0115】
本発明の内容を以下の実施例及び参考例でさらに説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。全ての出発物質および試薬は商業的供給業者から入手、もしくは公知の方法を用いて合成した。LC/MSの分析条件は表1に記載した。
【0116】
【表1】
【0117】
本明細書中で他に示される場合を除き、本明細書中の英語表記および略語の意味は下記のとおりである。
Triacetin:トリアセチン
Oleic acid:オレイン酸
Propylene glycol(PG) monocaprylate:モノカプリル酸プロピレングリコール
Glycerol monooleate:モノオレイン酸グリセロール
Sorbitan trioleate:トリオレイン酸ソルビタン
Polyoxyl 35 castor oil:ポリオキシル35ヒマシ油
Polyoxyethylene (15) hydroxystearate:ポリオキシエチレンヒドロキシステアレート
PEG-8 Caprylic/Capric Glycerides:カプリロカプロイルポリオキシル-8 グリセリド
Polysorbate 80:ポリソルベート80
Propylene glycol(PG):プロピレングリコール
EtOH:エタノール
PEG400:ポリエチレングリコール400
D-α-Tocopherol polyethylene glycol 1000 succinate:D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸塩
dl-α-tocopherol:dl-α-トコフェロール
【0118】
Boc:tert-ブトキシカルボニル
t-Bu:tert-ブチル
CSA:(+)-10-カンファースルホン酸
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン
DCM:ジクロロメタン
DCE:1,2-ジクロロエタン
DMA:ジメチルアセトアミド
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DIC:N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMAP:N,N-ジメチル-4-アミノピリジン
DMSO:ジメチルスルホキシド
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
Fmoc:9-フルオレニルメチルオキシカルボニル
Fmoc-OSu:炭酸N-スクシンイミジル9-フルオレニルメチル
HOAt:1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール
HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
HOOBt:3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン
MTBE:メチルtert-ブチルエーテル NMP:N-メチル-2-ピロリドン
oxyma:シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル
TES:トリエチルシラン
TFA:トリフルオロ酢酸
TFE:2,2,2-トリフルオロエタノール
THF:テトラヒドロフラン
TfOH:トリフルオロメタンスルホン酸
TsOH:p-トルエンスルホン酸
WSCI・HCl:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
【0119】
本発明の実施に用いた液体添加剤、界面活性剤、油性成分、可溶化剤、抗酸化剤、または溶媒などの試薬類は、特に記載したもの以外、商業的供給業者品を精製せずに用いた。
【0120】
添加剤の混合、式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物と添加剤や製剤との混合は、通常の実験機器を用い、混合物が均一になるように振盪、または撹拌などの当業者に周知の方法で行った。
【0121】
式(1)で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物の溶解度の測定は、該化合物に添加剤、または製剤を加えた後に振盪、または撹拌などの操作を行い、目視で溶解を確認し、加えた液体量から算出した。高速液体クロマトグラフィーなどの装置で測定することも可能である。
【0122】
試験法1:動的散乱(DLS)による粒子径分布測定
ZETASIZER Nano-ZS (Malvern)を用いて動的散乱(DLS)による粒子径分布を求める。サンプルをディスポーザブルセル(少量量キュベット)に入れ、ZETASIZER Nano-ZS(Malvern)にセットして動的散乱(DLS)による粒子径分布求める。粒子径分布を表す指標として、平均粒子径(Z-averageサイズ)と多分散性指数(polydispersity index, PDI)を用いる。Z-averageはキュムラント法を用いた散乱強度基準の平均粒子径である。また、PDIは粒子径分布の幅を表す指標であり、0から1の範囲で示される。PDI=0は粒子径の分布が無い懸濁液を表し、0.1以下のPDIを示す分散体は単分散であり、PDIが0.1から0.5の間の値を示す分散体は狭い分布を有すると考えられる。一方、PDIが0.5を超える分散体は多分散であると考えられる。
【0123】
試験法2:分散性評価
製剤の空腹時人工腸液(FaSSIF)への分散性能を推定するためにμDISS Profiler(Pion Inc.)を用いて分散プロファイルを解析する。各製剤100μLを37°Cに保温された10mLのFaSSIF表面に加え、200rpmの速度で攪拌した。5、10、15、20、25、30および60分の時点でガイドプラスチックチューブを通して溶液50μLを容器の中央から分取し、UPLCによって対象化合物の濃度を決定する。次の式により、分散度(%)を求める。
分散度(%)=(分取した溶液中の化合物の濃度/製剤全量が均一に分散したときの化合物の濃度)X100
【0124】
試験法3:薬物動態パラメータの算出
採取した血液は遠心分離により血漿を分離し、アセトニトリルによる除タンパク処理後、LC-MS/MS装置を用いて血漿中濃度を測定する。得られた血漿中濃度推移より、薬物動態解析ソフトPhoenix WinNonlin 8.2(Certara L. P.)を用いてノンコンパートメント解析により血漿中薬物濃度対時間曲線下面積(AUC)および最高血漿中濃度(Cmax)を算出する。
【0125】
調製例1:
化合物1の製造
下記の構造を有する化合物1(「(5S,8S,11S,15S,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8-((S)-sec-ブチル)-18-シクロペンチル-29-(3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-36-エチル-11-イソブチル-N,N,5,6,12,16,19,33-オクタメチル-35-(4-メチルベンジル)-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37-ウンデカオキソテトラトリアコンタヒドロ-2H,4H-スピロ[アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-21,1'-シクロペンタン]-15-カルボキサミド」)は下記のスキーム1に従って合成した。
【0126】
化合物1
【0127】
スキーム1
【0128】
化合物aa033-b((2S)-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]-4-オキソ-4-プロプ-2-エノキシブタン酸)の合成
【0129】
【0130】
Fmoc-Asp(OAl)-OH((2S)-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-4-オキソ-4-プロプ-2-エノキシブタン酸、CAS番号146982-24-3)(200g,506mmol),p-トルエンスルホン酸(5.7g,0.05当量)、パラホルムアルデヒド(45.6g,3当量)をトルエンに混合し、110℃にて16時間撹拌した。反応液を減圧下溶媒留去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル、0/100~30/70)で精製し、化合物aa033-a(9H-フルオレン-9-イルメチル (4S)-5-オキソ-4-(2-オキソ-2-プロプ-2-エノキシエチル)-1,3-オキサゾリジン-3-カルボキシラート)(175g,85%)を得た。同様に合成した別のバッチを混合し、次の反応に用いた。
LCMS(ESI)m/z=408(M+H)
保持時間:1.407分(分析条件SMDmethod_20)
【0131】
化合物aa033-a(100g,245mmol),臭化亜鉛(ZnBr)(110g,496mmol),トリエチルシラン(TES)(56g,481.6mmol)のジクロロメタン(DCM)(1L)混合溶液を、窒素雰囲気下、室温にて48時間撹拌した。同じスケールの4バッチの反応液を混合し、減圧下溶媒留去した。残渣をMTBEに溶解し、0.5Mリン酸バッファー(pH=約7.5)で10回抽出した。水層を混合し5M塩酸水でpHを2に調整し、酢酸イソプロピル(IPAC)で2回抽出した。有機層を混合し無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒留去した。IPACを除くため、得られた残渣にMTBEを添加し減圧下溶媒留去することを6回繰り返し、化合物aa033-b((2S)-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]-4-オキソ-4-プロプ-2-エノキシブタン酸)を得た。(270g,54%)
LCMS(ESI)m/z=410(M+H)
保持時間:1.956分(分析条件SMDmethod_05)
【0132】
化合物aa011-aの合成
窒素雰囲気下、氷冷下にてWSCI・HCl(27.4g,143mmol)のDMF(217mL)溶液にHOBt(17.72g,131mmol)を加え、更に化合物aa033b(48.8g,119mmol)をDCM(90mL)とDMF(90mL)の混合溶液として加え、0℃で30分攪拌した。そこにジメチルアミンのTHF溶液(2mol/l,65.6mL,131mmol)を滴下にて加え、0℃で30分攪拌した。反応液を酢酸エチル(488mL)で希釈し、有機相を塩酸(1mol/L,390mL)で2回洗浄し、続いて水で洗浄し、更に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と水の混合溶液(1:1,488mL))で2回洗浄し、さらに、飽和食塩水と水の混合溶液(1:1、488mL)で1回洗浄後、得られた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒留去して化合物aa011-aを得た。(51.16g,収率98%)。
LCMS(ESI)m/z=437.0(M+H)
保持時間:1.262分(分析条件SMDFA05)
【0133】
化合物aa079、(2S)-2-シクロペンチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]酢酸(Fmoc-MeGly(cPent)-OH)の合成
【0134】
化合物aa079-a((2S)-2-シクロペンチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ]酢酸、Fmoc-Gly(cPent)-OH)(CAS番号:220497-61-0)(30.0g,82mmol)、パラホルムアルデヒド(7.39g,246mmol)およびCSA(0.954g,4.10mmol)のトルエン(160mL)混合液に、トリフルオロ酢酸(TFA)(9.0mL)を加えた後、60℃で4時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、固体をろ過により除去した。ろ液を減圧下濃縮し、酢酸エチル(220mL)で希釈後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で順に洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後に減圧濃縮し、化合物aa079-bを粗生成物として得た。これ以上の精製は実施せずに次の反応を行った。
LCMS(ESI)m/z=378(M+H)
保持時間:1.01分(分析条件SQDFA05)
【0135】
上記で得られた化合物aa079-bの全量を用いて、トリエチルシラン(TES)(65.5mL,410mmol)とaa079-bのジクロロエタン(DCE)(90mL)の混合液にトリフルオロ酢酸(TFA)(76mL,984mmol)を加えて60℃で16時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後に減圧濃縮し、得られた固体をn-ヘキサン/酢酸エチル(95/5)で洗浄し、減圧乾燥することで化合物2279((2S)-2-シクロペンチル-2-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]酢酸、Fmoc-MeGly(cPent)-OH)を得た(29.1g,2工程93%)。
LCMS(ESI)m/z=380(M+H)
保持時間:0.92分(分析条件SQDFA05)
【0136】
化合物1217-aの合成
化合物aa079(42.2g,111mmol)とOxyma(19.99g,141mmol)のDMF(391mL)溶液に、WSCI・HCl(31.5g,164mmol)を室温にて加え、30分攪拌して溶液Aを得た。
【0137】
窒素雰囲気下、化合物aa011-a(51.16g,117mmol)のDMF(391mL)溶液にDBU(17.49mL,117mmol)を室温で滴下にて加え、5分攪拌した。そこにピリジン塩酸塩(14.9g,129mmol)を加え、10分攪拌した。得られた反応液に溶液AとDIPEA(22.46mL,129mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温にて7時間攪拌した。反応液を酢酸エチル(422mL)で希釈し、塩酸(1mol/L,422mL)で2回洗浄した、得られた水相を酢酸エチル(422mL)で2回抽出した。すべての有機相を混合し、水(422mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と水の混合溶液(1:1,422mL)、飽和食塩水と水の混合溶液(1:1、422mL)で順に洗浄後、得られた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒留去した。得られた残渣にDCM(512mL)を加えて0.5時間攪拌した。そこに硫酸マグネシウム(30g)を加え、30分攪拌したのちに、濾過にて固形物を取り除いた。得られた溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、化合物1217-aを得た。(55.55g、収率87%)
LCMS(ESI)m/z=598.2(M+Na)
保持時間:1.320分(分析条件SMDAM05)
【0138】
化合物1217-bの合成
窒素雰囲気下、室温にて化合物1217-a(55.55g,96mmol)のDCM(193mL)溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.115g,0.965mmol)を加え、更にフェニルシラン(8.31mL、67.5mmol)を滴下にて加え、30分攪拌した。反応液をMTBE(556ml)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と水の混合溶液(1:1,556ml)で抽出した。得られた有機相を水(278ml)で抽出した。水相を混合し、DCM(556ml)を加えた。そこにリン酸(56.7g,579mmol)を滴下にて加えてpHを2~3に調整し、有機相を分離後、水相をDCM(556ml)にて抽出した。得られた有機相を混合し、飽和食塩水と水の混合溶液(1:1、556ml)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒留去して化合物1217-bを得た。(48.87g,収率95%)
LCMS(ESI)m/z=536(M+H)
保持時間:1.138分(分析条件SMDAM05)
【0139】
化合物1217-b-resinの合成
フィルター付きの反応容器に2-クロロトリチルクロライドレジン(SUNRESIN社から購入、1.36mmol/g,114g、155mmol)をセットし、DCM(1140mL)を加え、25℃で45分攪拌後、フィルターから溶媒を排出した。反応容器に化合物1217-b(48.87g,91mmol)とメタノール(29.6mL,730mmol)とDIPEA(76mL,438mmol)のDCM(798mL)溶液を加え、25℃で60分攪拌し、フィルターから溶液を排出した。続けて、反応容器にメタノール(111mL,2737mmol)とDIPEA(76mL,438mmol)のDCM(684mL)溶液を加え、25℃で90分攪拌し、フィルターから溶液を排出した。反応容器にDCM(570mL)を加えて5分攪拌し、フィルターから溶液を排出した。このレジンの洗浄操作を更に4回繰り返し、得られたレジンを減圧下乾燥して化合物1217-b-resinを得た(140.5g)。本実施例に記載のレジンの定量法により、担持量を0.482mmol/gと算出した。
【0140】
化合物1217-c-resinの合成
上記で得られたレジン(0.482mmol/g、60g、28.92mmol)をプラスチック製固相反応容器にセットした。室温にて、この固相反応容器にDCM(600mL)を加え、5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。この固相反応容器にDMF(420mL)を加え、5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に1回繰り返した。この固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、420mL)を添加しFmoc基の脱保護を行った。10分振盪後に溶液をフリットから排出した。この固相反応容器にDMF(420mL)を加え、5分振盪した後、溶液をフリットから排出した。この固相反応容器にトリエチルアミン塩酸塩(7.96g、57.8mmol)のDCM(420mL)溶液を加え、5分振盪した後、溶液をフリットから排出した。この固相反応容器にDCM(420mL)を加え、5分振盪した後、溶液をフリットから排出した。この固相反応容器にDMF(420mL)を加え、5分振盪した後、溶液をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に1回繰り返した。
【0141】
Fmoc-cLeu-OH(40.7g、116mmol)(CAS番号:117322-30-2)とOxyma(10.3g、72.3mmol)のDMF(180mL)溶液と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10%、216mL)を混合し、2分後、上記により得られた固相反応容器に加えた。この固相反応容器を50℃にて24時間振盪後、溶液をフリットから排出した。この固相反応容器にDMF(420mL)を加え、室温で5分振盪した後、溶液をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に4回繰り返した。この固相反応容器にDCM(420mL)を加え、室温で5分振盪した後、溶液をフリットから排出した。このDCMによるレジンの洗浄工程を更に5回繰り返した。得られたレジンを減圧下にて乾燥し、化合物1217-c-resin(62.5g)を得た。
【0142】
化合物aa134の合成
【0143】
化合物aa134、(2S)-4-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)ブタン酸、Fmoc-Hph(4-CF3-35-F2)-OHの合成
【0144】
化合物aa132-a、(1-O-ベンジル 5-O-(1,3-ジオキソイソインドル-2-イル) (2S)-2-[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]ペンタンジオエート)の合成
【0145】
(4S)-4-[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]-5-オキソ-5-フェニルメトキシペンタン酸(Boc-Glu-OBn、CAS番号30924-93-7)(200g,592.82mmol)、N-ヒドロキシフタルイミド(106g,649.78mmol,1.10当量)、DMAP(3.6g,29.47mmol,0.05当量)のTHF(2L)溶液に、窒素雰囲気下、0℃にてDIC(138mL,1.54当量)を滴下にて加えた。反応液を25℃で16時間撹拌し、固形物をろ過にて取り除き、ろ液を減圧下溶媒留去した。残渣をトルエンで希釈し、生じた固体をろ過にて取り除き、ろ液を減圧下溶媒留去した。残渣を再結晶(アセトン/ヘプタン)にて精製し、化合物aa132-a(1-O-ベンジル 5-O-(1,3-ジオキソイソインドル-2-イル) (2S)-2-[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]ペンタンジオエート)を得た。(230g,80%)
LCMS(ESI)m/z=505.2(M+Na)
保持時間:0.992分(分析条件SMDmethod_16)
【0146】
臭化ニッケル三水和物(NiBr・3HO)(13.5g,49.7mmol,0.3当量)および4,4'-ジ-tert-ブチル-2,2'-ビピリジル(dtbbpy,CAS番号72914-19-3)(13.3g,49.7mmol、0.3当量)をDMA(400mL)に加え、窒素雰囲気下、50℃で3時間撹拌しNi溶液を調製した。
【0147】
化合物aa132-a(1-O-ベンジル 5-O-(1,3-ジオキソイソインドル-2-イル) (2S)-2-[(2-メチルプロパン-2-イル)オキシカルボニルアミノ]ペンタンジオエート)(80g,166mmol)、亜鉛粉末(54.2g,829mmol,5当量)および4-ブロモ-1,3-ジフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン(CAS番号156243-64-0,86.6g,332mmol、2当量)のDMA(400mL)混合液を窒素雰囲気下、室温にて1時間撹拌し、先に調整したNi溶液を添加し、室温で16時間撹拌した。反応液にEDTA・2Na水溶液(800mL,10%)を加え、固体をろ過にて取り除いた。ろ液を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル)で精製し、化合物aa134-aを得た。(57.2g,69%)。
LCMS(ESI)m/z=496(M+Na)
保持時間:1.544分(分析条件SMDmethod_15)
【0148】
化合物aa134-a(57.2g,121mmol)のトルエン混合液(690mL)を0℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)(54.4g,362mmol,3当量)を滴下にて加えた。室温で1時間撹拌後、水(58mL)を加えた。この混合液を水で抽出し、合わせた水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒留去し、60gの残渣を得た。残渣にアセトニトリル/水(400/400mL)を加え、水酸化ナトリウム水溶液(48%)でpHを7に調整した。この溶液にFmoc-OSu(36.6g,108.6mmol,0.9当量)を加え、水酸化ナトリウム水溶液(48%)でpHを8.0に調整後、室温で16時間撹拌した。アセトニトリル/水(1/1)で洗いこみながら反応液をろ過して固体成分を除去し、ろ液をアセトニトリルで希釈し、6mol/L塩酸水で酸性に調整することで析出した固体をろ過にて集めることで、化合物aa134((2S)-4-[3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)ブタン酸、Fmoc-Hph(4-CF3-35-F2)-OH)を得た。(52g,83%)
【0149】
LCMS(ESI)m/z=528.45(M+Na)
保持時間:3.538分(分析条件SMDmethod_14)
1H-NMR(300MHz,DMSO-d6)δ12.69(s,1H),7.90(d,J=7.5Hz,2H),7.78-7.54(m,3H),7.48-7.20(m,6H),4.33(d,J=6.3Hz,2H),4.24(t,J=6.9Hz,1H),3.97-3.84(m,1H),2.79-2.65(m,2H),2.15-2.00(m,1H),2.00-1.83(m,1H)
【0150】
化合物aa113、(2S)-2-[エチル(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル)アミノ]-3-(4-メチルフェニル)プロパン酸(Fmoc-EtPhe(4-Me)-OH)の合成
【0151】
窒素雰囲気下、化合物aa113-a((2S)-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-3-(4-メチルフェニル)プロパン酸、Fmoc-Phe(4-Me)-OH)(5.62g,14.0mmol,CAS番号199006-54-7)をジクロロエタン(DCE)(17.5mL)に懸濁させ、パラアルデヒド(5.61mL,42.0mmol)、トリフルオロ酢酸(TFA)(9.65mL,126mmol)を加え、60度で6時間撹拌した。得られた化合物aa113-bを含む反応液をそのまま次の工程に用いた。
LCMS(ESI)m/z=428(M+H)
保持時間:1.03分(分析条件SQDFA05)
【0152】
得られた化合物aa113-bの反応液に、ジクロロエタン(DCE)(17.5mL)、トリフルオロ酢酸(TFA)(19.3mL,252mmol)、トリエチルシラン(TES)(20.1mL,126mmol)を加え、60度で17時間撹拌した。室温に冷却し、減圧濃縮した後、得られた残渣を酢酸エチル(40mL)に溶解させた。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)、飽和食塩水(40mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒留去した。得られた残渣をアセトニトリル(30mL)に溶解させ、ヘキサン(15mL)で2回洗浄し、減圧下溶媒留去した。得られた残渣を逆相カラムクロマトグラフィー(0.1%-ギ酸入りアセトニトリル/0.1%-ギ酸入り蒸留水)で精製して、化合物aa113((2S)-2-[エチル(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル)アミノ]-3-(4-メチルフェニル)プロパン酸、Fmoc-EtPhe(4-Me)-OH)を得た。(4.4g,2工程73%)
LCMS(ESI)m/z=430(M+H)
保持時間:0.95分(分析条件SQDFA05)
【0153】
以降のFmoc-Pro-OH(CAS番号:71989-31-6)、Fmoc-Hph(4-CF3-35-F2)-OH(化合物aa134)、Fmoc-MeGly-OH(CAS番号:77128-70-2)、Fmoc-EtPhe(4-Me)-OH(化合物aa113)、Fmoc-Aze(2)-OH(CAS番号:136552-06-2)、Fmoc-MeAla-OH(CAS番号:84000-07-7)およびFmoc-Ile-OH(CAS番号:71989-23-6)の伸長はIntavis社製ペプチド合成機(Multipep RSi)を用いて、Fmoc固相合成法により合成した。操作の詳細な手順については合成機に付属のマニュアルに従った。
【0154】
上記により得られた化合物1217-c-resin(固相反応容器1本に対して200mg)を30本の固相反応容器に加え、ペプチド合成機にセットした。この30本すべての固相反応容器にジクロロメタン(DCM)を加えて1時間静置することでレジンの膨潤を行った。その後、溶媒をフリットから排出した。
【0155】
Fmoc-Pro-OHの伸長
30本すべての固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、固相反応容器1本に対して1.4mL)を添加し、30℃に加温して10分後に溶液をフリットから排出した。この30本すべての固相反応容器にDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。続いて、Fmoc-Pro-OH(CAS番号71989-31-6)(0.6mol/L)とHOAt(0.375mol/L)のNMP溶液(固相反応容器1本に対して0.6mL)と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を合成機のmixing vialで混合した後に30本すべての固相反応容器に対して添加し、40℃にて4時間静置した。その後、溶液をフリットから排出した。30本すべての固相反応容器に対してDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に2回繰り返した。
【0156】
Fmoc-Hph(4-CF3-35-F2)-OH(化合物aa134)の伸長
上記で得られたレジンを含む30本すべての固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、固相反応容器1本に対して1.4mL)を添加し、35℃に加温して10分後に溶液をフリットから排出した。この30本すべての固相反応容器にDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。続いて、Fmoc-Hph(4-CF3-35-F2)-OH(化合物aa134)(0.45mol/L)とHOAt(0.375mol/L)のNMP溶液(固相反応容器1本に対して0.6mL)と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を合成機のmixing vialで混合した後に30本すべての固相反応容器に対して添加し、40℃にて2.5時間静置した。その後、溶液をフリットから排出した。30本すべての固相反応容器に対してDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に2回繰り返した。
【0157】
Fmoc-MeGly-OHの伸長
上記で得られたレジンを含む30本すべての固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、固相反応容器1本に対して1.4mL)を添加し、35℃に加温して10分後に溶液をフリットから排出した。この30本すべての固相反応容器にDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。続いて、Fmoc-MeGly-OH(0.6mol/L)とHOAt(0.375mol/L)のNMP溶液(固相反応容器1本に対して0.6mL)と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を合成機のmixing vialで混合した後に30本すべての固相反応容器に対して添加し、40℃にて2.5時間静置した。その後、溶液をフリットから排出した。30本すべての固相反応容器に対してDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に2回繰り返した。
【0158】
Fmoc-EtPhe(4-Me)-OH(化合物aa113)の伸長
上記で得られたレジンを含む30本すべての固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、固相反応容器1本に対して1.4mL)を添加し、35℃に加温して10分後に溶液をフリットから排出した。この30本すべての固相反応容器にDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。続いて、前述のとおり製造したFmoc-EtPhe(4-Me)-OH(0.6mol/L)とHOAt(0.375mol/L)のNMP溶液(固相反応容器1本に対して0.6mL)と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を合成機のmixing vialで混合した後に30本すべての固相反応容器に対して添加し、40℃にて2.5時間静置した。その後、溶液をフリットから排出した。30本すべての固相反応容器に対してDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に2回繰り返した。
【0159】
Fmoc-Aze(2)-OHの伸長
上記で得られたレジンを含む30本すべての固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、固相反応容器1本に対して1.4mL)を添加し、35℃に加温して10分後に溶液をフリットから排出した。この30本すべての固相反応容器にDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。続いて、Fmoc-Aze(2)-OH(0.6mol/L)とHOOBt(0.375mol/L)のNMPとDMSOの混合溶液(7:3)(固相反応容器1本に対して0.6mL)と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を合成機のmixing vialで混合した後に30本すべての固相反応容器に対して添加し、60℃にて5時間静置した。その後、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を30本すべての固相反応容器に対して添加し、60℃にて5時間静置した。その後、溶液をフリットから排出した。30本すべての固相反応容器に対してDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に2回繰り返した。
【0160】
Fmoc-MeAla-OHの伸長
上記で得られたレジンを含む30本すべての固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、固相反応容器1本に対して1.4mL)を添加し、35℃に加温して10分後に溶液をフリットから排出した。この30本すべての固相反応容器にDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。続いて、Fmoc-MeAla-OH(0.6mol/L)とHOAt(0.375mol/L)のNMP溶液(固相反応容器1本に対して0.6mL)と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を合成機のmixing vialで混合した後に30本すべての固相反応容器に対して添加し、40℃にて2.5時間静置した。その後、溶液をフリットから排出した。30本すべての固相反応容器に対してDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に2回繰り返した。
【0161】
Fmoc-Ile-OHの伸長
上記で得られたレジンを含む30本すべての固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、固相反応容器1本に対して1.4mL)を添加し、35℃に加温して10分後に溶液をフリットから排出した。この30本すべての固相反応容器にDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。続いて、Fmoc-Ile-OH(0.6mol/L)とHOAt(0.375mol/L)のNMP溶液(固相反応容器1本に対して0.6mL)と、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のDMF溶液(10v/v%、固相反応容器1本に対して0.72mL)を合成機のmixing vialで混合した後に30本すべての固相反応容器に対して添加し、40℃にて10時間静置した。その後、溶液をフリットから排出した。30本すべての固相反応容器に対してDMF(固相反応容器1本に対して1.4mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に2回繰り返した。続いて、30本すべての固相反応容器に対してDCM(固相反応容器1本に対して1.6mL)を加え、溶媒をフリットから排出した。このレジンの洗浄工程を更に5回繰り返した。30本すべての固相反応容器からレジンを回収し、混合して続く操作を行った。
【0162】
Fmoc-MeLeu-OH(CAS番号:103478-62-2)の伸長
上記で得られたレジンを200mLのプラスチック製固相反応容器に加え、ここにDCM(60mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。この固相反応容器にトルエン(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このトルエンによるレジンの洗浄工程を更に1回繰り返した。この固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のトルエン溶液(2v/v%、45mL)を添加し、30℃で5分振盪後に溶液をフリットから排出した。
【0163】
この固相反応容器にトルエン(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このトルエンによるレジンの洗浄工程を更に1回繰り返した。この固相反応容器にDCM(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このDCMによるレジンの洗浄工程を更に1回繰り返した。この固相反応容器に、Fmoc-MeLeu-OH(4.25g、11.57mmol)、[エチルシアノ(ヒドロキシイミノ)アセタト-O2]トリ-1-ピロリジニルホスホニウムヘキサフルオロリン酸(PyOxym)(6.10g、11.57mmol)、DIPEA(3.03mL、17.35mmol)のDCM(45mL)溶液を加え、30℃で3時間振盪した。その後、溶液をフリットから排出した。この固相反応容器にDMF(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に4回繰り返した。この固相反応容器にDCM(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このDCMによるレジンの洗浄工程を更に3回繰り返した。その後、得られたレジンは減圧下乾燥した。
【0164】
上記の固相反応容器にDCM(60mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。この固相反応容器にDMF(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に1回繰り返した。この固相反応容器にジアザビシクロウンデセン(DBU)のDMF溶液(2v/v%、45mL)を添加し、30℃で15分振盪後に溶液をフリットから排出した。この固相反応容器にDMF(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このDMFによるレジンの洗浄工程を更に4回繰り返した。この固相反応容器にDCM(50mL)を加え、30℃で5分振盪した後、溶媒をフリットから排出した。このDCMによるレジンの洗浄工程を更に4回繰り返し、化合物1217-dが担持されたレジンを得た。
【0165】
化合物1217-dの合成(ペプチドのレジンからの切り出し)
上記により得られたレジンを含む固相反応容器に、2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)(60mL)とDCM(60mL)とDIPEA(0.909mL)の混合溶液を加え、室温にて2時間振盪した。その後、溶液をフリットから回収した。この固相反応容器に2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)(30mL)とDCM(30mL)の混合溶液を加え、室温にて5分間振盪後、溶液をフリットから回収した。更にこの固相反応容器に、2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)(30mL)とDCM(30mL)の混合溶液を加え、室温にて5分間振盪後、溶液をフリットから回収した。回収したすべての溶液を混合し、減圧下にて溶媒留去して化合物1217-dを粗生成物として得た。(3.85g)
LCMS(ESI)m/z=1453.9(M-H)-
保持時間:0.67分(分析条件SQDAA50)
【0166】
化合物1の合成(ペプチドの環化と精製)
上記により得られた化合物1217-d(3.85g)を酢酸イソプロピル(529mL)とDIPEA(0.915mL、5.24mmol)の混合液に溶解し、HCTU(O-(1H-6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロリン酸、CAS番号330645-87-9)(1.805g、4.36mmol)を加え、室温にて21時間攪拌した。その後、溶液量が約半分になるまで減圧下溶媒留去した。得られた溶液に、飽和塩化アンモニウム水溶液(40mL)と水(40mL)の混合溶液を加え、酢酸イソプロピル(350mL)で抽出した。得られた有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)と水(40mL)の混合溶液、飽和食塩水(40mL)と水(40mL)の混合溶液で順に洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒留去して3.36gの残渣を得た。得られた残渣を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Daisogel SP-120-40/60-ODS-RPS、溶出液としてアセトニトリル(0.1%のギ酸を含む)/水(0.1%のギ酸を含む)を使用)で精製し、目的物を含む溶出液を凍結乾燥することでアモルファス状態の化合物1(1.36g、収率34%)を得た。得られた化合物1のマススペクトルの値と液体クロマトグラフィーの保持時間は下記のとおりであった。
LCMS(ESI)m/z=1437.7(M+H)
保持時間:7.496分(分析条件SSC-A-AF-01)
【0167】
調製例2:
調製例3で使用した種結晶の調製
調製例1において得られたアモルファス状態の化合物1(122.3mg)をDMSO(0.612mL)に溶解させ、この溶解液(0.015mL)を-20℃で2日間凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物に水-アセトニトリル混合液(3:1,0.015mL)を加え、室温にて7日間振とう攪拌することで化合物1の水和物結晶(Form C)を得た。
【0168】
調製例3:
化合物1の結晶化:((5S,8S,11S,15S,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8-((S)-sec-ブチル)-18-シクロペンチル-29-(3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-36-エチル-11-イソブチル-N,N,5,6,12,16,19,33-オクタメチル-35-(4-メチルベンジル)-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37-ウンデカオキソテトラトリアコンタヒドロ-2H,4H-スピロ[アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-21,1'-シクロペンタン]-15-カルボキサミド)の水和物結晶 Form Cの合成
窒素で置換した化合物1を含む溶液が入った反応釜に入れ、反応釜の外温を40℃に設定し、フィルター(CCF-G100-D1N)を用いて濾過した精製水(10.9kg)を加えた。アセトン(59.2g)/水(61.2g)の混合液に、調製例2と同様の操作により得られた、化合物1の粉砕結晶(10.2g)を加えて得た懸濁液を反応釜に加えた。懸濁液の入った容器をアセトン(59.2g)/水(61.2g)の混合液で洗いこみながら反応釜に加えた後、2時間1分間撹拌した。フィルター(CCF-G100-D1N)を用いて濾過した精製水(2.7kg)を加え、7時間10分間撹拌した。さらに、アセトン(59.2g)/水(61.2g)の混合液に、調製例2と同様の操作により、得られた化合物1の粉砕結晶(10.2g)を加えて得た懸濁液を反応釜に加えた。懸濁液の入った容器をアセトン(59.2g)/水(61.2g)の混合液で洗いこみながら、反応釜に加え、12時間40分間撹拌した。フィルター(CCF-G100-D1N)を用いて濾過した精製水(2.7kg)を加え、2時間撹拌した。反応釜の外温を40℃から25℃へ1時間かけて降温後、反応混合物を18時間44分間攪拌した。反応混合物を、濾布(PF-020)を用いて加圧濾過し、反応釜内と濾過機を、フィルター(CCF-G100-E1N)を用いて濾過したアセトン(7.5kg)と精製水(7.5kg)の混合液で洗浄しながら得られた結晶を洗浄した。得られた結晶を、フィルター(CCF-G100-E1N)を用いて濾過した精製水(17.0kgx2)で洗浄し、結晶を回収した濾過装置を減圧し、濾過装置の外温を70℃に設定して結晶を17時間乾燥した。さらに、外温を室温~30℃にて結晶を27時間乾燥した。乾燥末を濾過機から回収し、白色の粉末(2.6kg)を得た。
【0169】
得られた白色の粉末は、調製例1の「化合物1の合成(ペプチドの環化と精製)」で得られた化合物と同一の構造であることを確認した。
【0170】
以下に示すHPLC分析法により、保持時間を確認した。
HPLC分析条件
装置:Waters ACQUITY UPLC H-Class
カラム:ACQUITY UPLC CSH C18 (Waters), 2.1 mm ID×150 mm, 1.7 μm
移動相:0.05% TFA/water (A)、0.05% TFA/MeCN (B)
溶出法:B) 20%(0 min)→100%(24 min)→100%(29 min)→20%(29.1 min)→20%(34 min)
流速:0.3 mL/min
カラム温度:50 ℃
検出波長:220 nm(PDA)
HPLC分析による保持時間:18.199分
【0171】
以下に示すXRPD装置を用いた粉末X線解析を行った。
XRPD測定条件
測定装置:X’pert-pro MPD(PANalytical社製)
線源:CuKα
管電圧:45 kV
管電流:40 mA
走査範囲:3~40°
走査速度:4.2°/分
サンプリング幅:0.017°
【0172】
測定の結果、2θ値は、4.964°、7.921°、8.296°、8.855°、9.956°、10.435°、11.729°、12.704°、13.552°、13.901°、15.895°、16.643°、および17.813°(±0.2°)が主要なピークとして観測された。分析結果を図1に示す。
【0173】
前記調製例3と同様の方法で得られた化合物1の水和物結晶(Form C)の熱重量・示差熱分析を以下の条件で測定した。結果を図2に示す。
測定装置:TGA/DSC 3+(Mettler Toledo製)
測定範囲:25~350℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:乾燥窒素
【0174】
前記調製例3と同様の方法で得られた化合物1の水和物結晶(Form C)の水分量を、カールフィッシャー滴定法で測定した。測定は、試料を実験室環境下で馴化させた後にCA-310(日東精工アナリテック製)を用いて行った。測定の結果、化合物1の水和物結晶(Form C)の水分量は6.50wt%であった。
【0175】
前記調製例3と同様の方法で得られた化合物1の水和物結晶(Form C)の単結晶X線構造解析を以下の条件で行った。
測定装置:Rigaku R-AXIS RAPID-II with a VariMax Cu diffractometer(リガク社製)
対陰極:Cu
管電圧:40 kV
管電流:30 mA
温度:-180℃
測定:構造解析に十分な回折斑点が得られると考えらえるストラテジー、露光時間で測定を行った。
構造解析:初期構造決定は直接法(SIR2004、CrystalStructure、Rigaku)で行い、構造精密化はfull-matrix least-squares法(SHELXL-2017/1、APEX3、Bruker)で行った。全ての非水素原子は異方性温度因子で精密化した。水分子の水素原子はリストレインを用いて適切な位置に置き、結合している酸素原子の1.5倍の大きさの等方性温度因子で精密化した。そのほかの水素原子はライディングモデルを用いて適切な位置に置き、結合している非水素原子の1.2倍の大きさの等方性温度因子とした。
結果を図3に示す。
【0176】
熱重量・示差熱分析、カールフィッシャー滴定、単結晶X線構造解析の結果から、化合物1の水和物結晶(Form C)は、まさに結晶構造中に水分子を有する水和物結晶であることが確認された。
【0177】
調製例3と同様の方法で得られた化合物1の水和物結晶(Form C)の動的水蒸気吸着測定を実施した。結果を図4に示す。
測定装置:DVS Intrinsic(Surface Measurement Systems製)
温度:25℃
相対湿度(%)測定点:
サイクル1:0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、90、80、70、60、50、40、30、20、10、0(%);
サイクル2:10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、90、80、70、60、50、40、30、20、10、0(%)
閾値:0.001 dm/dt(%/分)
最小収着時間:10分
最大収着時間:1440分
【0178】
測定の結果、化合物1の水和物結晶(Form C)は、相対湿度0~95%の範囲で、水和数変化に伴い3.3%重量変化する水和物結晶であることが確認された。
【0179】
調製例3で得られた化合物1の水和物の結晶(Form C)(以下、「化合物I」ということがある)を以下の組成物または製剤の調製、評価に用いた。以下、実施例で用いた有効成分となる化合物を「化合物I」として記載するが、液体添加剤などに溶解した化合物Iは、フリー体の化合物1を意味する。
【0180】
化合物Iを含む組成物の探索
試験例1(各種添加剤への化合物Iの溶解度評価)
各種添加剤への化合物Iの溶解度を求めた。化合物Iに液体状の各種添加剤を添加して攪拌し、化合物Iが溶けない場合はさらに添加剤を添加して攪拌した。この操作を化合物Iが溶けるまで繰り返し、化合物Iを溶かすために必要な添加剤量からおおよその溶解度を求めた。なお、Polyoxyethylene (15) hydroxystearate (Solutol HS15)は室温(R.T.)で固体であるため37℃に加熱して液体にして溶解度を求めた。その他の添加剤は室温で溶解度を求めた。結果を表2に示す。その結果、PG monocaprylateは化合物Iに対して高い溶解性を示すことが判明した。
【0181】
【表2】
【0182】
試験例2(各製剤への化合物Iの溶解度評価)
高い溶解性を示したPG monocaprylateを用いた添加剤混合液を表3の処方に基づいて調製した。次に、各添加剤混合液1~4への化合物Iの溶解度を測定した。カプセル剤として製剤化した際のカプセル剤皮からの水分移行を想定し、水を3%添加した添加剤混合液についても溶解度を測定した。その結果、表4に示すとおり、添加剤混合液1~4は化合物Iを100mg/mL以上の高い濃度で溶かすことができることが判明した。また、水を各添加剤混合液に添加すると、化合物Iの溶解度が60~70mg/mLに低下したことから、以降の化合物Iの各添加剤混合液への溶解度評価には水を添加して評価することとした。
【0183】
【表3】
【0184】
【表4】
【0185】
更に、最適な処方を探索するため、表5~10の処方に基づき添加剤混合液5~45を調製した。
【0186】
【表5】
【0187】
【表6】
【0188】
【表7】
【0189】
【表8】
【0190】
【表9】
【0191】
【表10】
【0192】
次に、水を添加した各製剤5~45への化合物Iの溶解度を測定した。結果を表11に示す。
【0193】
【表11】
【0194】
実施例1~22
表12の処方に基づき、以下の方法により本発明組成物である製剤A~Vを調製した。
【0195】
【表12】
【0196】
実施例1(製剤Aの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液1を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Aを得た。
【0197】
実施例2(製剤Bの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液2を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Bを得た。
【0198】
実施例3(製剤Cの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液3を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Cを得た。
【0199】
実施例4(製剤Dの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液4を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Dを得た。
【0200】
実施例5(製剤Eの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液7を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Eを得た。
【0201】
実施例6(製剤Fの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液19を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Fを得た。
【0202】
実施例7(製剤Gの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液20を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Gを得た。
【0203】
実施例8(製剤Hの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液21を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Hを得た。
【0204】
実施例9(製剤Iの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液25を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Iを得た。
【0205】
実施例10(製剤Jの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液26を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Jを得た。
【0206】
実施例11(製剤Kの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液28を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Kを得た。
【0207】
実施例12(製剤Lの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液29を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Lを得た。
【0208】
実施例13(製剤Mの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液30を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Mを得た。
【0209】
実施例14(製剤Nの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液32を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Nを得た。
【0210】
実施例15(製剤Oの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液33を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Oを得た。
【0211】
実施例16(製剤Pの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液34を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Pを得た。
【0212】
実施例17(製剤Qの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液35を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Qを得た。
【0213】
実施例18(製剤Rの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液40を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Rを得た。
【0214】
実施例19(製剤Sの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液41を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Sを得た。
【0215】
実施例20(製剤Tの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液42を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Tを得た。
【0216】
実施例21(製剤Uの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液44を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Uを得た。
【0217】
実施例22(製剤Vの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液45を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Vを得た。
【0218】
実施例1~実施例22の製剤中に含まれる各成分の製剤全体に対する重量%を下表にまとめた。
【表13】
【0219】
比較例1~19
表14の処方に基づき、以下の方法により本発明組成物である製剤W~AOを調製した。
【0220】
【表14】
【0221】
比較例1(製剤Wの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液8を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Wを得た。
【0222】
比較例2(製剤Xの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液9を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Xを得た。
【0223】
比較例3(製剤Yの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液10を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Yを得た。
【0224】
比較例4(製剤Zの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液13を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤Zを得た。
【0225】
比較例5(製剤AAの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液14を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤AAを得た。
【0226】
比較例6(製剤ABの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液15を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤ABを得た。
【0227】
比較例7(製剤ACの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液16を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤ACを得た。
【0228】
比較例8(製剤ADの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液17を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤ADを得た。
【0229】
比較例9(製剤AEの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液18を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤AEを得た。
【0230】
比較例10(製剤AFの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液22を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤AFを得た。
【0231】
比較例11(製剤AGの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液23を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤AGを得た。
【0232】
比較例12(製剤AHの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液24を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤AHを得た。
【0233】
比較例13(製剤AIの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液27を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤AIを得た。
【0234】
比較例14(製剤AJの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液31を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤AJを得た。
【0235】
比較例15(製剤AKの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液36を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤AKを得た。
【0236】
比較例16(製剤ALの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液37を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤ALを得た。
【0237】
比較例17(製剤AMの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液38を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤AMを得た。
【0238】
比較例18(製剤ANの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液39を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤ANを得た。
【0239】
比較例19(製剤AOの調製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液43を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認して製剤AOを得た。
【0240】
比較例1~比較例19の製剤中に含まれる各成分の製剤全体に対する重量%を下表にまとめた。
【表15】
【0241】
試験例3(DLSによる粒子径分布測定)
次に、実施例1から22で調製した製剤Aから製剤Vおよび比較例1から19で調製した製剤Wから製剤AOに水を加え、分散体を生成させた。分散体中に生じた液滴の粒子径を測定し、室温(約25℃)における粒子径分布を評価した。バイアルに各製剤4μLを入れ、さらに水を396μL加えてたのち、攪拌したサンプルについて試験法1に示した方法で動的散乱(DLS)による粒子径分布求めた。粒子径分布を表す指標として、平均粒子径(Z-averageサイズ)と多分散性指数(polydispersity index, PDI)を用いた。DLSにおいて、PDIは粒子径分布の幅を表す指標でであり、0から1の範囲で示される。PDI=0は粒子径の分布が無い懸濁液を表し、0.1以下のPDIを示す分散体は単分散であり、PDIが0.1から0.5の間の値を示す分散体は狭い分布を有すると考えられる。一方、PDIが0.5を超える分散体は多分散であると考えられる。表16に示したとおり、製剤AからVはいずれも平均粒子径も小さく(200nm未満)かつPDIが0.5未満の狭い分布を示す良好な分散体であった。一方、製剤Wから製剤AOの平均粒子径は大きく(200nm以上)、PDIが0.5を超えて多分散であった。
【0242】
【表16】
【0243】
試験例4(80℃安定性試験)
医薬品の長期安定性を見積もるため安定性試験を行った。まず実施例1、3、6、8、10で調製した製剤A、C、F、H、Jそれぞれ10mgをガラスバイアルにとり、シリカゲルおよび脱酸素剤を入れた褐色瓶に入れて密閉した。各褐色瓶を80℃の恒温槽にいれ、2週間保存した。保存前後の化合物Iの濃度をUPLCで定量し、次の式により残存率を求めた。
残存率(%)=(保存後の化合物Iの濃度/保存前の化合物I濃度)X100
【0244】
表17に示すように、いずれの製剤でも化合物Iは95%以上の高い残存率を示し、医薬品として開発できる製剤であることが判明した。
【0245】
【表17】
【0246】
試験例5(40℃安定性試験)
自己乳化製剤は液体であるため、医薬品として開発するためには主にカプセル剤に充填される。そこで実施例1、3、6で調製した製剤A、C、Fそれぞれ10mgを硬カプセルにとり、シリカゲルおよび脱酸素剤を入れた褐色瓶に入れて密閉した。各褐色瓶を40℃の恒温槽にいれ、6か月間保存した。保存前後の化合物Iの濃度をUPLCで定量し、次の式により残存率を求めた。
残存率(%)=(保存後の化合物Iの濃度/保存前の化合物I濃度)X100
【0247】
表18に示すように、いずれの製剤でも化合物Iは95%以上の高い残存率を示し、医薬品として開発できる製剤であることが判明した。
【0248】
【表18】
【0249】
試験例6(分散性評価)
試験法2で示した分散性評価方法にしたがって、製剤C、Fおよび比較として製剤AJの空腹時人工腸液(FaSSIF)への分散性能を推定するために、制御された温度と攪拌速度(37℃、200 rpm)を提供するμDISS装置を用いて分散プロファイルを解析した。各製剤100μLを37℃に保温された10mLのFaSSIF表面に加え、200 rpmの速度で攪拌した。5、10、15、20、25、30および60分の時点でガイドプラスチックチューブを通して溶液50μLを容器の中央から分取し、UPLCによって化合物Iの濃度を決定した。次の式により、分散度(%)を求めた。
分散度(%)=(分取した溶液中の化合物Iの濃度/製剤全量が均一に分散したときの化合物Iの濃度)X100
【0250】
図5に示す通り、製剤Cは試験開始直後より全量が分散することが判明した。また、製剤Fも60分経過時点で80%を超える分散度を示し、製剤AJと比較しても良好な製剤であることが判明した。
【0251】
次に、ラットでの吸収性評価を行うため、製剤AP~ASを作製した。
実施例23(ラット投与用カプセル製剤APの作製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 60mgあたり1mLの添加剤混合液3を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認した。化合物が溶解した溶液を9号ゼラチンカプセルに充填して製剤APを作製した。
【0252】
実施例24(ラット投与用カプセル製剤AQの作製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 60mgあたり1mLの添加剤混合液19を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認した。化合物が溶解した溶液を9号ゼラチンカプセルに充填して製剤AQを作製した。
【0253】
比較例20(ラット投与用カプセル製剤ARの作製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 60mgあたり1mLの添加剤混合液31を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認した。化合物が溶解した溶液を9号ゼラチンカプセルに充填して製剤ARを作製した。
【0254】
比較例21(ラット投与用溶液製剤ASの作製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 10mgあたり1mLのジメチルスルホキシド(DMSO)を加えて溶解させた。さらにポリオキシル35ヒマシ油を0.5mL、水を8.5mL加えてよく攪拌、混合して溶液製剤ASを作製した。
【0255】
実施例23、24、比較例20の製剤中に含まれる各成分の製剤全体に対する重量%を下表にまとめた。
【表19】
【0256】
試験例7(ラット吸収性評価)
実施例23、24のカプセル製剤AP、AQおよび比較例20、21のカプセル製剤ARおよび溶液製剤ASをラット(Wister Hannover, male)に10 mg/kgの容量で各製剤4例ずつ経口投与した。製剤AP、AQおよびARはカプセル剤をそのまま強制経口投与し、さらに水を5mL/kgの容量で強制経口投与した。溶液製剤ASはそのまま強制経口投与した。投与後、約0.5、1、2、4、7、24および48時間後に採血を行い、試験法3に示した方法で血漿中に含まれる化合物Iの濃度をLC-MS/MSによって定量し、血漿中薬物濃度対時間曲線下面積(AUC)および最高血漿中濃度(Cmax)を算出した。
【0257】
各製剤投与後のAUCおよびCmaxを表20に示す。実施例23、24のカプセル製剤APおよびカプセル製剤AQは比較例20のカプセル製剤ARよりも高いAUCおよびCmaxを示すことが判明した。また、実施例23のカプセル製剤APは、比較例21の溶液製剤ASと比べても同程度のAUCおよびCmaxを示すことが判明した。
【0258】
【表20】
【0259】
次に、サルでの吸収性評価を行うため、カプセル製剤ATおよび溶液製剤AUを作製した。
実施例25(サル投与用カプセル製剤ATの作製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 50mgあたり1mLの添加剤混合液3を加えた。撹拌子を用いて攪拌して化合物Iが完全に溶解することを確認した。化合物が溶解した溶液を1号ゼラチンカプセルに充填して製剤ATを作製した。
【0260】
比較例22(サル投与用溶液製剤AUの作製)
化合物Iをバイアルに秤取し、化合物I 15mgあたり1mLのジメチルスルホキシド(DMSO)を加えて溶解させた。さらにポリオキシル35ヒマシ油を0.25mL、水を8.75mL加えてよく攪拌、混合して溶液製剤AUを作製した。
【0261】
試験例8(サル吸収性評価)
実施例25のカプセル製剤ATおよび比較例22の溶液製剤AUをカニクイザル(cynomolgus monkey)に3mg/kgの容量で各製剤4例ずつ経口投与した。カプセル製剤ATはそのまま強制経口投与し、さらに水を4mL/kgの容量で強制経口投与した。溶液製剤AUはそのまま強制経口投与した。投与後、約0.5、1、2、4、7、24および48時間後に採血を行い、試験法3に示した方法で血漿中に含まれる化合物Iの濃度をLC-MS/MSによって定量し、血漿中薬物濃度対時間曲線下面積(AUC)および最高血漿中濃度(Cmax)を算出した。
【0262】
各製剤投与後のAUCおよびCmaxを表21に示す。実施例25のカプセル製剤ATは、比較例22の溶液製剤AUと比べても同程度のAUCおよびCmaxを示すことが判明した。
【0263】
【表21】
【0264】
実施例26(カプセル剤(ハードカプセル)の製造1)
化合物Iをステンレス容器に秤取し、化合物I 0.5mgあたり51.5mgのPropylene glycol monocaprylate、13.3 mgのOleic acid、31.1 mgのPolyoxyl 35 castor oil および0.2 mgのdl-α-tocopherol を加え、ホモジナイザーを用いて攪拌、混合した。化合物が溶解した溶液を3号ゼラチンカプセルに充填し、バンドシールして製剤AVを作製した。
【0265】
実施例27(カプセル剤(ハードカプセル)の製造2)
化合物Iをステンレス容器に秤取し、化合物I 12mgあたり123.6mgのPropylene glycol monocaprylate、31.9mgのOleic acid、74.6mgのPolyoxyl 35 castor oil および0.5mgのdl-α-tocopherol を加え、ホモジナイザーを用いて攪拌、混合した。化合物が溶解した溶液を3号ゼラチンカプセルに充填し、バンドシールして製剤AWを作製した。
【0266】
実施例28(カプセル剤(ソフトカプセル)の製造3)
化合物Iをステンレス容器に秤取し、化合物I 19.1mgあたり206.4mgのPropylene glycol monocaprylate、53.3mgのOleic acidおよび124.6mgのPolyoxyl 35 castor oilおよび0.8mgのdl-α-tocopherolを加え、攪拌羽を用いて攪拌、混合した。化合物が溶解した溶液をソフトゼラチンカプセルに充填し、製剤AXを作製した。
【0267】
実施例29(カプセル剤(ソフトカプセル)の製造4)
化合物Iをステンレス容器に秤取し、化合物I 4.5mgあたり46.4mgのPropylene glycol monocaprylate、12.0mgのOleic acidおよび28.0mgのPolyoxyl 35 castor oilを加え、攪拌羽を用いて攪拌、混合した。化合物が溶解した溶液をソフトゼラチンカプセルに充填し、製剤AYを作製した。
【0268】
実施例30(カプセル剤(ソフトカプセル)の製造5)
化合物Iをステンレス容器に秤取し、化合物I 6.0mgあたり61.8mgのPropylene glycol monocaprylate、16.0mgのOleic acidおよび37.3mgのPolyoxyl 35 castor oilを加え、攪拌羽を用いて攪拌、混合した。化合物が溶解した溶液をソフトゼラチンカプセルに充填し、製剤AZを作製した。
【0269】
実施例25~30の製剤中に含まれる各成分の製剤全体に対する重量%を下表にまとめた。
【表22】
【0270】
試験例9(DLSによる粒子径分布測定)
次に、実施例26~30で調製した製剤AV、製剤AW、製剤AX、製剤AY、および製剤AZを水に分散したときの粒子径分布を評価した。バイアルに日本薬局方溶出試験第1液, pH1.2を9.9mL入れ、さらに各製剤100μLを加えたのち攪拌したサンプルを100μL分取して、日本薬局方溶出試験第1液, pH1.2を0.9mL入れたバイアルに加えたのち攪拌した。これらのサンプルについて、試験法1に示した方法で動的散乱(DLS)による粒子径分布を求めた。粒子径分布を表す指標として、試験例3と同様に、平均粒子径(Z-averageサイズ)と多分散性指数(polydispersity index, PDI)を用いた。表23に示したとおり、製剤AV、製剤AW、製剤AX、製剤AY、および製剤AZはいずれも平均粒子径も小さく(200 nm未満)かつPDIが0.5未満の狭い分布を示す良好な分散体であった。
【0271】
【表23】
【0272】
試験例10(薬理学的試験例)
AlphaScreenを用いたKrasとSOS1のタンパクタンパク相互作用阻害活性(KrasG12D-SOS PPI)
KrasとSOS1のタンパク-タンパク相互作用阻害活性(protein-protein interaction inhibition; PPI)は、商業的供給業者より入手可能な装置、試薬などを用い、当業者であれば公知の方法により実施可能である。具体的には、大腸菌で発現し、精製後にGDPをローディングしたビオチンタグ付きヒトKrasとHisタグ付きヒトSOS1エンザイムを用い、ニッケルを結合させたドナービーズからストレプトアビジンを結合させたアクセプタービーズへのエネルギー伝達により測定した。ドナービーズに680nmの光を照射することで、一重項酸素を介したアクセプタービーズへのエネルギー伝達が起こり、アクセプタービーズから520~620nmの光が検出されることを本測定は利用している。化合物1を含まない対照群に対する阻害率より50%阻害濃度(IC50値)を算出した。
【0273】
化合物1のIC50値は0.0010μMであった。化合物1は、KrasとSOS1とのタンパク-タンパク相互作用を阻害することが示された。K-rasとSOS1の結合阻害により、Krasの下流のシグナル伝達を阻害することが知られている。したがって化合物1は、細胞増殖阻害活性も持つことが示唆された。
【0274】
AsPC-1細胞生育阻害活性の測定(AsPC-1 CGI)
AsPC-1細胞生育阻害活性は、商業的供給業者より入手可能な装置、試薬、細胞株などを用い、当業者であれば公知の方法により実施可能である。具体的には、化合物1をジメチルスルホキシドにて系列希釈後、Labcyte Echoを用いて200nLをU底96穴プレートに分注した。ヒトすい臓がん株AsPC-1は、RPMI-1640培地に15%牛胎児血清を添加した培地で、1000細胞/100μLとなるよう細胞懸濁液を調製した。この細胞懸濁液を、化合物1を添加済みプレートに1ウェルあたり100μL分注し、37℃、5%炭酸ガスインキュベーターにて培養した。96時間後、80μLのCellTiter-Glo(プロメガ)を各ウェルに添加し、蛍光を測定した。化合物1無添加の対照に対する化合物1添加時の増殖阻害率より、被験化合物の細胞生育阻害活性(cell growth inhibition, CGI)を50%増殖阻害濃度(IC50値)として算出した。化合物1のIC50値(μM)は、0.02μM以下であり、抗腫瘍効果を持つことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0275】
本発明に係る組成物は、特定の化合物に対して、特定の成分を含有することにより、本発明の組成物は製剤として必要な種々の特性に優れたものとすることができる。例えば、このような特定の成分を含有する組成物は、望ましい粒子特性を有し、有効成分の安定性や分散性に優れ、また、体内への吸収性にも優れる。したがって、本発明に係る組成物は、医薬製剤としての利用に好適である。
【要約】
本発明は、下記式(1):
で表される化合物、もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物と、液体添加剤、および任意で油性成分を含有する、組成物に関する。
図1
図2
図3
図4
図5