(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】フロート集合体
(51)【国際特許分類】
B63B 35/00 20200101AFI20221124BHJP
B63B 35/38 20060101ALI20221124BHJP
B63B 21/50 20060101ALI20221124BHJP
B63B 21/16 20060101ALI20221124BHJP
H02S 10/40 20140101ALI20221124BHJP
【FI】
B63B35/00 T
B63B35/38 B
B63B21/50 A
B63B21/16
H02S10/40
(21)【出願番号】P 2018149615
(22)【出願日】2018-08-08
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2018020500
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】長井 宏史
(72)【発明者】
【氏名】上田 泰睦
(72)【発明者】
【氏名】坂口 努
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0022426(US,A1)
【文献】特開2006-160025(JP,A)
【文献】特開2004-176626(JP,A)
【文献】特表2017-521597(JP,A)
【文献】特開2000-159188(JP,A)
【文献】特開2002-160692(JP,A)
【文献】特開2013-089844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/00
B63B 35/38
B63B 21/50
B63B 21/16
H02S 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に浮かぶように構成されるフロート集合体であって、
回転中心フロートと、軸用ワイヤと、通常フロートと、を備え、
前記回転中心フロートは、前記
軸用ワイヤによって係留され
、
前記軸用ワイヤは、
当該フロート集合体の略中央部から水中に向かうように設けられ、且つ
張力が維持されるように構成さ
れ、
前記通常フロートは、互いに連結された複数のフロートであり、前記通常フロートが、前記回転中心フロートの周りを独立に回転可能に構成される、フロート集合体。
【請求項2】
請求項
1に記載のフロート集合体において、
前記回転中心フロートは、第1張力発生機構を更に備え、
前記軸用ワイヤは、
その一端が前記水中に固定され、且つ
前記第1張力発生機構に引っ張られることによって前記張力が維持される、
フロート集合体。
【請求項3】
請求項
2に記載のフロート集合体において、
前記第1張力発生機構は、前記軸用ワイヤを巻取り可能に構成される第1ウィンチである、
フロート集合体。
【請求項4】
請求項
1~請求項
3の何れか1つに記載のフロート集合体において、
前記通常フロート及び前記回転中心フロートの境界に円滑機構が設けられる、
フロート集合体。
【請求項5】
請求項
1~請求項
4の何れか1つに記載のフロート集合体において、
前記回転中心フロートは、前記通常フロートよりも水底側に位置する、
フロート集合体。
【請求項6】
請求項1~請求項
5の何れか1つに記載のフロート集合体において、
水位センサを更に備え、
前記水位センサによる水位の観測結果に基づいて、前記軸用ワイヤの長さ及び張力が調節されるように構成される、
フロート集合体。
【請求項7】
請求項1~請求項
6の何れか1つに記載のフロート集合体において、
回転用ワイヤを更に備え、
前記回転用ワイヤは、
当該フロート集合体のうちの一部である回転用フロートと、陸上とを連結するように構成され、且つ
引っ張られることによって、当該フロート集合体が回転するように構成される、
フロート集合体。
【請求項8】
請求項
7に記載のフロート集合体において、
全体が矩形をなすように構成され、
前記回転用フロートは、前記矩形の頂点に位置するフロートであって、
前記回転用フロート及び前記陸上の少なくとも一方において、前記回転用ワイヤを引っ張る第2張力発生機構が設けられ、
前記第2張力発生機構に前記回転用ワイヤが引っ張られることによって、当該フロート集合体が回転するように構成される、
フロート集合体。
【請求項9】
請求項
8に記載のフロート集合体において、
前記第2張力発生機構は、前記軸用ワイヤを巻取り可能に構成される第2ウィンチである、
フロート集合体。
【請求項10】
請求項
7~請求項
9の何れか1つに記載のフロート集合体において、
風速センサを更に備え、
前記風速センサが所定の風速以上を観測すると、前記軸用ワイヤ及び前記回転用ワイヤのうちの少なくとも一方を長尺化して張力が解かれるように構成される、
フロート集合体。
【請求項11】
水上に浮かぶように構成されるフロート集合体であって、
通常フロートと、回転中心フロートと、円滑機構とを備え、
前記円滑機構は、前記回転中心フロートの周りを前記通常フロートが回転するように、前記通常フロートと前記回転中心フロートとの間に設けられる、
フロート集合体。
【請求項12】
請求項
11に記載のフロート集合体において、
前記円滑機構は、内環状部と、外環状部と、介在部とを有し、
前記内環状部の内側には、前記回転中心フロートが配置され、
前記外環状部の外側には、前記通常フロートが配置され、且つ、前記外環状部は、前記通常フロートとともに回転するように構成され、
前記介在部は、前記内環状部と前記外環状部との間に配置される、
フロート集合体。
【請求項13】
請求項
12に記載のフロート集合体において、
前記円滑機構は、屋根部を有し、
前記屋根部は、前記介在部の上側に配置され、且つ、前記内環状部又は前記外環状部に固定されている、
フロート集合体。
【請求項14】
請求項
12又は請求項
13に記載のフロート集合体において、
前記内環状部は、前記回転中心フロートに直接又は間接的に連結し、
前記外環状部は、前記通常フロートに直接又は間接的に連結し、
前記内環状部、前記介在部及び前記外環状部は、それぞれが、独立して設けられている、
フロート集合体。
【請求項15】
請求項
11~請求項
14の何れか1つに記載のフロート集合体において、
回転用ワイヤを更に備え、
前記回転用ワイヤは、引っ張られることによって、前記通常フロートが前記回転中心フロートの周りを回転するように構成される、
フロート集合体。
【請求項16】
請求項
15に記載のフロート集合体において、
前記回転用ワイヤは、複数の前記通常フロートのうち外部側に配置されている前記通常フロートに引っ掛けられている、
フロート集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロート集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光を電力に変換する太陽光発電装置では、光電変換デバイスとしてソーラパネル(太陽電池パネル、太陽電池モジュールとも称される)が用いられている。ソーラパネルは、主に建築物の屋根や壁面、地面等に設置されているが、近年、遊休化している池や湖等の水上への設置も行われるようになってきている。
【0003】
水上にソーラパネルを設置する場合、ソーラパネルを水上に浮かせるためのフロートが用いられ、フロート上にソーラパネルが設置される(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2014-511043号公報
【文献】特開2015-217771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなフロートを互いに連結してなるフロート集合体を、太陽の位置に合わせてゆっくりと回転させることで、発電効率を向上させることが考えられている。回転させる際には、フロート集合体の並進移動を避けるために、中央に固定された回転軸が必要となる。すなわち、このような回転軸として、柱のような剛体を水底に固定し且つ水上に向かうように構築する必要がある。しかし、このような柱を設けると、それ相応の非常に膨大なコストがかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みて提案されたものであり、回転可能に構成され、且つ高価な柱を構築せずとも回転軸が規定されるようなフロート集合体を提供することを目的とする。
【0007】
本発明によれば、水上に浮かぶように構成されるフロート集合体であって、軸用ワイヤによって係留され、且つ回転可能に構成され、前記軸用ワイヤは、当該フロート集合体の略中央部から水中に向かうように設けられ、且つ張力が維持されるように構成される、フロート集合体が提供される。
【0008】
本発明に係るフロート集合体は、軸用ワイヤによって係留され、且つ回転可能に構成され、軸用ワイヤは、張力が維持されるように構成されることを特徴とする。このような構成によって、高価な柱を設けずとも、フロート集合体の中央に固定された回転軸が実現される。換言すると、高価な柱を構築せずとも回転軸が規定されるようなフロート集合体を実施することができる。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、通常フロートと、回転中心フロートとを更に備え、前記通常フロートは、互いに連結された複数のフロートであり、前記回転中心フロートは、前記軸用ワイヤによって係留され、前記通常フロートが、前記回転中心フロートの周りを独立に回転可能に構成される。
好ましくは、前記回転中心フロートは、第1張力発生機構を更に備え、前記軸用ワイヤは、その一端が前記水中に固定され、且つ前記第1張力発生機構に引っ張られることによって前記張力が維持される。
好ましくは、前記第1張力発生機構は、前記軸用ワイヤを巻取り可能に構成される第1ウィンチである。
好ましくは、前記通常フロート及び前記回転中心フロートの境界に円滑機構が設けられる。
好ましくは、前記回転中心フロートは、前記通常フロートよりも水底側に位置する。
好ましくは、水位センサを更に備え、前記水位センサによる水位の観測結果に基づいて、前記軸用ワイヤの長さ及び張力が調節されるように構成される。
好ましくは、回転用ワイヤを更に備え、前記回転用ワイヤは、当該フロート集合体のうちの一部である回転用フロートと、陸上とを連結するように構成され、且つ引っ張られることによって、当該フロート集合体が回転するように構成される。
好ましくは、全体が矩形をなすように構成され、前記回転用フロートは、前記矩形の頂点に位置するフロートであって、前記回転用フロート及び前記陸上の少なくとも一方において、前記回転用ワイヤを引っ張る第2張力発生機構が設けられ、前記第2張力発生機構に前記回転用ワイヤが引っ張られることによって、当該フロート集合体が回転するように構成される。
好ましくは、前記第2張力発生機構は、前記軸用ワイヤを巻取り可能に構成される第2ウィンチである。
好ましくは、風速センサを更に備え、前記風速センサが所定の風速以上を観測すると、前記軸用ワイヤ及び前記回転用ワイヤのうちの少なくとも一方を長尺化して張力が解かれるように構成される。
【0010】
好ましくは、水上に浮かぶように構成されるフロート集合体であって、通常フロートと、回転中心フロートと、円滑機構とを備え、前記円滑機構は、前記回転中心フロートの周りを前記通常フロートが回転するように、前記通常フロートと前記回転中心フロートとの間に設けられる。
好ましくは、前記円滑機構は、内環状部と、外環状部と、介在部とを有し、前記内環状部の内側には、前記回転中心フロートが配置され、前記外環状部の外側には、前記通常フロートが配置され、且つ、前記外環状部は、前記通常フロートとともに回転するように構成され、前記介在部は、前記内環状部と前記外環状部との間に配置される。
好ましくは、前記円滑機構は、屋根部を有し、前記屋根部は、前記介在部の上側に配置され、且つ、前記内環状部又は前記外環状部に固定されている。
好ましくは、前記内環状部は、前記回転中心フロートに直接又は間接的に連結し、前記外環状部は、前記通常フロートに直接又は間接的に連結し、前記内環状部、前記介在部及び前記外環状部は、それぞれが、独立して設けられている。
好ましくは、回転用ワイヤを更に備え、前記回転用ワイヤは、引っ張られることによって、前記通常フロートが前記回転中心フロートの周りを回転するように構成される。
好ましくは、前記回転用ワイヤは、複数の前記通常フロートのうち外部側に配置されている前記通常フロートに引っ掛けられている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るフロート集合体の平面図。
【
図2】
図1の状態からフロート集合体を回転させた態様を示す平面図。
【
図3】第1実施形態に係るフロート集合体の部分断面図。
【
図5】
図4に示されたフロートにソーラパネルを取り付けた状態を示す斜視図。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るフロート集合体の平面図。
【
図7】本発明の第3実施形態に係るフロート集合体にソーラパネルを取り付けた状態を示す斜視図。
【
図8】
図7に示すフロート集合体からソーラパネルを取り外した状態を示す斜視図。
【
図14】
図13に示す状態から、回転中心フロート部を中心として通常フロート部を回転させた状態を示すフロート集合体の上面図。
【
図19】
図19Aは第3実施形態の変形例4の伝送線71が水中で最も弛んでいるときの状態を示す上面図、
図19Bは
図19Aに示す通常フロート部が反時計回りに90度回転した状態を示す上面図、
図19Cは
図19Aに示す通常フロート部が時計回りに90度回転した状態を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るフロート集合体1について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態に係るフロート集合体1の平面図である。図示の通り、フロート集合体1は、通常フロート部2と、回転中心フロート部3とから構成され、湖Lに浮かべられている。もちろん湖Lは単なる一例であり、水上であればなんでもよい。
【0014】
1.1 通常フロート部2
通常フロート部2は、複数のフロート10(特許請求の範囲における「通常フロート」の一例)が互いに連結されることによって構成される。かかる連結に際しては、プラスチック成形体として形成される通路ジョイント60が用いられる。ここで、通路ジョイント60は、各フロート10の上面においてフロート10と結合されており、通路ジョイント60の連結方向においてフロート10が所定の間隔で結合される。したがって隣接するフロート10間には所定の間隙が形成されている。
【0015】
一方、通路ジョイント60による連結方向と直交する方向の連結は、各フロート10のひさし状の端部10f、10r間を連結することで行っている(
図4参照)。このような構成によって、本来であれば1つのフロート10にかかる荷重を前後のフロート10へ分散することができる。
【0016】
通常フロート部2を構成するフロート10は、例えば数千個(多いものでは1万個)が連結されてなる部分である。これらのフロート10のうち、一部のフロート10には、ソーラパネル50を設置せず、ソーラパネル50の保守点検を行うための通路とされている。また、通路は、ソーラパネル50からのケーブルを敷設するのにも利用されている(ケーブル等の設備は図示省略)。
【0017】
また、
図1に示されるように、通常フロート部2は、全体として矩形形状をなすように構成される。このうち当該矩形の頂点部分に位置するフロート10(特許請求の範囲における「回転用フロート」の一例)には、回転用ワイヤ4が設けられている。この回転用ワイヤ4は、陸上に設置されたウィンチ5(特許請求の範囲における「第2張力発生機構」、「第2ウィンチ」の一例)によって巻取り可能に構成される。すなわち、ウィンチ5を介して回転用ワイヤ4を巻き込んでその位置をずらすことによって、頂点部分に位置するフロート10を引っ張ることができる。そしてこれらのフロート10が引っ張られることによって、
図2に示されるように、通常フロート部2が回転中心フロート部3の周りを独立して回転可能に構成されることに留意されたい。特に、回転範囲は180度未満であればよく、湖Lの水面の大きさ、使用するフロート10の大きさ、ソーラパネル50の設置枚数に合わせて適宜設定することが好ましい。そしてこのような構成の下、ソーラパネル50が太陽の方角に向くように通常フロート部2を日の出から日没までにかけてゆっくりと回転させるとよい。
【0018】
1.2 回転中心フロート部3
回転中心フロート部3は、1つ又は複数のフロート10によって構成される。なお、通常フロート部2を構成するフロート10と同一のフロートを用いてもよいし、異なるフロート10を用いてもよい。
【0019】
図3は、第1実施形態に係るフロート集合体1の部分断面図を示している。前述の通常フロート部2が独立に回転可能に構成されるものに対して、回転中心フロート部3は湖Lの水底に軸用ワイヤ7及び固定部8を介して固定されている。つまり、軸用ワイヤ7の一端が固定部8(例えば、水底に埋め込まれたアンカー又は重量の大きいシンカー等)によって強固に固定され、他端が回転中心フロート部3に繋がっている。具体的には、回転中心フロート部3には、軸用ワイヤ7を巻取り可能に構成されるウィンチ6(特許請求の範囲における「第1張力発生機構」、「第1ウィンチ」の一例)が設けられる。軸用ワイヤ7は、ウィンチ6によってその長さを調節可能に構成される。
【0020】
更に、ウィンチ6によって、軸用ワイヤ7において張力を発生させ且つこれを維持することができる。
図3においては、軸用ワイヤ7にかけられた張力によって、回転中心フロート部3が通常フロート部2に比して水底方向に位置している態様が示されている。このように張力をかけた軸用ワイヤ7を用いることで、回転中心フロート部3の位置及び姿勢が略固定されることとなる。好ましくは、軸用ワイヤ7は比較的伸び縮みの少ない金属製のものが好ましい。
【0021】
前述の通り、通常フロート部2が回転中心フロート部3の周りを回転することとなるが、回転中心フロート部3に着目するなら、回転中心フロート部3及び軸用ワイヤ7が通常フロート部2の回転軸として機能することに留意されたい。これによって、回転に際して通常フロート部2が並進移動することを抑制している。従来であれば、このような回転軸として高コストな柱を別途設ける必要があったが、本実施形態に係るフロート集合体1では、回転軸の機能を軸用ワイヤ7としてコストをかけずに実現することができる。
【0022】
1.3 フロート10
続いて、
図4及び
図5を参照しながら、フロート10について詳述する。
図4は、フロート10の一例を示す斜視図である。また、
図5は、
図4に示されたフロート10にソーラパネルを取り付けた状態を示す斜視図である。
【0023】
図4に示されるように、フロート10は、全体の外形が略矩形形状(長方形状)をしており、パーティングラインPLを含む側壁部15と、上側に位置する表面壁16と、下側に位置する裏面壁17とを有し、内部に気体(空気等)を収容する中空部を有する構造になっている。
【0024】
フロート10は、ソーラパネル50の一対の長手側のうちの前端部51を支持する支持部11と、ソーラパネル50のもう一方の長手側の後端部52を受ける受け部12とを備えている。なお、支持部11の高さは、ソーラパネル50の発電効率を考慮してソーラパネル50が適切な傾斜状態に設置されるように、表面壁16から上方側に突出している。
【0025】
ソーラパネル50の前端部51には、支持部11に支持されるアルミ製の台座が設けられており、この台座が支持部11上に支持される。一方、フロート10は、ソーラパネル50の前端部51側を支持部11に固定する前方側の固定金具13を備えている。そして、ソーラパネル50は、固定金具13にネジ止めされることによって、支持部11に固定される。
【0026】
ソーラパネル50の後端部52にも、前端部51に設けられているアルミ製の台座と同様のアルミ製の台座が設けられている。そして、フロート10は、受け部12に受けられるソーラパネル50の後端部52側(後方側)をフロート10に固定する2つの後方側の固定金具14を備えており、この後方側の固定金具14によって、ソーラパネル50の後方側がフロート10に固定される。
【0027】
フロート10は、例えば、溶融状態の筒状のパリソンを複数の分割金型で挟んで膨らますブロー成形によって製造され、成形材料には、各種の熱可塑性樹脂を使用することができるが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。
【0028】
2.第2実施形態
図6は、第2実施形態に係るフロート集合体1の平面図である。第1実施形態に係るフロート集合体1同様、通常フロート部2と、回転中心フロート部3とから構成され、湖Lに浮かべられている。ここで、第1実施形態に係るフロート集合体1とは異なり、第2実施形態に係るフロート集合体1では、通常フロート部2と回転中心フロート部3との境界において、円滑機構9が設けられていることに留意されたい。
【0029】
通常フロート部2は回転中心フロート部3の周りを回転することとなるが、回転中心フロート部3が角張っているため、第1実施形態においては、当該角張った部分が通常フロート部2の回転の妨げとなるおそれがある。円滑機構9は、
図6に示されるように、例えば略円環状のレールを採用しているので、通常フロート部2がスムーズに回転することが期待できる。もちろん、レールに限定されるものではなく、通常フロート部2と回転中心フロート部3とが接触した際に、通常フロート部2の回転動作を妨げない機構であれば、なんでもよい。
【0030】
3.第3実施形態
図8及び
図11A及び
図12Aに示すように、第3実施形態に係るフロート集合体1は、通常フロート部42と、通路ジョイント60と、調整フロート部42aと、回転中心フロート部43と、連結部44と、内連結部45と、外連結部46と、回転用ワイヤ47と、軸用ワイヤ7と、円滑機構30と、張力発生機構48とを備えている。第3実施形態に係るフロート集合体1は、第1及び第2実施形態と同様に、1軸タイプの回転体であり、第3実施形態に係るフロート集合体1は、回転中心フロート部43を中心として通常フロート部42が回転するように構成されている。また、第3実施形態に係る円滑機構30は、第2実施形態で説明した円滑機構9と同様の機能を有する。
図7に示すように、フロート集合体1の通常フロート部42にはソーラパネル50が取り付けられる。
【0031】
図8~
図9Bに示すように、通常フロート部42、調整フロート部42a及び回転中心フロート部43は、単数又は複数のフロートEを有している。フロートEは第1実施形態のフロート10に対応する構成である。フロートEはフロート10とは形状は異なるが機能は同様である。フロートEには凹状部E1が形成され、凹状部E1には後述する台座部42Aが載置される。
【0032】
3.1 円滑機構30
図11~
図13に示すように、円滑機構30は、回転中心フロート部43の周りを通常フロート部42が回転するように、通常フロート部42と回転中心フロート部43との間に設けられている。
図11~
図12Bに示すように、円滑機構30は、内環状部31と、外環状部32と、介在部33とを備えている。内環状部31、外環状部32及び介在部33は、それぞれ水に浮くように構成される。フロート集合体1を使用するときには、内環状部31、外環状部32及び介在部33は水に浮かんでいる。
【0033】
図11A~
図12Bに示すように、内環状部31は環状に構成され、第3実施形態において、内環状部31は、複数のブロック体BDが環状に配置されて構成されている。内環状部31の内側には回転中心フロート部43が配置されている。内環状部31は回転中心フロート部43に直接又は間接的に連結している。第3実施形態では、内環状部31には、内連結部45と連結する金具45a(例えば、アイボルト)が接続されている。このように、内環状部31は、内連結部45を介して、回転中心フロート部43に連結している。これにより、内環状部31が回転中心フロート部43に対して並進移動したり回転したりすることが抑制されるので、内環状部31が回転中心フロート部43に衝突することが抑制され、その結果、内環状部31の損傷が抑制される。内環状部31の外周には複数の介在部33が配置されている。
【0034】
図11~
図12Bに示すように、外環状部32も内環状部31と同様に環状に構成され、第3実施形態において、外環状部32は、複数のブロック体BDが環状に配置されて構成されている。外環状部32は内環状部31及び介在部33の外側に配置されている。
図13に示すように、外環状部32の外側には通常フロート部42が配置されている。外環状部32は通常フロート部42に直接又は間接的に連結している。第3実施形態では、外環状部32には、外連結部46と連結する金具46a(例えば、アイボルト)が接続されている。このように、外環状部32は、外連結部46を介して通常フロート部42に連結しており、外環状部32及び通常フロート部42は一体的に回転する。
【0035】
図11~
図12Bに示すように、ブロック体BDは弧状に形成されており、第3実施形態において、内環状部31は10個のブロック体BDを備え、外環状部32は16個のブロック体BDを備えている。内環状部31のブロック体BDと外環状部32のブロック体BDとは同じ構成である。このように、ブロック体BDは内環状部31及び外環状部32の両方に用いられており、円滑機構30の製造コストが抑制されている。
図11Bに示すように、内環状部31は固定部材31Bを有する。固定部材31Bはブロック体BDの外周面に設けられ、固定部材31Bは隣接する一対のブロック体BDを固定している。
図11C及び
図11Dに示すように、外環状部32は固定部材32A及び固定部材32Bを有する。固定部材32Aはブロック体BDの外周面に設けられ、固定部材32Bはブロック体BDの内周面に設けられ、固定部材32A及び固定部材32Bは隣接する一対のブロック体BDを固定している。
【0036】
図11A、
図12A及び
図12Bに示すように、介在部33は、内環状部31と外環状部32との間に配置される。介在部33の水平断面形状は円形であり、第3実施形態では介在部33は球状に形成されている。ここで、この水平断面は、水面Wに平行な断面である。介在部33の水平断面形状は円形であるので、外環状部32と介在部33との摩擦が抑制され、その結果、外環状部32の回転が円滑化されるとともに外環状部32及び介在部33の損傷が抑制される。なお、介在部33は球状である必要はなく、介在部33は、例えば円柱状に形成されていてもよい。
【0037】
また、介在部33は、内環状部31と外環状部32との間の円環状の領域に密に配置されていることが好ましいが、介在部33は、この円環状の領域に敷き詰められていなくてもよい。ここで、この円環状の領域にどの程度数の介在部33を配置することが好ましいかについて説明する。介在部33が配置される円環状の領域を二等分し、一方の領域を第1領域と定義し、他方の領域を第2領域と定義する。第1及び第2領域は共に半円弧状の領域である。介在部33がこの円環状の領域に敷き詰められていない場合には、波の作用や通常フロート部42が回転する作用等により、介在部33の分布が第1領域に偏ってしまうことがある。介在部33の分布が第1領域に偏ると、第2領域において内環状部31と外環状部32とが接触し、通常フロート部42の回転が阻害されたり、内環状部31及び外環状部32が損傷したりする。このため、円滑機構30は、最小値N以上の介在部33を備えていることが好ましい。最小値Nは、介在部33を第1領域の端から順番に詰めて配置していくときにおいて、介在部33が第1領域に配置できなくなり、介在部33が初めて第2領域にはみ出すときの介在部33の数である。円滑機構30が最小値N以上の介在部33を備えることで、介在部33の分布が第1領域に偏ってしまったとしても、第2領域には少なくとも1つの介在部33が位置することになり、第2領域において内環状部31と外環状部32とが接触することが回避される。その結果、通常フロート部42の回転が阻害されたり、内環状部31及び外環状部32が損傷したりすることが抑制される。
【0038】
このように、第3実施形態に係るフロート集合体1は摺動部材としての円滑機構30を備えることで、中心軸としての回転中心フロート部43と、ソーラパネル50が設けられる通常フロート部42とが非連結で構成されているにもかかわらず、通常フロート部42が回転中心フロート部43の周りを回転可能になっている。
【0039】
3.2 通常フロート部42及び通路ジョイント60
図8に示すように、通常フロート部42はフロート列F1~F7を有し、フロート列F1~F7は複数のフロートEを有する。実施形態3において、フロート列は円滑機構30の周囲に7列配置されている。なお、フロート列の列数は7列に限定されるものではない。通路ジョイント60は各フロート列の通常フロート部42を連結するように設けられている。
【0040】
図8に示すように、フロート列F1は通常フロート部42の一方の端に配置され、フロート列F7は通常フロート部42の他方の端に配置されている。つまり、フロート列F1、F7は通常フロート部42の外側部に配置されている。フロート列F2~F6はフロート列F1とフロート列F7との間に配置されている。フロート列F3は、円滑機構30によって、2個の互いに連結しているフロートEと、1個のフロートEと、に分割されている。フロート列F4、F5も同様である。フロート列F1において、隣接するフロートEは連結しており、また、6個のフロートEが直線状に並んでいる。フロート列F2、F6、F7においても、同様である。隣接するフロート列の間には間隔が設けられている。つまり、フロート列F1~F7は互いに独立して水上に浮かべられている。
【0041】
図8及び
図9Bに示すように、通常フロート部42は、台座部42Aと、引掛部42Bとを有する。台座部42Aはブロック状部材である。台座部42AはフロートE上に配置され、台座部42Aは連結部44を支持している。台座部42AはフロートEに固定されている。台座部42Aはフロート列F2~フロート列F6のフロートEに設けられている。引掛部42Bは、固定部42B1と弧状部42B2とを有する。固定部42B1は台座部42Aに固定される。弧状部42B2は固定部42B1に取り付けられ、弧状部42B2には回転用ワイヤ47が引っ掛けられるように弧状に形成されている。弧状部42B2は環状に形成されていないが、弧状部42B2は回転用ワイヤ47の上方において湾曲するように延びており、回転用ワイヤ47が弧状部42B2から外れにくくなっている。引掛部42Bはフロート列F1~F3、F5~F7のフロートEに設けられている。
【0042】
3.3 調整フロート部42a
図8及び
図9Aに示すように、フロート集合体1は2個の調整フロート部42aを有する。各調整フロート部42aは1個のフロートEを有する。各調整フロート部42aは通常フロート部42と陸上G側との間に配置されており、各調整フロート部42aは通常フロート部42とは独立している。ここで、張力発生機構48は陸上Gに配置されているので、張力発生機構48は通常フロート部42よりも高所に設けられる。このため、張力発生機構48側から通常フロート部42側に向かう方向において、回転用ワイヤ47が水面Wに対して下側に傾斜しやすくなる。つまり、回転用ワイヤ47と水面Wとがなす角度が大きくなりやすくなる。回転用ワイヤ47と水面Wとがなす角度が大きくなると、回転用ワイヤ47が通常フロート部42の引掛部42Bから外れる可能性が高まる。しかし、フロート集合体1は調整フロート部42aを有するので、回転用ワイヤ47のうち調整フロート部42aから通常フロート部42までの部分と、水面Wと、がなす角度が大きくなることが抑制される。つまり、
図11に示すように、回転用ワイヤ47は、調整フロート部42aから通常フロート部42へ、水面Wに平行又は略平行に導かれる。これにより、回転用ワイヤ47が通常フロート部42の引掛部42Bから外れる可能性が低減する。
【0043】
図9Aに示すように、各調整フロート部42aは図示省略の台座部42a1と引掛部42a2とを有する。各調整フロート部42aの台座部42a1は台座部42Aと同様の構成である。引掛部42a2は固定部42a3と環状部42a4とを有する。固定部42a3は台座部42a1に固定され、環状部42a4は固定部42a3に取り付けられている。環状部42a4は環状に形成されており、回転用ワイヤ47は環状部42a4に挿通している。環状部42a4は環状に形成されているので、回転用ワイヤ47が環状部42a4から外れてしまうことが防止される。
【0044】
3.4 回転中心フロート部43及び軸用ワイヤ7
図11Aに示すように、回転中心フロート部43は、1個のフロートEを有する。回転中心フロート部43は円滑機構30の内側に配置されている。回転中心フロート部43のフロートEの数は1個に限定されるものではなく、複数であってもよい。第1実施形態と同様に、回転中心フロート部43は、通常フロート部42よりも水底部側に位置する。また、
図10に示すように、第1実施形態と同様に、軸用ワイヤ7の一端は固定部(図示省略)によって強固に固定され、軸用ワイヤ7の他端は回転中心フロート部43のフロートEに繋がっている。そして、この軸用ワイヤ7の長さは、図示省略の第1張力発生機構によって調節される。回転中心フロート部43が軸用ワイヤ7に繋がっているので、その分、回転中心フロート部43は軸用ワイヤ7によって引き下げられる。これにより、内環状部31の上端面は、回転中心フロート部43の全体よりも、水面Wから高い位置に設けられる
【0045】
図11Aに示すように、回転中心フロート部43は、台座部43Aとレール部43Bとを有する。台座部43Aの構成は台座部42Aと同様であり、台座部43AはフロートEに固定されている。台座部43A上にはレール部43Bが固定されている。レール部43Bは、内連結部45に連結している。上述のように、回転中心フロート部43が軸用ワイヤ7によって引き下げられるので、レール部43Bの高さ位置が、内環状部31よりも高くなることが回避される。これにより、レール部43Bが内連結部45を介して内環状部31を持ち上げてしまうことが回避され、その結果、内環状部31が水面Wから上側に離れてしまうことが回避される。
【0046】
3.5 連結部44
図8に示すように、連結部44は通常フロート部42の複数のフロートEを連結している。連結部44は矩形状をなしており、連結部44は円滑機構30を取り囲むように配置されている。連結部44には、外連結部46に連結する部材(例えば、アイボルト)が接続されている。連結部44はレール状に形成された辺部44A~44Dを有する。辺部44A~44Dは通常フロート部42の台座部42A上に固定されている。辺部44Aは辺部44C及び辺部44Dに連結しており、辺部44Bも辺部44C及び辺部44Dに連結している。辺部44B~44Dも同様である。辺部44Aは通常フロート部42のフロート列F2に設けられ、辺部44Bは通常フロート部42のフロート列F6に設けられている。辺部44C及び辺部44Dは通常フロート部42のフロート列F2~F6に設けられている。
【0047】
3.6 内連結部45及び外連結部46
図8及び
図11Aに示すように、内連結部45は内環状部31と回転中心フロート部43とを連結する。具体的には、内連結部45は回転中心フロート部43のレール部43Bに連結している。外連結部46は外環状部32と連結部44を連結する。内連結部45及び外連結部46は、例えばターンバックル又は手巻きジャッキ等で構成することができる。
【0048】
3.7 回転用ワイヤ47
図8及び
図13に示すように、回転用ワイヤ47は、通常フロート部42に引っ掛けられている。
図13及び
図14に示すように、回転用ワイヤ47が引っ張られることによって、通常フロート部42は回転中心フロート部43及び円滑機構30の周りを回転する。このとき、通常フロート部42と連結部44と外連結部46と外環状部32は一体的に回転し、内環状部31と内連結部45と回転中心フロート部43は回転しない。回転用ワイヤ47の一端は通常フロート部42に固定され、回転用ワイヤ47の他端は陸上G側に設けられている。ここで、陸上Gとは張力発生機構48が配置されている場所を指し、陸上Gは例えば湖を取り囲む陸地上でもよいし、湖内に設けた埋立地上であってもよい。回転用ワイヤ47は、第1ワイヤ47Aと第2ワイヤ47Bとを有する。
【0049】
図8及び
図9Bに示すように、第1ワイヤ47A及び第2ワイヤ47Bは、通常フロート部42のうち外部側に配置されているフロートEに引っ掛けられている。具体的には、第1ワイヤ47Aの一端は通常フロート部42のフロート列F3の引掛部42Bに固定され、第1ワイヤ47Aの他端は陸上G側に設けられている。
図8及び
図9Aに示すように、第1ワイヤ47Aの一端側と他端側との間の部分は、通常フロート部42のフロート列F1の引掛部42Bに引っ掛けられるとともに、調整フロート部42aの環状部42a4に挿通している。また、
図8に示すように、第2ワイヤ47Bの一端は通常フロート部42のフロート列F5の引掛部42Bに固定され、第2ワイヤ47Bの他端は陸上G側に設けられている。第2ワイヤ47Bの一端側と他端側との間の部分は、通常フロート部42のフロート列F7の引掛部42Bに引っ掛けられるとともに、調整フロート部42aの環状部42a4に挿通している。このように、第1ワイヤ47A及び第2ワイヤ47Bが通常フロート部42のうち最外部に配置されているフロートEに引っ掛けられているので、その分、第1ワイヤ47A又は第2ワイヤ47Bから通常フロート部42に作用する回転トルクが大きくなり、その結果、張力発生機構48が通常フロート部42を回転させるときに張力発生機構48が必要とする動力が低減する。この回転トルクを大きくする観点において、第1ワイヤ47A及び第2ワイヤ47Bは、通常フロート部42のうちの最外部に配置されているフロートEに引っ掛けられていることが好ましいが、この配置に限定されるものではない。具体的には、第1ワイヤ47A又は第2ワイヤ47Bが引っ掛けられているフロートEの外側にフロートE(ここでは、最外部フロートと称する)が配置されていてもよい。つまり、第1ワイヤ47A及び第2ワイヤ47Bは、通常フロート部42のうちの最外部に配置されておらず、通常フロート部42のうちの外部側に配置されていてもよい。このような配置であっても、第1ワイヤ47A又は第2ワイヤ47Bから通常フロート部42に作用する回転トルクを大きくすることができる。なお、第1ワイヤ47A又は第2ワイヤ47Bが引っ掛けられているフロートEの外側には、ソーラパネル50を配置しないため、上述した最外部フロートは、通路として機能するフロートである。
【0050】
3.8 張力発生機構48
張力発生機構48は、回転用ワイヤ47を巻き取るとともに回転用ワイヤ47を送り出す機構を有する。張力発生機構48には、例えば、駆動装置(モーター)により駆動されるエンドレスウィンチを採用することができる。張力発生機構48が回転用ワイヤ47を巻き取とると、回転用ワイヤ47には張力が発生し、通常フロート部42及び外環状部32が回転中心フロート部43を中心として回転する。張力発生機構48はエンドレスウィンチに限定されるものではなく、張力発生機構48は手動で動かすウィンチで構成することもできる。更に、第3実施形態は、フロート集合体1が張力発生機構48を備える形態であるが、フロート集合体1が張力発生機構48を備えていなくてもよい。例えば、人間が回転用ワイヤ47を引っ張ることで、人間が通常フロート部42及び外環状部32を回転させてもよい。
【0051】
4.変形例
本実施形態に係るフロート集合体1は、以下の態様によっても実施することができる。
【0052】
第1に、前述の第1及び第2実施形態では、ウィンチ5を陸上に配置しているが、ウィンチ5を通常フロート部2の頂点に位置するフロート10に設けてもよい。かかる場合は、陸上においては回転用ワイヤ4を固定する必要がある。このような構成によっても、通常フロート部2が回転中心フロート部3及び軸用ワイヤ7の周りを回転することができる。
【0053】
第2に、前述の第1及び第2実施形態では、回転用ワイヤ4とウィンチ5とによって通常フロート部2が回転中心フロート部3及び軸用ワイヤ7の周りを回転するように構成されているが、これらに代えて、通常フロート部2の下面に設けたスクリュー等によって、通常フロート部2が回転中心フロート部3及び軸用ワイヤ7の周りを回転するように実施してもよい。
【0054】
第3に、フロート集合体1又は陸地付近において、不図示の水位センサと制御手段とを設けてもよい。特に雨等天候状況によって、湖Lの水位が変化することが往々にして想定されうる。そこでかかる水位センサによる水位の観測結果に基づいて、制御手段が軸用ワイヤ7の長さや張力を適宜調整するようにウィンチ6を制御することで、軸用ワイヤ7への負荷を軽減し、より安定的に回転軸たる機能を維持することができる。
【0055】
第4に、フロート集合体1又は陸地付近において、不図示の風速センサと制御手段とを設けてもよい。特に台風等の悪天候時には、回転用ワイヤ4や軸用ワイヤ7に過大な負荷がかかって、最悪の場合には切断されてしまうといった懸念がある。そこでかかる風速センサが所定の風速以上を観測した場合には、制御手段が回転用ワイヤ4や軸用ワイヤ7を意図的に長尺化するようにウィンチ5やウィンチ6を制御することで、回転用ワイヤ4や軸用ワイヤ7への負荷を軽減し、より安定的にフロート集合体1を実施することができる。
【0056】
第5に、軸用ワイヤ7は必ずしも水底に固定されていなくてもよい。例えば、水中であって水底よりも高い位置に設けられた桟橋や、橋状に延びる補助ワイヤ等に軸用ワイヤ7を固定してもよい。すなわち、軸用ワイヤ7がフロート集合体1から水中に向かうように構成されていればよい。
【0057】
第6に、第1及び第2実施形態では、通常フロート部2が回転中心フロート部3の周りを回転するように構成されているが、張力をかけられた軸用ワイヤ7によってフロート集合体1が係留され且つフロート集合体1が回転可能に構成されていれば、これ以外の形態で実施してもよい。例えば、軸用ワイヤ7の一端にボールジョイント機構を取り付けてこれを水中に固定すれば、フロート集合体1が軸用ワイヤ7とともに回転するように実施することもできる。かかる場合、回転中心フロート部3が必要なく、フロート集合体1を全体として通常フロート部2によって構成することができる。或いは、フロート集合体1の略中央に位置するフロートの裏面にボールジョイント機構を取り付ければ、軸用ワイヤ7は固定されつつもフロート集合体1が全体として回転するように実施することもできる。
【0058】
第7に、回転中心フロート部3は、略回転軸を規定するためにあればよく、必ずしも略中央部に位置する必要はない。すなわち、第1及び第2実施形態においては回転中心フロート部3の周りを通常フロート部2が自転するものであるが、回転中心フロート部3が通常フロート部2の横に位置し、通常フロート部2が回転中心フロート部3の周りを公転するものであってもよい。
【0059】
第8に、
図15A及び
図15Bに示すように、円滑機構30は、複数の区画部35を備えていてもよい。複数の区画部35は、内環状部31と外環状部32との空間に環状に配置されている。一対の隣接する区画部35の間には、1個の介在部33が配置されている。このように、円滑機構30が複数の区画部35を備えることで、内環状部31と外環状部32との空間に複数の介在部33を敷き詰めなくても、内環状部31の周方向における複数の介在部33の分布が偏ることが抑制される。これにより、円滑機構30が備える介在部33の数を低減しても、介在部33の機能がより確実に発揮される。
【0060】
第9に、
図16A及び
図16Bに示すように、介在部33には、平坦な上端面33A1及び平坦な下端面33A2が形成されていてもよい。これにより、介在部33は、上下方向に平行な軸を中心として回転しやすくなる。つまり、介在部33は水平方向に平行な軸を中心として回転しにくくなるので、介在部33の無駄な回転、すなわち介在部33の回転うち外環状部32の円滑な回転に寄与しにくい回転が抑制される。これにより、介在部33と内環状部31との摩擦や介在部33と外環状部32との摩擦が抑制され、その結果、内環状部31、外環状部32及び介在部33の破損等が抑制される。また、介在部33には、
図16A及び
図16Bに示すように、貫通孔33Bが形成されていてもよい。これにより、貫通孔33Bに水が流入し、介在部33の姿勢が安定化する。その結果、介在部33は、上下方向に平行な軸を中心として更に回転しやすくなり、介在部33の無駄な回転が更に抑制される。
【0061】
第10に、
図17A及び
図17Bに示すように、円滑機構30は屋根部34を備えていてもよい。屋根部34は、介在部33の上側に配置されている。また、屋根部34は外環状部32に固定されている。なお、屋根部34は内環状部31に固定されていてもよい。円滑機構30が屋根部34を備えることで、介在部33が内環状部31と外環状部32との間から飛び出してしまうことを防止することができる。
【0062】
第11に、
図18Aに示すように、フロート集合体1は、数百のフロートEを有する通常フロート部42と、複数個のフロートEを有する回転中心フロート部43と、円滑機構30とを備えていてもよい。また、第3実施形態において、通常フロート部42の上面視形状は略矩形状であったが、
図18Aに示すように、本変形例4の通常フロート部42の上面視形状は略円形となっており、通常フロート部42は回転中心フロート部43を中心として回転しやすくなっている。また、
図18A及び
図18Bに示すように、通常フロート部42は、ソーラパネル50が配置されるフロートEと、各ソーラパネル50から延びる配線がまとめられているフロート70とを有する。フロート70には接続箱(図示省略)が設置されており、各ソーラパネル50から延びる配線は、この接続箱に電気的に接続されている。つまり、フロート70の接続箱は、各ソーラパネル50から延びる配線をまとめる機能を有する。また、フロート70の接続箱には、伝送線71が接続されている。伝送線71は、ソーラパネル50と、パワーコンディショナー(図示省略)とを電気的に接続する機能を有し、ソーラパネル50で発電された電力は伝送線71を介してパワーコンディショナーへ伝達される。本変形例4において、パワーコンディショナーは水上に設けられているが、陸上に設けられていてもよい。なお、伝送線71を通常フロート部42のフロートE同士の隙間に通すことで、伝送線71を水中に引き込んでもよいし、また、伝送線71を外環状部32(
図13参照)と連結部44との間に通すことで、伝送線71を水中に引き込んでもよい。
【0063】
通常フロート部42が回転中心フロート部43を中心として回転すると、伝送線71も通常フロート部42とともに移動する。
図19A~
図19Cにおいて、伝送線71の実線部分は伝送線71が水面上に設けられていることを示し、伝送線71の破線部分は伝送線71が水面下に設けられていることを示している。
図19Aに示す状態では、フロート70と陸上側(パワーコンディショナー)との距離が最短になっているため、伝送線71は水面下で弛んでいる。一方、
図19B及び
図19Cに示す状態では、フロート70と陸上側(パワーコンディショナー)との距離が遠くなり、伝送線71の弛み度合いが小さくなる。
【0064】
ここで、伝送線71の長さが短すぎると、通常フロート部42の回転が阻害されてしまい、また、伝送線71の長さが長過ぎると、伝送線71が通常フロート部42の回転に滑らかに追従しにくくなる。このため、伝送線71の長さは、適度な余裕が確保されるように設定されている。また、通常フロート部42が回転したときにおける伝送線71の移動量は、フロート70が通常フロート部42のうちの外部側に配置されている場合よりも、フロート70が通常フロート部42のうちの内部側(中心側)に配置されている場合の方が、小さくなる。このため、
図18A及び
図18Bに示すように、フロート70は通常フロート部42のうちの内部側(中心側)に配置されている。これにより、通常フロート部42が回転したとしても、伝送線71の移動が抑制されるので、伝送線71の長さを、上述したように適度な余裕が確保される長さに設定しやすくなる。その結果、伝送線71同士が絡まることが回避され、また、伝送線71の移動が抑制される分、伝送線71の劣化が抑制される。
【0065】
5.結言
以上のように、本実施形態によれば、ソーラパネルの保持安定性を維持した上で従来よりも安価に製造可能なフロート及びこのようなフロートを含むフロート集合体と、より水上での使用に適した風圧対策を備えるフロートを含むフロート集合体と、より電源ケーブルの配線が整理されたフロート集合体とを提供することができる。
【0066】
本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
1 :フロート集合体
2 :通常フロート部
3 :回転中心フロート部
4 :回転用ワイヤ
5 :ウィンチ
6 :ウィンチ
7 :軸用ワイヤ
8 :固定部
9 :円滑機構
10 :フロート
10f :端部
10r :端部
11 :支持部
12 :受け部
13 :固定金具
14 :固定金具
15 :側壁部
16 :表面壁
17 :裏面壁
30 :円滑機構
31 :内環状部
31B :固定部材
32 :外環状部
32A :固定部材
32B :固定部材
33 :介在部
34 :屋根部
35 :区画部
42 :通常フロート部
42A :台座部
42B :引掛部
42B1 :固定部
42B2 :弧状部
42a :調整フロート部
42a1 :引掛部
42a2 :固定部
42a3 :環状部
43 :回転中心フロート部
43A :台座部
43B :レール部
44 :連結部
44A :辺部
44B :辺部
44C :辺部
44D :辺部
45 :内連結部
45a :金具
46 :外連結部
46a :金具
47 :回転用ワイヤ
47A :第1ワイヤ
47B :第2ワイヤ
48 :張力発生機構
BD :ブロック体
E :フロート
E1 :凹状部
F1 :フロート列
F2 :フロート列
F3 :フロート列
F4 :フロート列
F5 :フロート列
F6 :フロート列
F7 :フロート列
50 :ソーラパネル
51 :前端部
52 :後端部
60 :通路ジョイント
70 :フロート
71 :伝送線
L :湖
PL :パーティングライン