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特許7181457シートベルト装置、及びシートベルト装置を備えた車両用シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】シートベルト装置、及びシートベルト装置を備えた車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/48 20060101AFI20221124BHJP
   B60R 22/00 20060101ALI20221124BHJP
   B60R 22/26 20060101ALI20221124BHJP
   B60N 2/14 20060101ALI20221124BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20221124BHJP
   B60N 2/10 20060101ALI20221124BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B60R22/48 102
B60R22/00 207
B60R22/26
B60N2/14
B60N2/58
B60N2/10
B60N2/42
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018230762
(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公開番号】P2020093571
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 仁一
(72)【発明者】
【氏名】迫田 將裕
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-079363(JP,A)
【文献】特開2018-047794(JP,A)
【文献】特開2004-009967(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008026410(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00-22/48
B60N 2/00- 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の左肩を拘束する左ベルト部分及び前記乗員の右肩を拘束する右ベルト部分を含むシートベルトと、
前記左ベルト部分に張力を与える左リトラクタ及び前記右ベルト部分に張力を与える右リトラクタを含む一対のリトラクタと、
前記乗員に加わる左右方向の横加速度を取得する横加速度取得部と、
前記横加速度取得部によって取得された前記横加速度が右方向であるときに前記左リトラクタを駆動し、前記横加速度取得部によって取得された前記横加速度が左方向であるときに前記右リトラクタを駆動する制御部とを有するシートベルト装置。
【請求項2】
前記左ベルト部分が着座した前記乗員の腰前面から左方に延びる左ラップベルトと、前記左ラップベルトに一端が結合され、上方に延び、着座した前記乗員の左肩の前面を通過する左ショルダベルトとを含み、
前記右ベルト部分が着座した前記乗員の腰前面から右方に延びる右ラップベルトと、前記右ラップベルトに一端が結合され、上方に延び、着座した前記乗員の右肩の前面を通過する右ショルダベルトとを含み、
前記左ラップベルト及び前記右ラップベルトが前記乗員の腰前面において互いに着脱可能に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のシートベルト装置。
【請求項3】
前記左ベルト部分が前記乗員の前記左肩から右腰に掛けて延在し、
前記右ベルト部分が前記乗員の前記右肩から左腰に掛けて延在し、
前記左ベルト部分及び前記右ベルト部分が正面視で互いに交差していることを特徴とする請求項1に記載のシートベルト装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記横加速度取得部によって取得された前記横加速度の大きさが所定の第1閾値以上であるときには、前記左リトラクタ及び前記右リトラクタを駆動させ、
前記横加速度取得部によって取得された前記横加速度の大きさが所定の第2閾値以上前記第1閾値未満であり、且つ前記横加速度の向きが右方向であるときには、前記左リトラクタを駆動させ、
前記横加速度取得部によって取得された前記横加速度の大きさが所定の第2閾値以上前記第1閾値未満であり、且つ前記横加速度の向きが左方向であるときには、前記右リトラクタを駆動させることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1つの項に記載のシートベルト装置。
【請求項5】
前記制御部は前記横加速度が増加するにつれて、与える張力を増加させるべく対応する前記リトラクタを駆動させることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1つの項に記載のシートベルト装置。
【請求項6】
前記乗員に加わる前後方向の縦加速度及び上下方向の上下加速度をそれぞれ取得する補助加速度取得部を有し、
前記制御部は、前記縦加速度が後方を向き、且つ前記縦加速度の大きさが所定の後方閾値以上であるとき、又は前記上下加速度が下方を向き、且つ前記上下加速度の大きさが所定の下方閾値以上であるときには、前記左リトラクタ及び前記右リトラクタの両方を駆動させることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1つの項に記載のシートベルト装置。
【請求項7】
請求項1~請求項3のいずれか1つのシートベルト装置を有し、車両に搭載される車両用シートであって、
車室内のフロアに載置され、前記乗員の臀部を支持するシートクッションと、
前記乗員の背中を支持するシートバックとを有し、
前記左ベルト部分の下端及び前記右ベルト部分の下端がそれぞれ前記シートクッションに結合され、
前記左リトラクタは前記シートバック又は前記シートクッションのいずれか一方に支持され、前記左ベルト部分の上端を巻き取り、
前記左リトラクタは前記シートバック又は前記シートクッションのいずれか一方に支持され、前記右ベルト部分の上端を巻き取ることを特徴とする車両用シート。
【請求項8】
前記横加速度取得部は前記シートバック又は前記シートクッションの少なくとも一方に支持された加速度センサを含むことを特徴とする請求項7に記載の車両用シート。
【請求項9】
前記横加速度取得部は前記車両の操舵角を取得する舵角センサ、又は、前記車両に搭載され、前記横加速度取得部が保持する地図情報、前記車両の位置、及び前記車両の走行スケジュールを保持するカーナビゲーションシステムを含むことを特徴とする請求項7に記載の車両用シート。
【請求項10】
前記フロアに上下方向を軸線とする回転可能に支持されていることを特徴とする請求項8に記載の車両用シート。
【請求項11】
前記シートクッション及び前記シートバックはそれぞれ骨格を形成するフレームと、前記フレームに支持されたパッド部材と、前記パッド部材の表面の少なくとも一部を覆う表皮材とを含むことを特徴とする請求項7~請求項10のいずれか1つの項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座した乗員を車両用シートに拘束するためのシートベルト装置、及び当該シートベルト装置を備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗員の上半身の横揺れを抑制することによって、乗物酔いを低減することのできる車両用シートが公知である(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の車両用シートにおいて、シートバックの上部は下部に比べて乗員の上半身の側方への移動に対して高い支持抵抗を有している。これにより、乗員の上半身の側方への移動及び横揺れが効果的に抑えられる。
【0003】
横加速度発生時に乗員の疲労を低減するための車両用シートが公知である(例えば、特許文献2)。特許文献2の車両用シートは3点式のシートベルトを備え、横加速度が発生したときにシートベルトを予め設定した所定の張力にて乗員をシートバック側に締め付ける。これにより、乗員とシートバックとの間の摩擦力が増加し、乗員の上半身の移動が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/160990号
【文献】特開2005-253867号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両用シートでは、乗員がシートバックに凭れかかることによって生じる支持抵抗によって、乗員の上半身の左右方向への移動が防止される。しかし、乗員からシートバックに加わる荷重が小さいときには、乗員の上半身を固定するために十分な支持抵抗が得られず、乗物酔いの低減効果が不十分となるという問題がある。
【0006】
特許文献2の車両用シートでは、シートベルトは予め決められた左右一方側の肩に掛け渡されて一方側の肩を拘束する。乗員に拘束された肩とは逆の側に向く慣性力が加わると、拘束された肩がシートベルトから離脱し、乗員の上半身の拘束が不十分となる虞がある。
【0007】
本発明は、以上の背景を鑑み、シートベルトを含むシートベルト装置又はシートベルト装置を備えた車両用シートにおいて、乗員の上半身の移動をより確実に防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、シートベルト装置(1、51、71、81、91)が、乗員の左肩を拘束する左ベルト部分(21L、52L)及び前記乗員の右肩を拘束する右ベルト部分(21R、52R)を含むシートベルト(21、52)と、前記左ベルト部分に張力を与える左リトラクタ(22L)及び前記右ベルト部分に張力を与える右リトラクタ(22R)を含む一対のリトラクタ(22)と、前記乗員に加わる左右方向の横加速度を取得する横加速度取得部(23)と、前記横加速度取得部によって取得された前記横加速度が右方向であるときに前記左リトラクタを駆動し、前記横加速度取得部によって取得された前記横加速度が左方向であるときに前記右リトラクタを駆動する制御部(24)とを有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、右方向の横加速度によって乗員に左方向の慣性力が加わると、左リトラクタが駆動して左ベルト部分に張力が与えられる。左方向の横加速度によって乗員に右方向の慣性力が加わると、右リトラクタが駆動して右ベルト部分に張力が与えられる。このように、乗員の肩により確実に掛け渡された状態にある乗員の移動方向側に位置するベルト部分に張力が加えることができるため、慣性力の方向に依らず乗員の上半身の移動をより確実に防止することができる。
【0010】
また、上記の態様において、前記左ベルト部分が着座した前記乗員の腰前面から左方に延びる左ラップベルト(26L)と、前記左ラップベルトに一端が結合され、上方に延び、着座した前記乗員の左肩の前面を通過する左ショルダベルト(27L)とを含み、前記右ベルト部分が着座した前記乗員の腰前面から右方に延びる右ラップベルト(26R)と、前記右ラップベルトに一端が結合され、上方に延び、着座した前記乗員の右肩の前面を通過する右ショルダベルト(27R)とを含み、前記左ラップベルト及び前記右ラップベルトが前記乗員の腰前面において互いに着脱可能に接続されているとよい。
【0011】
この構成によれば、3点式のシートベルトに比べて、乗員の上半身をシートバックにより確実に拘束できる。また、右ベルト部分が乗員の右肩に掛け渡された右ショルダベルトを含み、左ベルト部分が乗員の左肩に掛け渡された左ショルダベルトを含むため、それぞれのショルダベルトに張力を加えることで乗員の左右いずれの肩もシートバックに押付けることができる。これにより、乗員の慣性力によって移動する方向側の肩を選択して、ショルダシートベルトに張力を与えることで、より確実に乗員の肩をシートバックに押付けることができ、乗員の移動を防止することができる。
【0012】
また、上記の態様において、前記左ベルト部分(52L)が前記乗員の前記左肩から右腰に掛けて延在し、前記右ベルト部分(52R)が前記乗員の前記右肩から左腰に掛けて延在し、前記左ベルト部分及び前記右ベルト部分が正面視で互いに交差しているとよい。
【0013】
この構成によれば、3点式のシートベルトに比べて、乗員の上半身をシートバックにより確実に拘束できる。また、右ベルト部分及び左ベルト部分がそれぞれ対応する左右両肩に掛け渡され、右ベルト部分及び左ベルト部分にそれぞれ張力を与えることで、乗員の左右両肩をそれぞれ優先的にシートバックに押付けることができる。
【0014】
また、上記の態様において、前記制御部は、前記横加速度取得部によって取得された前記横加速度の大きさが所定の第1閾値以上であるときには、前記左リトラクタ及び前記右リトラクタを駆動させ、前記横加速度取得部によって取得された前記横加速度の大きさが所定の第2閾値以上前記第1閾値未満であり、且つ前記横加速度の向きが右方向であるときには、前記左リトラクタを駆動させ、前記横加速度取得部によって取得された前記横加速度の大きさが所定の第2閾値以上前記第1閾値未満であり、且つ前記横加速度の向きが左方向であるときには、前記右リトラクタを駆動させるとよい。
【0015】
この構成によれば、乗員に左右片側のみのリトラクタの駆動ではシートバックへの拘束が不十分である第1閾値以上の横加速度の領域において、左右両方のリトラクタを駆動させることで、乗員をより強固にシートバックに拘束して乗員を保護することができる。
【0016】
また、上記の態様において、前記制御部は前記横加速度が増加するにつれて、与える張力を増加させるべく対応する前記リトラクタを駆動させるとよい。
【0017】
この構成によれば、乗員に加わる慣性力が増大すると、対応するリトラクタが与える張力が増加し、乗員がシートバックにより強く拘束される。これにより、横加速度の増加に従って乗員の上半身とシートバックとの間の摩擦力を増加させることができるため、乗員の上半身の移動をより確実に防止することができる。
【0018】
また、上記の態様において、前記乗員に加わる前後方向の縦加速度及び上下方向の上下加速度をそれぞれ取得する補助加速度取得部(73)を有し、前記制御部は、前記縦加速度が後方を向き、且つ前記縦加速度の大きさが所定の後方閾値以上であるとき、又は前記上下加速度が下方を向き、且つ前記上下加速度の大きさが所定の下方閾値以上であるときには、前記左リトラクタ及び前記右リトラクタの両方を駆動させるとよい。
【0019】
この構成によれば、乗員に前方又は上方に大きな慣性力が働くときに左右のリトラクタが駆動し、上半身がシートバックから離れる方向に作用する慣性力に抗するように荷重を加えることができる。これにより、乗員に安定感を与えることができ、乗物酔いを低減することができる。
【0020】
また、上記の態様のいずれか1つのシートベルト装置を有し、車両に搭載される車両用シート(2)であって、車室(3)内のフロア(4)に載置され、前記乗員の臀部を支持するシートクッション(5)と、前記乗員の背中を支持するシートバック(6)とを有し、前記左ベルト部分の下端及び前記右ベルト部分の下端がそれぞれ前記シートクッションに結合され、前記左リトラクタは前記シートバック又は前記シートクッションのいずれか一方に支持され、前記左ベルト部分の上端を巻き取り、前記左リトラクタは前記シートバック又は前記シートクッションのいずれか一方に支持され、前記右ベルト部分の上端を巻き取ることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、車両用シートの車室内の位置や向きに依らず、シートベルト装置によって乗員を上半身の移動を防止することができる。
【0022】
また、上記の態様において、前記横加速度取得部は前記シートバック又は前記シートクッションの少なくとも一方に支持された加速度センサを含むとよい。
【0023】
この構成によれば、加速度センサを乗員の近傍に設けることができるため、乗員の身体に加わる横加速度をより正確に且つ簡素に取得することができる。これにより、対応する乗員の肩をより確実にシートバックに押付けることができ、乗員の慣性力による移動をより確実に防止することができる。
【0024】
また、上記の態様において、前記横加速度取得部は前記車両の操舵角を取得する舵角センサ(84)、又は、前記車両に搭載され、地図情報、前記車両の位置、及び前記車両の走行スケジュールを保持するカーナビゲーションシステム(92)を含むとよい。
【0025】
この構成によれば、舵角センサによって取得される操舵角、又は地図情報、車両の位置、及び走行スケジュールに基づいて車両の旋回を予測し、乗員に加わる横加速度の向き、及びその横加速度が加わる時刻を取得することができる。これにより、乗員に旋回による慣性力が加わる瞬間に合わせてリトラクタを駆動させることができるため、乗員の上半身の移動をより確実に防止することができる。
【0026】
また、上記の態様において、前記フロアに上下方向を軸線とする回転可能に支持されているとよい。
【0027】
この構成によれば、車両用シートの快適性が向上する。
【0028】
また、上記の態様において、前記シートクッション及び前記シートバックはそれぞれ骨格を形成するフレーム(12、13)と、前記フレームに支持されたパッド部材(14、15)と、前記パッド部材の表面の少なくとも一部を覆う表皮材(16、17)とを含むとよい。
【0029】
この構成によれば、フレームを設けることで、車両用シートに乗員を支持するのに十分な剛性を持たせることができ、パッド部材及び表皮材を設けることで、乗員が着座し易くなる。
【発明の効果】
【0030】
上記課題を解決するために、シートベルト装置が、乗員の左肩を拘束する左ベルト部分及び乗員の右肩を拘束する右ベルト部分を含むシートベルトと、左ベルト部分に張力を与える左リトラクタ及び右ベルト部分に張力を与える右リトラクタを含む一対のリトラクタと、乗員に加わる左右方向の横加速度を取得する横加速度取得部と、横加速度取得部によって取得された横加速度が右方向であるときに左リトラクタを駆動し、横加速度取得部によって取得された横加速度が左方向であるときに右リトラクタを駆動する制御部とを有する。この構成によれば、右方向の横加速度によって乗員に左方向の慣性力が加わると、左リトラクタが駆動して左ベルト部分に張力が与えられる。左方向の横加速度によって乗員に右方向の慣性力が加わると、右リトラクタが駆動して右ベルト部分に張力が与えられる。このように、乗員の肩により確実に掛け渡された状態にある乗員の移動方向側に位置するベルト部分に張力が加えることができるため、慣性力の方向に依らず、乗員の上半身の移動をより確実に防止することができる。
【0031】
また、上記の態様において、左ベルト部分が着座した乗員の腰前面から左方に延びる左ラップベルトと、左ラップベルトに一端が結合され、上方に延び、着座した乗員の左肩の前面を通過する左ショルダベルトとを含み、右ベルト部分が着座した乗員の腰前面から右方に延びる右ラップベルトと、右ラップベルトに一端が結合され、上方に延び、着座した乗員の右肩の前面を通過する右ショルダベルトとを含み、左ラップベルト及び右ラップベルトが乗員の腰前面において互いに着脱可能に接続されている。この構成によれば、3点式のシートベルトに比べて、乗員の上半身をシートバックにより確実に拘束できる。また、右ベルト部分が乗員の右肩に掛け渡された右ショルダベルトを含み、左ベルト部分が乗員の左肩に掛け渡された左ショルダベルトを含むため、それぞれのショルダベルトに張力を加えることで乗員の左右いずれの肩もシートバックに押付けることができる。これにより、乗員の慣性力によって移動する方向側の肩を選択して、ショルダシートベルトに張力を与えることで、より確実に乗員の肩をシートバックに押付けることができ、乗員の移動を防止することができる。
【0032】
また、上記の態様において、左ベルト部分が乗員の左肩から右腰に掛けて延在し、右ベルト部分が乗員の右肩から左腰に掛けて延在し、左ベルト部分及び右ベルト部分が正面視で互いに交差している。この構成によれば、3点式のシートベルトに比べて、乗員の上半身をシートバックにより確実に拘束できる。また、右ベルト部分及び左ベルト部分がそれぞれ対応する左右両肩に掛け渡され、右ベルト部分及び左ベルト部分にそれぞれ張力を与えることで、乗員の左右両肩をそれぞれ優先的にシートバックに押付けることができる。
【0033】
また、上記の態様において、制御部は、横加速度取得部によって取得された横加速度の大きさが所定の第1閾値以上であるときには、左リトラクタ及び右リトラクタを駆動させ、横加速度取得部によって取得された横加速度の大きさが所定の第2閾値以上第1閾値未満であり、且つ横加速度の向きが右方向であるときには、左リトラクタを駆動させ、横加速度取得部によって取得された横加速度の大きさが所定の第2閾値以上第1閾値未満であり、且つ横加速度の向きが左方向であるときには、右リトラクタを駆動させる。この構成によれば、乗員に左右片側のみのリトラクタの駆動ではシートバックへの拘束が不十分である第1閾値以上の横加速度の領域において、左右両方のリトラクタを駆動させることで、乗員をより強固にシートバックに拘束して乗員を保護することができる。
【0034】
また、上記の態様において、制御部は横加速度が増加するにつれて、与える張力を増加させるべく対応するリトラクタを駆動させる。この構成によれば、乗員に加わる慣性力が増大すると、対応するリトラクタが与える張力が増加し、乗員がシートバックにより強く拘束される。これにより、横加速度の増加に従って乗員の上半身とシートバックとの間の摩擦力を増加させることができるため、乗員の上半身の移動をより確実に防止することができる。
【0035】
また、上記の態様において、乗員に加わる前後方向の縦加速度及び上下方向の上下加速度をそれぞれ取得する補助加速度取得部を有し、制御部は、縦加速度が後方を向き、且つ縦加速度の大きさが所定の後方閾値以上であるとき、又は上下加速度が下方を向き、且つ上下加速度の大きさが所定の下方閾値以上であるときには、左リトラクタ及び右リトラクタの両方を駆動させる。この構成によれば、乗員に前方又は上方に大きな慣性力が働くときに左右のリトラクタが駆動する。上半身がシートバックから離れる方向に作用する慣性力に抗するように荷重を加えることができる。これにより、乗員に安定感を与えることができ、乗物酔いを低減することができる。
【0036】
また、上記の態様のいずれか1つのシートベルト装置を有し、車両に搭載される車両用シートであって、車室内のフロアに載置され、乗員の臀部を支持するシートクッションと、乗員の背中を支持するシートバックとを有し、左ベルト部分の下端及び右ベルト部分の下端がそれぞれシートクッションに結合され、左リトラクタはシートバック又はシートクッションのいずれか一方に支持され、左ベルト部分の上端を巻き取り、左リトラクタはシートバック又はシートクッションのいずれか一方に支持され、右ベルト部分の上端を巻き取る。この構成によれば、車両用シートの車室内の位置や向きに依らず、シートベルト装置によって乗員を上半身の移動を防止することができる。
【0037】
また、上記の態様において、横加速度取得部はシートバック又はシートクッションの少なくとも一方に支持された加速度センサを含む。この構成によれば、加速度センサを乗員の近傍に設けることができるため、乗員の身体に加わる横加速度をより正確に且つ簡素に取得することができる。これにより、対応する乗員の肩をより確実にシートバックに押付けることができ、乗員の慣性力による移動をより確実に防止することができる。
【0038】
また、上記の態様において、横加速度取得部は車両の操舵角を取得する舵角センサ、又は、車両に搭載され、地図情報、車両の位置、及び車両の走行スケジュールを保持するカーナビゲーションシステムを含む。この構成によれば、舵角センサによって取得される操舵角、又は地図情報、車両の位置、及び走行スケジュールに基づいて車両の旋回を予測し、乗員に加わる横加速度の向き、及びその横加速度が加わる時刻を取得することができる。これにより、乗員に旋回による慣性力が加わる瞬間に合わせてリトラクタを駆動させることができるため、乗員の上半身の移動をより確実に防止することができる。
【0039】
また、上記の態様において、フロアに上下方向を軸線とする回転可能に支持されている。この構成によれば、車両用シートの快適性が向上する。
【0040】
また、上記の態様において、シートクッション及びシートバックはそれぞれ骨格を形成するフレームと、フレームに支持されたパッド部材と、パッド部材の表面の少なくとも一部を覆う表皮材とを含む。この構成によれば、フレームを設けることで、車両用シートに乗員を支持するのに十分な剛性を持たせることができ、パッド部材及び表皮材を設けることで、乗員が着座し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】第1実施形態に係るシートベルト装置を備えた車両用シートの斜視図
図2】第1実施形態に係るシートベルト装置を備えた車両用シートの斜視断面図
図3】第1実施形態に係るシートベルト装置の制御部が実行するリトラクタ制御処理のフローチャート
図4】第2実施形態に係るシートベルト装置を備えた車両用シートの斜視図
図5】第3実施形態に係るシートベルト装置の制御部が実行するリトラクタ制御処理のフローチャート
図6】第4実施形態に係るシートベルト装置の制御部が実行するリトラクタ制御処理のフローチャート
図7】第5実施形態に係るシートベルト装置が搭載された車両用シートが搭載される車両の模式図
図8】第5実施形態に係るシートベルト装置の制御部が実行するリトラクタ制御処理のフローチャート
図9】第6実施形態に係るシートベルト装置が搭載された車両用シートが搭載される車両の模式図
図10】第1実施形態に係るシートベルト装置を備えた車両用シートの別実施例
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して、本発明に係るシートベルト装置を車両用シートに適用した実施形態を説明する。
【0043】
<<第1実施形態>>
図1に示すように、シートベルト装置1は自動車等の車両S(図7参照)に搭載される車両用シート2に適用される。本実施形態では、車両用シート2は車両Sにおいて(図9参照)、運転席の側方に配置され、助手席を構成している。
【0044】
図1に示すように、車両用シート2は車室3の底部を画定するフロア4上に、車両Sの前方を向くように(より詳細には着座した乗員が車両Sの前方に向くように)載置されている。車両用シート2はフロア4に前後にスライド移動可能に支持されている。以下では、車両用シート2に着座した乗員から見た方向を基準として、前後、左右、及び上下方向をそれぞれ定めて、説明を行う。
【0045】
車両用シート2はシートベルト装置1に加えて、着座者の臀部を支持するシートクッション5と、シートクッション5の後部に設けられ、背凭れとして機能するシートバック6と、各シートバック6の上部に設けられたヘッドレスト7とを備えている。
【0046】
シートクッション5は略上下方向を向く面を有する略直方体状をなしている。シートクッション5の上面は乗員1人分の着座面9を構成している。着座面9は左右方向略中央において下方に凹み、後方に向かってやや下方に傾斜している。これにより、着座面9は乗員の臀部及び大腿部に対応する形状をなしている。乗員が着座するときには、着座面9には乗員の臀部及び大腿部が配置される。
【0047】
シートバック6は上下に延び、略前後方向を向く面を有する略直方体状をなしている。シートバック6の前面はそれぞれ乗員の背中を支持する支持面10を構成している。支持面10は左右方向略中央において後方に凹み、上方に向かってやや後方に傾斜している。これにより、支持面10は乗員の背中に対応する形状をなし、支持面10に乗員の背中が支持される。
【0048】
シートバック6はその下端において、公知のリクライニング機構を介して、シートクッション5の後端に回動可能に枢支されている。すなわち、シートバック6はそれぞれ下端において、シートクッション5の後端に前倒可能且つ後倒可能に結合されている。
【0049】
ヘッドレスト7は、シートバック6の上端に2つのピラー11を介して接続されている。ヘッドレスト7は着座した乗員の頭部の後方となる位置に配置されている。
【0050】
図2に示すように、シートクッション5及びシートバック6はそれぞれ骨格を形成するフレーム12、13と、フレーム12、13にそれぞれ支持されたパッド部材14、15と、パッド部材14、15それぞれの表面の少なくとも一部を覆う表皮材16、17とを含む。シートクッション5及びシートバック6のフレーム12、13はそれぞれ金属製であり、略四角枠型に形成されている。シートクッション5のパッド部材15は対応するフレーム12の上側に配置され、その上面が表皮材16によって覆われている。シートバック6のパッド部材15は対応するフレーム13の前面に配置され、その前面が表皮材17によって覆われている。このように、シートクッション5及びシートバック6にフレーム12、13を設けることで、車両用シート2に乗員を支持するのに十分な剛性を持たせることができる。また、パッド部材14、15及び表皮材16、17を設けることで、着座面9や支持面10に好適な弾性や質感を持たせることができるため、乗員が着座し易くなり、車両用シート2の快適性が向上する。
【0051】
図1に示すように、シートベルト装置1は、車両用シート2に着座した乗員の上半身をシートバック6に拘束するためのシートベルト21と、シートバック6の背面に設けられ、シートベルト21に張力を与えるための左右一対のリトラクタ22と、シートバック6の背面に設けられ、シートバック6に加わる左右方向の加速度(以下、横加速度)を取得する横加速度取得部23と、横加速度に応じてリトラクタ22を駆動する制御部24とを備えている。以下では、シートベルト21が車両用シート2に着座した乗員の上半身を拘束している状態について説明を行う。
【0052】
シートベルト21は、乗員の腰部に沿って左右に延在し、乗員の腰部をシートクッション5及びシートバック6に拘束する左右一対のラップベルト26と、乗員の肩部に沿って上下に延在し、乗員の肩部をシートバック6に拘束する左右一対のショルダベルト27とを含み、正面視でH状をなす4点式のシートベルトである。以下では、左側のラップベルト26を左ラップベルト26Lと記載し、右側のラップベルト26を右ラップベルト26Rと記載する。同様に、左側のショルダベルト27を左ショルダベルト27Lと記載し、右側のショルダベルト27を右ショルダベルト27Rと記載する。
【0053】
右ラップベルト26の一端(以下、内端)にはバックル28が設けられ、左ラップベルト26の一端(以下、内端)にバックル28に挿脱可能なラングプレート29が設けられている。バックル28がラングプレート29に挿脱されることによって、右ラップベルト26Rの内端は左ラップベルト26Lの内端と乗員の腰前面において着脱可能に結合されている。左ラップベルト26は着座した乗員の腰前面から左方に延び、他端(以下、外端)においてシートクッション5の左側面に左右方向を軸線として回転可能に結合されている。右ラップベルト26は着座した乗員の腰前面から右方に延び、他端(以下、外端)においてシートクッション5の右側面に左右方向を軸線として回転可能に結合されている。
【0054】
シートバック6の左右上端にはそれぞれ左右一対のショルダベルトガイド30が設けられている。左右一対のリトラクタ22は左右に離間してシートバック6の背面に結合されている。右側のリトラクタ22(以下、右リトラクタ22R)にはベルト状の右延長部30Rが接続されている。右延長部31Rは一端において右リトラクタ22Rに接続され、上方に延び、右側のショルダベルトガイド30を通過している。右ショルダベルト27Rは上端において右延長部31Rの他端に接続され、下方に延び、乗員の右肩前面に達している。右ショルダベルト27Rは下端において右ラップベルト26の内端近傍に結合して一体となり、シートベルト21の右ベルト部分21Rを構成している。すなわち、右ベルト部分21Rは一端において右延長部31Rを介して右リトラクタ22Rに結合され、乗員の右肩前面、及び腰部前面を通過して右方に延びている。右ベルト部分21Rは右端部においてシートクッション5の右側面に結合され、乗員の右肩部分をシートバック6に優先的に拘束する。ここでいう乗員の右肩部分を優先的に拘束するとは、左肩部分に比べて右肩部分をより強くシートバック6に拘束することを意味する。
【0055】
同様に、左側のリトラクタ22(以下、左リトラクタ22L)にはベルト状の左延長部30Lが接続されている。左延長部31Lは上方に延び、左側のショルダベルトガイド30を通過している。左ショルダベルト27Lは上端において左延長部31Lに接続されて、下方に延び、乗員の左肩前面に達している。左ショルダベルト27は下端において右ラップベルト26の内端近傍に結合して一体となり、左ベルト部分21Lを構成している。すなわち、左ベルト部分21Lは一端において左延長部31Lを介して左リトラクタ22Lに結合され、乗員の左肩前面、及び腰部前面を通過して左方に延びている。左ベルト部分21Lは左端部においてシートクッション5の左側面に結合され、乗員の左肩部分をシートバック6に優先的に拘束する。
【0056】
右リトラクタ22Rは右ショルダベルト27Rの上端を、左リトラクタ22Lは左ショルダベルト27Lの上端を、それぞれを巻き取る巻取装置である。右リトラクタ22R及び左リトラクタ22Lはそれぞれ接続されたショルダベルト27を巻き取るための電動モータ32を備える。右リトラクタ22R及び左リトラクタ22Lはそれぞれ駆動を指示する信号を受信すると、それぞれに備えられた電動モータ32が駆動して対応するショルダベルト27を巻き取る。これにより、右リトラクタ22Rは右ベルト部分21Rに優先的に張力を付加し、左リトラクタ22Lは左ベルト部分21Lに優先的に張力を付加する。ここでいう一方のベルト部分に優先的に張力を付加するとは、一方のベルト部分に他方のベルト部分よりも大きな張力を付加することを意味する。
【0057】
本実施形態では、右リトラクタ22R及び左リトラクタ22Lはそれぞれ受信した信号に応じて、電動モータ32の駆動量を変更することができる。これにより、右リトラクタ22R及び左リトラクタ22Lはそれぞれ駆動量を指示する信号を受信すると、指示された駆動量に応じて電動モータ32を駆動させて対応するショルダベルト27を巻き取らせる。これにより、対応するベルト部分21R、21Lには駆動量に応じた張力が付与される。
【0058】
図2に示すように、横加速度取得部23はシートクッション5の下面に固定された加速度センサ23Aを含む。加速度センサ23Aはシートクッション5に加わる左右方向の加速度(以下、横加速度)を大きさ、及び向きを含めて取得する。横加速度取得部23は、横加速度を例えば右向きを正、左向きを負として出力するとよい。本実施形態では、加速度センサ23AはMEMS技術を用いた半導体式のセンサであり、梁によって支持された可動部の変位を容量の変化として読み取ることで加速度を検出する、いわゆる静電容量型が用いられている。但し、加速度センサ23Aはこの態様には限定されず、例えば、ピエゾ抵抗の変化を用いて加速度を検出する圧電素子型のセンサであってもよい。
【0059】
制御部24はシートクッション5の下面に設けられたコンピュータであり、中央演算処理装置(CPU)や記憶装置(メモリ)等を備える。制御部24は信号線となるワイヤハーネス(図示せず)を介して、左右のリトラクタ22、及び横加速度取得部23に接続されている。
【0060】
制御部24は車両走行中、横加速度取得部23からの信号に基づいて、左右のリトラクタ22の駆動を制御するリトラクタ制御処理を実行する。以下に、図3を参照してリトラクタ制御処理の詳細を説明する。
【0061】
リトラクタ制御処理のステップST1において、制御部24は横加速度取得部23からの信号を受信して、シートバック6に加わる横加速度を取得し、その大きさ(絶対値)が所定の閾値(以下、左右横加速度閾値)以上であるときには、ステップST2を実行し、横加速度の大きさが左右横加速度閾値未満であるときにはステップST5を実行する。横加速度閾値は一般的に乗員の乗物酔いが発生し易くなる横加速度の閾値として設定されている。
【0062】
ステップST2において、制御部24は取得した横加速度の向きを判定し、横加速度の向きが右向きである場合にはステップST3を実行し、横加速度の向きが左向きである場合にはステップST4を実行する。横加速度取得部23が横加速度を例えば右向きを正、左向きを負として出力するときには、制御部24は横加速度の正負によって横加速度の向きを判定するとよい。
【0063】
ステップST3において、制御部24は左リトラクタ22Lに電動モータ32の駆動を指示する信号を送信する。左リトラクタ22Lは信号を受信すると、電動モータ32を駆動させて、左ショルダベルト27の上端を巻き取る。これにより、左ベルト部分21Lに加わる張力が増加する。
【0064】
本実施形態では、制御部24は取得した横加速度の大きさに基づいて、左リトラクタ22Lの電動モータ32が巻き取るべき量、すなわち駆動量を算出し、左リトラクタ22Lの電動モータ32を算出された駆動量で駆動させる。制御部24は取得した横加速度の大きさが大きくなるにつれて、左ショルダベルト27Lにより大きな張力を与えるべく、大きな駆動量を算出するように構成されている。制御部24は記憶装置に保存された所定のマップを用いて駆動量を算出してもよい。左リトラクタ22Lに駆動を指示する信号を駆動量とともに送信すると、制御部24はステップST3を完了し、リトラクタ制御処理を終了する。
【0065】
ステップST4において、制御部24は右リトラクタ22Rに電動モータ32の駆動を指示する信号を送信する。右リトラクタ22Rは信号を受信すると、電動モータ32を駆動させて、右ショルダベルト27Rの上端を巻き取る。これにより、右ベルト部分21Rに加わる張力が増加する。本実施形態では、制御部24は横加速度の大きさに基づいて、電動モータ32が巻き取るべき量、すなわち駆動量を算出し、右リトラクタ22Rの電動モータ32を算出された駆動量で駆動させる。制御部24は取得した横加速度の大きさが大きくなるにつれて、右ショルダベルト27Rにより大きな張力を与えるべく、大きな駆動量を算出するように構成されている。右リトラクタ22Rに駆動を指示する信号を駆動量とともに送信すると、制御部24はステップST3を完了し、リトラクタ制御処理を終了する。
【0066】
ステップST5において、制御部24は右リトラクタ22Rの電動モータ32が駆動しているときには駆動を停止する信号を送信して電動モータ32の駆動を停止させる。制御部24は右リトラクタ22Rの電動モータ32が駆動していないときには右リトラクタ22Rに駆動を指示する信号を送信せず、右リトラクタ22Rの電動モータ32は停止した状態に維持される。同様に、制御部24は左リトラクタ22Lの電動モータ32が駆動しているときには駆動を停止する信号を送信して電動モータ32の駆動を停止させ、駆動していないときには左リトラクタ22Lに駆動を指示する信号を送信せず、左リトラクタ22Lの電動モータ32を停止した状態に維持する。
【0067】
車両走行中、制御部24はリトラクタ制御処理を繰り返し継続して行い、各リトラクタ22の電動モータ32の駆動量は横加速度取得部23によって取得された横加速度に応じて更新される。例えば、左右方向に左右横加速度閾値以上の大きさの横加速度が加わると、制御部24はステップST3又はステップST4において対応するリトラクタ22の電動モータ32を駆動させる。その後、加速度の大きさが閾値以下となると制御部24はステップST5を実行して、左右のリトラクタ22の電動モータ32の駆動を停止する。
【0068】
次に、このように構成したシートベルト装置1の動作について説明する。車両Sの旋回等によって、車両用シート2に右方向の加速度が加わり、乗員に左方向の慣性力が作用することがある。
【0069】
制御部24はリトラクタ制御処理のステップST1において、横加速度取得部23からの信号に基づいてシートバック6に横加速度閾値以上の横加速度が加わったと判定し、ステップST2において横加速度の方向が右方向であると判定すると、左リトラクタ22Lの電動モータ32を駆動させる。左リトラクタ22Lの電動モータ32の駆動により、左ベルト部分21Lには張力が与えられて、乗員の左肩がシートバック6に押付けられる。乗員の左肩がシートバック6に押付けられることで、乗員に加わる摩擦力が増加する。
【0070】
乗員の上半身は左肩が押し付けられることで、左肩とシートバック6との間の摩擦力が慣性力に抗するように作用する。これにより、乗員の上半身が塞き止められて、その移動が防止される。
【0071】
同様に、車両用シート2に横加速度閾値以上の横加速度が左方向に加わると、右リトラクタ22Rが駆動し、右ベルト部分21Rに張力が与えられる。これにより、乗員の右肩がシートバック6に押付けられて、右肩とシートバック6との間の摩擦力が慣性力に抗するように作用する。これにより、乗員の上半身が塞き止められて、その移動が防止される。
【0072】
次に、このように構成したシートベルト装置1の効果について説明する。乗員に横加速度が加わると、乗員の上半身には横加速度の向きとは逆方向の慣性力が作用する。このとき、乗員が慣性力に従って移動すると、慣性力の方向の逆側の肩(例えば、左方向の横加速度によって乗員に右方向の慣性力が作用する場合の左肩)に掛け渡されるショルダベルト27は肩から外れ易く、乗員の慣性力の方向の側の肩(例えば、乗員に右方向の慣性力が作用する場合の右肩)に掛け渡されるショルダベルト27の側に乗員の上半身は移動する。本実施形態では、慣性力の方向の側の肩、すなわち乗員の横加速度の向きと逆側の肩(例えば、左方向の横加速度が乗員に加わるときには乗員の右肩)のリトラクタ22が選択的に駆動されて、対応するベルト部分21R、21Lに張力が加えられる。これにより、乗員の肩により確実に掛け渡された状態にあるベルト部分21R、32Lに張力が加えることができるため、慣性力の方向に依らず、乗員の上半身の移動をより確実に防止することができる。
【0073】
本実施形態では、横加速度の向きに応じて左右一方のベルト部分21R,21Lに張力が加えられる。このように構成することによって、左右両方のベルト部分21R、21Lに張力が加えられる場合に比べて、シートベルト21から乗員に加わる荷重を小さくすることができる。これにより、乗員に加わる圧迫感が低減され、より効果的に乗員の上半身の左右方向の移動を防止することができる。
【0074】
乗員の左右の肩にそれぞれショルダベルト27が掛け渡され、各ショルダベルト27にリトラクタ22が設けられることで、リトラクタ22を選択して駆動することで左右のベルト部分21R、21Lに選択的に張力を加えることができる。また、乗員に左右方向に慣性力が加わったときに、乗員の横加速度の向きと逆側のシートベルト21のベルト部分21R、21L、すなわち乗員の肩が外れ難いベルト部分21R、21Lを選択して張力が加えることで、大きな横加速度が加わった場合であっても、乗員の左右の肩の一方を確実にシートバック6に押し付けることができる。よって、乗員の上半身の左右方向の移動をより確実に防止することができ、乗員の乗物酔いを低減することができる。
【0075】
本実施形態では、制御部24は横加速度の大きさが増加するにつれて、対応するリトラクタ22の駆動量を変更して、対応するベルト部分21R、21Lに与える張力を増加させる。これにより、横加速度が増加し乗員に加わる左右方向の慣性力が増大すると、対応するベルト部分21R、21Lに加えられる張力が増加して乗員がシートバック6により強く拘束される。よって、横加速度の大きさに依らず乗員をシートバック6により確実に固定することができ、乗員の上半身の左右方向の移動をより確実に防止することができる。
【0076】
このように、乗員には横加速度の向きに応じて、上半身を確実に固定することのできる側のリトラクタ22が選択されて、横加速度の大きさに応じて適切な量の張力がベルト部分21R、21Lに付与される。これにより、乗員は必要以上にシートバック6に拘束されることがないため、車両用シート2の快適性が向上する。
【0077】
本実施形態では、シートベルト装置1は左右のラップベルト26、及び左右のショルダベルト27を含む4点シートベルト21を含むように構成されているため、シートベルト装置1が3点シートベルトを含むように構成される場合に比べて、乗員をより確実にシートバック6に拘束できる。
【0078】
本実施形態では、横加速度取得部23はシートクッション5の下面に設けられている。これにより、横加速度取得部23を乗員の近傍に設けることができるため、乗員の身体に加わる横加速度をより正確に且つ簡素に取得することができる。
【0079】
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係るシートベルト装置51は第1実施形態に比べてシートベルト52の構成のみが異なり、他の構成については第1実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。
【0080】
第2実施形態に係るシートベルト装置51のシートベルト52は、図4に示すように、着座した乗員の左肩から右腰に掛けて斜めに延在する左ベルト部分52Lと、着座した乗員の右肩から左腰に掛けて斜め延在する右ベルト部分52Rとを含む。左ベルト部分52L及び右ベルト部分52Rは乗員の腰前側において互いに交差し、シートベルト52は正面視でX字状をなしている。
【0081】
左ベルト部分52Lの上端は第1実施形態と同様に、左延長部31Lに接続されている。左延長部31Lはシートバック6の左上部に設けられたショルダベルトガイド53Lを通過して、シートバック6の背面に延びている。第1実施形態と同様にシートバック6の左側上部には左リトラクタ22Lが設けられ、左延長部31Lは左リトラクタ22Lに接続されている。これにより、左ベルト部分52Lの上端は左延長部31Lを介して左リトラクタ22Lに接続されている。左ベルト部分52Lの下端にはラングプレート54Lが結合され、シートクッション5の左側面には車幅方向を軸線とする回転可能にバックル55Rが支持されている。乗員が車両用シート2に着座して、シートベルト52を装着するときには、ラングプレート54Lがバックル55Lに挿入される。これにより、左ベルト部分52Lの下端はシートクッション5の左側面に結合されている。
【0082】
右ベルト部分52Rの上端は第1実施形態と同様に、右延長部31Rに接続されている。右延長部31Rはシートバック6の右上部に設けられたショルダベルトガイド53Rを通過してシートバック6の背面に延び、右リトラクタ22Rに接続されている。これにより、右ベルト部分52Rの上端は右延長部31Rを介して右リトラクタ22Rに接続されている。右ベルト部分52Rの下端にはラングプレート54Rが結合され、シートクッション5の右側面には車幅方向を軸線とする回転可能にバックル55Rが支持されている。ラングプレート54Rがバックル55Rに挿入されることにより、右ベルト部分52Rの下端はシートクッション5の右側面に結合されている。
【0083】
左リトラクタ22Lが駆動すると、左ベルト部分52Lの上端が巻き取られて、主に左ベルト部分52Lの上部に張力が付加される。これによって、乗員の左肩部分が他の部分に比べて優先的にシートバック6に固定される。同様に、右リトラクタ22Rが駆動すると、右ベルト部分52Rの上端が巻き取られて、主に右ベルト部分52Rの上部に張力が付加される。これによって、乗員の右肩部分が他の部分に比べて優先的にシートバック6に固定される。
【0084】
次に、このように構成したシートベルト装置51の効果について説明する。シートベルト装置51のシートベルト52は4つの点で車両用シート2に固定されたいわゆる4点式であるため、3点式に比べて乗員の上半身をシートバック6により確実に拘束できる。また、右ベルト部分52R及び左ベルト部分52Lがそれぞれ対応する左右両肩に掛け渡され、右ベルト部分52R及び左ベルト部分52Lにそれぞれ張力を与えることで、乗員の左右両肩をそれぞれ優先的にシートバック6に押付けることができる。これにより、慣性力によって乗員が移動した場合であっても、乗員の肩から外れ難いシートベルト52のベルト部分52R、52Lに張力が加えることができる。よって、乗員の上半身の左右方向の移動をより確実に防止することができ、乗員の乗物酔いを低減することができる。
【0085】
<<第3実施形態>>
第3実施形態に係るシートベルト装置61は、制御部24で実行されるリトラクタ駆動処理が異なり、他の構成部分については第1実施形態と同様であるため、他の構成部分については説明を省略する。
【0086】
図5には、第3実施形態に係るシートベルト装置61の制御部24が実行するリトラクタ駆動処理が示されている。制御部24は、リトラクタ駆動処理の最初のステップ(ST11)において、横加速度取得部23から横加速度の大きさ、及び向きを取得し、横加速度の大きさが所定の値である第1閾値以上であるかを判定する。横加速度の大きさが第1閾値以上であるときにはステップST12を実行し、第1閾値未満であるときにはステップST13を実行する。第1閾値は乗員の両肩をシートバック6に押付けて、乗員の身体をシートバック6に強く拘束して、その移動を防止することが安全上望ましいと考えられる横加速度の値に設定されている。
【0087】
ステップST12において、制御部24は左右のリトラクタ22に信号を送信し、左右両方のリトラクタ22を駆動させる。制御部24は取得した横加速度の大きさが大きくなるにつれて、左右のリトラクタ22の電動モータ32それぞれの駆動量が大きくなるように設定するとよい。制御部24はステップST12が完了すると、リトラクタ駆動処理を終了する。
【0088】
ステップST13において、制御部24はステップST11において取得した横加速度の大きさが第2閾値以上であるかを判定する。第2閾値は第1閾値よりも小さい所定の正の値に設定されている。制御部24は横加速度の大きさが第2閾値以上であるときにはステップST14を実行し、第2閾値未満であるときにはステップST17を実行する。第2閾値は乗員の片方の肩をシートバック6に押付けることで乗員の姿勢を維持することが乗物酔い防止の観点から望ましいと考えられる横加速度の値に設定され、第1実施形態の横加速度閾値と概ね等しい。第2閾値は第1閾値よりも小さく設定されている。
【0089】
ステップST14において、制御部24はステップST11において取得した横加速度の向きが右方向であるかを判定する。右方向であるときにはステップST15を実行し、右方向ではない、すなわち左方向であるときにはステップST16を実行する。
【0090】
ステップST15において、制御部24は左リトラクタ22Lに駆動を指示する信号を送信し、左リトラクタ22Lを駆動させる。制御部24は第1実施形態のステップST4と同様に取得した横加速度の大きさが大きくなるにつれて、左リトラクタ22Lの電動モータ32の駆動量が大きくなるように設定するとよい。制御部24はステップST15が完了すると、リトラクタ駆動処理を終了する。
【0091】
ステップST16において、制御部24は右リトラクタ22Rに駆動を指示する信号を送信し、右リトラクタ22Rを駆動させる。制御部24は第1実施形態のステップST5と同様に加速度の大きさが大きくなるにつれて、右リトラクタ22Rの電動モータ32の駆動量が大きくなるように設定するとよい。制御部24はステップST16が完了すると、リトラクタ駆動処理を終了する。
【0092】
次にこのように構成したシートベルト装置61の効果について説明する。例えば車両Sの側突時等、車両用シート2に加わる横加速度が極めて大きい場合には、乗員をシートバック6により強固に拘束して乗員の身体の移動を防止することが望ましい。本実施形態では、第1閾値以上の横加速度が車両用シート2に加わると、左右のリトラクタ22が共に駆動し、乗員の左右両肩がシートバック6に押付けられる。これにより、左右のリトラクタ22の片方のみが駆動した場合に比べて、乗員の身体がより強固にシートバック6に束縛することができる。これにより、乗員の上半身の左右方向の移動が防止され、シートベルト装置61を搭載した車両用シート2の安全性を向上させることができる。
【0093】
また、横加速度の大きさが第2閾値以上第1閾値未満であるときには、第1実施形態と同様に、左右方向の加速度に応じて、乗員の一方の肩を固定することにより乗員の上半身の左右方向の移動が防止される。これにより、乗員の乗物酔いを低減することができる。
【0094】
<<第4実施形態>>
第4実施形態に係るシートベルト装置71は、車両用シート2に加わる前後方向の加速度(以下、縦加速度)、及び上下方向の加速度(以下、上下加速度)を検出する補助加速度取得部73を含む点と、図6に示すようにリトラクタ制御処理とが異なり、他の部分については第3実施形態と同様であるため、他の部分については説明を省略する。
【0095】
補助加速度取得部73はシートバック6又はシートクッション5に設けられる。図1に示すように、本実施形態では補助加速度取得部73はシートバック6の背面に設けられている。補助加速度取得部73は縦加速度を向き及び大きさを含めて取得して出力するとともに、上下加速度を向き及び大きさを含めて取得して出力する。本実施形態では、補助加速度取得部73は上下方向の加速度、及び前後方向の加速度をそれぞれ取得する半導体式の加速度センサを備えている。加速度センサは第1実施形態の横加速度取得部23と同様のものであってよい。
【0096】
図6に示すように、シートベルト装置71の制御部24が実行するリトラクタ制御処理は、第3実施形態のシートベルト装置51の制御部24が実行するリトラクタ制御処理のステップST11~17に加えてステップST21、及びステップST22を実行するとともに、第3実施形態に比べてステップST12の構成が異なる。
【0097】
制御部24は、リトラクタ制御処理の最初のステップとして、第3実施形態と同じステップST11を実行する。すなわち、制御部24はステップST11において横加速度が横加速度閾値以上であるかを判定し、横加速度閾値以上であるときには第3実施形態と同様にステップST12を実行し、横加速度が横加速度閾値未満であるときにはステップST21を実行する。
【0098】
制御部24は、ステップST12において左右のリトラクタ22を駆動させる。但し、左右のリトラクタ22の駆動量は横加速度の大きさ、縦加速度の大きさ、及び上下加速度の大きさの3つの量に基づいて定められる。本実施形態では、左右のリトラクタ22の駆動量は、横加速度の大きさ、縦加速度の大きさ、及び上下加速度の大きさの和に比例するように設定されている。
【0099】
ステップST21において、制御部24は補助加速度取得部73から前後方向加速度の大きさ及び向きを取得する。制御部24は、前後方向加速度の向きが後方であり、且つ、前後方向加速度の大きさが所定の後方閾値以上であるときには第3実施形態と同じステップST12を実行し、それ以外のときはステップST22を実行する。後方閾値は一般に乗員が乗物酔いにかかり易くなる後方への加速度の閾値として設定されている。
【0100】
ステップST22において、制御部24は補助加速度取得部73から上下加速度の大きさ及び向きを取得する。制御部24は、上下加速度の向きが下方であり、且つ、上下加速度の大きさが所定の下方閾値以上であるときには第3実施形態と同じステップST12を実行し、それ以外のときはステップST13を実行する。ステップST13以降のステップについては、第3実施形態と同様であるので、説明を省略する。下方方閾値もまた一般に乗員が乗物酔いにかかり易くなる下方への加速度の閾値として設定されている。
【0101】
次にこのように構成したシートベルト装置71の効果について説明する。車両用シート2に後方又は下方に加速度が加わると乗員にはそれぞれ前方又は上方に慣性力が加わる。前方又は上方への慣性力は乗員を車両用シート2から離脱させるように作用する。
【0102】
本実施形態では、車両用シート2に後方閾値以上の加速度が後方に加わると、制御部24は縦加速度の向きが後方であり、且つ、縦加速度の大きさが後方閾値以上であると判定する(ST21)。車両用シート2に下方閾値以上の加速度が下方に加わると、制御部24は上下加速度の向きが下方であり、且つ、上下加速度の大きさが後方閾値以上であると判定する(ST22)。後方に後方閾値以上の加速度が加わった場合、下方に下方閾値以上の加速度が加わった場合のいずれの場合においても、制御部24は左右両方のリトラクタ22を駆動させる(ST12)。
【0103】
前方又は上方への慣性力は乗員に上半身がシートバック6から離れるような感覚を与えるため、乗物酔いの原因となる。本実施形態では、下方に下方閾値以上の加速度が加わった場合や、後方に後方閾値以上の加速度が加わった場合に、すなわち上方又は下方に大きな慣性力が加わるときにリトラクタ22が作動し、乗員に慣性力に抗するように荷重を加えられる。これにより、乗員に安定感を与えることができ、乗物酔いを低減することができる。
【0104】
<<第5実施形態>>
第5実施形態に係るシートベルト装置81は、第1実施形態に係るシートベルト装置1に比べて、横加速度取得部23の構成、及びリトラクタ制御処理が異なる。他の構成は第1実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。
【0105】
図7に示すように、横加速度取得部23は、車両Sのステアリングシャフト82に設けられ、車両Sのステアリングハンドル83の操舵角を検出する舵角センサ84を含む。
【0106】
次に制御部24において実行されるリトラクタ制御処理を、図8を参照して説明する。制御部24はステップST31において操舵角の大きさが所定閾値以上であるかを判定する。操舵角の大きさが所定値以上であるときにはステップST32を実行し、それ以外のときはステップST35を実行する。
【0107】
ステップST32において、制御部24は横加速度取得部23によって取得された操舵角に基づいて、車両Sの旋回方向を算出し、乗員に加わる横加速度の向きが右方向であるかを判定する。より具体的には、車両Sが右方向に旋回するときには乗員には右方向の横加速度が加わると判定し、車両Sが左方向に旋回するときには乗員には左方向の横加速度が加わると判定する。横加速度が右方向であるときにはステップST33を実行し、それ以外、すなわち横加速度が左方向であるときにはステップST34を実行する。
【0108】
ステップST33において、制御部24は左リトラクタ22Lの電動モータ32を所定の駆動量で駆動させる信号を左リトラクタ22Lに送信する。これにより、左リトラクタ22Lの電動モータ32が駆動し、乗員の左肩がシートバック6により強く拘束される。ステップST33を完了すると、制御部24はリトラクタ制御処理を完了する。
【0109】
ステップST34において、制御部24は右リトラクタ22Rの電動モータ32を所定の駆動量で駆動させる信号を右リトラクタ22Rに送信する。これにより、右リトラクタ22Rの電動モータ32が駆動し、乗員の右肩がシートバック6により強く拘束される。ステップST34を完了すると、制御部24はリトラクタ制御処理を完了する。
【0110】
ステップST35において、制御部24は左右のリトラクタ22の電動モータ32が駆動しているときにはそれぞれを停止し、駆動していないときには駆動していない状態に維持する。ステップST35が完了すると、制御部24はリトラクタ制御処理を完了する。
【0111】
次に、このように構成したシートベルト装置81の効果について説明する。舵角センサ84から入力される舵角に基づいて、制御部24は車両Sが旋回を開始するタイミングを取得することができるため、乗員に慣性力が作用する瞬間(タイミング)に合わせて、左右のリトラクタ22を駆動させることができる。更に、舵角によって車両Sの旋回方向が取得することができ、旋回による慣性力によって乗員の上半身が移動する方向の側に位置するリトラクタ22を選択して駆動させ、対応する肩のベルト部分21L、21Rに張力を加えることができる。これにより、乗員を確実にシートバック6に拘束することができる。
【0112】
<<第6実施形態>>
第6実施形態に係るシートベルト装置91は、第5実施形態に係るシートベルト装置と比べて、横加速度取得部23の構成のみが異なり、他の部分については同様であるため、説明を省略する。横加速度取得部23は、図7に示すようにカーナビゲーションシステム92を含む。カーナビゲーションシステム92はGPSや記憶装置を含み、地図情報、現在の車両Sの位置、及び車両Sの走行スケジュールを含むデータを保持する。ステップST31において、制御部24は横加速度取得部23から地図情報、現在の車両Sの位置、及び車両Sの走行スケジュールを含むデータを受信し、受信したデータに基づいて、所定時間(例えばリトラクタ22の駆動により乗員を拘束するために要する時間)内に車両Sが旋回するかを判定する。その後、制御部24は、旋回が行われる場合には、車両Sの進行方向から予測される操舵角、及び車両Sの旋回方向を算出する。その後、制御部24は操舵角が角度閾値以上であるかを判定する。
【0113】
次に、制御部24は、ステップST32において算出された旋回方向から、乗員に加わる横加速度の方向を算出し、横加速度が右方向であるかを判定する。
【0114】
このように構成することで、車両Sの旋回のタイミングを地図情報、車両Sの位置、及び走行スケジュールに基づいて予測し、乗員に加わる加速度の向き、及びその加速度が加わる時刻を取得することができる。これにより、乗員に旋回による慣性力が加わる瞬間に合わせてリトラクタ22を駆動させることができるため、乗員の上半身の移動をより確実に防止することができる。
【0115】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記実施形態では、車両用シート2はフロア4に前後にスライド移動可能に支持されていたが、この態様には限定されない。上記実施形態では例えば、車両用シート2は車室3の底部を画定するフロア4上において上下方向を軸線とする回転可能に設けられていてもよい。このように構成することで、例えば、車両用シート2が自動運転可能な車両Sに搭載されたときに、車両用シート2の向きを自由に変えることができるため、車両用シート2の快適性が向上する。このとき、制御部24が車両Sに固定されたセンサ、より具体的には舵角センサ84及びカーナビゲーションシステム92からの情報に基づいてリトラクタ22を制御するときには、車両Sに車両用シート2のフロア4に対する回転角を取得する回転角センサが設けられ、制御部24はその回転角を取得するとよい。これにより、制御部24は、取得した車両Sの旋回方向を車両用シート2の回転角に基づいて補正し、乗員に加わる横加速度を算出するとよい。また、車両用シート2にシートベルト21、52が設けられているため、車両用シート2の車室3内の位置や向きに依らず、シートベルト装置1、51、61、81、91によって乗員を上半身の移動を防止することができる。
【0116】
上記第1実施形態では、横加速度取得部23はシートクッション5の下面に設けられていたが、この態様には限定されない。例えば、横加速度取得部23はシートクッション5の内部や上面、左右側面、又は前後側面に設けられていてもよく、シートバック6の外面、又は内部に設けられていてもよい。このように構成することで、横加速度取得部23が乗員の身体の近傍に設けられるため、乗員の身体に加わる加速度をより正確に且つ簡素に取得することができる。同様に、第4実施形態における補助加速度取得部73についても、シートクッション5又はシートバック6のいずれの場所に設けられていてもよい。
【0117】
上記実施形態では、シートベルト21、52は4点式のものであったが、乗員の左右の肩に掛け渡されるショルダベルト27を含むシートベルトであって、4点式以上のものであればこの態様には限定されない。例えば、シートベルトは股下ベルトを含む5点式のもの、又は6点式のものであってもよい。
【0118】
上記第5実施形態において、横加速度取得部23は舵角センサ84を有していたが、更に車体100に支持され、車輪の回転に基づいて、車両Sの速度(車速)を検知する車速センサ101(図7参照)を含み、制御部24はステップST31において、舵角センサ84及び車速センサ101に基づいて車両Sの横加速度の向き、及び大きさを算出するように構成してもよい。制御部24はステップST31において、操舵角に基づいて車両の旋回半径を予測し、予測された旋回半径及び車速センサ101によって検知された車速に基づいて車両Sの運動を等速回転運動と近似し、乗員に加わる横加速度を算出してもよい。
【0119】
上記第1実施形態では、シートベルト装置1は左右一対のリトラクタ22R、22Lを備えていたが、この態様には限定されない。例えば、図10に示すように、シートベルト装置1は1つのリトラクタ22と、右ショルダベルト27Rを巻取可能な状態及び左ショルダベルト27Lを巻取可能な状態にリトラクタ22を切り替える切替装置150とを含んでいてもよい。
【0120】
上記実施形態では、車両走行中、制御部24はリトラクタ制御処理を繰り返し継続して行うように構成されていたが、この態様には限定されない。例えば、シートクッション5の左右側面に押圧可能なボタン200(図1参照)を設け、制御部24がリトラクタ制御処理を実行しているときにボタン200が押圧されるとリトラクタ制御処理の実行を停止し、ボタン200が再度押圧されると制御部24がリトラクタ制御処理を再開するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 :第1実施形態に係るシートベルト装置
2 :車両用シート
3 :車室
4 :フロア
5 :シートクッション
6 :シートバック
12、13 :フレーム
14、15 :パッド部材
16、17 :表皮材
21 :シートベルト
21L :左ベルト部分
21R :右ベルト部分
22 :リトラクタ
22L :左リトラクタ
22R :右リトラクタ
23 :横加速度取得部
24 :制御部
26L :左ラップベルト
26R :右ラップベルト
27L :左ショルダベルト
27R :右ショルダベルト
51 :第2実施形態に係るシートベルト装置
52 :シートベルト
52L :左ベルト部分
52R :右ベルト部分
61 :第3実施形態に係るシートベルト装置
71 :シートベルト装置
73 :補助加速度取得部
81 :第4実施形態に係るシートベルト装置
84 :舵角センサ
91 :第5実施形態に係るシートベルト装置
92 :カーナビゲーションシステム
S :車両
図1
図2
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