(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】含フッ素エーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 41/16 20060101AFI20221124BHJP
C07C 43/12 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
C07C41/16
C07C43/12
(21)【出願番号】P 2019012663
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-10-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る出願(平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長舩 夏奈子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 峰男
(72)【発明者】
【氏名】赤松 佳則
(72)【発明者】
【氏名】佐久 冬彦
(72)【発明者】
【氏名】大谷 充孝
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03346448(US,A)
【文献】特開2000-247947(JP,A)
【文献】特開2012-087111(JP,A)
【文献】特開2012-201666(JP,A)
【文献】特開平06-211772(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159802(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104774162(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103570590(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0312019(US,A1)
【文献】特開平09-040594(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106748712(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の反応器において、硫酸、クロロ硫酸、発煙硫酸および無水硫酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物と、R
1OH(R
1は、炭素数1~炭素数4のアルキル基である。)で表されるアルコールとを、減圧下、50℃~200℃で反応させて、ジアルキル硫酸を含むガスを発生させる工程、
(b)第2の反応器において、M(OR
2)
n(Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、R
2は、フッ素原子を有する炭素数1~炭素数10の炭化水素基であって
、飽和であっても不飽和であってもよく、nは1または2の整数である。)で表される金属含フッ素アルコキシドを含む水溶液と、工程(a)で発生させたジアルキル硫酸とを、減圧下で反応させて、R
1OR
2で表される含フッ素エーテル化合物を生成させる工程、
を含む、R
1OR
2で表される含フッ素エーテル化合物を製造する方法。
【請求項2】
工程(a)の反応を70℃~180℃で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)で発生させたジアルキル硫酸を含むガスを凝縮して、工程(b)に供する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
R
1はメチル基またはエチル基である、請求項1~請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
R
1OR
2で表される含フッ素エーテル化合物は、その標準沸点が70℃以下である、請求項1~請求項3のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル化剤を用いた含フッ素エーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素エーテルは、その特性により、各種用途に用いられている。例えば、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)は、熱伝達媒体や、発泡剤、洗浄剤等に用いることができる有用な化合物として知られている。
【0003】
含フッ素エーテルを合成する方法としては、含フッ素アルコールを塩基性化合物により含フッ素アルコキシドまたはその塩とし、それをアルキル化剤と反応させる方法が一般的に知られている。このアルキル化剤は、ハロゲン化アルキルやジアルキル硫酸等が一般的である。ジアルキル硫酸は反応性が高いアルキル化剤として知られているが、ジメチル硫酸やジエチル硫酸等は、毒性が高いことが知られており、取り扱いには注意を要する。例えば、特許文献1では、水酸化ナトリウム水溶液の存在下で、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノ-ル(HFIP)を水酸化ナトリウム水溶液でアルコキシドに変換し、それをジメチル硫酸と反応させて、HFE-356mmzを合成する方法が開示されている。
【0004】
また、ジアルキル硫酸を合成する方法として、特許文献2では、ヒドロキシ化合物と硫酸とを、200mmHg以下の圧力下で反応させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第3,346,448号
【文献】特開2000-247947号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ジアルキル硫酸を用いる含フッ素エーテル化合物の製造方法において、安全で、かつ効率的に含フッ素エーテル化合物を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、ジアルキル硫酸を用いる含フッ素エーテル化合物の製造方法において、反応系中でジアルキル硫酸を発生させることでジアルキル硫酸が反応系外に曝露するリスクを低減させ、かつ効率的にエーテル化合物を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の実施態様には、以下の[発明1]~[発明5]が含まれる。
[発明1]
(a)第1の反応器において、硫酸、クロロ硫酸、発煙硫酸および無水硫酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物と、R1OH(R1は、炭素数1~4のアルキル基である。)で表されるアルコールとを、減圧下、50℃~200℃で反応させて、ジアルキル硫酸を含むガスを発生させる工程、
(b)第2の反応器において、M(OR2)n(Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、R2は、フッ素原子を有する炭素数1~10の炭化水素基であって、酸素原子を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、nは1または2の整数である。)で表される金属含フッ素アルコキシドを含む水溶液と、工程(a)で発生させたジアルキル硫酸とを、減圧下で反応させて、R1OR2で表される含フッ素エーテル化合物を生成させる工程、
を含む、R1OR2で表される含フッ素エーテル化合物を製造する方法。
[発明2]
工程(a)の反応を70℃~180℃で行う、発明1に記載の方法。
[発明3]
工程(a)で発生させたジアルキル硫酸を含むガスを凝縮して、工程(b)に供する、発明1または発明2に記載の方法。
[発明4]
R1はメチル基またはエチル基である、発明1~発明3のいずれかに記載の方法。
[発明5]
R1OR2で表される含フッ素エーテル化合物は、その標準沸点が70℃以下である、発明1~発明3のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ジアルキル硫酸を用いる含フッ素エーテル化合物の製造方法において、安全で、かつ効率的に含フッ素エーテル化合物を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る製造装置100の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施の形態や、実施例の記載内容に限定して解釈されるべきではない。
【0012】
本発明の一態様は、少なくとも2つの工程を経て、R1OR2で表される含フッ素エーテル化合物(以下、単に「含フッ素エーテル化合物」とも記す)を製造する方法である(以下、「本製造方法」とも記す)。すなわち、本製造方法では、第1の工程でジアルキル硫酸を発生させ、該発生させたジアルキル硫酸を用いて第2の工程で含フッ素エーテル化合物を製造する。
【0013】
含フッ素エーテル化合物において、R1は、炭素数1~炭素数4のアルキル基であり、R2は、フッ素原子を有する炭素数1~炭素数10の炭化水素基であって、酸素原子を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。含フッ素エーテル化合物は、その標準沸点が70℃以下のものが好ましく、5kPa下での沸点が-10℃以下であるものがより好ましい。
【0014】
[第1の工程]
第1の工程では、第1の反応器において、硫酸、クロロ硫酸、発煙硫酸および無水硫酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(以下、「硫酸エステル化剤」とも記す)と、R1OHで表されるアルコール(以下、「第1のアルコール化合物」とも記す)とを反応させてジアルキル硫酸を含むガスを発生させる。以下、この反応を「第1の反応」とも記す。
【0015】
第1のアルコール化合物において、R1は含フッ素エーテル化合物のR1と同義である。第1のアルコール化合物は、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールが挙げられ、好ましくはメタノール、エタノールである。
【0016】
硫酸エステル化剤の使用量は、第1のアルコール化合物1当量に対して、0.1当量~5当量、好ましくは0.7当量~2当量、特に好ましくは0.8当量~1.2当量である。
【0017】
第1の反応は、減圧下で行う。例えば、20kPa以下、好ましくは0.1kPa~20kPa、より好ましくは0.5kPa~10kPa、特に好ましくは1kPa~5kPaで行う。
【0018】
第1の反応は、圧力にも依存するが、50℃~200℃、好ましくは70℃~180℃、より好ましくは80℃~180℃、特に好ましくは100℃~150℃で行う。
【0019】
第1の反応は、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方式で行ってもよい。また、反応の制御を容易にするために、硫酸エステル化剤と第1のアルコール化合物とを冷却下で混合し、その混合液を上記の圧力下、温度下で反応を進行させることが好ましい。
【0020】
[第2の工程]
第2の工程では、第1の反応により発生したジアルキル硫酸を第2の反応器に供して、M(OR2)nで表される金属含フッ素アルコキシドを含む水溶液と接触させる(以下、「第2の反応」とも記す)。
【0021】
M(OR2)nで表される金属含フッ素アルコキシド(以下、「金属含フッ素アルコキシド」とも記す)において、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属である。R2はフッ素原子を有する炭素数1~炭素数10の炭化水素基であって、直鎖状または分岐鎖状であってもよく、酸素原子を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。nは1または2の整数である。
【0022】
M(OR2)nで表される金属含フッ素アルコキシドを含む水溶液(以下、「金属含フッ素アルコキシド水溶液」とも記す)は、例えば、R2OHで表されるアルコール(以下、「第2のアルコール化合物」とも記す)と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含むアルカリ化合物(具体的には、これらの金属の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、酸化物等)の水溶液との混合により調製することができる。金属含フッ素アルコキシド水溶液を調製する際、アルカリ化合物の水溶液中のアルカリ化合物の濃度は、例えば、5質量%~50質量%、好ましくは10質量%~30質量%とする。また、第2のアルコール化合物1当量に対してアルカリ化合物は、例えば、0.2当量~10当量、好ましくは1当量~3当量、さらに好ましくは1当量~2当量とする。
【0023】
第2の反応において、金属含フッ素アルコキシド水溶液の使用量は、金属含フッ素アルコキシド水溶液に含まれる金属含フッ素アルコキシドと、第2の工程に供されるジアルキル硫酸とに基づいて、当業者により適宜調整可能である。金属含フッ素アルコキシドとジアルキル硫酸とは当量で反応するが、一方を他方よりも過剰に用いてもよい。例えば、金属含フッ素アルコキシド水溶液の使用量は、第2の工程に供されるジアルキル硫酸1当量に対して、金属含フッ素アルコキシドが0.2当量~5当量、好ましくは0.5当量~2当量、より好ましくは0.8当量~1.2当量となるように調整してもよい。
【0024】
第2の反応は、減圧下で行う。例えば、20kPa以下、好ましくは0.1kPa~20kPa、より好ましくは0.5kPa~10kPa、特に好ましくは1kPa~5kPaで行う。
【0025】
第2の反応は、圧力にも依存するが、-20℃~+50℃、好ましくは-10℃~+40℃、より好ましくは-10℃~+30℃で行う。
【0026】
第2の反応は、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方式で行ってもよい。
【0027】
[製造装置]
本製造方法で用いることのできる製造装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る製造装置100の模式図である。製造装置100は、第1の反応器10と第2の反応器50とを備える。
【0028】
第1の反応器10と第2の反応器50は、それぞれ、硫酸エステル化剤やアルカリ化合物に対する耐久性を有するものの使用が好ましい。例えば、ガラス、フッ素樹脂、セラミックス、ハステロイ、SUS316等の材質の反応器を用いることができる。
【0029】
第1の反応器10には、パイプ11からバルブ1を介して硫酸エステル化剤が供給される。また、第1の反応器10には、パイプ13からバルブ2を介して第1のアルコール化合物が供給される。
【0030】
製造装置100は、凝縮器30を備える。第1の反応器10の上部にはパイプ15が接続し、パイプ15は凝縮器30に接続する。凝縮器30に接続するパイプ31は、バルブ3を介して第2の反応器50に接続する。第1の反応器10で発生したジアルキル硫酸を含むガス流れは、凝縮器30で凝縮されて液化して、第2の反応器50に供給される。
【0031】
図1においては、第1の反応器10と第2の反応器50との間に凝縮器30を備える例を示したが、凝縮器30を備えなくてもよい。凝縮器30を備えない場合、第1の反応器10の上部に接続するパイプ15が、バルブを介して第2の反応器50に接続するようにしてもよい。この場合、第1の反応器10で発生したジアルキル硫酸を含むガス流れが、第2の反応器50に供給される。
【0032】
また、凝縮器30と第2の反応器50の間には、凝縮器30で凝縮されて液化したジアルキル硫酸を貯蔵するためのタンクを備えていてもよい。
【0033】
図1には示されていないが、第2の反応器50の上部には、減圧ラインを備える。減圧ラインを備えることで、製造装置100全体を減圧することができる。
【0034】
また、
図1には示されていないが、第1の反応器10や第2の反応器50等の各設備には、冷却や加熱が可能な温度調節装置を備えていてもよい。
【0035】
第2の反応器50には、パイプ51からバルブ4を介して金属含フッ素アルコキシド水溶液が供給される。
【0036】
第2の反応器50において、供給されたジアルキル硫酸と金属含フッ素アルコキシド水溶液を反応させる。反応物は、第2の反応器50に接続するパイプ53からバルブ5を介して抜き出される。
【0037】
本製造方法の一態様において、冷却した第1の反応器10に、硫酸エステル化剤と第1のアルコール化合物とを供給し、混合溶液とする。また、冷却した第2の反応器50に、金属含フッ素アルコキシドアルコキシド水溶液を供給する。その後、製造装置100全体を減圧状態(例えば20kPa以下)とする。続いて第1の反応器10を加熱(例えば50℃~200℃)することで混合溶液からジアルキル硫酸を発生させる。発生したジアルキル硫酸を含むガス流れは、パイプ15を介して第1の反応器10から抜き出され、凝縮器30で液化する。液化したジアルキル硫酸(ジアルキル硫酸を含む液体組成物)を第2の反応器50に供給し、該ジアルキル硫酸と金属含フッ素アルコキシド水溶液とを接触させて、R1OR2で表される含フッ素エーテル化合物を生成させる。その後、第2の反応器50から反応溶液を抜き出し、反応溶液から含フッ素エーテル化合物を精製する。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されない。また、本明細書中、FID%とは、検出器がFIDのガスクロマトグラフで分析した時の面積%を指す。
【0039】
[実施例1]
第1の反応器(300mLガラス製容器)と、凝縮器と、減圧ラインを備えた第2の反応器(500mLガラス製容器)を用意し、それぞれをこの順番に配置されるようにガラス製配管で接続し、反応装置とした。第1の反応器と第2の反応器には温度制御装置、四フッ化エチレン樹脂で被覆された攪拌翼を備えた。
【0040】
第2の反応器に25質量%水酸化カリウム水溶液112gを導入し、0℃に冷却した。水酸化カリウム水溶液を攪拌しながら、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)84gを滴下し、HFIPのカリウム金属アルコキシド水溶液を調製した。
【0041】
第1の反応器にクロロ硫酸117gを導入し、0℃に冷却した。続いて内温が10℃を超えないようにメタノール32gを滴下した。
【0042】
続いて反応装置全体を減圧し、圧力が約3kPaとなったところで、第2の反応器内を撹拌しながら0℃に保持しつつ、第1の反応器内を攪拌しながら100℃に加熱した。加熱により発生したガスは、凝縮器において液へと変化するのが確認された。この液をサンプリングしたところ、ジメチル硫酸が主成分であることが確認された。この液を第2の反応器に導入して、HFIPのカリウム金属アルコキシド水溶液と反応させた。第1の反応器において、ジメチル硫酸の発生が確認できなくなったところで加熱を終了した。その後、第2の反応器における攪拌を1時間続けた。その後、第2の反応器から反応溶液225gを抜き出し、水100gで洗浄して、有機物74gを得た。
【0043】
この有機物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)が83.3FID%、HFIPが12.9FID%、ジメチル硫酸が3.7FID%、その他が0.1FID%であった。
【0044】
[実施例2]
クロロ硫酸の代わりに濃硫酸98gを導入した以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、第2の反応器から抜き出した反応溶液238gの水洗浄により、有機物27gを得た。
【0045】
この有機物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、HFE-356mmzが96.4FID%、HFIPが2.9FID%、ジメチル硫酸が0.8FID%であった。
【0046】
[実施例3]
クロロ硫酸の代わりに25%発煙硫酸233gを導入した以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、第2の反応器から抜き出した反応溶液284gの水洗浄により、有機物98gを得た。
【0047】
この有機物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、HFE-356mmzが85.9FID%、HFIPが8.1FID%、ジメチル硫酸が4.6FID%、その他が1.4FID%であった。
【0048】
実施例1~3から理解されるように、本実施形態を適用することにより、ジアルキル硫酸を反応系内で発生させて安全に含フッ素エーテル化合物を製造できることが分かった。
【0049】
以上述べたように、本発明の実施形態により、ジアルキル硫酸を用いる含フッ素エーテル化合物の製造方法において、反応系中でジアルキル硫酸を発生させることでジアルキル硫酸が反応系外に曝露するリスクを低減させ、かつ効率的にエーテル化合物を製造することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:バルブ、2:バルブ、3:バルブ、4:バルブ、5:バルブ、10:第1の反応器、11:パイプ、13:パイプ、15:パイプ、30:凝縮器、31:パイプ、50:第2の反応器、51:パイプ、53:パイプ、100:製造装置。