IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ソシオネクストの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】加算回路、受信回路及び集積回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20221124BHJP
   H03F 1/22 20060101ALI20221124BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
H03F3/45 110
H03F1/22
H03F3/45
H04L25/02 R
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019570225
(86)(22)【出願日】2018-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2018004457
(87)【国際公開番号】W WO2019155582
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】加納 英樹
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2012/036207(JP,A1)
【文献】特開2005-073234(JP,A)
【文献】再公表特許第2007/110915(JP,A1)
【文献】特開2009-225018(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102780663(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105187342(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0239369(US,A1)
【文献】特開2013-031022(JP,A)
【文献】米国特許第09473330(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/45
H03F 1/22
H04L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電位が供給される電源線に接続された第1電流源と、
前記第1電流源と第1ノード及び第3ノードとの間に接続され、差動入力信号を受ける差動入力回路と、
前記第1電位とは異なる第2電位が供給される電源線と前記第1ノード及び前記第3ノードとの間に接続された第2電流源と、
前記第1電位が供給される電源線と第2ノード及び第4ノードとの間に接続され、前記差動入力信号に基づいて差動出力信号を生成する負荷回路と、
ドレインが前記第2ノードに接続された第1トランジスタと、
ドレインが前記第4ノードに接続された第2トランジスタと、
前記第1ノードと前記第1トランジスタのソースとの間に接続された第1インダクタ回路と、
前記第3ノードと前記第2トランジスタのソースとの間に接続された第2インダクタ回路と、
前記第2電位が供給される電源線と前記第1ノードとの間に接続され、制御入力に応じて電流量が変化する第3電流源と、
前記第2電位が供給される電源線と前記第3ノードとの間に接続され、前記制御入力に応じて電流量が変化する第4電流源と
を有することを特徴とする加算回路。
【請求項2】
第1電位が供給される電源線に接続された第1電流源と、
前記第1電流源と第1ノード及び第3ノードとの間に接続され、差動入力信号を受ける差動入力回路と、
前記第1電位とは異なる第2電位が供給される電源線と前記第1ノード及び前記第3ノードとの間に接続された第2電流源と、
前記第1電位が供給される電源線と第2ノード及び第4ノードとの間に接続され、前記差動入力信号に基づいて差動出力信号を生成する負荷回路と、
ドレインが前記第2ノードに接続された第1トランジスタと、
ドレインが前記第4ノードに接続された第2トランジスタと、
前記第1ノードと前記第1トランジスタのソースとの間に接続された第1インダクタ回路と、
前記第3ノードと前記第2トランジスタのソースとの間に接続された第2インダクタ回路と、
前記第2電位が供給される電源線と前記第1ノードとの間に接続される第3電流源と、
前記第1電位が供給される電源線と前記第1ノードとの間に接続され、制御入力に応じて電流量が変化する第4電流源と、
前記第2電位が供給される電源線と前記第3ノードとの間に接続される第5電流源と、
前記第1電位が供給される電源線と前記第3ノードとの間に接続され、前記制御入力に応じて電流量が変化する第6電流源と
を有することを特徴とする加算回路。
【請求項3】
前記第1ノードに係る寄生容量と前記第1インダクタ回路のインダクタとで並列共振回路を構成し、前記第3ノードに係る寄生容量と前記第2インダクタ回路のインダクタとで並列共振回路を構成することを特徴とする請求項1又は2記載の加算回路。
【請求項4】
入力される差動入力信号を増幅して出力する増幅回路と、
前記増幅回路により増幅された前記差動入力信号に、前に判定された値に応じた制御入力に基づく信号を加算する加算回路を有し、前記加算回路の出力から前記差動入力信号の値を判定する判定回路とを有し、
前記加算回路は、
第1電位が供給される電源線に接続された第1電流源と、
前記第1電流源と第1ノード及び第3ノードとの間に接続され、前記差動入力信号を受ける差動入力回路と、
前記第1電位とは異なる第2電位が供給される電源線と前記第1ノード及び前記第3ノードとの間に接続された第2電流源と、
前記第1電位が供給される電源線と第2ノード及び第4ノードとの間に接続され、前記差動入力信号に基づいて差動出力信号を生成する負荷回路と、
ドレインが前記第2ノードに接続された第1トランジスタと、
ドレインが前記第4ノードに接続された第2トランジスタと、
前記第1ノードと前記第1トランジスタのソースとの間に接続された第1インダクタ回路と、
前記第3ノードと前記第2トランジスタのソースとの間に接続された第2インダクタ回路と、
前記第2電位が供給される電源線と前記第1ノードとの間に接続され、前記制御入力に応じて電流量が変化する第3電流源と、
前記第2電位が供給される電源線と前記第3ノードとの間に接続され、前記制御入力に応じて電流量が変化する第4電流源と
を有することを特徴とする受信回路。
【請求項5】
入力される差動入力信号を増幅して出力する増幅回路と、
前記増幅回路により増幅された前記差動入力信号に、前に判定された値に応じた制御入力に基づく信号を加算する加算回路を有し、前記加算回路の出力から前記差動入力信号の値を判定する判定回路とを有し、
前記加算回路は、
第1電位が供給される電源線に接続された第1電流源と、
前記第1電流源と第1ノード及び第3ノードとの間に接続され、前記差動入力信号を受ける差動入力回路と、
前記第1電位とは異なる第2電位が供給される電源線と前記第1ノード及び前記第3ノードとの間に接続された第2電流源と、
前記第1電位が供給される電源線と第2ノード及び第4ノードとの間に接続され、前記差動入力信号に基づいて差動出力信号を生成する負荷回路と、
ドレインが前記第2ノードに接続された第1トランジスタと、
ドレインが前記第4ノードに接続された第2トランジスタと、
前記第1ノードと前記第1トランジスタのソースとの間に接続された第1インダクタ回路と、
前記第3ノードと前記第2トランジスタのソースとの間に接続された第2インダクタ回路と、
前記第2電位が供給される電源線と前記第1ノードとの間に接続される第3電流源と、
前記第1電位が供給される電源線と前記第1ノードとの間に接続され、前記制御入力に応じて電流量が変化する第4電流源と、
前記第2電位が供給される電源線と前記第3ノードとの間に接続される第5電流源と、
前記第1電位が供給される電源線と前記第3ノードとの間に接続され、前記制御入力に応じて電流量が変化する第6電流源と
を有することを特徴とする受信回路。
【請求項6】
入力される差動入力信号を増幅して出力する増幅回路と、
前記増幅回路により増幅された前記差動入力信号に、前に判定された値に応じた制御入力に基づく信号を加算する加算回路を有し、前記加算回路の出力から前記差動入力信号の値を判定する判定回路と、
前記判定回路で判定された値に係る信号を受けて処理動作を行う内部回路とを有し、
前記加算回路は、
第1電位が供給される電源線に接続された第1電流源と、
前記第1電流源と第1ノード及び第3ノードとの間に接続され、前記差動入力信号を受ける差動入力回路と、
前記第1電位とは異なる第2電位が供給される電源線と前記第1ノード及び前記第3ノードとの間に接続された第2電流源と、
前記第1電位が供給される電源線と第2ノード及び第4ノードとの間に接続され、前記差動入力信号に基づいて差動出力信号を生成する負荷回路と、
ドレインが前記第2ノードに接続された第1トランジスタと、
ドレインが前記第4ノードに接続された第2トランジスタと、
前記第1ノードと前記第1トランジスタのソースとの間に接続された第1インダクタ回路と、
前記第3ノードと前記第2トランジスタのソースとの間に接続された第2インダクタ回路と、
前記第2電位が供給される電源線と前記第1ノードとの間に接続され、前記制御入力に応じて電流量が変化する第3電流源と、
前記第2電位が供給される電源線と前記第3ノードとの間に接続され、前記制御入力に応じて電流量が変化する第4電流源と
を有することを特徴とする集積回路。
【請求項7】
入力される差動入力信号を増幅して出力する増幅回路と、
前記増幅回路により増幅された前記差動入力信号に、前に判定された値に応じた制御入力に基づく信号を加算する加算回路を有し、前記加算回路の出力から前記差動入力信号の値を判定する判定回路と、
前記判定回路で判定された値に係る信号を受けて処理動作を行う内部回路とを有し、
前記加算回路は、
第1電位が供給される電源線に接続された第1電流源と、
前記第1電流源と第1ノード及び第3ノードとの間に接続され、前記差動入力信号を受ける差動入力回路と、
前記第1電位とは異なる第2電位が供給される電源線と前記第1ノード及び前記第3ノードとの間に接続された第2電流源と、
前記第1電位が供給される電源線と第2ノード及び第4ノードとの間に接続され、前記差動入力信号に基づいて差動出力信号を生成する負荷回路と、
ドレインが前記第2ノードに接続された第1トランジスタと、
ドレインが前記第4ノードに接続された第2トランジスタと、
前記第1ノードと前記第1トランジスタのソースとの間に接続された第1インダクタ回路と、
前記第3ノードと前記第2トランジスタのソースとの間に接続された第2インダクタ回路と、
前記第2電位が供給される電源線と前記第1ノードとの間に接続される第3電流源と、
前記第1電位が供給される電源線と前記第1ノードとの間に接続され、前記制御入力に応じて電流量が変化する第4電流源と、
前記第2電位が供給される電源線と前記第3ノードとの間に接続される第5電流源と、
前記第1電位が供給される電源線と前記第3ノードとの間に接続され、前記制御入力に応じて電流量が変化する第6電流源と
を有することを特徴とする集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加算回路、受信回路及び集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
シリアライザ/デシリアライザ(SerDes:Serializer/De-serializer)のデシリアライザの受信回路のフロントエンド部等において、差動対を用いた増幅回路や加算回路が使用されている。これら増幅回路や加算回路は、CMOSテクノロジの微細化等による電源電圧の低電圧化が進んでいる。また、信号振幅レベルの多値化のため、2値のNRZ(Non-Return Zero)信号ではなく、PAM4(Pulse Amplitude Modulation 4)と呼ばれる4値のパルス振幅変調信号を送受信する回路がある。4値のPAM4信号では、各値に対応する信号振幅レベルの間隔は等間隔であることが望ましい。
【0003】
しかし、PAM4信号を受信する受信回路において、増幅回路における差動対のトランジスタが非線形性を有すると、信号振幅レベルが大きい値“00b”(bはバイナリ表記であることを示す)や値“11b”のときにゲインが抑圧されて信号振幅が目減りしてしまう。これにより、PAM4信号におけるアイ(eye)開口部の大きさが変わってしまうため、良好な受信精度を得るには、受信回路の増幅回路におけるゲイン特性に高い線形性が要求される。ゲイン特性が線形性を示す領域を広げるためには、電源電圧を上げる必要がある。また、出力電圧範囲を広げるために増幅回路における負荷抵抗や定電流を増やすことが考えられるが、Nch差動対の場合には出力コモン電圧が下がりトランジスタが動作しなくなるおそれがあるので電源電圧を上げる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8872586号明細書
【文献】米国特許第7848724号明細書
【文献】米国特許第7301401号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低電圧化と線形性の両立を図ることができる受信回路の加算回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
加算回路の一態様は、第1電位が供給される電源線に接続された第1電流源と、第1電流源と第1ノード及び第3ノードとの間に接続され、差動入力信号を受ける差動入力回路と、第1電位とは異なる第2電位が供給される電源線と第1ノード及び第3ノードとの間に接続された第2電流源と、第1電位が供給される電源線と第2ノード及び第4ノードとの間に接続され、差動入力信号に基づいて差動出力信号を生成する負荷回路と、ドレインが第2ノードに接続された第1トランジスタと、ドレインが第4ノードに接続された第2トランジスタと、第1ノードと第1トランジスタのソースとの間に接続された第1インダクタ回路と、第3ノードと第2トランジスタのソースとの間に接続された第2インダクタ回路と、第2電位が供給される電源線と第1ノードとの間に接続され、制御入力に応じて電流量が変化する第3電流源と、第2電位が供給される電源線と第3ノードとの間に接続され、制御入力に応じて電流量が変化する第4電流源とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低電圧化と線形性の両立を図ることができる受信回路の加算回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態における増幅回路の構成例を示す図である。
図2図2は、本実施形態における増幅回路の動作を説明する図である。
図3図3は、本実施形態における増幅回路のゲイン特性の例を示す図である。
図4図4は、本実施形態における増幅回路の他の構成例を示す図である。
図5図5は、本実施形態における加算回路の構成例を示す図である。
図6図6は、本実施形態における加算回路の他の構成例を示す図である。
図7図7は、本実施形態における加算回路の他の構成例を示す図である。
図8図8は、本実施形態における集積回路の構成例を示す図である。
図9A図9Aは、本実施形態における低周波イコライザの構成例を示す図である。
図9B図9Bは、図9Aに示す低周波イコライザの特性を説明する図である。
図9C図9Cは、図9Aに示す低周波イコライザの特性を説明する図である。
図9D図9Dは、図9Aに示す低周波イコライザの特性を説明する図である。
図10A図10Aは、本実施形態における高周波イコライザの構成例を示す図である。
図10B図10Bは、図10Aに示す高周波イコライザの特性を説明する図である。
図10C図10Cは、図10Aに示す高周波イコライザの特性を説明する図である。
図10D図10Dは、図10Aに示す高周波イコライザの特性を説明する図である。
図11図11は、本実施形態における増幅回路の他の構成例を示す図である。
図12図12は、本実施形態における増幅回路の他の構成例を示す図である。
図13図13は、本実施形態における加算回路の他の構成例を示す図である。
図14図14は、本実施形態における加算回路の他の構成例を示す図である。
図15図15は、本実施形態における加算回路の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
本発明の一実施形態における増幅回路について説明する。図1は、本実施形態における増幅回路の構成例を示す図である。本実施形態における増幅回路は、折返し増幅回路(folded cascode 増幅回路)である。本実施形態における増幅回路は、Pチャネル型トランジスタTR11、TR12、Nチャネル型トランジスタTR13、TR14、電流源IS11、IS12、IS13、抵抗R11、R12、及びインダクタL11、L12、L13、L14を有する。
【0011】
Pチャネル型トランジスタTR11は、ソースが電流源IS11に接続され、ゲートが差動入力信号の一方の信号INMが入力される入力端子に接続され、ドレインが電流源IS12に接続される。また、Pチャネル型トランジスタTR12は、ソースが電流源IS11に接続され、ゲートが差動入力信号の他方の信号INPが入力される入力端子に接続され、ドレインが電流源IS13に接続される。
【0012】
電流源IS11は、電流量Iの電流源であり、第1電位(電源電圧における高電位VDD)が供給される電源線に接続される。また、電流源IS12、IS13は、例えば電流量(3/4)Iの電流源であり、第2電位(電源電圧における低電位VSS)が供給される電源線に接続される。電流源IS11、IS12、IS13は、例えばMOSトランジスタにより実現される。
【0013】
抵抗R11は負荷抵抗であり、一端が第1電位(電源電圧における高電位VDD)が供給される電源線に接続され、他端がインダクタL11を介してNチャネル型トランジスタTR13のドレインに接続される。また、抵抗R12は負荷抵抗であり、一端が第1電位(電源電圧における高電位VDD)が供給される電源線に接続され、他端がインダクタL12を介してNチャネル型トランジスタTR14のドレインに接続される。
【0014】
インダクタL11とNチャネル型トランジスタTR13のドレインとの接続点(出力ノード)が差動出力信号の一方の信号OUTPを出力する出力端子に接続される。また、インダクタL12とNチャネル型トランジスタTR14のドレインとの接続点(出力ノード)が差動出力信号の他方の信号OUTMを出力する出力端子に接続される。なお、Nチャネル型トランジスタTR13、TR14のゲートには、AC(交流)的にはグランドであるが、DC(直流)的には所定の値を有するバイアス電圧が印加されている。
【0015】
インダクタL13は、一端がPチャネル型トランジスタTR11と電流源IS12との接続点(折返しノード)に接続され、他端がNチャネル型トランジスタTR13のソースに接続される。また、インダクタL14は、一端がPチャネル型トランジスタTR12と電流源IS13との接続点(折返しノード)に接続され、他端がNチャネル型トランジスタTR14のソースに接続される。
【0016】
すなわち、図1に示す増幅回路は、一対の差動入力を受ける差動入力回路としてのトランジスタTR11、TR12が、第1電位を供給する電源線に接続された電流源IS11と折返しノードとの間に接続される。また、電流源IS12、IS13が、折返しノードと第2電位を供給する電源線との間に接続される。また、負荷回路としての抵抗R11、R12及びインダクタL11、L12が、第1電位を供給する電源線と一対の差動出力を出力する出力ノードとの間に接続され、インダクタL13、L14及びトランジスタTR13、TR14が折返しノードと出力ノードとの間に接続される。
【0017】
ここで、Pチャネル型トランジスタTR11、TR12による差動対の出力電流は、出力可能な振幅範囲(フル振幅)の半分の範囲で線形性を示すものとする。なお、出力可能な振幅範囲(フル振幅)とは、電流の直流成分をIdc(>0)とした場合、電流0を最小値とし電流2Idcを最大値とする範囲である。電流源の電流をIとした場合、差動対の片側のトランジスタに流れる電流値が電流0を最小値とし電流Iを最大値とする範囲(1/2)I±(1/2)I(第1項が直流成分(DC成分)、第2項が交流成分(AC成分)を表す)である。
【0018】
そこで、本実施形態では、入力差動対からの出力電流が線形性を示す、出力可能な振幅範囲(フル振幅)の半分の範囲で駆動するようにし、図1に示すように構成することで、線形性を示す±(1/4)Iの電流幅で駆動される。すなわち、入力差動対の電流IDM、IDPは、(1/2)I±(1/4)Iの範囲となる。そして、交流電流を折返して負荷抵抗である抵抗R11、R12に流す。折返し電流源の電流が(3/4)Iであり、DC成分は引いた値が折返され、AC成分に関しては絶対値はそのままで符号が逆になって折返されるため、増幅回路の出力電流ILP、ILMとして(1/4)I±(1/4)Iの範囲で駆動することができ、第1項のDC電流成分と第2項のAC電流成分が等しくフル振幅での出力を実現することができる。
【0019】
また、電流源IS12、IS13が接続する折返しノードは寄生容量が大きく、高周波での駆動が困難となり、帯域が落ちてしまう。そこで、本実施形態では、折返しノードにインダクタL13、L14を挿入して容量分離を図り、高周波信号の増幅を可能にしている。すなわち、図2に示すように、折返しノードには寄生容量C及びCが接続されるが、折返しノードにインダクタL13、L14を挿入することで寄生容量C及びCが分離できる。また、ノードncn、ncpはトランジスタTR13、TR14のゲートバイアスから電圧が決定するが、インダクタL13、L14と容量Cとで並列共振回路となるようにインダクタL13、L14のインダクタンス値を設定することで、ノードnfn、nfpが共振ノードとなってハイインピーダンスとなり、寄生容量を打ち消すことができる。さらには、インダクタL13、L14を流れる電流により逆起電力が発生し、トランジスタTR13、TR14のソース電圧をブーストする効果が得られる。
【0020】
図3に、本実施形態における増幅回路のゲイン特性の例を示す。図3において、横軸は周波数であり、縦軸はゲインである。また、実線で示すゲイン特性L31が本実施形態における増幅回路のゲイン特性を示し、破線で示すゲイン特性L32が従来の増幅回路のゲイン特性を示している。本実施形態によれば、従来よりも高い周波数まで線形のゲイン特性を示しており、電源電圧を上げることなく、ゲイン特性の線形性が向上している。例えば、折返しノードの寄生容量の容量値Cが100fF~300fFであり、インダクタL13、L14のインダクタンス値Lがレイアウトサイズの制約等により0.2nH~0.8nHである場合、共振周波数f=1/(2π(LC)0.5)に基づいて10GHz~36GHzのPAM4信号(データレートで20Gbs~72Gbs)に対応することが可能となる。
【0021】
以上のように本実施形態によれば、折返し増幅回路の折返しノードにインダクタを挿入することで、高周波信号を増幅する受信回路の増幅回路において、低電圧化と線形性との両立を図ることができ、良好な受信精度を得ることが可能となる。
【0022】
なお、前述した説明では、折返しノードと出力ノードとの間にインダクタL13、L14を接続するようにしているが、図11に示すように折返しノードと電流源IS12、IS13との間にインダクタL15、L16を接続するようにしても良い。図11は、本実施形態における増幅回路の他の構成例を示す図である。図11において、図1に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
図11に示す増幅回路において、Pチャネル型トランジスタTR11のドレインが、インダクタL15を介して電流源IS12に接続され、Pチャネル型トランジスタTR12のドレインが、インダクタL16を介して電流源IS13に接続される。また、Nチャネル型トランジスタTR13のソースが、Pチャネル型トランジスタTR11とインダクタL15との接続点(折返しノード)に接続され、Nチャネル型トランジスタTR14のソースが、Pチャネル型トランジスタTR12とインダクタL16との接続点(折返しノード)に接続される。
【0024】
すなわち、図11に示す増幅回路は、差動入力を受ける差動入力回路としてのトランジスタTR11、TR12が、第1電位を供給する電源線に接続された電流源IS11と折返しノードとの間に接続される。また、電流源IS12、IS13が、折返しノードと第2電位を供給する電源線との間に接続される。また、負荷回路としての抵抗R11、R12及びインダクタL11、L12が、第1電位を供給する電源線と折返しノードとの間に接続され、インダクタL15、L16が折返しノードと電流源IS12、IS13との間に接続される。
【0025】
図11に示すように構成した増幅回路においても、インダクタL15、L16のインダクタンス値を適切に設定することで、インダクタL15、L16と折返しノードの寄生容量とで並列共振回路を構成することができ、図1に示した増幅回路と同様の効果を得ることができる。
【0026】
また、前述した説明では、差動入力を受けるトランジスタにPチャネル型トランジスタを用いた増幅回路を一例として示したが、図4に示すように差動入力を受けるトランジスタにNチャネル型トランジスタを用いる構成も可能であり、同様の効果が得られる。図4は、本実施形態における増幅回路の他の構成例を示す図である。
【0027】
図4に示す増幅回路は、Nチャネル型トランジスタTR21、TR22、Pチャネル型トランジスタTR23、TR24、電流源IS21、IS22、IS23、抵抗R21、R22、及びインダクタL21、L22、L23、L24を有する。
【0028】
Nチャネル型トランジスタTR21は、ソースが電流源IS21に接続され、ゲートが差動入力信号の一方の信号INMが入力される入力端子に接続され、ドレインが電流源IS22に接続される。また、Nチャネル型トランジスタTR22は、ソースが電流源IS21に接続され、ゲートが差動入力信号の他方の信号INPが入力される入力端子に接続され、ドレインが電流源IS23に接続される。
【0029】
電流源IS21は、電流量Iの電流源であり、第1電位(電源電圧における低電位VSS)が供給される電源線に接続される。また、電流源IS22、IS23は、電流量(3/4)Iの電流源であり、第2電位(電源電圧における高電位VDD)が供給される電源線に接続される。電流源IS21、IS22、IS23は、例えばMOSトランジスタにより実現される。
【0030】
抵抗R21は負荷抵抗であり、一端が第1電位(電源電圧における低電位VSS)が供給される電源線に接続され、他端がインダクタL21を介してPチャネル型トランジスタTR23のドレインに接続される。また、抵抗R22は負荷抵抗であり、一端が第1電位(電源電圧における低電位VSS)が供給される電源線に接続され、他端がインダクタL22を介してPチャネル型トランジスタTR24のドレインに接続される。
【0031】
インダクタL21とPチャネル型トランジスタTR23のドレインとの接続点(出力ノード)が差動出力信号の一方の信号OUTPを出力する出力端子に接続される。また、インダクタL22とPチャネル型トランジスタTR24のドレインとの接続点(出力ノード)が差動出力信号の他方の信号OUTMを出力する出力端子に接続される。なお、Pチャネル型トランジスタTR23、TR24のゲートには、AC(交流)的にはグランドであるが、DC(直流)的には所定の値を有するバイアス電圧が印加されている。
【0032】
インダクタL23は、一端がNチャネル型トランジスタTR21と電流源IS22との接続点(折返しノード)に接続され、他端がPチャネル型トランジスタTR23のソースに接続される。また、インダクタL24は、一端がNチャネル型トランジスタTR22と電流源IS23との接続点(折返しノード)に接続され、他端がPチャネル型トランジスタTR24のソースに接続される。
【0033】
すなわち、図4に示す増幅回路は、一対の差動入力を受ける差動入力回路としてのトランジスタTR21、TR22が、第1電位を供給する電源線に接続された電流源IS21と折返しノードとの間に接続される。また、電流源IS22、IS23が、折返しノードと第2電位を供給する電源線との間に接続される。また、負荷回路としての抵抗R21、R22及びインダクタL21、L22が、第1電位を供給する電源線と一対の差動出力を出力する出力ノードとの間に接続され、インダクタL23、L24及びトランジスタTR23、TR24が折返しノードと出力ノードとの間に接続される。
【0034】
また、図4に示した増幅回路では、折返しノードと出力ノードとの間にインダクタL23、L24を接続するようにしているが、図12に示すように折返しノードと電流源IS22、IS23との間にインダクタL25、L26を接続するようにしても良い。図12は、本実施形態における増幅回路の他の構成例を示す図である。図12において、図4に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
図12に示す増幅回路において、Nチャネル型トランジスタTR21のドレインが、インダクタL25を介して電流源IS22に接続され、Nチャネル型トランジスタTR22のドレインが、インダクタL26を介して電流源IS23に接続される。また、Pチャネル型トランジスタTR23のソースが、Nチャネル型トランジスタTR21とインダクタL25との接続点(折返しノード)に接続され、Pチャネル型トランジスタTR24のソースが、Nチャネル型トランジスタTR22とインダクタL26との接続点(折返しノード)に接続される。
【0036】
すなわち、図12に示す増幅回路は、差動入力を受ける差動入力回路としてのトランジスタTR21、TR22が、第1電位を供給する電源線に接続された電流源IS21と折返しノードとの間に接続される。また、電流源IS22、IS23が、折返しノードと第2電位を供給する電源線との間に接続される。また、負荷回路としての抵抗R21、R22及びインダクタL21、L22が、第1電位を供給する電源線と折返しノードとの間に接続され、インダクタL25、L26が折返しノードと電流源IS22、IS23との間に接続される。
【0037】
図12に示すように構成した増幅回路においても、インダクタL25、L26のインダクタンス値を適切に設定することで、インダクタL25、L26と折返しノードの寄生容量とで並列共振回路を構成することができ、図4に示した増幅回路と同様の効果を得ることができる。
【0038】
次に、本発明の一実施形態における加算回路について説明する。図5は、本実施形態における加算回路の構成例を示す図である。本実施形態における加算回路は、折返し増幅回路(folded cascode 増幅回路)を利用した加算回路である。本実施形態における加算回路は、例えば受信回路のDFE(Decision Feedback Equalizer)に使用され、入力される信号にフィードバック信号を加算して出力する。
【0039】
本実施形態における加算回路は、Pチャネル型トランジスタTR31、TR32、Nチャネル型トランジスタTR33、TR34、電流源IS31、IS32、IS33、IS34、IS35、抵抗R31、R32、及びインダクタL31、L32、L33、L34を有する。
【0040】
Pチャネル型トランジスタTR31は、ソースが電流源IS31に接続され、ゲートが差動入力信号の一方の信号INMが入力される入力端子に接続され、ドレインが電流源IS32に接続される。また、Pチャネル型トランジスタTR32は、ソースが電流源IS31に接続され、ゲートが差動入力信号の他方の信号INPが入力される入力端子に接続され、ドレインが電流源IS33に接続される。
【0041】
電流源IS31は、電流量Iの電流源であり、第1電位(電源電圧における高電位VDD)が供給される電源線に接続される。また、電流源IS32、IS33は、電流量Iの電流源であり、第2電位(電源電圧における低電位VSS)が供給される電源線に接続される。電流源IS31、IS32、IS33は、例えばMOSトランジスタにより実現される。
【0042】
抵抗R31は負荷抵抗であり、一端が第1電位(電源電圧における高電位VDD)が供給される電源線に接続され、他端がインダクタL31を介してNチャネル型トランジスタTR33のドレインに接続される。また、抵抗R32は負荷抵抗であり、一端が第1電位(電源電圧における高電位VDD)が供給される電源線に接続され、他端がインダクタL32を介してNチャネル型トランジスタTR34のドレインに接続される。
【0043】
インダクタL31とNチャネル型トランジスタTR33のドレインとの接続点(出力ノード)が差動出力信号の一方の信号OUTPを出力する出力端子に接続される。また、インダクタL32とNチャネル型トランジスタTR34のドレインとの接続点(出力ノード)が差動出力信号の他方の信号OUTMを出力する出力端子に接続される。なお、Nチャネル型トランジスタTR33、TR34のゲートには、AC(交流)的にはグランドであるが、DC(直流)的には所定の値を有するバイアス電圧が印加されている。
【0044】
インダクタL33は、一端がPチャネル型トランジスタTR31と電流源IS32との接続点(折返しノード)に接続され、他端がNチャネル型トランジスタTR33のソースに接続される。また、インダクタL34は、一端がPチャネル型トランジスタTR32と電流源IS33との接続点(折返しノード)に接続され、他端がNチャネル型トランジスタTR34のソースに接続される。
【0045】
電流源IS34は、電流量IFBPの電流源であり、Pチャネル型トランジスタTR31と電流源IS32との接続点(折返しノード)と、第2電位(電源電圧における低電位VSS)が供給される電源線との間に接続される。また、電流源IS35は、電流量IFBMの電流源であり、Pチャネル型トランジスタTR32と電流源IS33との接続点(折返しノード)と、第2電位(電源電圧における低電位VSS)が供給される電源線との間に接続される。なお、電流源IS34の電流量IFBP、及び電流源IS35の電流量IFBMは可変であり、DFEの入力データ判定結果に応じて図示しない制御入力によって制御される。
【0046】
すなわち、図5に示す加算回路は、一対の差動入力を受ける差動入力回路としてのトランジスタTR31、TR32が、第1電位を供給する電源線に接続された電流源IS31と折返しノードとの間に接続される。また、電流源IS32、IS33が、折返しノードと第2電位を供給する電源線との間に接続される。また、負荷回路としての抵抗R31、R32及びインダクタL31、L32が、第1電位を供給する電源線と一対の差動出力を出力する出力ノードとの間に接続され、インダクタL33、L34及びトランジスタTR33、TR34が折返しノードと出力ノードとの間に接続される。また、制御入力(フィードバック信号)により電流量が制御される電流源IS34、IS35が、折返しノードと第2電位を供給する電源線との間に接続される。
【0047】
差動対を用いた一般的な加算回路では、フィードバック信号に応じた電流が0であっても一定の電流が負荷抵抗に流れるため、差動対からの出力電流は出力可能な範囲の一部に限定されてしまう。それに対して、本実施形態における加算回路は、折返し増幅回路を利用することで、差動対からの出力電流はフィードバック信号に応じた電流の制限なく、出力可能な範囲の全体での出力が可能となる。
【0048】
図5に示した加算回路における各電流の値の範囲を以下に示す。
=(3/4)I-(1/2)IFB0
DP、IDM=(1/2)I±(1/4)IAC
FBP、IFBM=(1/2)IFB0±(1/2)IFB
折返し電流のDC成分はI+IFBP/FBM=(3/4)I
LP、ILM=(1/4)I±(1/4)IAC±(1/2)IFB
なお、IFB0は電流源IS34、IS35における電流の直流成分(DC成分)であり、IACは出力電流の交流成分(AC成分)であり、IFBは電流源IS34、IS35における電流のうちの制御入力に応じて制御される交流成分(AC成分)である。
【0049】
このように、差動対電流源はIで、折返しの直流電流は差動合計で(3/2)Iで、負荷抵抗に(1/2)Iの直流電流を流す。上式は差動対の半回路に流れる電流を示す式であり、第1項がDC電流を示す。これにより、フィードバック信号が0である場合にフィードバックに係る直流電流が負荷に流れないため、差動対における出力可能な範囲の全体での出力が可能となる。また、前述した増幅回路と同様に、折返しノードにインダクタL33、L34を挿入することで高周波信号に対応可能である。
【0050】
なお、図5に示した加算回路では、折返しノードと出力ノードとの間にインダクタL33、L34を接続するようにしているが、図13に示すように折返しノードと電流源IS32、IS33との間にインダクタL35、L36を接続するようにしても良い。図13は、本実施形態における加算回路の他の構成例を示す図である。図13において、図5に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0051】
図13に示す加算回路において、Pチャネル型トランジスタTR31のドレインが、インダクタL35を介して電流源IS32に接続され、Pチャネル型トランジスタTR32のドレインが、インダクタL36を介して電流源IS33に接続される。Nチャネル型トランジスタTR33のソースが、Pチャネル型トランジスタTR31とインダクタL35との接続点(折返しノード)に接続され、Nチャネル型トランジスタTR34のソースが、Pチャネル型トランジスタTR32とインダクタL36との接続点(折返しノード)に接続される。また、電流源IS34は、Pチャネル型トランジスタTR31とインダクタL35との接続点(折返しノード)と、第2電位が供給される電源線との間に接続される。電流源IS35は、Pチャネル型トランジスタTR32とインダクタL36との接続点(折返しノード)と、第2電位が供給される電源線との間に接続される。
【0052】
すなわち、図13に示す加算回路は、差動入力を受ける差動入力回路としてのトランジスタTR31、TR32が、第1電位を供給する電源線に接続された電流源IS31と折返しノードとの間に接続される。また、電流源IS32、IS33が、折返しノードと第2電位を供給する電源線との間に接続される。また、負荷回路としての抵抗R31、R32及びインダクタL31、L32が、第1電位を供給する電源線と折返しノードとの間に接続され、インダクタL35、L36が折返しノードと電流源IS32、IS33との間に接続される。また、制御入力(フィードバック信号)により電流量が制御される電流源IS34、IS35が、折返しノードと第2電位を供給する電源線との間に接続される。
【0053】
図13に示すように構成した加算回路においても、インダクタL35、L36と折返しノードの寄生容量とで並列共振回路を構成することができ、図5に示した加算回路と同様の効果を得ることができる。
【0054】
図6は、本実施形態における加算回路の他の構成例を示す図である。図6に示す加算回路は、制御入力(フィードバック信号)に応じた電流を流す電流源IS34、IS35に替えて、電流源IS36、IS37、IS38、IS39を設けたものである。図6において、図5に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0055】
電流源IS36は、電流量IFBMの電流源であり、Pチャネル型トランジスタTR31と電流源IS32との接続点(折返しノード)と、第1電位(電源電圧における高電位VDD)が供給される電源線との間に接続され、電流源IS37は、電流量(1/2)IFB0の電流源であり、Pチャネル型トランジスタTR31と電流源IS32との接続点(折返しノード)と、第2電位(電源電圧における低電位VSS)が供給される電源線との間に接続される。また、電流源IS38は、電流量IFBPの電流源であり、Pチャネル型トランジスタTR32と電流源IS33との接続点(折返しノード)と、第1電位(電源電圧における高電位VDD)が供給される電源線との間に接続され、電流源IS39は、電流量(1/2)IFB0の電流源であり、Pチャネル型トランジスタTR32と電流源IS33との接続点(折返しノード)と、第2電位(電源電圧における低電位VSS)が供給される電源線との間に接続される。なお、電流源IS36の電流量IFBM、及び電流源IS38の電流量IFBPは可変であり、DFEの入力データ判定結果に応じて図示しない制御入力によって制御される。また、図6に示す構成において、電流Iは(3/4)Iである。
【0056】
図6に示した加算回路では、電流源IS36、IS38が直流成分と交流成分を含む電流を流し、電流源IS37、IS39がその直流成分を流すことで、交流成分の電流のみが折返されるようにしている。負荷抵抗R31、R32に流れる電流は、前述した図5に示した加算回路と同様であり、同様の効果が得られる。
【0057】
なお、図6に示した加算回路では、折返しノードと出力ノードとの間にインダクタL33、L34を接続するようにしているが、図14に示すように折返しノードと電流源IS32、IS33との間にインダクタL35、L36を接続するようにしても良い。図14は、本実施形態における加算回路の他の構成例を示す図である。図14において、図6図13に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0058】
図14に示す加算回路において、電流源IS36は、Pチャネル型トランジスタTR31とインダクタL35との接続点(折返しノード)と、第1電位が供給される電源線との間に接続され、電流源IS37は、Pチャネル型トランジスタTR31とインダクタL35との接続点(折返しノード)と、第2電位が供給される電源線との間に接続される。また、電流源IS38は、Pチャネル型トランジスタTR32とインダクタL36との接続点(折返しノード)と、第1電位が供給される電源線との間に接続され、電流源IS39は、Pチャネル型トランジスタTR32とインダクタL36との接続点(折返しノード)と、第2電位が供給される電源線との間に接続される。図14に示すように構成した加算回路においても、インダクタL35、L36と折返しノードの寄生容量とで並列共振回路を構成することができ、図6に示した加算回路と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、前述した説明では、Pチャネル型トランジスタの差動対を用いた加算回路を一例として示したが、図7に示すようにNチャネル型トランジスタの差動対を用いる構成も可能であり、同様の効果が得られる。図7は、本実施形態における加算回路の他の構成例を示す図である。
【0060】
本実施形態における加算回路は、Nチャネル型トランジスタTR41、TR42、Pチャネル型トランジスタTR43、TR44、電流源IS41、IS42、IS43、IS44、IS45、I46、I47、抵抗R41、R42、及びインダクタL41、L42、L43、L44を有する。
【0061】
Nチャネル型トランジスタTR41は、ソースが電流源IS41に接続され、ゲートが差動入力信号の一方の信号INMが入力される入力端子に接続され、ドレインが電流源IS42に接続される。また、Nチャネル型トランジスタTR42は、ソースが電流源IS41に接続され、ゲートが差動入力信号の他方の信号INPが入力される入力端子に接続され、ドレインが電流源IS43に接続される。
【0062】
電流源IS41は、電流量Iの電流源であり、第1電位(電源電圧における低電位VSS)が供給される電源線に接続される。また、電流源IS42、IS43は、電流量Iの電流源であり、第2電位(電源電圧における高電位VDD)が供給される電源線に接続される。電流源IS41、IS42、IS43は、例えばMOSトランジスタにより実現される。
【0063】
抵抗R41は負荷抵抗であり、一端が第1電位(電源電圧における低電位VSS)が供給される電源線に接続され、他端がインダクタL41を介してPチャネル型トランジスタTR43のドレインに接続される。また、抵抗R42は負荷抵抗であり、一端が第1電位(電源電圧における低電位VSS)が供給される電源線に接続され、他端がインダクタL42を介してPチャネル型トランジスタTR44のドレインに接続される。
【0064】
インダクタL41とPチャネル型トランジスタTR43のドレインとの接続点(出力ノード)が差動出力信号の一方の信号OUTPを出力する出力端子に接続される。また、インダクタL42とPチャネル型トランジスタTR44のドレインとの接続点(出力ノード)が差動出力信号の他方の信号OUTMを出力する出力端子に接続される。なお、Pチャネル型トランジスタTR43、TR44のゲートには、AC(交流)的にはグランドであるが、DC(直流)的には所定の値を有するバイアス電圧が印加されている。
【0065】
インダクタL43は、一端がNチャネル型トランジスタTR41と電流源IS42との接続点(折返しノード)に接続され、他端がPチャネル型トランジスタTR43のソースに接続される。また、インダクタL44は、一端がNチャネル型トランジスタTR42と電流源IS43との接続点(折返しノード)に接続され、他端がPチャネル型トランジスタTR44のソースに接続される。
【0066】
電流源IS44は、電流量(1/2)IFB0+IFBMの電流源であり、Nチャネル型トランジスタTR41と電流源IS42との接続点(折返しノード)と、第1電位(電源電圧における低電位VSS)が供給される電源線との間に接続され、電流源IS45は、電流量(1/2)IFB0の電流源であり、Nチャネル型トランジスタTR41と電流源IS42との接続点(折返しノード)と、第2電位(電源電圧における高電位VDD)が供給される電源線との間に接続される。また、電流源IS46は、電流量(1/2)IFB0+IFBPの電流源であり、Nチャネル型トランジスタTR42と電流源IS43との接続点(折返しノード)と、第1電位(電源電圧における低電位VSS)が供給される電源線との間に接続され、電流源IS47は、電流量(1/2)IFB0の電流源であり、Nチャネル型トランジスタTR42と電流源IS43との接続点(折返しノード)と、第2電位(電源電圧における高電位VDD)が供給される電源線との間に接続される。なお、電流源IS44の電流量IFBM、及び電流源IS46の電流量IFBPは可変であり、図示しない制御入力によって制御される。
【0067】
なお、図7に示した加算回路では、折返しノードと出力ノードとの間にインダクタL43、L44を接続するようにしているが、図15に示すように折返しノードと電流源IS42、IS43との間にインダクタL45、L46を接続するようにしても良い。図15は、本実施形態における加算回路の他の構成例を示す図である。図15において、図7に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0068】
図15に示す加算回路において、Nチャネル型トランジスタTR41のドレインが、インダクタL45を介して電流源IS42に接続され、Nチャネル型トランジスタTR42のドレインが、インダクタL46を介して電流源IS43に接続される。Pチャネル型トランジスタTR43のソースが、Nチャネル型トランジスタTR41とインダクタL45との接続点(折返しノード)に接続され、Pチャネル型トランジスタTR44のソースが、Nチャネル型トランジスタTR42とインダクタL46との接続点(折返しノード)に接続される。
【0069】
電流源IS44は、Nチャネル型トランジスタTR41とインダクタL45との接続点(折返しノード)と、第1電位が供給される電源線との間に接続され、電流源IS45は、Nチャネル型トランジスタTR41とインダクタL45との接続点(折返しノード)と、第2電位が供給される電源線との間に接続される。また、電流源IS46は、Nチャネル型トランジスタTR42とインダクタL46との接続点(折返しノード)と、第1電位が供給される電源線との間に接続され、電流源IS47は、Nチャネル型トランジスタTR42とインダクタL46との接続点(折返しノード)と、第2電位が供給される電源線との間に接続される。図15に示すように構成した加算回路においても、インダクタL45、L46と折返しノードの寄生容量とで並列共振回路を構成することができ、図7に示した加算回路と同様の効果を得ることができる。
【0070】
図8は、本実施形態における集積回路の構成例を示す図である。本実施形態における集積回路801は、4値のPAM4信号の入力シリアル信号をパラレル信号に変換するデシリアライザ回路の機能を有する受信回路802、及び受信回路802からのパラレル信号(データ)を受けて処理を行うロジック回路等の内部回路805を有する。受信回路802は、フロントエンド回路803及びクロック生成回路804を有する。フロントエンド回路803は、イコライザ回路(CTLE:Continuous Time Linear Equalizer)810、判定回路(DFE)820、及びデマルチプレクサ830を有する。
【0071】
イコライザ回路810は、前述した本実施形態における増幅回路を用いて構成され、可変ゲインアンプ(VGA)811、高周波イコライザ(HF-CTLE)812、可変ゲインアンプ(VGA)813、及び低周波イコライザ(LF-CTLE)814を有する。可変ゲインアンプ(VGA)811は、伝送路等を介して伝送された差動の入力シリアル信号(PAM4信号)RXIN,RXINXを増幅する。高周波イコライザ(HF-CTLE)812は、伝送路で減衰される高周波成分を補償して回復する回路であり、可変ゲインアンプ(VGA)811で増幅されたPAM4信号の高周波成分を補償する。可変ゲインアンプ(VGA)813は、高周波イコライザ(HF-CTLE)812で高周波成分が補償されたPAM4信号を増幅する。低周波イコライザ(LF-CTLE)814は、伝送路で減衰される高周波成分を補償して回復する回路であり、可変ゲインアンプ(VGA)813で増幅されたPAM4信号の低周波成分を減衰させる。
【0072】
判定回路820は、加算回路821、比較回路822、823、824、デコーダ825、及びデジタルフィルタ826を有する。加算回路821は、前述した本実施形態における加算回路を用いて構成され、イコライザ回路810から出力されたPAM4信号に、デジタルフィルタ826から出力される制御入力(フィードバック信号)に応じた信号を加算して出力する。比較回路822、823、824は、加算回路821から出力される加算処理後のPAM4信号の値を判定するための比較回路である。比較回路822、823、824は互いに異なるしきい値を有し、例えば比較回路822は値“11b”と値“10b”との判定しきい値を有し、比較回路823は値“10b”と値“01b”との判定しきい値を有し、比較回路824は値“01b”と値“00b”との判定しきい値を有する。
【0073】
デコーダ825は、比較回路822~824の出力をデコードして、PAM4信号の値(MSB及びLSB)を決定し出力する。デジタルフィルタ826は、デコーダ825から出力されるPAM4信号の値(MSB及びLSB)をフィルタ処理してフィードバック信号を生成し加算回路821に出力する。デマルチプレクサ830は、判定回路820の出力をパラレル信号RXOUTに変換して出力する。
【0074】
クロック生成回路804は、フロントエンド回路803の出力等を参照してクロック信号を生成し、判定回路820等に供給する。受信回路802から出力されるパラレル信号RXOUTは、フリップフロップ806によって内部回路805に取り込まれ処理等が行われる。
【0075】
図9Aは、図8に示した低周波イコライザの構成例を示す図である。図9Aに示すように、低周波イコライザは、折返し増幅回路901と、ローパスフィルタ903を有するフィードバック増幅回路902とを有する。折返し増幅回路901は、前述した本実施形態における増幅回路と同様に構成され、フィードバック増幅回路902の出力信号FP、FMの入力がない場合に図9Bに示すようなゲイン特性を示す。折返し増幅回路901は、差動入力信号IP、IMを受けて差動出力信号OP、OMを出力する。また、折返し増幅回路901は、フィードバック増幅回路902の出力信号FP、FMが入力される。
【0076】
フィードバック増幅回路902は、折返し増幅回路901から出力される差動出力信号OP、OMを内部のローパスフィルタ903を介して受ける。フィードバック増幅回路902は、図9Cに示すような特性を有しており、差動出力信号OP、OMにおける低周波成分に基づいた出力信号FP、FMを生成し出力する。
【0077】
このようにローパスフィルタ903を有するフィードバック増幅回路902の出力信号FP、FMで折返し増幅回路901にフィードバックをかけることで、折返し増幅回路901における低周波成分に対するゲインを減衰させる。これにより、折返し増幅回路901におけるゲイン特性は、図9Dに示すようになり、受信信号において、伝送路で減衰される高周波成分を補償することが可能となる。
【0078】
図10Aは、図8に示した高周波イコライザの構成例を示す図である。図10Aに示すように、高周波イコライザは、前述した本実施形態における増幅回路と同様に構成され、さらに差動対のトランジスタのソース間に抵抗R101及び容量C101を有する。図10Aに示す高周波イコライザは、差動入力信号IP、IMを受けて差動出力信号OP、OMを出力する。
【0079】
折返し増幅回路は、差動対のトランジスタのソース間の抵抗R101によって相互コンダクタンス(gm)が決まってしまい(gm=1/R)、通常はgm段だけでは図10Bに示すようなゲイン特性を示し、負荷抵抗だけを見た場合には図10Cに示すようなゲイン特性を示す。それに対して、図10Aに示すように、差動対のトランジスタのソース間に抵抗R101に対して並列に容量C101を接続することで、高周波では差動対のトランジスタのソースがショートされて相互コンダクタンス(gm)が高くなり、図10Dに示すように高周波でのゲインが高くなる特性を示す。これにより、図10Aに示す高周波イコライザは、受信信号において、伝送路で減衰される高周波成分を補償することが可能となる。
【0080】
また、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、低電圧化と線形性の両立を図ることができる受信回路の増幅回路及び加算回路を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
図14
図15