(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】バイオマス燃料の燃焼方法
(51)【国際特許分類】
F23B 90/08 20110101AFI20221124BHJP
C10L 10/04 20060101ALI20221124BHJP
C10L 5/44 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
F23B90/08
C10L10/04
C10L5/44
(21)【出願番号】P 2018035187
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000166443
【氏名又は名称】戸田工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋介
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕騎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真司
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-189295(JP,A)
【文献】特開2003-106507(JP,A)
【文献】特開2017-210574(JP,A)
【文献】特開平09-089228(JP,A)
【文献】特開2005-307117(JP,A)
【文献】特開2007-32916(JP,A)
【文献】特開2001-089995(JP,A)
【文献】特開2002-085974(JP,A)
【文献】特開2004-210861(JP,A)
【文献】特開2011-111511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23B 90/08
C10L 10/04
C10L 5/44
F23J 3/00
F23J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス燃料の燃焼方法であって、バイオマス燃料を燃焼させる際に鉄化合物触媒を共存させる
バイオマス燃料の燃焼方法であり、前記鉄化合物触媒がゲータイトであることを特徴とするバイオマス燃料の燃焼方法。
【請求項2】
請求項1記載のバイオマス燃料が、竹、木、草から選ばれる一種以上であるバイオマス燃料の燃焼方法。
【請求項3】
バイオマス燃料に対して鉄化合物触媒の添加量が0.05~5.0重量%である請求項1
又は2に記載のバイオマスの燃料の燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹、木、草等のバイオマス燃料の燃焼方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策として、化石燃料使用量の削減(二酸化炭素放出量の削減)が世界的な課題となっている。その化石燃料代替のエネルギー源の一つとして、カーボンニュートラルな燃料であるバイオマス燃料が注目されている。
【0003】
バイオマス燃料には竹、木、草等から製造されるものが多くあり、チップ状、ペレット状等、その種類は多岐に亘る。
【0004】
バイオマス燃料をボイラ等で焼却した場合、硬いクリンカが生成することが一般に知られている。これはバイオマス中に存在するカリウム成分によるものとされている。
【0005】
クリンカが硬くなると、炉壁に強固に付着し大きな塊状になり、自重に耐えられず炉底へ落下すると炉を傷める可能性がある。また、定期修繕の際、固着したクリンカの除去に時間を要し、再稼動が遅れ経済的な不利益を被るなどの不都合がある。
【0006】
そこで、バイオマス燃料を燃焼させてもクリンカの生成を抑制する又はクリンカが硬くならないことが一般的に求められている。
【0007】
従来、木質系バイオマスを燃焼させる際、あらかじめカリウム分を低減することが提案されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-153790号公報
【文献】特開2012-228683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献1又は2に記載の技術では、カリウム分を低減する工程が必要であり手間が掛かるものであった。
【0010】
そこで、本発明は、カリウム分を含むバイオマス燃料を簡便な方法で焼却する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0012】
すなわち、本発明は、竹、木、草等のバイオマス燃料を用いるボイラの燃焼方法において、事前に0.1~5.0wt%の鉄化合物触媒をバイオマス燃料に混合する、又はボイラ内に気流搬送式で燃焼室に噴霧添加することで、鉄系化合物触媒とバイオマス燃料を共存させながら燃焼することを特徴とするバイオマス燃料の燃焼方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るバイオマス燃料の燃焼方法は、鉄系化合物触媒とバイオマス燃料を共存させて焼成することで、灰の硬化(灰の融点温度低下)の原因といわれているアルカリ金属と鉄系化合物触媒が結合し、アルカリ金属の灰への溶出を抑制することで、灰の硬化、及び灰の壁面への付着を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るバイオマス燃料の燃焼方法について述べる。
【0015】
本発明におけるバイオマス燃料は、竹、木、草等である。あらかじめ、粉砕、乾燥、成型などのいずれかの処理または全ての処理を行ってもよい。また、バイオマス燃料は大きさを1mm~10mm程度に粉砕しておくことが好ましい。また、バイオマス燃料はカリウムを10~70wt%含有するものである。なお、カリウム含有量は、対象となる竹を蛍光X線で分析し、炭素を除いた元素の合計量に対する割合で示した。
【0016】
本発明における鉄化合物触媒は、ゲータイト、アカゲナイト、レピドクロサイト等の含水酸化鉄粒子粉末、ヘマタイト、マグヘマイト、マグネタイト等の酸化鉄粒子粉末の1種又は2種以上からなる。好ましくはゲータイトである。
【0017】
本発明における鉄化合物触媒は、平均粒径が0.01~2.0μmが好ましく、より好ましくは0.02~1.0μmである。平均粒径が0.01μm未満の場合には、ボイラ内で急激に焼結が生じ、かえって粒径が大きくなるためバイオマス燃料と効率よい接触が難しくなる。2.0μmを越える場合においても、バイオマス燃料との効率よく接触することが難しくなるため上記の粒径が望ましい。
【0018】
本発明における鉄化合物触媒の粒子形状は、粒状、球状、紡錘状、針状等のいずれであってもよい。
【0019】
本発明における焼却炉の対象は、機械化バッチ炉、准連続炉等の間欠運転型及び連続運転型のごみ焼却施設であり、特に制限されない。
【0020】
本発明における鉄化合物触媒は、焼却炉においてバイオマス燃料と接触できればよく、あらかじめバイオマスと混合したものを焼却炉に投入するか、焼却炉にバイオマスと鉄化合物触媒を同時又は別々に投入するか、焼却炉の燃焼室に鉄化合物触媒を投入するか、いずれの方法でも良い。
【0021】
本発明における鉄化合物触媒の添加量は、バイオマス燃料に対して、0.05~5.0重量%であり、好ましくは0.2~5.0重量%、より好ましくは0.4~5.0重量%である。0.05重量%未満の場合には、十分なアルカリ金属溶出の抑制効果を得ることができない。また、5重量%を超える場合には、鉄化合物触媒過剰となってしまい後段の集塵機等に過負荷を与えたり、煤塵量が増えてしまうため好ましくない。
【0022】
焼却炉の燃焼温度は特に限定されるものではないが、500~1200℃が好ましい。500℃以下の場合は十分なアルカリ金属溶出の抑制効果を得ることが出来ない。1200℃を超える場合は、炉への負荷が大きくなり、経済的ではない。
【0023】
焼却後のクリンカは、一般的にセメント原料への利用など再生資源として利用できるが、鉄系化合物を用いた場合でも変わらず利用できる。
【0024】
<作用>
本発明では、バイオマス燃料を焼却する際、鉄化合物触媒を共存させることでクリンカの生成が抑制され、しかも、生成したクリンカが柔らかく、扱いやすいものである。このようにクリンカを柔らかくできる現象は未だ明らかにできていないが、鉄化合物触媒がバイオマス燃料に含まれるアルカリ金属と化学的に結合することでアルカリ金属の溶出を抑制し、それにより灰が高融点になることで灰の融解が抑えられ、灰の硬化を防ぐ効果をもたらすと推察している。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0026】
実施例1
バイオマス燃料(竹)15gに鉄化合物触媒(ゲーサイト)を0.015g添加混合し、その化合物を磁性ルツボに入れ、雰囲気焼成炉を用いた1050℃で1時間熱処理を行った。その添加割合は0.1重量%であった。その後、磁性ルツボを室温まで冷却し、超音波発信機を用いて磁性ルツボに付着したクリンカを取り除き、生成したクリンカの付着率と平均圧壊強度を評価した。
使用したバイオマス燃料(竹)はカリウムを54wt%含有するものを使用した。なお、カリウム含有量は、対象となる竹を蛍光X線で分析し、炭素を除いた元素の合計量に対する割合で示した。
【0027】
【0028】
各サンプルの磁器ルツボへの付着率は以下の記述により求めた。室温に冷却した各サンプルの磁器ルツボの重量を測定した。各サンプルの磁器ルツボの底1cmを超音波洗浄機(BRAISON 5510J-DTH)の水槽に浸した。磁器ルツボに3分間超音波による刺激を与え、一部の剥離したサンプルを回収した後に磁器ルツボの重量を測り、式1により付着率を求めた。
【0029】
圧壊強度の測定で用いた各サンプルのクリンカは磁器ルツボから採取した2-4mmの不定形固体であり、株式会社イマダ製EMX-1000N、ロードセルDPU500Nにより各サンプルの平均圧壊強度を算出した。
【0030】
得られたクリンカの磁性ルツボへの付着率は95%であり、クリンカの平均圧壊強度は250Nであった。
【0031】
実施例2~6
鉄化合物触媒の添加量を種々変更した以外は実施例1と同様にして燃焼試験を行った。その結果を表1に示す。
【0032】
比較例1
バイオマス燃料(竹)15gを磁性ルツボに入れ、雰囲気焼成炉を用いた1050℃で1時間熱処理を行った。その添加割合は0.1重量%であった。その後、磁性ルツボを室温まで冷却し、超音波発信機を用いて磁性ルツボに付着したクリンカを取り除き、生成したクリンカの付着率と平均圧壊強度を評価した。
【0033】
得られたクリンカの磁性ルツボへの付着率は100%であり、クリンカの平均圧壊強度は485Nであった。
【0034】
表1により、鉄化合物触媒を用いることでクリンカの付着率及び圧壊強度を著しく低下させ、クリンカの堆積を有効に防止できることを示している。