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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】車両運搬車
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/07 20060101AFI20221124BHJP
   B60P 1/43 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B60P3/07 B
B60P3/07 Z
B60P1/43 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018140850
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020015458
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】弁理士法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】筧 宗和
【審査官】小松 竜一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-189173(JP,A)
【文献】特開2002-096672(JP,A)
【文献】特開2002-356125(JP,A)
【文献】実開昭55-163235(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/07
B60P 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機能を有する車体と、
前記車体上に設置されて車両を運搬するための荷台と、
前記荷台の後端に回動自在に取り付けられる道板と、
前記荷台の後端を支持するローラ装置であって、前記荷台の後端の高さを変えることのできる高さ可変機構を有するローラ装置と、を備え、
前記ローラ装置の前記高さ可変機構は、前記道板の回動に連動して、前記荷台の後端の高さを変えるようになっており、
前記ローラ装置の前記高さ可変機構は、前記道板の回動に連動して回動するL字状に屈曲されたクランク部材と、前記クランク部材の回動に連動して車両前後方向に摺動するスライダと、前記スライダに支承されるローラ部材と、から構成される、車両運搬車。
【請求項2】
走行機能を有する車体と、
前記車体上に設置されて車両を運搬するための荷台と、
前記荷台の後端に回動自在に取り付けられる道板と、
前記荷台の後端を支持するローラ装置であって、前記荷台の後端の高さを変えることのできる高さ可変機構を有するローラ装置と、を備え、
前記ローラ装置の前記高さ可変機構は、前記道板の回動に連動して、前記荷台の後端の高さを変えるようになっており、
前記ローラ装置の前記高さ可変機構は、前記道板の回動に連動して回動するクランク部材と、前記クランク部材の回動に連動して車両前後方向に摺動するスライダと、前記スライダに支承される中間リンク部材と、前記荷台において前記中間リンク部材よりも後方に支承される従動リンク部材と、前記中間リンク部材又は前記従動リンク部材に支承されるローラ部材と、から構成される、車両運搬車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を積載するための荷台が設置された車両運搬車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両を積載するための荷台が設置された車両運搬車が知られている。このような車両運搬車では、故障していない車両を自走させて荷台に載せたり、故障している車両をウインチによって引っ張って荷台に載せたりできるようになっている。
【0003】
車両運搬車では、荷台へ車両を積み込む際に、荷台の後端に道板を取り付けて車両を積み込むようにされている。この道板は、車両を移動させる際に展開させて使用される一方で、それ以外の状態では格納しておく必要がある。この道板の格納方式は、跳ね上げ方式と、スライド方式と、に大別される。
【0004】
しかしながら、道板の格納方式のうち、跳ね上げ方式では、道板の先端が地上から高くなりすぎる、という問題があった。他方、スライド方式では、タイヤと荷台の間に道板の収納スペースを設ける必要があるため、車高が高くなり荷台や道板が急勾配になってしまう、という問題があった。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1に記載された道板装置は、道板をスライド移動する第1の道板と、回動する第2の道板と、から構成されており、格納状態では、第1の道板をスライド移動して格納しつつ、第2の道板を回動させて跳ね上げるようになっている。このような構成であるので、道板の収納スペースを抑制しつつ、道板の先端の高さを低くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-115394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の従来の道板装置は、ワイヤと複数のシーブに加えてモータが必要であり、全体の装置構成が複雑となっていた。さらに、荷台の後端近傍に道板をスライド収納させるスペースが必要なことから荷台の高さが高くなるため、被積載車両を積み込みにくいものとなっていた。
【0008】
そこで、本発明は、簡単な構成によって被積載車両を積み込みやすい車両運搬車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の車両運搬車は、走行機能を有する車体と、前記車体上に設置されて車両を運搬するための荷台と、前記荷台の後端に回動自在に取り付けられる道板と、前記荷台の後端を支持するローラ装置であって、前記荷台の後端の高さを変えることのできる高さ可変機構を有するローラ装置と、を備え、前記ローラ装置の前記高さ可変機構は、前記道板の回動に連動して、前記荷台の後端の高さを変えるようになっており、前記ローラ装置の前記高さ可変機構は、前記道板の回動に連動して回動するL字状に屈曲されたクランク部材と、前記クランク部材の回動に連動して車両前後方向に摺動するスライダと、前記スライダに支承されるローラ部材と、から構成されている。
また、別形態の本発明の車両運搬車は、走行機能を有する車体と、前記車体上に設置されて車両を運搬するための荷台と、前記荷台の後端に回動自在に取り付けられる道板と、前記荷台の後端を支持するローラ装置であって、前記荷台の後端の高さを変えることのできる高さ可変機構を有するローラ装置と、を備え、前記ローラ装置の前記高さ可変機構は、前記道板の回動に連動して、前記荷台の後端の高さを変えるようになっており、前記ローラ装置の前記高さ可変機構は、前記道板の回動に連動して回動するクランク部材と、前記クランク部材の回動に連動して車両前後方向に摺動するスライダと、前記スライダに支承される中間リンク部材と、前記荷台において前記中間リンク部材よりも後方に支承される従動リンク部材と、前記中間リンク部材又は前記従動リンク部材に支承されるローラ部材と、から構成されている。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明の車両運搬車は、車体と、荷台と、道板と、荷台の後端を支持するローラ装置であって、荷台の後端の高さを変えることのできる高さ可変機構を有するローラ装置と、を備えている。このような構成であれば、荷台をスライド移動させる途中では荷台を高くして荷台下面が地面と接触することを防止し、被積載車両の積み込み時には荷台を低くして被積載車両を積み込みやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】荷台が格納された状態の車両運搬車の説明図である。(a)は側面図であり、(b)は平面図であり、(c)は背面図である。
図2】荷台が張り出された状態の車両運搬車の側面図である。
図3】実施例1の高さ可変機構の道板が格納された状態の側面図である。
図4】実施例1の高さ可変機構の道板が展開された状態の側面図である。
図5】変形例の高さ可変機構の道板が格納された状態の側面図である。
図6】実施例2の高さ可変機構の道板が格納された状態の側面図である。
図7】実施例2の高さ可変機構の道板が展開された状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施例1では、高さ可変機構として単純スライダ・クランク機構を有するローラ装置について説明し、実施例2では、高さ可変機構としてスライダ・クランク機構に加えてリンク機構を有するローラ装置について説明する。
【実施例1】
【0013】
(全体構成)
まず、図1(a)~(c)を用いて、本発明の車両運搬車1の全体構成を説明する。図1に示すように、本実施例の車両運搬車1は、走行機能を有する車体10と、車体10の前方に配置されたキャビン11と、キャビン11の後方で車体10の前後方向に延びる左右一対の搖動フレーム12、12と、揺動フレーム12、12に沿ってスライド自在に取り付けられる荷台20と、を備えている。
【0014】
荷台20のスライド機構について簡単に説明する。図示しないが、揺動フレーム12、12の後端は、揺動軸を介して車体10の後端に揺動自在に取り付けられている。また、揺動フレーム12、12の前端どうしは互いに繋がっており、この部分に伸縮シリンダの一端(ロッド側)が接続されている。伸縮シリンダの他端(チューブ側)には、揺動フレーム12、12に沿って移動するローラ部材が取り付けられている。
【0015】
さらに、伸縮シリンダの途中には、上下2つのローラを有する移動体が取り付けられている。このうち上のローラは、揺動フレーム12、12に沿って転動し、下のローラは、車体10に設けたサブフレームに沿って転動する。したがって、伸縮シリンダが伸縮すると、傾斜移動体が移動する際に、揺動フレーム12、12が傾斜移動体によって上方に押し上げられるようにして傾斜することとなる。
【0016】
荷台20は、倍速移動機構を介して伸縮シリンダに取り付けられている。したがって、荷台20は、伸縮シリンダの伸縮量の2倍だけ移動することになる。このようにして、荷台20は、揺動フレーム12に沿って、後方に傾斜しながらスライド移動することになる。
【0017】
なお、図1(b)に示すように、荷台20の前側には、故障などによって自走できなくなった車両(被積載車両)を荷台20に積み込んだり、荷台20から積み下ろししたりするためのウインチ13が設置されている。そして、車両の積載作業中は、車両の前端近傍に掛止されて、車両を前方に引っ張るようになっている。
【0018】
さらに、図1(a)及び(c)に示すように、荷台20の後端には、車両(被積載車両)を荷台20に積み込んだり、荷台20から積み下ろしたりするための道板30が設置されている。道板30は、荷台20と略同一の幅に形成されている。道板30は、その基部を荷台20の後端に回動自在に取り付けられており、専用の道板用シリンダ(不図示)によって開閉できるようにされている。なお、道板30は、手動式の場合には、操作力軽減スプリングを搭載することも好ましい。
【0019】
そして、道板30は、車両の運搬中(移動中)は荷台20に略直角に屈曲される格納状態とされ(図1(a)参照)、車両の積載作業中は荷台20を延長するようにされて先端が路面に接する展開状態とされる(図2参照)。図2に示す展開状態では、荷台20の前端部は、支持脚14によって支持されるようになっている。そして、本実施例の車両運搬車1の荷台20の後端部は、後述するように高さ可変機構60を有するローラ装置50によって支持されている。
【0020】
(ローラ装置の構成)
次に、ローラ装置50の構成について説明する。ローラ装置50は、被積載車両を積載するための荷台20の後端に設置されて荷台20に作用する荷重を地面に伝えている。そして、本実施例のローラ装置50は、図3及び図4に示すように、荷台20の地面からの高さを変えることのできる高さ可変機構60を有している。
【0021】
この高さ可変機構60は、道板30の回動に連動する、単純なスライダ・クランク機構によって構成されている。すなわち、高さ可変機構60によれば、図3に示すように、道板30が荷台20に対して略垂直な姿勢である格納された状態では、荷台20の後端を高い位置に維持するようにされている。一方、高さ可変機構60によれば、図4に示すように、道板30が荷台20に対して略平行な展開された状態では、荷台20の高さを低い位置に維持するようにされている。
【0022】
より具体的に言うと、高さ可変機構60は、図3及び図4に示すように、道板30の回動に連動して回動するクランク部材61と、ロッド62を介してクランク部材61の回動に連動して車両前後方向に摺動するスライダ63と、スライダ63に支承されるローラ部材64と、から構成される。すなわち、本実施例の高さ可変機構60は、単純スライダ・クランク機構であり、道板30の回転運動をスライダ63の直線運動に変換している。
【0023】
クランク部材61は、L字状に屈曲されて形成されており、その一方の端部は道板30に固定されるとともに、他方の端部はロッド62に回動自在に接続されている。ロッド62は、直線の棒状に形成されており、その一方の端部はクランク部材61に回動自在に接続されるとともに、他方の端部はスライダ63に回動自在に接続されている。
【0024】
スライダ63は、荷台20の下部に前後方向に沿って取り付けられた平行なブラケット20a、20aに設けられた長孔20b、20bにスライド移動自在に設置される。すなわち、図示しないが、スライダ63の略中央部分には、長孔20b、20b内をスライド移動する突起63aが設置されている。前述したように、スライダ63には、クランク部材61の回転運動を直線運動に換えながら伝達するロッド62が回動自在に接続されている。そして、スライダ63には、ローラ部材64が回動自在に設置されている。したがって、ローラ部材64は、スライダ63とともに車両前後方向にスライド移動できるようになっている。
【0025】
(作用)
次に、図3及び図4を用いて、高さ可変機構60を搭載するローラ装置50の作用について説明する。図3に示すように、道板30が格納された状態、すなわち被積載車両の運搬中には、道板30は略垂直な位置にあり、クランク部材61の先端6は道板30の回転中心30aから見て後方下部(後ろ斜め下)に位置している。そして、ロッド62は、最後方に位置しており、スライダ63及びローラ部材64は、ブラケット20aの長孔20bの最後方に位置している。荷台20の前方は後方よりも高い位置にあるため、支点間の距離(図2に掲載の支持脚14とローラ装置50のローラ部材64との距離)が遠くなることで荷台20の後方下面は、比較的に上方に位置することになる。
【0026】
次に、図4に示すように、道板30が展開された状態、すなわち被積載車両の積載作業中(乗り降り作業中)には、道板30は専用の道板用シリンダ(不図示)によって横に寝た位置まで回転されており、クランク部材61の先端61aは道板30の回転中心30aから見て前方下部(前斜め下)に位置している。そして、ロッド62は、最前方に位置しており、スライダ63及びローラ部材64は、ブラケット20aの長孔20bの最前方に位置している。荷台20の前方は後方よりも高い位置にあるため、支点間の距離(図2に掲載の支持脚14とローラ装置50のローラ部材64との距離)が短くなることで荷台20の後方下面は、比較的に下方に位置することになる。
【0027】
(効果)
次に、本実施例の車両運搬車1の奏する効果を列挙して説明する。
【0028】
(1)上述してきたように、本実施例の車両運搬車1は、走行機能を有する車体10と、車体10上に設置されて車両を運搬するための荷台20と、荷台20の後端に回動自在に取り付けられる道板30と、荷台20の後端を支持するローラ装置50であって、荷台20の後端の高さを変えることのできる高さ可変機構60を有するローラ装置50と、を備えている。このような構成であれば、簡単な構成によって被積載車両を積み込みやすい車両運搬車1となる。すなわち、高さ可変機構60によって、荷台20のスライド移動の最中は、荷台20を高い位置に維持して荷台20底面の地面との接触を防止するとともに、被積載車両の積み込み作業の最中は、荷台20を低い位置に維持して乗り込み性を向上させることができる。
【0029】
(2)また、ローラ装置50の高さ可変機構60は、道板30の回動に連動して、荷台20の後端の高さを変えるようになっているため、被積載車両の積み込み時に、自動的に荷台20を低い位置に変更することができる。したがって、荷台20の高さを変更し忘れることを防止できる。さらに、道板30の開閉用に搭載している道板用シリンダ(不図示)の動力によって高さ可変機構60を駆動できることで、高さ可変機構60の動力を新たに設置する必要がなく、全体の構成を簡略化できる。
【0030】
(3)さらに、ローラ装置50の高さ可変機構60は、道板30の回動に連動して回動するクランク部材61と、クランク部材61の回動に連動して車両前後方向に摺動するスライダ63と、スライダ63に支承されるローラ部材64と、から構成されている。このような構成であれば、道板30の回動を無駄なくスライダ63に伝達して、ローラ部材64を車両前後方向に移動させることができる。
【0031】
(変形例)
さらに、図5に示すように、荷台20のブラケット20aに設けられる長孔20bは、斜めに傾斜させることも好ましい。すなわち、この変形例の長孔20bは、車両前方側が上で車両後方側が下になるように、斜めに形成されている。
【0032】
したがって、道板30が格納された状態では、ローラ部材64は最後方かつ最下方に位置し、道板30が展開された状態では、ローラ部材64は最前方かつ最上方に位置するようになる。このように長孔20bを斜めに形成することによって、スライダ部材63を車両前後方向に移動させる間に、スライダ部材63を上下方向にも移動させることができる。
【0033】
このため、簡単な構成によって、よりいっそう被積載車両を積み込みやすい車両運搬車1となる。すなわち、高さ可変機構60によって、荷台20のスライド移動の最中は、荷台20をより高い位置に維持して荷台20底面の地面との接触を防止するとともに、被積載車両の積み込み作業の最中は、荷台20をより低い位置に維持して乗り込み性を向上させることができる。
【実施例2】
【0034】
以下、図6及び図7を用いて、実施例1とは異なる高さ可変機構70について説明する。なお、実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0035】
(構成)
まず構成について説明すると、本実施例の高さ可変機構70は、道板30の回動に連動する、スライダ・クランク機構及びリンク機構によって構成されている。すなわち、高さ可変機構70によれば、図6に示すように、道板30が荷台20に対して略垂直な姿勢である格納された状態では、荷台20の後端を高い位置に維持するようにされている。一方、高さ可変機構70によれば、図7に示すように、道板30が荷台20に対して略平行な展開された状態では、荷台20の高さを低い位置に維持するようにされている。
【0036】
高さ可変機構70は、具体的には、図6及び図7に示すように、道板30の回動に連動して回動するクランク部材71と、ロッド72を介してクランク部材71の回動に連動して車両前後方向に摺動するスライダ73と、スライダ73に支承される中間リンク部材74と、荷台20において中間リンク部材74よりも後方に支承される従動リンク部材75と、この中間リンク部材74又は従動リンク部材75に支承されるローラ部材76と、から構成される。すなわち、本実施例の高さ可変機構70は、スライダ・クランク機構に加えてリンク機構から構成されており、道板30の回転運動をスライダ73の直線運動に変換し、さらにリンク機構によってスライダ73の直線運動をローラ部材76の上下の運動に変換している。
【0037】
クランク部材71は、L字状に屈曲されて形成されており、その一方の端部は道板30に固定されるとともに、他方の端部はロッド72に回動自在に接続されている。ロッド72は、直線の棒状に形成されており、その一方の端部はクランク部材71に回動自在に接続されるとともに、他方の端部はスライダ73に回動自在に接続されている。
【0038】
スライダ73は、荷台20の下部に前後方向に沿って取り付けられた平行なブラケット20a、20aに設けられた長孔20b、20bにスライド移動自在に設置される。すなわち、図示しないが、スライダ73の略中央部分には、長孔20b、20b内をスライド移動する突起73aが設置されている。前述したように、スライダ73には、クランク部材71の回転運動を直線運動に換えながら伝達するロッド72が回動自在に接続されている。
【0039】
そして、このスライダ73には、中間リンク部材74が回動自在に接続されている。中間リンク部材74の一方の端部はスライダ73に回動自在に接続されるとともに、他方の端部は従動リンク部材75と回動自在に接続されている。従動リンク部材75の一方の端部は中間リンク部材74と回動自在に接続されるとともに、他方の端部は荷台20において中間リンク部材74(スライダ73)よりも後方に回動自在に接続されている。そして、中間リンク部材74と従動リンク部材75のジョイント部分(節)に、ローラ部材76が回動自在に接続されている。したがって、ローラ部材76は、スライダ73によって車両前後方向にスライド移動しつつ、中間リンク部材74及び従動リンク部材75によって上下方向にも移動するようになっている。
【0040】
(作用)
次に、図6及び図7を用いて、高さ可変機構70を搭載するローラ装置50の作用について説明する。図6に示すように、道板30が格納された状態、すなわち被積載車両の運搬中には、道板30は略垂直な位置にあり、クランク部材71の先端71aは道板30の回転中心30aから見て後方下部(後ろ斜め下)に位置している。そして、ロッド72は、最後方に位置しており、スライダ73は、ブラケット20aの長孔20bの最後方に位置している。そうすると、中間リンク部材74と従動リンク部材75のなす角度は小さくなり、ローラ部材76は荷台20から最も離れた最下位に位置する。さらに、荷台20の前方は後方よりも高い位置にあるため、支点間の距離(図2に掲載の支持脚14とローラ装置50のローラ部材76との距離)が遠くなることで荷台20の下面は、比較的に上方に位置することになる。
【0041】
次に、図7に示すように、道板30が展開された状態、すなわち被積載車両の積載作業中には、道板30は専用の道板用シリンダ(不図示)によって横に寝た位置まで回転されており、クランク部材71の先端71aは道板30の回転中心30aから見て前方下部(前斜め下)に位置している。そして、ロッド72は、最前方に位置しており、スライダ73は、ブラケット20aの長孔20bの最前方に位置している。そうすると、中間リンク部材74と従動リンク部材75のなす角度は大きくなり、ローラ部材76は荷台20に最も近い最上位に位置する。さらに、荷台20の前方は後方よりも高い位置にあるため、支点間の距離(図2に掲載の支持脚14とローラ装置50のローラ部材76との距離)が短くなることで荷台20の下面は、比較的に下方に位置することになる。
【0042】
(効果)
次に、本実施例の車両運搬車1の奏する効果を列挙して説明する。
【0043】
(1)上述してきたように、本実施例の車両運搬車1は、走行機能を有する車体10と、車体10上に設置されて車両を運搬するための荷台20と、荷台20の後端に回動自在に取り付けられる道板30と、荷台20の後端を支持するローラ装置50であって、荷台20の後端の高さを変えることのできる高さ可変機構70を有するローラ装置50と、を備えている。このような構成であれば、簡単な構成によって被積載車両を積み込みやすい車両運搬車1となる。すなわち、高さ可変機構70によって、荷台20のスライド移動の最中は、荷台20を高い位置に維持して荷台20底面の地面との接触を防止するとともに、被積載車両の積み込み作業の最中は、荷台20を低い位置に維持して乗り込み性を向上させることができる。
【0044】
(2)そして、ローラ装置50の高さ可変機構70は、道板30の回動に連動して回動するクランク部材71と、クランク部材71の回動に連動して車両前後方向に摺動するスライダ73と、スライダ73に支承される中間リンク部材74と、荷台20において中間リンク部材74よりも後方に支承される従動リンク部材75と、中間リンク部材74又は従動リンク部材75に支承されるローラ部材76と、から構成される。このような構成であれば、道板30の回動を無駄なくスライダ73に伝達し、さらに中間リンク部材74及び従動リンク部材75から構成されるリンク機構によって、ローラ部材76を車両前後方向及び上下方向に移動させることができる。
【0045】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【0046】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0047】
例えば、実施例1の変形例では、斜めに傾斜した「直線状」の長孔20bについて説明したが、これに限定されるものではなく、斜めに傾斜した「曲線状」や「円弧状」の長孔20bであってもよいし、直線と曲線を組み合わせたものであってもよい。
【0048】
また、実施例2では、中間リンク部材74と従動リンク部材75のジョイント部分(節)に、ローラ部材76が回動自在に支承される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ローラ部材76はいずれか一方に支承されていればよい。
【符号の説明】
【0049】
1:車両運搬車; 10:車体;
20:荷台; 30:道板;
50:ローラ装置;
60:高さ可変機構;
61:クランク部材; 62:ロッド; 63:スライダ; 64:ローラ部材;
70:高さ可変機構;
71:クランク部材; 72:ロッド; 73:スライダ; 74:中間リンク部材;
75:従動リンク部材; 76:ローラ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7