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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】磁場発生装置及び核磁気共鳴装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 24/00 20060101AFI20221124BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20221124BHJP
   H01F 6/06 20060101ALI20221124BHJP
   H01F 7/20 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
G01N24/00 600D
A61B5/055 331
A61B5/055 360
H01F6/06 130
H01F7/20 C ZAA
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019002693
(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公開番号】P2020112408
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳 陽介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】仲村 高志
(72)【発明者】
【氏名】内海 博明
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-044020(JP,A)
【文献】特開2005-123230(JP,A)
【文献】特開平07-294035(JP,A)
【文献】特開2009-097964(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021506(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/00-G01N 22/04
G01N 24/00-G01N 24/14
G01R 33/00-G01R 33/64
A61B 5/055
H01F 6/00-H01F 6/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷熱を生成する冷凍機と、
前記冷凍機により生成された冷熱が伝達されるコールドヘッドと、
円筒状に形成されるとともに、超電導遷移温度以下の温度に冷却された状態で磁場を捕捉することにより磁場を発生する超電導体と、
前記コールドヘッドから延設されるとともにその延設端にて前記超電導体に熱的接触したコールドヘッド延長部と、
前記コールドヘッド、前記コールドヘッド延長部、及び前記超電導体を収容する内部空間を有する真空断熱容器と、
を備え、
前記超電導体の内周側に、前記超電導体の軸方向に沿って、前記内部空間とは空間的に隔絶され、一方端が外部に開口した室温ボア空間が形成されており、
前記コールドヘッドと前記室温ボア空間の間に、前記室温ボア空間の他方端に連通し、外部に開口した連通空間が形成されており、
前記コールドヘッドを前記超電導体の軸方向に投影した投影空間内で、前記室温ボア空間の両端が外部に連通している、磁場発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁場発生装置において、
前記真空断熱容器は、
前記超電導体が内部に配設される第一内部空間が形成された第一容器部と、
前記コールドヘッド延長部が内部に配設されるとともに前記第一内部空間に連通する第二内部空間が形成された第二容器部と、
前記コールドヘッドが内部に配設されるとともに前記第二内部空間に連通する第三内部空間が形成された第三容器部と、
を有し、
前記第一容器部は、
前記超電導体の外周面に対面する外周壁部と、前記超電導体の内周面に対面する内周壁部とを有し、
前記外周壁部と前記内周壁部により囲まれた空間により前記第一内部空間が形成され、
前記内周壁部の内周側の空間により前記室温ボア空間が形成され、
前記室温ボア空間は、その一方端にて外部に開口し、前記超電導体の軸方向に延設されるとともに前記第一容器部を貫通するように構成され、
前記第二容器部に前記連通空間が形成されている、
磁場発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の磁場発生装置において、
前記超電導体の軸方向に垂直な前記連通空間の断面積が、前記超電導体の軸方向に垂直な前記室温ボア空間の断面積よりも大きくなるように、前記連通空間が形成されている、磁場発生装置。
【請求項4】
請求項2又は3のいずれか1項に記載の磁場発生装置において、
前記コールドヘッド延長部は、前記コールドヘッドから互いに平行に延設された一対の棒状延長部により構成され、
前記第二容器部は、一方の前記棒状延長部が収容される第一収容空間が内部に形成された第一収容部と、他方の前記棒状延長部が収容される第二収容空間が内部に形成された第二収容部とを有し、
前記第一収容空間及び前記第二収容空間により前記第二内部空間が形成され、
前記連通空間は、前記第一収容部と前記第二収容部との間の空間により形成される、磁場発生装置。
【請求項5】
請求項4に記載の磁場発生装置において、
前記連通空間は、前記超電導体の軸方向に直交する方向に沿って前記第二容器部を貫通するように形成されている、磁場発生装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の磁場発生装置と、
前記室温ボア空間内に配設され、前記室温ボア空間に静磁場を印加しているときに前記室温ボア空間内の測定試料にラジオ波を印加した場合に生じるNMR信号を検出する検出コイルと、
前記室温ボア空間内に配設され、前記検出コイルにて検出されたNMR信号の共鳴信号を得るための同調回路と、
を備える、核磁気共鳴装置。
【請求項7】
請求項6に記載の核磁気共鳴装置において、
前記同調回路は、前記室温ボア空間の両端のうち測定試料が入った試料管が前記室温ボア空間に挿入される端部とは反対側の端部と、前記試料管が配設されている位置との間の領域に配設される、核磁気共鳴装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場発生装置及び核磁気共鳴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(NMR)は、静磁場中に置かれた試料の原子核に固有の周波数をもつ電磁波(ラジオ波)を印加したときに発生する原子核スピン(磁気モーメント)の共鳴現象である。核磁気共鳴装置(NMR装置)は、斯かる共鳴現象をNMR信号(NMRスペクトル)として検出して、試料の構造を解析する機器である。磁場強度が大きい程、NMR信号の感度と分解能が高くなるため、NMR装置には強い磁場を発生するための磁場発生装置(磁極とも言う)が備えられる。
【0003】
強磁場を発生させるために、磁場発生装置に塊(バルク)状の超電導体が用いられることがある。この場合、超電導遷移温度が高く且つ冷却が比較的容易な、第二種超電導体からなる塊(バルク)状の超電導体(超電導バルク)が好ましく用いられる。
【0004】
特許文献1は、円筒状の超電導バルクを用いた磁場発生装置を開示する。この磁場発生装置によれば、円筒状の超電導バルクの内周空間に、測定試料が置かれる室温ボア空間が確保できるように、超電導バルクを収納する真空断熱容器が設計されている。また円筒状の超電導バルクは冷凍機のコールドヘッド上に載置される。このため冷凍機にて生成した冷熱がコールドヘッドを介して超電導バルクに伝達されて、超電導バルクが超電導遷移温度以下の温度に冷却される。超電導遷移温度以下の温度に冷却された超電導バルクが外部磁場を捕捉することにより、磁場が発生する。こうして発生する磁場によって、室温ボア空間が静磁場空間にされる。
【0005】
特許文献1記載の磁場発生装置のように超電導体を冷凍機により冷却することにより、液体ヘリウム等の寒剤を用いることなく超電導体を超電導遷移温度以下の温度に冷却することができる。このため核磁気共鳴装置のコンパクト化に資することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-006021号公報
【発明の概要】
【0007】
(発明が解決しようとする課題)
特許文献1に開示の磁場発生装置によれば、超電導体の下側に冷凍機のコールドヘッドが配設される。コールドヘッドは超電導体の下方領域の全体に配設されており、超電導体の内周側に形成される室温ボア空間の下方領域はコールドヘッドにより塞がれる。このため、この磁場発生装置をNMR装置に組み込んだ場合、測定試料が入った試料管やNMR信号を検出するための検出ユニット(プローブユニット)を室温ボア空間に配設するにあたり、室温ボア空間の上方端からこれらを室温ボア空間に挿入しなければならない。この場合、試料管が室温ボア空間の上方端から室温ボア空間に挿入されると、挿入された試料管によって室温ボア空間の上方端側の空間のかなりの部分が占有されるため、その後に室温ボア空間に上方端から挿入することができる検出ユニットの大きさが制限される。
【0008】
また、検出ユニットは、NMR信号を検出する検出コイルと、検出コイルにより検出されたNMR信号の共鳴信号を得るための同調回路を有する。このうち検出コイルは測定試料の近傍に配置しなければならないので、室温ボア空間内に配設される。一方、同調回路は比較的大きいために、室温ボア空間の上方端から室温ボア空間に挿入しようとしても、試料管に干渉してしまうため挿入することができない。つまり、同調回路を、試料管が挿入された側の端部から室温ボア空間に挿入することができない。
また、同調回路を室温ボア空間に挿入してから試料管を挿入すれば、試料管に干渉することなく同調回路に挿入することが可能である。しかしながらこの場合、室温ボア空間内に挿入された同調回路を外部から操作するために同調回路に接続されたガイドワイヤ等の操作手段を室温ボア空間の上方端側から外部に導出するためのスペースを室温ボア空間内に確保することができない。つまり、同調回路を室温ボア空間内に配設できたとしても、その同調回路を操作することができない。そのため同調回路は従来では室温ボア空間の外部に配設される。例えば、同調回路は、磁場発生装置の上部に配設される。
【0009】
同調回路を室温ボア空間の外部に配設した場合、検出コイルと同調回路との距離が長くなる。それに伴い、検出コイルと同調回路とを電気的に接続する伝送線の長さが長くなる。また、同調回路は、NMR信号の感度を調整するための可変容量コンデンサを有しており、可変容量コンデンサの容量を調整することで、NMR信号の感度が調整される。ところが、検出コイルと同調回路とを接続する伝送線の長さが長くなると、伝送線の持つ浮遊容量が大きくなってNMR信号の感度の調整に悪影響を及ぼす。その結果、NMR信号の感度が低下する。
【0010】
そこで本発明は上記実情に鑑みてなされたものである。すなわち本発明は、冷凍機により冷却される円筒状の超電導体を有する磁場発生装置を核磁気共鳴装置に用いた場合に、検出コイルと同調回路との間の距離が長いことに起因したNMR信号の感度の低下が抑えられるように構成される磁場発生装置、及び、そのように構成された磁場発生装置を有する核磁気共鳴装置を提供することを、目的とする。
【0011】
(課題を解決するための手段)
本発明に係る磁場発生装置は、冷熱を生成する冷凍機(10)と、冷凍機により生成された冷熱が伝達されるコールドヘッド(20)と、円筒状に形成されるとともに、超電導遷移温度以下の温度に冷却された状態で磁場を捕捉することにより磁場を発生する超電導体(40)と、コールドヘッドから延設されるとともにその延設端にて超電導体に熱的接触したコールドヘッド延長部(31,32)と、コールドヘッド、コールドヘッド延長部、及び超電導体を収容する内部空間を有する真空断熱容器(50)と、を備える。また、超電導体の内周側に、超電導体の軸方向に沿って、内部空間とは空間的に隔絶され、一方端が外部に開口した室温ボア空間(BS)が形成されており、コールドヘッドと室温ボア空間の間に、室温ボア空間の他方端に連通し、外部に開口した連通空間(CS)が形成されている。そして、コールドヘッドを超電導体の軸方向に投影した投影空間内で、室温ボア空間の両端が外部に連通している。
【0012】
本発明によれば、円筒状の超電導体の内周側に設けられる室温ボア空間の両端が外部に連通する。このため両端のいずれからも室温ボア空間にアクセスすることができる。よって、室温ボア空間の一方端側から例えば測定試料が入れられた試料管を室温ボア空間に挿入し、室温ボア空間の他方端側から検出ユニットの検出コイル及び同調回路を室温ボア空間に挿入することができる。このとき、同調回路は、試料管の挿入端部とは反対側の端部から室温ボア空間に挿入されるので、試料管に干渉することなく同調回路を室温ボア空間に挿入して、所望の位置に配設することができる。こうして室温ボア空間に検出コイル及び同調回路を配設した場合、検出コイルと同調回路との間の距離が、従来よりも短縮される。よって、検出コイルと同調回路との距離が長いことに起因した、NMR信号の感度の低下を抑えることができる。また、室温ボア空間の両端のうち試料管の挿入端部とは反対側の端部領域(反対側端部領域)には検出コイルや試料管が配設されていないスペースが存在する。よって、この反対側端部領域を通じて室温ボア空間内の同調回路に接続されたガイドワイヤ等の操作手段を外部に導出することができる。このため室温ボア空間内の同調回路を外部から操作して、NMR信号の感度を調整することができる。
【0013】
この場合、真空断熱容器は、超電導体が内部に配設される第一内部空間(S1)が形成された第一容器部(51)と、コールドヘッド延長部が内部に配設されるとともに第一内部空間に連通する第二内部空間(S2)が形成された第二容器部(52)と、コールドヘッドが内部に配設されるとともに第二内部空間に連通する第三内部空間(S3)が形成された第三容器部(53)と、を有するとよい。また、第一容器部は、超電導体の外周面に対面する外周壁部(511)と、超電導体の内周面に対面する内周壁部(512)とを有し、外周壁部と内周壁部により囲まれた空間により第一内部空間が形成され、内周壁部の内周側の空間により室温ボア空間が形成されるとよい。また、室温ボア空間は、その一方端にて外部に開口し、超電導体の軸方向に延設されるとともに第一容器部を貫通するように構成されるとよい。そして、第二容器部に連通空間(CS)が形成されているとよい。
【0014】
これによれば、超電導体とコールドヘッドとの間にコールドヘッド延長部を介在させ、このコールドヘッド延長部を収容する真空断熱容器の第二容器部に、外部に開口するとともに室温ボア空間の他方端に連通する連通空間が形成される。このように構成することにより、室温ボア空間の一方端が外部に開口するとともに、室温ボア空間の他方端が連通空間を通じて外部に開口する。このため、外部に開口した連通空間を通じて、検出ユニットの検出コイル及び同調回路を室温ボア空間の他方端側から室温ボア空間に挿入することができる。また、室温ボア空間内の同調回路に接続された操作手段を、室温ボア空間の他方端側の領域から連通空間を通じて外部に導出することができる。そして、導出された操作手段により、室温ボア空間内の同調回路を操作して、NMR信号の感度を調整することができる。
【0015】
さらにこの場合、超電導体の軸方向に垂直な連通空間の断面積が、超電導体の軸方向に垂直な室温ボア空間の断面積よりも大きくなるように、連通空間が形成されているとよい。これによれば、連通空間の断面積が大きいので、連通空間を通じて検出コイル及び同調回路を室温ボア空間に挿入するための作業がしやすい。つまり、検出コイル及び同調回路を室温ボア空間に挿入する作業性を向上させることができる。
【0016】
コールドヘッド延長部は、コールドヘッドから互いに平行に延設された一対の棒状延長部(31,31)により構成されていてもよい。この場合、第二容器部は、一方の棒状延長部が収容される第一収容空間(S21)が内部に形成された第一収容部(52a)と、他方の棒状延長部が収容される第二収容空間(S22)が内部に形成された第二収容部(52a)とを有し、第一収容空間及び第二収容空間により第二内部空間が形成され、連通空間は、第一収容部と第二収容部との間の空間により形成されるとよい。これによれば、一対の棒状延長部が内部に配設される第二容器部の第一収容部と第二収容部との間の空間を利用して、室温ボア空間に連通した連通空間を形成することができる。
【0017】
この場合、連通空間は、超電導体の軸方向に直交する方向に沿って第二容器部を貫通するように形成されているとよい。これによれば、連通空間の両端が外部に開口することになるので、連通空間のいずれの端部からも連通空間にアクセスすることができる。このため、連通空間を通じて室温ボア空間に検出ユニットを配設する際における作業性をより向上させることができる。
【0018】
また、本発明は、上記構成の磁場発生装置と、室温ボア空間内に配設され、室温ボア空間に静磁場を印加しているときに室温ボア空間内の測定試料にラジオ波を印加した場合に生じるNMR信号を検出する検出コイル(83)と、室温ボア空間内に配設され、検出コイルにて検出されたNMR信号の共鳴信号を得るための同調回路(84)と、を備える、核磁気共鳴装置を提供する。
【0019】
本発明によれば、室温ボア空間内に検出コイル及び同調回路が共に配設されているため、検出コイルと同調回路との間の距離を短くすることができる。このため、検出コイルと同調回路との間の距離が長いことに起因する、NMR信号の感度の低下を抑えることができる。
【0020】
この場合、同調回路は、室温ボア空間の両端のうち測定試料が入った試料管が室温ボア空間に挿入される端部とは反対側の端部と、試料管が配設されている位置との間の領域に配設されるとよい。また、同調回路は、試料管の直下位置に配設されるとよい。これによれば、検出コイルと同調回路との間の距離をより短くすることができる。このため、検出コイルと同調回路との間の距離が長いことに起因する、NMR信号の感度の低下をより一層抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、第一実施形態に係る磁場発生装置の側面図である。
図2図2は、第一実施形態に係る磁場発生装置の正面図である。
図3図3は、図1のIII-III線断面図である。
図4図4は、図2のIV-IV線断面図である。
図5図5は、図3のV-V線断面図である。
図6図6は、連通空間付近の構造を模式的に示す斜視図である。
図7図7は、第一実施形態に係る磁場発生装置を組み込んだ核磁気共鳴装置の概略図である。
図8図8は、第一実施形態に係る磁場発生装置を組み込んだ核磁気共鳴装置の概略図である。
図9図9は、分析装置86の構成を概略的に示す図である。
図10図10は、伝送線の長さと、NMR信号の感度との関係を示すグラフである。
図11図11は、第二実施形態に係る磁場発生装置の側面図である。
図12図12は、第二実施形態に係る磁場発生装置の正面図である。
図13図13は、図11のXIII-XIII線断面図である。
図14図14は、図12のXIV-XVI線断面図である。
図15図15は、図14のXV-XV線断面図である。
図16図16は、第二実施形態に係る磁場発生装置を組み込んだ核磁気共鳴装置の概略図である。
図17図17は、第三実施形態に係る磁場発生装置を組み込んだ核磁気共鳴装置の概略図である。
図18図18は、同調回路の電気的構成を示す図である。
図19図19は、従来の磁場発生装置を組み込んだ核磁気共鳴装置の構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係る磁場発生装置100の側面図であり、図2は磁場発生装置100の正面図である。図1及び図2に示すように、磁場発生装置100は、冷凍機10と、コールドヘッド20と、コールドヘッド延長部としての一対の棒状延長部31,31と、超電導体40と、真空断熱容器50とを備える。
【0023】
冷凍機10は、冷熱を生成する機能を有する。冷凍機10として、例えば、GM冷凍機、スターリング冷凍機、パルス管冷凍機、等を例示することができる。
【0024】
図3は、図1のIII-III線断面図であり、図4は、図2のIV-IV線断面図である。図3によく示すように、冷凍機10の上部にコールドヘッド20が取り付けられる。コールドヘッド20は熱伝導率の良好な材質、例えば銅により構成され、冷凍機10にて生成された冷熱が伝達される。コールドヘッド20は、円柱部21及びステージ部22を有する。円柱部21はその下端面にて冷凍機10の上部に設けられている図略の低温生成部に接続されており、冷凍機10の上部(低温生成部)から上方に延設される。ステージ部22は円柱部21の上方端に接続される。ステージ部22は厚み方向が上下方向に一致するような平板形状を呈する。
【0025】
コールドヘッド20のステージ部22上にコールドヘッド延長部としての一対の棒状延長部31,31が接続される。一対の棒状延長部31,31は、ステージ部22の図3において両端部分にそれぞれ配設されており、ステージ部22から上方に向かって互いに平行に延設される。一対の棒状延長部31,31は、熱伝導率の良好な材質、例えば銅により構成される。
【0026】
一対の棒状延長部31,31の上端に、リング状のスペーサ61が接続される。スペーサ61は、上下方向に沿った軸を持つリング状に形成される。スペーサ61は、熱伝導率の良好な材質、例えば銅により構成される。このリング状のスペーサ61の上面に、超電導体40が配設される。従って、一対の棒状延長部31,31は、ステージ部22から延設されるとともにその延設端にてスペーサ61を介して超電導体40に熱的接触することになる。
【0027】
超電導体40は、第二種超電導体からなる超電導バルクであり、周知の溶融凝固法により製造される。第二種超電導体として、高温酸化物超電導体であるRE-Ba-Cu-O(REはYを含む希土類元素)系の超電導体を例示できる。また、本実施形態に係る超電導体40は、円筒状に形成される。この場合、c軸方向が円筒の軸方向に一致するように超電導体40が形成される。また、超電導体40は、本実施形態では、複数(図3及び図4では4個)の円筒状の超電導バルクを軸方向に沿って積み重ねることにより形成される。超電導体40は、一つの超電導バルクによって形成されていてもよい。
【0028】
また、超電導体40の外周面及び上端面を覆うように、ホルダ62が超電導体40に対して配設される。ホルダ62は、超電導体40の外周面を覆う円筒部分62aと、円筒部分62aの上端から超電導体40の径内方に延設されて、超電導体40の上端面を覆うリング状の蓋部分62bとを有する。ホルダ62によって超電導体40が保持される。
【0029】
真空断熱容器50は、コールドヘッド20、棒状延長部31、超電導体40を覆うように冷凍機10の上部に配設される。真空断熱容器50の外形形状は図1乃至図4において上下方向に軸を持つ円筒形状である。真空断熱容器50は内部空間を有し、内部空間を外部に対して断熱することができるような材質により構成される。そして、外部と断熱される真空断熱容器50の内部空間に、コールドヘッド20、棒状延長部31、超電導体40、が収容される。
【0030】
図3及び図4に示すように、真空断熱容器50は、第一容器部51、第二容器部52、第三容器部53を有し、これらの容器部が上から順に設けられる。
【0031】
第三容器部53は、円筒状に形成され、その下端が冷凍機10の上面に気密的に接続されるとともに冷凍機10の上面から上方に延設される。この第三容器部53の内部空間である第三内部空間S3内に冷凍機10の上部に設けられるコールドヘッド20が配設される。
【0032】
第三容器部53の上部に第二容器部52が設けられる。図5は、図3のV-V線断面図である。図5には、第二容器部52の断面形状が表される。図5に示すように、第二容器部52は、外周壁部521と、一対の内側壁部522a,522bと、上壁部523とを有する。また、図3及び図4に示すように、第二容器部52は、上壁部523の下方に形成されるとともに上壁部523に対面した底壁部524を有する。
【0033】
外周壁部521は円筒形状を呈し、その下端が図3及び図4に示すように第三容器部53の上端に気密的に接続される。また、外周壁部521には、一対の開口525,525が形成される。一対の開口525,525は、図5に示すように外周壁部521の周方向において180°ずれた2か所の位置に形成される。このため一対の開口525,525は、外周壁部521の径方向に沿って対面するように設けられる。一対の開口525,525は同一形状であり、本実施形態においては、その形状は、図2に示すように矩形状である。
【0034】
また、図5に示すように、一対の開口525,525によって、外周壁部521が、断面円弧上の2つの円弧部分521a,521bに分けられる。そして、一方の円弧部分521aの周方向における両端が一方の内側壁部522aにより接続され、他方の円弧部分521bの周方向における両端が他方の内側壁部522bにより接続される。このため一方の円弧部分521aと一方の内側壁部522aによって、断面形状が半円状の第一収容空間S21を有する第一収容部52aが形成され、他方の円弧部分521bと他方の内側壁部522bによって、断面形状が半円状の第二収容空間S22を有する第二収容部52bが形成される。第一収容部52aと第二収容部52bは、それぞれの内側壁部522が対面するように、形成される。第一収容空間S21及び第二収容空間S22が、本発明の第二内部空間S2に相当する。
【0035】
図3に示すように、第一収容空間S21の下方端部及び第二収容空間S22の下方端部が、第三内部空間S3に連通している。そして、第三内部空間S3に配設されたコールドヘッド20のステージ部22の上面から上方に立設した一方の棒状延長部31が第一収容空間S21内に配設され、他方の棒状延長部31が第二収容空間S22内に配設される。
【0036】
また、第一収容部52aの内側壁部522aの上辺と第二収容部52bの内側壁部522bの上辺が、上壁部523により接続され、第一収容部52aの内側壁部522aの下辺と第二収容部52bの内側壁部522bの下辺が、底壁部524により接続される。上壁部523は、図5に示すように、一対の内側壁部522a,522bの上辺と、開口525が形成されることによって切り欠かれた外周壁部521の円弧部分(図5において部分A1及び部分A2)により規定される領域に設けられる。このため上壁部523は、円形状の一部が切り欠かれた形状に形成される。上壁部523の中心には、円孔523aが形成される。また、底壁部524は、一対の内側壁部522a,522bの下辺と、開口525が形成されることによって切り欠かれた外周壁部521の円弧部分により規定される領域に設けられる。このため底壁部524は、上壁部523と同様に、円形状の一部が切り欠かれた形状に形成される。底部524は、開口525が形成されている円弧部分の周縁において、図4に示されるように、第三容器部53の上方端に気密的に接続される。
【0037】
一対の内側壁部522a,522b、上壁部523、及び底壁部524によって、両端が開口525,525にて開口した空間が形成される。この空間が連通空間CSとして定義される。このように、第二容器部52に連通空間CSが形成される。連通空間CSは、図3に示すように、第二容器部52の第一収容部52aと第二収容部52bとの間の空間により形成され、一方の開口525から他方の開口525にかけて第二容器部52を径方向に貫通する。第二容器部52の径方向は、図3及び図4からわかるように円筒状の超電導体40の軸方向に垂直な方向である。従って、連通空間CSは、超電導体40の軸方向に直交する方向に沿って第二容器部52を貫通するように形成される。
【0038】
第二容器部52の上部に第一容器部51が設けられる。第一容器部51は、外周壁部511、内周壁部512、及び上壁部513を有する。外周壁部511は円筒状に形成されており、その下方端が第二容器部52の外周壁部521の上方端に気密的に接続される。なお、図4に示すように、第一容器部51の外周壁部511の下方端のうち開口525が形成される部分に対応する部分の下方端は、第二容器部52の上壁部523に気密的に接続される。
【0039】
第一容器部51の外周壁部511の上方端から、上壁部513が外周壁部511の径内方に延設される。上壁部513は円板形状をなし、その中心に円孔513aが形成される。円孔513aは、第二容器部52の上壁部523に形成された円孔523aに同軸配置するように設けられる。上壁部513の円孔513aの周縁から内周壁部512が下方に延設される。内周壁部512の下方端が、第二容器部52の上壁部523に形成された円孔523aの周縁部に気密的に接続される。
【0040】
第一容器部51の外周壁部511と内周壁部512との間に第一内部空間S1が形成される。この第一内部空間S1の下方端は、図3に示すように、第二容器部52に形成された第一収容空間S21及び第二収容空間S22に連通する。第一内部空間S1はリング状の空間であり、この第一内部空間S1内に、スペーサ61及び超電導体40が配設される。また、第一内部空間S1の上端は、第一容器部51の上壁部513により閉塞される。第一内部空間S1内に超電導体40が配設されたとき、第一容器部51の外周壁部511は超電導体40の外周面に対面し、第一容器部51の内周壁部512は超電導体40の内周面に対面する。
【0041】
このように、第一容器部51の第一内部空間S1と第二容器部52の第二内部空間S2(第一収容空間S21及び第二収容空間S22)は連通し、第二容器部52の第二内部空間S2(第一収容空間S21及び第二収容空間S22)と第三容器部53の第三内部空間S3は連通する。互いに連通するこれらの空間によって、真空断熱容器50の内部空間が形成される。そして、真空断熱容器50の内部空間のうち、第一容器部51に形成される第一内部空間S1内に超電導体40が配設され、第二容器部52に形成される第二内部空間S2(第一収容空間S21及び第二収容空間S22)内に棒状延長部31(コールドヘッド延長部)が配設され、第三容器部53に形成される第三内部空間S3内にコールドヘッド20が配設される。
【0042】
また、第一容器部51の内周壁部512の内周側の円柱状の空間により、室温ボア空間BSが形成される。この室温ボア空間BSは、第一容器部51の第一内部空間S1内に配設された超電導体40の内周側に形成される空間である。また、室温ボア空間BSは、第一容器部51をその上下方向に貫通するように形成される。室温ボア空間BSの上方端は、第一容器部51の上壁部513に設けられた円孔513aにて外部に連通(開口)する。また、室温ボア空間BSの下方端は、第二容器部52の上壁部523に設けられた円孔523aを通じて連通空間CSに連通する。室温ボア空間BS及び連通空間CSは、真空断熱容器50の内部空間と熱的及び空間的に隔絶された(仕切られた)空間である。
【0043】
図6は、連通空間CS付近の構造を模式的に示す斜視図である。図6に示すように、真空断熱容器50の第二容器部52の外周壁部521に開口525が形成され、その開口525から第二容器部52の径方向に延設した連通空間CSが形成される。連通空間CSは、第二容器部52の一対の内側壁部522a,522b、上壁部523、及び底壁部524、に囲まれた空間により形成される。また、第二容器部52の上壁部523には円孔523aが形成されていて、その円孔523aを通じて連通空間CSが室温ボア空間BSに連通する。また、連通空間CSの下方には、第二容器部52の底壁部524を挟んで第三容器部53の第三内部空間S3に収容されているコールドヘッド20のステージ部22が配設される。このステージ部22の両端部分から、上方に向かって延設するように棒状延長部31が設けられている。この棒状延長部31は、連通空間CSの両側に設けられている第一収容部52a内の第一収容空間S21及び第二収容部52b内の第二収容空間S22内に配設される。
【0044】
上記構成の磁場発生装置100は、核磁気共鳴装置に組み込まれる。この場合、磁場発生装置100の室温ボア空間BSに、測定試料が入った試料管がセットされる。また、磁場発生装置100には、超電導体40の磁場(捕捉磁場)を調整するための室温シムコイル87、及び、測定試料から得られるNMR信号を検出するためのプローブユニット81が取り付けられる。
【0045】
図7及び図8は、磁場発生装置100を組み込んだ核磁気共鳴装置200の概略図である。図7には図3に示す方向から見た磁場発生装置100の断面が示されており、図8には図4に示す方向から見た磁場発生装置100の断面が示されている。
【0046】
図7に示すように、核磁気共鳴装置200は、磁場発生装置100と、プローブユニット81と、分析装置86を備える。なお、図7には、分析装置86が省略される。プローブユニット81は、検出コイル83が先端に取り付けられた円筒状のプローブ本体82と、同調回路84と、プローブ基部85とを有する。また、核磁気共鳴装置200により測定される測定試料Pが入った試料管Tは、室温ボア空間BSの上方端を構成する円孔513aから室温ボア空間BS内に挿入される。この試料管Tは、プローブ本体82の検出コイル83が配置されている位置まで室温ボア空間BS内に挿入されるようにプローブ本体82の内部に配設される。プローブ本体82内に配設された試料管Tは、図略の保持装置によって浮遊状態で軸回り回転される。このようにして試料管Tが室温ボア空間BSにセットされる。
【0047】
検出コイル83は、測定試料Pから得られる信号をNMR信号として検出する。この検出コイル83は、室温ボア空間BS内にて試料管Tの外周回りのうち測定試料Pが位置する下方部分の外周回りに配設される。また、検出コイル83の外周回りに室温シムコイル87が配設される。室温シムコイル87は、試料管Tと同じく室温ボア空間BSの上端開口(円孔513a)から室温ボア空間BS内に挿入されることにより、図7に示す位置に配設される。
【0048】
同調回路84は、測定試料Pから得られるNMR信号の共鳴信号を得ることができるように構成される。この同調回路84は、図18に示すように、検出コイル83に電気的に接続される並列共振回路を有する。並列共振回路中の可変容量コンデンサC1(チューニング用可変容量コンデンサ)及びC2(マッチング用可変容量コンデンサ)の容量を調整することにより、チューニング(共鳴周波数を測定対象核の周波数に同調させる)及びマッチング(並列共振回路のインピーダンスを特性インピーダンスに整合させる)が行われる。この同調回路84は、プローブ本体82に取り付けられており、図7に示すように、室温ボア空間BS内にて試料管Tの直下に配設される。また、同調回路84は、伝送線Lを介して検出コイル83に電気的に接続される。ここで、検出コイル83は測定試料Pが入った試料管Tの下方部分の外周回りに配設されているので、試料管Tの直下に位置する同調回路84は検出コイル83に近接配置される。よって、同調回路84と検出コイル83とを接続する伝送線Lの長さをできるだけ短くすることができる。
【0049】
同調回路84には、チューニング用つまみ及びマッチング用つまみが設けられている。これらの操作つまみを回転させてチューニング及びマッチングを実行することにより、測定試料Pから得られるNMR信号の感度が調整される。
【0050】
また、プローブ本体82は、検出コイル83が取り付けられている先端位置から室温ボア空間BSを通って下方に延出されており、その下方端にて、連通空間CSに配設されているプローブ基部85に接続される。このプローブ基部85には、検出コイル83と分析装置86とを電気的に接続するためのコネクタ部が配置されている。
【0051】
図8に示すように、プローブ基部85はケーブル88を介して分析装置86に接続される。ケーブル88は、一端にてプローブ基部85に接続されるとともに連通空間CSの開口525を通って外部に導出され、他端にて磁場発生装置100の外部に配置する分析装置86に接続される。
【0052】
図9は、分析装置86の構成を概略的に示す図である。図9に示すように、分析装置86は、高周波発生装置861、パルスプログラマ(送信器)862、高周波増幅器863、プリアンプ(信号増幅器)864、位相検波器865、アナログ-デジタル(A/D)変換器866、及びコンピュータ867を備える。
【0053】
上記構成の核磁気共鳴装置200は、以下の手順で作動される。まず、磁場発生装置100の超電導体40を着磁する。着磁の手順は、次の通りである。最初に、真空断熱容器50の内部空間を、例えば1×10-3Pa以下の真空状態にする。次いで、外部磁場発生装置を用いて超電導体40に均一性の高い外部磁場を印加する。その後、冷凍機10を作動させる。冷凍機10が作動すると、コールドヘッド20及び棒状延長部31(コールドヘッド延長部)を介して冷熱が超電導体40に伝達される。これにより超電導体40が冷却される。
【0054】
超電導体40は、超電導遷移温度以下の温度に冷却される。超電導体40の冷却が完了したら、超電導体40に印加されている外部磁場を除去する(外部磁場を0にする)。これにより、超電導体40が外部磁場を捕捉して、超電導体40が着磁する。超電導体40が着磁した磁場によって、外部磁場を除去した後も、外部磁場と同じような均一性の高い磁場が超電導体40の回りに形成される。よって、室温ボア空間BSに均一性の高い磁場が形成される。このため室温ボア空間BSに配置した試料管T内の測定試料Pは、静磁場空間に置かれることになる。
超電導体40を着磁した後に、プローブユニット81が図7に示すように核磁気共鳴装置200に設置されるとともに、室温ボア空間BSに検出コイル83及び同調回路84が取り付けられたプローブ本体82が挿入される。
【0055】
プローブユニット81の設置が完了した核磁気共鳴装置200を用いて測定が行われる。測定は、プローブユニット81が設置されている状態で、次の手順で行う。測定試料P(試料管T)を、室温ボア空間BS内(プローブ本体82内)に挿入する。これにより測定試料Pが室温ボア空間BS内で静磁場空間に置かれる。その後、分析装置86の高周波発生装置861を作動させる。すると、高周波発生装置861により発生された高周波パルスがパルスプログラマ862及び高周波増幅器863を経て検出コイル83に通電され、測定試料Pにパルス電磁波(ラジオ波)が照射される。静磁場中に置かれた測定試料Pにラジオ波を照射させた場合に生じる核磁気共鳴により、測定試料Pのまわりに設けられた検出コイル83に微小電流が流れる。この微小電流を表す信号(NMR信号)が、プリアンプ864、位相検波器865、A/D変換器866を経てコンピュータ867に受け渡される。コンピュータ867は、受け渡されたNMR信号に基づいてNMRスペクトルを算出する。得られたNMRスペクトルから測定試料Pの分子構造が解析される。
【0056】
本実施形態においては、上方端が開口して外部に連通した室温ボア空間BSが第一容器部51を上下方向に貫通するように形成され、さらに室温ボア空間BSの下方端には、第二容器部52を径方向(超電導体40の軸方向に直交する方向)に貫通するように形成された連通空間CSが連通している。この連通空間CSは、開口525を通じて外部に開口している。従って、連通空間CSを通じて、検出コイル83を有するプローブ本体82及び同調回路84を室温ボア空間BSにその下方端から挿入するとともに、検出コイル83を試料管Tの外周回りに、同調回路84を試料管Tの直下に、それぞれ配設することができる。
【0057】
また、図3及び図7からわかるように、水平面(超電導体40の軸方向に垂直な平面)で切断した連通空間CSの断面積(水平断面積)は、室温ボア空間BSの水平断面積よりも大きい。このため、連通空間CSに作業者が手を入れて作業することができ、室温ボア空間BSへのプローブ本体82及び同調回路84の設置作業性が向上する。この場合、プローブ本体82の所望位置に同調回路84を取り付けておくことにより、これらを一体的に室温ボア空間BSに配設することができる。このためこれらの設置作業性がより向上する。
【0058】
なお、プローブユニット81を最初に設置する際、同調回路84を室温ボア空間BSの所望位置に配設した後に同調回路84を操作して測定試料から得られるNMR信号の感度を調整する作業が必要である。この感度調整は、感度調整用の標準試料の入った試料管をプローブ本体82に挿入し、その標準試料から得られるNMR信号が所定の感度となるように、同調回路84に設けられているチューニング用つまみ及びマッチング用つまみを回転させることにより行われる。この場合、例えば、一方端での回転トルクを他方端に伝達することができるガイドワイヤ(操作手段)の他方端を同調回路84の操作つまみ(チューニング用つまみ及びマッチング用つまみ)に取り付けた状態で、同調回路84を室温ボア空間BS内に配設し、ガイドワイヤの一方端側を室温ボア空間BS及び連通空間CSを通じて外部に導出させておけばよい。ここで、図8に示すように、室温ボア空間BSの下方端部に近い領域(具体的には試料管Tの配設位置よりも下方の領域)には、検出コイル83や試料管Tが存在しておらず、比較的広いスペースが確保されている。従って、同調回路84の操作つまみに接続されたガイドワイヤを、室温ボア空間BSの下方端部領域及び連通空間CSを通じて外部に導出することができる。これにより、ガイドワイヤの一方端側における回転操作を操作つまみに伝達することができる。よって、外部からの操作によって、同調回路84を用いてNMR信号の感度を調整することができる。
【0059】
図19は、従来の磁場発生装置を組み込んだ核磁気共鳴装置の構成の概略図である。なお、図19において、核磁気共鳴装置の分析装置は省略される。図19に示すように、従来の磁場発生装置500が備える円筒状の超電導体SCは、冷凍機RFの上部から上方に向かって延設されるコールドヘッドCHのステージ部ST上に直接載置される。このステージ部STは、超電導体SC及び室温ボア空間BSの下方領域を覆うように配設されている。従って、室温ボア空間BSの上方端は開口するものの、下方端は閉塞される。このため、室温ボア空間BSへのアクセスは、全て、その上方端からなされる。よって、試料管T、室温シムコイルCC、及びNMR信号の検出ユニット(プローブユニット)は、全て、上方端から室温ボア空間BSに挿入されることになる。ここで、試料管Tが室温ボア空間BSに挿入された後に、室温シムコイルCC及び検出ユニットの検出コイルDCは、室温ボア空間BSの上方端から室温ボア空間BSに挿入することができる。しかし、検出ユニットのうち同調回路CNは、室温ボア空間BSにその上方端から挿入しようとしても、試料管Tに干渉するため挿入することができない。また、検出ユニットを室温ボア空間BSに挿入してから試料管Tを挿入すれば、試料管Tに干渉することなく検出ユニットを室温ボア空間BSに挿入することができるが、この場合、室温ボア空間BSに挿入された同調回路CNを操作するためのガイドワイヤ等の操作手段を、室温ボア空間BSの上方端から導出させるためのスペースを室温ボア空間BS内に確保することができない。このため外部から同調回路CNを操作することができず、NMR信号の感度を調整することができない。それゆえ、従来では、同調回路CNは、図19に示すように磁場発生装置500の上部に載置されていた。この場合、同調回路CNと検出コイルDCとを接続する伝送線Lの長さを長くせざるを得ない。
【0060】
これに対し、本実施形態に係る磁場発生装置100によれば、上記したように室温ボア空間BSが第一容器部51を上下方向に貫通形成され、且つ、室温ボア空間BSの上方端が外部に開口し、下方端が、外部に開口した連通空間CSに連通している。つまり、室温ボア空間BSの両端が外部に連通している。このため、室温ボア空間BSの下方端から室温ボア空間BSにアクセスすることが可能となり、上方端側のみならず下方端側からも、室温ボア空間BSに必要な機器を挿入することができる。従って、室温ボア空間BS内に同調回路84を挿入する際には、試料管Tと干渉しないように、試料管Tが挿入される上方端とは反対側の下方端から室温ボア空間BSに同調回路84を挿入することができる。この場合、連通空間CSを通じて室温ボア空間BSにその下方端から同調回路84が挿入される。また、室温ボア空間BSの下方端側から同調回路84を挿入することにより、同調回路84は、試料管Tが室温ボア空間BSに挿入される上方端とは反対側の端部である下方端と、試料管Tが配設されている位置との間の領域に配設することができる。具体的には、室温ボア空間BS内にて試料管Tの直下に同調回路84を配設することができる。このため同調回路84と検出コイル83とを接続する伝送線Lの長さを極力短くすることができる。そして、上述したように同調回路84を操作するために同調回路84に接続されたガイドワイヤ等の操作手段を、スペース的に余裕のある室温ボア空間BSの下方端部領域から連通空間CSを経由して外部に導出することで、操作手段を介して外部から室温ボア空間BS内の同調回路84を操作してNMR信号の感度を調整することができる。
【0061】
図10は、伝送線Lの長さと、NMR信号の感度との関係を示すグラフである。図10の横軸が伝送線Lの長さであり、縦軸が感度である。図10に示すように、伝送線Lの長さが短いほど感度が高いことがわかる。従って、本実施形態のように磁場発生装置を構成することにより、検出コイル83と同調回路84との間の距離が長くなることに起因した、NMR信号の感度の低下を防止することができる。
【0062】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係る磁場発生装置について説明するが、第二実施形態に係る磁場発生装置の基本的な構成は、第一実施形態に係る磁場発生装置と同じである。従って、以下の説明及び参照する図面において、第一実施形態で説明した各構成と同一の構成については第一実施形態で用いた符号と同一の符号を用いる。
【0063】
図11は、本実施形態に係る磁場発生装置110の側面図であり、図12は、磁場発生装置110の正面図である。また、図13は、図11のXIII-XIII線断面図であり、図14図12のXIV-XVI線断面図である。これらの図に示すように、磁場発生装置110は、冷凍機10、コールドヘッド20、U字状延長部32、超電導体40、及び真空断熱容器50を備える。冷凍機10の構成は第一実施形態に係る冷凍機の構成と同一であるのでその説明は省略する。
【0064】
図13に示すように、コールドヘッド20は、第一実施形態に係るコールドヘッド20と同様に、円柱部21及びステージ部22を有する。円柱部21は、冷凍機10の上面に載置されるとともに冷凍機10の上面から上方に延設される。ステージ部22は円柱部21の延設端に設けられる。このステージ部22は、厚み方向が上下方向に一致するように円板状に形成される。
【0065】
円板状に形成されたコールドヘッド20のステージ部22上に、コールドヘッド延長部としてのU字状延長部32が接続される。U字状延長部32は、ステージ部22から上方に延設される。図15は、図14のXV-XV線断面図であり、U字状延長部32の断面形状が表される。図15に示すように、U字状延長部32の断面形状は略U字形状である。
【0066】
U字状延長部32の上方端が、図13に示すようにリング状のスペーサ61に接続される。そして、リング状のスペーサ61の上面に、円筒状の超電導体40が載置される。従って、U字状延長部32は、ステージ部22から延設されるとともにその延設端にてスペーサ61を介して超電導体40に熱的接触することになる。また、超電導体40の外周面及び上端面を覆うように、ホルダ62が超電導体40に対して配設される。本実施形態に係る超電導体40、スペーサ61、及びホルダ62の構造は、上記第一実施形態にて説明した超電導体40、スペーサ61、及びホルダ62の構造と同一であるので、それらの説明は省略する。
【0067】
真空断熱容器50は、コールドヘッド20、U字状延長部32、超電導体40を覆うように、冷凍機10の上部に配設される。真空断熱容器50の外径形状は、第一実施例に係る真空断熱容器50の外径形状と同様に、上下方向に軸を持つ円筒形状である。真空断熱容器50は内部空間を有し、内部空間を外部に対して断熱することができるような材質により形成される。そして、外部と断熱される真空断熱容器50の内部空間に、コールドヘッド20、U字状延長部32、及び超電導体40が、収容される。
【0068】
図13及び図14に示すように、真空断熱容器50は、第一容器部51、第二容器部52、及び第三容器部53を有し、これらの容器部が上から順に設けられる。
【0069】
第三容器部53は円筒状に形成され、その下方端が冷凍機10の上面に気密的に接続されるとともに冷凍機10の上面から上方に延設される。この第三容器部53の内部空間である第三内部空間S3内に冷凍機10の上部に設けられるコールドヘッド20が配設される。
【0070】
第三容器部53の上部に第二容器部52が設けられる。図13及び図14に示すように、第二容器部52は、外周壁部521、内側壁部522、上壁部523、及び底壁部524を有する。
【0071】
図15には、第二容器部52の外周壁部521及び内側壁部522の断面形状が表される。図15に示すように、外周壁部521は断面が略円形の円筒形状をなし、その下方端は、図13及び図14に示すように第三容器部53の上方端に気密的に接続される。また、外周壁部521には、一つの開口525が形成される。開口525の形状は、図12に示すように矩形状である。
【0072】
内側壁部522は、図15に示すように断面U字状に形成される。図15に示す方向から見たU字状の内側壁部522の一方端及び他方端は、それぞれ、開口525により切り欠かれた外周壁部521の一方端及び他方端、すなわち外周壁部521の周方向における両端に接続される。このため、外周壁部521と内側壁部522とによって、閉じられた空間が形成される。こうして形成された空間が、第二内部空間S2である。この第二内部空間S2に、U字状延長部32が配設される。また、内側壁部522は、図15からわかるように、U字状延長部32の形状に沿うように湾曲形成されている。このため第二内部空間S2の断面形状は、三日月状の形状にされる。
【0073】
内側壁部522は、上下方向に延設されており、その上辺が上壁部523に接続され、その下辺が底壁部524に接続される。上壁部523は、内側壁部522の上辺と、開口525が形成されることによって切り欠かれた外周壁部521の円弧部分(図15において部分A)により規定される領域に設けられる。このため上壁部523は、図15に示すように、上下方向から見たときに、略半長円形状を呈する。この上壁部523には、外周壁部521の中心軸を中心とした円孔523aが形成される。また、底壁部524の形状は上壁部523と同様に、内側壁部522の下辺と、開口525が形成されることによって切り欠かれた外周壁部521の円弧部分により規定される領域に設けられ、略半長円形状を呈する。底壁部524は、開口525が形成されている円弧部分の周縁において、図14に示されるように、第三容器部53の上方端に気密的に接続される。
【0074】
図14に示すように、内側壁部522と、上壁部523と、底壁部524とにより、開口525にて外部に開口した空間が形成される。この空間が連通空間CSとして定義される。このように、第二容器部52に連通空間CSが形成される。この連通空間CSの断面形状は、上壁部523及び底壁部524の断面形状と同じ略半長円形状である。
【0075】
図14に示すように、第二容器部52の上部に第一容器部51が設けられる。第一容器部51は、外周壁部511、内周壁部512、及び上壁部513を有する。外周壁部511は円筒状に形成されており、その下方端が第二容器部52の外周壁部521の上端に気密的に接続される。なお、外周壁部511の下方端のうち開口525が形成されている部分に対応する部分は、第二容器部52の上壁部523の周縁に気密的に接続される。
【0076】
第一容器部51の外周壁部511の上端から、上壁部513が外周壁部511の径内方に延設される。上壁部513は円板形状を呈しており、その中心に円孔513aが形成される。円孔513aは、第二容器部52の上壁部523に形成された円孔523aと同軸配置するように形成される。この円孔513aの周縁から内周壁部512が下方に延設される。そして、内周壁部512の下方端は、第二容器部52の上壁部523に形成された円孔523aの周縁部に気密的に接続される。
【0077】
第一容器部51の外周壁部511と内周壁部512との間に第一内部空間S1が形成される。この第一内部空間S1の下方端は、図13及び図14に示すように、第二容器部52に形成された第二内部空間S2に連通する。第一内部空間S1はリング状の空間であり、この第一内部空間S1内に、スペーサ61及び超電導体40が配設される。第一内部空間S1内に超電導体40が配設されたとき、第一容器部51の外周壁部511は超電導体40の外周面に対面し、第一容器部51の内周壁部512は超電導体40の内周面に対面する。また、第一内部空間S1の上方端は、第一容器部51の上壁部513により閉塞される。
【0078】
このように、第一容器部51の第一内部空間S1と第二容器部52の第二内部空間S2は連通し、第二容器部52の第二内部空間S2と第三容器部53の第三内部空間S3は連通する。互いに連通するこれらの空間によって、真空断熱容器50の内部空間が形成される。そして、真空断熱容器50の内部空間のうち、第一容器部51に形成される第一内部空間S1内に超電導体40が配設され、第二容器部52に形成される第二内部空間S2内にU字状延長部32(コールドヘッド延長部)が配設され、第三容器部53に形成される第三内部空間S3内にコールドヘッド20が配設される。
【0079】
また、第一容器部51の内周壁部512の内周側の円柱状の空間により、室温ボア空間BSが形成される。この室温ボア空間BSは、第一容器部51をその上下方向に貫通するように形成される。室温ボア空間BSの上方端は、第一容器部51の上壁部513に設けられた円孔513aにて外部に開口する。また、室温ボア空間BSの下方端は、第二容器部52の上壁部523に設けられた円孔523aを通じて連通空間CSに連通する。室温ボア空間BS及び連通空間CSは、真空断熱容器50の内部空間と熱的及び空間的に隔絶された(仕切られた)空間である。
【0080】
図16は、磁場発生装置110を組み込んだ核磁気共鳴装置210の概略図である。図16には図14に示す方向から見た磁場発生装置110の断面が示されている。図14及び図16からわかるように、本実施形態においても上記第一実施形態と同様に、上方端が開口した室温ボア空間BSが第一容器部51を上下方向に貫通するように形成され、さらに室温ボア空間BSの下方端に連通空間CSが連通している。また、連通空間CSは、開口525を通じて外部に開口されている。つまり、室温ボア空間BSの両端が外部に連通している。このため、室温ボア空間BSの下方端から室温ボア空間BSにアクセスすることが可能となり、上方端側のみならず下方端側からも、室温ボア空間BSに必要な機器を挿入することができる。従って、室温ボア空間BS内に同調回路84を挿入する際には、試料管Tと干渉しないように、試料管Tが挿入される上方端とは反対側の下方端から室温ボア空間BSに同調回路84を挿入することができる。この場合、連通空間CSを通じて室温ボア空間BSにその下方端から同調回路84が挿入される。また、室温ボア空間BSの下方端側から同調回路84を挿入することにより、室温ボア空間BS内にて試料管Tの直下に同調回路84を配設することができ、それにより、同調回路84と検出コイル83とを接続する伝送線Lの長さを極力短くすることができる。
【0081】
また、本実施形態に係るコールドヘッド延長部は、断面U字状のU字状延長部32である。このように断面U字状のコールドヘッド延長部を用いることによって、伝熱面積を増大させることができる。このため、超電導体40を効率良く冷却することができ、超電導体40の内部での温度差を小さくすることができる。その結果、超電導体40によって均一な磁場空間を発生させることができる。
【0082】
(第三実施形態)
図17は、第三実施形態に係る磁場発生装置120を組み込んだ核磁気共鳴装置220の概略図である。なお、図17においては核磁気共鳴装置の分析装置は省略される。第三実施形態に磁場発生装置120は、第一実施形態に係る磁場発生装置100の上下を逆にして配置することにより構成される。この場合、冷凍機10が最上部に配置し、冷凍機10の下部にコールドヘッド20が配置し、コールドヘッド20の下部にコールドヘッド延長部(棒状延長部31)が配置し、コールドヘッド延長部(棒状延長部31)の下部に超電導体40が配置する。また、真空断熱容器50は上記第一実施形態と同様に、第一容器部51、第二容器部52、第三容器部53を有するが、最上部に第三容器部53が位置し、第三容器部53の下部に第二容器部52が設けられ、第二容器部52の下部に第一容器部が設けられる。磁場発生装置120の各構成部品の構造は、第一実施形態に係る磁場発生装置100の各構成部品の構造と上下を逆にしたことを除いて同一であるので、その説明は省略する。
【0083】
また、上記第一実施形態及び第二実施形態では、室温ボア空間BSの下部に連通空間CSが位置しているが、本実施形態では、室温ボア空間BSの上部に連通空間CSが位置している。この場合、測定試料Pが入った試料管Tが、連通空間CSを介してその下方の室温ボア空間BSにその上方端から挿入されて、室温ボア空間BSの所望位置に配設される。一方、室温シムコイル87、検出コイル83、同調回路84は、室温ボア空間BSの下方端の開口から室温ボア空間BSに挿入される。そして、検出コイル83は試料管Tの外周回りに配設され、同調回路84は試料管Tの直下に配設される。このように構成した場合であっても、同調回路84を室温ボア空間BSに配設することができる。また、室温ボア空間BS内にて試料管Tの直下に同調回路84を配設することができるので、検出コイル83と同調回路84とを接続する伝送線Lの長さを短くすることができ、これにより、伝送線Lの長さが長くなることによるNMR信号の感度の低下を抑えることができる。
【0084】
なお、第三実施形態に示すように磁場発生装置を構成した場合、連通空間CSを通じて試料管Tを室温ボア空間BSに挿入することになる。この場合、図17に示すように、連通空間CSの上下方向長さが、試料管Tの長手方向の長さよりも長いのがよい。このように連通空間CSを形成することにより、試料管Tを傾けることなく連通空間CSを通じて室温ボア空間BSに挿入することができる。このため試料管Tの設置作業性を向上させることができる。
【0085】
また、第三実施形態に示すように磁場発生装置を構成した場合、冷凍機10の低温生成部が冷凍機10の下方に位置することになる。この場合、低温生成部が下方に位置する冷凍機、例えばパルス管冷凍機を、好適に用いることができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態およびその変形例について説明したが、これらの例は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、本発明はこれらの例に限定して解釈されてはならないものである。本発明は、その技術思想またはその主要な特徴を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
【符号の説明】
【0087】
10…冷凍機、20…コールドヘッド、21…円柱部、22…ステージ部、31…棒状延長部(コールドヘッド延長部)、32…U字状延長部(コールドヘッド延長部)、40…超電導体、50…真空断熱容器、51…第一容器部、511…外周壁部、512…内周壁部、513…上壁部、513a…円孔、52…第二容器部、52a…第一収容部、52b…第二収容部、521…外周壁部、521a,521b…円弧部分、522,522a,522b…内側壁部、523…上壁部、523a…円孔、524…底壁部、525…開口、53…第三容器部、81…プローブユニット、82…プローブ本体、83…検出コイル、84…同調回路、85…プローブ基部、86…分析装置、87…室温シム、88…ケーブル、100,110,120…磁場発生装置、200,210,220…核磁気共鳴装置、BS…室温ボア空間、L…伝送線、P…測定試料、S1…第一内部空間、S2…第二内部空間、S21…第一収容空間、S22…第二収容空間、S3…第三内部空間、T…試料管
図1
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