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特許7181540月経に伴う身体的及び/又は精神的不快症状の改善システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】月経に伴う身体的及び/又は精神的不快症状の改善システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/70 20180101AFI20221124BHJP
   G16H 50/20 20180101ALI20221124BHJP
【FI】
G16H20/70
G16H50/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022171175
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2022131675の分割
【原出願日】2022-07-06
【審査請求日】2022-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522174281
【氏名又は名称】ロゴスサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下川 千草
(72)【発明者】
【氏名】中島 栄彦
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-063027(JP,A)
【文献】特開2022-031603(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107273672(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0018275(US,A1)
【文献】渋井 佳代 Kayo SHIBUI,V. 睡眠障害 月経随伴睡眠障害 Menstrual-associated sleep disorder,日本臨床(別冊)領域別症候群シリーズ39 精神医学症候群 II ,日本,株式会社日本臨牀社,2003年08月28日,p.253-258
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
月経随伴症状を診断するために用いられる、少なくとも精神的症状に関する項目を含む複数の項目を含む記録である症状メモリと、
月経随伴症状の治療、予防またはセルフケア用の心理療法を実行する治療モジュールとを記憶する記憶装置と、
ユーザによって操作されるユーザ端末と、を少なくとも含む月経随伴症状の治療、予防、またはセルフケアするためのシステムであって、
前記月経随伴症状を診断するために用いられる複数の項目を含む記録である症状メモリの統計処理やAI処理が行われユーザの月経随伴症状がクラスター分けされ、クラスタに応じた前記治療モジュールが提供されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
月経随伴症状を診断するために用いられる、少なくとも精神的症状に関する項目を含む複数の項目を含む記録である症状メモリと、
月経随伴症状の治療、予防またはセルフケア用の認知行動療法に基づく治療モジュールとを記憶する記憶装置と、
ユーザによって操作されるユーザ端末と、を少なくとも含む月経随伴症状の治療、予防、またはセルフケアするためのシステムであって、
前記月経随伴症状を診断するために用いられる複数の項目を含む記録である症状メモリの統計処理やAI処理が行われユーザの月経随伴症状がクラスター分けされ、クラスタに応じた前記治療モジュールが提供されることを特徴とするシステム。
【請求項3】
前記症状メモリでは月経随伴症状に特有の症状に対応した指標や、診断横断的な指標、質問票、心理検査の結果に基づいて統計処理・AI処理が行われ、システムは、心理教育/疾患教育、クラスタ分け、治療モジュールからなり、前記治療モジュール月経随伴症状に特異的な心理療法と診断横断的な心理療法がさらに含まれる請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記心理療法を実行する治療モジュールまたは前記認知行動療法に基づく治療モジュールと薬物が併用される請求項1または請求項2に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、月経前症候群や月経困難症などの月経前及び/又は月経中の、身体的及び/又は精神的不快症状の治療用・予防用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
月経前及び/又は月経中の、身体的及び精神的不快は、程度の違いはあるが、閉経前の多くの女性が訴える愁訴であり、月経前症候群(Premenstrual Syndrome;以下、PMSという)や月経困難症、更年期障害(TCL)が知られている。
【0003】
PMSは、月経の1週間程前(黄体期)に発症する身体的症状群、あるいは精神的症状群を指し、医学的には、「月経開始の3~10日前から始まる身体的、精神的症状で月経開始とともに減退ないし消失するもの」と定義され、月経前緊張症とも呼ばれている。PMSの代表的な症状は、身体的症状群としては、下腹痛、腰痛、下腹部が張る、頭痛、肩こり、手足の冷え、食欲が増す、下痢、便秘、むくみ、乳房が痛い、乳房が張る、ニキビができやすい、肌荒れ、疲れやすい、眠くなる等が挙げられる。また、精神的症状群としては、イライラする、怒りやすい、攻撃的になる、憂うつ、涙もろい、不安が高まる等が挙げられる。その中でも心の不安定さが際立って強く出てしまう場合は「月経前不快気分障害(PMDD)」と診断される。月経困難症は、一般に、月経に対し異常に強い疼痛または全身障害を伴い、臥床したり仕事ができなくなるようなものと定義されており、月経痛症とも呼ばれる。月経困難症の代表的な症状としては、下腹痛、腰痛などの疼痛や、悪心、嘔吐、下痢、頭痛などのさまざまな身体的不快な症状が報告されており、婦人科疾患としては比較的頻度の高い疾患である。情勢の更年期障害とは女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌量が急激に減ってくることによりあらわれる多種多様な症状を更年期症状といい、そのうち、日常生活に支障があるものを更年期障害という。更年期症状群としては、のぼせ、異常発汗、イライラなどのさまざまな症状が挙げられる。近年、女性の社会への進出が益々増加する中で、女性の労働生産性低下の原因の一つとしてPMSが挙げられており、PMSや月経困難症などの、月経前及び/又は月経中の、身体的及び精神的不快症状を緩和、軽減し女性のQOLを向上させることは、大きな社会的課題となっている。
【0004】
特許文献1には、月経前緊張症、マタニティブルー、更年期障害による不快症状を改善するためにβ-カリオフィレンを吸入させることが開示されているが、さらに高い効果を発現するものが求められていた。特許文献2には月経周期を予測する方法、特許文献3には基礎体温の予測方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-339191号公報
【文献】特開2004-339191号公報
【文献】WO2015/147174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、特に身体に物理的な刺激を与えることなく、また経口によらず、月経前及び/又は月経中の、身体的及び/又は精神的不快症状を手軽に、かつ安全に緩和することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1)
ユーザの月経周期に関連する情報および月経随伴症状を診断するために用いられる複数の項目を含む記録である症状メモリと、
月経随伴症状の治療、予防またはセルフケア用の心理療法に基づく治療モジュールとを記憶する記憶装置と、
ユーザによって操作されるユーザ端末と、を少なくとも含む月経随伴症状の治療、予防、またはセルフケアするためのシステムであって、
前記月経周期の所定のタイミングで、前記ユーザの症状メモリに記憶された月経随伴症状の項目と、システムに記憶された月経随伴症状と治療モジュールとの治療効果のデータを統計処理またはAI処理し、前記ユーザの月経随伴症状に応じた治療や予防、あるいはセルフケア用の心理療法に基づく治療モジュールを患者に提供することを特徴とするシステム。
(請求項2)
前記所定のタイミングが次の月経開始日から3から10日前、前記症状メモリで過去に不調があった月経周期の特定日、ユーザの月経の基礎体温の正規化曲線から測定された基礎体温がずれていた場合、月経開始予定日、または、症状メモリで不調が生じていた日のいずれかである請求項1のシステム。
(請求項3)
ユーザの月経周期に関連する情報および月経随伴症状を診断するために用いられる複数の項目を含む記録である症状メモリと、
月経随伴症状の治療、予防またはセルフケア用の心理療法に基づく治療モジュールとを記憶する記憶装置と、
ユーザによって操作されるユーザ端末と、を少なくとも含む月経随伴症状の治療、予防、またはセルフケアするためのシステムであって、
月経周期に関する前記月経随伴症状を診断するために用いられる複数の項目を含む記録である症状メモリの統計処理やAI処理が行われユーザの月経随伴症状がクラスター分けされ、クラスタに応じた治療モジュールが提供されることを特徴とするシステム。
(請求項4)
前記治療モジュールが、疾患教育コンテンツ、心理教育コンテンツ、エクササイズ、マインドフルネス、音楽、映像、心理的介入(心理療法)を利用者の情報処理端末を介して提示する請求項1ないし3のシステム。
(請求項5)
前記治療モジュールには、月経随伴症状に特異的な心理療法と、診断横断的な心理療法とがさらに含まれる請求項3に記載のシステム。
(請求項6)
心理療法に基づく治療モジュールと薬物が併用される請求項1ないし請求項5に記載のシステム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の治療・予防・セルフケア用アプリ(以下、治療用アプリと称する)によれば、特に身体に物理的な刺激を与えることなく、また経口によらず、月経前及び/又は月経中の、身体的及び/又は精神的不快症状を手軽に、かつ安全に緩和することができる。なお、薬物との併用により薬物の薬効を上昇させたり、薬物の副作用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のシステムを示す概念図である。
図2】本発明の基礎体温の算出方法の例を示す図である。
図3】本発明の症状メモリの入力例方法の例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施例を示す図である。
図5】本発明の第2の実施例を示す図である。
図6】本発明の第4の実施例を示す図である。
図7】本発明の第5の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(治療用アプリを含むシステムの構成)
本発明の一実施形態として、インターネット上に設置されたネットワークシステムにインストールされたプログラムを挙げる。ネットワークシステムは、サーバやクラウド上の大容量の記憶装置を備え、ノートパソコンやスマートフォン、タブレットなどのユーザ端末がインターネットを介して接続されたサーバであり、このサーバ装置は、本実施形態に係るプログラムを実行することで、ユーザ端末とのデータ通信を通じて、ユーザ端末から入力された情報や、サーバの記憶装置に格納されている情報を用いてユーザ端末を介してユーザに月経随伴症状の治療や緩和をもたらす治療用アプリや月経随伴症状に関わる疾患教育等の各種情報を提供するものである。また、本システムはサーバとユーザ端末が協同して利用者、患者の月経随伴症状の精神的な症状や心因的な痛みなどの身体症状を改善する例として示したが、すべての要素をサーバ側だけに保持し、ユーザ端末は情報入出力と情報表示のためだけに用いるシステム、あるいは、必要なデータやプログラムをユーザ端末にダウンロードして、すべての処理をユーザ端末で実行できるシステムも本発明の範囲に含まれる。
【0011】
図1にユーザ端末101とサーバ106を含むネットワークシステム100の構成の概略を示した。ユーザ端末101は、インターネット110を介してユーザサーバ106と通信するための通信部102、個人情報や、データ、プログラムを記録するための記憶装置104、表示装置105、ユーザからの入力を受け付ける入力装置111、これらの制御を行う制御装置103などを含む。サーバ106は、インターネット110を介してユーザ端末101と通信するための通信部108、大容量の記憶装置109、および制御装置107などを含む。制御装置107には、通信部108を介してユーザ端末101と通信するための通信制御プログラムが実装されているとともに、記憶装置109に構築されたデータベースを管理するプログラムと、ユーザの現在の月経周期(以下、現月経周期)における基礎体温の変動を算出する専用のプログラム(以下、基礎体温算出プログラムとも言う)や、治療用アプリのサーバ側プログラム、治療用アプリの治療用のモジュールであるワークや疾患教育の動画などのデータが実装されている。そして、サーバ側の治療用プログラムは、ユーザ側の治療用アプリと連携して診断・治療を実行し、制御装置107が治療に必要な情報を通信制御プログラムやデータベース管理プログラムと連携させながらユーザ端末に提供する。それによってサーバ106による診断・治療あるいはセルフケアがユーザに提供される。この例では治療用アプリはサーバ側部分とユーザ端末側部分に分けられ、診断・治療またはセルフケアが実行される例を示すが、必要なプログラム・データ等をすべてユーザ端末101にダウンロードし、ユーザ端末101で独立して実行できる構成としてもよい。または、ユーザー端末101は入力手段および表示手段としてのみ機能し、サーバ106はユーザ端末101からの入力に基づいてプログラムを実行するように構成してもよい。
【0012】
(基礎体温周期の算出方法)
基礎体温周期の算出方法は、例えば、特許文献3に記載される方法を利用することができる。特許文献3には、ユーザによって定期的に測定された基礎体温の情報に基づいて、月経開始日T1からの経過日数と基礎体温との関係が折れ線グラフによって表現される。この生データを構成する各要素にガウシアンフィルタを適用して月経開始日からの日数と基礎体温との関係を連続した関数で表現できるように平滑化する。これにより図2に示したように基礎体温の周期変化の関係式が得られる。また、基礎体温の変動予測のために、まず、母集団として、1周期分の基礎体温の時系列変化を表す情報を多数用意しておき、ユーザは基礎体温を継続して測定する。母集団に含まれる基礎体温の時系列変化を表す情報の中にユーザにおける現月経周期のそれまでの基礎体温の変動傾向に近似しているものがあれば、ユーザのその後の基礎体温はその近似した基礎体温の時系列にほぼ従うものとして、その近似した基礎体温の時系列を予測結果としてユーザに提示することもできる。
【0013】
(症状メモリの作成)
生体リズムの影響によって女性のからだに周期的に表われる症状を把握するために、ユーザの生理周期に合わせた、身体症状、精神症状、社会的症状等と、基礎体温等、あるいは、EMA(Ecological Momentary Assessment、経験サンプリング法)と同時に記録する。図3は症状メモリの例としてのPMSメモリのユーザ端末101を介した入力例を示す。PMSメモリではユーザ端末101の表示装置105に入力項目が表示され、表示装置105の表面に設けられたタッチパネルである入力装置111によってそれぞれの項目についての症状のある・なしに基づいてスライダバーを利用して入力する例を記載した。表示や入力方法はこれに限られず、自由記載やチェックボックスを利用してもよい。たとえば、基礎体温の測定時に同時にこのPMSメモリを毎日入力し、基礎体温とその日の身体的症状、精神的症状、社会的症状(これらはすべてではなく必要なものだけでも良い)と、場合によっては追加で入力されたEMAの入力データ(PMSメモリのデータだけでなく、その他の測定結果(加速度センサを用いた身体活動量や心電図センサを用いた心拍数の変動、睡眠時間、食事記録)でもよい)が月経周期と関連付けられて記憶装置104あるいは記憶装置109またはいずれか両方に記憶される。PMSメモリとしては、PMSメモリ(川瀬ら「日本女性心身医学会雑誌」第5巻、第1号、31-37)、MDQ(Menstrual Distress Questionnaire)、偏光板MDQ(modified MDQ)、PSST(The Premenstrual Symptoms Screening tool)、DSM-IVのPMDDの診断基準、COPE(Calendar of Premenstrual Experiences)、PMSIS(Premenstrual Symptoms Impact Survey)、健康度・生活習慣診断検査(Diagnostic Inventory of Health and Life Habit; DIHAL.2,中学生~成人用)、MAQ(Menstrual Attitude Questionnaire)、VAS(月経痛レベル)などを利用してもよい。これらの指標は月経随伴症状を診断するために用いることができる。なお、ユーザの心理・社会的な背景として、妊娠を望んでいるか否かや、月経観・月経イメージ、母性性・性役割パーソナリティによっても心理社会的な月経随伴症状に影響が出ると考えることから、ユーザの基礎情報として妊娠を望んでいるか否かや、月経観・月経イメージ、母性性・性役割パーソナリティについても記録されていることが望ましい。
【実施例
【0014】
(実施例1)
本発明は、PMSメモリ記録プログラムの利用例を示すものである(本発明ではPMSメモリとして月経随伴症状の日々の症状を記憶するものを意図している)。図4(a)にプログラムのフローを示した。(S401)プログラムを開始する、(S402)プログラムは呼び出しがかかるまでS401とS402の間をループする。呼び出しは表示装置105の画面に表示される、PMSメモリ入力ボタン(図示しない)の押下、あるいは、連携するプログラムからの呼び出し、例えば、基礎体温入力プログラムでの基礎体温の入力、がトリガーとなり、(S403)図3の入力画面が示される。(S404)ユーザはスマートフォンのタッチパネル111を用いて各主症状に対するユーザの状況を表示されたスライダーによって選択して、記録ボタンを押して記録する。たとえば、ここではスライダーで入力された値は0-4の数値に変換されて記憶されている)。なお、PMSメモリには、服薬や性行為のあった日も記録できることで、服薬や妊娠の管理を行うが可能となる。
【0015】
PMSメモリはユーザの月経周期ごとの日々の症状の記録として記憶装置109(または記憶装置104)に記憶され、ユーザー情報とともに、サーバ106の記憶装置109(または記憶装置104)に記憶される。例えば、月経開始日T1から次の月経の開始日T1の前日までを一日ごとにひとまとまりの単位として記憶する(たとえば、5月分として、月経開始日5月2日から終了日まで一日ごとのデータを月経周期と合わせてひとまとまりのセットとして管理する)。(図示しないボタンによって)PMSメモリの記録の表示の呼び出しがあった場合は、過去の入力値の平均値を表示する。最新の状況を反映するために最近のデータの平均を用いてもよい。図4(b)に記録の表示の例を示した。この場合は直近の過去2回分の平均をとっている。ここでは、呼び出しがあった日にちがT15だったので、該当するデータとして、前回のT15のPMSメモリデータと、前々回のT15のPMSメモリの平均値を表示している。ここでは一日分のデータを示しているが、例えば、1か月分のデータを折れ線グラフのようなもので表示するようにしてもよい。値の高いもの例えば、3以上のものについては黄色で表示、4以上については赤で表示というように注意が促されるようにしてもよく、また、値の高いデータの項目だけ表示するようにしてもよい。また、ユーザの呼び出しで、日にちを指定して表示(例えば翌日、翌々日、前日など)するようにしてもよい。一日に何度もPMSメモリが記録された場合は、平均として記憶、あるいはそれぞれ記録のたびに記録し、集計する際に1日の平均として、あるいは、特定の測定(例えば基礎体温を付けたとき)だけを用いて集計としてもよい。また表示方法として、該当日の前回の該当日、前々回の該当日と指定の回数さかのぼって経時的に表示するようにしてもよい。表示部には、PMSメモリだけでなく、当日の体温、月経開始からの経過日数などを表示してもよい。このように、PMSメモリを記録し、ユーザが管理できるようにしてセルフモニタリングを行うことが可能となる。セルフモニタリングを行うことで月経随伴症状を緩和することができる。
【0016】
(実施例2)
次に、月経随伴症状を緩和する介入を月経周期の特定の日にちで行う例を示す。本実施例では月経周期の特定の日時、例えば月経の開始予定日の3~10日前に介入を行う。本実施例に従うシステムでは例えば、記憶装置109にマインドフルネスの「呼吸集中トレーニング」、「呼吸+観察トレーニング」、「呼吸瞑想」、「ボディスキャン法」、「歩く瞑想技法」、などの介入プログラムの実施方法の動画が記憶されている。
【0017】
ユーザはまず、ユーザ端末101にインストールされたPMS治療用アプリを起動し、PMS治療用アプリにユーザの月経周期の情報を記憶装置109から取得する(ここで治療用アプリはユーザ端末101にインストールされ実行され、インターネットなどを介してサーバとの情報のやり取りを行うことを意図しているが、プログラム本体をサーバに記憶し、そこから実行し、ユーザー端末101は単なる表示および入力の装置とする構成としてもよい。)。ここで、前述のように公知の手法で周期を求めてユーザの月経周期が求められている場合はPMS治療用アプリに内包されるカレンダー機能上で次の月経開始日を決定する。ここで、以前のユーザ入力のデータがない場合は、ユーザの月経開始日の予想日の入力を求めて、その入力に従って月経開始日を決定する。次に、PMS治療用アプリはカレンダー上で次の月経開始日から10日前までさかのぼり、その日から月経開始日まで、緩和プログラムの介入日と判断する。
【0018】
PMS治療用アプリは、毎日、介入日かどうかを判断し、介入日であると、ユーザのスマートフォン101を介して介入を行う。ここで、介入のタイミングとしては、ユーザが毎日基礎体温を測定するタイミングに応じて、たとえば、基礎体温の記録用のアプリの起動に連動するように、介入プログラムを提供する。介入プログラムとしては、記憶装置109に記憶された、マインドフルネスのプログラムのいずれかがサーバ106よりスマートフォン101にダウンロードされ、スマートフォン上で提供され、ユーザはそのプログラムを受講する。ここで、介入のタイミングとしてはこの場合に限らず、ユーザが精神的な不調を訴えやすい時間などに応じて適宜設定した時間や、体調が悪いときにユーザによる呼び出したタイミングなどでもよい。この介入によって月経随伴症状の改善ができる。
【0019】
また、基礎体温の入力時や、マインドフルネスのプログラム介入時に、その日の食事や睡眠時間、服薬記録、性行為の有無、体調などの入力を受け付けて記憶するようにしてもよい。ここで、毎日の食事において、カルシウム摂取目標量600-800mgに達していない場合は、カルシウムを多く含む食品
牛乳コップ 1杯(200g) :220mg
ヨーグルト 1パック(100g) :120mg
小松菜1/4束(70g) :119mg
ひじき煮物1食分(10g) :140mg
木綿豆腐1/2丁(150g) :180mg
を提案するようにしてもよい。
【0020】
また、高GIのお菓子や食事を控えるように、高GIのお菓子の代表例としては飴や菓子パンといった、「食物繊維が少ない炭水化物食品」が多い場合、低GIの食料を例示するように、
果物:リンゴ、イチゴ、キウイ
乳製品:ミルク、チーズ、ヨーグルト
ナッツ類:アーモンド、カシューナッツ、クルミ
を提案するようにしてもよい。
【0021】
さらに、体調と、提供されたマインドフルネスのプログラムとを記憶させ、ユーザにとって、体調の改善に効果があったと思われるプログラム(たとえば、体調を前述の指標(図5に示したVASなど)を用いて記憶し、改善効果が大きいものをプログラムの提供前後で比較して判断する)を選択的にユーザに提供するようしてもよい。この選択については一定期間後(たとえば半年ごと)にプログラムをリセットして改善効果を再確認して、提供するプログラムを変更するようにしてもよい。
【0022】
本実施例の変形例として、介入のタイミングを、月経の開始予定日とし、その日に月経がはじまらなかった場合に介入を行うようにしてもよい。この介入によって、月経がはじまらないことによる不安に基づく不調を改善することができる。
【0023】
(実施例3)
実施例2では介入のタイミングは月経開始日の3-10日としたが本実施例ではPMSメモリの結果に基づいて介入を行う。この場合は、サーバの記憶装置109には、月経痛を軽減するための体操として、骨盤を動かす有酸素運動であるマンスリービクス、その他のマインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)、その他の認知行動療法の介入プログラム、その他の心理療法の介入プログラムが記憶されている。介入プログラムとしては動画でのユーザの視聴だけではなく、介入プログラムとのチャットボットによる対話、AIカウンセラーとの対話など利用して行うことができるが、これに限られず、当業者によって周知の心理療法やカウンセリングメソッドが利用できる。さらに、対話については、音声、あるいは、テキストによる対話を切り替え可能とすると、介入の実施時のユーザの状況に合わせて利用可能となり都合がよい。
【0024】
スマートフォン101にインストールされたPMS治療用アプリには前述のPMSメモリと連携した機能が設けられている。具体的には、PMS治療用アプリが起動されると、アプリは、ユーザの月経周期情報と、PMSメモリに記憶された患者の例えば精神的および身体的な不快症状を呼び出す。ここで呼び出す不快症状としてはPMSメモリで記録された症状を10段階評価で示している場合、5以上の不快症状を示しているものを指す(この閾値については適宜変更可能である)。
【0025】
次に、サーバの記憶装置109に記憶された症状と介入プログラムの対応関係のリストを参照する。このリストには例えば、吐き気に対してはマインドフルネス瞑想、腰痛にはマンスリーピクスといったように対象の症状とその症状に対応した介入プログラムがリストされている。そしてこのリストに基づいて、PMSメモリにおいて、各種症状が出るタイミング(たとえば、前回の月経周期で症状が出た日(次の月経開始日から逆算した日数)、あるいは過去の複数周期での症状の評価値の平均が高い日(次の月経開始日から逆算した日数))を起点として各種介入プログラムを提供する。ここで、介入プログラムは、そのタイミングに応じてその日だけ介入を行う、あるいは、タイミングの前後、またはいずれかの一方に行うなど加入プログラムに合わせて実施することができる。この介入によって月経随伴症状が改善される。ここでは、症状と介入プログラムとの対応関係のリストを参照して、各種介入プログラムをユーザに提供しているが、症状と介入プログラムの対応関係は症状と介入プログラムの治療効果のデータの統計処理やAIによって導き出して、症状に応じた介入プログラムをユーザに提供するようにしてもよい。
【0026】
PMS治療用アプリは、介入の結果を継続的に周期的にPMSメモリの結果の推移を参照することで評価する。介入の効果が見られない場合は、症状ごとにリストの症状と介入プログラムを修正してあらたな介入プログラムを提供するようにしてもよい。
【0027】
(実施例4)
本実施例では、ユーザの月経周期の2段階の平均基礎体温のパターンのばらつきや乱れに基づいて介入を行う。まず、ユーザがPMS治療用アプリを起動すると、PMS治療用アプリは過去のユーザの平均基礎体温の推移データを記憶装置104(または記憶装置109)から読み出す。次に、ユーザの平均基礎体温の入力xに応じて、入力された日t(つまり月経周期における何日目か)と、その基礎体温を記憶された平均基礎体温パターンの該当日の平均基礎体温と比較する(図6参照)。もし、ここで、過去の平均基礎体温と測定された基礎体温の温度差が0.2℃(この閾値は適宜決定され、例えば、アプリの初期値、ユーザの設定、ユーザの平均基礎体温の高値でのばらつきを超える温度差などが設定される)だったとき、あるいは、月経周期における基礎体温パターンの低温期と高温期の期間の過度なばらつきや明らかな乱れが生じたときに、前述の実施例のような介入を行う。基礎体温の入力はユーザが入力する者に限られず、ウェアラブルデバイスなどによって自動的に測定された体温が自動的に入力されるようにしてもよい。この介入によって月経随伴症状が改善される。
【0028】
(実施例5)
本実施例ではユーザに対してアセスメントを行うことを特徴とする。本実施例の治療用アプリは治療に先立ってユーザの月経周期2期以上にわたって症状の記録をつける。本実施例では2周期で月経周期依存症状と月経随伴症状の定量化を目的として、DSM-IV-TRやACOG診断基準に基づく質問票、「(A)突然涙が出てくる」、「(B)突然悲しくなる」「(C)自分が無価値に感じる」、「(D)不安になる」、「(E)絶望的な気分になる」、「(F)自分をコントロールできない感じになる」、「(G)抑うつ気分になる、落ち込んだ気分になる」、「(H)倦怠感を感じる」、「(I)疲れやすくなる、または気力がなくなる」、「(J)いつもより眠りすぎる、いつもより眠れなくなる」「(K)集中力が低下する」、「(L)興味がなくなる(仕事、学校、趣味など)」、「(M)緊張したりストレスを感じたりする」、「(N)人にあたる、他者との論争」、「(O)過敏症」、「(P)怒りっぽくなる、またはイライラする」、「(Q)拒絶に対する敏感さ」「(R)乳房の柔らかさ」、「(S)乳房の腫れ」、「(T)乳房感度」、「(U)四肢のむくみ」「(V)関節の痛み」「(W)筋肉痛」、「(X)頭痛」、「(Y)食欲が増す、または食欲が減る」、「(Z)食欲が増す、または特定の食べ物(例:あまいものなど)が欲しくなる」、Mortolaらによる診断基準に基づく社会的症状「社会的あるいは経済的能力のはっきりした障害が認められる」、「結婚生活あるいは人間関係における不和がその相手により確認される」、「育児における困難」、「職場または学業成績の低下,欠席,遅刻,欠勤」、「社会的孤立の悪化」、「法律的なもめごと」、「死の願望」、「身体症状の治療を希望している」について、0(まったく当てはまらない)から4(完全に当てはまる)ポイントのリッカート尺度で評価を毎日所定の時間、本実施例では夕方に、治療用アプリからの、チャットボット形式の対話形式で入力を行い、ユーザの月経周期の開始日からの日数とともに記憶装置109または104に記憶される。本実施例では周期全体にわたって質問票や心理検査入力と記憶を行ったが黄体期だけ行うようにしてもよい。次に各スコアの平均スコアの計算や、各々のスコアの高群か低群かの分類と組み合わせのパターンに基づくクラスター分析を行う。PMSなどの黄体期に顕著な症状を呈する場合には平均スコアも黄体期だけ、月経がはじまる前の最後の7日間などのデータを利用するようにしてもよい。
【0029】
さらに、上記質問票や心理検査だけでなく、診断横断的なアセスメントのための指標(例として、GAD-7とPHQ-9、PHQ-15の組み合わせや、PFQなど)を追加してもよい。この指標は、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントするためのものであり、量的測定指標を用いてアセスメントを行う。例えば、適応的な行動として、不快な思考や感情を回避しないで、そのままにしておく「アクセプタンス」、考えと現実を区別して、不快な思考や感情にのみ込まれない「脱フュージョン」、目の前の現実への気づきを保持する「今、この瞬間との接触」、俯瞰的な視点から、自分自身が気づいていることに気づく「視点としての自己」、生きたい「生き方」を明確にする「価値の明確化」、生きたい「生き方」を追求する「コミットメント」等を想定している。心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、上述の適応的な行動をアセスメントすることにより、アクセスしたユーザー(患者:対象者)の心理的柔軟性をアセスメントする。上述の6つの適応的な行動のアセスメントは、第三世代の認知行動療法(CBT)といわれているアクセプタント&コミットメント・セラピー(ACT)に基づいて行われている。そして、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、上述の適応的な行動が見られる対象者であれば、健康的であり、生活の質が高く、ストレスが低く、各種疾患に対する抵抗力が高い状態にあると判断できる。また、これらの心理的柔軟性を高めることによって疾患特異的な介入の効果を高めることができるので(「疾患特異的な」とは「診断横断的な」と対比するために用いられている用語で、疾患、ここでは月経随伴症状に特異的な症状を特異的に改善することを対象とする用語である)、認知行動療法においてこれらの評価をするために用いられている公知の指標を用いて、その量的評価を行い、例えば、脱フュージョンで問題があればそこに介入する治療モジュールを追加して、治療を行うことが好ましい。ここでは好例として認知行動療法の指標に言及したが、そのほかの診断横断的な指標を用いることもできる。つまり、疾患特異的なアセスメントと、診断横断的なアセスメントを行い、また、治療用のモジュールとしても、疾患特異的なアセスメントに対応した疾患特異的な治療を行う治療用モジュールと、診断横断的なアセスメントに対応した診断横断的な治療を行う治療用モジュールの双方を提供するようにしてもよい。
【0030】
次に、各ユーザの質問票や心理検査への回答を用いて各ユーザを症状ごとのクラスターへ、それぞれの回答結果の統計処理あるいはAIを用いて制御装置107または制御装置103で分類する。処理の一例を示すと、月経周期2周期分の各項目についての平均スコアに基づいて、それぞれのユーザの症状を(1)情緒不安、(2)身体不快感、(3)イライラ、(4)乳房・身体への過敏症、(5)痛み、(6)食行動への影響、のクラスターに分類する。ここで、ユーザの前述の質問票や心理検査結果の(A)~(G)、(H)~(M)、(N)~(Q)、(R)~(U)、(V)~(X)、(Y)~(Z)の各群の平均値を算出し、それぞれの群の平均値を比較し、(A)~(G)の平均値が高い場合は(1)に、(H)~(M)の平均値が高い場合は(2)に、(N)~(Q)の平均値が高い場合は(3)に、(R)~(U)の平均値が高い場合は(4)に、(V)~(X)の平均値が高い場合は(5)に、(Y)~(Z)の平均値が高い場合は(6)の各クラスターに分類する。あるいは、(A)~(G)、(H)~(M)、(N)~(Q)、(R)~(U)、(V)~(X)、(Y)~(Z)それぞれの群におけるスコアの高群と低群の区別や、それぞれの群間における組み合わせのパターンに対してクラスター分析を行って(1)~(6)の各クラスターに分類してもよい。
【0031】
図7に本治療アプリの治療の流れを示した。一つのタイムスロットをユーザの月経周期(p)とする。本治療アプリでは月経周期の2周期の間、前述の質問票や心理検査を行って症状・心理アセスメントを行う。典型的には質問票や心理検査の指標項目は記憶装置109に記憶されており、ユーザのアプリ利用時に端末にダウンロードされ、ユーザはユーザ端末101の表示装置105にチャットボット形式で質問票や心理検査として入力を則し、ユーザはタッチパネルなどの入力装置101で質問票や心理検査への回答を行う。入力された回答結果は通信部102を介して記憶装置109に送信され、記憶装置109ではユーザー情報とともに、毎日の入力結果が記憶される。また、記憶装置109には前述の実施例の治療用のモジュールだけでなく、疾患教育(例えば、PMSや更年期障害などの月経随伴症状の原因やこれから行う治療法やその他の情報)や心理教育(例えば、心理的柔軟性やストレス対処法、これから行う治療法やその他の情報)のための動画コンテンツなどを含み、典型的にはアセスメント時、もしくは、アセスメント終了後にユーザ端末101にダウンロードされ、治療の一環として表示装置105を介して、ユーザーに提供される。続いて、月経の2周期が終わると、記憶装置109に記憶されたユーザの質問票や心理検査結果が制御装置107によって、統計処理(AI)処理され、ユーザのクラスター分けが行われ、ユーザ情報とともにクラスタ分けの結果が記憶装置109に記憶される。
【0032】
続いて、ユーザに対して、そのユーザの分類されたクラスターに応じた治療モジュールが、典型的には8週間にわたって提供される。つまり、記憶装置109にはクラスターと治療に用いる治療モジュールの対応関係を示したリストが記憶されており、制御装置107はこのリストに応じて、ユーザ端末101に送信する治療モジュールをユーザのクラスタ分けの結果に基づいて決定する。なお、このリストは治療アプリの実施後に再度アセスメントを行い治療効果を検証した際に効果が見られなかった場合に更新することができる。また、この更新はAIを用いて自動的に行うこともできる。また、予め質問票や心理検査の回答結果と治療モジュールの治療効果の教師データを記憶装置109に記憶させ、個人の質問票や心理検査の回答と対応する治療用モジュールを治療の都度、AIで決定し、ユーザ端末101に送信するようにしてもよい。
【0033】
次に、ユーザ端末101で実行されている治療用アプリは、受信した治療モジュールを患者に対して実行する機能を有している。治療用アプリは、各疾患に特有な場面、状況等に対して、各クラスターに適切な技法で、当該疾患に応じた健康で新しい行動パターンの学習/獲得を目指すための心理的介入を行う。例えば、アセスメントにおいて、クラスター1(「情緒不安」の得点が平均的な水準より高い)に分類された患者であれば、「注意訓練」を実施する。「注意訓練」とは、問題に対して過度に注意を向けるのではなく、注意の向け方を分散させることを目的とする。この注意訓練は、ユーザ端末101を介して患者に提供され、典型的には、音声又はテキストによる、注意訓練実施項目の説明と注意訓練用の音声、チャットボット形式の治療用アプリを含む治療用システムとの対話から構成される。また、治療モジュールには、分類されたクラスターに対応して、患者が実行するべきホームワークが用意されている。治療モジュールとしてホームワークが選択される場合、記憶装置109に記憶され、治療モジュール毎にリンク付けされたホームワークをユーザ端末101に提供することが出来る。係るホームワークは、患者が実施すると症状の改善が期待でき、且つ、患者の主体性を向上させる様な内容に、予め編集されている。
【0034】
(実施例6)
本実施例では、ユーザが妊娠を望んでいるか否かによって、基礎体温パターンに伴う排卵予定日と月経開始日までの介入を行う。治療用アプリ起動時に、アプリからユーザに対して、ユーザが妊娠を望んでいるか否かをチャットボット形式の問いかけを行い、その結果が記憶装置109に記憶される。治療用アプリはこの回答結果に基づいて、本実施例の介入を行うかどうかの判断を制御装置で行う。妊娠を望んでいると記録されたユーザの場合、基礎体温パターンが低温期から高温期へと移行する排卵予定日の3-7日から、たとえば過度な不安に陥らないように予期不安に対する介入プログラム、例としては注意訓練などがユーザ情報端末101を介してユーザに提供される。あるいは、パートナーとの相互作用を体験的に理解するようなプログラムや、パートナーとマインドフルマッサージなどのプログラムが提供する。なお、PMSメモリには性行為があった日付を記録しておくことが望ましい。排卵後2週間以上基礎体温の高温期が続くと妊娠している可能性が高いと考えられるが、月経開始日までは妊娠の有無が判明せずに精神状態が過度に不安定になることを防ぐために、たとえば現実と思考とを同一化しないようにするための脱フュージョンやマインドフルネス呼吸法などのプログラムがユーザ情報端末101を介してユーザに提供する。月経開始日を過ぎても月経が始まらない場合は、妊娠の成立が確定的になるまで、もしくは医療機関への受診によって医学的に妊娠が確定するまでの期間の不安やストレスに対するプログラムが提供される。妊娠が成立せずに基礎体温が低温期へ移行して月経が始まった場合には、ストレスコーピングや人生の価値とゴールなどのプログラムを提供する。妊娠を望んでいないユーザに対しても、排卵日と月経開始日までの過度な不安とストレスを軽減するような介入プログラムが提供される。
【0035】
さらに、治療用アプリは患者の服薬スケジュールを管理する機能を持ち、服薬と併用して治療モジュールをユーザに提供するように構成されてもよい。服薬の為の処方については医療機関や医師、薬剤師と連携してもよい。薬剤としては、ドロスピレノン・エチニルエストラジオール錠などの低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬、漢方薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRIs)との併用が好ましく、特に、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬との併用が好ましい。
【0036】
本発明の治療用モジュールとして、メタバースやVR、ARなどの技術を利用してユーザに提供することもできる。
【0037】
実施例1ないし実施例5にそれぞれ実例を示して説明してきたがそれぞれの実施例に用いられた要素を他の実施例の構成に追加して用いることが可能なことは言うまでもない。また、本明細書の説明においてはPMS治療用アプリあるいはPMSメモリの用語が使われているが、PMS治療用アプリが月経随伴症状の治療に利用可能なこと、あるいはPMSメモリがPMSだけに限られず、月経随伴症状の記録に用いられることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
101 ユーザ情報端末
102 通信部
103 制御装置
104 記憶装置
105 表示装置
106 サーバ
107 制御装置
108 通信部
109 記憶装置
110 インターネット
111 入力装置
【要約】
【課題】月経随伴症状治療用アプリを提供する。
【解決手段】
ユーザの月経周期に関連する情報と、ユーザの月経に随伴する症状の記録である症状メモリと、月経随伴症状の治療、予防またはセルフケア用の心理療法に基づく治療モジュールとを記憶する記憶装置と、
ユーザによって操作されるユーザ端末とを少なくとも含む月経随伴症状の治療、予防、またはセルフケアするためのシステムであって、
前記月経周期の所定のタイミングで前記月経随伴症状の治療や予防、あるいはセルフケア用の心理療法に基づく治療モジュールを患者に提供することを特徴とするシステム。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7