(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】金担持カーボン触媒およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/52 20060101AFI20221124BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20221124BHJP
B01J 37/16 20060101ALI20221124BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20221124BHJP
B22F 1/0545 20220101ALI20221124BHJP
B22F 1/10 20220101ALI20221124BHJP
B22F 1/18 20220101ALI20221124BHJP
B22F 9/24 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B01J23/52 M
B01J37/04 102
B01J37/16
B22F1/00 K
B22F1/0545
B22F1/10
B22F1/18
B22F9/24 E
(21)【出願番号】P 2022548093
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2021041057
(87)【国際公開番号】W WO2022118612
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2020200076
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体高分子形燃料電池実用化推進技術開発/基盤技術開発/低白金化技術」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000198709
【氏名又は名称】石福金属興業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】青木 直也
(72)【発明者】
【氏名】菅原 蓉子
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 稔
(72)【発明者】
【氏名】大門 英夫
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0114870(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0167187(US,A1)
【文献】国際公開第2011/074606(WO,A1)
【文献】特開2013-089287(JP,A)
【文献】国際公開第2005/120708(WO,A1)
【文献】特開2004-232017(JP,A)
【文献】KAUFFMAN, D. R.,Chemical Science,2014年05月16日,Vol.5,pp.3151-3157,<DOI:10.1039/C4SC00997E>
【文献】YOSKAMTORN, T. et al.,ACS Catalysis,2014年09月18日,Vol.4,pp.3696-3700,<DOI:10.1021/cs501010x>
【文献】LEE, Y. et al.,Chemistry of Materials,2009年06月24日,Vol.22,pp.755-761,<DOI:10.1021/cm9013046>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B22F 1/00 - 1/18
B22F 9/00 - 9/30
B82Y 30/00 - 40/00
H01M 4/86 - 4/98
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドデカンチオールまたはヘキサデカンチオールが被覆率10~70%で配位し、平均粒径1.0~1.5nmの金微粒子をカーボンブラックに担持した金担持カーボン触媒。
【請求項2】
塩化金酸水溶液と相関移動剤を含む有機溶媒溶液を混合した後、液相分離して得られた有機溶媒溶液相に
ドデカンチオールまたはヘキサデカンチオールを混合し、その混合した溶液に還元剤を含む水溶液を混合し、
前記ドデカンチオールまたはヘキサデカンチオールが配位した金微粒子を得る金微粒子生成工程と、
前記
ドデカンチオールまたはヘキサデカンチオールが配位した金微粒子をヘキサンに分散させ、さらに、極性有機溶媒を加え混合した後、前記
ドデカンチオールまたはヘキサデカンチオールが配位した金微粒子を遠心分離する一連の操作を複数回繰り返す金微粒子処理工程と、
前記金微粒子処理工程後の前記
ドデカンチオールまたはヘキサデカンチオールが配位した金微粒子をヘキサンに分散させた溶液とカーボンブラックをヘキサンに分散させた溶液とを混合することで、前記
ドデカンチオールまたはヘキサデカンチオールが配位した金微粒子をカーボンブラックに担持させる金微粒子担持工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の金担持カーボン触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金担持カーボン触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルオーダーの粒径を有する金の微粒子は、例えば、二酸化炭素を還元するカソード触媒に利用することができる。
【0003】
このような金微粒子を製造する方法として、気相法と液相法がある。液相法の例としては還元剤を加えて金イオンを還元することによって金微粒子を得る方法がある。
【0004】
特許文献1には、トルエン/水二相系を用いて、アルカンチオール存在下で塩化金酸イオンを水素化ホウ素ナトリウムで還元する金微粒子の製造方法において、還元反応速度を制御することによって、粒径制御する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金微粒子をカーボンブラックに担持した触媒においては、高活性化のため、微粒子サイズが小さく、高耐久化のため、金微粒子の凝集を抑制できることが求められている。しかし、金微粒子をより小さくすると使用中に金微粒子が容易に凝集してしまい、活性低下が生じてしまう問題があった。
【0007】
本発明の目的は、金微粒子サイズがより小さく、且つカーボンブラックとの密着強度が強く、金微粒子の凝集を抑制できる金担持カーボン触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、金微粒子処理工程において、比較的大きい金微粒子を除去することで金微粒子の粒径がより小さくなること、および、ヘキサン中でアルカンチオールが配位した金微粒子をカーボンブラックに担持させることにより、密着強度が強いことと配位したアルカンチオールの立体障害効果により、金微粒子の凝集抑制を可能にする金担持カーボン触媒が得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明による方法で金微粒子をカーボンブラックに担持させると、カーボンブラックの官能基と金微粒子の結合に悪影響を及ぼす水のない条件で担持でき、かつ、カーボンブラックの官能基と金微粒子に配位したアルカンチオールとの間の結合(共有結合性とイオン結合性)が加わり、密着強度が強くなると考える。
加えて、金微粒子に配位したアルカンチオールは立体障害物となって触媒使用時の金微粒子の凝集を抑制し、触媒の機能低下を抑制し、高耐久化に寄与すると考える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従うと、金微粒子サイズがより小さく、且つカーボンブラックとの密着強度が強く、金微粒子の凝集を抑制できる金担持カーボン触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、アルカンチオールが被覆率10~70%で配位し、平均粒径1.0~1.5nmの金微粒子をカーボンブラックに担持した金担持カーボン触媒である。金微粒子の平均粒径は1.2~1.5nmが好ましい。
【0012】
アルカンチオールは一般式CnH(2n+1)SHで示される、金表面に結合する硫黄を含む結合基とメチレン基のスペーサー鎖とメチル基の頭部基で構成される水に不溶なチオールである。例えばドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオールが挙げられる。
【0013】
金微粒子はカーボンブラック表面に高分散状態で担持されている。カーボンブラックは電気伝導性を有しており、BET比表面積は80~1300m2/gである。カーボンブラックの表面には、一般に、カルボキシル基、ラクトン基、フェノール性水酸基、カルボニル基等の表面官能基が存在している。カーボンブラックとして、例えば約800m2/gのBET比表面積を有するKetjen Black EC300J、約1270m2/gのBET比表面積を有するKetjen Black EC600JDを使用することができる。
【0014】
本発明の金担持カーボン触媒の製造方法は、金微粒子生成工程と、金微粒子処理工程と、金微粒子担持工程とを含む。
【0015】
金微粒子生成工程では、塩化金酸水溶液と相関移動剤を含む有機溶媒溶液を混合した後、液相分離して得られた有機溶媒溶液相にアルカンチオールを混合し、その混合した溶液に還元剤を含む水溶液を混合し、アルカンチオールが配位した金微粒子を得る。
【0016】
具体的には、例えば、塩化金酸を純水に溶解させた水溶液と、テトラオクチルアンモニウムブロマイドを有機溶媒であるトルエンに溶解させた溶液とを混合し、塩化金酸を相間移動剤であるテトラオクチルアンモニウムブロマイドと反応させた後、水溶液相を分離除去し、得られたトルエン溶液相(有機溶媒溶液相)にドデカンチオールを加え、攪拌を行って混合し、金に配位している錯体をドデカンチオール基(C12H25S)に置換した金錯塩(C8H17)4N[Au(C12H25S)4]を得る。上記において、攪拌は、例えば、30℃、6時間以上、好ましくは12時間以上行う。
【0017】
次いで、そのドデカンチオールを加え混合したトルエン溶液相(有機溶媒溶液相)と純水に溶解した水素化ホウ素ナトリウムを混合し、30~60℃、1~4時間攪拌し、ドデカンチオールが配位した金微粒子をトルエン溶液相(有機溶媒溶液相)中に還元析出させ、トルエン溶液相(有機溶媒溶液相)を分離し、有機溶媒のトルエンをエバポレーターで除去して沈殿物としてドデカンチオールが配位した金微粒子を得る。
【0018】
金微粒子処理工程では、アルカンチオールが配位した金微粒子をヘキサンに分散させ、さらに、極性有機溶媒を加え混合した後、アルカンチオールが配位した金微粒子を遠心分離する一連の操作を複数回繰り返す。
【0019】
極性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノールを使用することができる。
【0020】
具体的には、例えば、ドデカンチオールが配位した金微粒子をヘキサンに分散させる。
【0021】
次に、極性有機溶媒であるエタノールを加え混合した後、混合された溶液を遠心分離法で遠心分離し、沈殿した前記ドデカンチオールが配位した金微粒子を取り出し、洗浄する。
【0022】
上記の一連の操作を2回以上(複数回)繰り返す。
【0023】
上記工程では、ドデカンチオールが配位した金微粒子に付着した未反応のテトラオクチルアンモニウムブロマイド、ドデカンチオールの除去(洗浄)を行うことができる。
【0024】
前記金微粒子処理工程によって、ドデカンチオールが被覆率10~70%で配位した平均粒径1.0~1.5nmの金微粒子を得る。
【0025】
この金微粒子処理工程において、比較的大きい金微粒子は、金微粒子の単位表面へのドデカンチオールの配位数が少なくなり、極性が相対的に強くなり、極性有機溶媒のエタノールと結合して沈殿しないで液中に残るため、比較的大きい金微粒子を除去できると考える。
【0026】
金微粒子担持工程では、金微粒子処理工程後の前記アルカンチオールが配位した金微粒子をヘキサンに分散させた溶液とカーボンブラックをヘキサンに分散させた溶液とをそれぞれ準備し、それらを混合し、6時間以上攪拌することで、前記アルカンチオールが配位した金微粒子を担持したカーボンブラックを得る。
【0027】
具体的には、例えばドデカンチオールが配位した金微粒子をヘキサン中で超音波を照射して分散させ金コロイドヘキサン溶液を得る。カーボンブラックをヘキサン溶液中で超音波を照射して分散させる。上記工程では例えば、33~40kHzの超音波をそれぞれ1時間照射して分散させる。
【0028】
両溶液を混合し、室温で例えば12時間撹拌させて、ドデカンチオールが配位した金微粒子をカーボンブラックに担持させる。その攪拌によって金微粒子がカーボンに担持される。2溶液を混合する際に10分間から30分間超音波を照射してもよい。
【0029】
以上の工程により、アルカンチオールが被覆率10~70%配位し、平均粒径1.0~1.5nmの金微粒子をカーボンブラックに担持した金担持カーボン触媒を得る。金量に対しカーボン量を調節することで、金担持率が5~70wt.%の金担持カーボンを作製できる。
なお、取扱い時にカーボンブラックに吸湿される微量の水は、上記カーボンブラックをヘキサン中での超音波照射時に除去される。
【0030】
アルカンチオールの被覆率が10%より少ないとカーボンブラックとの密着強度が低くなる。一方、アルカンチオールの被覆率が70%より多いと触媒としての機能する金表面を十分得られなくなる。アルカンチオール被覆率は、10~70%が好ましく、15~65%がより好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0032】
(実施例1)
塩化金酸(HAuCl4・4H2O)21gを純水10gに溶解した塩化金酸水溶液とテトラオクチルアンモニウムブロマイド(相関移動剤)42.9gをトルエン693gに溶解した溶液とを室温で混合・撹拌した。
【0033】
次に、水溶液相を除去してトルエン溶液相を得た。
【0034】
得られたトルエン溶液相にドデカンチオール(保護剤)を31.2mL加え12時間撹拌した。
【0035】
その後、60℃に保持したトルエン溶液相に水素化ホウ素ナトリウム(還元剤)20gと超純水255gを混合した水素化ホウ素ナトリウム水溶液を10mL/minの滴下速度で加え30分間撹拌した後、25℃で3時間撹拌した。
【0036】
その後水溶液相を除去し、ロータリーエバポレーターでトルエンを蒸発させ沈殿物を得た。
【0037】
次に、金微粒子処理工程を行う。すなわち、金を含んでいる沈殿物から過剰なテトラオクチルアンモニウムブロマイドとドデカンチオールの除去と比較的大きな金微粒子を除去する処理を行う。その第1回目の処理として、ヘキサン60mLに沈殿物(=金コロイド)を40kHzの超音波を10分間照射し再分散し、続いてエタノールを500mL加え混合し、次いで8000rpm、 10℃で15分間遠心分離し、沈殿物を得た。
【0038】
2回目の処理として、ヘキサン24mLにその沈殿物を40kHzの超音波を10分間照射して再度分散させ、エタノールを500mL加え混合し、8000rpm、 10℃で15分間遠心分離した。その後、上澄み溶液を除去して沈殿物を再度ヘキサンに分散させ、ロータリーエバポレーターでヘキサン溶液を蒸発させ沈殿物(ドデカンチオールが配位した金微粒子)を得た。
【0039】
得られたドデカンチオールが配位した金微粒子をヘキサン100mL中で40kHzの超音波を30分間照射して分散させ金コロイドヘキサン溶液を得た。
【0040】
カーボンブラック(EC300J)90gをヘキサン溶液6Lに分散し40kHzの超音波を1時間照射した溶液と上記金コロイドヘキサン溶液を混合し、40kHzの超音波を30分間照射した後、室温で12時間撹拌することで、ドデカンチオールが配位した金微粒子をカーボンブラックに担持させた。
【0041】
溶液をガラスフィルターでろ過し、60℃で乾燥させ、金担持率10.8wt.%の実施例1の金担持カーボン触媒を得た。
【0042】
生成した金担持カーボン触媒の金微粒子の平均粒子径は1.4nm 、標準偏差0.60であった。配位したドデカンチオールの金粒子表面被覆率は17%であった。
【0043】
(金の平均微粒子径の求め方)
TEM観察(加速電圧200kV、倍率100万倍)を行い、撮影した写真の金微粒子の粒子径を測り、平均粒子径および標準偏差を算出した。
【0044】
(アルカンチオールの金粒子表面被覆率の求め方)
金担持カーボン触媒1g当たりの、平均粒子径としての金微粒子数(A)と金微粒子に配位しているアルカンチオール分子数(B)を下式よりそれぞれ求め、金微粒子1個当たりのアルカンチオールの分子数(C=B/A)を算出した。その値(C)を用いて式3よりアルカンチオールの金粒子表面被覆率(D)を算出した。
式1 A=(触媒1g当たりの金担持量)÷{(平均粒径の金粒子1個の体積)÷(金原子
1個の体積)×197÷(6.02×1023)}
式2 B=X÷(アルカンチオール1モルの質量)×6.02×1023
X:金担持カーボン触媒1gの300℃で熱処理前後の質量減少量
式3 D=π(硫黄の原子半径)2×C÷(平均粒径の金粒子1個の表面積)×100
【0045】
(実施例2)
実施例1のドデカンチオール31.2mLをヘキサデカンチオール39.4mLに変更したことを除き、実施例1と同様の製造方法で実施例2の金担持カーボン触媒を得た。生成した金担持カーボン触媒の金担持率は10.5wt.% 、金微粒子の平均粒子径は1.4nm 、標準偏差0.55であった。配位したヘキサデカンチオールの金粒子表面被覆率は58%であった。
【0046】
(比較例1)
比較例1は、金微粒子処理工程を行わない以外は実施例1の方法でカーボンブラックに担持させ、金担持率7.6wt.%の金担持カーボン触媒を得た。
【0047】
(比較例2)
比較例2は、実施例2で得られた金担持カーボン触媒を200℃、1時間の熱処理でヘキサデカンチオールを蒸発させた平均粒子径1.6nmの金担持カーボン触媒を得た。
【0048】
実施例1、2、比較例1の触媒の特性を表1に示す。また、
図1に実施例1のTEM画像を示す。TEM画像によりカーボンブラック上に1.0~1.5nmの粒径の金微粒子が凝集せず均一に分散した触媒が得られていることがわかる。
表1の比較例1におけるアルカンチオールの金粒子表面被覆率を式3で求めると100%以上の値が得られたが、100%と表記した。これは金微粒子処理工程を行わないことで、金微粒子表面に配位したアルカンチオールに余剰なアルカンチオールが絡みついたためと考えられる。
【0049】
【0050】
(密着強度評価)
金担持カーボン触媒における金微粒子とカーボンブラック担体との密着強度を評価した。密着強度の評価は、ヘキサン中の金担持カーボンに、40kHzの超音波を30分間照射し、超音波照射の前後の金担持率を比較することにより行った。超音波照射後の金担持カーボン触媒はガラスフィルターろ過で回収した。
なお、各試料の金担持率は、金の質量分析値と金担持カーボン触媒の質量より求めた。
【0051】
【0052】
実施例1は、超音波試験前後で金担持量率の変化が認められなかったことより、ドデカンチオールが配位した金微粒子とカーボンブラック担体との密着強度が強いことがわかった。一方、比較例1は、超音波試験後の担持率が減少していることから、密着強度が不十分であることがわかった。このことは、ドデカンチオールが配位した金微粒子に付着した未反応のテトラオクチルアンモニウムブロマイド、ドデカンチオールがカーボンブラックの官能基と金微粒子に配位したアルカンチオールとの間の結合に悪影響を与えるためと考える。
【0053】
また、金微粒子処理工程を行った実施例1は、金微粒子処理工程を行なわなかった比較例1に比べ超音波テスト前の金担持率が多いことから、金微粒子処理工程を行うことにより、金微粒子がカーボンに担持する担持速度が増加すると考える。
【0054】
(凝集加速試験)
金担持カーボン触媒の使用中に進行する金微粒子の凝集を300℃、1時間加熱する加速試験で実施例1と比較例2を評価した。その結果を表3に示す。
比較例2は、金微粒子の凝集が進行し、加速試験後の平均粒子径が5.2nmと大きく増加したのに対し、ドデカンチオールが配位している実施例1は、平均粒子径が2.8nmと金微粒子の凝集を抑制していることがわかる。
【0055】