(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】眼科用手術器具
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20221124BHJP
A61F 9/007 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
A61F2/16
A61F9/007 200Z
(21)【出願番号】P 2018130657
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】506111240
【氏名又は名称】学校法人 愛知医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【氏名又は名称】大池 聞平
(72)【発明者】
【氏名】瓶井 資弘
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-033817(JP,A)
【文献】特表2016-535652(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134056(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00-2/97
A61F 9/00-9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハプティックを有する眼内レンズの手術に用いられる眼科用手術器具であって、
眼球に形成される針穴に通されるガイド部材と、
前記ガイド部材に接続され、前記ガイド部材に引っ張られて前記針穴に通される可撓性チューブとを備え、
前記可撓性チューブは、内側に前記ハプティックを挿入可能で、且つ、内側に挿入されたハプティックを保持可能であ
り、
前記可撓性チューブにおける前記ガイド部材に接続されている側の端面は、幅方向に対し斜めに形成されている、眼科用手術器具。
【請求項2】
前記可撓性チューブの内側空間の寸法は、前記ハプティックの先端部の寸法より大きい、請求項1に記載の眼科用手術器具。
【請求項3】
前記可撓性チューブには、シリコンチューブが用いられている、請求項1又は2に記載の眼科用手術器具。
【請求項4】
前記可撓性チューブにおける前記ガイド部材に接続されている側の端面は、前記可撓性チューブの幅方向の横断線となす角度が15~75度である、請求項
1に記載の眼科用手術器具。
【請求項5】
ハプティックを有する眼内レンズの手術に用いられる眼科用手術器具であって、
眼球に形成される針穴に通される針状部材と、
前記針状部材に接続され、前記針状部材に引っ張られて前記針穴に通される可撓性チューブとを備え、
前記可撓性チューブは、内側に前記ハプティックを挿入可能で、且つ、内側に挿入されたハプティックを保持可能であり、
前記針状部材と前記可撓性チューブとの接続箇所では、前記可撓性チューブの内側に前記針状部材が挿入され、接着剤によって前記針状部材と前記可撓性チューブが互いに固定されている、眼科用手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内レンズの手術に用いられる眼科用手術器具等に関する。
【背景技術】
【0002】
眼内レンズ(IOL:Intraocular lens)を用いた水晶体再建術が、白内障手術として広く行われている。水晶体再建術では、超音波乳化吸引術によって水晶体が吸引されて空隙化した水晶体嚢の中に、眼内レンズが固定される。
【0003】
ところが、患者によっては、水晶体嚢の破損又は消失により水晶体嚢の中に眼内レンズを固定できない場合がある。このような場合の手術法として、眼内レンズ強膜内固定術が知られている。しかし、この手術法は、眼球内で眼内レンズのハプティックを針穴に入れるなど難易度が高い作業が必要であり、高い手術手技が必要である。
【0004】
特許文献1には、眼内レンズ強膜内固定術に用いる医療用器具が記載されている。この医療用器具は、眼内レンズのハプティックに形成された折り返し部を引っ掛けて牽引するための器具である。医療用器具のフック部が、ハプティックの折り返し部に引っ掛けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ハプティックに折り返し部が設けられた眼内レンズは、汎用的に用いられていない。従来の眼科用手術器具(特許文献1に記載の医療用器具)は、特殊な眼内レンズを対象としている。そのため、従来は、汎用的な眼内レンズを使用する眼内レンズ強膜内固定術に、依然として高い手術手技が必要であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、汎用的な眼内レンズを使用する眼内レンズ強膜内固定術の難易度を低下させることができる眼科用手術器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するべく、第1の発明は、ハプティックを有する眼内レンズの手術に用いられる眼科用手術器具であって、眼球に形成される針穴に通されるガイド部材と、ガイド部材に接続されガイド部材に引っ張られて針穴に通される可撓性チューブとを備え、可撓性チューブは、内側にハプティックを挿入可能で、内側に挿入されたハプティックを保持可能である。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、可撓性チューブの内側空間の寸法は、ハプティックの先端部の寸法より大きい。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、可撓性チューブには、シリコンチューブが用いられている。
【0011】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、ガイド部材と可撓性チューブとの接続箇所では、可撓性チューブの内側にガイド部材が挿入されている。
【0012】
第5の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、ガイド部材と可撓性チューブとの接続箇所では、ガイド部材の端部に設けられた挟持部に可撓性チューブが挟み込まれている。
【0013】
第6の発明は、第1乃至第5の何れか1つの発明において、可撓性チューブにおけるガイド部材に接続されている側の端面は、幅方向に対し斜めに形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、ガイド部材を利用して、眼球に形成される針穴に可撓性チューブを通すことができる。ここで、特殊な眼内レンズでなければ、ハプティックの太さに応じて可撓性チューブを準備することで可撓性チューブの内側にハプティックを挿入することができる。本発明では、眼球の針穴に通されて眼球の内外にそれぞれ延びる可撓性チューブにおいて、眼球の内側に延びる方の端部にハプティックを挿入する。可撓性チューブは、内側に挿入されたハプティックを保持する。そして、可撓性チューブを外側に引き出すことで、可撓性チューブによりハプティックが引っ張られ、ハプティックの先端側を針穴に案内して針穴に通し眼球の外側に引き出すことができる。これにより、眼内レンズ強膜内固定術では眼内レンズの固定が可能になる。
【0015】
また、本発明では、例えば、眼球の針穴に通された可撓性チューブについてある程度の長さを確保することで、眼球に形成した切開創などを通して、可撓性チューブにおいて針穴から眼球の内側に延びる部分を眼球の外側に引き出すことができる。これにより、可撓性チューブの内側にハプティックを挿入する作業を眼球の外側で行うことが可能である。本発明によれば、眼内レンズ強膜内固定術の難易度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係る眼科用手術器具の概略構成図である。
【
図2】
図2は、眼科用手術器具の可撓性チューブにハプティックを挿入した状態を説明するための概略図である。
【
図3】
図3は、眼科用手術器具の使用方法においてチューブ挿通作業を説明するための図であり、断面視における眼球の模式図である。
【
図4】
図4は、眼科用手術器具の使用方法においてチューブ分断作業を説明するための図であり、断面視における眼球の模式図である。
【
図5】
図5は、眼科用手術器具の使用方法においてレンズ接続作業を説明するための図であり、断面視における眼球の模式図である。
【
図6】
図6は、眼科用手術器具の使用方法においてレンズ固定作業を説明するための図であり、正面視における眼球の模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る眼科用手術器具について可撓性チューブに取り付ける漏斗状の部材を説明するための要部の拡大図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る眼科用手術器具におけるガイド部材と可撓性チューブの接続箇所について別形態を説明するための要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1-
図8を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0018】
眼科用手術器具10は、眼内レンズ20(
図2参照)の手術に用いられる手術器具である。例えば、眼科用手術器具10は、水晶体再建術において水晶体嚢が破損又は消失した場合や、眼球30内に眼内レンズ20が落下した場合(眼内レンズ脱臼の場合)など、眼内レンズ強膜内固定術を行う際に用いられる。眼科用手術器具10は、眼内レンズ強膜内固定術において、眼内レンズ20のハプティック22の先端側を眼球30の外側に引き出すための手術器具である。
【0019】
眼科用手術器具10の説明を行う前に眼内レンズ20について簡単に説明する。眼内レンズ20は、レンズ部21と、レンズ部21の外周面から外側に突出する複数のハプティック22(例えば2つのハプティック22)とを備えている(
図2参照)。複数のハプティック22は、レンズ部21の中心に対し点対称に設けられている。各ハプティック22は、細長形状を有し、内側に緩やかに曲がっている。各ハプティック22の先端部の外径(太さ)は、例えば0.14mm程度である。
【0020】
[眼科用手術器具の構成]
続いて、図面を参照しながら、眼科用手術器具10について説明する。眼科用手術器具10は、
図1に示すように、眼球30に形成される針穴41,42(
図3参照)に通されるガイド部材12と、ガイド部材12に接続されてガイド部材12に引っ張られて針穴41,42に通される可撓性チューブ14とを備えている。
【0021】
ガイド部材12は、例えば針状の部材である。ガイド部材12の材料には、ステンレスなどの金属が用いられている。なお、ガイド部材12に硬質樹脂など金属以外の材料を用いてもよい。また、ガイド部材12の形状について真っすぐな針状に形成されているが、他の形状であってもよい。例えば、ガイド部材12は、曲がっていてもよいし、先端が尖っていない棒状に形成されていてもよい。
【0022】
ガイド部材12は、眼球30内で取り回すのに支障がない長さに形成され、また眼球30の強膜31に挿通させても大きな傷が生じない太さに形成されている。例えば、ガイド部材12は、全長が15mmであり、太さ(外径)が0.14mmである。なお、ガイド部材12の寸法は、本段落に記載の値に限定されない。
【0023】
可撓性チューブ14は、柔軟な素材で作製された極細の管状部材である。可撓性チューブ14は、任意に曲げることができる。可撓性チューブ14には、例えばシリコンチューブを用いることができる。なお、可撓性チューブ14にシリコン以外の材料を用いてもよい。
【0024】
可撓性チューブ14は、断面視において外周及び内周がともに円形である。なお、可撓性チューブ14の断面形状は、この形状に限定されない。例えば断面視において外周又は内周の少なくとも一方が多角形であってもよい。
【0025】
可撓性チューブ14の一端部15は、ガイド部材12の針頭部13(針先側とは反対側の部分)に固定されている。具体的に、
図1における点線内の拡大図に示すように、可撓性チューブ14の一端部15の内側に、ガイド部材12の針頭部13が挿入されている。ガイド部材12の針頭部13と可撓性チューブ14の一端部15とは、この状態で接着剤などにより互いに固定されている
【0026】
可撓性チューブ14の長さは、後述する使用方法において2つに分断して使用できる長さとして200mm以上である。また、可撓性チューブ14の内径(内側寸法)は、可撓性チューブ14の内側にハプティック22を挿入可能で、且つ、内側に挿入されたハプティック22を摩擦により保持可能に設定される。可撓性チューブ14の内径は例えば0.2mmである。可撓性チューブ14の内側空間の寸法(内径)は、ハプティック22の先端側(長さの中心より先端側)の寸法(外径又は太さ)より少し大きい。ハプティック22の先端側の寸法は、ハプティック22の太さが変化する場合は、先端側において最も太い箇所の太さを言う。
【0027】
このように寸法関係を設定しても、ハプティック22は曲がっているため、可撓性チューブ14に対しハプティック22をある程度の長さ挿入すると、
図2に示すように、可撓性チューブ14の内面にハプティック22が少なくとも2箇所当接する。そのため、可撓性チューブ14によりハプティック22を軽く引っ張っても、ハプティック22は保持される。また、可撓性チューブ14の内径をハプティック22の外径より大きくすることで、可撓性チューブ14にハプティック22を挿入する作業が容易になる。
【0028】
また、可撓性チューブ14の外径(外側寸法)は、ガイド部材12に引っ張られた可撓性チューブ14が針穴41,42に入る際に針穴41,42に引っ掛かりにくい寸法に設定される。可撓性チューブ14の外径は、例えばガイド部材12との太さの差が小さくなるようにすることが好ましい。可撓性チューブ14の外径は例えば0.3mmである。
【0029】
また、本実施形態では、可撓性チューブ14が針穴41,42に入る際に針穴41,42に引っ掛かりにくいように、
図1の拡大図に示すように、可撓性チューブ14における一端部15(ガイド部材12に接続されている側)の端面が、幅方向に対し斜めに形成されている。この端面が幅方向の横断線となす角度θは例えば15~75度である。
【0030】
[眼科用手術器具の使用方法]
図3~
図6を参照しながら、眼内レンズ強膜内固定術における眼科用手術器具10の使用方法について説明する。なお、以下では、眼球30内に眼内レンズ20が落下した場合(眼内レンズ脱臼の場合)を例にして説明を行う。
【0031】
まず眼内レンズ強膜内固定術において、手術者は、眼球30に形成される針穴41,42に可撓性チューブ14を通すチューブ挿通作業を行う。チューブ挿通作業では、手術者は、
図3(a)に示すように、眼球30の外側から内側へガイド部材12及び迎え針18をそれぞれ刺し入れる。迎え針18は中空構造であり先端に穴が形成されている。迎え針18を眼球30に刺すことで針穴41が形成される。また、ガイド部材12を刺し入れる箇所には予め他の針により針穴42を形成している。
【0032】
これらの針穴41,42は、最終的にハプティック22を通して固定する穴となる。これらの針穴41,42は、眼球30の強膜31における角膜の少し外側の位置で、眼球30の正面から見て眼球30の中心に対し略点対称となるように形成する。以下では、迎え針18を刺し入れた針穴41を「第1針穴」と言い、ガイド部材12を刺し入れた針穴42を「第2針穴」と言う場合がある。
【0033】
続いて、チューブ挿通作業では、迎え針18の先端の穴にガイド部材12の先端を差し込み、
図3(b)に示すように、ガイド部材12と共に迎え針18を引き抜く。この対面通糸法により、所定の位置で眼球30の内側から外側にガイド部材12を容易に通すことができる。
【0034】
そして、ガイド部材12をさらに外側に引っ張ることで、第1針穴41に可撓性チューブ14を案内して第1針穴41に通し、
図3(c)に示すように、可撓性チューブ14を眼球30の外側に引き出す。その際に、可撓性チューブ14の一端部15の端面は幅方向に対し斜めに切断されているため、可撓性チューブ14は第1針穴41に引っ掛かりにくい。以上によりチューブ挿通作業が終了し、可撓性チューブ14が2つの針穴41,42に挿通された状態となる。
【0035】
次に、可撓性チューブ14を2つに分断するチューブ分断作業を行う。チューブ分断作業において、作業者は、
図4(a)に示すように、眼球30の角膜などに形成した切開創35から、フックが先端部に設けられた棒状の引っ掛け具36を眼球30の外側から内側に挿入し、フックに可撓性チューブ14を引っ掛ける。そして、切開創35から眼球30の外側に引っ掛け具36と共に可撓性チューブ14を引っ張り出す。なお、眼球30の
外側に可撓性チューブ14を引っ張り出す作業は、引っ掛け具36の代わりにピンセットを用いることができる。
図4(b)に示すように、鋏37によって眼球30の外側で可撓性チューブ14を切断することで、可撓性チューブ14は、第1針穴41に通された第1可撓性チューブ14aと、第2針穴42に通された第2可撓性チューブ14bとに分断される。以上によりチューブ分断作業が終了する。
【0036】
次に、各可撓性チューブ14a,14bに眼内レンズ20の各ハプティック22を接続するレンズ接続作業を行う。レンズ接続作業において、作業者は、眼球内30に挿入したピンセットにより眼内レンズ20を拾い上げて片方の第1ハプティック22aを切開創35から外側に引き出す。そして、
図5(a)に示すように、眼球30の外側で、第1可撓性チューブ14aの端部の内側に第1ハプティック22aを挿入する。
【0037】
さらに、作業者は、ピンセットにより第1ハプティック22aを眼球30内に戻した後に第2ハプティック22bを切開創35から眼球30の外側に引き出し、
図5(b)に示すように、眼球30の外側で、第2可撓性チューブ14bの端部の内側に第2ハプティック22bを挿入する。レンズ接続作業では、各ハプティック22a,22bが容易に可撓性チューブ14a,14bから外れないように、各ハプティック22a,22bをある程度の長さ可撓性チューブ14a,14b内に挿入する。そして、作業者は、ピンセットにより眼球30内に第2ハプティック22bを戻し、
図5(c)に示すように、眼内レンズ20全体を虹彩32の後側に移動させる。以上によりレンズ接続作業が終了する。
【0038】
なお、水晶体再建術において水晶体嚢が破損又は消失した場合の眼内レンズ強膜内固定術では、眼内レンズ20の全体が眼球30の外側に存在する状態で、各ハプティック22a,22bが可撓性チューブ14a,14bの内側に挿入される。そして、眼内レンズ20が眼球30内に導入される。
【0039】
次に、各針穴41,42に各ハプティック22a,22bを通して強膜31に各ハプティック22a,22bを固定するレンズ固定作業を行う。レンズ固定作業において、作業者は、各可撓性チューブ14a,14bを外側に引っ張る。これにより、各可撓性チューブ14a,14bに保持された各ハプティック22a,22bは、外側に引っ張られて各針穴41,42に案内され、各針穴41,42に入り込む。各可撓性チューブ14a,14bは、
図6(a)に示すように、各ハプティック22a,22bの先端側が眼球30の外側に引き出されるまで引っ張られる。なお、
図6では眼球30内の部位を点線で記載している。
【0040】
そして、各ハプティック22a,22bから各可撓性チューブ14a,14bを取り外し、
図6(b)に示すように眼球30の外側で各ハプティック22a,22bを切断した後に各ハプティック22a,22bに対し加熱端処理を施して留め部23を形成することで、各ハプティック22a,22bは強膜31に固定される。以上によりレンズ固定作業及び眼内レンズ強膜内固定術が終了する。
【0041】
[実施形態の効果等]
本実施形態では、眼球30の針穴41,42に通された可撓性チューブ14について、ある程度の長さが確保されており、眼球30に形成した切開創35を通して、可撓性チューブ14において針穴41,42から眼球30の内側に延びる部分を外側に引き出すことができる。これにより、可撓性チューブ14の内側にハプティック22を挿入する作業を眼球30の外側で行うことが可能である。本実施形態によれば、眼内レンズ強膜内固定術の難易度を低下させることができる。
【0042】
また、本実施形態では、ガイド部材12と可撓性チューブ14との接続箇所において、可撓性チューブ14の内側にガイド部材12が挿入されているため、眼科用手術器具10の製造時における接続作業が容易である。但し、ガイド部材12の外側に可撓性チューブ14が被さっているため、針穴41,42に可撓性チューブ14が引っ掛かってガイド部材12から脱落する虞がある。特に、迎え針18を使わずに可撓性チューブ14を通す針穴42で、可撓性チューブ14が引っ掛かりやすい。
【0043】
そこで、可撓性チューブ14の脱落を回避するために、角膜の切開創からガイド部材12及び可撓性チューブ14を導入してもよい。この場合、1つの眼内レンズ10に対し可撓性チューブ14を分断して2本にするのではなく、2つの眼科用手術器具10を用いる。各眼科用手術器具10について、切開創35から眼球30内に導入したガイド部材12を迎え針18と共に眼球30外に引き抜き、迎え針18により形成した針穴に可撓性チューブ14を通す。なお、この場合に、ハプティック22の挿入作業を容易にするために、
図7に示すように、可撓性チューブ14におけるガイド部材12とは反対側の端部16に漏斗状の部材17を取り付けても良い。漏斗状の部材17は、ハプティック22の挿入後に取り外すことができるように、シートをロール状に巻いて漏斗状に形成したものを用いてもよいし、切断して取り外しがしやすいように切れ込みを設けてもよい。
【0044】
また、可撓性チューブ14の脱落を回避するために、
図8に示すように、ガイド部材12の針頭部13に設けられた挟持部に可撓性チューブ14の一端部15を挟み込むようにして、ガイド部材12と可撓性チューブ14とを接続してもよい。なお、可撓性チューブ14の一端部15は、中空構造ではなくてもよい。
【0045】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、ガイド部材12に可撓性チューブ14が直接的に接続されていたが、糸状部材などの他の部材を介してガイド部材12に可撓性チューブ14を接続してもよい。
【0046】
上記実施形態では、可撓性チューブ14にシリコンチューブを用いたが、シリコンチューブは、柔軟性に優れているものの、接着剤により接着強度がそれほど強くならない。そのため、接着剤による接着性を優先して、樹脂製などの可撓性チューブ14を用いてもよい。
【0047】
上記実施形態では、汎用的な眼内レンズ20に対し眼科用手術器具10を使用する場合を例に説明したが、ハプティック22が可撓性チューブ14に挿入できる形状であれば、特殊な眼内レンズ20に対し眼科用手術器具10を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、眼内レンズの手術に用いられる眼科用手術器具等に適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 眼科用手術器具
12 ガイド部材
14 可撓性チューブ
18 迎え針
20 眼内レンズ
21 レンズ部
22 ハプティック