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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】タイヤ交換用昇降装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 29/00 20060101AFI20221124BHJP
   B60B 30/10 20060101ALI20221124BHJP
   B62B 3/10 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B60B29/00 H
B60B30/10
B62B3/10 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018226422
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020090107
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-06-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ダイハツ工業株式会社の全国の各販売店にて、平成30年9月6日付でチラシを配布
(73)【特許権者】
【識別番号】597095120
【氏名又は名称】株式会社岡常歯車製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000117467
【氏名又は名称】安全自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】野田 一行
(72)【発明者】
【氏名】高部 義幸
(72)【発明者】
【氏名】黒田 勉
(72)【発明者】
【氏名】佐谷 健吾
(72)【発明者】
【氏名】奥村 淳
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3173700(JP,U)
【文献】実開昭51-071564(JP,U)
【文献】特開2007-283906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0068017(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 29/00
B60B 30/10
B62B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車輪(29)を有する機台(25)と、該機台(25)の背面側に立設した支柱部(25d)と、左右方向水平状に配設される走行用の手押ハンドル(20)と、タイヤ昇降用のエアシリンダ(28)と、該エアシリンダ(28)を操作するためのシリンダ操作部(S)と、を備えたタイヤ交換用昇降装置であって、
上記支柱部(25d)に、操作用部材を収納した部材収納箱(60)を設け、
上記手押ハンドル(20)は、上記部材収納箱(60)の左右側壁部から左右外方突出状に配設され、
上記シリンダ操作部(S)を、上記手押ハンドル(20)自身に、設けたことを特徴とするタイヤ交換用昇降装置。
【請求項2】
走行車輪(29)を有する機台(25)と、該機台(25)の背面側に立設した支柱部(25d)と、左右方向水平状に配設される走行用の手押ハンドル(20)と、タイヤ昇降用のエアシリンダ(28)と、を備えたタイヤ交換用昇降装置であって、
上記支柱部(25d)に、操作用部材を収納した部材収納箱(60)を設け、
上記手押ハンドル(20)は、左右一対の握り部(20a)(20b)を有し、
該握り部(20a)(20b)は、上記部材収納箱(60)の左右側壁部から左右外方突出状に配設され、
一方の上記握り部(20a)を左右水平状軸心(La)廻りに回動操作することで、上記エアシリンダ(28)に接続されている圧縮エアー流路を、シリンダ伸長作動用流路状態と、シリンダ短縮作動用流路状態とに、切り替えるように構成したことを特徴とするタイヤ交換用昇降装置。
【請求項3】
他方の上記握り部(20b)近傍に、該他方の握り部(20b)と共握り可能な揺動レバー(21)を設け、該揺動レバー(21)の揺動操作にて、圧縮エアー流路のエアー流量を変化させて、上記エアシリンダ(28)の伸縮速度を調節するように構成した請求項2記載のタイヤ交換用昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ交換用昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両のタイヤ交換を行う際に使用されるタイヤ交換用昇降装置は、キャスター等の走行車輪と、車両に対してタイヤを接近・離間させるための走行用の手押ハンドルと、油圧シリンダを伸長させてタイヤを上昇させるためのフットペダルと、油圧シリンダを短縮させてタイヤを降下させるためのリリースペダルと、を備えたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-1248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のタイヤ交換用昇降装置は、車両に対してタイヤを接近・離間させる前後左右の走行移動のための手操作と、タイヤを昇降させるための足踏み操作とを行う必要があり、操作が煩雑といった問題や、作業者が目線を大きく動かす必要があり危険であるといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前後左右の走行移動操作や昇降操作を容易かつ安全に行うことが可能なタイヤ交換用昇降装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタイヤ交換用昇降装置は、走行車輪を有する機台と、該機台の背面側に立設した支柱部と、左右方向水平状に配設される走行用の手押ハンドルと、タイヤ昇降用のエアシリンダと、該エアシリンダを操作するためのシリンダ操作部と、を備えたタイヤ交換用昇降装置であって、上記支柱部に、操作用部材を収納した部材収納箱を設け、上記手押ハンドルは、上記部材収納箱の左右側壁部から左右外方突出状に配設され、上記シリンダ操作部を、上記手押ハンドル自身に、設けたものである。
また、走行車輪を有する機台と、該機台の背面側に立設した支柱部と、左右方向水平状に配設される走行用の手押ハンドルと、タイヤ昇降用のエアシリンダと、を備えたタイヤ交換用昇降装置であって、上記支柱部に、操作用部材を収納した部材収納箱を設け、上記手押ハンドルは、左右一対の握り部を有し、該握り部は、上記部材収納箱の左右側壁部から左右外方突出状に配設され、一方の上記握り部を左右水平状軸心廻りに回動操作することで、上記エアシリンダに接続されている圧縮エアー流路を、シリンダ伸長作動用流路状態と、シリンダ短縮作動用流路状態とに、切り替えるように構成したものである。
また、他方の上記握り部近傍に、該他方の握り部と共握り可能な揺動レバーを設け、該レバーの揺動操作にて、圧縮エアー流路のエアー流量を変化させて、上記エアシリンダの伸縮速度を調節するように構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業者の手で、前後左右の走行移動操作と、昇降操作とを、行うことができ、操作のための動作に無駄がなく、迅速にタイヤ交換作業を行うことができる。作業者が目線(視線)を大きく移動させる必要が無く、安全にタイヤ交換作業を行うことができる。装置全体を小型・軽量化できる。装置の構造が簡素で、容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のタイヤ交換用昇降装置の実施の一形態を示す側面図である。
図2】降下状態の側面図である。
図3】上昇状態の側面図である。
図4】リフターの一例を示す斜視図である。
図5】シリンダ操作部及びその近傍の断面正面図であって、(a)は要部断面正面図であり、(b)は一方の握り部を折り曲げた状態の要部断面正面図である。
図6】シリンダ操作部及びその近傍の要部断面側面図である。
図7】シリンダ操作部及びその近傍の要部断面平面図である。
図8】作用説明図であって、(a)はシリンダ操作部の動作説明図であり、(b)は圧縮エアー流路の動作説明図である。
図9】作用説明図であって、(a)はシリンダ操作部の動作説明図であり、(b)は圧縮エアー流路の動作説明図である。
図10】作用説明図であって、(a)はシリンダ操作部の動作説明図であり、(b)は圧縮エアー流路の動作説明図である。
図11】作用説明図であって、(a)はシリンダ操作部の動作説明図であり、(b)は圧縮エアー流路の動作説明図である。
図12】作用説明図であって、(a)はシリンダ操作部の動作説明図であり、(b)は圧縮エアー流路の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明に係るタイヤ交換用昇降装置は、図1乃至図3に示すように、タイヤTが起立姿勢に載置されるテーブル(載置台)1と、テーブル1を昇降させるリフター(昇降機本体)2と、を備えている。
タイヤTは、ホイールに外嵌しており、図示省略の自動車やトラック等の車両に対して交換(着脱)されるものである。
【0010】
テーブル1は、枠構造であって、タイヤTが載置されるタイヤ載置部11と、タイヤ載置部11が上部に固着された正面視門型の支持脚部18と、支持脚部18の下端に取着されたキャスター等の複数のテーブル走行用車輪19と、テーブル走行用のハンドル10と、を有している。
【0011】
タイヤ載置部11は、起立姿勢のタイヤTの下部を左右両側かつ下方から支持するための前方上傾状姿勢の左右一対のローラ部12と、起立状のタイヤTのタイヤ正面の上部を支持するもたれ部(凭れ部)13と、を有している。
支持脚部18は、4本(複数本)の脚部を有し、各脚部の下端にテーブル走行用車輪19が取着されている。
テーブル1は、操作者(タイヤ交換作業者)が、ハンドル10を把持して操作することで、タイヤTを前後左右に軽く走行移動させることができ、タイヤ保管場所とタイヤ交換作業場との間でタイヤTを搬送する場合に至便である。
【0012】
図1乃至図4に示すように、リフター2は、枠型の機台25の下部に取着されたキャスター等の複数の走行車輪29と、機台25に上下伸縮自在に搭載されたパンタグラフ型(リンク型)の昇降機構部27と、昇降機構部27に連結された伸縮自在なエアシリンダ28と、機台25に付設された走行用の手押ハンドル20と、圧縮エアーポンプや圧縮エアタンク等の圧縮エアー供給源に接続されているエアーホースが着脱自在に取着可能なエアー受け入れ用のエアー流入口部26と、を備えている。
【0013】
図4に於て、リフター2は、機台25の背面側に立設した支柱部25dに、作業者が起立姿勢で把持可能な手押ハンドル20と、部材収容箱60と、を設けている。
手押ハンドル20は、左右方向水平状に配設される左右一対の握り部20a,20bを有している。一対の握り部20a,20bは、部材収容箱60の左右側壁部夫々から左右外方突出状に配設されている。
【0014】
先ず、タイヤTを昇降させる際は、図1に示すように、テーブル1にタイヤTを載置する。そして、タイヤTが載置されたテーブル1と、昇降機構部27が降下状態(短縮状態)のリフター2とを、前後方向に相対的に(相互に)接近させて、図2に示すように、テーブル1のタイヤ載置部11の下方位置に、リフター2の昇降機構部27の上部27aが配設された(昇降機構部27の上部27aをテーブル1が跨ぐように配設した)昇降準備状態とする。
【0015】
そして、昇降準備状態から、図3に示すように、リフター2のエアシリンダ28を伸長させて昇降機構部27を上昇状態(伸長状態)とし、テーブル1と共にタイヤTを上昇させる。また、リフター2のエアシリンダ28を短縮させることで昇降機構部27を降下状態とし、テーブル1と共にタイヤTを降下させることが可能である。
昇降機構部27を昇降(上下動)させることで、タイヤTを、リフトアップされている車両のホイール取付け部(ハブ)に対して、上下方向に位置合わせできる。
【0016】
また、リフター2の手押ハンドル20を、操作者が把持して、前後左右に動かすことで、リフター2は前後左右に走行移動し、タイヤTを、車両に対して、前後左右方向に位置合わせできる。
なお、本発明に於て、手押ハンドル20の「手押」とは、操作者の手で押す操作のみに使用する場合に限定せず、手で引いて移動させる操作を行う場合も含む。
【0017】
そして、エアシリンダ28を操作する(昇降機構部27を操作する)ためのシリンダ操作部Sを、手押ハンドル20自身に、及び、手押ハンドル20の近傍に、設けている。
図5図6に示すように、手押ハンドル20の一方の握り部20aを、圧縮エアー流路(回路)内の圧縮エアーの流れ方向を切り替えるための方向切換弁Vと連結している。
つまり、一方の握り部20a自身を、方向切換弁Vの操作を介して、エアシリンダ28を操作するためのシリンダ操作部Sとしている。
【0018】
先ず、一方の握り部20aは、左右水平状軸心La廻りに回動自在に保持される操作連結杆64の一端部64aに、前後水平状軸心Le廻りに揺動自在(操作連結杆64に対して折り曲げ自在)に設けている。
一方の握り部20aは、円柱状の第1握り部材61と、第1握り部材61の基端部に固着されると共に操作連結杆64の一端部64aに外嵌状に枢着される横断面コの字状の連結部材63と、を備えている。
操作連結杆64の一端部64aは、部材収容箱60の左右一方側壁部から左右外方へ突出状に配設される。
【0019】
一方の握り部20aは、自由状態において、連結部材63が、操作連結杆64の一端部64aの下縁に当接して、左右水平状姿勢に保持される。
図5(b)に示すように、操作者(タイヤ交換作業者)が第1握り部材61の先端部を上方へ所定の折れ曲り角度θだけ揺動操作すると、第1握り部材61の基端部が、操作連結杆64の一端部64aの上縁に当接して揺動が阻止された傾斜状の起立姿勢となる。そして、操作者が第1握り部材61から手を離す(操作力を解除する)と、自重によって左右水平状姿勢に戻るように構成している。
【0020】
また、一方の握り部20aは、折り曲げ状態で、左右水平状軸心La廻りに回動でき、操作者からの操作力を増幅(トルクを大きく)でき、弱い操作力でも回動操作が容易となる。また、操作者の好みに応じて、一方の握り部20aを左右水平状姿勢としたまま、(オートバイクのアクセルのように)回動操作することも可能である。
折れ曲り角度θは、45度以上90度未満とするのが好ましい。45未満であると、回動操作する際のトルク増加作用が小さい(左右水平状姿勢のまま回動させた場合と比べて操作性が大きく向上しない)虞れがある。90度を超えると、自重にて左右水平状姿勢に戻るのが困難になる。なお、図6に於て、一方の握り部20aは起立姿勢で図示している。
【0021】
そして、操作連結杆64と、方向切換弁Vとを、リンク機構部70を介して連動連結している。
リンク機構部70は、操作連結杆64に基端部が外嵌状に固着された第1リンク部材71と、方向切換弁Vの操作用回動部Vaに基端部が外嵌状に固着された第2リンク部材72と、第1リンク部材71の先端部に一端部(上端部)が枢着されると共に第2リンク部材72の先端部に他端部(下端部)が枢着された連結リンク部材73とを、を備えた平行リンク型である。
なお、第2リンク部材72は、方向切換弁Vの操作用回動部Vaに固着している弁操作レバーで構成している。操作用回動部Vaは左右水平状の弁回動軸心Lg廻りに回動自在である。
【0022】
ここで、方向切換弁Vは、4つの接続口部51,52,53,54を有すると共に、第1流路状態と、閉(クローズ)状態と、第2流路状態と、に手動にて切り換え自在な4ポートの3位置型であり、さらに、流れが切り換わる中間(途中)で閉状態になるクローズドセンタ型である。
【0023】
図6に於て、一方の握り部20aが側面視で鉛直状姿勢の所定の基準位置では、第1リンク部材71の先端部と、連結リンク部材73と、第2リンク部材72の先端部は、所定の上下中間位置(基準位置)に配設され、方向切換弁Vが閉状態となるように構成している。
そして、一方の握り部20aを、基準位置から左右水平状軸心La廻りの一方向(前方)へ回動させると、水平状の第1リンク部材71の先端部と、連結リンク部材73と、第2リンク部材72の先端部が降下して所定の下位置に配設され、方向切換弁Vは第1流路状態となるように構成している。
また、一方の握り部20aを、基準位置から左右水平状軸心La廻りの他方向(後方)へ回動させると、水平状の第1リンク部材71の先端部と、連結リンク部材73と、第2リンク部材72の先端部が所定の上位置となって、方向切換弁Vは第2流路状態となるように構成している。
【0024】
さらに、一方の握り部20aが、回動位置から所定の基準位置へ戻るように弾発付勢する基準位置戻し用の弾発付勢部材74を設けている。
弾発付勢部材74は、2つのトーションバネ(ねじりコイルバネ)であって、連結リンク部材73が上昇する際(上昇中乃至上昇後)に下方へ弾発付勢して上下中間位置(基準位置)へ戻すための第1バネ74Aと、連結リンク部材73が降下する際(降下中乃至降下後)に上方へ弾発付勢して上下中間位置へ戻すための第2バネ74Bと、を備えている。
第1・第2バネ74A,74Bは、基端部が部材収容箱60内の固定部に固定され、先端部が連結リンク部材73から左右一方へ突設された当り部に当接して、弾発付勢力を連結リンク部材73に付与するように構成している。
【0025】
つまり、連結リンク部材73を基準位置に戻すことで、一方の握り部20aを基準位置へ戻すように構成している。操作者が一方の握り部20aへの回動操作力を弱める又は解除すると、一方の握り部20aは、弾発付勢部材74によって、基準位置へ戻るように(方向切換弁Vが閉状態となるように)回動する。
また、操作者が、一方の握り部20aを回動させる際に、弾発付勢部材74による抵抗(負荷)を受け、急な回動操作を防止できる。
【0026】
次に、図5図7に示すように、手押ハンドル20の他方の握り部20bの近傍に設けた揺動レバー21を、圧縮エアー流路(回路)内の圧縮エアーのエアー流量を変化させるための流量調節弁Bと連結している。つまり、揺動レバー21を、流量調整弁Bの操作を介して、エアシリンダ28を操作するためのシリンダ操作部Sとしている。
【0027】
他方の握り部20bは、部材収容箱60の左右他方側壁部に、左右外方突出状に固着された円柱状の第2握り部材62である。
揺動レバー21は、先端部側が、部材収容箱60の左右他方側壁部に貫設した長孔状開口部を介して、左右外方突出状に配設され、さらに、他方の握り部20bと共握り可能に配設されている。
【0028】
流量調節弁Bは、流量調節操作用の摘まみ型の調節用回動部Bbを有している。
流量調節弁Bは、第1流量調節弁B1と第2流量調節弁B2とを備え、第1流量調節弁B1の調節用回動部Bbと、第2流量調節弁B2の調節用回動部Bbとは、上下方向に対面状に配設され、鉛直状の回動軸心Lc廻りに回動自在(同軸心上)に配設している。第1流量調節弁B1と第2流量調節弁B2は、同規格(同部品)のボールバルブである。
【0029】
揺動レバー21の基端部21bは、水平板状に形成され、第1流量調節弁B1と第2流量調節弁B2の間(上下間)に配設され、第1・第2流量調節弁B1,B2の調節用回動部Bbに固着している。
揺動レバー21は、調節用回動部Bbの鉛直状の回動軸心Lc廻りに揺動自在であり、1本の揺動レバー21を操作することで、第1流量調節弁B1と第2流量調節弁B2を同期させてエアー流量を(同時に同量だけ)変化させることが可能である。
【0030】
そして、他方の握り部20bから、揺動レバー21の先端部が、(他方の握り部20bと共握り可能な範囲で)最も離間しているレバー基準位置(レバー前方位置)で、流量調節弁Bが閉状態となるように構成している。
また、揺動レバー21の先端部が、(他方の握り部20bと共握り可能な範囲で)最も他方の握り部20bに接近しているハンドル接近位置(レバー後方位置)で、第1・第2流量調節弁B1,B2が全開状態となるように構成している。
【0031】
さらに、図7に示すように、揺動レバー21がレバー基準位置となるように、前方へ常時弾発付勢するレバー戻しバネ75を設けている。
つまり、操作者が、揺動レバー21への操作力を弱める又は解除すると、揺動レバー21がレバー基準位置へ戻る(エアー流量をゼロにする)ように揺動する。
レバー戻しバネ75は、引張りコイルバネであって、一端部が揺動レバー21に連結され、他端部が部材収容箱60内の固定部に連結されている。
揺動レバー21をハンドル接近位置へ揺動操作(握り操作)する際に、レバー戻しバネ75によって適度な抵抗(負荷)がかかり、揺動レバー21の揺動位置(握り量)を微調整できる。つまり、エアシリンダ28の伸縮速度(昇降機構部27の昇降速度)を微調整でき、高精度に高さ位置を調節できる。
【0032】
ここで、部材収容箱60は、内部に、方向切換弁V、流量調節弁B、リンク機構部70、弾発付勢部材74、レバー戻しバネ75等の操作用部材を収容している。
シリンダ操作部Sを手押ハンドル20自身及び手押ハンドル20の近傍に設けることで、上述の操作用部材を接近させて(一か所にまとめて)配設でき、構造を簡素化でき、組立や配管も容易になる。
【0033】
次に、圧縮エアー流路(回路)について説明する。
図8乃至図12に示すように、方向切換弁Vは、流入接続口部53が、外部の圧縮エアー供給源に接続され、流出接続口部54がサイレンサを介して外気に接続(開放)されている。
そして、方向切換弁Vの第1接続口部51は、第1流量調節弁B1を介して、復動式のエアシリンダ28の押し圧側である伸長用接続口部28aに接続している。
方向切換弁Vの第2接続口部52は、第2流量調節弁B2を介して、エアシリンダ28の引き込み側である短縮用接続口部28bに接続している。
【0034】
図8(a)に示すように、一方の握り部20a及び揺動レバー21が基準位置では、図8(b)に示すように、方向切換弁V及び第1・第2流量調節弁B1,B2は、閉状態であり、エアシリンダ28は短縮状態(リフター2の昇降機構部27は降下状態)である。
【0035】
図9(a)に示すように、一方の握り部20aを基準位置から前方へ回動させると、図9(b)に示すように、方向切換弁Vが第1流路状態に切り換わり、圧縮エアー流路は、シリンダ伸長作動用流路状態となる。
【0036】
そして、図10(a)に示すように、シリンダ伸長作動用流路状態(一方の握り部20aを基準位置から前方へ回動させた状態)で、他方の握り部20bと共に揺動レバー21を握って、揺動レバー21をハンドル接近位置にすると、図10(b)に示すように、第1・第2流量調節弁B1,B2が全開状態となって、圧縮エアーが、方向切換弁Vの第1接続口部51から第1流量調節弁B1を介してエアリンダ28の伸長用接続口部28aに流れると共に、エアシリンダ28の短縮用接続口部28bから圧縮エアーが第2流量調節弁B2を介して方向切換弁Vの第2接続口部52へ流れ、サイレンサを介して外部へ排出され、エアシリンダ28は伸長作動する。つまり、昇降機構部27は上昇作動する。
【0037】
さらに、シリンダ伸長作動用流路状態で、図11(a)に示すように、揺動レバー21の操作力を弱めて、揺動レバー21を基準位置とハンドル接近位置の間の揺動中間位置にすると、図11(b)に示すように、第1流量調節弁B1と第2流量調節弁B2が同期し、圧縮エアー流路のエアー流量を変化させる。
第1流量調節弁B1と第2流量調節弁B2とは、同じ量だけエアー流量を制限し、エアシリンダ28に流入するエアー量と流出するエアー量を同量としながらも、全開状態よりもエアー流量を減少させて、エアシリンダ28の伸長速度を調節する。つまり、昇降機構部27の上昇速度を調節する。
揺動レバー21の揺動操作にて、エアシリンダ28(昇降機構部27)の作動速度を無段階に調整でき、タイヤTの上昇位置(高さ位置)の微調整を容易に行うことができる。
【0038】
その後、図示省略するが、タイヤTを所望の高さ位置まで上昇した際に、揺動レバー21へ操作力を解除すれば、レバー戻しバネ75によって、揺動レバー21が基準位置まで戻り第1・第2流量調節弁B1,B2が閉状態となり、エアシリンダ28の伸長(昇降機構部27の上昇)が止まる。また、一方の握り部20aへの操作力を解除すれば、第2バネ74Bによって、一方の握り部20aが基準位置に戻り、方向切換弁Vが閉状態となりエアシリンダ28の伸長が止まる。なお、一方の握り部20aと揺動レバー21への操作力の解除(基準位置への復帰)の順番は自由である。
【0039】
エアシリンダ28を短縮させる(昇降機構部27を降下させる)場合は、図12(a)に示すように、一方の握り部20aを基準位置から後方へ回動させると、図12(b)に示すように、方向切換弁Vが第2流路状態に切り換わり、圧縮エアー流路は、シリンダ短縮作動用流路状態となる。
【0040】
そして、図示省略するが、シリンダ短縮作動用流路状態(一方の握り部20aを基準位置から後方へ回動させた状態)で、他方の握り部20bと共に揺動レバー21を握って、揺動レバー21をハンドル接近位置にすると、第1・第2流量調節弁B1,B2が全開状態となって、圧縮エアーが、方向切換弁Vの第2接続口部52から第2流量調節弁B2を介してエアリンダ28の短縮用接続口部28bに流れると共に、エアシリンダ28の伸長用接続口部28aから圧縮エアーが第1流量調節弁B1を介して方向切換弁Vの第1接続口部51へ流れ、サイレンサを介して外部へ排出され、エアシリンダ28は短縮作動する。つまり、昇降機構部27は降下作動する。
【0041】
さらに、シリンダ短縮作動用流路状態で、揺動レバー21を前後中間位置に揺動操作すれば、上昇させる際と同様に、圧縮エアー流路のエアー流量を変化させることができ、エアシリンダ28の短縮作動速度(昇降機構部27の降下速度)を調節できる。また、他方の握り部20bへの操作力を解除すれば、第1バネ74Aによって、他方の握り部20bが基準位置に戻り、方向切換弁Vが閉状態となりエアシリンダ28の短縮が止まる。なお、他方の握り部20bと揺動レバー21への操作力の解除(基準位置への復帰)の順番は自由である。
【0042】
つまり、揺動レバー21の前後揺動量(握り量)によって、エアシリンダ28の伸縮速度(昇降機構部27の昇降速度)を調節するように構成している。
また、第1・第2流量調節弁B1,B2が非閉状態で、一方の握り部20aを一方側の回動位置から他方側への回動位置にする際に、一旦、基準位置になり(基準位置を経由し)、方向切換弁Vが閉状態となるので、昇降機構部27の昇降が一時停止し、安全に、上昇作動と降下作動とに切り換えることができる。
【0043】
また、リフター2は、走行車輪29による走行を阻止するためのペダル操作式のフロアロックと、エアー流入口部26から流入した圧縮エアーをエアーガンやエアーインパクト等のエアー作業工具へ供給可能な(図示省略の)作業用エアー供給口部と、エアー作業具を収納するためのホルダー部(筒状部)やエアー作業工具を掛けるためのフック部等の(図示省略の)作業具収納部と、ナット等のタイヤ交換用部品を収容可能な上方開口状浅箱状の(図示省略の)タイヤ交換部品収容部を備えている。
【0044】
また、自動車生産工場や整備工場等の既設のエアコンプレッサやエアタンク等の外部のエアー供給源から高圧エアーが供給される(受け入れる)エアー流入口部26を備えているので、装置全体を軽量かつコンパクトにできる。なお、図1乃至図7において、エアー流入口部26と方向切換弁Vと流量調節弁Bとエアシリンダ28を接続するエアー配管は図示省略している。
また、図示省略するが、シリンダ操作部Sを、上記手押ハンドル20自身のみに設けた構成、又は、手押ハンドル20の近傍にのみ設けた構成とする良い。
【0045】
なお、本発明は、設計変更可能であって、リフター2の昇降機構部27の上部27aに、タイヤ載置部11を設けるも良い(リフター2とテーブル1を一体構造とするも良い)。昇降機構部27は、パンタグラフ型の構造に限らず、ガイドレールを用いた直線往復移動型や、くの字状リンク等を用いた構造等自由である。また、エアシリンダ28が短縮状態で昇降機構部27が上昇状態となり、エアシリンダ28が伸長状態で昇降機構部27が降下状態(降下位置)となるように構成するも良い。操作連結杆64や第1・第2握り部材61,62は、中実棒状やパイプ状、帯板状等自由である。
なお、本発明の説明を容易にするために、タイヤ交換が行われる車両のタイヤ取付け部に対して、タイヤ載置部11に載置したタイヤTを、対面状に配設した状態で、車両に接近する方向を前方と呼び、車両から離れる方向を後方と呼んで方向を説明している。したがって、方向を基に、使用状態の姿勢を限定するものではない。
【0046】
以上のように、本発明のタイヤ交換用昇降装置は、走行車輪29と、走行用の手押ハンドル20と、タイヤ昇降用のエアシリンダ28と、エアシリンダ28を操作するためのシリンダ操作部Sと、を備えたタイヤ交換用昇降装置であって、上記シリンダ操作部Sを、上記手押ハンドル20自身に、及び/又は、上記手押ハンドル20の近傍に、設けたので、作業者の手元(手先)で、走行車輪29による前後左右の走行移動操作と、エアシリンダ28による昇降操作とを、行うことができ、操作のための動作に無駄がなく、容易かつ迅速にタイヤ交換作業を行うことができる。作業者が目線を大きく移動させる必要が無く、安全にタイヤ交換作業を行うことができる。装置全体を小型・軽量化できる。装置の構造が簡素で、容易かつ迅速に(安価に)製造できる。また、操作者が起立状姿勢のまま、手先だけで(身体を大きく動かす必要がなく)昇降操作でき、操作者の負担を軽減できる。
【0047】
また、走行車輪29と、走行用の手押ハンドル20と、タイヤ昇降用のエアシリンダ28と、を備えたタイヤ交換用昇降装置であって、上記手押ハンドル20は、左右一対の握り部20a,20bを有し、一方の上記握り部20aを左右水平状軸心La廻りに回動操作することで、上記エアシリンダ28に接続されている圧縮エアー流路を、シリンダ伸長作動用流路状態と、シリンダ短縮作動用流路状態とに、切り替えるように構成したので、作業者の手元(手先)で、走行車輪29による前後左右の走行移動操作と、エアシリンダ28による昇降操作とを、行うことができ、操作のための動作に無駄がなく、容易かつ迅速にタイヤ交換作業を行うことができる。作業者が目線を大きく移動させる必要が無く、安全にタイヤ交換作業を行うことができる。装置全体を小型・軽量化できる。装置の構造が簡素で、容易かつ迅速に(安価に)製造できる。また、操作者が起立状姿勢のまま、手先だけで(身体を大きく動かす必要がなく)昇降操作でき、操作者の負担を軽減できる。操作が簡単(シンプル)で上昇と降下の切換えを直感的に行うことができる。
【0048】
また、他方の上記握り部20b近傍に、該他方の握り部20bと共握り可能な揺動レバー21を設け、該揺動レバー21の揺動操作にて、圧縮エアー流路のエアー流量を変化させて、上記エアシリンダ28の伸縮速度を調節するように構成したので、車両に対してタイヤTの高さ位置を微調整でき、高精度に高さを設定(位置合わせ)できる。操作を直観的に簡単に行え、目線(視線)をタイヤTから外さずに昇降速度の調節を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0049】
20 手押ハンドル
20a 一方の握り部
20b 他方の握り部
21 揺動レバー
28 エアシリンダ
29 走行車輪
La 左右水平状軸心
S シリンダ操作部
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12