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特許7181550ペプチド、その薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ、およびそれらの用途
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  • 特許-ペプチド、その薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ、およびそれらの用途 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】ペプチド、その薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ、およびそれらの用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20221124BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221124BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20221124BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20221124BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20221124BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221124BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221124BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20221124BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61P43/00 111
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/00
A61K38/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018562464
(86)(22)【出願日】2018-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2018001653
(87)【国際公開番号】W WO2018135642
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2017008302
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592068200
【氏名又は名称】学校法人東京薬科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】510094724
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立循環器病研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】林 良雄
(72)【発明者】
【氏名】高山 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮里 幹也
(72)【発明者】
【氏名】寒川 賢治
(72)【発明者】
【氏名】森 健二
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/116752(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/109135(WO,A2)
【文献】Biopolymers,2016年11月04日,Vol.106, No.4,pp.440-445
【文献】Pept. Sci.,2015年03月,Vol.2014,pp.59-60
【文献】J. Med. Chem.,2014年08月14日,Vol.57, No.15,pp.6583-6593
【文献】ACS Med. Chem. Lett.,2015年01月28日,Vol.6, No.3,pp.302-307
【文献】高山健太郎 ほか,ペプチド化学を利用した生体分子からの中分子創薬,有機合成化学協会誌,2015年07月01日,Vol.73, No.7,pp.737-748
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)で表され、1型ニューロメジンU受容体の選択的アゴニスト活性を有する、ペプチドまたはその薬学的に許容される塩:
【化1】

上記式(1)において、
は、3-チエニルアラニン残基、または欠損であり;
は、Trp残基、3-(ベンゾチオフェニル)アラニン残基、4-ベンゾイル-フェニルアラニン残基、3,3-ジフェニルアラニン残基、3-ナフチル-アラニン残基、1-メチルトリプトファン残基、または欠損であり;
は、Trp残基、3-ナフチル-アラニン残基、4-ブロモ-フェニルアラニン残基、4-メトキシ-フェニルアラニン残基、4-ニトロ-フェニルアラニン残基、4-トリフルオロメチル-フェニルアラニン残基、4-フェニル-フェニルアラニン残基、4-ベンゾイル-フェニルアラニン残基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸残基、1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸残基、1-メチルトリプトファン残基、またはα-メチルトリプトファン残基であり;
は、Arg残基、ノルアルギニン残基、またはホモアルギニン残基であり;
は、Pro残基またはホモプロリン残基であり;
は、水素原子、炭化水素基、複素環基、アシル基、スルホ基、カルボキシル基、グリオキシル基、ポリアルキレングリコール基、またはキャリアを示し;ならびに
は、アミノ基、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭化水素基、ポリアルキレングリコール基、またはキャリアを示す。
【請求項2】
が、Trp残基、3-(2-ナフチル)アラニン残基、4-フェニル-フェニルアラニン残基、4-ベンゾイル-フェニルアラニン残基、α-メチルトリプトファン残基、または1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸残基であり、XがTrp残基以外のアミノ酸残基である場合は、XがTrp残基またはα-メチルトリプ
トファン残基である、請求項1に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
が、Trp残基、3-ベンゾチオフェニル-アラニン残基、または1-メチルトリプトファン残基である、請求項1または2に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
が、水素原子、炭素数1~6の脂肪族アシル基、または下記式(3)で表される基である、請求項1~3のいずれか1項に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩;
【化2】

ただし、上記式(3)において、Rは、置換もしくは非置換の、チエニル基、フラニル基、ピロリジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、イミダゾリニル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、フェニル基、3-ピリジル基、または4-ピリジル基であり;Rは、単結合、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数1~4のオキシアルキレン基、または炭素数1~4のアルキレンオキシ基である。
【請求項5】
前記式(1)で表されるペプチドが、下記(i)を満たす、請求項1に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩:
(i)上記式(1)におけるX-X-X-X-X-Arg-Asnが、配列番号1~21からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる。
【請求項6】
前記式(1)で表されるペプチドが、下記式(1-1)~(1-185)のいずれか1つで表される、請求項1に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩:
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【化3】
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、1型ニューロメジンU受容体の活性化剤。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、メタボリックシンドローム、肥満症、糖尿病、脂質異常症、循環器疾患、または概日リズム障害の、予防および/または治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、1型ニューロメジンU受容体(NMUR1)選択的アゴニストであるペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグに関する。
【0002】
本発明の別の側面は、当該ペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグを有効成分として含む、1型ニューロメジンU受容体の活性化剤に関する。
【0003】
本発明の別の側面は、当該ペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグを対象に接触させることを含む、1型ニューロメジンU受容体の活性化方法に関する。
【0004】
本発明の別の側面は、当該ペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグを有効成分として含む、メタボリックシンドローム、肥満症、糖尿病、脂質異常症、循環器疾患、または概日リズム障害の予防および/または治療剤に関する。
【0005】
本発明の別の側面は、当該ペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグの有効量を患者に投与することを含む、メタボリックシンドローム、肥満症、糖尿病、脂質異常症、循環器疾患、または概日リズム障害の予防および/または治療方法に関する。
【背景技術】
【0006】
ニューロメジンU(NMU)は、摂食抑制やエネルギー代謝亢進、体温上昇、体重減少、循環器疾患、概日リズムなどの生理現象との関連性が指摘されている生理活性ペプチドであり、抗肥満薬や糖尿病治療薬等の医薬としての応用が期待されている(特許文献1、2)。
【0007】
各動物で同定されているNMUのアミド化されたC末端7残基(Phe-Leu-Phe-Arg-Pro-Arg-Asn-NH)は、哺乳類で完全に同一配列であり、1型NMU受容体(NMUR1)および2型NMU受容体(NMUR2)の活性化のために重要な部位であると考えられている。主に、NMUR1は末梢組織(主に腸管、肺など)に、そしてNMUR2は中枢(主に視床下部室傍核)に高発現していることが知られている。これらのNMUR1およびNMUR2に対するアゴニストの開発が検討されている(非特許文献1)。
【0008】
例えば、非特許文献2には、NMUR1に対するアゴニストとして、(2-チエニルアセチル)-Trp-(4-フルオロフェニルアラニン)-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH)(ヘキサペプチド5d)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2006/068326号(米国特許出願公開第2008/0124335号明細書に相当)
【文献】国際公開第2007/109135号
【非特許文献】
【0010】
【文献】K.Takayama et al., “Discovery of Selective Hexapeptide Agonists to Human Neuromedin U Receptors Types 1 and 2”, Journal of Medicinal Chemistry (2014)57, 6583-6593
【文献】K.Takayama et al., “Discovery of Potent Hexapeptide Agonists to Human Neuromedin U Receptor 1 and Identification of Their Serum Metabolites”, ACS Medicinal Chemistry Letters (2015)6, 302-307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のNMUR1アゴニストは、NMUR1選択性(NMUR2に対するアゴニスト活性が低く、NMUR1に対して高いアゴニスト活性を示す性質)の観点から依然として改良の余地があった。特に、従来のNMUR1アゴニストは、高濃度(例えば、実施例に記載のNMURアゴニスト活性評価方法における10nM~100nM程度)において、NMUR1に対してだけでなくNMUR2に対してもまた高いアゴニスト活性を示すという課題があった。
【0012】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、NMUR1選択性、特に高濃度でのNMUR1選択性に優れたNMUR1アゴニストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、下記式(1)で表されるペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグによって上記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0014】
【化1】
【0015】
上記式(1)において、
は、置換または非置換の、脂環式基、芳香族炭化水素基、アラルキル基および複素環基からなる群から選択される置換基により側鎖が置換されたAla残基、または欠損であり;
は、置換または非置換の、脂環式基、芳香族炭化水素基、アラルキル基および複素環基からなる群から選択される置換基により側鎖が置換された、Ala残基またはα-メチルアラニン残基であり;
は、下記式(A)で表される置換基Sまたは下記式(B)で表される置換基Sで側鎖が置換されたAla残基、下記式(A)で表される置換基Sまたは下記式(B)で表される置換基Sで側鎖が置換されたα-メチルアラニン残基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸残基、および1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
【0016】
【化2】
【0017】
上記式(A)において、Yは、窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を環員として1~3個含んでもよい縮合5員環構造または縮合6員環構造であり;pは0~2の整数であり;各Rは、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり;*はアミノ酸残基の側鎖との結合部位を示す、
【0018】
【化3】
【0019】
上記式(B)において、qは1~5の整数であり;各Rは、それぞれ独立に、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、炭素数1~6のハロゲン化アルキル基、炭素数6~24の芳香族炭化水素基、複素環基、およびアシル基からなる群から選択される基であり;*はアミノ酸残基の側鎖との結合部位を示す;
は、塩基性アミノ酸残基であり;
は、Pro残基またはホモプロリン残基であり;
は、水素原子、炭化水素基、複素環基、アシル基、スルホ基、カルボキシル基、グリオキシル基、ポリアルキレングリコール基、またはキャリアを示し;ならびに
は、アミノ基、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭化水素基、ポリアルキレングリコール基、またはキャリアを示す。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、NMUR1選択性、特に高濃度でのNMUR1選択性に優れたNMUR1アゴニストを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A図1Aは、合成例22で得られたペプチドおよびヒトNMUのNMUR1に対する濃度依存的アゴニスト活性評価結果である。
図1B図1Bは、合成例22で得られたペプチドおよびヒトNMUのNMUR2に対する濃度依存的アゴニスト活性評価結果である。
図2図2は、合成例1(比較例)および合成例22で得られたペプチドの、ヒト血清中での安定性の評価結果である。
図3図3は、合成例22および合成例36で得られたペプチドの、ヒト血清中での安定性の評価結果である。
図4図4は、合成例16および合成例34で得られたペプチドの、ヒト血清中での安定性の評価結果である。
図5図5は、合成例22および合成例36で得られたペプチドの、ラット血清中での安定性の評価結果である。
図6図6は、合成例16および合成例34で得られたペプチドの、ラット血清中での安定性の評価結果である。
図7図7は、合成例22および合成例36で得られたペプチドの、ラットでの血中動態の解析結果である。
図8図8は、合成例22で得られたペプチドの、マウス皮下投与における体重増加抑制活性の評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上記式(1)で表されるペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグは、NMUR1選択性、特に高濃度でのNMUR1選択性に優れたNMUR1アゴニストとして機能し得る。
【0023】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
【0024】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
【0025】
本明細書において、「式(1)で表されるペプチドもしくはその薬学的に許容される塩」を、単に「本発明に係るペプチド」とも称する。また、「1型ニューロメジンU受容体」を、単に「NMUR1」とも称する。また、「2型ニューロメジンU受容体」を、単に「NMUR2」とも称する。
【0026】
本明細書において、「NMUR1選択的アゴニスト」または「NMUR1を選択的に活性化する」とは、実施例に記載の方法によってNMUR1およびNMUR2に対する各ペプチドのアゴニスト活性を評価した場合に、以下の要件(1)および要件(2)の要件を同時に満たすことをいう:
要件(1)10nMの濃度において、NMUR1への相対アゴニスト活性が30%以上である、および
要件(2)100nMの濃度において、NMUR2への相対アゴニスト活性が50%以下である。
【0027】
NMUR1をより強く活性化するという観点から、ペプチドのNMUR1への相対アゴニスト活性は、10nMの濃度において50%以上であることが好ましく、1nMの濃度において30%以上であることがより好ましく、10nMの濃度において50%以上且つ1nMの濃度において30%以上であることが更に好ましい。
【0028】
より一層優れたNMUR1選択性の観点から、ペプチドのNMUR2への相対アゴニスト活性は、10nMの濃度において30%以下であることが好ましく、100nMの濃度において30%以下であることがより好ましい。
【0029】
より一層優れたNMUR1選択性の観点から、一実施形態では、「10nMの濃度におけるNMUR1への相対アゴニスト活性」に対する「100nMの濃度におけるNMUR2への相対アゴニスト活性」(以下、「10nMの濃度におけるNMUR1への相対アゴニスト活性」に対する「100nMの濃度におけるNMUR2への相対アゴニスト活性」を、「NMUR2 at 100nM/NMUR1 at 10nM」または「R2/R1活性」とも称する。)の値が、0.6以下であるペプチドが提供される。別の実施形態では、上記R2/R1活性の値が、0.5以下であるペプチドが提供される。更なる実施形態では、上記R2/R1活性の値が、0.2以下であるペプチドが提供される。更に別の実施形態では、上記R2/R1活性の値が、0.1以下であるペプチドが提供される。
【0030】
本発明における「アミノ酸残基」とは、ペプチドまたはタンパク質分子上で、ペプチドまたはタンパク質を構成しているアミノ酸の一単位に当たる部分を意味する。より具体的には、以下の式(2)または式(2’)のように表される、α-アミノ酸から誘導される2価の基を意味する:
【0031】
【化4】
【0032】
ただし、上記R’はアミノ酸の側鎖であり、例えばGly残基であれば水素原子、Ala残基であればメチル基である。上記R”は水素原子またはメチル基である(すなわち、R”がメチル基の場合、α-メチルアミノ酸残基となる)。
【0033】
【化5】
【0034】
ただし、上記Zは含窒素複素環構造を示し、例えばPro残基であればピロリジンに由来する構造、ホモプロリン残基であればピペリジンに由来する構造、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸残基であれば1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリンに由来する構造、1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸残基であれば1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマンに由来する構造である。
【0035】
本明細書において「側鎖が置換されたAla残基」とは、上記式(2)のR’であるメチル基の水素原子の少なくとも一つが置換基によって置換されたAla残基を指す。例えば、上記式(2)のR’であるメチル基の水素1原子がインドリル基(1H-インドール-3-イル基)で置換されたAla残基はTrp残基と同義であり、当該水素1原子がフェニル基で置換されたAla残基はPhe残基と同義である。同様に、「側鎖が置換されたα-メチルアラニン残基」とは、上記式(2)のR’であるメチル基のメチル基の水素原子の少なくとも一つが、置換基によって置換されたα-メチルアラニン残基を指す。例えば、上記式(2)のR’であるメチル基の水素1原子がインドリル基(1H-インドール-3-イル基)で置換されたα-メチルアラニン残基はα-メチルトリプトファン残基と同義であり、当該水素1原子がフェニル基で置換されたα-メチルアラニン残基はα-メチルフェニルアラニン残基と同義である。
【0036】
「アミノ酸」は、天然もしくは非天然のα-アミノ酸に由来し、光学活性体があり得る場合、L体、D体の何れであってもよいが、L体が好ましい。より具体的には、「アミノ酸」は、Arg、Lys、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Pro、Tyr、Trp、Ser、Thr、Gly、Ala、Met、Cys、Phe、Leu、Val、およびIle、ならびにこれらの類縁体が例示できる。上記の類縁体としては、例えば上記20種のアミノ酸の側鎖が任意の置換基で置換された誘導体等であってもよく、例えば、上記20種のアミノ酸のハロゲン化誘導体(例えば、3-クロロアラニン、4-ブロモフェニルアラニン)、2-アミノ酪酸、ノルロイシン、ノルバリン、イソバリン、2-アミノブタン酸、2-アミノイソ酪酸(α-メチルアラニン)、ホモフェニルアラニン、2,3-ジアミノプロピオン酸、2,4-ジアミノブタン酸、オルニチン、2-ヒドロキシグリシン、ホモセリン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、3,4-ジデヒドロプロリン、ホモプロリン、ホモシステイン、ホモアルギニン、ホモメチオニン、1-メチルトリプトファン、5-メチルトリプトファン、α-メチルトリプトファン、アスパラギン酸エステル(例えば、アスパラギン酸-メチルエステル、アスパラギン酸-エチルエステル、アスパラギン酸-プロピルエステル、アスパラギン酸-シクロヘキシルエステル、アスパラギン酸-ベンジルエステルなど)、グルタミン酸エステル(グルタミン酸-シクロヘキシルエステル、グルタミン酸-エチルエステル、グルタミン酸-プロピルエステル、グルタミン酸-メチルエステル、グルタミン酸-ベンジルエステルなど)、ホルミルトリプトファン、2-シクロペンチルグリシン、2-シクロヘキシルグリシン、2-フェニルグリシン、2-ピリジルグリシン、3-シクロペンチルアラニン、3-シクロヘキシルアラニン、3-ピリジル-アラニン、3-ピラゾリル-アラニン、3-フラニル-アラニン、3-チエニル-アラニン、メトキシフェニルアラニン、3-ナフチル-アラニン、3,3-ジフェニルアラニン、ベンゾイルフェニルアラニン、ビフェニルアラニン(例えば、4-フェニルフェニルアラニン)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸等のアミノ酸が例示できるが、これらに制限されない。また、IleやThrのように、側鎖に不斉炭素を有するジアステレオマーが存在するものについては、天然型(例えば、(2R,3R)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸、および(2R,3S)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸)および非天然型(例えば、(2R,3S)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸、および(2R,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸)が特に区別なく使用され得る。すなわち、「Ile」は(2R,3R)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸および(2R,3S)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸の両方を含む意味として使用され、「Thr」は(2R,3S)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸および(2R,3R)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸の両方を含む意味として使用される。好ましくは、天然型ジアステレオマー(すなわち、Ileであれば(2R,3R)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸、Thrであれば(2R,3S)-2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸)が使用される。
【0037】
本明細書に記載のアミノ酸配列は、特に言及がない限り、慣例に従ってN末端(アミノ末端)側からC末端(カルボキシル末端)側への方向に表記される。
【0038】
各アミノ酸残基は、その側鎖の相違に基づいて、類似の性質を有するアミノ酸残基と置換し得ることが本技術分野において知られている(保存的置換)。例えば、塩基性アミノ酸であるArg、Lys、His、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dpr)、2,4-ジアミノブタン酸(Dbu)、ノルアルギニン、ホモアルギニン、2,4-ジアミノペンタン酸、およびオルニチン(Orn)は相互に置換し得る。Proと、ホモプロリン(homoPro)とは、相互に置換し得る。
【0039】
本明細書において「薬学的に許容される塩」は、患者や被験体へ投与された後、望ましくない生理学的効果を生じさせない、金属塩、アンモニウム塩、有機酸塩、無機酸塩、または有機塩基もしくは無機塩基との塩である。より具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、アンモニウム塩、メチルアミン塩、エチルアミン塩、アニリン塩、ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、ピロリジン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩、ピペラジン塩、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フタル酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、およびp-トルエンスルホン酸塩等が例示できるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明に係るペプチドのプロドラッグ(以下、「本発明に係るペプチドのプロドラッグ」を、単に「プロドラッグ」とも称する。)は、生体内における生理的条件下で胃酸や酵素等による酸化、還元、加水分解等を起こして本発明に係るペプチドに変化するペプチドを指す。これらのペプチドは、例えばBundgard, H., Design of Prodrugs, pp. 7-9, 21-24, Elsevier, Amsterdam 1985等に記載の従来公知の方法によって、本発明に係るペプチドから製造することができる。
【0041】
プロドラッグとしては、本発明に係るペプチドのアミノ酸残基の側鎖がカルボキシル基を有する場合には、当該カルボキシル基とアルコールとを反応させることによって得られるエステル誘導体、または当該カルボキシル基とアミンとを反応させることによって得られるアミド誘導体が例示できる。より具体的には、例えば、ペプチド側鎖のカルボキシル基を-COOR(Rは、炭素数1~20のアルキル基)で表されるエステル、または-CONHRもしくは-CONRR’(RおよびR’は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基)で表されるアミド基に誘導体化したペプチドが挙げられる。
【0042】
プロドラッグとしては、本発明に係るペプチドのアミノ酸残基の側鎖がヒドロキシ基を有する場合には、当該ヒドロキシ基と酸無水物等を反応させてアシル化させたアシルオキシ誘導体が例示できる。より具体的には、例えば、ペプチド側鎖のヒドロキシ基を-OCOR(Rは、炭素数1~20のアルキル基)で表されるアシルオキシ基に誘導体化したペプチドが挙げられる。
【0043】
プロドラッグとしては、本発明に係るペプチドのアミノ酸残基の側鎖がアミノ基を有する場合には、当該アミノ基がアシル化、N-オキシド化、アルキル化、またはリン酸化された誘導体が例示できる。より具体的には、例えば、側鎖のアミノ基を-NHCOR(Rは、炭素数1~20のアルキル基)や-NHCOCH(NH)CHで表されるアミド基に誘導体化したペプチドが挙げられる。
【0044】
本明細書において、アミノ酸またはアミノ酸残基についての「脂環式基、芳香族炭化水素基、アラルキル基および複素環基からなる群から選択される置換基」は、アミノ酸またはアミノ酸残基のα炭素に結合した側鎖の置換基である。置換基の数は、通常、アミノ酸当たり0~3個であり、好ましくは0~2個であり、より好ましくは0~1個である。
【0045】
本明細書における脂環式基としては、シクロプロピル基、シクロプロピルアルキル基、シクロブチル基、シクロブチルアルキル基、シクロペンチル基、シクロペンチルアルキル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルアルキル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、およびアダマンチル基等の、炭素数3~12の脂環式基が例示でき、好ましくはシクロヘキシル基である。
【0046】
本明細書における芳香族炭化水素基としては、単環または縮合環構造の芳香族炭化水素に由来する基であり、より具体的には、フェニル基、ナフチル基、トリル基、およびフェナントリル基等の、炭素数6~20の芳香族炭化水素基が例示でき、好ましくはフェニル基またはナフチル基である。
【0047】
本明細書におけるアラルキル基としては、炭素数1~4のアルキル基が上記の炭素数6~20の芳香族炭化水素基で置換された基であり、より具体的には、ベンジル基、フェネチル基、ベンズヒドリル基等の炭素数7~24のアラルキル基が例示できる。
【0048】
本明細書における複素環基としては、環内に窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1~3個含む、単環、縮合二環式または縮合三環式構造の置換基が例示でき、より具体的には、ピロリジニル基、ピロリル基、ピペリジル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、モルホリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾイミダゾリル基、キノリル基、カルバゾリル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチエニル基、フラニル基、チエニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾフラニル基、イソベンゾチオフェニル基等が例示でき、好ましくはインドリル基、チエニル基、またはベンゾチオフェニル基である。
【0049】
これらのアミノ酸またはアミノ酸残基についての置換基は、炭素数1~6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数1~6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミド基、アシル基、ニトロ基、スルホ基、スルホンアミド基、および/またはハロゲン原子等のさらなる置換基によって置換されていてもよい。
【0050】
上記のような置換基で置換されたアミノ酸またはアミノ酸残基としては、特に制限されるものでは無いが、例えば、2-シクロペンチルグリシン、2-シクロヘキシルグリシン、2-フェニルグリシン、3-ピリジルアラニン、3-シクロペンチルアラニン、3-シクロヘキシルアラニン、3-ピリジル-アラニン、3-ピラゾリル-アラニン、3-フラニル-アラニン、3-チエニル-アラニン(例えば、3-(2-チエニル)アラニン)、フルオロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、ブロモフェニルアラニン、メトキシフェニルアラニン、エトキシフェニルアラニン、3-ビフェニルアラニン、3,3-ジフェニルアラニン、3-(3-ベンゾチエニル)-アラニン、3-インドリル-アラニン(すなわち、Trp)、3-(1-メチルインドリル)アラニン(すなわち、1-メチルトリプトファン)、3-イミダゾリル-アラニン(すなわち、His)、3-(1-メチルイミダゾリル)アラニン(すなわち、1-メチルヒスチジン)、3-ナフチル-アラニン(例えば、3-(1-ナフチル)-アラニン、3-(2-ナフチル)-アラニン)、3-ベンゾチオフェニル-アラニン、4-アセチル-フェニルアラニン、4-ベンゾイル-フェニルアラニン等が例示できる。
【0051】
<ペプチド>
本発明の一形態によれば、下記式(1)で表されるペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグが提供される:
【0052】
【化6】
【0053】
上記式(1)において、Xは、置換または非置換の、脂環式基、芳香族炭化水素基、アラルキル基および複素環基からなる群から選択される置換基により側鎖が置換されたAla残基、または欠損である。
【0054】
一実施形態では、Xは、置換または非置換の、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ピロリジニル基、ピロリル基、ピペリジル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、モルホリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾイミダゾリル基、キノリル基、カルバゾリル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチエニル基、フラニル基、チエニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾフラニル基、およびイソベンゾチオフェニル基からなる群から選択される置換基により側鎖が置換されたAla残基、または欠損である。
【0055】
別の実施形態では、Xは、Phe残基、Trp残基、His残基、Tyr残基、3-シクロヘキシルアラニン残基、3-ナフチル-アラニン残基、3-ピリジル-アラニン残基、3-フラニル-アラニン、3-チエニル-アラニン、または欠損である。
【0056】
NMUR1選択性およびNMUR1に対するアゴニスト活性の観点から、好ましい別の実施形態では、Xは、Phe残基、3-チエニル-アラニン残基、または欠損である。
【0057】
NMUR1選択性およびNMUR1に対するアゴニスト活性の観点から、より好ましい別の実施形態では、Xは3-チエニル-アラニン残基、または欠損である。
【0058】
NMUR1選択性およびNMUR1に対するアゴニスト活性の観点から、更に好ましい別の実施形態では、Xは欠損である。本発明に係るペプチドの長さは、6または7アミノ酸残基であるが、Xが欠損の場合、6アミノ酸残基となる。
【0059】
上記式(1)において、Xは、置換または非置換の、脂環式基、芳香族炭化水素基、アラルキル基および複素環基からなる群から選択される置換基により側鎖が置換されたAla残基;または、置換または非置換の、脂環式基、芳香族炭化水素基、アラルキル基および複素環基からなる群から選択される置換基により側鎖が置換されたα-メチルアラニン残基である。具体的には、例えば、Xは、置換または非置換の、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ピロリジニル基、ピロリル基、ピペリジル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、モルホリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾイミダゾリル基、キノリル基、カルバゾリル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチエニル基、フラニル基、チエニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾフラニル基、およびイソベンゾチオフェニル基からなる群から選択される置換基により側鎖が置換された、Ala残基またはα-メチルアラニン残基である。
【0060】
一実施形態では、Xは、Trp残基、Phe残基、His残基、Tyr残基、3-シクロヘキシルアラニン残基、3-ピリジル-アラニン残基、3-ベンゾチオフェニル-アラニン残基、3-ベンゾフラニル-アラニン、3,3-ジフェニルアラニン残基、3-ナフチル-アラニン残基、1-メチルヒスチジン残基、1-メチルトリプトファン残基、α-メチルトリプトファン残基、および4-ベンゾイル-フェニルアラニン残基からなる群から選択される。
【0061】
NMUR1選択性およびNMUR1に対するアゴニスト活性の観点から、好ましい別の実施形態では、Xは、Trp残基、Phe残基、His残基、Tyr残基、3-シクロヘキシルアラニン残基、3-ピリジル-アラニン残基、3-ベンゾチオフェニル-アラニン残基、3-ベンゾフラニル-アラニン、3,3-ジフェニルアラニン残基、3-ナフチル-アラニン残基、および1-メチルトリプトファン残基からなる群から選択される。
【0062】
NMUR1選択性およびNMUR1に対するアゴニスト活性の観点から、より好ましい別の実施形態では、Xは、Trp残基、3-ベンゾチオフェニル-アラニン残基、および1-メチルトリプトファン残基からなる群から選択される。
【0063】
NMUR1選択性およびNMUR1に対するアゴニスト活性の観点から、更に好ましい別の実施形態では、Xは、Trp残基、および1-メチルトリプトファン残基からなる群から選択される。
【0064】
上記式(1)において、Xは、下記式(A)で表される置換基Sまたは下記式(B)で表される置換基Sで側鎖が置換されたAla残基、下記式(A)で表される置換基Sまたは下記式(B)で表される置換基Sで側鎖が置換されたα-メチルアラニン残基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸残基、および1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基である。本発明者らは、NMUR1選択性に優れたNMUR1アゴニストを得るべく鋭意検討を重ねた結果、上記式(1)におけるX位のアミノ酸残基側鎖を嵩高くすることで、ペプチドのNMUR1選択性が向上することを見出した。特に、4-フルオロ-フェニルアラニン(例えば、比較例であるCPN-170)よりも嵩高い上記した残基をX位に採用することで、高濃度でのNMUR1選択性が優れたものとなる。
【0065】
【化7】
【0066】
上記式(A)において、Yは、窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を環員として1~3個含んでもよい縮合5員環構造または縮合6員環構造であり;pは0~2の整数であり;各Rは、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり;*はアミノ酸残基の側鎖との結合部位を示す。一実施形態では、上記式(A)において、Yは芳香環、または窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を環員として1個含む縮合5員環構造であり;pは0または1であり;各Rは、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり;*はアミノ酸残基の側鎖との結合部位を示す。
【0067】
式(A)で表される置換基Sとしては、より具体的には、ナフチル基、インダレニル基、インデニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾフラニル基、イソベンゾチオフェニル基、クロメニル基、チオクロメニル基、イソクロメニル基、イソチオクロメニル基、およびこれらの基が炭素数1~3のアルキル基でさらに置換された基、等が例示できる。
【0068】
一実施形態では、置換基Sは、下記S-1~S-12からなる群から選択される。なお、下記S-1~S-12において、*はアミノ酸残基の側鎖との結合部位を示す。
【0069】
【化8】
【0070】
【化9】
【0071】
上記式(B)において、qは1~5の整数であり;各Rは、それぞれ独立に、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、炭素数1~6のハロゲン化アルキル基、炭素数6~24の芳香族炭化水素基、複素環基、およびアシル基からなる群から選択される基であり;*はアミノ酸残基の側鎖との結合部位を示す。一実施形態では、上記式(B)において、qは1~5の整数であり;各Rは、それぞれ独立に、炭素数6~24の芳香族炭化水素基、および芳香族アシル基(例えば、ベンゾイル基、またはナフトイル基)からなる群から選択される基であり;*はアミノ酸残基の側鎖との結合部位を示す。フェニル基や芳香族アシル基のような芳香環を含有する置換基をRとして有する置換基Sによりアミノ酸残基の側鎖を置換することにより、血中安定性が顕著に優れたものとなる。
【0072】
NMUR1選択性およびNMUR1に対するアゴニスト活性の観点からは、上記式(B)において、Rを少なくとも4位に有することが好ましく、q=1且つRが4位であることがより好ましい。
【0073】
式(B)で表される置換基Sとしては、より具体的には、ブロモフェニル基、ヨードフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロポキシフェニル基、ニトロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロエチルフェニル基、ビフェニル基、アセチルフェニル基、プロピオニルフェニル基、ブチリルフェニル基、ベンゾイルフェニル基、ナフトイルフェニル基、およびピリジルフェニル基等が例示できる。
【0074】
一実施形態では、置換基Sは、下記S-1~S-19からなる群から選択される。なお、下記S-1~S-19において、*はアミノ酸残基の側鎖との結合部位を示す。
【0075】
【化10】
【0076】
【化11】
【0077】
本発明に係るペプチドは優れた血中安定性を示す。特に、Xのα炭素にメチル基を有するアミノ酸残基(すなわち、置換基Sまたは置換基Sで側鎖が置換されたα-メチルアラニン残基)とすることにより、血中安定性がより一層優れたものとなる。
【0078】
NMUR1選択性およびNMUR1に対するアゴニスト活性の観点から、好ましい一実施形態では、Xは、置換基Sで側鎖が置換されたAla残基、置換基Sで側鎖が置換されたα-メチルアラニン残基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸残基、および1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であり;このとき、前記置換基Sは、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ニトロ基、炭素数1~3のハロゲン化アルキル基、フェニル基およびベンゾイル基からなる群から選択される置換基で置換されたフェニル基であり、またはナフチル基、インドリル基、もしくは1-メチルインドリル基である。なお、インドリル基で側鎖が置換されたAla残基はTrp残基に相当し、インドリル基で側鎖が置換されたα-メチルアラニン残基はα-メチルトリプトファン残基に相当し、1-メチルインドリル基で側鎖が置換されたAla残基は1-メチルトリプトファン残基に相当する。
【0079】
NMUR1選択性およびNMUR1に対するアゴニスト活性の観点から、より好ましい別の実施形態では、Xは、置換基Sで側鎖が置換されたAla残基、置換基Sで側鎖が置換されたα-メチルアラニン残基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸残基、および1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であり;このとき、前記置換基Sは、トリル基、メトキシフェニル基、ニトロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビフェニル基、ベンゾイルフェニル基、ナフチル基、およびインドリル基からなる群から選択される。
【0080】
NMUR1選択性およびNMUR1に対するアゴニスト活性の観点から、更に好ましい別の実施形態では、Xは、Trp残基、3-(2-ナフチル)アラニン残基、4-フェニル-フェニルアラニン残基、4-ベンゾイル-フェニルアラニン残基、α-メチルトリプトファン残基、および1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸残基からなる群から選択され;XがTrp残基以外のアミノ酸残基である場合は、XがTrp残基またはα-メチルトリプトファン残基である。
【0081】
上記式(1)において、Xは、塩基性アミノ酸残基である。塩基性アミノ酸残基としては、具体的には、Arg残基、Lys残基、His残基、2,3-ジアミノプロピオン酸残基、2,4-ジアミノブタン酸残基、ノルアルギニン残基(2-アミノ-4-グアニジノブタン酸残基)、ホモアルギニン残基(2-アミノ-6-グアニジノヘキサン酸残基)、2,4-ジアミノペンタン酸、およびオルニチン残基が例示できる。
【0082】
一実施形態では、Xは、Arg残基、Lys残基、His残基、2,3-ジアミノプロピオン酸残基、2,4-ジアミノブタン酸残基、ノルアルギニン残基、ホモアルギニン残基、2,4-ジアミノペンタン酸、およびオルニチン残基からなる群から選択される。
【0083】
別の実施形態では、Xは、Arg残基、ノルアルギニン残基、およびホモアルギニン残基からなる群から選択される。
【0084】
NMUR1選択性およびNMUR1に対するアゴニスト活性の観点から、好ましい一実施形態では、Xは、Arg残基である。
【0085】
上記式(1)において、Xは、Pro残基またはホモプロリン残基である。好ましくは、XはPro残基残基である。
【0086】
上記式(1)において、Zは、本発明に係るペプチドのN末端の構造である。Zは、水素原子(すなわち、未修飾)、炭化水素基、複素環基、アシル基、スルホ基、カルボキシル基、グリオキシル基、ポリアルキレングリコール基、またはキャリアを示す。
【0087】
の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の、炭素数1~18の鎖式炭化水素基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、およびアダマンチル基等の、炭素数3~12の脂環式基;単環または縮合環構造の芳香族炭化水素に由来する基であり、より具体的には、フェニル基、ナフチル基、トリル基、およびフェナントリル基等の、炭素数6~20の芳香族炭化水素基が例示できる。これらの炭化水素基は、炭素数1~6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1~6の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミド基、ニトロ基、スルホ基、スルホンアミド基、および/またはハロゲン原子等のさらなる置換基によって置換されていてもよい。
【0088】
の複素環基としては、環内に窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1~3個含む、単環、縮合二環式または縮合三環式構造の上述の置換基が例示できる。複素環基は、炭素数1~6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1~6の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミド基、ニトロ基、スルホ基、スルホンアミド基、および/またはハロゲン等のさらなる置換基によって置換されていてもよい。
【0089】
のアシル基としては、例えば、炭素数1~12の脂肪族アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ラウロイル基等)、アシル基を有するビタミン、アシル基を有する核酸塩基、または下記式(3)で表される基が例示できる。
【0090】
【化12】
【0091】
ただし、上記式(3)において、Rは、炭素数3~12の脂環式基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、およびアダマンチル基)、炭素数6~20の芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ナフチル基、およびフェナントリル基等)、および複素環基(例えば、ピロリジニル基、ピロリル基、ピペリジル基、ピリジル基、イミダゾリル基、イミダゾリニル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、モルホリル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、キノリル基、カルバゾリル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチエニル基、フラニル基、チエニル基、テトラヒドロピラニル基、およびテトラヒドロチオピラニル基等)からなる群から選択される環式基であり、当該環式基はさらに置換基を有していてもよい。Rは、単結合、炭素数1~11のアルキレン基、炭素数1~10のオキシアルキレン基、または炭素数1~10のアルキレンオキシ基である。Rの置換基としては、炭素数1~6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミド基、ニトロ基、スルホ基、スルホンアミド基、およびハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が例示できる。
【0092】
アシル基を有するビタミンとしては、例えば、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、プテロイルグルタミン酸(葉酸)、オロチン酸、フルオロオロチン酸、α-リポ酸、ピリドキシン酸、ビオシチン、プテロイン酸、10-ホルミルプテロイン酸、7,8-ジヒドロ葉酸、ホモプテロイン酸、プテリン-6-カルボン酸、ジヒドロリポ酸、ハイドロオロチン酸などが挙げられる。
【0093】
アシル基を有する核酸塩基誘導体は、ヌクレオチドを構成する塩基成分およびその誘導体を指し、好ましくはピリミジン誘導体等、例えば5-カルボキシメチルウラシル、5-カルボキシチオウラシル等を例示することができる。
【0094】
のポリアルキレングリコール基は、エステル結合、アミン(-NH-)、アシル基(例えば、炭素数1~12のアシル基)等や、これらの組み合わせを介して、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールが連結された構造である。好ましくは、ポリアルキレングリコール基は、ポリエチレングリコール基である。ポリエチレングリコール基の炭素数は、例えば2~20(すなわち、-(CO)-で表される構造単位を有し、n=1~10である。)、好ましくは4~16(すなわち、-(CO)-で表される構造単位を有し、n=2~8である。)である。ポリアルキレングリコール基におけるペプチドのN末端と連結している側とは反対側の末端は、炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert-アミル基、ヘキシル基)のような、一般的に水酸基の保護に使用される保護基で修飾されていてもよい。
【0095】
のキャリアとしては、ペプチドのキャリアとして一般的に使用される分子を用いることができ、例えばストレプトアビジン、アルブミン、オボアルブミン、デキストラン、プルラン、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン-無水マレイン酸共重合体、アミロース、アミロペクチン、シクロデキストリン等が例示できる。
【0096】
好ましい一実施形態では、Zが、水素原子、炭素数1~12の脂肪族アシル基または上記式(3)で表される基である;ただし、式(3)において、Rは、置換もしくは非置換の、チエニル基、フラニル基、ピロリジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、イミダゾリニル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、フェニル基、またはピリジル基(例えば、2-ピリジル基、3-ピリジル基、または4-ピリジル基)であり;Rは、単結合、炭素数1~11のアルキレン基、炭素数1~10のオキシアルキレン基、または炭素数1~10のアルキレンオキシ基である。
【0097】
NMUR1選択性およびNMUR1に対するアゴニスト活性の観点から、より好ましい一実施形態では、Zが、水素原子、炭素数1~6の脂肪族アシル基、または上記式(3)で表される基である;ただし、式(3)において、Rは、置換もしくは非置換の、チエニル基、フラニル基、ピロリジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、イミダゾリニル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、フェニル基、3-ピリジル基、または4-ピリジル基であり;Rは、単結合、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数1~4のオキシアルキレン基、または炭素数1~4のアルキレンオキシ基である。
【0098】
NMUR1選択性およびNMUR1に対するアゴニスト活性の観点から、更に好ましい一実施形態では、Zが、水素原子、炭素数2~6の脂肪族アシル基、または上記式(3)で表される基である;ただし、式(3)において、Rは、置換もしくは非置換の、チエニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、3-ピリジル基、または4-ピリジル基であり;Rは、単結合、または炭素数1~5のアルキレン基である。
【0099】
上記式(1)において、Zは、アミノ基、水素原子(すなわち、未修飾)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭化水素基、ポリアルキレングリコール基、またはキャリアを示す。
【0100】
のアルコキシ基、炭化水素基、ポリアルキレングリコール基、およびキャリアは、具体的には、Zについて上述したものが採用され得る。
【0101】
は、NMUR1に対するアゴニスト活性の観点から、Zはアミノ基または水素原子であることが好ましく、アミノ基であることがより好ましい。
【0102】
一実施形態では、上記式(1)において、
は、Phe残基、Trp残基、His残基、Tyr残基、3-シクロヘキシルアラニン残基、3-ナフチル-アラニン残基、3-ピリジル-アラニン残基、3-フラニル-アラニン、3-チエニル-アラニン、または欠損であり;
は、Trp残基、Phe残基、His残基、Tyr残基、3-シクロヘキシルアラニン残基、3-ピリジルアラニン残基、3-ベンゾチオフェニルアラニン残基、3-ベンゾフラニルアラニン、3,3-ジフェニルアラニン残基、3-ナフチルアラニン残基、1-メチルヒスチジン残基、1-メチルトリプトファン残基、α-メチルトリプトファン残基、および4-ベンゾイル-フェニルアラニン残基からなる群から選択され;
は、上記式(A)で表される置換基Sまたは上記式(B)で表される置換基Sで側鎖が置換されたAla残基、上記式(A)で表される置換基Sまたは上記式(B)で表される置換基Sで側鎖が置換されたα-メチルアラニン残基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸残基、および1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であり;このとき、前記置換基Sは、ナフチル基、インダレニル基、インデニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾフラニル基、イソベンゾチオフェニル基、クロメニル基、チオクロメニル基、イソクロメニル基、イソチオクロメニル基、およびこれらの官能基が炭素数1~3のアルキル基でさらに置換された基からなる群から選択され;前記置換基Sは、ブロモフェニル基、ヨードフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロポキシフェニル基、ニトロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロエチルフェニル基、ビフェニル基、アセチルフェニル基、プロピオニルフェニル基、ブチリルフェニル基、ベンゾイルフェニル基、ナフトイルフェニル基、およびピリジルフェニル基からなる群から選択され;
は、Arg残基、Lys残基、His残基、2,3-ジアミノプロピオン酸残基、2,4-ジアミノブタン酸残基、ノルアルギニン残基、ホモアルギニン残基、2,4-ジアミノペンタン酸、およびオルニチン残基からなる群から選択され;
は、Pro残基またはホモプロリン残基であり;
は、水素原子、炭化水素基、複素環基、アシル基、スルホ基、カルボキシル基、グリオキシル基、ポリアルキレングリコール基、またはキャリアであり;
は、アミノ基、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭化水素基、ポリアルキレングリコール基、またはキャリアである。
【0103】
別の好ましい実施形態では、上記式(1)において、
は、Phe残基、3-チエニル-アラニン残基、または欠損であり;
は、Trp残基、3-ベンゾチオフェニル-アラニン残基、および1-メチルトリプトファン残基からなる群から選択され;
は、上記S-1~S-12および上記S-1~S-19からなる群から選択される置換基で側鎖が置換されたAla残基、上記S-1~S-12および上記S-1~S-19からなる群から選択される置換基で側鎖が置換されたα-メチルアラニン残基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸残基、および1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸残基からなる群から選択され
るアミノ酸残基であり
は、Arg残基、ノルアルギニン残基、およびホモアルギニン残基からなる群から選択され;
は、Pro残基またはホモプロリン残基であり;
は、水素原子、炭素数1~12の脂肪族アシル基、または上記式(3)で表される基であり;ただし、式(3)において、Rは、置換もしくは非置換の、チエニル基、フラニル基、ピロリジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、イミダゾリニル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、フェニル基、またはピリジル基であり;Rは、単結合、炭素数1~11のアルキレン基、炭素数1~10のオキシアルキレン基、または炭素数1~10のアルキレンオキシ基であり;
は、アミノ基、または水素原子である。
【0104】
特に好ましい別の実施形態では、上記式(1)において、
は欠損であり;
は、Trp残基、および1-メチルトリプトファン残基からなる群から選択され;
は、Trp残基、3-(2-ナフチル)アラニン残基、4-フェニル-フェニルアラニン残基、4-ベンゾイル-フェニルアラニン残基、α-メチルトリプトファン残基、および1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸残基からなる群から選択され;ただし、Xが1-メチルトリプトファン残基である場合は、XがTrp残基またはα-メチルトリプトファン残基であり;
は、Arg残基であり;
は、Pro残基であり;
は、水素原子、炭素数2~6の脂肪族アシル基、または上記式(3)で表される基である;ただし、式(3)において、Rは、置換もしくは非置換の、チエニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、3-ピリジル基、または4-ピリジル基であり;
は、単結合、または炭素数1~5のアルキレン基であり;
は、アミノ基である。
【0105】
NMUR1選択性およびNMUR1に対するアゴニスト活性の観点から、好ましい一実施形態では、前記式(1)で表されるペプチドが、下記(i)または(ii)のいずれかを満たすペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグが提供される:
(i)上記式(1)におけるX-X-X-X-X-Arg-Asnが、配列番号1~21からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる
(ii)配列番号1~21からなる群から選択されるアミノ酸配列において、X~Xに対応する位置のアミノ酸残基のいずれか1つが、本明細書においてX~Xについてそれぞれ定義されるアミノ酸残基により置換され、且つNMUR1を選択的に活性化する。
【0106】
【表1】
【0107】
以下に、本明細書における略号の意味を示す。
Ala(2-thienyl): 3-(2-チエニル)アラニン
Ala(1-Naph): 3-(1-ナフチル)アラニン
Ala(2-Naph): 3-(2-ナフチル)アラニン
Ala(3-Bzt): 3-ベンゾチオフェニル-アラニン (すなわち、3-(1-ベンゾチオフェン-3-イル)-アラニン)
Dph: 3,3-ジフェニルアラニン
Phe(4-benzoyl): 4-ベンゾイル-フェニルアラニン
Phe(4-Br): 4-ブロモ-フェニルアラニン
Phe(4-CF): 4-トリフルオロメチル-フェニルアラニン
Phe(4-NO): 4-ニトロ-フェニルアラニン
Phe(4-OMe): 4-メトキシ-フェニルアラニン
Phe(4-Ph): 4-フェニル-フェニルアラニン
Trp(1-Me): 1-メチルトリプトファン
(α-Me)Trp: α-メチルトリプトファン
Tic: 1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸
Tpi: 1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸。
【0108】
上記(ii)のペプチドにおいて、「X~Xについてそれぞれ定義されるアミノ酸残基により置換され」とは、上記配列番号1~21のアミノ酸配列において、X~Xのうちいずれか1つの位置に対応するアミノ酸残基が、X~Xのそれぞれについて上記したアミノ酸残基によって置換されることをいう。
【0109】
一実施形態では、上記(ii)のペプチドにおけるアミノ酸配列は、配列番号26~38のいずれか1つで表される。
【0110】
【表2】
【0111】
NMUR1選択性およびNMUR1に対するアゴニスト活性の観点から、好ましい一実施形態では、上記(ii)のペプチドにおけるアミノ酸配列は、配列番号26~30および35~38からなる群のいずれか1つで表される。
【0112】
一実施形態では、本発明に係るペプチドは、下記式(1-1)~(1-185)のいずれか1つで表される。
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
【表5】
【0116】
【表6】
【0117】
【表7】
【0118】
より好ましい一実施形態では、本発明に係るペプチドは、上記式(1-1)、(1-3)、(1-8)~(1-10)、(1-13)、(1-15)、(1-17)、(1-20)、(1-22)~(1-25)、(1-29)、(1-30)、(1-32)~(1-35)、(1-37)~(1-58)、(1-60)~(1-73)、(1-75)~(1-96)、(1-98)~(1-118)、(1-120)~(1-141)、(1-143)~(1-164)、および(1-165)~(1-184)のいずれかで表される。
【0119】
更に好ましい一実施形態では、本発明に係るペプチドは、上記式(1-8)、(1-20)、(1-22)~(1-25)、(1-29)、(1-30)、(1-44)、(1-47)、(1-49)、(1-50)、(1-53)、(1-68)、(1-82)、(1-85)、(1-87)、(1-88)、(1-91)、(1-105)、(1-108)、(1-110)、(1-111)、(1-114)、(1-150)、(1-153)、(1-155)、(1-156)、または(1-159)のいずれかで表される。
【0120】
<ペプチドの製造方法>
本発明に係るペプチドは、化学的合成法や組換え技術を含む従来公知の手法によって製造することができる。本発明に係るペプチドを化学合成により調製するには、各アミノ酸をペプチド化学において通常用いられる方法、例えば、「ザ ペプチド(The Peptides)」第1巻〔Schroder and Luhke著, Academic Press, New York, U.S.A.(1966年)〕、「ペプチド合成の基礎と実験」(泉屋信夫ら著、丸善株式会社、1985年)等に記載されている方法によって製造することが可能であり、液相法および固相法のいずれによっても製造できる。さらに、カラム法、バッチ法のいずれの方法も用いることができる。
【0121】
本発明に係るペプチドはまた、例えば下記のCurrent Protocols in Molecular Biology、Chapter 16に記載されるような手法により、動物細胞、昆虫細胞、または微生物等を利用した組み換え技術により製造してもよい。ペプチドは、培養細胞や微生物によって生成された後、従来公知の方法によって精製し得る。ペプチドの精製および単離法は当分野の技術者に公知であり、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology、Chapter 16(Ausubelら、John Wiley and Sons、2006年)等に記載の手法により行うことができる。
【0122】
ペプチド結合を形成するための縮合方法として、アジド法、酸ハライド法、酸無水物法、カルボジイミド法、カルボジイミド-アディティブ法、活性エステル法、カルボニルイミダゾール法、酸化還元法、酵素法、ウッドワード試薬K、HATU試薬、Bop試薬を用いる方法等を例示することができる。なお、固相法での縮合反応は上記した方法のうち、酸無水物法、カルボジイミド法、および活性エステル法が主な方法として挙げられる。
【0123】
さらに、固相法でペプチド鎖を延長するときは、用いる有機溶媒に対して不溶な樹脂等の支持体に、C末端アミノ酸を結合する。かような樹脂としては、アミノ酸を樹脂に結合させる目的で官能基を導入した樹脂や、樹脂と官能基の間にスペーサーを挿入したもの等を目的に応じて用いることもできる。より具体的には、例えば、クロロメチル樹脂などのハロメチル樹脂、オキシメチル樹脂、4-(オキシメチル)-フェニルアセトアミドメチル樹脂、4-(オキシメチル)-フェノキシメチル樹脂、Rinkアミド樹脂などを挙げることができる。なお、これらの縮合反応を行う前に、通常公知の手段によって当該縮合反応に関与しないカルボキシル基やアミノ基や水酸基やアミジノ基等の保護手段を施すことができる。また逆に当該縮合反応に直接関与するカルボキシル基やアミノ基を活性化することもできる。
【0124】
各ユニットの縮合反応に関与しない官能基の保護手段に用いる保護基としては有機化学において通常用いられている保護基、例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis(Greene著、John Wiley & Sons, Inc.(1981年))等に記載されている保護基によって保護することが可能である。より具体的には、カルボキシル基およびアミノ基の保護基としては、例えば、各種のメチルエステル、エチルエステル、ベンジルエステル、p-ニトロベンジルエステル、t-ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、トリチル基(Trt基)、ベンジルオキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基(Boc基)、イソボルニルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc基)、2,2,4,6,7-ペンタメチル-2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-イル-スルホニル基(Pbf基)等を挙げることができる。
【0125】
カルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、当該カルボキシル基に対応する酸無水物;アジド;ペンタフルオロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、p-ニトロフェノール、N-ヒドロキシコハク酸イミド、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシフタルイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等との活性エステル等が挙げられる。アミノ基の活性化されたものとしては、当該アミノ基に対応する燐酸アミド等を挙げることができる。
【0126】
ペプチド合成の際の縮合反応は、通常溶媒中で行われる。当該溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、水、メタノール等、または、これらの混合物を挙げることができる。また、当該縮合反応の反応温度は、通常の場合と同様に、-30℃~50℃の範囲で行うことができる。
【0127】
さらに、ペプチドの製造工程における保護基の脱離反応の種類は、ペプチド結合に影響を与えずに保護基を脱離させることができる限りにおいて、用いる保護基の種類に応じて選択することができる。例えば、塩化水素、臭化水素、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、またはこれらの混合物等による酸処理、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ヒドラジン、ジエチルアミン、ピペリジン等によるアルカリ処理、液体アンモニア中におけるナトリウム処理やパラジウム炭素による還元および、トリメチルシリルトリフラート、トリメチルシリルブロマイド等のシリル化処理等が挙げられる。なお、上記の酸またはシリル化剤処理による脱保護基反応においては、アニソール、フェノール、クレゾール、チオアニソール、エタンジチオール等のカチオン捕捉剤を添加するのが、脱保護基反応が効率的に行われるという観点から好ましい。
【0128】
なお、固相法で合成した本発明のペプチドの固相からの切断方法も、通常公知の方法に従う。例えば、上記の酸またはシリル化剤による処理等を当該切断方法として挙げることができる。このようにして製造された本発明のペプチドに対しては、上記の一連の反応の終了後に通常公知の分離、精製手段を駆使することができる。例えば、抽出、分配、再沈澱、再結晶、固相抽出、カラムクロマトグラフィー等によって、より高純度で本発明のペプチドを収得することができる。
【0129】
本発明に係るペプチドにおいて、ペプチドのN末端およびC末端の修飾は、従来公知の方法によって行うことができる。N末端の修飾では、ペプチドを固相法で合成する場合、最後のアミノ酸残基の脱保護の後、N末端を上述のZにより修飾するために、チエニル酢酸や3-シクロヘキシルプロピオン酸などを導入することで得ることができる。また、C末端の修飾では、例えば、アミド体合成用樹脂であるRinkアミド樹脂を用いて固相合成することで、ペプチドのアミド体を得ることができる。
【0130】
本発明に係るペプチドは、単離または精製されていてもよい。「単離または精製」とは、目的とする成分以外の成分を除去する操作が施されていることを意味する。単離または精製された本発明に係るペプチドの純度は、通常50%以上(例えば、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、100%)である。
【0131】
<ペプチドの用途>
本発明の一実施形態は、本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグを有効成分として含む、1型ニューロメジンU受容体の活性化剤(NMUR1活性化剤)に関する。本発明の別の実施形態は、本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグを対象に接触させることを含む、1型ニューロメジンU受容体の活性化方法に関する。当該方法はin vivoまたはin vitroにおいて、1型ニューロメジンU受容体(およびそのシグナル伝達経路)を選択的に活性化するために実施され得る。上記「対象」には、ヒトおよび魚類を含む非ヒト動物、ならびにこれらの個体に由来する各種の細胞および組織が含まれ、これらの個体、細胞および組織は1型ニューロメジンU受容体を例えば遺伝子工学的手法等により人工的に発現させたものであってもよい。好ましくは、上記「対象」は、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウマ(競走馬を含む)、ウシ、ブタ、ウサギ、およびヒツジ等の哺乳動物、ニワトリ、ウズラ、および七面鳥等の家禽、ならびにこれらの個体に由来する細胞および組織から選択され、ヒトまたはヒト由来細胞であることがより好ましい。
【0132】
本発明の別の実施形態は、本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグを有効成分として含む、メタボリックシンドローム、肥満症、糖尿病、脂質異常症、循環器疾患、または概日リズム障害の、予防および/または治療剤に関する(以下、「本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグを有効成分として含む、1型ニューロメジンU受容体の活性化剤」および「本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグを有効成分として含む、メタボリックシンドローム、肥満症、糖尿病、脂質異常症、循環器疾患、または概日リズム障害の、予防および/または治療剤」を、総称して「本発明に係る薬剤」とも称する。)。本発明の別の実施形態は、本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグの有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、メタボリックシンドローム、肥満症、糖尿病、脂質異常症、循環器疾患、または概日リズム障害の、予防および/または治療方法に関する。
【0133】
本明細書において「メタボリックシンドローム」とは、内臓肥満、インスリン抵抗性・高血糖、脂質代謝異常、血圧上昇といった、動脈硬化性疾患とII型糖尿発症とのリスク因子が集積した病態である。
【0134】
本明細書において「肥満症」とは、肥満である状態、または除脂肪体重と比べて体脂肪もしくは脂肪組織が過剰量であることを意味し、単純性肥満に基づく肥満症、症候性肥満、肥満に伴う病態または疾患などが例示できる。症候性肥満としては、内分泌性肥満(Cushing症候群、甲状腺機能低下症、インスリノーマ、肥満II型糖尿病、偽性副甲状腺機能低下症、性腺機能低下症など)、中枢性肥満(視床下部性肥満、前頭葉症候群、Kleine-Levin症候群など)、遺伝性肥満(Prader-Willi症候群、Laurence-Moon-Biedl症候群など)、薬剤性肥満(ステロイド剤、フェノチアジン、インスリン、スルホニルウレア(SU)剤、β-ブロッカーによる肥満など)などが例示できる。肥満に伴う病態または疾患としては、耐糖能障害、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧、心不全、高尿酸血症・痛風、脂肪肝(non-alchoholic steato-hepatitisを含む)、冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症など)、脳梗塞(脳血栓症、一過性脳虚血発作など)、骨・関節疾患(変形性膝関節症、変形性股関節症、変形性脊椎症、腰痛症など)、睡眠時無呼吸症候群・Pickwick症候群、月経異常(月経周期の異常、月経量と周期の異常、無月経、月経随伴症状の異常など)などが例示できる。
【0135】
本明細書において「糖尿病」とは、不十分な血中インスリン濃度またはインスリン感受性の低下による糖代謝異常や、高血糖症を特徴とする症候群であり、より具体的には、II型糖尿病、肥満型糖尿病などが例示できる。また、糖尿病には、糖尿病の合併症も含まれる。前記合併症としては、神経障害、腎症、網膜症、糖尿病性心筋症、白内障、大血管障害、骨減少症、糖尿病性高浸透圧昏睡、感染症(呼吸器感染症、尿路感染症、消化器感染症、皮膚軟部組織感染症、下肢感染症など)、糖尿病性壊疽、口腔乾燥症、聴覚の低下、脳血管障害、末梢血行障害などが例示できる。
【0136】
本明細書において「脂質異常症」とは、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLコレステロール血症、食後高脂血症、混合型脂質異常症を含む、血中脂質の異常をいう。
【0137】
本明細書において「循環器疾患」とは、動脈硬化症(たとえば、アテローム性動脈硬化症)、高血圧、一過性脳虚血発作、収縮機能障害、拡張機能障害、動脈瘤、大動脈解離、心筋虚血、心筋梗塞、狭心症、アンギナ、心不全、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、肺性心、不整脈、心臓弁膜症、心内膜炎、肺動脈塞栓症、静脈塞栓症、末梢血管疾患、および末梢動脈疾患を含む心臓および血管の障害が例示できる。
【0138】
本明細書において「概日リズム障害」とは、交代勤務(シフトワーク)や時差ぼけなどの外的要因、または非24時間睡眠覚醒障害、睡眠相後退症候群および睡眠相前進症候群などの内因要因による睡眠障害をいう。
【0139】
本発明に係る薬剤を対象に投与することにより、摂食抑制、エネルギー代謝亢進、体温上昇、体重減少、耐糖能の改善、脂質代謝の改善、体内時計の正常化などの効果を達成できる。上記本発明に係る薬剤は、本発明に係るペプチドの1種以上、もしくはそのプロドラッグの1種以上、またはこれらの混合物から構成されてもよい。本発明に係る薬剤は、通常、本発明に係るペプチドおよびそのプロドラッグから選択される1種以上、ならびに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0140】
本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグの投与量は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状などによって適宜選択することができる。前記投与量は、1回量として、通常5μg~100mg/体重、好ましくは500μg~50mg/体重であり、より好ましくは1~10mg/体重である。また、製剤化の工夫により、前記投与量を低減することが可能である。1日あたりの投与回数も特に制限されず、例えば1日あたり1回~5回投与することができる。投与ルートも特に制限されず、例えば、経口投与、注射(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、脊椎腔内など)、経皮投与、粘膜投与(たとえば、鼻腔内、吸入、経腸、経膣、舌下)等の、当該分野において既知の手段を用いることができる。
【0141】
本発明に係るペプチドは、NMUR1選択的なアゴニスト活性を有する。また、本発明に係るペプチドは、生理的条件下、たとえば血中においても化学的に安定であり、血中動態が良好である。よって、本発明に係る薬剤は、良好な血中動態を基盤として、体内への投与、具体的には静脈内、鼻腔内、皮下など局所への投与により、摂食抑制、エネルギー代謝亢進、体温上昇、体重減少、耐糖能の改善、脂質代謝の改善、体内時計の正常化などの作用を発揮できるため、メタボリックシンドローム、肥満症、糖尿病、脂質異常症、循環器疾患、または概日リズム障害の予防および/または治療という効果を達成できる。
【0142】
本明細書において、治療上の「有効量」とは、合理的な利益/リスク比に見合う、なんらかの望ましい治療効果を生じさせるのに有効な量である。同様に、本明細書において、「有効成分として含む」とは、合理的な利益/リスク比に見合う、なんらかの望ましい治療効果を生じさせるのに有効な量を含むことをいう。
【0143】
本明細書において、「患者」とは、ヒトおよび魚類を含む非ヒト動物が挙げられるが、好ましくは、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウマ(競走馬を含む)、ウシ、ブタ、ウサギ、およびヒツジ等の哺乳動物、ならびにニワトリ、ウズラ、および七面鳥等の家禽から選択され、ヒトであることがより好ましい。
【0144】
上記の薬学的に許容される担体としては、特に限定されないが、乳糖、ショ糖、マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等の賦形剤;シリカ、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、デキストリン、ゼラチン等の結合剤;アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トコフェロール等の酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤;ホウ酸塩、重炭酸塩、Tris-HCl、クエン酸塩、リン酸塩、他の有機酸等の緩衝剤;注射用水、生理食塩水、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、マクロゴール、オリーブ油、トウモロコシ油等の溶媒;プルロニック(登録商標)、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、トリトン(登録商標)、レシチン、コレステロール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤または湿潤剤;塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、ブドウ糖、ソルビトール、マンニトール等の等張化剤;安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン等の保存剤;錯化剤;アミノ酸;抗菌剤;着色剤;フレーバー剤および希釈剤;乳化剤;ナトリウム等の塩形成対イオン;搬送ビヒクル;希釈剤などが挙げられる(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版, A.R. Gennaro監修, Mack Publishing Company, 1990)。
【0145】
本発明に係るペプチドまたはそのプロドラッグの薬剤中の含有量は、薬剤全体に対して0.01~100重量%であり得る。
【0146】
<実施形態>
以下に本発明の実施形態を例示するが、本発明は以下の形態に限定されない。
(1) 以下の式(1)で表されるペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ:
【0147】
【化13】
【0148】
上記式(1)において、
は、置換または非置換の、脂環式基、芳香族炭化水素基、アラルキル基および複素環基からなる群から選択される置換基により側鎖が置換されたAla残基、または欠損であり;
は、置換または非置換の、脂環式基、芳香族炭化水素基、アラルキル基および複素環基からなる群から選択される置換基により側鎖が置換された、Ala残基またはα-メチルアラニン残基であり;
は、下記式(A)で表される置換基Sまたは下記式(B)で表される置換基Sで側鎖が置換されたAla残基、下記式(A)で表される置換基Sまたは下記式(B)で表される置換基Sで側鎖が置換されたα-メチルアラニン残基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸残基、および1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
【0149】
【化14】
【0150】
上記式(A)において、Yは、窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を1~3個含んでもよい縮合5員環構造または縮合6員環構造であり;pは0~2の整数であり;各Rは、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり;*はアミノ酸残基の側鎖との結合部位を示す、
【0151】
【化15】
【0152】
上記式(B)において、qは1~5の整数であり;各Rは、それぞれ独立に、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、炭素数1~6のハロゲン化アルキル基、炭素数6~24の芳香族炭化水素基、複素環基、およびアシル基からなる群から選択される基であり;*はアミノ酸残基の側鎖との結合部位を示す;
は、塩基性アミノ酸残基であり;
は、Pro残基またはホモプロリン残基であり;
は、水素原子、炭化水素基、複素環基、アシル基、スルホ基、カルボキシル基、グリオキシル基、ポリアルキレングリコール基、またはキャリアを示し;ならびに
は、アミノ基、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、炭化水素基、ポリアルキレングリコール基、またはキャリアを示す。
(2) Xが、置換基Sで側鎖が置換されたAla残基、置換基Sで側鎖が置換されたα-メチルアラニン残基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸残基、および1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
このとき、前記置換基Sは、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ニトロ基、炭素数1~3のハロゲン化アルキル基、フェニル基およびベンゾイル基からなる群から選択される置換基で置換されたフェニル基であり、またはナフチル基、インドリル基、もしくは1-メチルインドリル基である、(1)に記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ。
(3) Xが、置換基Sで側鎖が置換されたAla残基、置換基Sで側鎖が置換されたα-メチルアラニン残基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸残基、および1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
このとき、前記置換基Sは、トリル基、メトキシフェニル基、ニトロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビフェニル基、ベンゾイルフェニル基、ナフチル基、およびインドリル基からなる群から選択される、(2)に記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ。
(4) Xが、Trp残基、Phe残基、His残基、Tyr残基、3-シクロヘキシルアラニン残基、3-ピリジル-アラニン残基、3-ベンゾチオフェニル-アラニン残基、3-ベンゾフラニル-アラニン、3,3-ジフェニルアラニン残基、3-ナフチル-アラニン残基、および1-メチルトリプトファン残基からなる群から選択される、(1)~(3)のいずれか1つに記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ。
(5) Zが、水素原子、炭素数1~6の脂肪族アシル基、または下記式(3)で表される基である、(1)~(4)のいずれか1つに記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ;
【0153】
【化16】
【0154】
ただし、上記式(3)において、Rは、置換もしくは非置換の、チエニル基、フラニル基、ピロリジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、イミダゾリニル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、フェニル基、3-ピリジル基、または4-ピリジル基であり;Rは、単結合、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数1~4のオキシアルキレン基、または炭素数1~4のアルキレンオキシ基である。
(6) XがPhe残基、3-チエニル-アラニン残基または欠損である、(1)~(5)のいずれか1つに記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ。
(7) XがArg残基、ノルアルギニン残基、およびホモアルギニン残基からなる群から選択される、(1)~(6)のいずれか1つに記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ。
(8) 前記式(1)で表されるペプチドが、下記(i)または(ii)のいずれかを満たす、(1)に記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ:
(i)上記式(1)におけるX-X-X-X-X-Arg-Asnが、配列番号1~21からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる
(ii)配列番号1~21からなる群から選択されるアミノ酸配列において、X~Xに対応する位置のアミノ酸残基のいずれか1つが、本明細書においてX~Xについてそれぞれ説明されるアミノ酸残基により置換され、且つNMUR1を選択的に活性化する。
(9) 前記式(1)で表されるペプチドが、上記式(1-1)~(1-185)のいずれか1つで表される、(1)に記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグ。
(10) (1)~(9)のいずれか1つに記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグを有効成分として含む、1型ニューロメジンU受容体の活性化剤。
(11) (1)~(9)のいずれか1つに記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグを有効成分として含む、メタボリックシンドローム、肥満症、糖尿病、脂質異常症、循環器疾患、または概日リズム障害の、予防および/または治療剤。
(12) (1)~(9)のいずれか1つに記載のペプチドもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグの有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、メタボリックシンドローム、肥満症、糖尿病、脂質異常症、循環器疾患、または概日リズム障害の、予防および/または治療方法。
【実施例
【0155】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0156】
<ペプチドの合成>
[合成例1] CPN-171の合成
(2-チエニルアセチル)-Trp-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-171)
CPN-171は以下に示すFmoc固相ペプチド合成法により合成した。
【0157】
Rink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を反応容器に量りとり、ジメチルホルムアミド(DMF)溶液中にて室温(25℃)で30分間樹脂を膨潤させた後、20%(v/v)ピペリジン/DMF溶液(2.5mL)中にて室温(25℃)で20分間反応させることで樹脂上の保護基Fmoc(9-フルオロフェニルメトキシカルボニル)基を除去した。DMF(2.5mL)で10回樹脂を洗浄し、その後、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)34mg(0.22mmol,5eq.)およびN,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCD)0.034mL(0.22mmol,5eq.)存在下でFmoc-Asn(Trt)-OH 131mg(0.20mmol,5eq.)を室温(25℃)で1時間、DMF中で反応させ、樹脂上にアミノ酸を導入した。次のアミノ酸を縮合させるため、20%(v/v)ピペリジン/DMF溶液(2.5mL)中で20分間反応させることで樹脂上のFmoc基を除去した。以下、Fmoc-Asn(Trt)-OHの場合と同様にして順次C末端側からFmoc-Arg(Pbf)-OH(0.22mmol,5eq.)、Fmoc-Pro-OH(0.22mmol,5eq.)、Fmoc-Arg(Pbf)-OH(0.22mmol,5eq.)、Fmoc-Trp(Boc)-OH(0.22mmol,5eq.)、Fmoc-Trp(Boc)-OH(0.22mmol,5eq.)、2-チエニル酢酸(0.22mmol,5eq.)を導入しペプチド鎖を伸長させた。DMF(2.5mL,6回)およびメタノール(2.5mL,3回)、ジエチルエーテル(2.5mL,3回)で洗浄した樹脂を乾燥させた。各種側鎖保護基の除去及び脱樹脂のため、m-クレゾール(0.100mL)、チオアニソール(0.100mL)、および1,2-エタンジチオール(0.100mL)存在下でトリフルオロ酢酸(TFA)4.0mL中にて2時間反応させた。フィルターろ過することで樹脂を除去した後、窒素噴霧によりTFAを留去し、ジエチルエーテル40mLを加えて粗精製ペプチドを析出させた。粗精製ペプチドを1M酢酸に溶解し、高速液体クロマトグラフィーを用いて精製することにより、白色固体を得た(21.6mg,収率79%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1037.4892,found 1037.4874。
【0158】
[合成例2] CPN-172の合成
(2-チエニルアセチル)-Trp-Ala(1-Naph)-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-172); Ala(1-Naph):3-(1-ナフチル)アラニン
CPN-172はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(25.0mg,収率45%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1048.4940,found 1048.4960。
【0159】
[合成例3] CPN-173の合成
(2-チエニルアセチル)-Trp-Ala(2-Naph)-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-173); Ala(2-Naph):3-(2-ナフチル)アラニン
CPN-173はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(31.3mg,収率56%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1048.4940,found 1048.4915。
【0160】
[合成例4] CPN-180の合成
(2-チエニルアセチル)-Trp-Phe(4-Br)-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-180); Phe(4-Br):4-ブロモ-フェニルアラニン
CPN-180はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(24.0mg,収率42%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1076.3888,found 1076.3916。
【0161】
[合成例5] CPN-181の合成
(2-チエニルアセチル)-Trp-Phe(4-OMe)-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-181); Phe(4-OMe):4-メトキシ-フェニルアラニン
CPN-181はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(43.7mg,収率79%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1028.4889,found 1028.4866。
【0162】
[合成例6] CPN-182の合成
(2-チエニルアセチル)-Trp-Phe(4-NO)-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-182); Phe(4-NO):4-ニトロ-フェニルアラニン
CPN-182はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(42.7mg,収率76%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1043.4634,found 1043.4620。
【0163】
[合成例7] CPN-183の合成
(2-チエニルアセチル)-Trp-Phe(4-CF)-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-183); Phe(4-CF):4-トリフルオロメチル-フェニルアラニン
CPN-183はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(37.7mg,収率66%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1066.4657,found 1066.4661。
【0164】
[合成例8] CPN-185の合成
(2-チエニルアセチル)-Trp-Phe(4-Ph)-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-185); Phe(4-Ph):4-フェニル-フェニルアラニン
CPN-185はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(36.1mg,収率63%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1074.5096,found 1074.5071。
【0165】
[合成例9] CPN-186の合成
(2-チエニルアセチル)-Trp-Phe(4-benzoyl)-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-186); Phe(4-benzoyl):4-ベンゾイル-フェニルアラニン
CPN-186はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(14.9mg,収率26%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1102.5045,found 1102.5078。
【0166】
[合成例10] CPN-188の合成
(2-チエニルアセチル)-Ala(3-Bzt)-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-188); Ala(3-Bzt):3-ベンゾチオフェニル-アラニン
CPN-188はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(43.6mg,収率65%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1054.4462,found 1054.4504。
【0167】
[合成例11] CPN-190の合成
(2-チエニルアセチル)-Phe(4-benzoyl)-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-190); Phe(4-benzoyl):4-ベンゾイル-フェニルアラニン
CPN-190はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(22.8mg,収率33%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1102.5063,found 1102.5045。
【0168】
[合成例12] CPN-191の合成
(2-チエニルアセチル)-Dph-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-191); Dph:3,3-ジフェニルアラニン
CPN-191はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(50.0mg,収率66%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1074.5096,found 1074.5071。
【0169】
[合成例13] CPN-217の合成
(2-チエニルアセチル)-Trp-Tic-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-217); Tic:1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸
CPN-217はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(22.5mg,収率41%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1010.4783,found 1010.4778。
【0170】
[合成例14] CPN-218の合成
(2-チエニルアセチル)-Trp-Tpi-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-218); Tpi:1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸
CPN-218はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(11.8mg,収率21%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)895.5154,found 895.5153。
【0171】
[合成例15] CPN-222の合成
(3-ピリジンプロピオニル)-Ala(2-Naph)-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-222) ;Ala(2-Naph):3-(2-ナフチル)アラニン
CPN-222はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(39.2mg,収率69%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1057.5484,found 1057.5479。
【0172】
[合成例16] CPN-223の合成
(3-ピリジンプロピオニル)-Ala(2-Naph)-Phe(4-Ph)-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-223); Ala(2-Naph):3-(2-ナフチル)アラニン、 Phe(4-Ph):4-フェニル-フェニルアラニン
CPN-223はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(22.0mg,収率38%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1049.5688,found 1049.5693。
【0173】
[合成例17] CPN-259の合成
Ala(2-thienyl)-Trp-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-259); Ala(2-thienyl):3-(2-チエニル)アラニン、CPN-259のN末端は未修飾(すなわち、水素原子)である。
【0174】
CPN-259はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(31.6mg,収率56%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1066.5157,found 1066.5162。
【0175】
[合成例18] CPN-261の合成
(n-ヘキサノイル)-Ala(2-thienyl)-Trp-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-261); Ala(2-thienyl):3-(2-チエニル)アラニン
CPN-261はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(35.0mg,収率57%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1164.5889,found 1164.5881。
【0176】
[合成例19] CPN-262の合成
(n-デカノイル)-Ala(2-thienyl)-Trp-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-262); Ala(2-thienyl):3-(2-チエニル)アラニン
CPN-262はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(15.2mg,収率24%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1220.6515,found 1220.6512。
【0177】
[合成例20] CPN-265の合成
(2-チエニルアセチル)-Trp(1-Me)-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-265); Trp(1-Me):1-メチルトリプトファン
CPN-265はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(14.6mg,収率34%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1051.4978,found 1051.5045。
【0178】
[合成例21] CPN-266の合成
(2-チエニルアセチル)-Trp-Trp(1-Me)-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-266); Trp(1-Me):1-メチルトリプトファン
CPN-266はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(18.4mg,収率40%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1051.4978,found 1051.5070。
【0179】
[合成例22] CPN-267の合成
(2-チエニルアセチル)-Trp-(α-Me)Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-267); (α-Me)Trp:α-メチルトリプトファン
CPN-267はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(24.7mg,収率56%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1051.5048,found 1051.5059。
【0180】
[合成例23] CPN-276の合成
(2-チエニルアセチル)-Trp(1-Me)-(α-Me)Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-276); Trp(1-Me):1-メチルトリプトファン、 (α-Me)Trp:α-メチルトリプトファン
CPN-276はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(8.1mg,収率17%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1065.5205,found 1065.5211。
【0181】
[合成例24] CPN-277の合成
(2-チオフェンカルボニル)-Trp-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-277)
CPN-277はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(13.8mg,収率33%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1023.4735,found 1023.4765。
【0182】
[合成例25] CPN-278の合成
(2-フランカルボニル)-Trp-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-278)
CPN-278はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(16.9mg,収率42%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1007.4964,found 1007.4966.
[合成例26] CPN-279の合成
(ピロール-2-カルボキシル)-Trp-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-279)
CPN-279はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(5.4mg,収率13%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1006.5124,found 1006.5158。
【0183】
[合成例27] CPN-280の合成
(2-ピリジルアセチル)-Trp-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-280)
CPN-280はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(35.0mg,収率64%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1032.5280,found 1032.5260.
[合成例28] CPN-281の合成
(3-ピリジルアセチル)-Trp-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-281)
CPN-281はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(32.7mg,収率63%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1032.5280,found 1032.5275。
【0184】
[合成例29] CPN-282の合成
(4-ピリジルアセチル)-Trp-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-282)
CPN-282はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(21.4mg,収率39%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1032.5280,found 1032.5286。
【0185】
[合成例30] CPN-283の合成
(1H-イミダゾールアセチル)-Trp-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-283)
CPN-283はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(27.7mg,収率67%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1021.5233,found 1021.5227。
【0186】
[合成例31] CPN-284の合成
(5-ブロモ-2-チエニルアセチル)-Trp-Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-284)
CPN-284はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(28.5mg,収率56%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1115.3997,found 1115.4026。
【0187】
[合成例32] CPN-285の合成
(3-ピリジルプロピオニル)-Ala(2-Naph)-(α-Me)Trp-Arg-Pro-Arg-Asn-NH (CPN-285); Ala(2-Naph):2-ナフチルアラニン、(α-Me)Trp:α-メチルトリプトファン
CPN-285はRink Amide resin(0.56 mmol/g,渡辺化学工業株式会社)73mg(0.041mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(28.2mg,53%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1071.5641,found 1071.5662。
【0188】
[合成例33] CPN-298の合成
(2-ナフチルオキシアセチル)-Tic-Arg-Pro-Arg-Asn-NH (CPN-298); Tic:1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸
CPN-298はRink Amide resin(0.56mmol/g,渡辺化学工業株式会社)175mg(0.098 mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(51.2mg,47%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)884.4531,found 884.4526。
【0189】
[合成例34] CPN-124の合成(比較例)
(3-ピリジンプロピオニル)-Ala(2-Naph)-Phe-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-124); Ala(2-Naph):3-(2-ナフチル)アラニン
CPN-124はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(54.5mg,収率95%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1018.5375,found 1018.5395。
【0190】
[合成例35] CPN-125の合成(比較例)
(2-チエニルアセチル)-Trp-Phe-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-125)
CPN-125はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(39.1mg,収率69%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)998.4783,found 998.4792。
【0191】
[合成例36] CPN-170の合成(比較例)
(2-チエニルアセチル)-Trp-Phe(4-F)-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-170、ヘキサペプチド5d); Phe(4-F):4-フルオロ-フェニルアラニン
CPN-170はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(32.0mg,収率59%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1016.4689,found 1016.4673。
【0192】
[合成例37] CPN-270の合成(比較例)
(3-ピリジンプロピオニル)-Ala(2-Naph)-(α-Me)Phe-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (CPN-270); Ala(2-Naph):3-(2-ナフチル)アラニン、 (α-Me)Phe:α-メチルフェニルアラニン
CPN-270はRink Amide resin(0.58mmol/g,渡辺化学工業株式会社)75mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(33.2mg,収率76%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)1032.5532,found 1032.5525。
【0193】
[合成例38] CPN-111の合成(比較例)
(2-ナフチルオキシアセチル)-Phe-Arg-Pro-Arg-Asn-NH (CPN-111)
CPN-111はRink Amide resin(0.55mmol/g,渡辺化学工業株式会社)80mg(0.044mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(46.6mg,96%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)872.4531,found 872.4531。
【0194】
[合成例39] hNMUの合成(比較例)
Phe-Arg-Val-Asp-Glu-Glu-Phe-Gln-Ser-Pro-Phe-Ala-Ser-Gln-Ser-Arg-Gly-Tyr-Phe-Leu-Phe-Arg-Pro-Arg-Asn-(NH) (hNMU)
hNMUはRink Amide resin(0.55mmol/g,渡辺化学工業株式会社)100mg(0.055mmol)を用いて合成例1と同様の手法により合成及び精製した(92.8mg,収率48%)。
HRMS(ES+)calcd for(M+ H)3079.5291,found 3079.5210。
【0195】
<NMURアゴニスト活性評価>
各ペプチドのアゴニスト活性評価は以下の手法により実施した。結果(1000nMにおけるヒトニューロメジンU(hNMU)のアゴニスト活性を100(%)としたときの、相対アゴニスト活性(%))を表8に示す。また、CPN-267およびhNMUについての活性評価結果を図1Aおよび図1Bに示す。
【0196】
(1)細胞培養
各ヒトニューロメジンU受容体(NMUR1およびNMUR2)をそれぞれ安定発現するチャイニーズハムスター卵巣由来CHO細胞は、1mg/mLのG418を含む10%(v/v)仔ウシ血清(FCS) α-MEM-nucleoside(GIBCO)培地を用いて、37℃、5%(v/v)COインキュベータ内で培養した。
【0197】
(2)in vitroアゴニスト活性評価
96 well black-walled plate with clear bottom(Iwaki)にCHO細胞を1ウェルあたり2.0×10 cells(150μLのDMEM(10%(v/v)のウシ胎児血清(FBS)を含む)となるように播種し、18時間培養した。翌日、最終濃度が4μMとなるようにアッセイバッファー(ハンクス平衡塩溶液(HBSS), 10mM HEPES, 2.5mMプロベネシド, 1%(v/v)FCS, pH7.4)にて調製した細胞内カルシウム濃度蛍光指示薬 Fluo-4 AM(Promega)溶液100μLを各ウェルに添加した。この細胞を37℃で40分間培養したのち、アッセイバッファーにて4回洗浄した後、fluorometric imaging plate reader(Molecular Device)へセットした。ペプチドはストック溶液として20mMになるようジメチルスルホキシド(DMSO)を用いて溶解させ、4℃で保存した。細胞に添加する1時間前に0.05%(v/v)ウシ血清アルブミン(BSA)および0.001%(v/v) Triton(登録商標) X-100を添加したアッセイバッファーを用いてペプチドのストック溶液を任意の最終濃度に調製し、fluorometric imaging plate readerにてペプチドの細胞内カルシウム動員活性(アゴニスト活性)による蛍光を測定した。
【0198】
【表8】
【0199】
比較例に係るペプチドは、NMUR1選択性が低かった。比較例に係るペプチドCPN-170(非特許文献2)はNMUR1選択性が低く、高濃度であってもフルアゴニスト活性を示さなかった(すなわち、パーシャルアゴニストであった)。
【0200】
一方、表8に示すとおり、本発明に係るペプチドは、NMUR1選択的なアゴニスト活性を示した。また、図1に示すとおり、本発明に係るペプチドCPN-267は、NMUR1選択的なフルアゴニスト活性を示した。本発明に係るペプチドのうち、CPN-277、CPN-278、CPN-282、およびCPN-283は100nMにおいて、CPN-267と同様にフルアゴニスト活性(NMUR1相対活性:93%以上)を示した。
【0201】
<ヒト血清中安定性評価>
(CPN-171、CPN-267)
CPN-171(合成例1)およびCPN-267(合成例22)のヒト血清中での安定性を検証するため以下の手法により評価した。
【0202】
20mMペプチドストック溶液を、一旦RPMI1640培地にて1mMに希釈した。その後、このペプチド希釈液20μLを、最終濃度50μMとなるように、ヒト血清(Sigma)希釈液(100μlのヒト血清に対して、280μlのRPMI1640培地を添加して希釈)380μLに対して添加した(最終血清濃度25%)。37℃で任意の時間(10分間)インキュベートした後、Sep-pak plus C18(Waters)固相カートリッジにてペプチド画分を回収し、逆相HPLC(カラム:Chromolith(登録商標)Performance RP-18e 100-4.6mm;グラジエント:%B 15-55、10min[A:HO-0.1%(v/v)TFA;B:MeCN];流速:2.5mL/min;測定波長:220nm)にて残存率(%)を解析した。なお、残存率(%)は、血清に添加したインキュベート前のペプチドの量を100%としたときの、インキュベート後の溶液中におけるペプチドの量を表す。
【0203】
その結果を図2に示す。CPN-171は、インキュベート10分後に添加量の約60%が残存していた。一方、CPN-267は、インキュベート10分後であっても90%以上が残存していた。以上の結果より、CPN-171およびCPN-267のいずれも優れた血中安定性を示すものの、Xのα炭素にメチル基を導入することにより、血中安定性がより一層優れたものとなることが分かる。
【0204】
(CPN-170、CPN-267)
上記と同様の手法に準じて、CPN-170(合成例36)およびCPN-267のヒト血清中での安定性を経時的に測定した。その結果を図3に示す。CPN-267は180分後に40%以上残存していた。一方、比較例であるCPN-170は、10分後に25%以下、20分後には約5%の残存率であった。
【0205】
(CPN-124、CPN-223)
上記と同様の手法に準じて、CPN-124(合成例34)およびCPN-223(合成例16)のヒト血清中での安定性を経時的に測定した。その結果を図4に示す。CPN-223は180分後に80%以上残存していた。この結果から、Xのアミノ酸残基の側鎖の置換基Sを、フェニル基等の芳香環を含有する置換基とすることにより、血中安定性がより一層優れたものとなることが分かる。一方、比較例であるCPN-124は、20分後に約30%、40分後には約7%の残存率であった。
【0206】
<ラット血清中安定性評価>
(CPN-170、CPN-267)
上記の「ヒト血清中安定性評価」におけるヒト血清をラット血清(Sigma)に変更した以外は同様の手法により、CPN-170およびCPN-267のラット血清中での安定性を評価した。
【0207】
その結果を図5に示す。CPN-267は180分後に50%以上残存していた。一方、比較例であるCPN-170は、10分後に45%以下、20分後には約12%の残存率であった。
【0208】
(CPN-124、CPN-223)
上記と同様の手法に準じて、CPN-124(合成例34)およびCPN-223(合成例16)のヒト血清中での安定性を経時的に測定した。その結果を図6に示す。CPN-223は180分後に約60%残存していた。一方、比較例であるCPN-124は、20分後に約32%、40分後には約8%の残存率であった。
【0209】
<ラット血中動態解析>
(CPN-170、CPN-267)
CPN-170(合成例36)およびCPN-267(合成例22)のラット血中での動態を解析するため以下の手法により評価した。
【0210】
ペプチド溶液(1mg/100μL)を、Wisterラット(220-250g)の頸静脈より投与し、任意の時間(1~240分)経過後、あらかじめカニュレーションした大腿部動脈より採血し、LC/MSにてペプチドの血中動態を解析した。
【0211】
その結果を図7に示す。図7に示す結果からわかるように、CPN-267はラット血中においてCPN-170に比較して良好な血中動態を示した。一方、CPN-170はCPN-267よりも速やかにラットの血中から消失した。
【0212】
<マウス皮下投与における体重増加抑制活性評価>
(CPN-267)
CPN-267(合成例22)のマウス皮下投与(s.c.)による体重増加抑制効果を検証するため、以下の手法により評価を行った。
【0213】
CPN-267を6.8mg/kgの用量でddy雄性マウス(28-31g)の皮下に3回(0、24、48時間)連日投与した(対照として生理食塩水を同様に投与した)。初回投与後0、12、36、60、84、108時間においてマウスの体重を各々測定した。
【0214】
その結果を図8に示す。図8に示す結果からわかるように、CPN-267は、皮下投与時にマウスの体重増加を有意に抑制した。
【0215】
本出願は、2017年1月20日に出願された日本特許出願番号2017-8302号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として組み入れられている。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
0007181550000001.app