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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】締着力検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20221124BHJP
   G01M 13/00 20190101ALN20221124BHJP
【FI】
G01L5/00 103D
G01M13/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019013893
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2019132841
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2018013217
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】598013404
【氏名又は名称】トーヨーメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸大
(72)【発明者】
【氏名】大村 廉
(72)【発明者】
【氏名】大久保 敦之
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-238511(JP,A)
【文献】実開昭63-165540(JP,U)
【文献】特開2004-316093(JP,A)
【文献】実開昭58-120945(JP,U)
【文献】登録実用新案第3188661(JP,U)
【文献】特開2006-162394(JP,A)
【文献】特開2002-173935(JP,A)
【文献】特開2011-149812(JP,A)
【文献】実開平05-075634(JP,U)
【文献】特開2006-220464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0010969(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0322988(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00,5/24,1/22
G01M 13/00-13/045,99/00,
F16B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
締着手段の軸部を挿通するための挿通部を有し、座金に加えてまたは座金に代えて使用する締着強度検出装置であって、
前記挿通部を形成しつつ適宜な肉厚の壁面によって筒状に形成され、前記締着手段による締着力を伝達する締着力伝達部と、
前記締着力伝達部の壁面から放射状に延出される適宜な肉厚の板状部材に構成され、該締着力伝達部とともに締着力を伝達することができる複数の隔壁部と、
前記締着力伝達部の壁面もしくは前記隔壁部の表面のいずれかまたは双方に設置されるひずみセンサと
を備えることを特徴とする締着強度検出装置。
【請求項3】
前記空隙部のうちのいずれかに、前記ひずみセンサの出力値を検出する検出部およびその検出値を送信するための送信部を備え、該検出部および該送信部は、前記電源に接続され、または他の電源に接続された状態で該電源とともに設置されるものである請求項2に記載の締着強度検出装置。
【請求項4】
隣接する前記隔壁部の外側端部の間には、前記空隙部を包囲するための閉鎖壁が設けられている請求項2または3に記載の締着強度検出装置。
【請求項5】
前記締着力伝達部および隔壁部の端面に対して同時に当接するように略環状に形成され、前記締着手段による締着力が作用する方向の両側に配設された二つの締着当接部をさらに備えるものである請求項1~4のいずれかに記載の締着強度検出装置。
【請求項6】
前記締着当接部の少なくとも一方は、前記締着力伝達部および該隔壁部と一体的に形成されている請求項に記載の締着強度検出装置。
【請求項7】
前記締着当接部は、前記締着力伝達部または前記隔壁部による当接を受けない領域において、該締着力伝達部の壁面もしくは該隔壁部の表面に設置されるひずみセンサに加えて、ひずみセンサが設置されるものである請求項5または6に記載の締着強度検出装置。
【請求項8】
前記締着手段が座金とともに使用される場合において、前記締着力伝達部の外周は、前記座金の外周よりも小径としてなり、隔壁部の外側端部は、該座金の外周よりも外方に突出してなる請求項1~7のいずれかに記載の締着強度検出装置。
【請求項9】
前記隔壁部は、前記締着手段による締着力の作用方向の両側において該作用方向に直交する端面部を備え、片側の端面部における総面積と、前記の締着力伝達部の端面の面積との総和が、使用されるべき座金の片側表面の面積よりも大きくしてなる請求項8に記載の締着強度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトおよびナット等によって形成される締着手段によって締着される際の締着力を検出するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ボルトおよびナット等の締着手段による締着は、被締着材料を固定するために用いられるが、締着力の程度によってそれらの固定状態が定まる。また、一度締着固定したとしても、長期間の締着状態の継続中に生じる環境の変化によって、その締着状態も変化することがある。例えば、被締着材料が振動することにより、締着手段に緩みを生じさせることがあり、また、温度変化によって締着手段が膨張・収縮を繰り返すうちに締着力が徐々に低下することもある。さらに、ボルトに腐食や亀裂が生じることによっても締着力が低下することがある。
【0003】
上記のような事情を考慮し、以前より締着力の強さ(特に緩みの発生)を検出する方法が提案されている。締着力の緩みを検出するための手段としては、専らボルト頭部と被締着材料との間に作用する圧力を測定するもの(特許文献1参照)、または二つの被締着材料が締着手段によって締着される場合の両被締着材料の中間に作用する圧力を測定するもの(特許文献2参照)があった。これらの従来技術は、上述の圧力の低下をもって緩みの発生とするものであり、その圧力測定には圧電素子が使用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭60-39523号公報
【文献】特開平5-52684号公報
【文献】特開2014-228465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述の二つの文献に開示される構成は、締着部材と被締着材料との間、または被締着材料同士の間に、それぞれ圧電素子を挟持させるものであり、当該圧電素子の変形による締着力の低下が懸念されるうえ、強力な締着力が圧電素子に作用することから、長期間使用の場合の耐久性についても懸念されるものであった。さらに、ボルトないしナットにセンサ設置のための加工を必要とすることから、それらの強度低下について懸念された。そこで、取付金具の内部に感圧センサを配置することによって、締着部材または被締着材料の間に圧電素子を直接挟持させることなく、締着力の状態を検出する装置が開発されるに至った(特許文献3参照)。
【0006】
上記構成の発明は、ゴム(またはエラストマ)製の絶縁体に金属等の導電粒子を分散状態で混入させた感圧センサを使用するものであるところ、この感圧センサを取付金具の内部に配置される二つの電極の中間に積層させることにより、圧力が作用しない状態では導電粒子は分散状態となるため絶縁材料として機能するが、圧力が作用する場合には、圧縮変形して導電粒子が接触して導電材料に変化するものである。また、当該圧縮変形の程度に応じて電気抵抗値が変化することから、その抵抗値を解析することにより締着力を算出し得るものとなっていた。従って、締着手段の緩みの状態を無段階で計測することができるものであった。
【0007】
しかしながら、上記構成の発明は、締着手段が取付金具を介して被締着材料を締着固定するものであることから、仮に当該取付金具は変形しないものであるとしても、当該取付金具を介して、少なくとも感圧センサを圧縮変形させることが必要となっていた。そのため、締着力の検出においては、感圧センサの圧縮変形によることから、緩みのない状態で締着力が作用している間は当該感圧センサの変形が継続することとなり、当該感圧センサの耐久性について懸念を生じさせることとなっていた。さらに、感圧センサを介して被締着材料を締着固定することは、感圧センサの圧縮変形が経時的変化を生じた場合に、締着力の低下を生じてしまうことが懸念された。
【0008】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、センサ類を締着手段によって圧縮することなく、締着力の状態(締着強度)を検出し得る検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、締着手段の軸部を挿通するための挿通部を有し、座金に加えてまたは座金に代えて使用する締着強度検出装置であって、前記挿通部を形成しつつ適宜な肉厚の壁面によって筒状に形成され、前記締着手段による締着力を伝達する締着力伝達部と、前記締着力伝達部の壁面から放射状に延出される適宜な肉厚の板状部材に構成され、該締着力伝達部とともに締着力を伝達することができる複数の隔壁部と、前記締着力伝達部の壁面もしくは前記隔壁部の表面のいずれかまたは双方に設置されるひずみセンサとを備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、締着手段によって作用すべき締着力は、締着力伝達部と隔壁部とに分散して作用するとともに、これらを介して被締着材料に伝達されることができる。このとき、これらの締着力伝達部および隔壁部は、適宜な肉厚を有していることで、伝達すべき締着力を減衰させることなく被締着材料に作用させることができる。また、締着力の検出には、締着力伝達部の壁面または隔壁部の表面に設けられるひずみセンサによることから、これらに対する圧縮ひずみの測定値から圧縮応力(締着力)を算出することが可能となる。なお、締着力伝達部の複数個所にひずみセンサを設置し、または複数の隔壁部の表面に複数のひずみセンサを設置することにより、軸方向に均等に作用する締着力の状態を検出することも可能となる。
【0011】
上記構成の発明において、前記隔壁部は、隣接する該隔壁部の中間によって複数の空隙部を形成するものであり、前記空隙部のいずれかに設置され、前記ひずみセンサに電力を供給するための電源を備える構成とすることができる。
【0012】
上記構成によれば、筒状の締着力伝達部から放射状に延出する壁面部によって、複数の空隙部が形成されることとなり、この空隙部は、少なくとも締着力伝達部と隔壁部によって締着力が作用しない領域となるため、当該空隙部に電源を設置することができる。この電源はひずみセンサに対し、作動に必要な電力を供給するものであるから、締着強度検出装置ごと(すなわち締着手段ごと)に個別に電力を供給できるとともに、この電力供給を継続させれば、ひずみセンサによる継続的な測定が可能となる。ひずみセンサの作動に必要な電力供給とは、センサの制御回路に対する電力供給を意味するが、ひずみセンサとしてひずみゲージを用いる場合は、当該ひずみゲージを構成する回路に対する電圧印加のために供されることを意味するものである。
【0013】
上記構成の発明の場合には、前記空隙部のうちのいずれかに、前記ひずみセンサの出力値を検出する検出部およびその検出値を送信するための送信部を備え、該検出部および該送信部は、前記電源に接続され、または他の電源に接続された状態で該電源とともに設置される構成とすることができる。
【0014】
上記構成によれば、ひずみセンサから出力されるひずみ量(検出値)を検出したうえ、その検出値を外部へ送信させることができる。なお、前記電源は、当該ひずみセンサの作動に必要な電力を供給するとともに、検出部および送信部の作動のための電源としても機能させるものとすることができ、他の電源とともに設置する場合には、検出部および送信部に対する電源供給を個別に行うことができる。これらの設置場所は、空隙部のいずれかであり、一箇所にまとめて設置する場合のほか、複数の空隙部に分けて設置してもよく、空隙部の広さと設置物の大きさによって適宜判断されることとなるものである。
【0015】
上記構成の各発明においては、前記締着力伝達部および隔壁部の端面に対して同時に当接するように略環状に形成され、前記締着手段による締着力が作用する方向の両側に配設された二つの締着当接部をさらに備える構成とすることができる。
【0016】
上記構成によれば、締着力伝達部および隔壁部の端面が、締着力が作用する両側において締着当接部に当接されることから、一方の締着当接部は、締着手段による締着力を分散しつつ締着力伝達部および隔壁部に伝達することとなり、他方の締着当接部は、締着力伝達部および隔壁部によって伝達される締着力を被締着材料に伝達することとなる。これにより、締着力は締着力伝達部および隔壁部の双方に作用することから、荷重を分散することができ、締着力に耐え得る強度を維持させることができる。
【0017】
上記構成の発明の場合には、前記締着当接部の少なくとも一方は、前記締着力伝達部および該隔壁部と一体的に形成されている構成とすることができる。
【0018】
上記構成によれば、締着当接部が締着力伝達部および隔壁部と一体的に形成されることから、隔壁部によって形成される空隙部には底面部もしくは天板部(またはその双方)を有することとなり、前述の電源等を予めこれらの底面部等に設置することができる。
【0019】
上述の締着当接部を備える構成による本発明あっては、該締着当接部は、前記締着力伝達部または前記隔壁部による当接を受けない領域において、該締着伝達部の壁面もしくは該隔壁部の表面に設置されるひずみセンサに代えて、またはこれらに加えて、ひずみセンサが設置されるように構成することができる。なお、隣接する隔壁部の間に形成される空隙部のいずれかに電源が設置される構成の場合には、当該電源から電力の供給を受ける構成とすることができるものである。
【0020】
上記構成によれば、締着当接部は、締着手段による締着力を分散させるものであり、当然に締着力が作用することとなるから、締着当接部そのものにひずみを生じることがあり、効果的にひずみの程度を計測できるものであれば、当該締着当接部にひずみセンサを設けることにより、締着力強度を測定し得るものとなる。そこで、締着当接部のみでひずみを計測し、締着力強度の変化を検出することのほか、締着力伝達や隔壁部におけるひずみの状態に加えて、締着当接部のひずみを計測することにより、締着力の変化の状態を検出することができる。なお、締着当接部におけるひずみは、表面の引張応力(伸び)またはせん断応力(たわみ)によって、締着力を算出することが可能となる。
【0021】
さらに、上記各構成の発明においては、隣接する前記隔壁部の外側端部の間には、前記空隙部を包囲するための閉鎖壁が設けられている構成としてもよい。
【0022】
上記構成によれば、締着手段によって締着された状態において、その周辺、特に空隙部の周辺を外部から閉鎖させることができ、空隙に設置される前述の電源等の離脱を抑制しつつ外部からの昆虫類の侵入や部品等の混入を排除し得ることとなる。特に、締着当接部を設ける構成の場合には、空隙部が閉鎖された空間状態とすることができ、外部との遮蔽効果を得ることができる。
【0023】
上記各構成の発明においては、前記締着手段が座金とともに使用される場合において、前記締着力伝達部の外周は、前記座金の外周よりも小径としてなり、隔壁部の外側端部は、該座金の外周よりも外方に突出してなることが好ましい。
【0024】
上記構成の場合には、締着手段の使用に際して座金を用いる場合、締着力は第1に座金を介して伝達されることとなるから、この座金の外周(外径)よりも締着力伝達部の外周(外径)を小さくすることにより、締着力は締着力伝達部に集中して作用させることができる。このとき、ひずみセンサを締着力伝達部の壁面に設けることにより、ひずみ量の計測は、集中する圧力の計測値として得ることができる。また、隔壁部の外側端部を座金の外周よりも外方とすることにより、座金を介して伝達される締着力は、隔壁に分散することができることから、締着力を締着力伝達部に集中させる一方で適当に分散させることができ、締着力に耐え得る強度を維持させることができる。特に、締着当接部を有する構成では、当該締着当接部は座金よりも広い面積を有する構成となることから、座金作用する締着力は締着当接部を介して分散させることができる。
【0025】
上記構成の発明において、前記隔壁部は、前記締着手段による締着力の作用方向の両側において該作用方向に直交する端面部を備え、片側の端面部における総面積と、前記の締着力伝達部の端面の面積との総和が、使用されるべき座金の片側表面の面積よりも大きくしてなることが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、座金を介して締着力が作用する場合、座金の表面よりも広い面積によって荷重を伝達することができることとなり、その荷重により締着力伝達部および隔壁部が受ける応力を小さくすることができる。特に、締着当接部を設ける構成の場合には、これらの端面の全体に分散させることができることから、締着力伝達部および隔壁部に作用する応力を小さくし、耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、締着力伝達部および隔壁部によって、十分な耐久力を有する構成となり、これを被締着材料に伝達するときの部材に生ずるひずみ量をひずみセンサで検出する構成であるから、センサ類は締着力によって圧縮されることはない。ひずみセンサを締着当接部に設置する場合も同様である。また、締着力伝達部および隔壁部のいずれか一方、または双方におけるひずみ量を検出し、さらに、これに代えて、またはこれに加えて締着当接部におけるひずみ量を検出することから、当該ひずみ量から容易に締着力を算出し得るものであり、継続して締着力が作用する部分での計測であるため、連続的な締着強度の検出を可能にする。これらの検出値を送信部から送信させることにより、特定の管理装置によって送信データを受信することができ、締着強度の状態を集中管理することも可能となる。このとき、設置場所における温度や湿度または振動量などの周辺の環境情報を同時に入力し得る場合には、締着手段に緩みが生じた場合の原因として、周辺環境との因果関係を特定することに利用することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施形態の概要を示す説明図である。
図2】第1の実施形態の平面視における状態を示す説明図である。
図3】第1の実施形態の使用態様を示す説明図である。
図4】第1の実施形態の使用態様を示す説明図である。
図5】第2の実施形態の概要を示す説明図である。
図6】第2の実施形態の平面視における状態を示す説明図である。
図7】第2の実施形態の変形例1の概要を示す説明図である。
図8】第2の実施形態の変形例2の概要を示す説明図である。
図9】第2の実施形態の他の変形例の概要を示す説明図である。
図10】本発明の他の実施形態の概要を示す説明図である。
図11】締着強度検出装置の使用形態を示す説明図である。
図12】第1の実施形態の使用態様における変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1の実施形態>
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1に実施形態に係る締着強度検出装置の概略を示す図である。本実施形態の締着強度検出装置1は、締着力伝達部2と、この締着力伝達部2から放射状に延出する複数(図は6個)の隔壁部3とで構成されたものである。
【0030】
締着力伝達部2は、中央に挿通部(貫通孔)21が設けられ、締着手段(例えば、ボルトの軸部)を挿通可能としている。また、十分な幅寸法W1を有する筒状(円筒状)に形成されたものであり、締着手段等と間で十分に当接可能(締着力の伝達可能)な面積を保持させている。さらに、締着力が作用する方向(長さ方向)の肉厚H1は幅寸法W1に比較して十分に小さく構成され、締着力(圧縮力)の作用により座屈しないような形状としている。
【0031】
隔壁部3は、締着力伝達部2と一体的に構成されており、隣接する相互の隔壁部3が、等間隔(同じ中心角)で分散して設けられている。締着力が作用する方向に同じ高さ方向の肉厚H2で構成されるとともに、それぞれの隔壁部3の幅寸法W2は、十分に当接可能な面積を有する程度としている。隔壁部3は、隣接する隔壁部3との間に空隙部4を形成する機能のほかに、締着力伝達部2とともに、締着力を伝達する機能を有するものであるため、上記当接可能な面積を有しつつ、肉厚H2を幅寸法W2に比較して十分に小さくすることにより座屈しないように構成したものである。
【0032】
上記構成は、平板状部材を所定の形状(円筒状と放射状)に切り出す方法、またはプレス加工によって設けることができる。両者2,3が同じ高さ寸法であることから、締着手段がボルトおよびナットである場合には、これらの締着面に同時に当接することが可能であり、その締着手段による締着力を分散しつつ支持(伝達)することができるものである。締着手段が、座金を使用する場合には、当該座金によって分散される圧縮力を双方によってさらに分散させるものとしている。
【0033】
図は、さらに、締着力が作用する方向(上下方向)にそれぞれ締着当接部10a,10bを配置するものとしており、この締着当接部10a,10bにボルト頭部や座金などが当接することにより、作用する圧縮力(締着力)の全部を締着当接部10a,10bに作用させたうえで、締着力伝達部2および隔壁部3に分散させることができるようにしている。締着当接部10a,10bは、いずれも適宜な肉厚の概略円環状とする部材であり、中央には、締着力伝達部2と同じ程度の径による挿通部(貫通孔)11a,11bが設けられ、締着手段を挿通可能としている。この締着当接部10a,10bの外径を締着力伝達部2の外径よりも大きく構成することにより、締着力伝達部2と隔壁部3の端面は、この締着当接部10a,10bに対して、同じ面が同時に当接されることとなる。このような構成により、締着手段による締着力を受ける締着当接部10bは、その締着力を分散し、他方の締着当接部10aは、締着力伝達部2および隔壁部3から伝達される締着力を被締着材料に分散しつつ伝達することとなる。なお、概略円環状とは、外縁形状が円形または他の多角形状を含むこと、および環状の周方向に連続しない(径方向に切断部を有する)場合を含むことを意味している。
【0034】
ところで、図2(a)に示すように、中央に配置される円筒状の締着力伝達部2から隔壁部3を放射状に延出させる構成であるから、隣接する隔壁部3の間には、それぞれ複数の空隙部4が形成される。この空隙部4を利用して、例えば、電源等(図はボタン電池を例示)5を配置することができる。さらに、この空隙部4を介して、締着力伝達部2の壁面22または隔壁部3の表面31が、いずれも外方に露出した状態となっていることから、これらの面22,31にひずみセンサ6a,6bを装着させることができるようになっている。
【0035】
ひずみセンサ6a,6bは、締着力伝達部2または隔壁部3に対する圧縮力によるひずみ量を測定するために設けられており、いずれか一方または双方を使用することができる。いずれの形態を選択するかは、締着力がこれらに作用するか否かによって決定することができる。締着力伝達部2のみに締着力が集中する場合は、当該締着力伝達部2にのみひずみセンサ6aを設けるべきであり、双方に締着力が伝達される場合は、双方にひずみセンサ6a,6bを設けるか、または隔壁部3のみにひずみセンサ6bを設けることができる。また、ひずみセンサ6a,6bは、一箇所のみでなく、複数設置することが好ましい。例えば、挿通部(貫通孔)21の軸心を中心として、対称な位置になる2箇所、または6箇所に設けることにより、全体に作用する圧縮力に応じたひずみ量を測定することができる。これは、例えば、締着手段による締着力が軸心に対して偏って作用している場合において、その締着力の全体が好適に作用しているか否かを判断する材料となり得るものである。
【0036】
また、締着力の作用状態は、締着力伝達部2または隔壁部3のいずれかにおいて測定されれば、その状態変化を検出することが可能となるが、双方について検出することによって、当該締着強度検出装置1の全体の変形量を検出し、装置の強度を検証することも可能となる。
【0037】
このような締着力伝達部2および隔壁部3は、平面視(底面視も同様)において、適宜面積の平面(端面)を有する構成としており、締着手段によって付与される締着力をこれらの平面が支持する(伝達する)ことができるような構成としている。従って、それぞれの平面の面積は、締着力を伝達できる程度とする必要がある。例えば、締着手段としてボルトおよびナットを使用する場合であって、座金を使用しないときには、締着力伝達部2の平面は、ボルト頭部の当接面(軸部側の軸部を除く範囲)と同程度とすることが好ましい。これは、ボルトによる締着力を締着力伝達部2に集中させるためである。この場合の隔壁部3は、締着力伝達部2の立設状態を維持させるための補強部材として機能することとなる。
【0038】
他方、座金を使用することを想定する場合には、図2(b)に示すように、締着力伝達部2の外周は、座金が当接する領域(図中仮想円)Pの外周よりも小径とし、また、隔壁部3の先端(外側端部)は、当該領域Pよりも外方に達する長さで延出させるものとしている。これは、座金によって締着力が分散されたものを、さらに締着力伝達部2および隔壁部3に分散させるためである。このような構成の場合には、隔壁部3も締着力を伝達する機能を発揮することとなる。なお、この場合の締着力伝達部2および隔壁部3の各平面(端面)の両者における総面積は、当該座金の当接する領域Pの面積よりも大きくすることにより、座金に伝達した締着力を分散させることができるものである。
【0039】
上記のような構成による締着強度検出装置1は、締着手段に対し、座金のように使用することができる。図3は、その使用態様を示すものであり、(a)はボルト7の軸部71に締着強度検出装置1を装着する前の状態を示し、(b)は当該軸部71に締着強度検出装置1を装着した状態を示している。なお、図の締着強度検出装置1は、上下に配置した締着当接部10a,10bとともに一体化させたものを例示しているが、締着強度検出装置1を単体で使用してもよい。また、締着手段としては、ボルト7およびナット8によるものとし、座金9を用いる場合を例示している。
【0040】
このような締着手段7,8による締着強度を検出する場合は、図のように、一体化した締着強度検出装置1の中央に形成される挿通部(貫通孔)21にボルト7の軸部71を挿通させることにより、当該軸部71に対して鍔状に装着することができる。この状態でボルト7の頭部72まで移動させることにより座金のように使用することができるのである。締着のためにボルト7に螺合するナット8を使用することにより、その中間に配置する被締着材料を両側から締着することができるものである。
【0041】
被締着材料との関係を図4に示している。図は、二つの被締着材料A,Bを接合する状態を示しており、例えば、基礎部分の材料Bに対して設置部材Aを接合するような状態を例示するものである。図4(a)に示されるように、被締着材料A,Bには、予めボルト等7の軸部71が挿通できる貫通孔Aa,Baが設けられ、この貫通孔Aa,Baにボルト等7の軸部71を挿通したうえで、先端側においてナット等8を螺着させることによる。そして、ボルト等7の頭部72を回転させる(締め込む)ことにより、頭部72とナット等8との間隔を小さくすることによって、締着力を作用させるものである。
【0042】
このとき、締着強度検出装置1は、一方の被締着部材Aの表面側に配置され、ボルト等7の頭部72(座金9を用いる場合は座金9)との間に配置される状態なる。従って、この締着強度検出装置1には、ボルト等7による締着力が作用する状態となっている。そのため、当該締着強度検出装置1を構成する締着力伝達部2および隔壁部3が、その締着力の作用を受けるとともに、これを被締着部材Aに伝達することとなるのである。そこで、この締着力伝達部2もしくは隔壁部3のいずれか一方または双方において、ひずみ量を測定することにより、締着力の強度を検出することができるのである。
【0043】
締着力強度は、ひずみセンサ6a,6bを使用して検出されるものであるが、このひずみセンサ6a,6bとして、例えば、一般的なひずみゲージを使用することができる。ひずみゲージを使用する場合には、当該ひずみゲージを構成する回路に電圧を印加し、ひずみゲージの変形に伴う抵抗値の変化によって得られる出力電圧から締着強度を算出することができる。電源等(ボタン電池など)5は、この場合の電圧印加のために使用されることとなる。
【0044】
ひずみゲージを使用する場合に限らず、感圧センサやその他のひずみセンサを使用することにより検出されるひずみ量から締着力を検出することができる。すなわち、締着力は、締着力伝達部2または隔壁部3に対する圧縮力として作用するため、高さ方向の肉厚H1,H2(図1)の変化量からひずみ量を測定し、これを締着力伝達部2または隔壁部3の材料について応力-ひずみ曲線で表される応力特性に応じて圧縮応力(締着力)の大きさを検出することができる。
【0045】
上記のような方法により、本実施形態による締着強度検出装置1による締着強度の検出が可能となる。なお、図4(a)は、締着強度検出装置1をボルト等7の頭部72の側に配置しているが、図4(b)に示すように、ナット等8の側において、当該ナット8と被締着材料Aとの間に配置してもよい。また、締着にはナット8が必須ではなく、被締着材料に雌ネジが刻されたものであれば、当該雌ネジに直接螺合させる場合もあり得る。さらには、図示のように締着当接部10a,10bを設ける構成の場合には、座金9を使用しない形態であってもよい。
【0046】
本実施形態は上記のような構成であるから、締着力伝達部2および隔壁部3が締着力を被締着材料A,Bに伝達するため、締着手段7,8と被締着材料A,Bの間にセンサ類を介在させることがなく、センサ類を締着力によって圧縮する必要がない。これにより、センサ類の耐久性を考慮する必要もないこととなる。また、締着力伝達部2または隔壁部3によるひずみ量の検出はひずみセンサを用いたものであるため、そのひずみ量の変化を継続して測定できることとなり、締着強度の変化の状態を検出することも可能となる。
【0047】
さらに、締着強度検出装置1は、複数の隔壁部3によって複数の空隙部4が形成されることから、この空隙部4には、他の装置を設置することができる。前述のような電源等5としては、前掲の電源(ボタン電池)のほかに、検出部や送信部などの処理部があり、これらを空隙部4に設置することも可能となる。この処理部には、ひずみセンサ6a,6bによる値(検出値)を検出する検出処理部(検出部)とともに、当該検出値を出力データに変換する処理部に加えて、送信機(送信部)を備えるもので構成することにより、ひずみセンサ6a,6bによって検出され得る検出値(出力データ)を所定の管理装置に送信させることも可能となる。なお、電源としては、例示のボタン電池のほか、コイン電池や小型のリチウムイオン電池などの中から適宜選択することができ、その他に空隙部4に収納可能な電源があれば使用することができる。
【0048】
上述のような電源等5、ひずみセンサ6a,6bおよび処理部等は、前記空隙部4のうちのいずれかを選択して設置することができる。すなわち、空隙部4は、隔壁部3の数や幅寸法W2によって、その広さが左右されることとなるため、比較的広い空間が形成される場合は、上記電源等5を一つの空隙部4に設置することが可能であるが、比較的狭い空間となる場合は、個別に設置することとしてもよい。特にひずみセンサ6a,6bをひずみゲージで構成する場合には、薄肉のフィルム状に形成し得ることから、他の部材(ボタン電池など)と同じ空隙部4に設置することができ、複数設置される個々のひずみセンサ6a,6bごとに個別のボタン電池等を同じ空隙部4に設置する形態とすることも可能である。さらには、処理部(検出部および送信部)についても、同じ空隙部4または異なる空隙部4のいずれかを選択することができ、この処理部に電源供給するためのボタン電池等を個別に設置してもよい。
【0049】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図5は、第2の実施形態を示すものである。この図に示されるように、本実施形態の締着強度検出装置1は、締着力伝達部2から放射状に設けられる複数の隔壁部3の幅寸法W2を一定とせず、締着力伝達部2との境界となるべき位置(隔壁部3の基部側端部30a)において最大の幅寸法W2-1を形成し、外側端部30bに向かって、その幅寸法を徐々に縮小させた先細り形状としたものである。従って、隔壁部3の外側端部30bは尖端形状となっている。
【0050】
また、本実施形態における隔壁部3の基部側端部30aは、隣接する相互の隔壁部3と接しており、その相互の隔壁部3の間には、締着力伝達部2の壁面が隔壁部3の壁面31とは明確に区別されていない。そのため、結果的に締着力伝達部2は円筒状に形成されるものではなく、隔壁部3と一体化した状態となり、締着力伝達部2は隔壁部3の基部が連続する部分によって構成されるものである。従って、全体的には、中央に挿通部(貫通孔)21を有する星形状を形成するものとなっている。
【0051】
この場合、ひずみセンサ6a,6bの設置場所としては、締着力伝達部2の壁面を選択することはなく、隔壁部3の側面31のうち、締着力伝達部2の近傍か、先端近傍か、またはその中間かを選択することとなる。
【0052】
上記のような構成の場合には、隔壁部3の外側端部30bの近傍においては、当該隔壁部3の幅寸法W2-2が極めて小さいものとなるため、締着力が作用するときのひずみが比較的大きくなる。従って、当該外側端部30bの近傍にひずみセンサ6cを設置することにより、そのひずみ量の変化が検出しやすくなる。なお、締着手段による締着強度の低下に伴うひずみの変化は、当該外側端部30bにおいてのみ検出できないことを考慮する場合には、その他の位置にもひずみセンサ6a,6bを設置し、総合的なひずみ量の変化により、締着強度を検出することができる。
【0053】
ところで、本実施形態における隔壁部3は、やはり第1の実施形態と同様に、隣接する隔壁部3の間に空隙部4を構成するものである。従って、隔壁部3は、締着力伝達部2とともに締着力を伝達する機能を有するほかに、上記空隙部4を形成する機能をも有するものである。そこで、この空隙部4には、電源等(ボタン電池)5を設置することができるものである。さらに、電源等(ボタン電池)5が設置される空隙部4に、または電源等(ボタン電池)5とは異なる空隙部4に、検出部や送信部などの処理部を設置することも可能である。
【0054】
そこで、略円環状の締着当接部10a,10bを設けることにより、その間にボタン電池や処理部などの電源等5を設置することができるのである。すなわち、図6(a)に示すように、本実施形態における複数の隔壁部3は、全て同じ長さで放射状に延出させていることから、隔壁部3の外側端部30bは、挿通部(貫通孔)と同心円上に位置することとなる。そのため、締着当接部10a,10bの外周円Qが、隔壁部3の全ての外側端部30bに内接する円(仮想円)Rと同程度か、それよりも大きい径を円形とすれば、空隙部4の上下方向に位置する締着当接部10a,10bが対向する表面間に、これらの電池等5(ボタン電池51および処理部52など)を設置し得るものとなる。
【0055】
また、一方において、図6(b)に示すように、座金を使用する場合を想定するときには、隔壁部3の基部側端部30aは、座金が当接する領域(図中仮想円)Pよりも中央に位置する状態となり得るが、隔壁部3の外側端部30bは、当該仮想円Pよりも外方に位置させることにより、締着力伝達部2および隔壁部3の表面(端面)の総面積を大きくし、座金から伝達される締着力を適度に分散するものとしている。
【0056】
本実施形態は、上記のような構成であるから、隔壁部3によって締着力を伝達させることができるとともに、その間に適宜な空間を有する空隙部4を形成し得ることは第1の実施形態と同様である。そのうえ、本実施形態では、隔壁部3が平面視において先細り形状となっていることから、外側端部30bの近傍における幅寸法W2-2を小さくすることができる。この小さな幅寸法W2-2による外側端部30bの近傍において、ひずみセンサ6cによるひずみ量の変化を検出することができることから、締着力全体の変化を比較的詳細に検出させることができる。
【0057】
<第2の実施形態の変形例1>
上記第2の実施形態は、第1の実施形態における隔壁部3の構成を変化させたものであり、その隔壁部3の幅寸法が均一でなくてもよいものである。そこで、同様の構成の趣旨からは、図7に示すように、隔壁部3の基部側端部30aを曲線状とし、また、外側端部30bも尖端ではなく弧状としてもよい。隔壁部3の側部は直線である必要がなく、適宜曲線とした形状であってもよいのである。この場合においても、隔壁部3は、締着力伝達部2とともに締着力を伝達する機能を有するほかに、上記空隙部4を形成する機能をも有するものである。従って、略円環状の締着当接部10a,10bを設けることにより、これらの電源等5(ボタン電池51および処理部52など)をその間に設置することができるものとすることができる。この場合の締着当接部10a,10bの外周円Qの径は、隔壁部3の外側端部30bの仮想円Rの径以上としてよい。
【0058】
<第2の実施形態の変形例2>
また、第2の変形例としては、図8に示すように、締着当接部10a,10bのいずれか一方(図は下位の締着当接部10a)の外周縁に沿って筒状の閉鎖壁10cを一体的に構成したものである。閉鎖壁10cとは、締着当接部10a,10bの中間に、上記のような構成とした締着強度検出装置1を配置するとき、隔壁部3の間に形成される空隙部4の外側を包囲して、当該空隙部4を閉鎖させた空間を形成するための壁面部材を意味するものである。この閉鎖壁10cを予め締着当接部10aに一体的に設けることにより、当該閉鎖壁10cは有底筒状に形成された容器のような状態となり、この中に締着強度検出装置1を収納することで、空隙部4を閉鎖するのである。
【0059】
ところで、上述のように、締着当接部10aの外周円の径は、隔壁部3の外側端部30bを通過する仮想円と同程度とするか、それ以上としてよいものであった。そのため、締着当接部10aの外周円の径が、大きい場合には、隔壁部3の外側端部30bは、閉鎖壁10cに到達しないこととなる。この状態は、厳密な意味において、空隙部4を閉鎖させる状態ではないが、空隙部4に設置される電源等5(ボタン電池51および処理部52など)を包囲させるための閉鎖であれば、この程度でも十分である。しかも、隔壁部3の外側端部30bと閉鎖壁10cとの間に適度な間隙を形成させていることから、異なる複数の空隙部4に設置した複数の電源等5(例えば、ボタン電池51および処理部52など)を結線することが可能となり、必要な装置を複数の空隙部4に分離して設置し、これらを接続可能なものとすることができる。そのため、敢えて、上記間隙を形成させるように、閉鎖壁10cの内周径を大きく(隔壁部3が到達しないように)設ける構成とすることができるものである。
【0060】
<第2の実施形態の他の変形例>
その他の変形例としては、図9(a)および(b)に示すように、異なる形態の隔壁部3が混在したものである。例えば、図9(a)は、隔壁部3は、一部の幅寸法W2aと他の幅寸法W2bとを異ならせたものである。これは、第2の実施形態における先細り形状とした隔壁部3の場合には、外側端部30bの近傍では幅寸法が小さいことから、この部分にひずみセンサを設置することで、ひずみ量の変化を検出しやすくなっていたことに基づくものである。すなわち、隔壁部3は、締着力伝達部2とともに締着力を伝達するため、適宜な幅寸法とすることで好適な強度を維持しつつ、ひずみ量の変化を検出できることが要求される。そこで、幅広の隔壁部3と細幅の隔壁部3とを混在させることにより、両者の要請に資するものとしているのである。
【0061】
また、同様に、図9(b)に示すように、一部の隔壁部3aは、第1実施形態と同様の構成としつつ、他の隔壁部3bについては、第2の実施形態のような先細り形状とするものである。この場合には、締着力伝達部2の円筒状部分を形成できることから、その壁面22にひずみセンサを設けることができるほか、先細り形状とした隔壁部3bの外側端部30bの近傍にもひずみセンサ6cを設置することができることとなり、全体的な締着力の変化を各位置において検出することが可能となるため、締着力強度の状態を総合的に判断するための検出が可能となる。
【0062】
なお、この種の変形例のように、異なる形状の隔壁部3a,3bを混在させる形態の場合には、締着力伝達部2とともに、締着力を安定した状態で伝達させるため、バランス良く配置することが必要である。そこで、この変形例では、両者3a,3bを交互に配置するとともに、隣接する隔壁部3a,3bの放射状の中心線は、等角となるように配置し他ものとしている。このような配置により、円形端面全体が偏ることなく締着力を受け、これを伝達することができることとなる。
【0063】
<他の実施形態>
次に、他の実施形態について説明する。図10は、本発明の他の実施形態を示すものである。図10(a)は、締着力伝達部2および隔壁部3に対し、一方の締着当接部10aを底面部として一体的に構成したものであり、図10(b)は、さらに他方の締着当接部10bを天板部として一体的に構成したものである。これらの一体化は、個別の部材を接着、圧着または溶着するなどにより、一体的に構成することができるほか、図10(a)の底面部10aとの一体的構造物は、プレス加工等によって設けることもできる。
【0064】
このように、一方の締着当接部10aを一体的に構成する場合には、当該締着当接部10aにひずみセンサ6cを設ける形態としてもよい。すなわち、当該締着当接部10aは、締着力伝達部2や隔壁部3に作用する締着力に応じてひずみを生じることとなることから、比較的広い表面を利用してひずみを検出させる構成とすることができる。このような形態におけるひずみ計測においても、複数個所にひずみセンサ6cを設置することにより、均等に作用する締着力の検出を可能にし得る。なお、一体的な構成の場合には、全体としてひずみを生じるため、その当接面の適宜位置にひずみセンサ6cを設けることにより、ひずみの計測が容易になるが、一体的な構成でなく個別の部材として構成される場合であっても同様の形態とすることができる。つまり、一体的でない場合であっても、締着力はこれらの締着当接部10a,10bに作用することから、締着力の作用によって少なからず締着当接部10a,10bはひずみを生じることとなる。そこで、締着力伝達部2や隔壁部3の当接を受けない領域にひずみセンサ6cを設けることによって、当該ひずみを計測することにより締着力強度の検出を可能にし得るものである。
【0065】
また、図10(a)に示されているように、締着当接部(図は他方の締着当接部)10bは円環状ではなく、径方向の切り溝12bを設けて部分的に切断された状態としてもよい。これは、挿通部11bを貫通孔によることなく構成されるため、締着手段による締着力の偏りに応じて変形を容易にしている。従って、締着力が作用する方向へ適宜変更可能となり、締着状態(特に座金を使用しない場合)における締着手段との密着性を向上させることができる。締着当接部10a,10bがいずれも分離して構成される形態においては、これら双方の締着当接部10a,10bについて、同様の構成とすることができるものである。また、締着力伝達部2における挿通部21においても同様であって、全体としての密着状態に応じて適宜切り溝を設ける構成とすることができる。
【0066】
さらに、いずれの形態においても、円筒状の閉鎖壁10cを設け、全体または空隙部4のみを閉塞する構成としてもよい。この閉塞壁10cを設置することにより、少なくとも空隙部4は、閉塞された空間部となり、内部に設置されるひずみセンサ6a,6b,6cや電源等5などが外部に露出しない状態となり、設置(締着)した場所の周辺から塵や害虫等の侵入を防止させる効果を得ることができる。
【0067】
上述のような締着強度検出装置1は、被締着材料A,Bの接合において締着手段を使用する場合の締着強度が適当であるか否かを検出するほか、長期間締着状態を維持させる場合における緩み状態の検出に使用できる。すなわち、締着の初期状態では、本来必要とされる締着強度(構築時の接合強度)を測定する場合にひずみセンサの状態から所望強度を与えているか否かを判断するほか、長期間の使用中にひずみセンサの値の変化を検出することにより緩みの状態となっていることを検出することも可能となる。
【0068】
さらに、図11に示すように、特定の緊張材料を緊張させるときの張力計測に使用することも可能である。例えば、プレストレストコンクリートを製造する場合における緊張材の張力測定などがある。図11(a)は、プレストレストコンクリートに使用される緊張材の測定状態を例示している。すなわち、プレストレストコンクリートは、プレストレス方式とポストストレス方式があるが、専らプレストレス方式の場合には、型枠Xの長手方向に緊張材Yを配置し、その緊張材Yを長手方向に緊張させた状態でコンクリートZを型枠Xに打設し、打設コンクリートが固化した後に緊張を緩めることにより、コンクリート全体に圧縮力を付与するものである。コンクリートに予め圧縮力を付与することにより、伸長方向への応力に耐え得るコンクリート構造体を構築するための工程である。
【0069】
ここで、緊張材Yの緊張は、所望の張力(引張力)を付与することが重要となるが、通常は、ジャッキ等による引張力を付与することから、ジャッキ等の能力に応じて緊張力が設定されていた。このような張力(引張力)をより強く、または適度に調整する場合、その調整は容易でないことから、ジャッキ等により適宜張力(引張力)を付与した後、本実施形態を使用しつつ締着手段によって調整し得るものとしている。
【0070】
ここで、図11(b)に示すように、緊張材Yの一部には、雄ネジを刻設しておき、ナット8によって締着力を付与できるようにしておくのである。締着強度検出装置1は、緊張材Yに挿通させ、型枠Xとナット8の間に配置することにより、ナット8による締着強度を測定できるようにするのである。なお、締着強度検出装置1は、型枠Xの片方にのみ設置してもよいが、両側に設置すれば、締着力の偏りを修正することも可能となる。
【0071】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、上記実施形態は、本発明の一例を示すものであって、これらに限定される趣旨ではない。従って、上述の実施形態の一部を変形し、または他の要素を追加するものであってもよい。
【0072】
例えば、図12は、本発明の使用形態についての変形例を示すものである。締着手段がボルト7およびナット8による場合には、座金を使用することが多いものである。特に、橋梁などの大型構築物では、ボルト7の頭部72に締着力が集中することを避けるため、座金9を設けることを強制されることがある。ところが、構造物によっては、座金9の弾性力を利用して締着状態を維持するため(緩み防止のため)にバネ座金(スプリングワッシャ)を使用する場合がある。この場合においても、図12(a)に示すように、締着当接部10a,10bが設けられれば、当該バネ座金9の弾性力の全体を当該締着当接部10a,10bに作用させることができることから、上記実施形態と同様に使用することができる。
【0073】
また、図12(b)に示すように、座金9を使用せず、締着強度検出装置1を座金として機能させる使用方法もあり得る。この場合には、図示のように、締着当接部10a,10bが設けられる構成が好ましい。その理由としては、ボルト7の頭部72またはナット8に作用する締着力を締着力伝達部2および隔壁部3の全体に分散させることができるからである。
【0074】
さらに、第1の実施形態の使用態様を示す図3および変形例を示す図12には、座金の形状として、一般的なボルトおよびナットを締着手段とした場合の一般的なものとして、円環状の座金を例示したが、座金を使用する場合の態様において、その形状は円環状に限定されるものではない。すなわち、外縁の形状が四辺形や多角形のものであってもよい。締着手段の種類に応じて必然的に決定される形状、または特別な用途のために特殊な形状とした座金を用いる場合であっても、上述した締着強度検出装置を使用することができるものである。
【符号の説明】
【0075】
1 締着強度検出装置
2 締着力伝達部
3 隔壁部
4 空隙部
5 電源等
6a,6b,6c ひずみセンサ
7 ボルト
8 ナット
9 座金
10a,10b 締着当接部
10c 閉鎖壁
11a,11b 挿通部(貫通孔)
12b 切り溝
21 挿通部(貫通孔)
22 締着力伝達部の壁面
30a 隔壁部の基部側端部
30b 隔壁部の外側端部
31 隔壁部の表面
51 電池(ボタン電池)
52 処理部(検出部、送信部)
71 ボルトの軸部
72 ボルトの頭部
A,B 被締着部材
H1 締着力伝達部の高さ方向の肉厚
H2 隔壁部の高さ方向の肉厚
P,R 仮想円
Q 締着当接部の外周円
W1 締着力伝達部の幅寸法
W2,W2a,W2b 隔壁部の幅寸法
W2-1 隔壁部の基部側端部における幅寸法
W2-2 隔壁部の外側端部における幅寸法
X 型枠
Y 緊張材
Z コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12