(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】生産効率向上支援システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2019072908
(22)【出願日】2019-04-05
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】517012534
【氏名又は名称】i Smart Technologies株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【氏名又は名称】加藤 光宏
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲也
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-280324(JP,A)
【文献】特開2003-337621(JP,A)
【文献】特開2007-141208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G05B 23/00-23/02
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を生産する生産設備における生産効率の向上を支援する生産効率向上支援システムであって、
前記生産設備の稼働状況を検出した検出結果に基づいて、前記製品を生産するのに要した時間であるサイクルタイムを、該生産設備の運転中に複数回にわたって算出する生産管理指標算出部と、
算出された前記サイクルタイムの時系列変化を、そのばらつきが視覚的に認識できる状態で表したチャートを表示する表示制御部と、を備
え、
前記生産管理指標算出部は、統計処理により複数の前記サイクルタイムの代表値としての実サイクルタイムを算出し、
前記表示制御部は、前記チャートに、前記実サイクルタイムを併せて表示する生産効率向上支援システム。
【請求項2】
請求項1記載の生産効率向上支援システムであって、
前記表示制御部は、算出された前記サイクルタイムを、それぞれシンボルで表示する生産効率向上支援システム。
【請求項3】
請求項1記載の生産効率向上支援システムであって、
前記生産管理指標算出部は、さらに、前記生産設備の稼働状況を検出した検出結果に基づいて、該生産設備が稼働していた時間割合を示す可動率、および前記製品の生産数を、該生産設備の運転中に複数回にわたって算出し、
前記表示制御部は、前記チャートにおいて、前記可動率および生産数の時系列変化を、前記サイクルタイムの時系列変化と時間軸を併せて並べて表示する生産効率向上支援システム。
【請求項4】
請求項3記載の生産効率向上支援システムであって、
前記生産数については、累積個数の時系列変化と、所定の時間区分ごとの出来高とを同一のチャートに表示する生産効率向上支援システム。
【請求項5】
請求項3または4記載の生産効率向上支援システムであって、
前記表示制御部は、前記チャートにおいて、前記生産数を上側、前記可動率および前記サイクルタイムを下側に配置して表示する生産効率向上支援システム。
【請求項6】
請求項5記載の生産効率向上支援システムであって、
前記表示制御部は、前記チャートにおいて、前記生産数と、前記可動率および前記サイクルタイムとの間に、各時刻において前記生産設備が稼働しているか否かを認識できる情報を表示する生産効率向上支援システム。
【請求項7】
請求項1記載の生産効率向上支援システムであって、
前記生産管理指標算出部は、さらに、前記生産設備の稼働状況を検出した検出結果に基づいて、該生産設備が稼働していた時間割合を示す可動率、および想定された出来高に対する実績値の比である出来高率の時系列変化を、同一のチャートに表示する生産効率向上支援システム。
【請求項8】
請求項1記載の生産効率向上支援システムであって、
前記表示制御部は、ポインティングデバイスの操作により前記チャート内のいずれかの点が指示されると、それに対応する稼働状況の詳細な情報をポップアップウィンドウに表示する生産効率向上支援システム。
【請求項9】
請求項1記載の生産効率向上支援システムであって、
前記表示制御部は、前記サイクルタイムのうち異常と判断されるものを強調表示する生産効率向上支援システム。
【請求項10】
請求項1記載の生産効率向上支援システムであって、
前記生産管理指標算出部は、前記生産設備の停止時間を含む稼働状況を検出した検出結果を参照し、停止時間の長さに応じて予め設定された複数の停止時間区分ごとに前記停止時間の累計を算出
し、
前記表示制御部は、前記停止時間区分ごとの前記累計を表すチャートを
表示する生産効率向上支援システム。
【請求項11】
製品を生産する生産設備における生産効率の向上をコンピュータによって支援する生産効率向上支援方法であって、
前記コンピュータが実行するステップとして、
前記生産設備の稼働状況を検出した検出結果を読み込むステップと、
該検出結果に基づいて、前記製品を生産するのに要した時間であるサイクルタイムを、該生産設備の運転中に複数回にわたって算出するステップと、
算出された前記サイクルタイムの時系列変化を、そのばらつきが視覚的に認識できる状態で表したチャートを表示するステップ
と、
統計処理により複数の前記サイクルタイムの代表値としての実サイクルタイムを算出するステップと、
前記チャートに、前記実サイクルタイムを併せて表示するステップとを備える生産効率向上支援方法。
【請求項12】
製品を生産する生産設備における生産効率の向上を支援するためのコンピュータプログラムであって、
前記生産設備の稼働状況を検出した検出結果を読み込む機能と、
該検出結果に基づいて、前記製品を生産するのに要した時間であるサイクルタイムを、該生産設備の運転中に複数回にわたって算出する機能と、
算出された前記サイクルタイムの時系列変化を、そのばらつきが視覚的に認識できる状態で表したチャートを表示する機能と、
統計処理により複数の前記サイクルタイムの代表値としての実サイクルタイムを算出する機能と、
前記チャートに、前記実サイクルタイムを併せて表示する機能と、
をコンピュータにより実現するためのコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項11記載の生産効率向上方法であって、
前記コンピュータが実行するステップとして、
さらに
前記生産設備の停止時間を含む稼働状況を検出した検出結果を参照し、停止時間の長さに応じて予め設定された複数の停止時間区分ごとに前記停止時間の累計を算出するステップと、
前記停止時間区分ごとの前記累計を表すチャートを表示するステップとを備える生産効率向上支援方法。
【請求項14】
請求項12記載のコンピュータプログラムであって、さらに、
前記生産設備の停止時間を含む稼働状況を検出した検出結果を読み込む機能と、
前記生産設備の停止時間を含む稼働状況を検出した検出結果を参照し、停止時間の長さに応じて予め設定された複数の停止時間区分ごとに前記停止時間の累計を算出する機能と、
前記停止時間区分ごとの前記累計を表すチャートを表示する機能とをコンピュータにより実現するためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品を生産する生産設備における生産効率の向上を支援するための生産効率向上支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品を生産する生産設備においては、製品を生産する効率、即ち生産効率を向上することが求められ、その前提として、現状での生産効率を把握することが求められる。近年、生産設備の稼働状態を客観的に把握するために、生産設備に種々のセンサを取り付けてその稼働状態を検出することが試みられている。
例えば、特許文献1は、生産設備に後付けで取り付けられた光センサ、音センサなどの検出部によって、生産設備の稼働状態を検出し、検出結果を管理装置で管理する生産管理システムを開示している。また、出力として、サイクルタイムを時系列にリスト表示する例を開示している。
特許文献2は、生産設備から検出された検出信号に基づいてサイクルタイムの統計値を求め、この統計値を用いて実際のサイクルタイムを決定する技術を開示している。また、出力例として、縦軸に可動率、横軸にサイクルタイムをとったチャートを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-32396号公報
【文献】特開2018-185653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においても、サイクルタイムは、生産設備の稼働状態を示す指標として有用であることは知られていた。しかし、生産効率の向上を図るためには、単に一日単位などのマクロ的な視点で、サイクルタイムを把握するだけでは不十分であることが見いだされた。例えば、一日の稼働時間内でサイクルタイムが不安定に変動している場合には、何らかの原因が存在するはずであり、そこに生産効率の改善を図る余地が残されていることになる。このように生産効率を向上させるためには、生産効率を低下させている原因を分析する必要があり、そのためには、サイクルタイムが変動する状況を把握することが望まれていた。
本発明は、かかる課題に鑑み、生産設備における生産効率の向上を図るために有用な指標を出力し、その向上を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
製品を生産する生産設備における生産効率の向上を支援する生産効率向上支援システムであって、
前記生産設備の稼働状況を検出した検出結果に基づいて、前記製品を生産するのに要した時間であるサイクルタイムを、該生産設備の運転中に複数回にわたって算出する生産管理指標算出部と、
算出された前記サイクルタイムの時系列変化を、そのばらつきが視覚的に認識できる状態で表したチャートを表示する表示制御部と、を備える生産効率向上支援システムと構成することができる。
【0006】
本明細書において、生産効率とは、時間当たりの製品の生産個数、即ち時間当たりの出来高を意味する。
サイクルタイムとは、製品を1個生産するために要した時間を意味する。サイクルタイムは、例えば、生産設備から製品が繰り出される時間間隔を計測することで求めることができる(こうして得られるサイクルタイムを以下、「実測サイクルタイム」という)。また、生産設備の(稼働可能時間-停止時間)/同時間内の生産個数(sec)によって算出してもよい。この場合の稼働可能時間とは、稼働すべき時間であり、例えば、操業時間から昼休みなどの生産停止時間を除いた時間とすることができる。
【0007】
本発明では、得られたサイクルタイムの時系列変化をチャートに表示する。時刻とサイクルタイムとを2軸として表示してもよいし、サイクルタイムの変化を動画で表示してもよい。
このとき、本発明では、サイクルタイムのばらつきが視覚的に認識できる状態で表示を行う。例えば、サイクルタイムが十分な数だけ得られているときは、単にこれらの検出結果をシンボルによってプロットするだけでもよい。各時刻において得られたサイクルタイムのばらつき範囲を線分で示す形式、いわゆる株価のローソクチャートのような形式で表示してもよい。サイクルタイムの上限値、下限値を結ぶ曲線を表示してもよいし、上下限値の範囲を密度に応じて色分け表示などしてもよい。
本発明の表示によれば、サイクルタイムのばらつきを、精度良く把握することができ、生産効率を向上させるための対策を検討しやすくなる。例えば、サイクルタイムが不安定に変動していたり、大きく変動している場合には、かかる変動が生じた時点に何らかの要因があるはずであり、それを追及することにより生産効率を向上させることができる。このように、本発明によれば、サイクルタイムのばらつきも認識できる状態で表示することにより、生産効率を向上するために有用な情報を提供することが可能となる。
【0008】
本発明においては、
前記表示制御部は、算出された前記サイクルタイムを、それぞれシンボルで表示するものとしてもよい。
【0009】
発明者が種々の表示を試した結果、かかる態様が、最も視覚的にばらつきを認識しやすいことが見いだされた。シンボルは、点、図形など任意に設定可能である。チャートは、これらのシンボルが、密集または散在する態様となる。シンボルの密度によって、サイクルタイムのばらつきを客観的に認識することができるのである。
【0010】
本発明においては、
前記生産管理指標算出部は、統計処理により複数の前記サイクルタイムの代表値としての実サイクルタイムを算出し、
前記表示制御部は、前記チャートに、前記実サイクルタイムを併せて表示するものとしてもよい。
【0011】
こうすることにより、実サイクルタイムを基準としてばらつき具合を視覚的に認識することが可能となる。既に述べた通り生産効率を向上するためには、サイクルタイムのばらつきを認識することが重要となる。ここで、上記態様のように検出結果の全体を表す代表値が表示されれば、ばらつきを、より客観的に認識することが可能となる。
代表値としては、検出されたサイクルタイムの最頻値、平均値、中央値などを採用することができる。平均値を算出する際には、検出されたサイクルタイムの中から異常値と判断されるものを除外した上で行うことがより好ましい。異常値の除外は、サイクルタイムの所定の基準値以下のみを正常値として抽出する方法、最大値から大きい順に所定数を除くとともに、最小値から小さい順に所定数を除く方法などをとることができる。
実サイクルタイムは、種々の方法で表示することができる。例えば、サイクルタイムとは大きさ、色、または形状が異なるシンボルで表示してもよい。実サイクルタイムの時系列変化については折れ線グラフで表示してもよい。
【0012】
本発明においては、
前記生産管理指標算出部は、さらに、前記生産設備の稼働状況を検出した検出結果に基づいて、該生産設備が稼働していた時間割合を示す可動率、および前記製品の生産数を、該生産設備の運転中に複数回にわたって算出し、
前記表示制御部は、前記チャートにおいて、前記可動率および生産数の時系列変化を、前記サイクルタイムの時系列変化と時間軸を併せて並べて表示するものとしてもよい。
【0013】
可動率とは、生産設備が稼働していた時間割合であり、種々の方法によって算出することができる。例えば、正常と判断される実測サイクルタイムを積算して、生産設備が実際に運転された時間である可動時間を求め、これを生産設備の運転が要求されている時間である要求時間で割る方法、即ち、可動時間/要求時間×100(%)で算出してもよい。正常と判断される実測サイクルタイムは、現実に計測された実測サイクルタイムのうち、平均値の2倍などで設定された所定の基準値以下のものに絞っても良い。また、生産設備から正常もしくは異常を示す信号出力を検出し、正常信号が出力されているもしくは異常信号が出力されていない期間に計測された実測サイクルタイムを用いるようにしてもよい。
また、実測サイクルタイムの平均値×生産数によって 可動時間を求め、これを用いて可動率を算出してもよい。この場合も、実測サイクルタイムのうち所定の基準値以下のものに絞って平均値を求めるようにしてもよい。
この他、可動率は、(稼働可能時間-停止時間)/稼働可能時間×100(%)で算出してもよい。この場合、(稼働可能時間-停止時間)は、生産設備から正常もしくは異常を示す信号出力を検出し、正常を示す出力時間を積算する方法で算出してもよいし、または異常を示す出力時間を積算し稼働可能時間から減算する方法で算出してもよい。また、(1個当たりの所要時間×要求数)/実績所要時間×100(%)で求めることもできる。ここで、実績所要時間とは、要求数の製品を生産するために実際に要した時間である。
【0014】
上記態様において、
前記生産数については、累積個数の時系列変化と、所定の時間区分ごとの出来高とを同一のチャートに表示するものとしてもよい。
【0015】
出来高とは、単位時間当たりの生産個数を言う。出来を算出するための時間区分は、任意に設定可能であり、必ずしも均一でなくとも良い。両者は相関のある生産指標であり、例えば、累積個数を折れ線グラフで示す場合、その傾きから、それぞれの時点における出来高を認識することは可能である。しかし、累積個数を表したチャートのみでは、その変化を直感的には認識しづらく、さらに、出来高の変化(累積個数の時間的変化の変化)となると、認識することは非常に困難である。これに対し、上述の態様のように累積個数と出来高とを一つのチャートに表示すれば、累積個数の変化率を容易かつ直感的に把握することができるとともに、出来高の変化を把握することも可能となる。こうして、生産個数の変化を包括的に認識しやすいチャートを提供することが可能となる。
チャートの形式は、問わないが、例えば、累積個数を折れ線グラフで表示し、出来高をヒストグラムで表示するというように、両者の形式を変えると、より認識しやすいチャートを提供することができる。
【0016】
生産数、可動率、サイクルタイムを表示する場合、
前記表示制御部は、前記チャートにおいて、前記生産数を上側、前記可動率および前記サイクルタイムを下側に配置して表示することが好ましい。
【0017】
即ち、上側に稼働成果を表示し、下側に、稼働成果に結びつく指標を表示する態様となる。こうすることにより、成果と原因とを比較的容易に対比し、目標となる成果が得られていない原因を理解しやすくなる利点がある。
可動率およびサイクルタイムの上下の順序は、問わないが、サイクルタイムを下側に表示することが好ましい。サイクルタイムは、可動率よりも大きなばらつきが生じやすい。ばらつきの大きいチャートを下側に表示することにより、全体の表示画面の散逸感を軽減することができ、表示されている情報を整理して認識しやすくなる利点がある。
【0018】
生産数、可動率、サイクルタイムを表示する場合、さらに、
前記表示制御部は、前記チャートにおいて、前記生産数と、前記可動率および前記サイクルタイムとの間に、各時刻において前記生産設備が稼働しているか否かを認識できる情報を表示するものとしてもよい。
【0019】
かかる態様によれば、生産数、可動率、サイクルタイムの変動と、生産設備が稼働しているか否かを対比して確認できるため、その変動の要因を判断しやすくなる利点がある。生産設備が稼働しているか否かの情報は、種々の態様をとることができる。例えば、いわゆるガントチャートと呼ばれるもの、即ち、時間帯ごとに示された帯によって生産設備の稼働状態を示すものとしてもよい。このチャートは、作業工程ごとに並列的に示すものもあるが、生産設備が稼働しているか否かを容易に認識可能とするため、一本の帯状の表示とすることが好ましい。また、ガントチャートの他、生産設備の消費電力その他の稼働中であることを示す種々のパラメータを折れ線グラフや棒グラフなどで表示してもよい。
【0020】
本発明においては、可動率、生産数の時系列変化を表示するか否かに関わらず、
前記生産管理指標算出部は、さらに、前記生産設備の稼働状況を検出した検出結果に基づいて、該生産設備が稼働していた時間割合を示す可動率、および想定された出来高に対する実績値の比である出来高率の時系列変化を、同一のチャートに表示するものとしてもよい。
【0021】
出来高とは、単位時間当たりの生産数をいう。生産設備における可動率やサイクルコストは変動するため、実績値としての出来高もこれに伴って変動する。出来高率は、サイクルタイムおよび可動率が想定通りの場合に達成される想定出来高に対する実績値としての出来高の比、即ち、(実績値としての出来高)/想定出来高×100(%)で算出される指標である。高い可動率が達成できている状況でも、サイクルタイムが大きくなれば出来高率は低下することになる。逆に、可動率が低い状況であっても、サイクルタイムが小さければ出来高率は高くなる。このように、出来高率は、可動率とサイクルタイムを総合的に評価することができる指標と言うことができる。
【0022】
上記態様では、この出来高率と可動率の時系列変化を同一のチャートに表示するため、両者の比較を直感的に行うことができる。例えば、可動率に対して出来高率が低い場合には、サイクルタイムに問題があることを意味する。従って、上記態様のチャートを用いれば、想定されたサイクルタイムが達成されているか否かを容易に把握することができる利点がある。
かかる利点をより一層活かすために、サイクルタイムの時系列変化のチャート内に、その平均値その他の実サイクルタイムを併せて表示するものとしてもよい。
【0023】
本発明においては、
前記表示制御部は、ポインティングデバイスの操作により前記チャート内のいずれかの点が指示されると、それに対応する稼働状況の詳細な情報をポップアップウィンドウに表示するものとしてもよい。
【0024】
こうすることにより、チャートは全体を認識しやすいシンプルな表示としつつ、必要に応じて詳細な情報を比較的容易に確認することが可能となる。
詳細な情報は、チャートの横などに設けたサブウィンドウなどに表示させることも考えられるが、上述の態様のようにポップアップウィンドウを用いることにより、確認したい箇所の情報を、視線を移動させることなく直ちに認識できる利点がある。
【0025】
本発明においては、
前記表示制御部は、前記サイクルタイムのうち異常と判断されるものを強調表示するものとしてもよい。
【0026】
こうすることにより、チャートにおいて視覚的に容易に異常な箇所を把握することが可能となる。強調表示は、視覚的に他よりも認識しやすい色、大きさ、シンボルの形状などによって行うことができる。
「異常」の判断は、例えば、実サイクルタイムなどの基準値からの差異が所定値または所定割合以上となるものと判断してもよい。また、ばらつきを統計処理し、標準偏差に所定の係数を乗じて異常か否かを判断してもよい。その他、予め設定した上限値、下限値を外れるものを異常と判断してもよい。
【0027】
本発明は、別の態様として、
製品を生産する生産設備における生産効率の向上を支援する生産効率向上支援システムであって、
前記生産設備の停止時間を含む稼働状況を検出した検出結果を参照し、停止時間の長さに応じて予め設定された複数の停止時間区分ごとに前記停止時間の累計を算出する生産管理指標算出部と、
前記停止時間区分ごとの前記累計を表すチャートを表示する表示制御部とを備える生産効率向上支援システムとして構成することもできる。
【0028】
生産効率を向上するためには、生産設備が停止する原因を解消することが好ましい。かかる場合、一般的には、一度の停止時間が長かった原因を特定し、それを解消することが優先される傾向にある。しかしながら、現実に稼働状況を検出してみると、一度の停止時間は短いものの、発生頻度が高いために、累計した停止時間は多大となる事象が生じ得ることが見いだされた。
上記態様によれば、停止時間区分ごとに、停止時間の累計がチャートで表示されるため、累計が高い停止時間区分を容易に特定することができる。従って、該当する停止時間区分における停止原因を解消すれば、効果的に生産設備が停止している時間を抑制することが可能となり、生産効率の向上を図ることができる。
【0029】
上記態様における停止時間区分は、0~A分、A~B分というように任意に設定可能である。停止時間区分の時間幅は必ずしも同じである必要はない。停止時間区分と停止原因とは一義的に対応している必要はないが、両者が対応している方が対策を講じやすいという点で好ましい。
【0030】
本発明においては、上述した種々の特徴を必ずしも全て備えている必要はなく、適宜、その一部を省略したり、組み合わせたりして構成してもよい。
本発明は、生産効率向上支援システムとしての構成だけでなく、コンピュータによって、上述の各表示を行うことにより生産効率向上の支援を行う生産効率向上支援方法として構成することもできる。本発明は、さらに、生産効率向上の支援をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして構成してもよい。また、かかるコンピュータプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体として構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】生産効率向上支援システムの構成を示す説明図である。
【
図3】サイクルタイムについてのチャートの出力例を示す説明図である。
【
図5】可動率、サイクルタイム、出来高算出処理のフローチャートである。
【
図6】実可動率、実サイクルタイム算出処理のフローチャートである。
【
図8】変形例としてのチャートの出力例を示す説明図である。
【
図9】第2変形例としてのチャートの出力例を示す説明図である。
【
図10】累計停止時間チャート表示処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
A.システム構成:
図1は、生産効率向上支援システムの構成を示す説明図である。工場における生産装置の稼働状態を把握し、それを視覚的に表示することによって、生産効率を向上するための対策を施すことを支援するシステムである。
生産設備10は、製品を生産するための装置であれば、どのようなものであってもよい。
図1では、単一の装置として示したが、生産ラインであってもよいし、複数の装置または生産ラインであってもよい。
センサ11は、生産設備10の稼働状態を検出するためのセンサである。生産設備10に後付けできるものが好ましいが、それに限られる訳ではない。センサ11としては、製品が完成する度に出力するパルスを検出するもの、生産設備10が稼働しているのか、停止状態にあるのかを検出するもの等が設けられる。例えば、完成した製品が通過する位置に光源と、この光源からの光を受光する受光部とを設け、製品が通過する度に光りが遮断されるのを検出する構成をセンサ11の一つとして用いてもよい。また、生産設備10が稼働中または停止に発する光、音、振動その他の情報を検出する光センサ、音センサ、熱センサ、電流センサ、距離センサ、気圧センサ、加速度センサ、回転速度センサ、湿度センサ、圧力センサなどを利用することもできる。また、生産設備10が本来出力する信号を検出するものをセンサ11としてもよい。
送信装置12は、センサ11で検出された種々の信号を、生産効率向上支援システム20に送信する。送信は、有線、無線のいずれで行っても良い。また、送信のタイミングも種々の設定が可能であり、センサ11で検出した時点で送信するようにしてもよいし、所定量を蓄積した上で送信するようにしてもよい。
【0033】
生産効率向上支援システム20は、センサ11からの信号を受信し、生産効率の向上を図るために有用な情報を出力するためのシステムである。本実施例では、CPU、メモリを備えるコンピュータに、図示する種々の機能ブロックを実現するコンピュータプログラムをインストールすることによってソフトウェア的に構成した。機能ブロックの一部または全部をハードウェア的に構成してもよい。また、生産効率向上支援システム20は、スタンドアロンで稼働する装置としての構成だけでなく、ネットワークで接続された複数のサーバ等からなる分散システムとして構成してもよい。
【0034】
以下、各機能ブロックについて説明する。
送受信部21は、送信装置12との間で信号の送受信を行う。
検出結果記憶部11は、センサ11で検出された検出結果を記憶する。記憶される情報の内容、構造については後述する。
入力部22は、オペレータによるキーボード、マウス、タッチパネル等の操作等に基づき、種々の条件や指示を入力する。条件とは、例えば、検出を行うべき生産設備10の指定や、生産設備10に適用されている生産効率改善のための対策、即ちアイテムの状態など検出結果に影響を与え得る内容が含まれる。また、日時、場所、製品名称などの記述を含めてもよい。指示としては、生産効率や出来高などの目標値が挙げられる。入力部22は、オペレータの操作による他、ネットワークを通じて、他のサーバ等から条件や指示を入力可能としてもよい。
【0035】
生産管理指標算出部25は、検出結果記憶部23に記憶されている検出結果に基づいて、生産管理指標を算出する。本実施例では、可動率、サイクルタイム、時間当たりの出来高、累積生産数、実可動率、実サイクルタイム、停止時間などを算出するものとした。これらの生産管理指標は、リアルタイムに算出してもよいし、過去の検出結果に基づいて算出するものとしてもよい。
実可動率、実サイクルタイムは、それぞれ可動率およびサイクルタイムの統計処理によって得られる代表値である。代表値としては、例えば、処理対象となる可動率、サイクルタイムの算出結果のうち、最頻値としてもよい。また、平均値とすることもできる。平均値は、算出結果のうち異常と判断される値を除外して算出してもよい。
時間当たりの出来高は、単位時間当たりの製品の生産個数である。単位時間/サイクルタイムによって算出することができる。時間当たりの出来高は、可動率と同様、一定の時間帯を基準とし、その時間帯に生産された個数に基づいて算出してもよい。サイクルタイムが算出される度に、単位時間/サイクルタイムによって算出してもよい。
累積生産数は、過去において生産された数の累積により算出される。
【0036】
アイテムデータベース24は、生産性向上のための対策、即ちアイテムについての情報を記憶するデータベースである。アイテムごとに、その内容や、過去の適用実績などを記憶する。記憶する内容およびその構造については、後述する。
アイテム効果解析部26は、検出結果記憶部23に記憶された過去の実績、およびそれぞれの検出結果に紐付けられた条件を参照して、アイテムの適用により可動率、サイクルタイムなどがどのように改善したかの効果を解析する。例えば、あるアイテムを適用した効果を解析するためには、過去の実績のうち、当該アイテムの適用有無以外の条件が同一のものを検出し、両者を比較すればよい。アイテムを適用したときの効果は、他のアイテムの適用状態などの条件に応じて異なるため、効果も、他のアイテムの適用状態などと対応付けて解析されることになる。アイテム効果解析部26は、解析結果をアイテムデータベース24に格納する。
アイテムリコメンド部28は、可動率、サイクルタイムの目標値に応じて、これを実現するためのアイテムを推奨する。上述の通り、アイテムを適用した場合の効果は、アイテム効果解析部26によって解析され、アイテムデータベース24に格納されているから、これを参照して、目標値に応じた効果が得られるアイテムを選択すればよい。
【0037】
アイテム効果解析部26およびアイテムリコメンド部28は、人工知能を利用した構成としてもよい。例えば、アイテム効果解析部26は、人工知能を利用し、アイテムの適用による効果を機械学習するものとしてもよい。かかる構成では、検出結果記憶部23に記憶された過去の実績を学習データとして利用し、アイテムデータベース24における各アイテムを説明変数、検出結果記憶部23に記憶された可動率、サイクルタイムの実績を目的変数として回帰分析を行うことになる。アイテムリコメンド部28は、こうして得られた学習モデルを利用して、目標とする可動率、サイクルタイムに応じたアイテムを求めることになる。
【0038】
表示制御部27は、生産効率の向上を支援するための種々の画面を表示するための表示データを生成し、ディスプレイに表示させる。ディスプレイは、生産効率向上支援システム20に直接、接続されたものに限らず、ネットワーク等を介して接続されているコンピュータの画面であってもよい。本実施例では、表示画面として、可動率とサイクルタイムの関係を表すチャートを表示する。また、生産効率を向上するために推奨されるアイテムを表示する機能も奏する。
【0039】
図2は、データベース構造を示す説明図である。検出結果記憶部23及びアイテムデータベース24に記憶されているデータの内容および構造を例示した。
図2に示したのは、これらのデータベースの一例に過ぎず、内容及び構造は、ここで説明するものに限定されるものではない。
【0040】
図の左上は、検出結果記憶部23のデータ構造を示している。検出結果記憶部には、大きく分けて基本情報と検出結果が紐付けて記憶されている。「基本情報ID」は、基本情報の各レコードに付された固有の識別情報である。「日付」は、生産が行われた年月日の情報である。「生産ライン」は、稼働状態を検出する対象となった生産ラインを特定する情報であり、例えば、生産ラインの名称や生産ラインに付されたコードなどを用いることができる。「製品情報」は、生産ラインで製造されている製品を特定する情報であり、名称や製品番号などを用いることができる。「適用アイテム」は、生産ラインに対して、生産効率向上のために適用されたアイテムの種類を特定する情報である。本実施例では、後述する通り、アイテムの内容等は、アイテムIDという識別情報を付してアイテムデータベース24に記憶されているから、「適用アイテム」としては、アイテムIDを記憶するものとした。これらの情報により、検出結果が、どのような条件下で得られたものかを示す基本的な事項を知ることができる。複数のアイテムを適用している場合には、「適用アイテム」には複数のアイテムIDが記憶されることになる。基本情報には、ここに例示した他、さらに多くの情報を含めてもよい。
【0041】
検出結果は、生産設備10から取得された情報を時々刻々と記憶する。「検出結果ID」は、検出結果の各レコードに付された固有の識別情報である。「基本情報ID」は、検出結果を基本情報と紐付ける情報である。基本情報IDに基づいて基本情報を参照することにより、それぞれの検出結果の日付、生産ラインなどの基本情報を得ることができる。「時刻」は、検出結果が検出された時刻である。「センサID」は、検出したセンサ11を特定する識別情報である。「センサ出力」は、センサ11によって検出された結果である。
本実施例では、同時刻に複数のセンサ11からの情報が取得されている場合には、それぞれ個別の検出結果IDが付され、異なるセンサID、センサ出力が記録されたレコードが作成されることになる。従って、例えば、検出結果に基づいて実測サイクルタイムを得る場合には、製品の完成を検出するセンサに対応するセンサIDのレコードを検出結果から抽出し、それぞれの出力がなされる時間間隔を求めることができる。他の生産管理指標を算出する場合も同様に、対応する出力を検出結果から抽出して計算を行えばよい。
【0042】
検出結果は、
図2で説明した内容、構成に限らず、例えば、時刻を基準としてレコードを作成するようにしてもよい。
また、情報を取得した時点で、可動率を算出するための情報、サイクルタイムを算出するための情報というように区分けし、それぞれの情報ごとに時系列で取得した情報を記憶するようにしてもよい。かかる態様によれば、可動率、サイクルタイムなどの生産管理指標を算出する際の処理が簡略化され、処理負担を軽減することができる利点がある。
【0043】
図の右下は、アイテムデータベース24のデータ構造を示している。アイテムとは、生産効率を向上するために施される対策を意味する。例えば、品質チェック台の位置を近くに変更する、踏み台を設置して機械横の通路を確保する、というように生産設備自体に直接改変を加える必要のない対策もあれば、エアーガンのホースを長くする、切り粉飛散のカバーを取り付ける、というように生産設備に改変を加える対策も含まれる。その他、作業工程の変更、材料や使用する工具の変更などを含むこともできる。
アイテムデータベース24は、これらのアイテムを適用した実績を記憶するデータベースである。「アイテムID」は、それぞれの適用実績に付される固有の識別情報である。「対象項目」は、目的等によるアイテムの分類項目である。例えば、「品質チェック」、「刃具交換」などのように、どのような作業項目における改善を図るためのアイテムなのかを示す項目とすることができる。対象項目は、自由に設定可能であり、アイテムを適用できる生産設備の種類などに基づいて設定してもよい。「内容」は、例えば、「品質チェック台の位置を近くに変更する」などのようにアイテムの内容を自然言語で表現したものである。「改善点」は、例えば、「疲労軽減による安定作業」などのように各アイテムによって改善される効果を自然言語で表現したものである。以上が、「アイテムID」に対応するアイテムの基本的な情報を示すものである。
アイテムデータベース24には、「適用実績」として、アイテムごとに、それを適用した実績が複数記憶されている。「適用実績」には、「基本情報ID」と「生産管理指標変化」が記憶される。基本情報IDによって、適用実績は、検出結果記憶部23の基本情報と紐付けられることになり、各アイテムが適用された日付、生産ライン等を特定することが可能となる。「生産管理指標変化」は、アイテムの適用による効果、具体的には、アイテムの適用前後における可動率、サイクルタイムなどの生産管理指標の変化を記憶する。生産管理指標変化は、このようにアイテムの適用前後の検出結果の比較によって得られるものであるから、「基本情報ID」には、この比較に用いられた2つ以上の基本情報IDが記憶されることになる。
【0044】
B.チャートの出力例:
図3は、サイクルタイムについてのチャートの出力例を示す説明図である。生産効率向上支援システム20が、生産設備10からの検出結果に基づいて表示する画面例を示した。
このチャートは、時刻を横軸、サイクルタイムを縦軸として表示される。図示するように、各時刻におけるサイクルタイムの検出結果を、点pのようにシンボルで表示した。このようにサイクルタイムをシンボルで表示することにより、そのバラツキを視覚的に容易に認識することができる。
チャート内には、実サイクルタイムRPを折れ線で併せて示した。こうすることにより、実サイクルタイムRPを基準として、サイクルタイム(点p)のバラツキの状況を把握することが可能となる。
チャートは、かかる態様に限らず、線分Cに示すように、サイクルタイムの変動する範囲を示しても良い。各時刻におけるサイクルタイムは、単一の値が得られるのみであるから、線分Cのチャートは、所定の時間幅における変動範囲を表示することになる。かかる表示を行うことにより、サイクルタイムの変動範囲を視覚的に容易に把握することが可能となる。なお、線分Cのような表示においても、実サイクルタイムを併せて表示してもよい。
チャートの表示態様は、さらに、サイクルタイムの上限値を結ぶ折れ線Lmax、下限値を結ぶ折れ線Lminを示すようにしてもよい。また、この間のバラツキを、帯Gに示したようにバラツキの密度に応じてグラデーションによって表示してもよい。グラデーションは、帯Gのように示してもよいし、折れ線Lmax、Lminに挟まれた全領域に対して連続的に施してもよい。
図の例では、線分C、折れ線Lmax、Lmin、の表示においても、サイクルタイムのシンボル(点p)は併せて表示しているが、シンボルの表示は省略しても差し支えない。また、シンボル(点p)、線分C、折れ線Lmax、Lminの表示は、全てを用いる必要はなく、いずれか一つを選択して用いるようにしてもよい。オペレータの指示によって、これらの表示を切り換え可能としてもよい。
【0045】
チャート内において、矢印Aのようにポインティングデバイスでいずれかのシンボルp1を指示すると、ポップアップウィンドウWが表示され、その中に、点p1に対する詳細な情報が表示される。図の例では、日付、製品情報、時刻、サイクルタイム、可動率、可動状況などの情報が表示される例を示した。この他の情報を表示してもよい。こうすることにより、チャート自体はシンプルな内容としつつ、必要に応じて詳細な情報を得ることが可能となる。また、ポインティングデバイスで指示した付近にポップアップウィンドウが表示されるため、視線を動かさなくとも情報を確認することができ、詳細情報の理解も容易となる利点もある。
【0046】
図4は、チャートの出力例を示す説明図である。画面に表示されるチャートの全体のイメージを示したものである。
最上段のチャートCHT1は、累積数の時系列変化を示したものである。累積数であるから時間の経過に伴って増加するグラフとなる。
2段目のチャートCHT2は、単位時間当たりの出来高の時系列変化を示したものである。
3段目のチャートCHT3は、生産設備が各時刻においてどのような稼働状態にあるかを示すガントチャートである。図の例では、準備、稼働、修理、停止、材料投入、信号なし(稼働しているか否か不明である)という区分を示した。「稼働」以外は、生産設備は非稼働状態にあるものと認識される。稼働状態を、より細かな区分に分けて表示してもよいし、逆に、稼働か否かの2種類に分けて表示してもよい。
4段目のチャートCH4は、可動率の時系列変化を示したものである。
5段目のチャートCH5は、サイクルタイムの時系列変化を示したものである。
図3で説明したチャートがここに表示される。図中ではシンボルのみを表示した。
これらのチャートCT1~CT5は、時刻軸を合わせて表示されている。こうすることにより、各時刻における累積数、出来高、稼働状態、可動率、サイクルタイムを対比して認識しやすくなる。この結果、例えば、目標の出来高に達していないときに、可動率が低い、またはサイクルタイムが長いなど、原因を分析しやすくなる利点がある。より対比しやすくするために、ポインティングデバイスで指示した時刻で全チャートを貫く縦線を表示可能としてもよい。
【0047】
本実施例におけるチャートは、このように最上段および2段目において、生産管理上、最も重要な変数である生産個数を表す情報を表示し、下の2段(4段目、5段目)において、生産個数に結びつく、生産設備の稼働状態を表す情報を表示する。そして、両者の間に生産設備の稼働状態を表示している。かかる順序で表示することにより、成果と原因とを比較的容易に対比し、目標となる成果が得られていない原因を理解しやすくなる利点がある。
可動率およびサイクルタイムの上下の順序は問わないが、サイクルタイムを下側に表示することが好ましい。サイクルタイムは、可動率よりも大きなばらつきが生じやすい。ばらつきの大きいチャートを下側に表示することにより、全体の表示画面の散逸感を軽減することができ、表示されている情報を整理して認識しやすくなる利点がある。
【0048】
チャートCH1~CH5は、一部を省略して表示してもよい。例えば、累積数(チャートCHT1)と出来高(チャートCH2)はいずれか一方を選択的に表示するようにしてもよい。また、他のチャートも、例えば、オペレータの指示などに応じて、表示/非表示を個別に切り換え可能としてもよい。こうすることにより、目的に応じたチャートを表示させることが可能となる。
【0049】
C.処理例:
以下では、生産効率向上支援システム20において、
図3で示したチャートの表示などの処理内容について説明する。以下では、検出結果記憶部23に記憶された検出結果等を用いて事後的に処理を行う場合を例示するが、それぞれの処理を、生産設備10からの情報を受信しながらリアルタイムに行うものとしてもよい。
【0050】
図5は、可動率、サイクルタイム、出来高算出処理のフローチャートである。
図1における生産管理指標算出部25が主として実行する処理であり、ハードウェア的には生産効率向上支援システム20のCPUが実行する処理である。
処理を開始すると、生産効率向上支援システム20は、検出結果記憶部23から検出結果を読み込む(ステップS10)。
そして、生産効率向上支援システム20は、検出結果の中から、製品の生産完了パルスを抽出し、このパルスの時間間隔に基づいて実測サイクルタイムを取得する(ステップS11)。これらの抽出は、例えば、生産完了パルスを検出するための「センサID」を用いて行うことができる。生産完了パルスは、製品が生産されるごとに出力されているから、それぞれ生産完了パルスの出力時ごとに対応した実測サイクルタイムが得られることになる。
【0051】
また、生産効率向上支援システム20は、得られた実測サイクルタイムのうち、基準値以下の実測サイクルタイムを用いて、平均サイクルタイムを算出する(ステップS12)。基準値は、種々の設定が可能であるが、本実施例では、過去のサイクルタイムの平均値または最頻出値などに基づいて設定された想定サイクルタイムの2倍を基準値として用いた。基準値以下の実測サイクルタイムを用いることにより、生産設備の停止などによって見かけ上、実測サイクルタイムが異常に長くなっているものを除外して、平均値を求めることができる。平均サイクルタイムも、実測サイクルタイムにそれぞれ対応した時点での算出値が得られることになる。
【0052】
生産効率向上支援システム20は、次に、生産数を取得する(ステップS13)。生産数とは、上述した平均サイクルタイムが算出された時点までの累積の生産数である。生産数も、基準値以下の実測サイクルタイムに対応するものを加算する。
【0053】
こうして得られた値に基づき、生産効率向上支援システム20は、実測サイクルタイムにそれぞれ対応した時点での可動時間を算出する(ステップS14)。可動時間は、平均サイクルタイム×生産数で求める。可動時間は、製品を生産するために、実際に生産設備が稼働していた時間を意味する。可動時間は、基準値以下の実測サイクルタイムを積算して求めてもよい。
【0054】
また、生産効率向上支援システム20は、要求時間を算出する(ステップS15)。要求時間とは、生産設備が本来、継続的に運転するよう要求されている時間を意味する。本実施例では、「運転開始後の経過時間-その間に予定されている停止時間」で算出した。予定されている停止時間とは、例えば、昼休みなどが該当する。
【0055】
生産効率向上支援システム20は、こうして得られた値に基づき、可動率を算出する(ステップS16)。可動率は、可動時間/要求時間×100によって算出することができる。
また、生産効率向上システム20は、出来高を算出する(ステップS17)。出来高は、(3600/サイクルタイム)×(可動率/100)で算出することができる。
【0056】
可動率、サイクルタイム、出来高の算出方法は、上述の方法に限らない。例えば、生産設備が運転している時間をいくつかの時間幅の時間帯に区切り、それぞれの時間帯において生産設備が何らかの理由により停止していた停止時間を求め、可動率は、(時間帯の時間幅-停止時間)/(時間帯の時間幅)×100%によって算出してもよい。
また、この時間帯における製品の生産数を求め、(時間帯の時間幅-停止時間)/生産数によってサイクルタイムを求めるようにしてもよい。
可動率、サイクルタイムは、この他にも種々の方法で算出することができる。
【0057】
以上の処理によって、可動率、サイクルタイム、出来高を算出すると、生産効率向上支援システム20は、算出結果を保存して(ステップS18)、可動率、サイクルタイム、出来高算出処理を終了する。算出された可動率、サイクルタイム、出来高は、チャート(
図3、4)の表示に用いられることになる。
【0058】
図6は、実可動率、実サイクルタイム算出処理のフローチャートである。
図1における生産管理指標算出部25が主として実行する処理であり、ハードウェア的には生産効率向上支援システム20のCPUが実行する処理である。
処理を開始すると、生産効率向上支援システム20は、可動率、サイクルタイムの算出結果を読み込む(ステップS20)。そして、統計処理により、実サイクルタイムを算出する(ステップS21)。図中に実サイクルタイムの算出方法を示した。
サイクルタイムは、生産中に種々の要因によって変動する。図中に示したグラフは、変動するサイクルタイムを連続的な関数と捉えた場合の確率密度関数を表している。図示するように確率密度関数は、いずれかのサイクルタイムにおいて最大値を有する。本実施例では、この最大値となるサイクルタイムを実サイクルタイムとして採用するものとした。サイクルタイムを離散的な値として捉える場合には、最大の度数となるサイクルタイムを実サイクルタイムとすればよい。ただし、離散的な値の場合、サイクルタイムの有効数字の桁数を抑制し、量子化を図っておくことが好ましい。実サイクルタイムは、これらの方法の他、平均値、中央値などを用いるものとしてもよい。
【0059】
生産効率向上支援システム20は、次に統計処理によって実可動率を算出する(ステップS22)。実可動率も、実サイクルタイムと同様の統計処理によって求めることができる。なお、上述の最大値を実サイクルタイムとして採用した場合、必ずしも実可動率も最大値を用いる必要はなく、平均値または中央値を用いるようにしても良い。
【0060】
以上の処理によって、実可動率、実サイクルタイムを算出すると、生産効率向上支援システム20は、算出結果を保存して(ステップS23)、実可動率、実サイクルタイム算出処理を終了する。算出された実可動率、実サイクルタイムは、チャート(
図3、4)の表示に用いられることになる。
【0061】
図7は、チャート表示処理のフローチャートである。
図1における表示制御部27が主として実行する処理であり、ハードウェア的には生産効率向上支援システム20のCPUが実行する処理である。
処理を開始すると、生産効率向上支援システム20は、表示対象の指定を入力する(ステップS30)。本実施例では、表示情報ID(
図2参照)を入力するものとした。日付、生産ライン等の情報を入力し、生産効率向上支援システム20が、これに対応する表示情報IDを特定するようにしてもよい。
図3に示した通り、複数の基本情報IDに対応するチャートを併せて表示可能とするため、基本情報IDは複数入力可能としてもよい。
【0062】
次に、生産効率向上支援システム20は、基本情報IDに該当するデータを読み込む(ステップS31)。具体的には、可動率、サイクルタイム、累積数、出来高の算出結果、および実可動率、実サイクルタイムの算出結果を読み込むのである。実可動率、実サイクルタイムの読み込みを省略してもよい。
【0063】
そして、生産効率向上支援システム20は、チャートのON,OFFの指示を入力する(ステップS32)。本実施例では、オペレータが、
図4に示した各チャートCHT1~CHT5のオン・オフを個別に指示可能とした。
オン・オフの指示を入力すると、生産効率向上支援システム20は、オンが指示されたチャートの画像データを生成し(ステップS33)、その配置を決定して(ステップS34)、表示を行う(ステップS35)。
本実施例では、チャートCHT1からCHT5の順で上から下に向かって配置されるようにした。例えば、チャートCHT1~CHT5が全てオンとなっているときは、上からCHT1、CHT2、CHT3、CHT4、CHT5の順に表示される。一部のチャートCHT2、CHT5のみがオンとなっているときは、上からCHT2、CHT5の順に表示される。このように上下の配列優先度に従ってチャートを表示することにより、
図4で説明した種々の利点を実現することができる。
なお、チャートの配列は、かかる順序に固定する必要はなく、オペレータが任意に設定可能、または表示後に配列を変更可能としてもよい。
【0064】
D.効果および変形例:
以上で説明した実施例の生産効率向上システムによれば、検出されたサイクルタイムを、そのばらつきを認識できるチャートとして出力する。かかるチャートによれば、サイクルタイムが安定しているのか、不安定に変動しているのかなどの状態を客観的に把握することができ、生産効率を向上するために、サイクルタイムをどのように改善すべきかが理解しやすくなる利点がある。従って、本実施例によれば、生産効率の向上を効果的に支援することが可能となる。
【0065】
実施例で説明した種々の特徴は、必ずしも全てを備える必要はなく、適宜、その一部を省略したり組み合わせたりしてもよい。また、本発明は、実施例に限らず、種々の態様で構成することが可能である。
【0066】
(1)変形例1:
図8は、変形例としてのチャートの出力例を示す説明図である。実施例(
図4)では、累積数のチャート(CHT1)、出来高のチャート(CHT2)を個別のチャートで表示する例を示したが、変形例(
図8)では、両者を同一のチャートCHT1Aに表示する。図中の折れ線グラフが、累積数の時系列変化を表しており、ヒストグラムが出来高を表している。出来高については、運転後を所定の時間帯に区切り、それぞれの時間帯における出来高を表示した。
【0067】
変形例のように、累積数と出来高とを一つのチャートに表示すれば、累積個数の変化率を容易かつ直感的に把握することができるとともに、出来高の変化を把握することも可能となる。従って、生産個数の変化を包括的に認識しやすいチャートを提供することが可能となる利点がある。
【0068】
(2)変形例2:
図9は、第2変形例としてのチャートの出力例を示す説明図である。
第2変形例では、可動率と出来高率の時系列変化を表すチャートCHT4Aを表示する。出来高率は、サイクルタイムおよび可動率が想定通りの場合に達成される想定出来高に対する実績値としての出来高の比、即ち、(実績値としての出来高)/想定出来高×100(%)で算出される指標である。図中の実線L1が可動率の時系列変化を示し、破線L2が出来高率の時系列変化を示している。
【0069】
高い可動率が達成できている状況でも、サイクルタイムが大きくなれば出来高率は低下することになる。逆に、可動率が低い状況であっても、サイクルタイムが小さければ出来高率は高くなる。このように、出来高率は、可動率とサイクルタイムを総合的に評価することができる指標と言うことができる。図の例では、時間帯Tにおいて、可動率よりも出来高率が低くなっている。かかる状況では、サイクルタイムに問題があること、即ち想定されたサイクルタイムよりも遅れていることがわかる。従って、サイクルタイムを遅延させている原因を解消することにより、出来高率を向上させることが可能となる。
【0070】
サイクルタイムが遅れていることを判断しやすいよう、第2変形例では、サイクルタイムの時系列変化CHT5Aにおいて、時間帯ごとの平均のサイクルタイムを併せて表示するようにした。
図6で説明した実サイクルタイムを表示してもよい。こうすることにより、時間帯Tでは、サイクルタイムが全体的に遅れていることを確認でき、可動率、出来高率の比較で判断された内容に誤りがなかったことを認識しやすくなる利点がある。
【0071】
(3)変形例3:
以上で説明した通り、実施例の生産効率向上システム20は、サイクルタイム他の時系列変化を、生産装置の稼働状況が把握しやすい形で時系列表示するものである。生産効率向上システム20には、かかる表示に基づいて、改善の必要性が見いだされた場合、その改善を支援する表示を行わせるようにしてもよい。その一つの表示例として、以下に説明する累計停止時間チャートが挙げられる。
【0072】
図10は、累計停止時間チャート表示処理のフローチャートである。
図1における生産管理指標算出部25、表示制御部27が主として実行する処理であり、ハードウェア的には生産効率向上支援システム20のCPUが実行する処理である。
【0073】
処理を開始すると、生産効率向上システム20は、停止時間のデータを入力する(ステップS40)。そして、停止時間区分ごとに停止時間を積算する(ステップS41)。
図中に積算の方法を示した。この例では、停止時間区分が、0~7.5分、7.5~15分、15~30分、30~60分、60~120分というように設定されているものとする。
図の左側には、入力された停止時間のデータを示した。生産設備は、生産中に種々の要因によって停止することがある。生産設備が停止していた時間長を、時系列で入力したのが、左側に示した停止時間のデータである。ステップS41の処理では、左側に示した各停止時間を、それぞれ矢印で示したように、右側の停止時間区分に割り当てる。例えば、最初の停止時間は3分であるから、停止時間区分0~7.5分に割り当てられる。3番目の停止時間は14分であるから、停止時間区分7.5~15分に割り当てられる。こうして、各停止時間区分に割り当てられた停止時間を、それぞれ停止時間区分ごとに積算するのである。こうして、停止時間区分ごとに累計停止時間を得ることができる。
【0074】
生産効率向上システム20は、得られた結果を出力する(ステップS42)。図中に、出力されるチャートを示した。本実施例では、停止時間区分ごとの累計停止時間を表すヒストグラムの形式を採用した。かかるチャートによれば、停止時間区分0~7.5分の累計停止時間が最も高いことが分かる。つまり、停止時間区分0~7.5分に該当する停止状況は、一度の停止時間は短いものの、頻繁に発生するため、累計停止時間が大きくなっているということになる。従って、この停止時間区分に該当する停止の原因を解消すれば、累計停止時間を効率的に抑制することができ、生産効率を向上させることが可能となることが分かる。
生産設備の停止時間のみを出力する方法では、一度の停止時間が長い事象、例えば、停止時間区分30~60分に該当するような事象に着目しがちであるが、本実施例では、累計停止時間を表示することにより、真に解消すべき停止要因に着目させることを実現している。
【0075】
なお、チャートは、停止時間区分ごとの累計停止時間を比較可能であれば種々の形式を用いることができる。
停止時間区分は、かかる例に限らず任意に設定可能である。また、その時間幅は同一としてもよいし、停止時間区分ごとに異ならせてもよい。停止時間区分は、生産設備の停止原因と一義的に対応している必要はないが、想定される停止原因とそれに伴う停止時間との関係を考慮して、可能な限り一義的に対応するよう停止時間区分を設定しておけば、停止原因を解消するための対策を比較的容易に見いだしやすくなる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、製品を生産する生産設備における生産効率の向上を支援するために利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
10 生産設備
11 センサ
12 送信装置
20 生産効率向上支援システム
21 送受信部
22 入力部
23 検出結果記憶部
24 アイテムデータベース
25 生産管理指標算出部
26 アイテム効果解析部
27 表示制御部
28 アイテムリコメンド部