(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
F16J15/10 T
(21)【出願番号】P 2018149862
(22)【出願日】2018-08-09
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】國安 啓文
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-003129(JP,A)
【文献】特開2011-179588(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005722(WO,A1)
【文献】特開2011-179618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 5/00
F02F 11/00
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に設けられた環状の取付溝の
溝深さ方向に沿う方向が締結方向とされ、かつ前記取付溝の溝底面及びこれに平行状に対向する第2部材の対向面の周方向の一部分の溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝長手方向に見て締結方向に直交する面から傾斜した傾斜対向面とされた該第1部材及び該第2部材の対向面間を密封する環状のガスケットであって、
前記取付溝における溝底面が傾斜対向面とされた部位に挿入されるガスケット本体部の両側面には、締結された状態で前記取付溝の各溝側壁のそれぞれに当接される突起が設けられ、これら突起は、締結方向に沿う方向で溝底側端が他方側よりも溝開口側に位置する第1溝側壁に対向される第1側面の突起が前記他方側となる第2溝側壁に対向される第2側面の突起よりも締結方向に沿う方向で溝開口側に位置するように設けられていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
請求項1において、
前記ガスケット本体部の両側面の突起は、周方向に延びるように設けられていることを特徴とするガスケット。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記ガスケット本体部の自然状態における前記第1側面の突起の先端から前記第2側面の突起の先端までの前記取付溝の溝幅方向に沿う寸法は、前記取付溝の溝幅寸法よりも小とされていることを特徴とするガスケット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記ガスケット本体部の自然状態における溝底側面から前記第1側面の突起の先端までの前記取付溝の溝深さ方向に沿う寸法は、前記取付溝の溝深さ寸法よりも小とされていることを特徴とするガスケット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記第2部材に対向される反溝底側面には、周方向に延びる突部が設けられており、
前記突部は、溝長手方向に見て締結方向に直交する前記第2部材の直交対向面に当接される部分が前記取付溝の溝幅方向で中央部に位置し、前記第2部材の傾斜対向面に当接される部分が前記取付溝の溝幅方向で第2溝側壁側に片寄った位置となるように設けられていることを特徴とするガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2部材の対向面間を密封する環状のガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の内燃機関等におけるチェーンカバー(ケース)や、シリンダヘッドカバーのような相互に締結されて組み付けられる2部材の対向面間を密封する環状のガスケットが知られている。このような2部材は、一方の第1部材にガスケットが装着される環状の取付溝が設けられ、他方の第2部材に第1部材の取付溝の溝底面に平行状に対向される対向面が設けられた構成とされている。また、これら2部材の対向面には、周方向の一部分の溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝長手方向に見て締結方向に直交する面から傾斜した傾斜面とされた部位が設けられる場合がある。
例えば、下記特許文献1には、対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に組み付けられる2部材の対向面間の隙間を封止する環状のガスケットが開示されている。このガスケットは、2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝に装着されるガスケット本体部の他方の部材側に、他方の部材に向かい、かつ対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に延びる環状突起部を設けた構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたガスケットでは、2部材を組み付ける際に、組み付け方向に対して傾斜する環状溝の溝底によって、ガスケット本体部の溝底側が倒れるように変形し易くなるという懸念があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、2部材の対向面の周方向の一部分の溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝長手方向に見て締結方向に直交する面から傾斜した傾斜面とされた部位におけるシール性の低下を抑制し得るガスケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係るガスケットは、第1部材に設けられた環状の取付溝の溝深さ方向に沿う方向が締結方向とされ、かつ前記取付溝の溝底面及びこれに平行状に対向する第2部材の対向面の周方向の一部分の溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝長手方向に見て締結方向に直交する面から傾斜した傾斜対向面とされた該第1部材及び該第2部材の対向面間を密封する環状のガスケットであって、前記取付溝における溝底面が傾斜対向面とされた部位に挿入されるガスケット本体部の両側面には、締結された状態で前記取付溝の各溝側壁のそれぞれに当接される突起が設けられ、これら突起は、締結方向に沿う方向で溝底側端が他方側よりも溝開口側に位置する第1溝側壁に対向される第1側面の突起が前記他方側となる第2溝側壁に対向される第2側面の突起よりも締結方向に沿う方向で溝開口側に位置するように設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、第2部材の傾斜対向面によって、締結する際に第1溝側壁側に滑ろうとするガスケット本体部の溝開口側部位の変形を、溝開口側に設けられた第1側面の突起が第1溝側壁に当接することで抑制することができる。また、ガスケット本体部の第2側面の突起が第1側面の突起よりも溝底側に位置することとなる。従って、傾斜対向面とされた溝底面によって、締結される際に第2溝側壁側に倒れようとするガスケット本体部の溝底側部位の変形を、溝底側に設けられた第2側面の突起が第2溝側壁に当接することで抑制することができる。これにより、ガスケット本体部の溝底側面を溝底面に安定的に当接(弾接)させることができ、シール性の低下を抑制することができる。
【0007】
本発明においては、前記ガスケット本体部の両側面の突起は、周方向に延びるように設けられていてもよい。
本発明によれば、締結する際におけるガスケット本体部の上記のような好ましくない変形をより効果的に抑制することができる。
【0008】
本発明においては、前記ガスケット本体部の自然状態における前記第1側面の突起の先端から前記第2側面の突起の先端までの前記取付溝の溝幅方向に沿う寸法は、前記取付溝の溝幅寸法よりも小とされていてもよい。
本発明によれば、第1部材と第2部材とを締結すれば、ガスケット本体部の両側面の突起が取付溝の各溝側壁に当接して上記のような好ましくない変形の抑制が可能でありながらも、これら突起によって挿入性が低下するようなことを抑制することができる。
【0009】
本発明においては、前記ガスケット本体部の自然状態における溝底側面から前記第1側面の突起の先端までの前記取付溝の溝深さ方向に沿う寸法は、前記取付溝の溝深さ寸法よりも小とされていてもよい。
本発明によれば、第1部材と第2部材とを締結する前に第1部材の取付溝にガスケット本体部を挿入させた状態で、両側面の突起が取付溝内に位置することとなる。従って、このような状態で一方の突起(第1側面の突起)が取付溝外に位置するようなものと比べて、締結する際に突起が引っ掛かったりするようなことがなく、上記のようなガスケット本体部の好ましくない変形をより効果的に抑制することができる。
【0010】
本発明においては、前記第2部材に対向される反溝底側面には、周方向に延びる突部が設けられており、前記突部は、溝長手方向に見て締結方向に直交する前記第2部材の直交対向面に当接される部分が前記取付溝の溝幅方向で中央部に位置し、前記第2部材の傾斜対向面に当接される部分が前記取付溝の溝幅方向で第2溝側壁側に片寄った位置となるように設けられていてもよい。
本発明によれば、第2部材に対向される反溝底側面に周方向に延びる突部を設けているので、この突部を第2部材に弾接させてシール性を向上させることができる。
また、第2部材の直交対向面に当接される部分の突部を取付溝の溝幅方向で中央部に位置させているので、直交対向面に対して安定的に接触させることができる。一方、第2部材の傾斜対向面に当接される部分の突部を取付溝の溝幅方向で第2溝側壁側に片寄らせた位置に設けているので、上記同様な中央部に設けたものと比べて、締結する際に突部の第2溝側壁側部位を傾斜対向面に早期に接触させることができ、上記のようなガスケット本体部の溝開口側部位の好ましくない変形を効果的に抑制することができ、接触面圧の周方向における均一化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るガスケットは、上述のような構成としたことで、2部材の対向面の周方向の一部分の溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝長手方向に見て締結方向に直交する面から傾斜した傾斜面とされた部位におけるシール性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)、(b)は、本発明の一実施形態に係るガスケットの一例を模式的に示し、(a)は、一部破断概略平面図、(b)は、(a)におけるX部に対応させた一部破断概略斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1(a)におけるX部に対応させた部位の一部を省略した概略平面図、(b)は、(a)に対応させた概略底面図である。
【
図3】(a)、(b)は、
図2(a)におけるY1-Y1線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【
図4】(a)、(b)は、
図2(a)におけるY2-Y2線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【
図5】(a)は、
図1(a)におけるX部に対応させた部位の一部を省略した概略側面図、(b)は、同ガスケットの一変形例を模式的に示し、(a)に対応させた概略側面図である。
【
図6】(a)、(b)は、同ガスケットの他の変形例をそれぞれ模式的に示し、
図4(a)に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【
図7】(a)、(b)は、同ガスケットの更に他の変形例をそれぞれ模式的に示し、
図4(a)に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【
図8】(a)、(b)は、同ガスケットの更に他の変形例をそれぞれ模式的に示し、
図4(a)に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
図1~
図8は、本実施形態に係るガスケットの一例及び一変形例を模式的に示す図である。
【0014】
本実施形態に係るガスケット1は、環状とされており、
図3及び
図4に示すように、第1部材2に設けられた環状の取付溝4の溝底面5a,6a及びこれに平行状に対向する第2部材7の対向面8の周方向の一部分の溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝長手方向に見て締結方向9に直交する面から傾斜した傾斜対向面6a,8bとされた第1部材2及び第2部材7の対向面3,8間を密封する。
このガスケット1によって対向面3,8間が密封される第1部材2及び第2部材7としては、例えば、自動車のエンジンを構成するヘッドカバー、シリンダヘッド、シリンダブロック、オイルパン及びチェーンカバーのうちの対向される2部材であってもよく、その他の2部材であってもよい。
【0015】
第1部材2と第2部材7とは、図示は省略しているが、一方に設けられた挿通孔を介して他方に設けられた雌ねじ穴に締結方向9に沿ってボルトを締結することで組み付けられる。
これら第1部材2及び第2部材7の周縁部には、全周に亘って互いに平行状に対向し、被シール面を構成する対向面3,8が設けられている。この対向面3,8は、
図3に示すように、溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝長手方向に見て締結方向9に直交する面とされた直交対向面3a,8aと、
図4に示すように、溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝長手方向に見て直交する面から傾斜した面とされた傾斜対向面3b,8bと、を含んでいる。なお、対向面3,8は、周方向の大部分(例えば、60%超)が直交対向面3a,8aとされ、一部分が傾斜対向面3b,8bとされたものでもよい。
【0016】
このような傾斜対向面3b,8bは、締結方向9に見て屈曲状とされた第1部材2及び第2部材7の周縁部のコーナー部位において直交対向面3a,8aに対して締結方向9に沿う一方向に上り勾配状に傾斜するような部分に設けられるものでもよい。
第1部材2の取付溝4は、第1部材2の周縁部に沿って全周に亘って設けられている。この取付溝4は、溝深さ方向が締結方向9に沿う方向とされ、かつ第1部材2の対向面3において第2部材7の対向面8に向けて開口するように設けられている。
また、この取付溝4の溝底面5a,6aは、当該第1部材2の対向面3に平行状に形成されている。つまり、取付溝4は、溝底面5aが直交対向面3aに平行状とされた溝底直交部5と、溝底面6aが傾斜対向面3bに平行状とされた溝底傾斜部6と、を含んでいる。つまりは、溝底傾斜部6は、第1部材2の周縁部のコーナー部位に沿って屈曲状とされ、かつ締結方向9に沿う一方向に上り勾配状に傾斜するように設けられている。
【0017】
この取付溝4の溝幅方向両側を区画する両側の溝側壁のうちの外周側に向く第1溝側壁5b,6bと内周側に向く第2溝側壁5c,6cとは、互いに平行状とされている。つまり、溝底直交部5の第1溝側壁5b及び第2溝側壁5cは、溝底面5aに対して直交状に設けられている。溝底傾斜部6の第1溝側壁6b及び第2溝側壁6cは、これらのうちの一方(図例では、第1溝側壁6b)が溝底面6aとのなす角が鈍角状となるように設けられ、他方が溝底面6aとのなす角が鋭角状となるように設けられている。図例では、これら溝底直交部5及び溝底傾斜部6の溝底面5a,6aと第1溝側壁5b,6b及び第2溝側壁5c,6cとの入隅部をR面形状(凹湾曲面形状)とした例を示している。
溝底直交部5の溝幅寸法と溝底傾斜部6の溝幅寸法W1とは、概ね同寸法とされ、溝底直交部5の溝深さ寸法と溝底傾斜部6の溝深さ寸法D1とは、概ね同寸法とされている。
【0018】
ガスケット1は、
図3及び
図4に示すように、取付溝4の溝底直交部5に挿入される直交部ガスケット本体部10と、取付溝4の溝底傾斜部6に挿入される傾斜部ガスケット本体部20と、を備えている。このガスケット1は、ゴム材から一体的に形成されている。このガスケット1を構成するゴム材としては、被シール流体の種類や、用途等に応じて適宜のゴム材を採用するようにすればよく、例えば、NBRやACM、VMQ、FKM、FVMQ、EPDM等が挙げられる。
直交部ガスケット本体部10は、
図3に示すように、溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝長手方向に見て溝深さ方向に長尺な形状とされている。
この直交部ガスケット本体部10は、溝底面5aに当接される溝底側面11と、第1溝側壁5bに対向される第1側面12と、第2溝側壁5cに対向される第2側面14と、を備えている。
【0019】
溝底側面11は、溝底面5aに平行状に形成されている。つまり、溝底側面11は、溝長手方向に見て締結方向9に直交する平坦面状とされている。
また、溝底側面11と両側の第1側面12及び第2側面14との角部にC面取状の面取部を設けた例を示している。また、溝底側部位10aの溝幅方向に沿う寸法を溝開口側部位10bの溝幅方向に沿う寸法よりも小とし、両側の第1側面12及び第2側面14の溝深さ方向途中部位に溝底側に段下状の段部を設けた例を示している。
また、直交部ガスケット本体部10の溝開口側部位10bの端部には、溝幅方向両側に向けて突出する突片部16,16が周方向に延びるように設けられている。これら突片部16,16は、直交対向面3a,8aに平行状となるように締結方向9に対して直交状に突出するように設けられている。
【0020】
また、直交部ガスケット本体部10の第2部材7の直交対向面8aに対向される反溝底側面17に、周方向に延びる突部18を設けた構成としている(
図2(b)も参照)。この突部18は、溝底直交部5の溝幅方向で中央部に位置するように設けられている。このような構成とすれば、この突部18を第2部材7の直交対向面8aに弾性的に接触させてシール性を向上させることができる。この突部18の直交対向面8aに向く面は、直交対向面8aに平行状に形成されている。
なお、この突部18は、周方向の全体に亘って設けられたものでもよいが、
図2(b)に示すように、第2部材7の直交対向面8aの形状に対応させて部分的に設けられていない部位があってもよい。
この直交部ガスケット本体部10は、両側の突片部16,16及び突部18を含み、溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝幅方向中心線を対称軸とする線対称状とされている。
【0021】
また、
図3(a)に示すように、直交部ガスケット本体部10の自然状態における溝底側面11から突片部16,16までの溝深さ方向に沿う寸法は、溝底直交部5の溝深さ寸法よりも大とされている。また、直交部ガスケット本体部10の自然状態における溝幅方向に沿う寸法は、溝底直交部5の溝幅寸法よりも小とされている。
図3(b)に示すように、第1部材2と第2部材7とが締結された状態では、直交部ガスケット本体部10が圧縮状態とされ、溝底側面11が溝底面5aに弾性的に接触する。また、この状態では、反溝底側の突部18も圧縮状態とされ、両側の突片部16,16の溝深さ方向両側面が直交対向面3a,8aに当接または近接される。
なお、両側の第1側面12及び第2側面14に、溝深さ方向に延びる抜止突起等を周方向に間隔を空けて複数箇所に設けた構成としてもよい。
【0022】
傾斜部ガスケット本体部20は、上記構成とされた直交部ガスケット本体部10から連続的に変形するように設けられている。この傾斜部ガスケット本体部20は、
図1、
図2及び
図5(a)に示すように、上記のような形状とされた溝底傾斜部6に対応させて、締結方向9に見て屈曲状とされ、かつ締結方向9に沿う一方向に上り勾配状に傾斜する形状とされている。
この傾斜部ガスケット本体部20は、直交部ガスケット本体部10と概ね同様、
図4に示すように、溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝長手方向に見て溝深さ方向に長尺な形状とされている。
この傾斜部ガスケット本体部20は、溝底面6aに当接される溝底側面21と、第1溝側壁6bに対向される第1側面22と、第2溝側壁6cに対向される第2側面24と、を備えている。
【0023】
溝底側面21は、溝底面6aに平行状に形成されている。つまり、溝底側面21は、溝長手方向に見て締結方向9に直交する面から傾斜した面とされている。また、上記と概ね同様、この溝底側面21と両側の第1側面22及び第2側面24との角部にC面取状の面取部を設けた例を示している。
また、この傾斜部ガスケット本体部20の両側の第1側面22及び第2側面24には、第1部材2と第2部材7とが締結された状態で溝底傾斜部6の各溝側壁6b,6cのそれぞれに当接される突起23,25が設けられている。
これら突起23,25は、締結方向9に沿う方向で溝底側端が他方側よりも溝開口側に位置する第1溝側壁6bに対向される第1側面22の突起23が他方側となる第2溝側壁6cに対向される第2側面24の突起25よりも締結方向9に沿う方向で溝開口側に位置するように設けられている。
【0024】
上記のような構成とすれば、第2部材7の傾斜対向面8bによって、第1部材2と第2部材7とを締結する際に第1溝側壁6b側に滑ろうとする傾斜部ガスケット本体部20の溝開口側部位20bの変形を、溝開口側に設けられた第1側面22の突起23が第1溝側壁6bに当接することで抑制することができる。また、傾斜部ガスケット本体部20の第2側面24の突起25が第1側面22の突起23よりも溝底側に位置することとなる。従って、傾斜対向面とされた溝底面6aによって、締結される際に第2溝側壁6c側に倒れようとする傾斜部ガスケット本体部20の溝底側部位20aの変形を、溝底側に設けられた第2側面24の突起25が第2溝側壁6cに当接することで抑制することができる。これにより、傾斜部ガスケット本体部20の溝底側面21を溝底面6aに安定的に当接(弾接)させることができ、シール性の低下を抑制することができる。
【0025】
また、第1側面22の突起23を、突起23,25を除いた溝幅方向に沿う寸法が溝底側部位20aよりも大とされた溝開口側部位20bに設け、第2側面24の突起25を、溝底側部位20aに設けた構成としている。また、上記と概ね同様、両側の第1側面22及び第2側面24の溝深さ方向途中部位に溝底側に段下状の段部を設けた例を示している。
また、本実施形態では、これら突起23,25は、溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝長手方向に見て突出方向先側に向かうに従い先細状の略三角形状とされている。また、このように略三角形状とされた突起23,25の両側面の第1側面22及び第2側面24に対する傾斜角度を略同角度とした例を示している。つまりは、これら突起23,25は、略二等辺三角形状の断面形状とされている。また、これら突起23,25の先端部をR面状(突湾曲面状)とした例を示している。
【0026】
また、本実施形態では、
図2(a)及び
図5(a)に示すように、これら突起23,25は、周方向に延びるように設けられている。このような構成とすれば、第1部材2と第2部材7とを締結する際における傾斜部ガスケット本体部20の上記のような好ましくない変形をより効果的に抑制することができる。
これら突起23,25の周方向に沿う寸法は、上記のように溝底面6aが傾斜対向面とされた溝底傾斜部6の溝長手寸法に応じた寸法でもよく、溝底傾斜部6の溝長手寸法の1/2以上の寸法でもよい。なお、
図5(b)において示す第1変形例に係るガスケット1Aのように、傾斜部ガスケット本体部20Aに、周方向に間隔を空けて複数の突起25Aを設けた構成としてもよい。つまりは、上記した例に代えて、周方向に断続的に突起25Aを設けた構成としてもよい。このような構成とすれば、傾斜部ガスケット本体部20Aを溝底傾斜部6に挿入させる際の負荷を軽減することができる。なお、
図5(b)では、第2側面24側の突起25Aのみを例示しているが、第1側面22側の突起も同様に周方向に断続的に設けた構成としてもよい。
【0027】
また、本実施形態では、
図4(a)に示すように、傾斜部ガスケット本体部20の自然状態における第1側面22の突起23の先端から第2側面24の突起25の先端までの溝幅方向に沿う寸法W2を、溝底傾斜部6の溝幅寸法W1よりも小としている。このような構成とすれば、第1部材2と第2部材7とを締結すれば、傾斜部ガスケット本体部20の両側面22,24の突起23,25が溝底傾斜部6の各溝側壁6b,6cに当接して上記のような好ましくない変形の抑制が可能でありながらも、これら突起23,25によって溝底傾斜部6への挿入性が低下するようなことを抑制することができる。
この第1側面22の突起23の先端から第2側面24の突起25の先端までの溝幅方向に沿う寸法W2は、第1部材2と第2部材7とが締結された状態で、
図4(b)に示すように、各突起23,25が各溝側壁6b,6cに弾性的に接触するように適宜の寸法としてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、傾斜部ガスケット本体部20の自然状態における溝底側面21から第1側面22の突起23の先端までの溝深さ方向に沿う寸法D2を、溝底傾斜部6の溝深さ寸法D1よりも小としている。このような構成とすれば、第1部材2と第2部材7とを締結する前に第1部材2の溝底傾斜部6に傾斜部ガスケット本体部20を挿入させた状態で、両側面22,24の突起23,25が溝底傾斜部6内に位置することとなる。従って、このような状態で一方の突起(溝開口側の第1側面22の突起23)が溝底傾斜部6外に位置するようなものと比べて、締結する際に突起23が引っ掛かり難くなり、上記のような傾斜部ガスケット本体部20の好ましくない変形をより効果的に抑制することができる。
【0029】
また、傾斜部ガスケット本体部20の溝開口側部位20bの端部には、上記と概ね同様、溝幅方向両側に向けて突出する突片部26,26が周方向に延びるように設けられている。これら突片部26,26は、傾斜対向面3b,8bに平行状となるように締結方向9に直交する面に対して傾斜する方向に突出するように設けられている。
また、傾斜部ガスケット本体部20の第2部材7の傾斜対向面8bに対向される反溝底側面27に、周方向に延びる突部28を設けた構成としている(
図2(b)も参照)。
この突部28は、溝底傾斜部6の溝幅方向で第2溝側壁6c側に片寄った位置となるように設けられている。つまり、突部28は、溝幅方向中心が傾斜部ガスケット本体部20の溝底傾斜部6に挿入される部分の溝幅方向中心よりも第2溝側壁6c側に片寄った位置となるように設けられている。
【0030】
上記のような構成とすれば、この突部28を第2部材7の傾斜対向面8bに弾性的に接触させてシール性を向上させることができる。また、第2部材7の直交対向面8aに当接される部分の突部18を、上記のように溝底直交部5の溝幅方向で中央部に位置させているので、直交対向面8aに対して安定的に接触させることができる。一方、第2部材7の傾斜対向面8bに当接される部分の突部28を、溝底傾斜部6の溝幅方向で第2溝側壁6c側に片寄らせた位置に設けているので、上記同様な中央部に設けたものと比べて、締結する際に突部28の第2溝側壁側部位を傾斜対向面8bに早期に接触させることができ、上記のような傾斜部ガスケット本体部20の溝開口側部位20bの好ましくない変形を効果的に抑制することができ、接触面圧の周方向における均一化を図ることができる。
【0031】
また、本実施形態では、この突部28の傾斜対向面8b側に向く面を、溝長手方向に見て傾斜対向面8bに対して傾斜状となるように、締結方向9に直交する面としている。このような構成とすれば、締結する際に突部28の第2溝側壁側部位を傾斜対向面8bにより早期に接触させることができる。
また、
図4(a)に示すように、傾斜部ガスケット本体部20の自然状態における溝底側面21から突片部26,26までの溝深さ方向に沿う寸法は、上記同様、溝底傾斜部6の溝深さ寸法D1よりも大とされている。
図4(b)に示すように、第1部材2と第2部材7とが締結された状態では、上記同様、傾斜部ガスケット本体部20が圧縮状態とされ、溝底側面21が溝底面6aに弾性的に接触する。また、この状態では、両側の第1側面22及び第2側面24の突起23,25が溝底傾斜部6の各溝側壁6b,6cのそれぞれに弾性的に接触する。また、この状態では、反溝底側の突部28も圧縮状態とされ、両側の突片部26,26の溝深さ方向両側面が傾斜対向面3b,8bに当接または近接される。なお、両側の第1側面22及び第2側面24に、溝深さ方向に延びる抜止突起等を周方向に間隔を空けて複数箇所に設けた構成としてもよい。
【0032】
次に、本実施形態に係るガスケットの他の変形例について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の各変形例では、傾斜部ガスケット本体部の両側面の突起の態様が互いに主に異なり、それ以外の先に説明した例と同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。
【0033】
図6(a)は、第2変形例に係るガスケット1Bを模式的に示す図である。
本変形例では、傾斜部ガスケット本体部20Bの両側の各側面22,24の突起23B,25Bの溝底側面の各側面22,24に対する傾斜角度を、突起23B,25Bの溝開口側面の各側面22,24に対する傾斜角度よりも緩やかな角度としている。このような構成とすれば、傾斜部ガスケット本体部20Bを溝底傾斜部6に挿入させる際の挿入性を向上させることができる。
【0034】
図6(b)は、第3変形例に係るガスケット1Cを模式的に示す図である。
本変形例では、傾斜部ガスケット本体部20Cの両側の各側面22,24の突起23C,25Cは、溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝長手方向に見て略半円状とされている。このような構成とすれば、傾斜部ガスケット本体部20Cを溝底傾斜部6に挿入させる際の挿入性をより向上させることができる。
【0035】
図7(a)は、第4変形例に係るガスケット1Dを模式的に示す図である。
本変形例では、傾斜部ガスケット本体部20Dの両側の各側面22,24の突起23D,25Dは、溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝長手方向に見て略方形状とされている。また、これら突起23D,25Dの先端面を、それぞれが対向される各溝側壁6b,6cに平行状の平坦面としている。このような構成とすれば、これら突起23D,25Dの各溝側壁6b,6cに対する接触面積を大きくすることができる。
【0036】
図7(b)は、第5変形例に係るガスケット1Eを模式的に示す図である。
本変形例では、傾斜部ガスケット本体部20Eの両側の各側面22,24の突起23E,25Eは、溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝長手方向に見て先端側を上底とする略台形状とされている。また、これら突起23E,25Eの先端面を、それぞれが対向される各溝側壁6b,6cに平行状の平坦面としている。このような構成とすれば、上記同様、接触面積を大きくすることが可能でありながらも、上記した各例と同様の断面積(溝長手方向に見た断面形状の面積)とした場合には、倒れに対して、より強い姿勢維持力を持たせることができる。
【0037】
図8(a)は、第6変形例に係るガスケット1Fを模式的に示す図である。
本変形例では、傾斜部ガスケット本体部20Fの両側の各側面22,24に、溝深さ方向に並列状に複数(図例では、2つ)の突起23F,23F,25F,25Fを設けた構成としている。これら突起23F,23F,25F,25Fは、溝長手方向に見た締結方向に沿う断面形状が溝長手方向に見て略三角形状とされている。図例では、これら突起23F,23F,25F,25Fを、互いに同寸同形状で、先端が尖頭形状とされた略二等辺三角形状とした例を示している。このような構成とすれば、これら複数の突起23F,23F,25F,25Fによって上記のような傾斜部ガスケット本体部20Fの好ましくない変形を効果的に抑制することができる。
【0038】
図8(b)は、第7変形例に係るガスケット1Gを模式的に示す図である。
本変形例においても、傾斜部ガスケット本体部20Gの両側の各側面22,24に、溝深さ方向に並列状に複数(図例では、2つ)の突起23G,23H,25G,25Hを設けた構成としている。本変形例では、第1側面22の溝開口側の突起23Gの溝幅方向に沿う突出寸法を、第1側面22の溝底側の突起23Hの同方向に沿う突出寸法よりも大としている。また、第2側面24の溝底側の突起25Gの溝幅方向に沿う突出寸法を、第2側面24の溝開口側の突起25Hの同方向に沿う突出寸法よりも大としている。このような構成とすれば、第1側面22の溝開口側の突起23G及び第2側面24の溝底側の突起25Gを各溝側壁6b,6cに効果的に当接させることができる。
【0039】
なお、上記した各例に係るガスケット1,1A~1Gにおける互いに異なる構成を、適宜、組み替えたり、組み合わせたりして適用するようにしてもよい。また、上記した各例に係るガスケット1,1A~1Gの具体的構成は、上記した例に限られず、その他、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1,1A~1G ガスケット
20,20A~20G 傾斜部ガスケット本体部(取付溝における溝底面が傾斜対向面とされた部位に挿入されるガスケット本体部)
21 溝底側面
22 第1側面
23,23B~23H 突起
24 第2側面
25,25A~25H 突起
17,27 反溝底側面
18,28 突部
2 第1部材
3 対向面
4 取付溝
5a 溝底面
6 溝底傾斜部(溝底面が傾斜対向面とされた部位)
6a 溝底面
6b 第1溝側壁
6c 第2溝側壁
7 第2部材
8 対向面
8a 直交対向面
8b 傾斜対向面
9 締結方向
D1 溝深さ寸法
D2 溝底側面から第1側面の突起の先端までの取付溝の溝深さ方向に沿う寸法
W1 溝幅寸法
W2 第1側面の突起の先端から第2側面の突起の先端までの取付溝の溝幅方向に沿う寸法