(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】配管接続構造及び接続部材
(51)【国際特許分類】
F16L 5/00 20060101AFI20221124BHJP
F16L 5/10 20060101ALI20221124BHJP
F16L 21/06 20060101ALN20221124BHJP
【FI】
F16L5/00 C
F16L5/00 J
F16L5/10
F16L21/06
(21)【出願番号】P 2018170567
(22)【出願日】2018-09-12
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓太
(72)【発明者】
【氏名】田中 武史
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆介
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-227701(JP,A)
【文献】特開2014-060844(JP,A)
【文献】特開2012-191822(JP,A)
【文献】特開2003-130226(JP,A)
【文献】特開昭50-100457(JP,A)
【文献】特開平10-030756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00
F16L 5/10
F16L 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体の貫通孔において、それぞれが軸方向に離間した状態で対向配置された第一配管及び第二配管を接続部材を介して接続する配管接続構造であって、
前記接続部材は、前記第一配管に外嵌されるとともに前記貫通孔に内嵌される第1保持部と、前記第二配管に外嵌される第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを繋ぐ繋ぎ部とを有した筒状体とされ、
前記第2保持部の内周面は、前記第二配管の外周面に当接される環状のリップ部が設けられたリップ形成領域を有し、
前記リップ形成領域に対応する前記第2保持部の外周面には、底部と一対の溝壁部とを有する凹条部が設けられ、前記凹条部には、前記第二配管への嵌合を補強する補強リングが収容され、
前記底部は、前記補強リングの内周面に当接する当接部と、前記補強リングの内周面に当接
せずに前記補強リングと前記第2保持部の外周面との間に隙間を形成する窪み部とを有し、前記当接部は、前記リップ部の前記繋ぎ部側の領域に対応する位置に形成され、前記窪み部は、前記リップ部の反繋ぎ部側の領域に対応する位置に形成されていることを特徴とする配管接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載の配管接続構造において、
前記窪み部が、さらに前記リップ部が形成されていない部位に対応する位置に形成されていることを特徴とする配管接続構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の配管接続構造において、
前記リップ部が、複数設けられていることを特徴とする配管接続構造。
【請求項4】
請求項3に記載の配管接続構造において、
前記凹条部は、前記リップ部の形成個数と同数の前記窪み部を有することを特徴とする配管接続構造。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の配管接続構造において、
前記リップ部間の距離が、前記リップ部の締め代より大とされていることを特徴とする配管接続構造。
【請求項6】
請求項3~請求項5のいずれか1項に記載の配管接続構造において、
前記リップ部に対応する複数の前記当接部は、前記軸方向において互いに隣合う一方の前記当接部の突出量及び/または幅が、他方の当接部の突出量及び/または幅より大きく、もしくは小さくなるように形成されていることを特徴とする配管接続構造。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の配管接続構造において、
前記第1保持部及び前記第2保持部は前記第一配管及び前記第二配管の径に応じて互いに径が異なり、前記繋ぎ部はテーパ形状とされていることを特徴とする配管接続構造。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の配管接続構造に用いられる接続部材であって、
前記第一配管の接続端部に装着される第1保持部と、前記第二配管の接続端部に装着される第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを繋ぐ弾性変形可能な繋ぎ部とを有していることを特徴とする接続部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁体の貫通孔において、それぞれが軸方向に離間した状態で対向配置された第一配管及び第二配管を接続する配管接続構造及びこれに用いられる接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用インバータには、インバータケース内に冷却媒体が流通する内部配管が組み込まれ、該内部配管には、インバータケースの壁体に設けられた貫通孔を通じてコンバータに繋がる外部配管が接続される。このような内部配管と外部配管とを接続する接続構造に関するものとして、下記特許文献1が挙げられる。
下記特許文献1には、2本の配管のそれぞれに装着される2個の把持部と、2個の把持部を繋ぐ繋ぎ部とを有した接続部材を用いた配管接続構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記のような接続部材の内周面には、インバータケース内及び接続部位への泥水、塵埃等の侵入を防止するため、接続部材の内周面に突出して形成された複数のリップ部が形成されている。しかしながら、リップ部はシール性を高めるために必須であるものの、内部配管に貫通孔を通じて外部配管を着脱する際に、そのリップ部によって、挿入荷重及び引き抜き荷重が増大してしまう点が問題となる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたもので、シール性能を有するとともに、配管に接続する際の挿入荷重及び引き抜き荷重を抑制することができる配管接続構造とこれに用いる接続部材とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る配管接続構造は、壁体の貫通孔において、それぞれが軸方向に離間した状態で対向配置された第一配管及び第二配管を接続部材を介して接続する配管接続構造であって、前記接続部材は、前記第一配管に外嵌されるとともに前記貫通孔に内嵌される第1保持部と、前記第二配管に外嵌される第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを繋ぐ繋ぎ部とを有した筒状体とされ、前記第2保持部の内周面は、前記第二配管の外周面に当接される環状のリップ部が設けられたリップ形成領域を有し、前記リップ形成領域に対応する前記第2保持部の外周面には、底部と一対の溝壁部とを有する凹条部が設けられ、前記凹条部には、前記第二配管への嵌合を補強する補強リングが収容され、前記底部は、前記補強リングの内周面に当接する当接部と、前記補強リングの内周面に当接せずに前記補強リングと前記第2保持部の外周面との間に隙間を形成する窪み部とを有し、前記当接部は、前記リップ部の前記繋ぎ部側の領域に対応する位置に形成され、前記窪み部は、前記リップ部の反繋ぎ部側の領域に対応する位置に形成されていることを特徴とする。
また本発明に係る接続部材は、前記配管接続構造に用いられる接続部材であって、前記第一配管の接続端部に装着される第1保持部と、前記第二配管の接続端部に装着される第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを繋ぐ弾性変形可能な繋ぎ部とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る配管接続構造とこれに用いる接続部材は、上述の構成としたことで、シール性能を有するとともに、配管に接続する際の挿入荷重及び引き抜き荷重を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る配管接続構造とこれに用いる接続部材の一実施形態に係る要部を模式的に示した断面図である。
【
図2】(a)は同実施形態に係る接続部材を模式的に示す一部拡大断面図であり(
図1のX部・部分拡大図)、(b)は(a)の変形例を示す一部拡大断面図である。
【
図3】(a)及び(b)は、
図2(a)のさらなる変形例を示す一部拡大断面図である。
【
図4】(a)及び(b)は、
図2(a)のさらに異なる変形例を示す一部拡大断面図である。
【
図5】(a)及び(b)は、
図2(a)のさらに異なる変形例を示す一部拡大断面図である。
【
図6】同実施形態に係る配管接続構造とこれに用いる接続部材を説明するための図であり、配管同士を接続する前の状態を模式的に示す断面図である。
【
図7】同実施形態に係る配管接続構造とこれに用いる接続部材を説明するための図であり、配管同士を接続した後の状態を模式的に示す断面図である。
【
図8】同実施形態に係る配管接続構造とこれに用いる接続部材を説明するための図であり、接続された配管の一方を引き抜く状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。また
図1では、接続部材3の構成要素の形状をわかり易く説明するため、弾性変形していない原形状の接続部材3を実線で示しているが、実際には
図6~
図8に示すように弾性変形した状態で組み付けられる。
【0010】
本実施形態に係る配管接続構造は、壁体101の貫通孔10において、それぞれが軸方向に離間した状態で対向配置された第一配管1及び第二配管2を接続部材3を介して接続する配管接続構造である。接続部材3は、第一配管1に外嵌されるとともに貫通孔10に内嵌される第1保持部30と、第二配管2に外嵌される第2保持部40と、第1保持部30と第2保持部40とを繋ぐ繋ぎ部50とを有した筒状体とされる。第2保持部40の内周面40aは、第二配管2の外周面2aaに当接される環状のリップ部42が設けられたリップ形成領域Aを有する。リップ形成領域Aに対応する第2保持部40の外周面40bには、底部41bと一対の溝壁部41a,41aとを有し、第2保持部40に外嵌され第二配管2への嵌合を補強する補強リング4が収容される凹条部41が設けられている。凹条部41の底部41bには、補強リング4の内周面4aに当接する当接部41baと、補強リング4の内周面4aに当接しない窪み部41cとを有する。当接部41baは、リップ部42の繋ぎ部50側の領域に対応する位置に形成され、窪み部41cは、リップ部42の反繋ぎ部側の領域に対応する位置に形成されている。
【0011】
本実施形態の配管接続構造は、例えば自動車用電子機器を冷媒によって冷却する冷却器の冷却パイプと外部ホースとを接続する構造として適用することができる。この場合、冷媒の漏洩防止だけでなく外部からの雨水等の浸入、車両等を高圧洗浄する際の水の噴射にも耐えられ、さらには配管が偏心しても維持できるシール性が求められる。そしてこのようなシール性を有するとともに、上述のとおり、配管同士を接続する際の挿入荷重及び引き抜き荷重を抑制することも求められる。以下では、自動車用インバータケース100内に配設された第二配管2と、インバータケース100の外部に配設された第一配管1とを接続部材3によって接続する配管接続構造について説明する。
【0012】
自動車の駆動源として電動機を備えたものの場合、電動機の動作はインバータにより制御されている。電動機はバッテリから電力を得て駆動力を発生するモータ等として働き、インバータは、バッテリ等から供給される直流電源をスイッチング作用により交流電源に変換して電動機に電力の供給を行っている。このような自動車に用いられるインバータは大きな電力量を求められ、スイッチング素子等に大電流が流れるため、発熱量が多い。そこで、インバータを収容するインバータケース100内に冷却水や冷却液等の冷媒が流れる冷媒流路を構成し、インバータを冷却するシステムが採用されている。
【0013】
<配管接続構造>
インバータケース100は、上下に分割して構成された略直方体形状の箱体とされ、
図1では壁体101として示す上ケースと下ケースとを備えている。インバータケース100は、断面視して略凹状の下ケースの上に断面視して略凹状の上ケースが被さるようにして接合されて構成されており、互いがボルト等の連結具で締結され一体とされる。インバータケース100はアルミニウム等の金属材等からなり、インバータケース100内には、インバータを冷却するための冷却水や冷却液などの冷媒を流通させるための冷媒流路が設けられ、第二配管2(冷却パイプ)は、その冷媒流路の一部を構成するように配設されている。上ケースと下ケースとの側壁には、両者が接合されインバータケース100とした際に貫通孔10が形成されるように向かい合う位置に半円形の切欠孔が形成されている。第二配管2は、
図1に示すようにその接続端部2aの先側が、貫通孔10内に位置するように配されているので、インバータケース100の外側から貫通孔10を通じてインバータケース100の内部を覗くと、第二配管2の接続端部2aの先側を視認することができる。貫通孔10の形状は特に限定されるものではなく、第二配管2と接続される第一配管1(外部ホース)の形状、大きさに応じて形成されている。貫通孔10の径は、挿通される第一配管1の外径よりも大になるよう形成される。
なお、ここで第二配管2は、冷媒流路の一部を構成するものとして説明するが、これに限定されず、別途設けられる冷媒流路と連通するものであってもよい。また図中、Lはインバータケース100に設けられた貫通孔10の軸心を示し、L1は第一配管1の軸心、L2は第二配管2の軸心、L3は接続部材3の軸心を示す。よって、
図1のように軸心L、軸心L1~L3が一致している状態が接続状態として望ましいが、本実施形態の接続構造はこれら軸心L~L3が偏心することを想定した構造である。
【0014】
<接続部材>
接続部材3は、第一配管1と第二配管2とを接続し、冷媒流路を形成するための部材であり、全体がエチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム等のゴム材、エラストマー、合成樹脂等からなる弾性体による筒状の成型体とされている。接続部材3は、第1保持部30と、第2保持部40と、繋ぎ部50とを有し、接続部材3の一方端3aが第1保持部30の端部とされ、他方端3bが第2保持部40の端部とされている。第1保持部30は、第一配管1の接続端部1aに被さるように外嵌されるとともに貫通孔10の内周面10aに内嵌される。第2保持部40は、第二配管2の接続端部2aに被さるように外嵌される。繋ぎ部50は、第1保持部30と第2保持部40とを繋ぐ部材であり、繋ぎ部50自体が弾性を備えているので、これによって、第一配管1、第二配管2が偏心しても、径方向の変位が可能となる。
第一配管1の外径は、第二配管2の外径より若干大とされ、これに伴い、第1保持部30の内径は、第2保持部40の内径より大とされている。よって、これら第1保持部30と第2保持部40とを繋ぐ繋ぎ部50は、第1保持部30から第2保持部40に向けて漸次縮径するテーパ形状とされている。
【0015】
<第一配管,第二配管>
第一配管1は、樹脂材やアルミニウム材等の中空の円筒状体からなり、インバータケース100内の冷媒流路回路となる第二配管2へ冷媒を送り込むよう構成されている。第二配管2は、樹脂材やアルミニウム材等の中空の円筒状体からなり、第一配管1から供給された冷媒が内部を流通する。
第一配管1の接続端部1aには、接続部材3の第1保持部30が嵌合される環状の凹部11と、凹部11のさらに外周に径方向外向きに突出して形成された環状の鍔部12とが設けられている。凹部11は、底部11cと第一配管1の外周面1aaとなる内壁11aと外壁11bと開口部11dとを有し、凹部11には接続部材3の第1保持部30が嵌合される。この凹部11と第1保持部30との嵌合部位には、空気通路となる筋状のスリット部(不図示)が軸方向に沿って形成されているものとしてもよい。スリット部が凹部11の底部11cから開口部11dに至るように外壁11bに沿って形成されたものとすれば、第1保持部30を嵌合する際にスリット部から空気が抜け、接続部材3の第1保持部30を第一配管1の外周面1aa(凹部11の内壁11aにも相当する)に挿入しやすい。鍔部12は、第一配管1と第二配管2とが接続部材3によって接続された状態で、壁体101に当接するように貫通孔10よりも大きい径とされ、この鍔部12には、ビス等の固定具が挿通される挿通孔(不図示)が形成されている。そしてこの鍔部12を不図示の固定具によって壁体101の外側面に固着することにより外部配管である第一配管1が壁体101に固定される。
一方、第二配管2の接続端部2aの先側は、接続部材3が脱着され易いように若干径が他の部位より小さい傾斜した先側部2abを備えている。
なお、凹部11及び鍔部12は、
図1のように第一配管1に一体に形成されていてもよいし、別体として、筒状の配管に嵌合させる構成としてもよい。
【0016】
<第1保持部>
第1保持部30は、内周リップ部32と、内周突部33と、外周リップ部31と、平坦部34と、端部35とを有している。内周リップ部32は、周方向に連続した環状のリップであり、第一配管1の外周面1aaに弾接し、内周リップ部32は弾性変形した状態で凹部11に嵌合される。内周突部33は、内周リップ部32に隣接して設けられている。外周リップ部31は、周方向に連続した環状のリップであり、貫通孔10の内周面10aに曲げ変形に伴う締め代を有して弾接する。外周リップ部31の突出量は、内周リップ部32の突出量より大きい。平坦部34は、凹部11の外壁11bに沿うように当接するように平坦に形成されている。端部35は、凹部11の底部11cに沿って当接するように平坦に形成されている。内周リップ部32は、複数、並んで設けられ、複数の内周リップ部32,32が配された内周側の領域を内シール領域S1という。また外周リップ部31が配された外周側の領域を外シール領域S2という。これら内シール領域S1と外シール領域S2とは、径方向に重ならない位置に設けられている。
【0017】
このように内シール領域S1と外シール領域S2とが、径方向に重ならない位置に設けられているので、第一配管1の接続端部1aに接続部材3を嵌合し組み付けた状態で、壁体101の貫通孔10に挿入する際、挿入荷重の上昇を防ぐことができ、組み付け性がよいものとできる。また第一配管1の軸心L1と貫通孔10の軸心Lがずれて偏心した場合でも、内シール領域S1と外シール領域S2とが径方向に重ならない位置に設けられているので、偏心時の内外シール領域S1,S2の面圧変動や内部応力に影響を受けず、シール性を維持することができる。
また内シール領域S1は、外シール領域S2より第一配管1の挿入方向に対して反対側に設けられ、内シール領域S1が形成された部位に対応する外周面30bが平坦部34とされ第一配管1の凹部11に嵌合される。よって、第一配管1が偏心しても内シール領域S1に配された内周リップ部32,32は安定したシール性を確保できる。
【0018】
内周突部33は、内シール領域S1に設けられた内周リップ部32,32に隣接して設けられ、外周リップ部31が形成された位置に対応する内周面30aに形成されるため、外周リップ部31の面圧を発生させるための支えとなる。内周突部33は、周方向に沿って連続して形成されているものとしてもよいし、適宜間隔を空けて形成されているものとしてもよい。内周リップ部32は、
図7及び
図8に示すように、弾性変形し倒れる程の長さを有して形成され、内壁11aに弾接する弾接部分が先細の断面山型形状に形成されている。内周突部33は、内周リップ部32より小さい突出量の断面山型形状に形成されている。
内周突部33が、外周リップ部31の形成された位置に対応する内周面30aに設けられているので、第一配管1に偏心しようとする力が加わっても、第一配管1の姿勢を正しい位置に(第一配管1の軸心L1と貫通孔10の軸心Lとがほぼ一致する位置)保持することができる。また第一配管1が偏心した場合でも、内周突部33が第一配管1の外周面1aaに当接して内周リップ部32の過圧縮を抑制し、内周リップ部32のシール面圧に影響を与えることを防止するので、安定したシール性を維持できる。さらに第一配管1を通じる冷媒の圧力があがると、第一配管1に装着された第1保持部30は凹部11から抜けようとする力が生じるが、内周リップ部32と内周突部33の押し付ける力で第1保持部30が抜けないように作用する。
なお、本実施形態は、内周突部33は、第一配管1の外周面1aaに当接する例を図示しているが、偏心したときには弾接するが、正しい位置にある場合には、外周面1aaに近接(若干隙間がある)するものとしてもよい。
【0019】
第1保持部30の外周面30bには、貫通孔10の内周面10aに弾性変形した状態で当接する外周リップ部31が設けられている。外周リップ部31は、第一配管1の挿入方向に対して反対側となる一方の面は直線状をなし、他方の面は先端部に向けて次第に先細になる傾斜状をなしている。一方の面の外周リップ部31の基部には、貫通孔10の内周面10aに弾接する際に外周リップ部31の屈曲点となる屈曲部31bを有している。屈曲部31bは、外周面30bから一方の面へと傾斜して形成された傾斜部31aと前記一方の面との交点とされる。また外周リップ部31は、
図7及び
図8に示すように倒れた状態に変形して貫通孔10の内周面10aに弾接する。よって、第一配管1の偏心時も貫通孔10の内周面10aとのシール性が維持でき、外周リップ部31の曲げ変形により、高い追従性を実現できる。また貫通孔10の内周面10aに外周リップ部31を弾接させる際、屈曲部31bを屈曲点として外周リップ部31を撓ませることができ、屈曲部31bが外周リップ部31の基部にあるので、滑らかな撓みでなく、急激に折れるように屈曲させることできる。これにより、貫通孔10に第一配管1を挿入するときの挿入荷重を下げることができ、挿入性能を高めることができる。また、貫通孔10の内周面10aへの外周リップ部31の接触面が広くなり、シール性が向上する。さらに外周リップ部31の接触面を広くすることができるため貫通孔10の内周面10aに鋳巣や傷、異物のかみこみ等がある場合、又は外周リップ部31の表面が多少うねったり、ねじれている場合においてもの弾接によりシール機能を保持することができる。
【0020】
<繋ぎ部>
繋ぎ部50は、第一配管1の接続端部1aに装着される第1保持部30と、第二配管2の接続端部2aに装着される第2保持部40とを繋ぎ、弾性変形可能とされている。第1保持部30及び第2保持部40は第一配管1及び第二配管2の径に応じて互いに径が異なるため、繋ぎ部50はテーパ形状とされている。すなわち、繋ぎ部50は接続部材3の軸心L3に対し傾斜して形成され、繋ぎ部50に角度がある。そのため、接続部材3の成型時に、抜き勾配の役目を果たし、離型しやすい。
【0021】
繋ぎ部50には、外周リップ部31の挿入方向側(第2保持部40側)に隣接して断面山型形状で且つ貫通孔10の内周面10aに弾接する外周突部51が設けられている。外周突部51は、周方向に沿って連続して形成されているものとしてもよいし、適宜間隔を空けて形成されているものとしてもよい。外周突部51は、外周リップ部31より小さい突出量の断面山型形状に形成されている。このように外周突部51が、外周リップ部31の挿入方向側に隣接して設けられているので、外周突部51が貫通孔10の内周面10aに確実に当接し、この外周突部51の存在によっても、偏心しようとする第一配管1の姿勢を上述と同様、正しい位置に保持することができる。また第一配管1が偏心した場合でも、外周突部51が貫通孔10の内周面10aに当接して外周リップ部31の過圧縮を抑制し、外周リップ部31のシール面圧に影響を与えることを防止してシール性を維持できる。
なお、本実施形態は、外周突部51は、貫通孔10の内周面10aに当接する例を図示しているが、偏心したときには弾接するが、正しい位置にある場合には、内周面10aに近接(若干隙間がある)するものとしてもよい。
【0022】
このように貫通孔10の内周面10aと接続部材3との間は、外周リップ部31によってシールされ、第一配管1と第二配管2の軸心L1,L2がいずれかの方向に偏心するような場合は、外周突部51が貫通孔10の内周面10aに当接することで接続部材3が支持され、第1保持部30及び第2保持部40の第一配管1及び第二配管2に対するシール面圧への影響を抑制することができる。また外周突部51によって、接続部材3が支持され、径方向の変位によるくぼみや座屈等の発生を防止するので、第一配管1を貫通孔10に挿入し、第二配管2に接続部材3を介して接続する組付け作業がしやすくなる。
【0023】
<第2保持部>
第2保持部40の内周面40aは、第二配管2の外周面2aaに当接され環状のリップ部42が設けられたリップ形成領域Aを有している。この内周面40aに形成されたリップ形成領域Aに対応する第2保持部40の外周面40bには、底部41bと一対の溝壁部41a,41aとを有する環状の凹条部41が設けられている。凹条部41は周方向に沿って環状に形成されており、凹条部41には、第二配管2への嵌合を補強する補強リング4が嵌合した状態で収容されている。補強リング4は金属材、合成樹脂材等からなる環状体であり、凹条部41の溝深さ及び溝幅の寸法に応じて形成されている。
図1のX部に示すように、リップ形成領域Aに対応する第2保持部40の外周面40bに補強リング4が配される。補強リング4は、第2保持部40の凹条部41に収容された状態で、第二配管2に外嵌された際には、求心方向に締め付け作用を発揮し、補強リング4及びリップ部42による第二配管2への密封力を強固にすることができ、第二配管2をより安定して保持できる。
【0024】
第2保持部40の端部、すなわち接続部材3の他方端3b側には、リップ部42に隣接して、突部43が形成されている。突部43は、周方向に沿って連続して形成され、第二配管2に接続部材3を挿入しやすいように、その頂部は、挿入方向とは反対側に傾斜した断面山型形状に形成されている。突部43は、第二配管2の外周面2aaに弾接するように形成されている。突部43の突出量及び隣接するリップ部42との間隔は、突部43が第二配管2の外周面2aaに嵌合され頂部が若干弾性変形し、リップ部42側に倒れた際でも、リップ部42には当接しない程度の突出量及び間隔を空けて形成されることが望ましく、リップ部42の突出量よりも突部43の突出量の方が小さい構造としている。
【0025】
第2保持部40に設けられた凹条部41の底部41bは、補強リング4の内周面4aに当接する当接部41baと、補強リング4の内周面4aに当接しない凹状の窪み部41cとを有している。当接部41baは、複数のリップ部42のそれぞれの繋ぎ部側42a(接続部材3の一方端3a側)及び突部43の繋ぎ部側43aの領域に対応する位置に形成される。また窪み部41cは、リップ部42の反繋ぎ部側42b(接続部材3の他方端3b側)の領域に対応する位置に形成されている。
【0026】
このように第2保持部40の外周面40bに設けられた底部41bに窪み部41cを有しているので、補強リング4と第2保持部40の外周面40bとの間に隙間を形成することできる。これにより、補強リング4と第2保持部40との接触面積を減らし、第二配管2に補強リング4が外嵌された第2保持部40を挿入する時及び引き抜き時に発生するリップ部42の面圧を低減し、挿入及び引き抜き荷重を低減することができる。さらに補強リング4が収容される凹条部41に窪み部41cが形成されていることにより、補強リング4自体を第2保持部40の外周面40bに外嵌する際、接触面が少なくなり、摩擦による抵抗が低減され、補強リング4が組付けやすくなるという効果も奏する。また、当接部41baは、リップ部42の繋ぎ部側42aの領域に対応する位置に形成され、窪み部41cは、リップ部42の反繋ぎ部側42bの領域に対応する位置に形成されているので、挿入後はリップ部42のシール面圧を適度に確保できると共に、接続部材3の挿入及び引き抜き荷重を低減することができる。
【0027】
続いて、
図2~
図5を参照しながら第2保持部40に関し、さらに詳述する。この
図2~
図5では、説明のため、補強リング4の図示は省略している。
図2(a)は、
図1のX部に相当する箇所の部分拡大断面図である。
図2(a)は、第2保持部40に、複数のリップ部42と、複数の当接部41baと、複数の窪み部41cとが設けられた例を示している。
複数のリップ部42は、いずれも同大同形の断面山型形状でなり、周方向に沿って環状に形成されている。当接部41baは、各リップ部42の繋ぎ部側42aの領域に対応する位置(リップ部42の繋ぎ部側42aの裏側)から各リップ部42の頂部42cの領域に対応する位置(リップ部42の頂部42cの裏側)まで形成されている。また突部43の繋ぎ部側43aの領域に対応する位置(突部43の繋ぎ部側43aの裏側)から他方端3b側の溝壁部41aに至るまでの領域にも、当接部41baが形成されている。当接部41baは、リップ部42と同様に周方向に環状に設けてもよいが、不連続に適宜間隔を空けて形成されるものとしてもよい。当接部41baがリップ部42の繋ぎ部側42aの領域に対応する位置に形成されているので、第二配管2に第2保持部40が挿入された際に繋ぎ部50側に傾斜するように弾性変形したリップ部42が当接部41baを介して補強リング4によって支えられた構造となるため、シール面圧をより高めることができ、シール性能を向上させることができる。ここでは各当接部41baが起立した状態のリップ部42の繋ぎ部側42aから頂部42cに亘り径方向に重なるように設けられた例を示しているが、これに限定されない。例えばリップ部42は、第二配管2に接続された状態では、
図7に示すように第二配管2の外周面2aaに当接し弾性変形して倒れた状態となる。この倒れた状態のリップ部42に重なる位置(繋ぎ部側42aの領域に対応する位置)に当接部41baが設けられていれば、
図2(a)等に示すように当接部41baが起立した状態のリップ部42に径方向で重なるように設けられていなくてもよい。
【0028】
また底部41bに形成される窪み部41cは、リップ部42の反繋ぎ部側42bの領域に対応する位置からリップ部42が形成されていない部位に対応する位置に形成されている。具体的には、
図2(a)に示す例は、窪み部41cが計3個形成されており、そのうち、最も繋ぎ部50側に設けられた窪み部41cは、繋ぎ部50側に配されたリップ部42の反繋ぎ部側42bの領域に対応する位置から隣接する中央のリップ部42の繋ぎ部側42aの領域に対応する位置まで形成されている。また繋ぎ部50側から2つ目に形成された窪み部41cも、中央のリップ部42の反繋ぎ部側42bの領域に対応する位置から隣接するリップ部42の繋ぎ部側42aの領域に対応する位置まで形成されている。そして他方端3b側に設けられた窪み部41cは、他方端3b側に配されたリップ部42の反繋ぎ部側42bの領域に対応する位置から他方端3b側に形成された突部43の繋ぎ部側43aの領域より手前に対応する位置まで形成されている。
このように設けられた窪み部41cにより、第二配管2に補強リング4が外嵌された第2保持部40を挿入する時及び引き抜き時に発生するリップ部42の面圧を十分に低減し挿入及び引き抜き荷重を低減することができる。
【0029】
さらに凹条部41はリップ部42の形成個数と同数の窪み部41cを有している。
図2(a)の例では、3個のリップ部42に対応して、3個の窪み部41cが設けられている。窪み部41cは、リップ部42と同様に周方向に環状に設けてもよいが、不連続に適宜間隔を空けて形成されるものとしてもよい。このように窪み部41cをリップ部42の個数に対応して設けているので、リップ部42の増加による面圧の過度な上昇を抑制することができる。また、リップ部42が複数あることで、第二配管2が傾いて偏心した場合であっても、第2保持部40が追従してシール面圧を確保することができる。さらに、個々のリップ部42に対して窪み部41cを設けているので、補強リング4を凹条部41に組付けする際の接触面積が小さくなり、組付性を向上させることができる。
【0030】
第2保持部40に設けられたリップ部42,42,42は、一定の距離Lp(間隔)を空けて形成されている。リップ部42,42,42の突出量LHは、隣接するリップ部42,42間の距離Lpより大(LH>Lp)とされる。リップ部42は、第二配管2に対し、締め代Lhを持って弾接するよう構成され、隣接するリップ部42,42間の距離Lpは、リップ部42の締め代Lhより大(Lp>Lh)とされる。
第二配管2は振動したり、第二配管2の素材によっては第二配管2に熱膨潤が生じる場合があるが、そのような場合でも、複数のリップ部42,42同士が上述のように設けられていれば、第二配管2への組み付け状態で接触せず(
図7参照)、第二配管2の動きに追従し、シール性を維持できる。また、隣接するリップ部42,42同士が第二配管2への組み付け状態で接触しないため、リップ部42の相互の固着(リップ部42,42に貼り付きが発生しない)によってリップ反力が過度に上昇することはなく挿入及び引き抜き荷重の上昇を防止し、挿抜性能を向上させることができる。
これに対して、例えば第2保持部40に設けられた隣接するリップ部42,42間の距離Lpより突出量LHを小(LH<Lp)とした場合は、距離Lpが空きすぎである上、リップ部42の突出量LHが足りず、第二配管2の動きに追従できない。従ってシール性を維持し難い。また例えば、隣接するリップ部42,42間の距離Lpは、リップ部42の締め代Lhより小(Lp<Lh)とした場合、隣接するリップ部42,42同士が第二配管2への組み付け状態で接触してしまい、リップ部42の相互の固着(リップ部42,42に貼り付きが発生する)によってリップ反力が過度に上昇し、挿入及び引き抜き荷重が上昇してしまう。
【0031】
リップ部42、当接部41ba、窪み部41cの構成は
図2(a)に示す例に限定されるものではない。
図2(b)~
図5(b)には、種々変形例を示している。共通部分に同一の符号を付し、その構成及び作用・効果等の説明を省略する。
まず
図2(b)~
図3(b)には、リップ部42、当接部41ba、窪み部41cの変形例を種々示している。
図2(b)に示す例は、窪み部41cがリップ部42の形成個数に対応していない例である。ここに示す窪み部41cは、リップ部42が3個に対して、幅広の窪み部41cが1個形成されている。
すなわち、窪み部41cは、最も繋ぎ部50側に配されたリップ部42の反繋ぎ部側42bの領域に対応する位置から他方端3b側に配されたリップ部42の反繋ぎ部側42bの領域に対応する位置まで形成されている点で、
図2(a)に示す例とは異なる。また、繋ぎ部50側に配されたリップ部42の繋ぎ部側42aの領域に対応する位置からリップ部42の頂部42cの領域に対応する位置と、突部43の繋ぎ部側43aの領域に対応する位置から他方端3b側の溝壁部41aに至るまでの領域に、当接部41baが形成されている点は、
図2(a)に示す例と同様である。
【0032】
図3(a)に示す例は、リップ部42及び窪み部41cの形成個数が、
図2(a)と異なり、1個の例である。ここに示す例は、繋ぎ部50側に配されたリップ部42及び突部43の裏側(繋ぎ部側42a,43aの領域に対応する位置)に当接部41baが形成され、これらの当接部41baの間に幅広の窪み部41cが形成されている。
図3(b)に示す例は、リップ部42及び窪み部41cの個数が、
図2(a)とは異なり、2個の例である。ここに示す例は、
図2(a)に示す中央のリップ部42及び対応する当接部41baが設けられていない点で相違するが、その他の繋ぎ部50側及び他方端3b側に配されたリップ部42及び対応する2つの当接部41baについては同じ構造である。また、一方の窪み部41cは、他方の窪み部41cより幅広に形成されている。具体的には、一方の窪み部41cは、繋ぎ部50側に配された一方のリップ部42の反繋ぎ部側42bの領域に対応する位置から、他方端3b側に配された他方のリップ部42の繋ぎ部側42aの領域に対応する位置まで形成されている。また他方の窪み部41cは、他方端3b側に配された他方のリップ部42の反繋ぎ部側42bの領域から突部43の繋ぎ部側43aの領域より手前に対応する位置まで形成されている。
図2(b)~
図3(b)に示すように構成した場合でも、所望のシール性能を有するとともに、配管に接続する際の挿入荷重及び引き抜き荷重を抑制することができる。
【0033】
次に
図4(a)及び
図4(b)には、当接部41baのさらなる変形例を種々示している。
当接部41baは、リップ部42の繋ぎ部側42aの領域に対応する位置に形成されていればよく、
図4(a)に示す例のように、
図2(a)に示す当接部41baよりも、若干繋ぎ部50側に寄って形成されたものとしてもよい。また
図4(b)に示す例のように、
図2(a)に示す当接部41baよりも幅広に形成されたものとしてもよい。
図4(a)及び
図4(b)に示すように当接部41baの形成面積に大小あっても、当接部41ba及び窪み部41cはリップ部42との関係で所定位置に形成されていれば、所望のシール性能を有するとともに、配管に接続する際の挿入荷重及び引き抜き荷重を抑制することができる。
【0034】
図5(a)及び
図5(b)には、当接部41baの突出量及び幅の変形例を示している。
図5(a)に示すように複数のリップ部42に対応する複数の当接部41baは、軸方向において互いに隣合う一方の当接部41baの突出量が、他方の当接部41baの突出量より小さくなるように形成してもよい。具体的には、繋ぎ部50側に近い位置に設けられた当接部41baの突出量が、中央の当接部41baより、大きく突出し、他方端3bに近い位置に設けられた当接部41baの突出量が、中央の当接部41baより、小さく突出している。すなわち、当接部41baの突出量が繋ぎ部50側から大・中・小に形成されている。
【0035】
また
図5(b)に示すようにリップ部42に対応する複数の当接部41baは、軸方向において互いに隣合う一方の当接部41baの幅が、他方の当接部41baの幅より小さくなるように形成してもよい。具体的には、繋ぎ部50側に近い位置に設けられた当接部41baの幅が、中央の当接部41baより、幅広に形成され、他方端3bに近い位置に設けられた当接部41baの幅が、中央の当接部41baより、幅狭に形成されている。すなわち、当接部41baの幅が繋ぎ部50側から大・中・小に形成されている。
以上とすれば、補強リング4に当接する複数の当接部41baの突出量又は幅を異ならせているので、リップ部42のそれぞれの面圧を個別に調整することができる。よって、第二配管2の偏心を想定したシール設計を行うことができ、偏心する第二配管2への追従性を一層よくすることができる。
さらに、図示していないが、複数の当接部41baは、軸方向において互いに隣合う一方の当接部41baの突出量及び幅が、他方の当接部41baの突出量及び幅より大きくなるように形成してもよいし、小さくなるように形成してもよい。
【0036】
続いて、
図6、
図7を参照しながら、前記のように構成された接続部材3を用いて、第一配管1及び第二配管2を貫通孔10において接続する要領を説明する。
<接続要領>
先ず、接続部材3には、補強リング4を予め第2保持部40の凹条部41に嵌合させ収容しておく。このとき、補強リング4が収容される凹条部41に窪み部41cが形成されているので、補強リング4の接触面が少なくなり、摩擦による抵抗が低減され、補強リング4が組付けやすい。
次いで
図6に示すように第一配管1の凹部11に接続部材3の第1保持部30を嵌合し、第一配管1に接続部材3を組み付けた状態とする。この組み付け時に内周リップ部32は、底部11cから開口部11dに向かって斜めに倒れた状態に弾性変形する。
【0037】
そして、壁体101の貫通孔10に外部より接続部材3、続いて第一配管1を挿通させていく(
図6の白抜き矢印方向参照)。接続部材3の他方端3bが、第二配管2の接続端部2aに至り、はじめに突部43の頂部が、第二配管2の先側部2abに弾接する。先側部2abは、第二配管2の他部位より、径が小さく漸次拡径するように傾斜して形成されているので、挿入方向とは反対側に傾斜した突部43はスムーズに弾性変形する。そして、次いで他方端3b側に配置されたリップ部42が第二配管2の外周面2aaに弾接して、圧縮されながら弾性変形し、斜めに傾斜した状態で第二配管2に被さるように外嵌される。この際、窪み部41cが弾性変形するリップ部42を逃がす空間となり、リップ部42の過度の充填又は過圧縮を防ぎ、挿入荷重を低減することができる。また、各当接部41baは各リップ部42の繋ぎ部側42aの領域に対応する位置に形成されているので、各リップ部42による第二配管2のシール面圧を維持することができる。
【0038】
そして、
図7に示すように第一配管1の鍔部12が壁体101に当接する程度まで、接続部材3を第二配管2に向けて挿通させていく。すると、貫通孔10の内周面10aに外周リップ部31が弾接した状態となる。このとき、内シール領域S1と外シール領域S2とが径方向に重ならない位置に設けられているので、挿入荷重の上昇を防ぐことができ、組み付け性がよいものとできる。また第一配管1の軸心L1と貫通孔10の軸心Lがずれて偏心した場合でも、内シール領域S1と外シール領域S2とが径方向に重ならない位置に設けられているので、偏心時の内外シール領域S1,S2の面圧変動や内部応力に影響が少なく、安定したシール性を維持することができる。またこのとき、繋ぎ部50が弾性を有して径方向に変位することができるので、貫通孔10の軸心Lと、第二配管2の軸心L2とに多少の芯ずれがあっても、繋ぎ部50の弾性変形によって吸収される。特に、繋ぎ部50はテーパ形状とされているから、繋ぎ部50自体が弾性体からなることと相俟って、偏心のずれ分の吸収が効果的になされる。さらに外周リップ部31は屈曲部31bを備えているので、貫通孔10の内周面10aに弾接される際、屈曲部31bを屈曲点として外周リップ部31を急激に折れるように屈曲させることできる。これにより、貫通孔10に第一配管1を挿入するときの挿入荷重を下げることができ、挿入性能を高めることができる。
最後に、第一配管1の鍔部12を固定具によって壁体101に固定すれば、2本の配管1,2の接続が完了する。
【0039】
この
図7に示す接続状態では、第1保持部30の第一配管1に対する外嵌部分及び第2保持部40の第二配管2に対する外嵌部分には、それぞれ環状の内周リップ部32、リップ部42が圧縮状態で介在するので、シール性の高い接続構造とすることができ、第一配管1と第二配管2との間を、冷媒が接続部材3を介して流通可能となる。また、第1保持部30と貫通孔10との間に環状の外周リップ部31が圧縮状態で介在することによって、貫通孔10を通じたインバータケース100の内外がシールされ、貫通孔10を通じて外部から塵埃等がインバータケース100内に侵入することを防止できる。
【0040】
次いで、
図7及び
図8を参照しながら、前記のように接続された第一配管1を引き抜く際の引き抜き要領を説明する。
<引き抜き要領>
まずは、第一配管1の鍔部12の挿通孔に挿通され、第一配管1を壁体101に固定する固定具を外し、第一配管1の鍔部12等をつかんで第二配管2から引き離す方向、すなわち引き抜き方向に力を加える。すると、リップ部42,突部43及び外周リップ部31は
図7に示すように反挿入方向に倒れた状態で第2配管2又は貫通孔10の内周面10aに沿ってスライドし、接続部材3が第二配管2から離脱し、第一配管1とともに接続部材3も、第二配管2からスムーズに引き抜くことができる。このとき、凹条部41に窪み部41cが設けられているので、引き抜き時にリップ部42が反転することが抑えられ、リップ部42の反転による引き抜き荷重の上昇を防止することができる。また、
図8に示すようにリップ部42,突部43及び外周リップ部31が第二配管2又は貫通孔10の内周面10aに張り付いて反転した場合でも、凹条部41に窪み部41cが設けられ、補強リング4との接触面が少ないため、引き抜き荷重を低くすることができる。また複数のリップ部42が所定の距離Lp(間隔)を空けて形成され、リップ部42は所定の突出量LH及び締め代Lhで形成されているので、隣り合うリップ部42,42同士の相互の固着が発生せず、リップ反力が上昇することもない。よって、引き抜き荷重の上昇を防止できる。
そして、上述の状態で、そのまま引く抜き方向に力を加えていけば、接続部材3が第二配管2から離脱し、第一配管1とともに接続部材3も、第二配管2からスムーズに引き抜くことができる。
【0041】
なお、前記実施形態では、自動車用インバータケース100内に配設された第二配管2と、インバータケース100の外部に配設された第一配管1とを接続部材3によって接続する配管接続構造及びこれに用いられる接続部材3に適用した例について述べたが、壁体の貫通孔において、それぞれが軸方向に離間した状態で対向配置された第一配管及び第二配管を接続部材を介して接続する配管接続構造であれば、他の配管接続構造にも同様に適用可能である。また、接続部材3の構成も一例であって、図例に限定されるものではなく、リップ部42,当接部41ba,窪み部41cの個数・形状は図例に限定されるものではない。その他の突部43,外周リップ部31,内周リップ部32,内周突部33,外周突部51の個数・形状(突出量、突出幅等)等も図例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
100 インバータケース
101 壁体
10 貫通孔
1 第一配管
2 第二配管
3 接続部材
30 第1保持部
40 第2保持部
40a 内周面
40b 外周面
41 凹条部
41a 溝壁部
41b 底部
41ba 当接部
41c 窪み部
42 リップ部
42a 繋ぎ部側
42b 反繋ぎ部側
50 繋ぎ部
4 補強リング
A リップ形成領域