(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】処理回路、表示装置、及び、処理方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3233 20160101AFI20221124BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 611A
G09G3/20 612U
G09G3/20 631A
G09G3/20 641P
(21)【出願番号】P 2019013493
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敏行
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-250463(JP,A)
【文献】特開2010-8739(JP,A)
【文献】特開2014-26016(JP,A)
【文献】特開2020-115177(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0251595(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が自発光素子を含む複数の画素を有する表示パネルと、前記複数の画素に供給される電流を制限する電流制限回路とを有する表示装置用の映像信号を処理する処理回路であって、
前記処理回路に入力される現フレームの前のフレームである前フレームの前記複数の画素に対応する前記映像信号を記憶するフレームメモリと、
前記複数の画素に含まれる一つの画素に対応する前記現フレームの前記映像信号が示す輝度と、前記一つの画素に対応する前記前フレームの前記映像信号が示す輝度とを比較し、前記現フレームの前記映像信号が示す輝度が、前記前フレームの前記映像信号が示す輝度以下であるか、又は、所定の閾値以下である場合には、前記一つの画素に対応する前記現フレームの前記映像信号をそのまま出力し、それ以外の場合には、前記一つの画素に対応する前記現フレームの前記映像信号と前記前フレームの前記映像信号との重み付け平均を出力する信号処理部とを備える
処理回路。
【請求項2】
前記映像信号は、RGB信号を含む
請求項1に記載の処理回路。
【請求項3】
前記映像信号は、輝度信号を含む
請求項1に記載の処理回路。
【請求項4】
前記重み付け平均の重みは、定数である
請求項1~3のいずれか1項に記載の処理回路。
【請求項5】
前記重み付け平均の重みは、前記映像信号が示す輝度の関数である
請求項1~3のいずれか1項に記載の処理回路。
【請求項6】
前記重み付け平均は、前記現フレームの前記映像信号が示す輝度IN(n)の重みをa(0<a<1)とし、前記前フレームの前記映像信号が示す輝度IN(n-1)の重みを(1-a)とすると、以下の式で表される
a×IN(n)+(1-a)×IN(n-1)
請求項1~5のいずれか1項に記載の処理回路。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の処理回路と、
前記表示パネルと、
前記電流制限回路とを備える
表示装置。
【請求項8】
各々が自発光素子を含む複数の画素を有する表示パネルと、前記複数の画素に供給される電流を制限する電流制限回路とを有する表示装置用の映像信号を処理する処理方法であって、
現フレームの前のフレームである前フレームの前記複数の画素に対応する前記映像信号を記憶するステップと、
前記複数の画素に含まれる一つの画素に対応する前記現フレームの前記映像信号が示す輝度と、前記一つの画素に対応する前記前フレームの前記映像信号が示す輝度とを比較し、前記現フレームの前記映像信号が示す輝度が、前記前フレームの前記映像信号が示す輝度以下であるか、又は、所定の閾値以下である場合には、前記一つの画素に対応する前記現フレームの前記映像信号をそのまま出力し、それ以外の場合には、前記一つの画素に対応する前記現フレームの前記映像信号と前フレームの前記映像信号との重み付け平均を出力するステップとを含む
処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理回路、表示装置、及び、処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL(Electro-Luminescence)表示装置などの各画素が自発光素子を含む表示装置が開発されている。このような表示装置においては表示パネルの大型化が求められている。表示パネルの大型化に伴い、表示装置において消費される消費電力が増加する。そこで、表示装置における消費電力を抑制する技術が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に開示された表示装置においては、映像信号に基いて水平期間(水平同期周期)毎に表示パネルにおける消費電力を計算し、計算結果に基いて表示パネルの各画素に供給する電流を制限することによって、表示パネルの消費電力を制御している。これにより、特許文献1に開示された表示装置においては、表示パネルにおける消費電力を制御目標電力値以下に抑制しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された表示装置においては、例えば、全黒表示から全白表示に切り替わる場合のように、映像信号が示す輝度が急激に上昇する場合などに、表示パネルの消費電力が制御目標電力値を超え得る。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、映像信号が示す輝度が急激に増大する場合にも表示パネルに供給される電流を抑制できる処理回路などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る処理回路は、各々が自発光素子を含む複数の画素を有する表示パネルと、前記複数の画素に供給される電流を制限する電流制限回路とを有する表示装置用の映像信号を処理する処理回路であって、前記処理回路に入力される現フレームの前のフレームである前フレームの前記複数の画素に対応する前記映像信号を記憶するフレームメモリと、前記複数の画素に含まれる一つの画素に対応する前記現フレームの前記映像信号が示す輝度と、前記一つの画素に対応する前記前フレームの前記映像信号が示す輝度とを比較し、前記現フレームの前記映像信号が示す輝度が、前記前フレームの前記映像信号が示す輝度以下であるか、又は、所定の閾値以下である場合には、前記一つの画素に対応する前記現フレームの前記映像信号をそのまま出力し、それ以外の場合には、前記一つの画素に対応する前記現フレームの前記映像信号と前記前フレームの前記映像信号との重み付け平均を出力する信号処理部とを備える。
【0007】
また、上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る表示装置は、前記処理回路と、前記表示パネルと、前記電流制限回路とを備える。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る処理方法は、各々が自発光素子を含む複数の画素を有する表示パネルと、前記複数の画素に供給される電流を制限する電流制限回路とを有する表示装置用の映像信号を処理する処理方法であって、現フレームの前のフレームである前フレームの前記複数の画素に対応する前記映像信号を記憶するステップと、前記複数の画素に含まれる一つの画素に対応する前記現フレームの前記映像信号が示す輝度と、前記一つの画素に対応する前記前フレームの前記映像信号が示す輝度とを比較し、前記現フレームの前記映像信号が示す輝度が、前記前フレームの前記映像信号が示す輝度以下であるか、又は、所定の閾値以下である場合には、前記一つの画素に対応する前記現フレームの前記映像信号をそのまま出力し、それ以外の場合には、前記一つの画素に対応する前記現フレームの前記映像信号と前フレームの前記映像信号との重み付け平均を出力するステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、映像信号が示す輝度が急激に増大する場合にも表示パネルに供給される電流を抑制できる処理回路などを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る表示装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る処理回路の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る表示装置が備える電流制限回路の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る表示装置が備える表示パネルの機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る画素を構成するサブ画素の構成の一例を示す回路図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係るサブ画素に入力される書き込み信号の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る表示部の表示状態の遷移を示す模式図である。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る画面データ記憶部の構成を示す模式図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係るゲイン演算回路におけるゲイン算出方法を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施の形態に係る処理回路における処理方法を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、比較例の表示装置において全黒表示から全白表示に変化させる際に複数の画素に供給される電流の時間波形を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施の形態に係る表示装置において全黒表示から全白表示に変化させる際に複数の画素に供給される電流の時間波形を示すグラフである。
【
図13】
図13は、実施の形態にの変形例に係る重みaと輝度IN(n)との関係を示すグラフである。
【
図14】
図14は、変形例に係る処理回路と表示装置との関係を示すブロック図である。
【
図15】
図15は、変形例に係る処理回路を内蔵したPCの外観図である。
【
図16】
図16は、変形例に係る処理回路を内蔵したハードディスクレコーダの外観図である。
【
図17】
図17は、各実施の形態に係る表示装置を内蔵した薄型フラットTVの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示における一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、並びに、工程の順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示における最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0013】
(実施の形態)
[1.表示装置の全体構成]
まず、実施の形態に係る表示装置の全体構成について
図1~
図4を用いて説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る表示装置10の機能構成を示す機能ブロック図である。
図2は、本実施の形態に係る処理回路20の機能構成を示すブロック図である。
図3は、本実施の形態に係る表示装置10が備える電流制限回路40の機能構成を示すブロック図である。
図4は、本実施の形態に係る表示装置10が備える表示パネル60の機能構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示されるように、表示装置10は、処理回路20と、電流制限回路40と、表示パネル60とを備える。
【0016】
処理回路20は、表示装置10用の映像信号を処理する回路である。
図2に示されるように、処理回路20は、フレームメモリ22と、信号処理部24とを有する。
【0017】
フレームメモリ22は、処理回路20に入力される現フレームの前のフレームである前フレームの複数の画素に対応する映像信号を記憶する記憶部である。フレームメモリ22は、例えば、RAM(Random Access Memory)などによって実現できる。
【0018】
信号処理部24は、表示装置10に入力される映像信号を処理することによって、表示パネル60が有する複数の画素に供給される電流量を制限する処理部である。信号処理部24における処理内容及びその効果については後述する。
【0019】
表示パネル60は、各々が自発光素子を含む複数の画素を有し、映像信号に対応する画像を表示するパネルである。
図4に示されるように、表示パネル60は、表示部70と、書き込み処理部62と、ソースドライバ68と、書き込み用シフトレジスタ64とを有する。表示部70は、複数の画素を有し、映像信号に対応する画像を表示する。書き込み処理部62は、表示データを表示部70に書き込むための制御信号とデータ信号を出力する。ソースドライバ68は、表示部70に対してデータ信号を出力する。書き込み用シフトレジスタ64は、データ信号を表示部70に書き込むための制御信号である書き込み信号を表示部70に出力する。
【0020】
電流制限回路40は、表示パネル60が有する複数の画素に供給される電流を制限する回路である。本実施の形態では、電流制限回路40は、表示パネル60の消費電力に相当する複数の画素に供給される電力値が制御目標電力値を超えた場合に、複数の画素に供給される電流を制限する。電流制限回路40は、
図3に示されるように、加重平均回路42と、水平期間データ演算回路44と、画面データ記憶部46と、ゲイン演算回路48と、ゲイン回路50とを有する。
【0021】
加重平均回路42は、RGB各々の信号の画素値の加重平均を算出する回路である。
図3に示されるように、加重平均回路42は、RGB各々の表示データに対して、表示部70のRGB画素別の電力消費特性に応じた重み付け係数を乗算し、それらの和を算出する。
【0022】
水平期間データ演算回路44は、水平期間毎に表示データに対応する水平期間電力換算データを演算する。本実施の形態では、水平期間データ演算回路44は、加重平均回路42が出力した加重平均の水平期間における積算値、又は、平均値を水平期間電力換算データ(レベル積算値)として算出する。
【0023】
画面データ記憶部46は、1フレーム分の電力換算データを記憶する。本実施の形態では、画面データ記憶部46は、水平期間データ演算回路44が出力する電力換算データを1フレーム分記憶する。
【0024】
ゲイン演算回路48は、画面データ記憶部46が記憶する電力換算データと、制御目標電力値に基づいて、映像信号に乗じるゲインを算出する。本実施の形態では、ゲイン演算回路48は、画面データ記憶部46が記憶する電力換算データに基づいて、複数の画素における1フレーム分の消費電力である画面電力を算出する。ゲイン演算回路48は、さらに、画面電力が制御目標電力値を超える場合に、ゲインとして、画面電力に対する制御目標電力値の比を算出する。この場合、ゲインは1未満となる。ゲイン演算回路48は、画面電力が制御目標電力値を超えない場合に、ゲインを1とする。
【0025】
ゲイン回路50は、映像信号にゲインを乗じる回路である。ゲイン回路50は、映像信号に、ゲイン演算回路48で算出されたゲインを乗じる。本実施の形態では、
図3に示されるように、RGBの各信号にゲインを乗じる。これにより、画面電力が制御目標電力値を超える場合に、映像信号に1未満のゲインが乗じられるため、映像信号の輝度を低減できる。したがって、表示パネル60の複数の画素に供給される電流が制限される。
【0026】
表示パネル60が有する複数の画素について、
図5を用いて説明する。
図5は、本実施の形態に係る画素を構成するサブ画素の構成の一例を示す回路図である。
図5には、自発光素子として有機EL素子を用いるサブ画素が示されている。本実施の形態に係る画素は、RGBの三色にそれぞれ対応する三つのサブ画素を含む。
図5に示されるサブ画素は、赤色(R)の光を出射するためのサブ画素である。なお、緑色及び青色の光を出射するためのサブ画素も、
図5に示される回路と同様の回路構成を有する。
【0027】
サブ画素は、
図5に示されるように、TFT(Thin Film Transistor、薄膜トランジスタ)81と、コンデンサ84と、TFT82と、自発光素子85rとを有する。
【0028】
TFT81は、ソースドライバ68の出力信号であるデータ信号が一端に入力される。コンデンサ84は、TFT81に接続される。TFT82は、TFT81とコンデンサ84との接続点に制御端子が接続されている。自発光素子85rは、TFT82に接続される。
【0029】
TFT81は、書き込み用シフトレジスタ64の出力する制御信号である書き込み信号に基づいてオン/オフを切り替える。1水平期間内に書き込み信号によりTFT81がオンすると、画素に書き込む信号レベルに応じたソースドライバ出力信号であるデータ信号がコンデンサ84に保持される。
【0030】
書き込み信号がオフになった後、コンデンサ84に保持された電圧に応じた電流がTFT82に流れ、自発光素子85rは点灯する。
【0031】
[2.電流制限回路の動作]
次に、電流制限回路40の動作について説明する。
【0032】
まず、
図5に示されるサブ画素に入力される信号について
図6を用いて説明する。
図6は、本実施の形態に係るサブ画素に入力される書き込み信号の一例を示す図である。表示装置10は、ソースドライバ68の出力するデータ信号を書き込み信号により表示部70に書き込み、水平ライン(以下、単に「ライン」ともいう。)単位の発光を行う。
【0033】
次に、表示部70の表示状態の遷移について
図7を用いて説明する。
図7は、本実施の形態に係る表示部70の表示状態の遷移を示す模式図である。
図7において、表示画面は、時点T1から時点T2、時点T2から時点T3の表示へと移行する。
図7に示される第mフィールドの終わりに相当する時点T1においては第mフィールドの画面が表示されている。ここで、データ信号を各画素に書き込むための制御信号である書き込み信号を出力する書き込み用シフトレジスタ64は、表示部70の表示エリアの先頭を起点に画面の上から下へと走査するように書き込み信号を出力する。このため、第mフィールドの次のフィールドである第nフィールド(つまり、第m+1フィールド)の中間に相当する時点T2では、画面の上半分が第nフィールドの画面となり、下半分は第mフィールドの画面のままとなる。第nフィールドの終わりに相当する時点T3になると、表示エリアの下まで走査され、全画面第nフィールドの画面となる。
【0034】
次に、画面データ記憶部46の構成について
図8を用いて説明する。
図8は、本実施の形態に係る画面データ記憶部46の構成を示す模式図である。
図8に示されるように、画面データ記憶部46は、表示部70に書き込まれる信号情報として、表示部70の表示画面上の水平ライン毎の水平期間電力換算データを記憶する。例えば、第iラインの水平期間電力換算データは、第iラインの電力値として画面データ記憶部46に記憶される。次フィールドの書き替えが始まると、画面データ記憶部46は、記憶する電力値も新たに書き替えていき、表示画面に書き込まれた信号に相当する電力値として記憶する。
【0035】
次に、ゲイン演算回路48における演算処理について、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施の形態に係るゲイン演算回路48におけるゲイン算出方法を示すフローチャートである。
【0036】
図9に示されるように、まず、ゲイン演算回路48は、画面データ記憶部46が記憶する水平期間電力換算データに基づいて画面電力を算出する(S1)。以下、具体的には、画面データ記憶部46に記憶された水平ライン数の水平期間電力換算データの和を画面電力として算出する。
【0037】
続いて、ゲイン演算回路48は、算出した画面電力が予め定められた制御目標電力値を超えているかどうか判断する(S2)。画面電力が制御目標電力値を超えていなければ、ゲインを1に設定する(S3)。画面電力が制御目標電力値を超えていれば、画面電力に対する制御目標電力値の比を1未満のゲインとして算出する(S4)。
【0038】
以上のように、ゲイン演算回路48によって算出されたゲインがゲイン回路50に入力される。ゲイン回路50が、ゲインを映像信号に積算することで、画面電力が制御目標値を超えている場合に、表示パネル60の複数の画素に供給される電流が制限される。
【0039】
[3.処理方法]
次に、本実施の形態に係る処理回路20における処理方法について、
図10を用いて説明する。
図10は、本実施の形態に係る処理回路20における処理方法を示すフローチャートである。
【0040】
図10に示されるように、まず、処理回路20のフレームメモリ22によって、処理回路20に入力される現フレームの前のフレームである前フレームの複数の画素に対応する映像信号を記憶する(S10)。
【0041】
続いて、処理回路20の信号処理部24によって、映像信号を処理する(S20)。映像信号を処理するステップS20において、まず、複数の画素に含まれる一つの画素に対応する現フレームの映像信号が示す輝度IN(n)と、当該一つの画素に対応する前フレームの映像信号が示す輝度IN(n-1)とを比較する(S21)。現フレームの映像信号が示す輝度IN(n)が、前フレームの映像信号が示す輝度IN(n-1)以下であるか、又は、所定の閾値TH以下である場合には(S21でYes)、当該一つの画素に対応する現フレームの映像信号をそのまま出力する(S22)。それ以外の場合、つまり、現フレームの映像信号が示す輝度IN(n)が、前フレームの映像信号が示す輝度IN(n-1)より大きく、かつ、所定の閾値THより大きい場合には(S21でNo)、当該一つの画素に対応する現フレームの映像信号と前フレームの映像信号との重み付け平均(加重平均)を出力する(S23)。
【0042】
以上のように、本実施の形態に係る信号処理部24は、現フレームの映像信号が示す輝度IN(n)(nは自然数)が、前フレームの映像信号が示す輝度IN(n-1)以下である場合には、現フレームの映像信号をそのまま表示パネル60に出力しても、画素に供給される電流量が前フレームにおいて供給された電流量より増大しない。したがって、現フレームの映像信号に対応する輝度IN(n)で画素を発光させても、上述したような画素に供給される電流量の急激な上昇は発生しない。このため、信号処理部24は、現フレームの映像信号をそのまま出力する。
【0043】
また、現フレームの映像信号が示す輝度IN(n)が所定の閾値TH以下である場合には、画素に供給される電流が所定の値以下に抑制される。つまり、閾値THを適切に設定することで、画素に供給される電流を抑制できる。したがって、この場合にも、信号処理部24は、現フレームの映像信号をそのまま出力する。なお、閾値THは、例えば、映像信号が示す最大輝度の50%程度に設定することができる。
【0044】
なお、輝度IN(n)が閾値THより大きくても、前フレームの輝度IN(n-1)以下である場合には、電流制限回路40によって、電流を制限できるため、信号処理部24によって、映像信号を処理する必要がない。
【0045】
一方、現フレームの映像信号が示す輝度IN(n)が、前フレームの映像信号が示す輝度IN(n-1)より大きく、かつ、所定の閾値THより大きい場合には、画素に供給する電流が制御目標電力値に対応する電流を超えて上昇するおそれがあるため、信号処理部24は、現フレームの映像信号と前フレームの映像信号との重み付け平均(加重平均)を出力する。
【0046】
ここで、現フレームの映像信号と前フレームの映像信号との重み付け平均について説明する。現フレームの映像信号が示す輝度IN(n)の重みをa(0<a<1)とし、前フレームの映像信号が示す輝度IN(n-1)の重みを(1-a)とすると、重み付け平均は、以下の式(1)で表される。
【0047】
a×IN(n)+(1-a)×IN(n-1) (1)
なお、本実施の形態では、重みaは0より大きく、1未満の定数である。重みaを小さくするほど過渡応答に現れるピーク電流値が小さく、かつ、過渡応答時間が長くなる。また、重みaを大きくするほど過渡応答に現れるピーク電流値が大きく、かつ、過渡応答時間が短くなる。このトレードオフがあるので、製品として許容されるピーク電流と応答時間との最適なバランスに応じてaの値を決定する。
【0048】
このように、輝度IN(n)より小さい輝度IN(n-1)と、輝度IN(n)との重み付け平均を取ることで、出力する映像信号の輝度を輝度IN(n)より低減できる。したがって、画素に供給する電流を抑制できる。
【0049】
映像信号がRGB信号である場合、輝度IN(n)として、RGB各々の表示データに、RGBに対応するサブ画素毎の電力消費特性に応じた重み付け係数p、q及びrを乗じた和W(n)を映像信号が示す輝度IN(n)として用いることができる。この場合、RGB各々の表示データを、それぞれ、R(n)、G(n)及びB(n)とすると、和W(n)は、以下の式(2)で表される。
【0050】
W(n)=p×R(n)+q×G(n)+r×B(n) (2)
また、映像信号がRGB信号である場合、重み付け平均は、RGB信号の各々に対して行えばよい。
【0051】
また、処理回路20に入力される映像信号が、例えば色差信号である場合には、輝度IN(n)として、色差信号に含まれる輝度Yを用いることができる。
【0052】
以上のように、本実施の形態に係る処理回路20によれば、映像信号が示す輝度IN(n)が急激に増大する場合にも表示パネル60に供給される電流を抑制できる。なお、表示パネル60に供給される電流を抑制するために、輝度IN(n)の値に関わらず常に、輝度IN(n)と輝度IN(n-1)との重み付け平均を処理回路20が出力する構成も考えられる。しかしながら、このような構成では、映像信号の変化に対する応答性能が劣化する。これに対して、本実施の形態では、映像信号が示す輝度IN(n)が増大しない場合、又は、所定の閾値TH以下の場合には、処理回路20は、映像信号をそのまま出力するため、映像信号に対する応答性能の劣化を抑制できる。
【0053】
[4.作用及び効果]
次に、本実施の形態に係る表示装置10の作用及び効果について、比較例の表示装置と比較しながら説明する。ここでは、比較例の表示装置として、本実施の形態に係る表示装置10から処理回路20を取り除いた表示装置を用いる。
【0054】
まず、比較例の表示装置において、表示部70の複数の画素に供給される電流について
図11を用いて説明する。
図11は、比較例の表示装置において全黒表示から全白表示に変化させる際に複数の画素に供給される電流の時間波形を示すグラフである。
図11に示される例では、表示部70を全黒表示から全白表示に変化させた後、全白表示が維持される。
図11には、各時点において表示部70に表示される画像(a)~(d)が併せて示されている。
【0055】
図11の画像(a)に示されるように、
図11のグラフの左端の時点T10においては、比較例の表示装置は、全黒表示状態である。この場合、表示部70の複数の画素に供給される電流はほぼゼロである。続いて、全白表示を示す映像信号が比較例の表示装置に入力された場合、表示部70の水平期間毎に、表示部70の上端のラインから順に、黒表示から白表示に切り替えられる。
【0056】
表示部70の上端のラインから順に黒表示から白表示に切り替えられる際に、上端付近のラインにおいては、映像信号どおりに白表示に切り替えられる。しかしながら、白表示への切り替えの途中で、複数の画素に供給される電流値が、電流上限値を超える。ここで、電流上限値とは、複数の画素に供給される電力値の制御目標電力値に対応する電流値である。
図11に示される例では、電流上限値は1.2Aである。このように複数の画素に供給される電流値が電流上限値を超える場合、電流制限回路40は、上述したように映像信号に1未満のゲインを乗じる。これにより、複数の画素に供給される電流が制限される。
【0057】
例えば、
図11の時点T10から垂直期間(1V)の1/2が経過した時点T11においては、表示部70の上側の半分の領域に配置されたラインが黒表示から白表示に切り替えられる。この状態では、
図11の画像(b)に示されるように、電流制限回路40によって映像信号の輝度が低減されるため、上端のラインから下方のラインに近づくにしたがって、白表示の輝度が低下する。具体的には、表示部70の上端のラインは、映像信号どおりに白表示されるが、
図11の画像(b)において白表示されているラインのうち最も下方に配置されているライン(つまり、表示部70の上下方向の中間に位置するライン)は、映像信号が示す輝度より低い輝度で白表示(つまりグレー表示)される。その後、表示部70の下半分のラインに配置された画素も、映像信号が示す輝度より低い輝度で白表示される。これにより、時点T10から1垂直期間後の時点T12では、
図11の画像(c)に示されるように、表示部70は、表示部70の下端に近づくほど輝度が低下する全白表示となる。この時点T12では、表示部70の上端に付近のラインにおいて、映像信号どおりの輝度で白表示されるため、複数の画素全体に供給される電流量は、電流上限値を大幅に超える。
図11に示される例では、複数の画素全体に供給される電流量は、最大2.2A程度となる。
【0058】
時点T12から1垂直期間の間も電流制限回路40によって複数の画素に供給される電流が制限される。これにより、時点T12から1垂直周期経過後の時点T13では、すべてのラインが、映像信号が示す輝度より低い輝度で全白表示される。これにより、時点T13以降において複数の画素に供給される電流値は、電流上限値以下に制限される。
【0059】
以上のように比較例に係る表示装置では、複数の画素に供給される電流量が一時的に大幅に電流上限値を超え得る。
【0060】
次に、本実施の形態に係る表示装置10において、表示部70の複数の画素に供給される電流について
図12を用いて説明する。
図12は、本実施の形態に係る表示装置10において全黒表示から全白表示に変化させる際に複数の画素に供給される電流の時間波形を示すグラフである。
【0061】
表示装置10の処理回路20は、上述したように、複数の画素に含まれる一つの画素に対応する現フレームの映像信号が示す輝度IN(n)が、前フレームの映像信号が示す輝度IN(n-1)以下であるか、又は、所定の閾値TH以下である場合には、当該一つの画素に対応する現フレームの映像信号をそのまま出力する。一方、それ以外の場合、つまり、現フレームの映像信号が示す輝度IN(n)が、前フレームの映像信号が示す輝度IN(n-1)より大きく、かつ、所定の閾値THより大きい場合には、処理回路20は、現フレームの映像信号と前フレームの映像信号との重み付け平均を出力する。
【0062】
図12に示される場合のように、映像信号が全黒表示から全白表示に変化する場合には、現フレームの映像信号が示す輝度IN(n)が、前フレームの映像信号が示す輝度IN(n-1)より大きく、かつ、所定の閾値THより大きくなる。このため、処理回路20は、現フレームの全白表示を示す映像信号と、前フレームの全黒表示を示す映像信号との重み付け平均、つまり、現フレームの映像信号より輝度が低減された白表示を示す映像信号を表示パネル60及び電流制限回路40に出力する。このため、時点T10から時点T12までの期間に複数の画素に供給される電流値を、
図12に示されるように、比較例の表示装置より抑制できる。
【0063】
また、
図12に示される例では、時点T12から時点T13までの垂直期間に対応する映像信号も全白表示を示す。ここで、処理回路20のフレームメモリ22に記憶された前フレームの映像信号(つまり、
図12の時点T10から時点T12までの垂直期間に対応する映像信号)も全白表示を示す映像信号である。つまり、現フレームの映像信号が示す輝度IN(n)が、前フレームの映像信号が示す輝度IN(n-1)以下であるため、処理回路20は、映像信号をそのまま表示パネル60及び電流制限回路40に出力する。電流制限回路40に入力される映像信号が示す輝度は、前フレームの重み付け平均された映像信号の輝度より大きくなるため、時点T12から時点T13までの期間においても、複数の画素に供給される電流値は増大する。しかしながら、複数の画素に供給される最大電流値は、比較例における最大電流値に対して大幅に抑制されている。
【0064】
続いて、
図12に示される例では、時点T13から時点T14までの垂直期間に対応する映像信号も引き続き全白表示を示す。この映像信号が処理回路20に入力されるため、時点T12から時点T13までの期間と同様に、処理回路20は全白表示を示す映像信号をそのまま出力する。全白表示を示す映像信号が入力された電流制限回路40によって、複数の画素に供給される電流が制限される。これにより、複数の画素に供給される電流値は、時点T14では、電流上限値以下に制限される。
【0065】
以上のように、本実施の形態に係る表示装置10によれば、映像信号が示す輝度が急激に増大する場合にも表示パネルの複数の画素に供給される電流を抑制できる。
【0066】
[5.変形例]
本実施の形態に係る処理回路20の変形例について説明する。本実施の形態に係る処理回路20においては、処理回路20における処理を簡素化するために、重み付け平均において用いられる重みaを定数としたが、重みaは定数でなくてもよい。本変形例では、重みaは、輝度IN(n)の関数である。以下、このような重みaについて
図13を用いて説明する。
図13は、本変形例に係る重みaと輝度IN(n)との関係を示すグラフである。
【0067】
図13に示される例では、重みaは、輝度IN(n)が閾値TH以下の場合には1である。つまり、処理回路は入力される映像信号を、そのまま出力する。輝度IN(n)が閾値THより大きい場合には、重みaは、輝度IN(n)が増大するにしたがって、減少する。このように、重みaを輝度IN(n)の関数とすることで、処理回路は、輝度IN(n)に適した重み付け平均を出力できる。例えば、輝度IN(n)が増大するにしたがって、複数の画素に供給される電流量が増大するが、本変形例に係る処理回路では、輝度IN(n)が増大するにしたがって現フレームの映像信号に掛ける重みaの値を小さくするため、電流量をより一層抑制できる。
【0068】
なお、重みaは、輝度IN(n)の線形関数であってもよいし、非線形関数であってもよい。また、重みaの最小値は、例えば、0.5以上としてもよい。これにより、映像信号に対する表示装置の応答性能が極端に劣化することを抑制できる。
【0069】
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係る処理回路などについて、実施の形態に基づいて説明したが、本開示に係る処理回路などは、上記実施の形態に限定されるものではない。実施の形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、実施の形態に対して本開示の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本実施の形態に係る処理回路などを内蔵した各種機器も本開示に含まれる。
【0070】
例えば、上記各実施の形態では、処理回路20は表示装置に備えられているが、処理回路20は、必ずしも表示装置に備えられなくてもよい。このような変形例について
図14を用いて説明する。
図14は、本変形例に係る処理回路20と表示装置210との関係を示すブロック図である。
図14に示されるように、処理回路20は、GPU(Graphics Processing Unit)212に備えられる。GPU212は、画像処理用の演算装置であり、映像信号が入力されて、処理回路20によって処理された映像信号を出力する。GPU212は、表示装置210の外部に配置され、処理回路20によって処理された映像信号を表示装置210に出力する。GPU212は、例えば、
図15に示されるようなPC(Personal Computer)804に備えられてもよい。PC804は、キーボード806及びマウス807などによって操作される。表示装置210は、
図15に示されるモニタ805に備えられてもよい。モニタ805は、表示装置210を備え、PC804からの映像信号を表示する。また、GPU212は、
図16に示されるようなハードディスクレコーダ808に備えられてもよい。
【0071】
以上のように処理回路20が表示装置に備えられない場合にも、上記実施の形態に係る処理回路20と同様の効果が奏される。
【0072】
また、上記各実施の形態に係る表示装置は、
図17に示されるような薄型フラットTV802に内蔵されてもよい。この場合にも、上記各実施の形態と同様の効果が奏される。
【0073】
また、上記実施の形態では、表示パネルが有する画素が、RGBの三色にそれぞれ対応する三つのサブ画素を含む構成を示したが、画素の構成はこれに限定されない。例えば、画素が、RGBWの四色にそれぞれ対応する四つのサブ画素を含んでもよい。また表示パネルがモノクロ表示パネルである場合には、画素には、
図5に示されるような単一の回路が含まれてもよい。
【0074】
また、上記実施の形態では、映像信号は、RGB信号であったが、映像信号には、RGB信号以外の信号が含まれてもよい。つまり、映像信号は、RGB信号を含めばよい。
【0075】
また、映像信号は、RGB信号を含む信号に限定されない。例えば、映像信号は、輝度信号を含む色差信号であってもよい。この場合、輝度IN(n)として、色差信号に含まれる輝度Yを用いることができる。
【0076】
また、上記実施の形態においては、自発光素子として、有機EL素子を用いる例を示したが、自発光素子はこれに限定されない。例えば、自発光素子として、無機EL素子などを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示は、有機ELフラットパネルディスプレイに有用であり、特に、消費電力が大きくなる大画面のディスプレイにおいて用いるのに最適である。
【符号の説明】
【0078】
10、210 表示装置
20 処理回路
22 フレームメモリ
24 信号処理部
40 電流制限回路
42 加重平均回路
44 水平期間データ演算回路
46 画面データ記憶部
48 ゲイン演算回路
50 ゲイン回路
60 表示パネル
62 書き込み処理部
64 書き込み用シフトレジスタ
68 ソースドライバ
70 表示部
81、82 TFT
84 コンデンサ
85r 自発光素子
212 GPU
802 薄型フラットTV
804 PC
805 モニタ
806 キーボード
807 マウス
808 ハードディスクレコーダ