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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】染色方法および染毛料キット
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20221124BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20221124BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20221124BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/41
A61K8/19
A61Q5/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019019471
(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公開番号】P2020125273
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 章雅
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0250355(US,A1)
【文献】特開2002-003350(JP,A)
【文献】特開2003-073238(JP,A)
【文献】特開平09-278634(JP,A)
【文献】特開2002-255757(JP,A)
【文献】特開昭63-239209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
D06P 1/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑色204号および緑色3号から選ばれる少なくとも一種の染料を含み、pHが1.0~4.5である染毛料をケラチン繊維に付着させる工程(A)と、
工程(A)が行われたケラチン繊維を洗浄する洗浄工程(B)と、
洗浄工程(B)が行われたケラチン繊維に対して、有機アルカリ剤および炭酸塩から選ばれる少なくとも一種を含み、pHが9.1~12.0の後処理剤を付着させる工程(C)とを含む、
ケラチン繊維の染色方法。
【請求項2】
前記染毛料が緑色204号および緑色3号から選ばれる少なくとも一種の染料を0.005~5質量%含む、請求項1に記載のケラチン繊維の染色方法。
【請求項3】
前記有機アルカリ剤および炭酸塩が、モノエタノールアミン、アルギニン、アミノメチルプロパノール、モルホリン、炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種である、請求項1または2に記載のケラチン繊維の染色方法。
【請求項4】
前記工程(C)が、後処理剤を付着させた後に、10秒~10分放置する工程であり、
工程(C)が行われたケラチン繊維を洗浄する洗浄工程(D)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のケラチン繊維の染色方法。
【請求項5】
前記ケラチン繊維が毛髪である、請求項1~4のいずれか一項に記載の染色方法。
【請求項6】
緑色204号および緑色3号から選ばれる少なくとも一種の染料を含み、pHが1.0~4.5である染毛料と、
有機アルカリ剤および炭酸塩から選ばれる少なくとも一種を含み、pHが9.1~12.0の後処理剤とからなる、ケラチン繊維の染毛料キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染色方法および染毛料キットに関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を染色するために用いられるカラーリング剤として、酸性染毛料が知られている。酸性染毛料は、酸性カラ―、ヘアマニキュア、カラーリンス等とも呼ばれ、染毛時の毛髪へのダメージが少なく、簡便で安全性に優れることから、近年人気が高まっている。
【0003】
酸性染毛料を毛髪に塗布すると、マイナスの電荷をもつ染料と、酸によりプラスに帯電した毛髪のケラチンタンパク質とがイオン結合するため、染色される。
酸性染毛料の染料は、もともと色を持つように化学合成された化合物(例えば、厚生労働省指定法定タール色素等)を用いることが一般的である。例えば、染料のなかでも、厚生労働省指定法定タール色素のひとつである緑色204号および緑色3号は、pHにより色調が変化し、特徴的な色を呈する。緑色204号は酸性では淡い黄色、アルカリ性では黄色の強い蛍光色を呈し、緑色3号は酸性では鮮やかな緑色、アルカリ性では青色を呈する。
【0004】
染毛料としては、多数の技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1には、有機酸、無機酸および/またはその塩を配合し、pH1.5~4に調整された第1剤と、酸性染料を含有し、pH7~11に調整された第2剤とからなる二剤式酸性染毛料、並びに、第1剤を毛髪に塗布し、続いて第2剤を塗布することを特徴とする染毛方法が開示されている。
【0005】
特許文献2は、酸性染料及び酸を含有する染毛料組成物において、緑色204号、赤色230号(1)及び黄色202号(1)から選ばれる1種または2種以上の酸性染料を配合し、かつ染毛料組成物中の酸性染料の合計量に対する前記酸性染料の配合量が0.1~15%であることを特徴とする染毛料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-3350号公報
【文献】特開2003-73238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、アルカリ性における、緑色204号の黄色の強い蛍光色および緑色3号の青色は、その色調が特徴的であることから、この特徴的な色調を維持しつつ、毛髪のようなケラチンタンパク質を含むケラチン繊維を染色することができないか検討を行った。
【0008】
しかしながら、特許文献1の染色方法および特許文献2の染毛料組成物のような、既存の技術では、緑色204号の黄色の強い蛍光色、および緑色3号の青色といった、アルカリ性における特徴的な色調でケラチン繊維を染色することができなかった。
【0009】
このようなことから、本発明は、緑色204号および緑色3号から選ばれる少なくとも一種の染料を用いたケラチン繊維の染色方法を提供すること、ならびに前記方法に用いることが可能な、染毛料キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する染色方法および染毛料キットは上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、例えば以下の[1]~[6]である。
[1]緑色204号および緑色3号から選ばれる少なくとも一種の染料を含み、pHが1.0~4.5である染毛料をケラチン繊維に付着させる工程(A)と、工程(A)が行われたケラチン繊維を洗浄する洗浄工程(B)と、洗浄工程(B)が行われたケラチン繊維に対して、有機アルカリ剤および炭酸塩から選ばれる少なくとも一種を含み、pHが9.1~12.0の後処理剤を付着させる工程(C)とを含む、ケラチン繊維の染色方法。
【0012】
[2]前記染毛料が緑色204号および緑色3号から選ばれる少なくとも一種の染料を0.005~5質量%含む、[1]に記載のケラチン繊維の染色方法。
[3]前記有機アルカリ剤および炭酸塩が、モノエタノールアミン、アルギニン、アミノメチルプロパノール、モルホリン、炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種である、[1]または[2]に記載のケラチン繊維の染色方法。
【0013】
[4]前記工程(C)が、後処理剤を付着させた後に、10秒~10分放置する工程であり、工程(C)が行われたケラチン繊維を洗浄する洗浄工程(D)を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のケラチン繊維の染色方法。
【0014】
[5]前記ケラチン繊維が毛髪である、[1]~[4]のいずれかに記載の染色方法。
[6]緑色204号および緑色3号から選ばれる少なくとも一種の染料を含み、pHが1.0~4.5である染毛料と、有機アルカリ剤および炭酸塩から選ばれる少なくとも一種を含み、pHが9.1~12.0の後処理剤とからなる、ケラチン繊維の染毛料キット。
【発明の効果】
【0015】
本発明の染色方法では、ケラチン繊維を緑色204号の黄色の強い蛍光色で染色すること、ケラチン繊維を緑色3号の青色で染色することが可能であり、本発明の染毛料キットは、前記染色方法に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明の染色方法および染毛料キットについて具体的に説明する。
<染色方法>
本発明のケラチン繊維の染色方法は、緑色204号および緑色3号から選ばれる少なくとも一種の染料を含み、pHが1.0~4.5である染毛料をケラチン繊維に付着させる工程(A)と、工程(A)が行われたケラチン繊維を洗浄する、洗浄工程(B)と、洗浄工程(B)が行われたケラチン繊維に対して、有機アルカリ剤および炭酸塩から選ばれる少なくとも一種を含み、pHが9.1~12.0の後処理剤を付着させる工程(C)とを含む。
【0017】
本発明のケラチン繊維の染色方法において、ケラチン繊維に染毛料または後処理剤を付着させるには、例えば、ケラチン繊維に染毛料または後処理剤を塗布することや、ケラチン繊維を染毛料または後処理剤に浸漬すること等を行えばよく、均一に付着していればよい。
以下、本発明の染色方法の染色対象であるケラチン繊維、染色方法に用いる染毛料等を説明した後、各工程について説明する。
【0018】
<ケラチン繊維>
本発明において、ケラチン繊維とは、ケラチンタンパクを含む繊維のことを指す。具体的には、毛髪、ヤギ毛、羊毛、犬毛、猫毛が挙げられ、毛髪には、毛髪が使われたウィッグ、エクステンションなども含む。
【0019】
本発明のケラチン繊維の染色方法において、ケラチン繊維としては、ヤギ毛、毛髪が好ましく、毛髪がより好ましい。
また、本発明に用いるケラチン繊維が、毛髪等の白色以外の繊維である場合には、緑色204号および/または緑色3号に由来する色調で繊維を染め上げる観点から、工程(A)の前にケラチン繊維を脱色することも好ましい。
【0020】
<染毛料>
工程(A)で用いられる染毛料は、緑色204号および緑色3号から選ばれる少なくとも一種の染料を含み、pHが1.0~4.5である。
【0021】
染毛料は、緑色204号および緑色3号から選ばれる少なくとも一種の染料を0.005~5質量%含むことが好ましく、0.01~3質量%含むことがより好ましく、0.2~1.0質量%含むことが最も好ましい。
【0022】
緑色204号および緑色3号から選ばれる少なくとも一種の染料が0.005質量%未満の場合は、染色が薄すぎるために顕色しない場合がある。緑色204号および緑色3号から選ばれる少なくとも一種の染料が5質量%を超える場合は、染色が濃くならない場合がある。また、剤型がクリーム状またはジェル状の場合は、剤型が維持できなくなる場合がある。
【0023】
染毛料は、25℃におけるpHが、pH1.0~4.0であることが好ましく、pH1.5~3.5であることがより好ましい。なお、pHの測定方法は特に限定されるものではなく、一般的なpHの測定法(例えばガラス電極法)を用いて、適切な測定条件において測定すればよい。
【0024】
染毛料は、上述のpHにするために酸性成分を含んでいてもよい。酸性成分としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、プロピオン酸、乳酸、サリチル酸、グリコール酸、コハク酸、リンゴ酸、酪酸、レブリン酸、マレイン酸、フタル酸、酒石酸が挙げられる。酸性成分としては、乳酸、グリコール酸、コハク酸、リンゴ酸、レブリン酸が好ましい。酸性成分は水溶液等の溶液として用いてもよく、例えば、乳酸としては、90%乳酸を用いることができる。酸性成分は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
なお、無機酸は有機酸より染色性が劣るため、酸性成分として無機酸を含まないことが好ましい。
染毛料は、通常、乾いたケラチン繊維に付着させることが好ましい。
【0026】
〈染料〉
本発明において、ケラチン繊維を着色するために用いられる化合物を染料と記す。
本発明で用いる染毛料は、緑色204号および緑色3号から選ばれる少なくとも一種の染料を含む。緑色204号および緑色3号は、医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令(昭和41年厚生省令第30号)に記載されているタール色素を示す。
【0027】
緑色204号は、ピラニンコンクとも呼ばれる酸性染料である。緑色204号の水溶液は、pHにより色調が変化し、特徴的な色を呈する。酸性では淡い黄色を呈し、アルカリ性では、黄色の強い蛍光色を呈し、紫外線の照射により発光する。
【0028】
緑色3号は、ファストグリーンFCFとも呼ばれる酸性染料である。緑色204号の水溶液はpHにより色調が変化し、特徴的な色を呈する。酸性では鮮やかな緑色を呈し、アルカリでは、青色を呈する。
【0029】
染毛料は、本発明の効果を損なわない範囲で、緑色204号および緑色3号以外の酸性染料、HC染料、および塩基性染料が配合されていてもよい。酸性染料としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号(1)、赤色105号(1)、赤色106号、赤色201号、赤色213号、赤色227号、赤色230号(1)、赤色230号(2)、赤色231号、赤色232号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、橙色205号、橙色207号、橙色402号、黄色4号、黄色5号、黄色202号(1)、黄色202号(2)、黄色203号、黄色402号、黄色403号(1)、黄色406号、黄色407号、青色1号、青色2号、青色202号、青色203号、青色205号、緑色201号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、褐色201号、黒色401号、紫色401号が挙げられ、HC染料としては、例えば、HC青2、HC青6、HC青7、HC青8、HC橙1、HC橙2、HC橙3、HC赤1、HC赤3、HC赤7、 HC赤10、HC赤13、HC赤14、HC紫1、HC紫2、HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC黄6、1-アミノ-2-メチル-6-ニトロベンゼン、1-アミノ-2-メチル-4-メチルアミノベンゼン、4-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-3-ニトロ-メチルベンゼン、1-ビス(β-ヒドロキシエチル)アミノ-3-ニトロ-4-アミノ、1-アミノ-2-ベンゼン(β-ヒドロキシプロピルアミノ)ベンゼン、1-ヒドロキシ-3-ニトロ-4-(3-ヒドトキシプロピルアミノ)ベンゼン、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノールが挙げられ、塩基性染料としては、例えば、赤色213号、赤色214号、塩基性青7、塩基性青9、塩基性青26、塩基性青75、塩基性青99、塩基性赤2、塩基性赤22、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄57、塩基性黄87、塩基性橙31、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性紫3、塩基性紫4、塩基性紫14が挙げられる。これらの中でも、酸性で染色されること、緑色204号および緑色3号と併用した場合に沈殿物等を生じないという観点から、酸性染料、およびHC染料であることが好ましい。
【0030】
〈その他成分〉
染毛料は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、油性成分類(炭化水素類、油脂類、ロウ類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、エステル類)、増粘剤、浸透剤、保湿剤、界面活性剤(アニオン性界面活性剤類、カチオン性界面活性剤類、ノニオン性界面活性剤類、両性界面活性剤類)、シリコーン類、キレート剤、酸化防止剤、安定化剤、pH調整剤、保護剤、溶剤、消炎剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、噴射剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、樹脂類が挙げられる。
【0031】
その他の成分として、具体的には、増粘剤として(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、浸透剤としてベンジルアルコール、溶剤としてエタノールおよび水、pH調整剤としては、例えば上述の酸性成分、好ましくは乳酸(例えば90%乳酸)を用いることができる。また、水としては、イオン交換水を用いることが好ましい。その他の成分は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
〈剤型〉
染毛料の剤型としては、例えば、ミルク状、クリーム状、ジェル状、ローション状が挙げられ、具体的には、クリーム状またはジェル状が好ましい。また、染毛料は、噴射剤とともに用いることによりスプレー用組成物として用いることもできる。染毛料の剤型は、各剤型の常法に基づき調製することができる。
【0033】
<後処理剤>
工程(C)で用いられる後処理剤は、有機アルカリ剤および炭酸塩から選ばれる少なくとも一種を含み、pHが9.1~12.0である。
【0034】
後処理剤において、有機アルカリ剤および炭酸塩は、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、アルギニン、リジン、モルホリン、アミノメチルプロパノール、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが挙げられる。これらの中でも、モノエタノールアミン、アルギニン、アミノメチルプロパノール、モルホリン、炭酸ナトリウムが好ましく、モノエタノールアミンがより好ましい。また、アミノメチルプロパノールとしては、より具体的には、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを用いることができる。アルカリ性成分は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
なお、無機アルカリ剤はケラチン繊維に残留しにくいため、緑色204号および緑色3号のアルカリ性における特徴的な色調を保ちにくいことから、アルカリ性成分として無機アルカリ剤を含まないことが好ましい。
【0036】
後処理剤において、有機アルカリ剤および炭酸塩を0.5~20質量%含むことが好ましく、1~10質量%含むことがより好ましく、1~8質量%含むことが最も好ましい。
後処理剤は、25℃におけるpHが、pH9.3~11.9であることが好ましく、pH9.6~11.1であることがより好ましい。なお、pHの測定方法は特に限定されるものではなく、一般的なpHの測定法(例えばガラス電極法)を用いて、適切な測定条件において測定すればよい。
【0037】
〈その他成分〉
後処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、油性成分類(炭化水素類、油脂類、ロウ類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、エステル類)、増粘剤、浸透剤、保湿剤、界面活性剤(アニオン性界面活性剤類、カチオン性界面活性剤類、ノニオン性界面活性剤類、両性界面活性剤類)、シリコーン類、キレート剤、酸化防止剤、安定化剤、pH調整剤、保護剤、溶剤、消炎剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、噴射剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、樹脂類が挙げられる。
【0038】
その他の成分として、具体的には、溶剤として水、pH調整剤を用いることができる。pH調整剤としては、前述の酸性成分、具体的には乳酸(例えば90%乳酸)、リン酸、クエン酸、グリコール酸、レブリン酸、コハク酸、およびリンゴ酸を用いることができる。また、水としては、イオン交換水を用いることが好ましい。その他の成分は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
〈剤型〉
後処理剤の剤型は限定されないが、例えば、液状、ミルク状、クリーム状、ジェル状、およびローション状が挙げられる。後処理剤の剤型として、具体的には、液状を用いることができる。また、後処理剤は、噴射剤とともに用いることによりスプレー用組成物およびフォーム用組成物として用いることもできる。後処理剤の剤型は、各剤型の常法に基づき調製することができる。
【0040】
<工程(A)>
本発明のケラチン繊維の染色方法は、染毛料をケラチン繊維に付着させる工程(A)を含む。
【0041】
工程(A)は、ケラチン繊維に充分な量の染毛料を用いて、均一に付着させることが好ましく、例えば、ケラチン繊維1gに対し、染毛料を0.5~20g、好ましくは0.5~3g用いて、均一に付着させることができる。
【0042】
ケラチン繊維に染毛料を付着させる方法としては、ケラチン繊維に染毛料を塗布する方法や、ケラチン繊維を染毛料に浸漬する方法が挙げられる。ケラチン繊維に染毛料を塗布する場合、例えば、ケラチン繊維1gに対し、染毛料を0.5~3g用いて、均一に付着させることができる。また、ケラチン繊維を染毛料に浸漬する場合、例えば、ケラチン繊維1gに対し、染毛料を5~20g用いて、均一に付着させることができる。
【0043】
工程(A)では、染毛料を付着させた後、任意で、20℃~50℃で10秒~30分放置することができる。ケラチン繊維に染料を浸透させやすいことから、染毛料を付着させた後は、20~50℃で15~30分放置することが好ましく、45℃で15分放置することがより好ましい。
【0044】
<洗浄工程(B)>
本発明のケラチン繊維の染色方法は、工程(A)が行われたケラチン繊維を洗浄する、洗浄工程(B)を含む。
【0045】
洗浄工程(B)は、水洗でもよく、ケラチン繊維から染毛料を充分に洗浄するために、シャンプー等の洗浄成分が入ったもの(例えば、POE(3)ラウリルエーテル硫酸塩を含む水溶液)でケラチン繊維を洗浄してもよい。また、水洗と、シャンプー等を用いた洗浄とを組み合わせて行ってもよい。また、シャンプー等の洗浄成分が入ったものでケラチン繊維を洗浄した場合には、洗浄成分を取り除くため、その後、すすぐことが好ましい。
【0046】
なお、本発明のケラチン繊維の染色方法は、染毛料をケラチン繊維に付着させる工程(A)の後、洗浄工程(B)を経ずに、工程(C)が行われることはない。染毛料をケラチン繊維に対して塗布後、続けて後処理剤を付着させると、本発明のケラチン繊維の染色方法で得られる、緑色204号の黄色の強い蛍光色および緑色3号の青色に染色されたケラチン繊維が得られない。
本発明のケラチン繊維の染色方法では、工程(B)を行った後、工程(C)の前に、タオル等を用いてケラチン繊維に付着した水気を軽く取ることが好ましい。
【0047】
<工程(C)>
本発明のケラチン繊維の染色方法は、洗浄工程(B)が行われたケラチン繊維に対して、後処理剤を付着させる工程(C)を含む。
【0048】
工程(C)は、ケラチン繊維に充分な量の後処理剤を用いて、均一に付着させることが好ましく、例えば、ケラチン繊維1gに対し、後処理剤を0.5~20g用いて、均一に付着させることができる。
【0049】
ケラチン繊維に後処理剤を付着させる方法としては、ケラチン繊維に後処理剤を塗布する方法や、ケラチン繊維を後処理剤に浸漬する方法が挙げられる。ケラチン繊維に後処理剤を塗布する場合、例えば、ケラチン繊維1gに対し、後処理剤を0.5~3.0g用いて、均一に付着させることができる。また、ケラチン繊維を後処理剤に浸漬する場合、例えば、ケラチン繊維1gに対し、後処理剤を5~20g用いて、均一に付着させることができる。
【0050】
工程(C)では後処理剤を付着させた後、任意で、10秒~10分放置することができる。工程(C)は、後処理剤の成分を毛髪内に充分浸透させる工程であることから、工程(C)の後は、10秒~5分放置することが好ましく、30秒~5分放置することがより好ましい。なお、工程(C)を行う温度は特に制限されないが、例えば、23~27℃で行うことができる。
【0051】
<工程(D)>
本発明のケラチン繊維の染色方法は、工程(C)が行われたケラチン繊維を洗浄する洗浄工程(D)を含んでいてもよい。
【0052】
洗浄工程(D)は、前述の洗浄工程(B)と同様に行うことができる。
また、工程(D)の後、または工程(D)を有さない場合には工程(C)の後に、ケラチン繊維を乾燥させることが好ましい。乾燥はケラチン繊維が毛髪である場合には、ドライヤーを用いて行うことが好ましい。
【0053】
<染毛料キット>
本発明のケラチン繊維の染毛料キットは、緑色204号および緑色3号から選ばれる少なくとも一種の染料を含み、pHが1.0~4.5である染毛料と、有機アルカリ剤および炭酸塩から選ばれる少なくとも一種を含み、pHが9.1~12.0の後処理剤とからなる。
【0054】
染毛料および後処理剤としては、上述の本発明のケラチン繊維の染色方法で記載した染毛料および後処理剤をそれぞれ用いることができる。
本発明のケラチン繊維の染毛料キットは、上述の本発明のケラチン繊維の染色方法を実施するために用いることが好ましい。
【0055】
<用途>
本発明のケラチン繊維の染色方法は、ケラチン繊維全体、またはケラチン繊維の所定の部分に対して行うことができる。例えば、ケラチン繊維を使ったウィッグの全体または一部分に対して行うことや、頭髪の全体または一部分に対して行うことができる。
【実施例
【0056】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0057】
<染毛料および後処理剤の調製>
表1に示す処方で各成分を混合することにより染毛料を調製した。処方A-1およびA-2は実施例で用いた染毛料の処方であり、処方A-3およびA-4は比較例で用いた染毛料の処方である。表中の処方の数値は、染毛料を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表している。
【0058】
表2に示す処方で各成分を混合することにより後処理剤を調製した。処方B-1~B-10は実施例で用いた染毛料の処方であり、処方B-11~B-14は比較例で用いた染毛料の処方である。表中の処方の数値は、後処理剤を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表している。
【0059】
表1、表2におけるpHは、HORIBA社製 pH METER F-71を用いて測定した。
なお、表1および表2の各成分は、以下の市販品を用いた。
緑色204号:製品名 緑色204号(癸巳化成株式会社)
緑色3号:製品名 緑色3号(癸巳化成株式会社)
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー:製品名 セピノブEMT-10(SEPPIC社)
ベンジルアルコール:製品名 ベンジルアルコール(東京応化工業株式会社)
エタノール:製品名 95%エタノール(日本合成アルコール株式会社)
90%乳酸:製品名 発酵乳酸90%(ピューラック社)
モノエタノールアミン:製品名 モノエタノールアミン(株式会社日本触媒)
NaOH:製品名 水酸化ナトリウム(東京応化工業株式会社)
アルギニン:製品名 L-アルギニン(純正化学株式会社)
アミノメチルプロパノール:製品名 AMP-ウルトラPC1000(ダウ・ケミカル日本株式会社)
炭酸ナトリウム:製品名 炭酸ナトリウム(大東化学株式会社)
モルホリン:製品名 モルホリン(日本乳化剤株式会社)
89%リン酸:製品名 89%リン酸(日本化学工業株式会社)
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
<処理方法1>
《実施例1》
処方A-1の染毛料を10cmのヤギ毛1gの毛束に対し2g塗布し、45℃の恒温槽で15分放置した。その後、十分に水洗し、10%のPOE(3)ラウリルエーテル硫酸塩水溶液にて洗浄後、十分にすすいだ。
【0063】
ヤギ毛の毛束に付着した水気をタオルで軽く取った後、あらかじめpHを計測しておいた処方B-1の後処理剤にヤギ毛を浸漬させ、25℃で5分放置した。その後、十分に水洗し、10%のPOE(3)ラウリルエーテル硫酸塩水溶液にて洗浄後、十分にすすぎ、ドライヤーで乾燥させた。
【0064】
染色されたヤギ毛の毛束の色を目視で観察し、下記の基準に従って染色方法を評価した。表3に評価結果を示す。
《評価基準》
緑色204号(処方A-1およびA-3)を使用した場合
◎:黄色の強い蛍光色を有する
×:淡い黄色を有する
緑色3号(処方A-2およびA-4)を使用した場合
◎:青色に染色されている
○:緑みの青に染色されている
×:緑色に染色されている
【0065】
《実施例2~10》
後処理剤について、表3に記載の処方のものを用いた以外は、実施例1と同様に染色し、評価した。表3に評価結果を示す。
【0066】
【表3】
【0067】
《実施例11~20》
処方A-2の染毛料を用いたこと、後処理剤について、表4に記載の処方のものを用いた以外は、実施例1と同様に染色し、評価した。表4に評価結果を示す。
【0068】
【表4】
【0069】
《比較例1~8》
染毛料および後処理剤について、表5に記載の処方のものを用いた以外は、実施例1と同様に染色し、評価した。表5に評価結果を示す。
【0070】
【表5】
【0071】
<処理方法2>
《実施例21~22》
表6に記載の染毛料および後処理剤を用いたこと、後処理剤にヤギ毛を浸漬させ、25℃で30秒放置したこと以外は、実施例1と同様に染色し、評価した。表6に評価結果を示す。
【0072】
【表6】
【0073】
<処理方法3>
《比較例9~10》
比較例9では処方A-3、比較例10では処方A-4の染毛料を10cmのヤギ毛1gの毛束に対し2g塗布し、45℃の恒温槽で15分放置した。その後、十分に水洗し、10%のPOE(3)ラウリルエーテル硫酸塩水溶液にて洗浄後、十分にすすぎ、ドライヤーで乾燥させた。後処理剤にヤギ毛を浸漬する処理は行わなかった。
【0074】
染色されたヤギ毛の毛束の色を目視で観察し、実施例1と同様の評価基準に従って染色方法を評価した。表7に評価結果を示す。
【0075】
【表7】
【0076】
実施例1~22の染色方法は、いずれも良好な結果となった。また、実施例21および22から、後処理剤の処理時間が30秒の場合でも良好な結果を得られたことがわかる。
本発明のケラチン繊維の染色方法によれば、ケラチン繊維を緑色204号の黄色の強い蛍光色で染色すること、および緑色3号の青色で染色する染色方法を提供できることがわかる。
【0077】
比較例1の染色方法では、処方B-11の後処理剤のpHが本発明より低いため、ケラチン繊維に染色した際の緑色204号の色調が淡い黄色になった。
比較例2の染色方法では、処方B-12の後処理剤のpHが本発明より低いため、ケラチン繊維に染色した際の緑色204号の色調が淡い黄色になった。
【0078】
比較例3の染色方法では、処方B-13の後処理剤に無機アルカリ剤を含むため、ケラチン繊維に染色した際の緑色204号の色調が淡い黄色になった。
比較例4の染色方法では、処方B-14の後処理剤に無機アルカリ剤を含むため、ケラチン繊維に染色した際の緑色204号の色調が淡い黄色になった。
【0079】
比較例5の染色方法では、処方B-11の後処理剤のpHが本発明より低いため、ケラチン繊維に染色した際の緑色3号の色調が緑色になった。
比較例6の染色方法では、処方B-12の後処理剤のpHが本発明より低いため、ケラチン繊維に染色した際の緑色3号の色調が緑色になった。
【0080】
比較例7の染色方法では、処方B-13の後処理剤に無機アルカリ剤を含むため、ケラチン繊維に染色した際の緑色3号の色調が緑色になった。
比較例8の染色方法では、処方B-14の後処理剤に無機アルカリ剤を含むため、ケラチン繊維に染色した際の緑色3号の色調が緑色になった。
【0081】
比較例9の染色方法では、処方A-3の染毛料のpHが本発明より高いため、ケラチン繊維に染色した際の緑色204号の色調が淡い黄色になった。また、処方A-3の染毛料は、本発明で用いる染毛料と後処理剤を混合したものとも考えられることから、染毛料と後処理剤が混ざっていない状態で付着させる必要があることがわかった。
【0082】
比較例10の染色方法では、処方A-4の染毛料のpHが本発明より高いため、ケラチン繊維に染色した際の緑色3号の色調が緑色になった。また、処方A-4の染毛料は、本発明で用いる染毛料と後処理剤を混合したものとも考えられることから、染毛料と後処理剤が混ざっていない状態で付着させる必要があることがわかった。