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特許7181602レンズ交換式カメラのフランジバック又は撮像素子位置の検査方法
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  • 特許-レンズ交換式カメラのフランジバック又は撮像素子位置の検査方法 図1
  • 特許-レンズ交換式カメラのフランジバック又は撮像素子位置の検査方法 図2
  • 特許-レンズ交換式カメラのフランジバック又は撮像素子位置の検査方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】レンズ交換式カメラのフランジバック又は撮像素子位置の検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20221124BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
G01B11/00 B
H04N5/225 400
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019095928
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020190478
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】596147851
【氏名又は名称】京立電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】劉 暁紅
(72)【発明者】
【氏名】馬場 博文
(72)【発明者】
【氏名】小尾 猛
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-235490(JP,A)
【文献】特開2017-096656(JP,A)
【文献】特開2008-191122(JP,A)
【文献】特開2019-056759(JP,A)
【文献】特開2004-325517(JP,A)
【文献】特開2006-178173(JP,A)
【文献】特開2014-211479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点光源、ビームスプリッタ、受光素子、コリメータレンズ、対物レンズを備えた共焦点光学系を用いて前記点光源の共焦点にレンズ交換式カメラ(以下、カメラともいう)の撮像素子を配置し、前記点光源を作動させて前記受光素子に得られる前記撮像素子の前記点光源の反射画像によって前記カメラのフランジバック、又は撮像素子の位置を測定するとき、前記撮像素子に対し前記対物レンズを移動させ、その移動の微小ピッチにおいて前記受光素子に得られる複数フレーム画像データを2次元高速フーリエ変換して統計処理し、各処理データが示す空間周波数とそ周波数成分のピーク部を求め、当該ピーク部の前記撮像素子に定められた基準位置からのずれを判読し、前記フランジバックの適否または、撮像素子の位置の適否を判断することを特徴とするフランジバック又は撮像素子位置の検査方法。
【請求項2】
撮像素子の測定位置又は測定ポイントは、撮像素子面の5箇所又は3箇所を含む複数箇所であり、前記複数箇所の測定ポイントに対する共焦点系光学系は、複数箇所の測定ポイントを夫々に測定する複数系統の共焦点光学系である請求項1のフランジバック又は撮像素子位置の検査方法。
【請求項3】
複数系統の共焦点光学系における撮像素子面に対する各対物レンズの移動は、複数系統それぞれの共焦点光学系ごとに移動させる個別移動方式、又は複数系統の共焦点光学系を1つのケーシングに収めケーシングごと移動させる全体移動方式のいずれかである請求項1又は2のフランジバック又は撮像素子位置の検査方法。
【請求項4】
対物レンズの撮像素子への前進距離は1.0mm~2.0mmであり、この移動の間に受光素子を通して変換処理される撮像素子の反射画像は少なくとも200~300フレーム/秒である請求項1~3のいずれかのフランジバック又は撮像素子位置の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ交換式カメラにおけるフランジバック、又は撮像素子の位置が適切であるか否かの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ交換式カメラ(以下、単に「カメラ」ともいう)では、そのフランジバック量(距離)が適切であること、又は撮像素子の設置位置が適切であることが、そのカメラに所期の性能を発揮させるために不可欠である。
【0003】
このため従来からカメラ試験においては、フランジバック又は撮像素子の後位置の検査をしている。この検査は、共焦点光学方式のカメラ試験機を使用し、撮像素子の共焦点位置に置いたホトセンサ(受光素子)に得られる最大反射光量を検出し、フランジバックが適切な距離であるか、或いは撮像素子が適切位置に配置されているかを判断している。
【0004】
ところで最近のカメラでは、撮像素子の画素の中に測距用素子など撮像機能以外の機能を持たせた素子を配置したものが製造、販売されるようになった。
測距用素子を配した撮像素子を使用したカメラでは、撮像素子面において測距用素子が配列されていない面と測距用素子が配列されている面では、共焦点光学系を搭載したカメラ試験機に得られる撮像素子面の反射光量に差異の生じることがある。
【0005】
しかし、撮像素子面の測定位置によって反射光量の測定値が異なると、最大反射光量によって判断していた撮像素子面の適切位置の判別があやふやになっている。例えば、測定値が最大反射光量でないから撮像素子の位置が適切でないと判断し、その撮像素子の位置を調整しても、その調整は、撮像素子を適切な位置に調整することにはならないという問題が生じている。
【0006】
因みに、本出願人が特許文献1,2などにおいて先に提案したカメラ試験機においても、撮像素子面に反射能に差がある素子を配列した撮像素子を備えたカメラに対するフランジバックや撮像素子の位置を測定する技術については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3955242号公報
【文献】特許第4248536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、レンズ交換式カメラの撮像素子面に、撮像用素子と撮像機能以外の機能を持たせた素子、例えば測距用素子を配列した撮像素子面を有するカメラであっても、そのフランジバック、又は撮像素子の位置が適切であるか否かを測定することができる検査方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明検査方法の構成は、点光源、ビームスプリッタ、受光素子、コリメータレンズ、対物レンズを備えた共焦点光学系を用いて前記点光源の共焦点にレンズ交換式カメラ(以下、カメラともいう)の撮像素子を配置し、前記点光源を作動させて前記受光素子に得られる前記撮像素子の前記点光源の反射画像によって前記カメラのフランジバック、又は撮像素子の位置を測定するとき、前記撮像素子に対し前記対物レンズを移動させ、その移動の微小ピッチにおいて前記受光素子に得られる複数フレーム画像データを2次元高速フーリエ変換して統計処理し、各処理データが示す空間周波数とそ周波数成分のピーク部を求め、当該ピーク部の前記撮像素子に定められた基準位置からのずれを判読し、前記フランジバックの適否または、撮像素子の位置の適否を判断することを特徴とする。
【0010】
本発明において、撮像素子の測定位置(測定ポイント)は、撮像素子面の略四隅の4箇所と略中央の1箇所の合計5箇所である。撮像素子面の5箇所の測定ポイントに対する共焦点系光学系は、5箇所の測定ポイントを夫々に測定するための5系統が準備される。
【0011】
本発明において、5系統の共焦点光学系における撮像素子面に対する対物レンズの移動は、5系統それぞれの共焦点光学系ごとに移動させる個別移動方式と、5系統の共焦点光学系を1つのケーシングに収めておき、ケーシングごと移動させる全体移動方式のいずれを選択してもよい。
【0012】
対物レンズの撮像素子面への移動(前進)距離は、一例として1mm~2mm程度であり、この移動の間に受光素子を通してCPUボードが取り込む撮像素子の反射画像(点光源の反射画像)は、例えば200~300フレーム/秒程度である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、対物レンズを所量距離移動させている間に、受光素子に200~300フレーム/秒で得られる撮像素子面の複数フレーム画像データの夫々を、2次元高速フーリエ変換処理することによって得られる各画像データの空間周波数の周波数成分によって撮像素子面を検出するから、撮像素子面に撮像機能以外の機能を有する素子、例えば測距用素子が配列されていてもその影響を受けることなく、撮像素子面の位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明方法の実施に使用するカメラ試験機の構成を説明するための模式的ブロック図。
図2】撮像素子の測定点を説明するための正面図。
図3】本発明方法により測定された撮像素子の位置を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図を参照して本発明の実施の形態例について説明する。図1は本発明検査方法を実行することができるカメラ試験機CTの構成を模式的に示したブロック図である。
【0016】
図1のブロック図において、1はカメラ試験機CTの基枠、21~25は、前記基枠1に搭載した5系統の共焦点光学系で、各共焦点光学系21~25は、同一の光学系部品や部材によって構成されている。
【0017】
本明細書では、共焦点光学系21の構成について説明する。この説明は他の共焦点光学系22~25についても同じである。
共焦点光学系21は、一例としてLEDによる点光源2a、この点光源2aの光軸上に置いたビームスプリッタ2b、ビームスプリッタ2bの反射光軸上に置いたコリメータレンズ2c、コリメータレンズ2cの光軸上の前方に配置された対物レンズ2d、対物レンズ2dの焦点に設定される撮像素子CIの反射像が前記コリメータレンズ2cとビームスプリッタ2bの透過光軸を通って結像する位置に置かれた受像素子2eとを備えて構成されている。このほかの共焦点光学系22~25も、上記の共焦点光学系21と同一構成である。図1の基枠1において各対物レンズ2dの焦点に設定されている符号P1~P5は、図2に正面図で示した撮像素子CIの撮像素子面における5個の測定ポイント(測定点)P1~P5に対応している。
【0018】
本発明の共焦点光学系21~25における前記点光源2aは、装置的には共焦点の位置のみならずその近傍にあってもよい。また、夫々の対物レンズ2dは、基枠1に配置した機械的構成によって、光軸上で微小距離、例えば1.0mm~2.00mm程度の距離を進退動作(移動)をするように形成されている。
【0019】
各対物レンズ2dを移動させる機械的構成は、例えば光軸と平行に移動するレンズマウント3a、該レンズマウント3aの可動部材(図示せず)に進退動作の移動力を伝える伝動機構3b、伝動機構3bに連結された例えばボールねじモータやリニアモータを含むモータ類3cを備えて形成され、モータ類3cは、その動作が制御基板を主体とする駆動制御部4によって制御される。
【0020】
各対物レンズ2dの移動は、エンコーダ等の機械・電気変換式で測定値が出力されるリニアスケール5により移動距離がデジタル値で検出され、距離データとして駆動制御部4に供給される。駆動制御部4では供給される距離データによって、モータ類3cの正転(例えば前進)と逆転(例えば後退)とを制御する。
【0021】
各共焦点光学系21~25の各点光源2aは、光源駆動基板による光源制御部6に接続されており、その点灯状態が光源制御部6に制御される。
【0022】
撮像素子CIの各測定ポイントP1~P5における各点光源2aの反射画像(反射光)は、夫々に対物レンズ2d、コリメータレンズ2cを通ってビームスプリッタ2bを通過し、各受光素子2eに受光される。
【0023】
本発明では、共焦点光学系21の対物レンズ2dが、例えば1秒間に1.2mm移動するように制御部4に設定されているとき、受光素子2eは撮像素子CIの測定ポイントP1の反射画像をCPUボードを主体とする処理制御部71に供給する。処理制御部71では、受光素子2eから供給される反射画像を一例として240フレーム/秒の画像データに変換する。
【0024】
処理制御部71において受光素子2eから供給される反射画像を240フレーム/秒のデータに変換処理するのは、リニアスケール5から処理制御部71に供給される距離データとタイマーデータに基づく演算処理による。この例では、対物レンズ2dが1.2mm/秒の設定で前進させられている間に、対物レンズ2dの5μm移動ピッチあたり1フレームの画像データが処理制御部71に形成される。
【0025】
処理制御部71のCPUボードでは、さらに前記の240フレーム/秒の画像データを二次元高速フーリエ変換の演算処理を行う。
【0026】
本発明では、撮像素子CIにおける他の測定ポイントP2~P5についても、上記測定ポイントP1の場合と同様に、夫々の受光素子2eから夫々の処理制御部72~75に供給される画像データを、夫々に240フレーム/秒の画像データに変換し、各変換データを夫々の処理制御部72~75において二次元高速フーリエ変換の演算処理を行う。
【0027】
図3は、一例として測定ポイントP1について240フレーム/秒の画像データを二次元高速フーリエ変換し、変換データを統計処理してサブミクロン精度で得られる各フレームの位置を空間周波数の周波数成分によって表した線図である。図3において横軸はフレーム位置(ピントが合ったフレームの位置の検出)に対応し、縦軸がピントの合致度合を示す周波数成分の強さ(大きさ)に対応している。
【0028】
2次元信号である画像データに高速フーリエ変換を適用すると、空間周波数スペクトルが得られる。画像データを高速フーリエ変換した空間周波数スペクトルでは、ピントがずれてぼけた画像は、空間周波数の周波数成分が小さく(弱く)なり、ピントが合った鮮鋭な画像では空間周波数の周波数成分が大きく(強く)なる。
【0029】
このことから、実施態様における240フレームの画像の中でピントが合っているフレームの画像データは、高速フーリエ変換されて統計処理されると空間周波数スペクトルの周波数成分が最大(最強)に表われる。これが図3の波形のピーク部である。
【0030】
このピーク部がカメラの撮像素子CIに予め定められている基準位置からどれくらいずれているかを、図3の横軸に定める基準点に照らしで判読し、撮像素子CIの適正位置に対する調整をする。
【0031】
上記実施態様においては、撮像素子CIの測定ポイントを5点とし、従って用意する共焦点光学系も5系統としたが、本発明では検査タクトタイムを上げるため測定ポイントを3点にすることもある。測定ポイントが3点の場合には、5系統の共焦点光学系の中で該当する3点に対応する共焦点光学系を駆動して検査するか、又は3系統の共焦点光学系を備えた試験機で検査する。本発明において測定ポイントを、上記例の3点又は5点のほかに、4点やそれ以外に数にすることは任意である。
【0032】
本発明は以上のように、撮像素子CIの上に設定した測定ポイントP1~P5に対して共焦点光学系21~25を備えたカメラ試験機CTを適用して撮像素子CIの位置が適切であるかどうかを検査するために、前記撮像素子に対し前記対物レンズを移動させ、その移動の微小ピッチにおいて前記受光素子に得られる複数フレーム画像データのそれぞれを2次元高速フーリエ変換処理して統計処理し、各処理データが示す空間周波数の周波数成分のピーク部により撮像素子面(位置)を求めて前記フランジバックの適否または、撮像素子の位置の適否を判断するから、撮像素子面に配列される素子に撮像用素子以外の素子が配列された撮像素子であっても、高精度かつ均質な撮像素子の位置、或いはフランジバックの測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0033】
CT カメラ試験機
CI 撮像素子
P1~P5 測定ポイント
1 基枠
2 1~25共焦点光学系
3a レンズマウント
3b 伝動機構
3c モータ類
4 駆動制御部
5 リニアスケール
6 光源制御部
71~72 処理制御部
図1
図2
図3