IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人電気通信大学の特許一覧

特許7181613デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置
<>
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図1
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図2
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図3
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図4
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図5
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図6
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図7
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図8
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図9
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図10
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図11
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図12
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図13
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図14
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図15
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図16
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図17
  • 特許-デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】デュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20221124BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20221124BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20221124BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20221124BHJP
   G01J 3/453 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
H01S3/067
H01S3/00 F
H01S3/10 D
G02F1/01 B
G01J3/453
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019509581
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2018031150
(87)【国際公開番号】W WO2019073701
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2017199843
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、総括実施型研究、研究プロジェクト名「ERATO美濃島知的シンセサイザプロジェクト」に係る産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】美濃島 薫
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 善晶
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-138129(JP,A)
【文献】特開2016-018124(JP,A)
【文献】特表2017-508301(JP,A)
【文献】特表2009-516227(JP,A)
【文献】特開2010-062568(JP,A)
【文献】米国特許第05050183(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0071322(US,A1)
【文献】特開平06-283785(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080415(WO,A1)
【文献】HANSEL et al.,All polarization-maintaining fiber laser architecture for robust femtosecond pulse generation,Applied Physics B,Springer,2017年01月11日,123,p.41
【文献】ZHAO et al.,Picometer-resolution dual-comb spectroscopy with a free-running fiber laser,Optics Express,米国,2016年09月12日,Vol.24, No.19,p.21833-p.21845
【文献】THEVENIN et al.,Dual-polarization mode-locked Nd:YAG laser,OPTICS LETTERS,米国,Optical Society of America,2012年07月15日,Vol.37, No.14,pp.2859-2861
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
G02F 1/01
G02F 1/03
G02F 1/365
G01J 3/453
IEEE Xplore
Scitation
OPTICA
Springer Link
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光の向きが第1方向である第1レーザー光を導波すると共に、偏光の向きが前記第1方向とは異なる第2方向である第2レーザー光を導波し、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光の各々の偏光の向きを保持し、偏波保持型光ファイバからなる環状の第2ループ部と偏波保持型光ファイバからなる環状の第3ループ部と偏波保持型光カプラからなる連結部とを有し、前記第2ループ部と前記第3ループ部が前記連結部によって連結され、数字の8の字を描くように構成されている第1ループ光ファイバと、
前記第2ループ部に設けられ、前記第1ループ光ファイバに前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を導入する導入部と、
前記第2ループ部に設けられ、前記導入部から導入された前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光の前記偏光の向きを保持しつつ、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を増幅して第1レーザー増幅光及び第2レーザー増幅光を生成し、前記第1ループ光ファイバの周方向及び該周方向とは逆方向に前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光を出射する増幅部と、
前記連結部と前記第3ループ部と前記第3ループ部に配置された偏波保持型光アイソレータによって構成され、 前記周方向に沿って導波された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光と前記周方向とは逆方向に沿って導波された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光との各々のうち、前記連結部での干渉によって前記第1レーザー増幅光と前記第2レーザー増幅光との位相差に応じて強め合った前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光のみ前記第3ループ部を周回させて前記第2ループ部に戻し、前記連結部での干渉によって前記位相差に応じて弱められた前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光を前記第3ループ部を周回させて前記偏波保持型光アイソレータによって除去するレーザー増幅光戻し部と、
前記第3ループ部に設けられ、前記第1ループ光ファイバで生成され且つ偏光の向きが前記第1方向である第1光周波数コムと前記第1ループ光ファイバで生成され且つ偏光の向きが前記第2方向である第2光周波数コムとを前記第1ループ光ファイバから導出する導出部と、
を備え、
前記第2ループ部、前記第3ループ部、前記連結部及び前記偏波保持型光アイソレータは可飽和吸収体として機能し、
前記レーザー増幅光戻し部によって前記第2ループ部に戻された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光は前記増幅部によって増幅され、
前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光は前記第2ループ部及び前記第3ループ部を構成する偏波保持型光ファイバの長さに応じた非線形位相シフトを受け、前記第1ループ光ファイバを周回し、モード同期状態に移行し、
前記第1レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバの光路長と前記第2レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバの光路長との光路長差は、前記第1レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバにおける屈折率と前記第2レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバにおける屈折率との屈折率差に応じ、前記第1光周波数コムの繰り返し周波数と前記第2光周波数コムの繰り返し周波数との繰り返し周波数差に依存する、
デュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項2】
前記第3ループ部において前記偏波保持型光アイソレータと前記導出部との間の前記連結部を介さない前記偏波保持型光ファイバに位相変調部が設けられ
前記位相変調部は
外部から供給される高周波電気信号に応じて偏光の向きが第1方向である前記第1レーザー増幅光の位相のみを変調する第1電気光学変調器と、
外部から供給される高周波電気信号に応じて偏光の向きが第2方向である前記第2レーザー増幅光の位相のみを変調する第2電気光学変調器と、
を有する、
請求項に記載のデュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項3】
偏光の向きが第1方向である第1レーザー光を導波すると共に、偏光の向きが前記第1方向とは異なる第2方向である第2レーザー光を導波し、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光の各々の偏光の向きを保持し、偏波保持型光ファイバからなる環状の第2ループ部と偏波保持型光ファイバからなる線形部と偏波保持型光カプラからなる連結部とを有し、前記第2ループ部と前記線形部が前記連結部によって連結され、数字の9の字を描くように構成されている 第1ループ光ファイバと、
前記第2ループ部に設けられ、前記第1ループ光ファイバに前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を導入する導入部と、
前記第2ループ部に設けられ、前記導入部から導入された前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光の前記偏光の向きを保持しつつ、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を増幅して第1レーザー増幅光及び第2レーザー増幅光を生成し、前記第1ループ光ファイバの周方向及び該周方向とは逆方向に前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光を出射する 増幅部
前記連結部と前記線形部と前記線形部において前記連結部と接続されている端部とは反対側の端部に接続された空間型共振部によって構成され、前記周方向に沿って導波されて前記空間型共振部に入射した前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光と前記周方向とは逆方向に沿って導波された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光との各々のうち、前記空間型共振部での共振によって前記第1レーザー増幅光と前記第2レーザー増幅光との位相差に応じて強め合った前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光を前記線形部を介して前記第2ループ部に戻し、前記空間型共振部での共振によって前記位相差に応じて弱められた前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光を前記空間型共振部で除去する レーザー増幅光戻し部と、
を備え、
前記連結部に前記線形部と構成する偏波保持型光ファイバとは異なる導出用の偏波保持型光ファイバが接続され、前記第1ループ光ファイバで生成され且つ偏光の向きが前記第1方向である第1光周波数コムと前記第1ループ光ファイバで生成され且つ偏光の向きが前記第2方向である第2光周波数コムとが前記導出用の偏波保持型光ファイバから導出され、
前記第2ループ部、前記線形部、前記連結部及び前記空間型共振部は可飽和吸収体として機能し、
前記レーザー増幅光戻し部によって前記第2ループ部に戻された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光は前記増幅部によって増幅され、
前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光は前記第2ループ部及び前記線形部を構成する偏波保持型光ファイバの長さと前記空間型共振部に応じた非線形位相シフトを受け、前記第1ループ光ファイバを周回し、モード同期状態に移行し、
前記第1レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバの光路長と前記第2レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバの光路長との光路長差は、前記第1レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバにおける屈折率と前記第2レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバにおける屈折率との屈折率差に応じ、前記第1光周波数コムの繰り返し周波数と前記第2光周波数コムの繰り返し周波数との繰り返し周波数差に依存する、
ュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項4】
前記空間型共振部での共振によって強め合う前記第1レーザー増幅光と前記第2レーザー増幅光との位相差は前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光の波長の半分の偶数倍に相当する、
請求項3に記載のデュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項5】
前記空間型共振部に位相変調部が設けられ
前記位相変調部は
外部から供給される高周波電気信号に応じて偏光の向きが第1方向である前記第1レーザー増幅光の位相のみを変調する第1電気光学変調器と、
外部から供給される高周波電気信号に応じて偏光の向きが第2方向である前記第2レーザー増幅光の位相のみを変調する第2電気光学変調器と、
を有する
請求項3又は4に記載のデュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項6】
前記第2ループ部において前記導入部と前記連結部との間の前記偏波保持型光ファイバに設けられ、前記周方向及び前記周方向とは逆方向に沿って導波される前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光の両方に対して個別に作用し、前記第1レーザー増幅光と前記第2レーザー増幅光との位相差をシフトさせる偏波多重型の非相反位相シフト部と、
前記第2ループ部おいて前記導入部と前記連結部との間の前記非相反位相シフト部を介さない前記偏波保持型光ファイバ設けられ、前記第2ループ部における前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光の光路長を制御可能な共振器長制御素子と、
を備える、
請求項2又は5に記載のデュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項7】
偏光の向きが第1方向である第1レーザー光を導波すると共に、偏光の向きが前記第1方向とは異なる第2方向である第2レーザー光を導波し、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光の各々の偏光の向きを保持し、偏波保持型光ファイバからなり、環状に構成されている第1ループ光ファイバと、
前記第1ループ光ファイバに設けられ、前記第1ループ光ファイバに前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を導入する導入部と、
前記第1ループ光ファイバに設けられ、前記導入部から導入された前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光の前記偏光の向きを保持しつつ、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を増幅して第1レーザー増幅光及び第2レーザー増幅光を生成し、前記第1ループ光ファイバの周方向及び該周方向とは逆方向に前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光を出射する増幅部と、
前記第1ループ光ファイバに設けられ、可飽和吸収体及び偏波保持型光アイソレータによって構成され、前記周方向に沿って導波された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光と前記周方向とは逆方向に沿って導波された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光との各々のうち、前記可飽和吸収体に入射して前記第1レーザー増幅光と前記第2レーザー増幅光との位相差に応じて強め合った前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光のみを反射し、前記可飽和吸収体に入射して前記位相差に応じて弱められた前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光を前記第1ループ光ファイバを周回させて前記偏波保持型光アイソレータによって除去するレーザー増幅光戻し部と、
前記第1ループ光ファイバに設けられ、前記第1ループ光ファイバで生成され且つ偏光の向きが前記第1方向である第1光周波数コムと前記第1ループ光ファイバで生成され且つ偏光の向きが前記第2方向である第2光周波数コムとを前記第1ループ光ファイバから導出する導出部と、
を備え、
前記レーザー増幅光戻し部によって前記第1ループ光ファイバに反射された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光は前記増幅部によって増幅され、
前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光は前記第1ループ光ファイバを構成する偏波保持型光ファイバの長さに応じた非線形位相シフトを受け、前記第1ループ光ファイバを周回し、モード同期状態に移行し、
前記第1レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバの光路長と前記第2レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバの光路長との光路長差は、前記第1レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバにおける屈折率と前記第2レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバにおける屈折率との屈折率差に応じ、第1光周波数コムの繰り返し周波数と第2光周波数コムの繰り返し周波数との繰り返し周波数差に依存する、
デュアル光周波数コム生成光学系。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか一項に記載のデュアル光周波数コム生成光学系と、
前記デュアル光周波数コム生成光学系の 前記導入部に接続され、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を発する光源と、
を備える、
レーザー装置。
【請求項9】
請求項に記載のレーザー装置と、
前記レーザー装置の前記デュアル光周波数コム生成光学系か ら導出される前記第1光周波数コム及び前記第2光周波数コムの進行方向の奥側に配置され、前記第1光周波数コム及び前記第2光周波数コムを分離して互いに異なる進路に進行させる偏波分離部と、
前記偏波分離部によって互いに分離された前記第1光周波数コム及び前記第2光周波数コムの少なくとも一方の進路上に配置された試料より前記第1光周波数コム及び前記第2光周波数コムの進行方向の奥側に配置され、測定対象の前記第1光周波数コム及び前記第2光周波数コムを干渉させる偏波干渉部と、
前記偏波干渉部で得られる干渉信号の進行方向の奥側に配置され、前記干渉信号から前記試料の情報を抽出する試料情報抽出部と、
を備える、
計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの光周波数コムを出力するデュアル光周波数コム生成光学系、及び該デュアル光周波数コム生成光学系を備えるレーザー装置及び計測装置に関する。本願は、2017年10月13日に、日本に出願された特願2017-199843号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
周波数軸上においてスペクトル強度が櫛状に精密かつ等間隔に並べられた光は、光周波数コムと呼ばれている。例えば、超短パルスレーザーであるモード同期レーザーのスペクトル分布には、等間隔に並ぶ多数の光周波数モード列が現れる。すなわち、モード同期レーザーから光周波数コムが出射される。櫛状のスペクトル強度を有する光周波数コムは、時間・空間・周波数の精密なものさしとして広く活用されている。光周波数領域における光周波数モード列の間隔は、繰り返し周波数と呼ばれている。
【0003】
例えば、非特許文献1に記載されているように、繰り返し周波数が互いに異なる光周波数コムのマルチヘテロダイン検出を行うことによって、光周波数領域における分子や原子の情報を取り出すことができる。繰り返し周波数が互いに異なる光周波数コムは、デュアル光周波数コムと呼ばれている。デュアル光周波数コムを出力するモード同期レーザー(レーザー装置)を2台用いて、広帯域・高精度・高分解能な分光計測を行うことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】I. Coddington, N. Newbury and W. Swann, “Dual-comb spectroscopy,” Optica, Vol. 3, No. 4, pp. 414-426 (2016).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の非特許文献1に開示されているように、2台のレーザー装置を用いると、これらのレーザー装置が互いに異なる環境外乱や機械的な擾乱を受ける。2台のレーザー装置が互いに異なる環境外乱や機械的な擾乱を受けることによって、マルチヘテロダイン検出時に得られる干渉信号の信号対雑音比(Signal- to noise ratio:SN比)が低くなる。一方、干渉信号のSN比を高くすると、2台のレーザー装置を相対的に位相同期させるための大がかりな光学系が必要となり、レーザー装置が大型になる。
【0006】
本発明は、上述の事情を勘案したものであって、互いに繰り返し周波数が異なる光周波数コムの信号対雑音比を高め、且つ光学系や装置全体の小型化を図ることが可能なデュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置及び計測装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系は、偏光の向きが第1方向である第1レーザー光を導波すると共に、偏光の向きが前記第1方向とは異なる第2方向である第2レーザー光を導波し、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光の各々の偏光の向きを保持し、偏波保持型光ファイバからなる環状の第2ループ部と偏波保持型光ファイバからなる環状の第3ループ部と偏波保持型光カプラからなる連結部とを有し、前記第2ループ部と前記第3ループ部が前記連結部によって連結され、数字の8の字を描くように構成されている第1ループ光ファイバと、前記第2ループ部に設けられ、前記第1ループ光ファイバに前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を導入する導入部と、前記第2ループ部に設けられ、前記導入部から導入された前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光の前記偏光の向きを保持しつつ、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を増幅して第1レーザー増幅光及び第2レーザー増幅光を生成し、前記第1ループ光ファイバの周方向及び該周方向とは逆方向に前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光を出射する増幅部と、前記連結部と前記第3ループ部と前記第3ループ部に配置された偏波保持型光アイソレータによって構成され、前記周方向に沿って導波された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光と前記周方向とは逆方向に沿って導波された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光との各々のうち、前記連結部での干渉によって前記第1レーザー増幅光と前記第2レーザー増幅光との位相差に応じて強め合った前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光のみ前記第3ループ部を周回させて前記第2ループ部に戻し、前記連結部での干渉によって前記位相差に応じて弱められた前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光を前記第3ループ部を周回させて前記偏波保持型光アイソレータによって除去するレーザー増幅光戻し部と、前記第3ループ部に設けられ、前記第1ループ光ファイバで生成され且つ偏光の向きが前記第1方向である第1光周波数コムと前記第1ループ光ファイバで生成され且つ偏光の向きが前記第2方向である第2光周波数コムとを前記第1ループ光ファイバから導出する導出部と、を備える前記第2ループ部、前記第3ループ部、前記連結部及び前記偏波保持型光アイソレータは可飽和吸収体として機能し、前記レーザー増幅光戻し部によって前記第2ループ部に戻された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光は前記増幅部によって増幅され、前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光は前記第2ループ部及び前記第3ループ部を構成する偏波保持型光ファイバの長さに応じた非線形位相シフトを受け、前記第1ループ光ファイバを周回し、モード同期状態に移行し、前記第1レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバの光路長と前記第2レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバの光路長との光路長差は、前記第1レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバにおける屈折率と前記第2レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバにおける屈折率との屈折率差に応じ、前記第1光周波数コムの繰り返し周波数と前記第2光周波数コムの繰り返し周波数との繰り返し周波数差に依存する。
【0008】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系において、前記第3ループ部において前記偏波保持型光アイソレータと前記導出部との間の前記連結部を介さない前記偏波保持型光ファイバに位相変調部が設けられている。前記位相変調部は外部から供給される高周波電気信号に応じて偏光の向きが第1方向である前記第1レーザー増幅光の位相のみを変調する第1電気光学変調器と、外部から供給される高周波電気信号に応じて偏光の向きが第2方向である前記第2レーザー増幅光の位相のみを変調する第2電気光学変調器と、を有する。
【0009】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系偏光の向きが第1方向である第1レーザー光を導波すると共に、偏光の向きが前記第1方向とは異なる第2方向である第2レーザー光を導波し、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光の各々の偏光の向きを保持し、偏波保持型光ファイバからなる環状の第2ループ部と偏波保持型光ファイバからなる線形部と偏波保持型光カプラからなる連結部とを有し、前記第2ループ部と前記線形部が前記連結部によって連結され、数字の9の字を描くように構成されている第1ループ光ファイバと、前記第2ループ部に設けられ、前記第1ループ光ファイバに前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を導入する導入部と、前記第2ループ部に設けられ、前記導入部から導入された前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光の前記偏光の向きを保持しつつ、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を増幅して第1レーザー増幅光及び第2レーザー増幅光を生成し、前記第1ループ光ファイバの周方向及び該周方向とは逆方向に前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光を出射する増幅部前記連結部と前記線形部と前記線形部において前記連結部と接続されている端部とは反対側の端部に接続された空間型共振部によって構成され、前記周方向に沿って導波されて前記空間型共振部に入射した前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光と前記周方向とは逆方向に沿って導波された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光との各々のうち、前記空間型共振部での共振によって前記第1レーザー増幅光と前記第2レーザー増幅光との位相差に応じて強め合った前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光を前記線形部を介して前記第2ループ部に戻し、前記空間型共振部での共振によって前記位相差に応じて弱められた前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光を前記空間型共振部で除去するレーザー増幅光戻し部と、を備えている。
前記連結部に前記線形部と構成する偏波保持型光ファイバとは異なる導出用の偏波保持型光ファイバが接続され、前記第1ループ光ファイバで生成され且つ偏光の向きが前記第1方向である第1光周波数コムと前記第1ループ光ファイバで生成され且つ偏光の向きが前記第2方向である第2光周波数コムとが前記導出用の偏波保持型光ファイバから導出され、前記第2ループ部、前記線形部、前記連結部及び前記空間型共振部は可飽和吸収体として機能し、前記レーザー増幅光戻し部によって前記第2ループ部に戻された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光は前記増幅部によって増幅され、前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光は前記第2ループ部及び前記線形部を構成する偏波保持型光ファイバの長さと前記空間型共振部に応じた非線形位相シフトを受け、前記第1ループ光ファイバを周回し、モード同期状態に移行し、前記第1レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバの光路長と前記第2レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバの光路長との光路長差は、前記第1レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバにおける屈折率と前記第2レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバにおける屈折率との屈折率差に応じ、前記第1光周波数コムの繰り返し周波数と前記第2光周波数コムの繰り返し周波数との繰り返し周波数差に依存する。
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系において、前記空間型共振部での共振によって強め合う前記第1レーザー増幅光と前記第2レーザー増幅光との位相差は前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光の波長の半分の偶数倍に相当する。
【0010】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系において、前記第3ループ部において前記偏波保持型光アイソレータと前記導出部との間の前記連結部を介さない前記偏波保持型光ファイバに位相変調部が設けられている。前記位相変調部は、外部から供給される高周波電気信号に応じて偏光の向きが第1方向である前記第1レーザー増幅光の位相のみを変調する第1電気光学変調器と、外部から供給される高周波電気信号に応じて偏光の向きが第2方向である前記第2レーザー増幅光の位相のみを変調する第2電気光学変調器と、を有してもよい。
【0011】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系において、前記第2ループ部において前記導入部と前記連結部との間の前記偏波保持型光ファイバに設けられ、前記周方向及び前記周方向とは逆方向に沿って導波される前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光の両方に対して個別に作用し、前記第1レーザー増幅光と前記第2レーザー増幅光との位相差をシフトさせる偏波多重型の非相反位相シフト部と、前記第2ループ部おいて前記導入部と前記連結部との間の前記非相反位相シフト部を介さない前記偏波保持型光ファイバ設けられ、前記第2ループ部における前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光の光路長を制御可能な共振器長制御素子と、を備えてもよい
また、本発明のデュアル光周波数コム生成光学系は、偏光の向きが第1方向である第1レーザー光を導波すると共に、偏光の向きが前記第1方向とは異なる第2方向である第2レーザー光を導波し、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光の各々の偏光の向きを保持し、偏波保持型光ファイバからなり、環状に構成されている第1ループ光ファイバと、前記第1ループ光ファイバに設けられ、前記第1ループ光ファイバに前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を導入する導入部と、前記第1ループ光ファイバに設けられ、前記導入部から導入された前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光の前記偏光の向きを保持しつつ、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を増幅して第1レーザー増幅光及び第2レーザー増幅光を生成し、前記第1ループ光ファイバの周方向及び該周方向とは逆方向に前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光を出射する増幅部と、前記第1ループ光ファイバに設けられ、可飽和吸収体及び偏波保持型光アイソレータによって構成され、前記周方向に沿って導波された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光と前記周方向とは逆方向に沿って導波された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光との各々のうち、前記可飽和吸収体に入射して前記第1レーザー増幅光と前記第2レーザー増幅光との位相差に応じて強め合った前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光のみを反射し、前記可飽和吸収体に入射して前記位相差に応じて弱められた前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光を前記第1ループ光ファイバを周回させて前記偏波保持型光アイソレータによって除去するレーザー増幅光戻し部と、前記第1ループ光ファイバに設けられ、前記第1ループ光ファイバで生成され且つ偏光の向きが前記第1方向である第1光周波数コムと前記第1ループ光ファイバで生成され且つ偏光の向きが前記第2方向である第2光周波数コムとを前記第1ループ光ファイバから導出する導出部と、を備えている。前記レーザー増幅光戻し部によって前記第1ループ光ファイバに反射された前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光は前記増幅部によって増幅され、前記第1レーザー増幅光及び前記第2レーザー増幅光は前記第1ループ光ファイバを構成する偏波保持型光ファイバの長さに応じた非線形位相シフトを受け、前記第1ループ光ファイバを周回し、モード同期状態に移行し、前記第1レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバの光路長と前記第2レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバの光路長との光路長差は、前記第1レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバにおける屈折率と前記第2レーザー増幅光の前記第1ループ光ファイバにおける屈折率との屈折率差に応じ、第1光周波数コムの繰り返し周波数と第2光周波数コムの繰り返し周波数との繰り返し周波数差に依存する。
【0012】
本発明のレーザー装置は、上述のデュアル光周波数コム生成光学系と、前記デュアル光周波数コム生成光学系の前記導入部に接続され、前記第1レーザー光及び前記第2レーザー光を発する光源と、を備えている。
【0013】
本発明の計測装置は、上述のレーザー装置と、前記デュアル光周波数コム生成光学系から導出される前記第1光周波数コム及び前記第2光周波数コムの進行方向の奥側に配置され、前記第1光周波数コム及び前記第2光周波数コムを分離して互いに異なる進路に進行させる偏波分離部と、前記偏波分離部によって互いに分離された前記第1光周波数コム及び前記第2光周波数コムの少なくとも一方の進路上に配置された試料よりも前記第1光周波数コム及び前記第2光周波数コムの進行方向の奥側に配置され、測定対象の前記第1光周波数コム及び前記第2光周波数コムを干渉させる偏波干渉部と、前記偏波干渉部で得られる干渉信号の進行方向の奥側に配置され、前記干渉信号から前記試料の情報を抽出する試料情報抽出部と、を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置によれば、互いに繰り返し周波数が異なる光周波数コムの信号対雑音比を高め、且つ光学系の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態のレーザー装置の平面図である。
図2】本発明の第1実施形態の計測装置の平面図である。
図3】本発明の第2実施形態のレーザー装置の平面図である。
図4】本発明の第3実施形態のレーザー装置の平面図である。
図5】本発明の第4実施形態のレーザー装置の平面図である。
図6】本発明の第5実施形態のレーザー装置の平面図である。
図7図6のレーザー装置の非相反位相シフト部の第1構成例の平面図である。
図8図6のレーザー装置の非相反位相シフト部の第2構成例の平面図である。
図9】本発明の第6実施形態のレーザー装置の平面図である。
図10】本発明の第7実施形態のレーザー装置の平面図である。
図11】本発明の第8実施形態のレーザー装置の平面図である。
図12】本発明の第9実施形態のレーザー装置の平面図である。
図13】本発明の第10実施形態のレーザー装置の平面図である。
図14】本発明の第11実施形態のレーザー装置の平面図である。
図15】本発明の第12実施形態のレーザー装置の平面図である。
図16】本発明の第13実施形態のレーザー装置の平面図である。
図17】本発明のレーザー装置の平面図である。
図18】本発明の別のレーザー装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
(第1実施形態)
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図1に示すように、本発明の第1実施形態のレーザー装置60Aは、光源5、偏波保持型光ファイバ6、偏波分離素子12、一方の端部が偏波分離素子12に接続された偏波保持型光ファイバ31、デュアル光周波数コム生成光学系10Aを備えている。偏波保持型光ファイバ6の入射側の端部(一方の端部)は、光源5に接続されている。偏波保持型光ファイバ6の出射側の端部(他方の端部)は、偏波分離素子12に接続されている。偏波保持型光ファイバ31の入射側の端部(一方の端部)は、偏波分離素子12に接続されている。偏波保持型光ファイバ31の出射側の端部(他方の端部)は、デュアル光周波数コム生成光学系10Aに接続されている。
【0018】
光源5は、少なくとも、光軸Aに対して偏光の向きが第1方向であるレーザー光(第1レーザー光)S1と光軸Aに対して偏光の向きが第2方向であるレーザー光(第2レーザー光)S2とを含むレーザー光S0を発する。光軸Aは、光の進行方向を示している。光軸Aが図1の紙面に垂直な方向を向くとすると、第1方向は紙面の上側及び下側を向く方向であり、第2方向は紙面の左側及び右側を向く方向である。第1方向と第2方向は互いに異なれば、それぞれ任意の方向に向いていてよい。例えば、偏波保持型ファイバの遅軸と速軸を第1方向と第2方向としてレーザー光を導波してもよい。本実施形態の光源5は、レーザー光S1,S2と、光軸Aに対して偏光の向きが第1方向及び第2方向とは異なる任意の方向である第3レーザー光S3,S4,…とを発する半導体レーザーである。
【0019】
光源5から発せられたレーザー光S0の偏光の向きは、偏波保持型光ファイバ6において保持される。偏波分離素子12は、レーザー光S0から、レーザー光S1,S2のみを偏波保持型光ファイバ31に出射する。
【0020】
デュアル光周波数コム生成光学系10Aは、第1ループ光ファイバ30と、第1ループ光ファイバ30に設けられた導入部21、増幅部40、レーザー増幅光戻し部70、及び、導出部24とを備えている。
【0021】
第1ループ光ファイバ30は、図1の右側に示す第2ループ部32と、図1の左側に示す第3ループ部33と、第2ループ部32及び第3ループ部33とを連結する連結部22とを備えている。連結部22は、偏波保持型光カプラで構成されている。すなわち、第1ループ光ファイバ30は、連結部22を結び目として、数字の「8」を描くように構成されている。第2ループ部32は、偏波保持型光ファイバ32A,32B,32Cで構成されている。第3ループ部33は、偏波保持型光ファイバ33A,33B,33Cで構成されている。以下では、偏波保持型光ファイバ32C,32A,32Bの順に光が導波される方向、及び、偏波保持型光ファイバ33A,33B,33Cの順に光が導波される方向をR1方向(周方向)と称する。また、R1方向に沿って逆向きの方向をR2方向(逆方向)と称する。第1ループ光ファイバ30は、導入部21及び偏波保持型光ファイバ31を介して、偏波分離素子12に接続されている。
【0022】
導入部21は、第2ループ部32に設けられ、偏波保持型光カプラで構成されている。導入部21においてR1方向の手前側の端部(すなわち、偏波保持型光ファイバ31の出射側の端部に接続されている端部)に、偏波保持型光ファイバ32Cが接続されている。導入部21におけるR1方向の奥側の端部に、偏波保持型光ファイバ32Aが接続されている。導入部21には、レーザー光S1,S2と、希土類添加光ファイバによって構成される増幅部40で増幅されたレーザー増幅光(第1レーザー増幅光,第2レーザー増幅光)L1,L2が通る。そのため、導入部21は、少なくともレーザー光S1,S2の第1波長とレーザー増幅光L1,L2の第2波長とを導入及び導出可能な波長分割多重型且つ偏波保持型の光カプラで構成されている。
【0023】
増幅部40は、第2ループ部32の偏波保持型光ファイバ32Aと偏波保持型光ファイバ32Bとの間に設けられ、偏波保持型光増幅ファイバで構成されている。光増幅ファイバとしては、例えば希土類添加光ファイバが挙げられる。希土類添加光ファイバに添加される希土類元素としては、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ツリウム(Tm)等が挙げられる。なお、希土類添加光ファイバに添加される希土類元素は、第1波長及び第2波長を考慮して適宜選定される。
【0024】
連結部22の第2ループ部32側の端部に、偏波保持型光ファイバ32B,32Cが接続されている。連結部22の第3ループ部33側の端部に、偏波保持型光ファイバ33A,33Cが接続されている。
【0025】
レーザー増幅光戻し部70は、増幅部40によって増幅されたレーザー増幅光L1,L2のモード同期を行う。レーザー増幅光戻し部70は、連結部22、第3ループ部33に設けられた偏波保持型光ファイバ33A,33B,33C、及び偏波保持型光アイソレータ23を有する。偏波保持型光アイソレータ23は、R1方向に沿って偏波保持型光ファイバ33Bから入射するレーザー増幅光L1,L2のみを偏波保持型光ファイバ33Cへ通過させ、R2方向に沿って偏波保持型光ファイバ33Cから入射するレーザー増幅光L1,L2を光吸収や分岐等によって第1ループ光ファイバ30から除去する。
【0026】
導出部24は、第3ループ部33に設けられ、偏波保持型光カプラで構成されている。
導出部24においてR1方向の手前側の端部(すなわち、連結部22側の端部)に、偏波保持型光ファイバ33Aが接続されている。導出部24においてR1方向の奥側の端部に、偏波保持型光ファイバ33B,34の各々の入射側の端部(一方の端部)が接続されている。偏波保持型光ファイバ34は、導出部24を介して、第1ループ光ファイバ30から、互いに繰り返し周波数の異なる光周波数コム(第1光周波数コム,第2光周波数コム)C1,C2を取り出すために設けられる。
【0027】
上述のように、第1ループ光ファイバ30が偏波保持型光ファイバで構成され、第1ループ光ファイバ30に設けられる各構成要素が偏波保持可能であるので、第1ループ光ファイバ30で導波及び制御される偏光の向きは保持される。
【0028】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の動作]
次に、デュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aの動作、及び、デュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aを用いて光周波数コムC1,C2を生成する原理について説明する。
【0029】
光源5から発せられたレーザー光S0は、偏波保持型光ファイバ6に導波され、偏波分離素子12に入射する。偏波分離素子12によって、レーザー光S0からレーザー光S1,S2が分離され、レーザー光S1,S2のみが偏波保持型光ファイバ31に導波される。
【0030】
偏波保持型光ファイバ31を導波したレーザー光S1,S2は、導入部21を介して偏波保持型光ファイバ32Aに導波され、増幅部40に入射する。増幅部40によって、レーザー光S1,S2が増幅され、レーザー増幅光L1,L2が生成される。増幅部40として希土類添加光ファイバが用いられているため、レーザー増幅光L1,L2の波長(第2波長)は、増幅する前のレーザー光S1,S2の波長(第1波長)とは異なる。第2波長を有するレーザー増幅光L1,L2は、増幅部40からR1方向及びR2方向の両方に沿って偏波保持型光ファイバ32B,32Aに導波される。
【0031】
レーザー増幅光L1,L2は、増幅部40からR2方向に沿って偏波保持型光ファイバ32A、導入部21をこの順に通り、偏波保持型光ファイバ32Cに導波される。
【0032】
R1方向に沿って偏波保持型光ファイバ32Bに導波されたレーザー増幅光L1,L2と、R2方向に沿って偏波保持型光ファイバ32Cに導波されたレーザー増幅光L1,L2は、連結部22に入射する。R1方向に沿って増幅部40から偏波保持型光ファイバ32Bを導波して連結部22に入射するレーザー増幅光L1,L2は、偏波保持型光ファイバ32Bの長さに応じた非線形位相シフトを受ける。R2方向に沿って増幅部40から偏波保持型光ファイバ32A、導入部21、偏波保持型光ファイバ32Cを導波して連結部22に入射するレーザー増幅光L1,L2は、偏波保持型光ファイバ32A,32Cの長さに応じた非線形位相シフトを受ける。
【0033】
連結部22を構成する偏波保持型光カプラでは、R1方向に沿って偏波保持型光ファイバ32Bから入射したレーザー増幅光L1,L2と、R2方向に沿って偏波保持型光ファイバ32Cから入射したレーザー増幅光L1,L2が干渉する。連結部22の偏波保持型光カプラでは、偏波保持型光ファイバ32Bから入射したレーザー増幅光L1,L2と、偏波保持型光ファイバ32Cから入射したレーザー増幅光L1,L2との位相差φによって、偏波保持型光ファイバ33Aに導波されるレーザー増幅光L1,L2と偏波保持型光ファイバ33Cに導波されるレーザー増幅光L1,L2の光量比が変わる。位相差φは、偏波保持型光ファイバ32B,Cの各々から連結部22に入射するレーザー増幅光L1,L2が受けた非線形位相シフトの差に相当する。位相差φが第2波長の半分の奇数倍である場合(所定の条件を満たす場合)、連結部22の偏波保持型光カプラにおける干渉によって強められたレーザー増幅光L1,L2が全てR1方向に沿って偏波保持型光ファイバ33Aに導波される。
【0034】
連結部22からR1方向に沿って偏波保持型光ファイバ33Aに導波されたレーザー増幅光L1,L2は、導出部24に入射する。導出部24に入射したレーザー増幅光L1,L2の一部は、R1方向に沿って偏波保持型光ファイバ33Bに導波され、偏波保持型光アイソレータ23を通り、偏波保持型光ファイバ33Cに導波され、再び連結部22に入射する。一方で、連結部22からR2方向に沿って偏波保持型光ファイバ33Cに導波されたレーザー増幅光L1,L2は、偏波保持型光アイソレータ23で除去される。すなわち、第3ループ部33は、位相差φに基づいて連結部22からR1方向に導出されたレーザー増幅光L1,L2のみを周回させ、連結部22に戻す。
【0035】
偏波保持型光ファイバ33CからR1方向に沿って連結部22に入射したレーザー増幅光L1,L2の一部(約半分)は、引き続きR1方向に沿って偏波保持型光ファイバ32Cに導波され、導入部21及び偏波保持型光ファイバ32Aを通り、再び増幅部40で増幅される。偏波保持型光ファイバ33CからR1方向に沿って連結部22に入射したレーザー増幅光L1,L2の残部は、R2方向に沿って偏波保持型光ファイバ32Bに導波され、再び増幅部40で増幅される。増幅部40で増幅されたレーザー増幅光L1,L2は、前段で説明したようにR1,R2方向の両方に沿って導波され、繰り返し増幅される。
【0036】
上述のレーザー光S1,S2及びレーザー増幅光L1,L2の導波及びデュアル光周波数コム生成光学系10Aの動作では、第2ループ部32は、利得のある非線形増幅光ファイバーループミラーとして機能する。第2ループ部32、連結部22、偏波保持型光アイソレータ23、偏波保持型光ファイバ33A,33B,33Cは、可飽和吸収体のように機能する。すなわち、連結部22及び第3ループ部33は、可飽和吸収体のように機能する。連結部22での干渉によって強め合ったレーザー増幅光L1,L2のみが、第3ループ部33の偏波保持型光ファイバ33A,33B,33Cを周回し、第2ループ部32に戻り、増幅部40で増幅される。連結部22での干渉に基づく弱いレーザー増幅光L1,L2は、第3ループ部33の偏波保持型光ファイバ33Cに導波されるが、偏波保持型光アイソレータ23によって除去される。このようにレーザー増幅光L1,L2の光強度に応じて第1ループ光ファイバ30での損失が変わる。
【0037】
連結部22からR1,R2方向の各々の方向に沿って第2ループ部32に導波されるレーザー増幅光L1,L2は、各偏波保持型光ファイバの長さに応じた非線形位相シフトを受ける。第2ループ部32及び第3ループ部33における循環回数が所定の回数より少ないときは、レーザー増幅光L1,L2のパワーが低く、第2ループ部32における利得は小さい。第2ループ部32における利得は小さい状態では、デュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aは、レーザー増幅光L1,L2が連続光である状態で動作する。第2ループ部32及び第3ループ部33におけるレーザー増幅光L1,L2の循環回数が所定の回数以上になり、レーザー増幅光L1,L2のパワーが所定のパワーより高くなったときは、第2ループ部32における利得は非常に大きくなる。第2ループ部32における利得が非常に大きくなると、デュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aは、レーザー増幅光L1,L2がパルス光である状態で動作する。
【0038】
デュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aでは、レーザー増幅光L1,L2がそれぞれ連続光又はパルス光である状態で発振する間にモード同期状態に移行し、光周波数コムC1,C2が生成される。生成された光周波数コムC1,C2は、導出部24から、偏波保持型光ファイバ34に導出される。
【0039】
光周波数コムC1の繰り返し周波数frep1及び光周波数コムC2の繰り返し周波数frep2は、デュアル光周波数コム生成光学系10Aの共振器長によって決まる。デュアル光周波数コム生成光学系10Aの共振器長は、偏波保持型光ファイバ32A,32B,32C,33A,33B,33Cと増幅部40を構成する偏波保持型増幅光ファイバとの合計の長さ、すなわち第1ループ光ファイバ30の長さに相当する。デュアル光周波数コム生成光学系10Aにおけるレーザー増幅光L1の共振器の光路長は、レーザー増幅光L1の屈折率とデュアル光周波数コム生成光学系10Aの共振器長によって決まる。デュアル光周波数コム生成光学系10Aにおけるレーザー増幅光L2の共振器の光路長は、レーザー増幅光L2の屈折率とデュアル光周波数コム生成光学系10Aの共振器長によって決まる。デュアル光周波数コム生成光学系10Aの共振器長はレーザー増幅光L1,L2で共通しているが、偏光の向きがレーザー増幅光L1,L2では第1の向きと第2の向きで異なる。そのため、レーザー増幅光L1,L2の屈折率は、互いに異なる。したがって、レーザー増幅光L1,L2の屈折率差Δnに応じて、レーザー増幅光L1の共振器の光路長とレーザー増幅光L2の共振器の光路長とは互いに異なる。レーザー増幅光L1,L2の共振器の光路長差をΔLとすると、繰り返し周波数frep2は、(frep1+Δfrep)で表わされる。周波数差Δfrepは、光路長差ΔLに依存する。
【0040】
上述の動作原理に基づき、デュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aでは、連結部22から、強度の大きいパルス光を含むレーザー増幅光L1,L2がR1方向に沿って偏波保持型光ファイバ33Aに導波される。一方、強度の小さい連続光を含むレーザー増幅光L1,L2は、R2方向に沿って偏波保持型光ファイバ33Cにも導波される。但し、偏波保持型光アイソレータ23が設けられているので、R1方向に沿って偏波保持型光ファイバ33Aに導波されたレーザー増幅光L1,L2は、第3ループ部33を周回する。しかしながら、R2方向に沿って偏波保持型光ファイバ33Cに導波されたレーザー増幅光L1,L2は、偏波保持型光ファイバ33Cのみで導波され、第3ループ部33を周回しない。したがって、デュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aでは、レーザー増幅光L1,L2のモード同期レーザーを構成する共振器において、R1方向のみにレーザー増幅光L1,L2が周回する第3ループ部33の偏波保持型光ファイバ33A,33B,33Cは共通部分となる。このことをふまえ、偏波保持型光ファイバ32Bの長さと偏波保持型光ファイバ32A,32Cの合計の長さとの差は、位相差φが第2波長の半分の奇数倍になるように設定されている。そのうえで、レーザー増幅光L1,L2の各々の屈折率及び第2波長等を考慮し、偏波保持型光ファイバ33A,33B,33Cの合計の長さは、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLが所望の繰り返し周波数frep1,frep2に相当するように設定されている。
【0041】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
デュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aによれば、レーザー増幅光L1,L2を共通の第1ループ光ファイバ30内でモード同期状態に移行させつつ、共振させる。この際、レーザー増幅光L1,L2の偏光の向きが互いに異なるので、レーザー増幅光L1,L2の屈折率が異なる。レーザー増幅光L1,L2にとって、第1ループ光ファイバ30で構成される共振器の光路長は、互いに異なる。このことによって、導出部24から、偏光の向きが第1方向であり且つ繰り返し周波数frep1を有する光周波数コムC1と、偏光の向きが第2方向であり且つ光周波数コムC1とは異なる繰り返し周波数frep2を有する光周波数コムC2を得ることができる。
【0042】
デュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aでは、偏光の向きが互いに異なるレーザー光S1,S2及びレーザー増幅光L1,L2を用いる。デュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aでは、モード同期レーザーを共通にしつつ、レーザー増幅光L1,L2の屈折率を互いに異ならせ、レーザー増幅光L1,L2の共振器長を互いに異ならせることができる。このことによって、1台のモード同期レーザーで繰り返し周波数が異なる光周波数コムC1,C2(図2参照)を発生させることができる。レーザー増幅光L1,L2が1台のモード同期レーザーとしてデュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aを共有することによって、デュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aが受ける環境外乱や機械的な擾乱を共通にすることができる。このことによって、光周波数コムC1,C2の各々に含まれる環境外乱や機械的な擾乱の差を抑え、これらの環境外乱や機械的な擾乱を共通雑音として容易に除去し、光周波数コムC1,C2のSN比を高くすることができる。さらに、レーザー増幅光L1,L2がデュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aを共有することによって、従来のように光周波数コムC1,C2を生成するモード同期レーザーを個別に用意する場合に比べて、デュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aの小型化を図ることができる。
【0043】
デュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aでは、第1ループ光ファイバ30が第2ループ部32及び第3ループ部33で構成され、第2ループ部32及び第3ループ部33が連結部22によって連結されている。連結部22では、第2ループ部32をR1,R2方向の両方に沿って導波されたレーザー増幅光L1,L2が干渉する。位相差φに応じて強め合ったレーザー増幅光L1,L2は、R1方向のみに沿って第3ループ部33で周回する。したがって、連結部22及び第3ループ部33は単純なミラーのように機能する。デュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60Aでは、第3ループ部33を単純なミラーとして動作させることによって、非線形光学効果による位相シフトに影響されることなく、連結部22を介してレーザー増幅光L1,L2を偏波保持型光ファイバ32B,32Cの両方に戻すことができる。このことによって、レーザー増幅光L1,L2の位相差φによる干渉現象を生じさせることなく、R1方向に沿って偏波保持型光ファイバ33Cから連結部22に入射したレーザー増幅光L1,L2を偏波保持型光ファイバ32B、32Cの両方に導波させる。すなわち、第3ループ部33で周回したレーザー増幅光L1,L2を第2ループ部32の偏波保持型光ファイバ32B、32Cの両方に導波できる。したがって、デュアル光周波数コム生成光学系10Aの動作を安定させ、モード同期動作を良好に発生させることができる。
【0044】
[計測装置の構成]
本発明の第1実施形態の計測装置50の構成について説明する。図2に示すように、計測装置50は、デュアル光周波数コム生成光学系10Aを有するレーザー装置60A、偏波分離部52、偏波干渉部56、試料情報抽出部58を備えている。偏波保持型光ファイバ34の出射側の端部(他方の端部)は、偏波分離部52に接続されている。偏波干渉部56は、偏波分離部52で分離された光周波数コムC1,C2同士を干渉させる。試料情報抽出部58は、偏波干渉部56で干渉した光周波数コムC1,C2の干渉信号から試料の情報を抽出する。
【0045】
偏波分離部52は、互いに偏光の向きが異なる光周波数コムC1,C2を分離するために、偏波保持型光ファイバ34から出射された光周波数コムC1,C2の進行方向の奥側に配置されている。偏波分離部52は、例えば偏波分離型の光ビームスプリッタで構成されている。偏波分離部52によって互いに分離された光周波数コムC1,C2の進路X35,X36のうち、光周波数コムC1の進路X35上に、試料Sが配置されている。試料Sは、計測装置50の測定対象である。光周波数コムC2の進路X36に沿って、進路X36を偏波干渉部56に向けて折り返すための偏波保持型のミラー57A,57Bが設けられている。
【0046】
偏波干渉部56は、偏波分離部52で分離された光周波数コムC1,C2同士を干渉させる。偏波干渉部56は、試料Sの情報を含む光周波数コムC1(以下、光周波数コムC3とする)と光周波数コムC2とを干渉させるために、試料Sより光周波数コムC3の進行方向の奥側に配置されている。偏波干渉部56は、偏波分離型の光ビームスプリッタやハーフミラーで構成されている。
【0047】
試料情報抽出部58は、偏波干渉部56で干渉した光周波数コムC1,C2の干渉信号から試料の情報を抽出する。試料情報抽出部58は、偏波干渉部56で光周波数コムC2,C3が互いに干渉することで発生するマルチヘテロダイン信号(干渉信号)の進行方向の奥側に配置されている。試料情報抽出部58は、マルチヘテロダイン信号から試料Sに関する情報を取得可能であって、一般に知られている光学系、例えば受光器で電気信号に変換する装置等で構成されている。
【0048】
[計測装置を用いた計測方法]
計測装置50では、偏波保持型光ファイバ34から出射した光周波数コムC1,C2が偏波分離部52によって互いに異なる進路に進行するように分離される。光周波数コムC1は、進路X35に沿って進行し、試料Sを通過する。試料Sを通過する際に、光周波数コムC1に試料Sが有する光学的な情報が付加される。光周波数コムC2は偏波保持型のミラー57A,57Bによって折り返され、進路X35に沿って進行する。
【0049】
進路X35に沿って進行する光周波数コムC3と進路X36に沿って進行する光周波数コムC2は、偏波干渉部56で再び合わさり、互いに干渉する。光周波数コムC2,C3の干渉によって、マルチヘテロダイン信号が生成される。マルチヘテロダイン信号は進路X37に沿って進行し、試料情報抽出部58に入射する。図2に示すように、試料情報抽出部58において、マルチヘテロダイン信号は、例えば高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)によって、高周波数帯域のモード分解スペクトルに変換される。モード分解スペクトルの波形(図2に破線で示す波形)Wから、試料Sの光学的な情報が抽出される。モード分解スペクトルにおいて周波数軸上で隣り合うスペクトル同士の周波数間隔は、繰り返し周波数差Δfrepに相当する。
【0050】
[計測装置の作用効果]
計測装置50では、偏波分離部52によって光周波数コムC1,C2の進路を分離し、光周波数コムC1に試料Sの光学的な情報を付加できる。偏波干渉部56では、光周波数コムC2,C3を互いに干渉させることによって、光周波数コムC2,C3に共通して含まれる環境外乱や機械的な擾乱を除去し、高周波数帯域で容易に観測可能なモード分解スペクトルを得ることができる。試料情報抽出部58では、得られたモード分解スペクトルのスペクトル分布の波形Wから試料Sの情報を抽出できる。したがって、本発明の計測装置50によれば、高SN比の光周波数コムC1,C2を用いるので、試料Sの情報を高精度に取得できる。計測装置50において光周波数コムC1,C2の発生に関する構成を共通化しているので、従来のように光周波数コムC1,C2を生成する光学系をそれぞれ個別のスペースに用意する必要がなく、計測装置50の小型化を図ることができる。
【0051】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。なお、第2実施形態以降の各実施形態に関する説明及び図面において、第1実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系10A、レーザー装置60A及び計測装置50と共通する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。第2実施形態以降の各実施形態では、基本的に第1実施形態と異なる構成及び作用について説明し、説明する構成及び作用以外は第1実施形態と共通する。
【0052】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図3に示すように、第2実施形態のレーザー装置60Bは、レーザー装置60Aの偏波保持型光ファイバ6及び偏波分離素子12に替えて偏波保持型光ファイバ42を備えると共に、第1実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系10Aを備えている。
【0053】
偏波保持型光ファイバ42は、偏波保持型光ファイバ6と同様に、内部で導波するレーザー光S1,S2の偏光の向きを保持可能な光ファイバである。光軸Aを中心とする偏波保持型光ファイバ42のクラッド77の偏光軸J42は、光軸Aを中心とする偏波保持型光ファイバ31のクラッド71の偏光軸J31に対して45°,135°,225°,315°のうち何れかの角度をなしている。偏光軸J42,J31は、断面視でコア80を挟んでクラッド77,71の各々に設けられている一対の応力付与部80,80の位置によって決まる。
【0054】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の動作]
レーザー装置60Bでは、光源5から発せられたレーザー光S0が偏波保持型光ファイバ42に導波される際に、複数の偏光の向きのレーザー光S0から偏光軸J42に沿う偏光の向きのレーザー光SX(図示略)が取り出される。レーザー光SXが偏波保持型光ファイバ31に導波されると、偏光軸J31によってレーザー光S1,S2に分離される。レーザー光S1,S2のみがデュアル光周波数コム生成光学系10Aの導入部21に入射する。
【0055】
導入部21を介してデュアル光周波数コム生成光学系10Aに導入されたレーザー光S1,S2の導波及びレーザー増幅光L1,L2の発生等は、第1実施形態で説明した内容と同様である。偏波保持型光ファイバ34からは、互いに繰り返し周波数の異なる光周波数コムC1,C2(図2参照)が得られる。
【0056】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置60Bは、デュアル光周波数コム生成光学系10Aを有するので、レーザー装置60Aと同様の効果を奏する。また、レーザー装置60Bでは、偏波保持型光ファイバ42,31の各々の偏光軸J42,J31を光軸Aに直交する断面において互いに45°(又は135°,225°,315°)をなすように傾けるので、偏波分離素子12を使わずにレーザー光LXをレーザーS1,S2に分けることができる。例えば、光源5を構成する半導体レーザーの出射口に偏波保持型光ファイバ42が直接接続されていれば、偏光軸J42を偏光軸J31に対して光軸Aを中心に傾けた状態で、偏波保持型光ファイバ42,31の端部を融着等により接続できる。このような構成によって、偏波分離素子12を使わずに、レーザー装置60Bの構成をレーザー装置60Aの構成に比べて簡易にすることができる。
【0057】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第2実施形態の計測装置は、図2に示す計測装置50のレーザー装置60Aに替えて、図3に示すレーザー装置60Bを備えている。レーザー装置以外の第2実施形態の計測装置の構成は、計測装置50と同様である。レーザー装置60Bではレーザー装置60Aと同様に偏波保持型光ファイバ34から光周波数コムC1,C2が得られるので、第2実施形態の計測装置は、計測装置50と同様に動作し、計測装置50と同様の効果を奏する。
【0058】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0059】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図4に示すように、第3実施形態のレーザー装置60Cは、レーザー装置60Aの1台の光源5、偏波保持型光ファイバ6及び偏波分離素子12に替えて、2台の光源5A,5B、2本の偏波保持型光ファイバ6A,6B及び偏波結合素子14を備えると共に、第1実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系10Aを備えている。
【0060】
光源5A,5Bは、光源5と同様、半導体レーザーで構成されている。光源5Aはレーザー光S1のみを発し、光源5Bはレーザー光S2のみを発する。偏波結合素子14は、異なる経路としての偏波保持型光ファイバ6A,6Bから入射したレーザー光S1,S2を結合し、結合したレーザー光S1,S2を共通の偏波保持型光ファイバ31に出射する。偏波結合素子14は、例えば偏光ビームスプリッタで構成されている。
【0061】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の動作]
レーザー装置60Cでは、光源5Aから発せられたレーザー光S1が偏波保持型光ファイバ6Aに導波されると共に、光源5Bから発せられたレーザー光S2が偏波保持型光ファイバ6Bに導波される。レーザー光S1,S2が偏波保持型光ファイバ6A,6Bから偏波結合素子14に入射すると、互いに結合する。結合したレーザー光S1,S2は、偏波保持型光ファイバ31を介して、デュアル光周波数コム生成光学系10Aの導入部21に入射する。
【0062】
導入部21を介してデュアル光周波数コム生成光学系10Aに導入されたレーザー光S1,S2の導波は、第1実施形態で説明した内容と同様である。偏波保持型光ファイバ34からは、互いに繰り返し周波数の異なる光周波数コムC1,C2(図2参照)が得られる。
【0063】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置60Cは、デュアル光周波数コム生成光学系10Aを有するので、レーザー装置60Aと同様の効果を奏する。また、レーザー装置60Cでは、レーザー光S1,S2を互いに異なる光源で発生させ、互いに異なる偏波保持型光ファイバで導波させ、偏波結合素子14で結合し、レーザー光L1,L2を得る。このことによって、レーザー光S1,S2を個別に制御し、光周波数コムC1,C2の特性を容易且つ高精度に調整できる。例えば、光周波数コムC1の繰り返し周波数frep1あるいは光周波数コムC2の繰り返し周波数frep2のみを変調及び制御することや、光周波数コムC1又は光周波数コムC2のみの光周波数の位相を制御できる。
【0064】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第3実施形態の計測装置は、図2に示す計測装置50のレーザー装置60Aに替えて、図4に示すレーザー装置60Cを備えている。レーザー装置以外の第3実施形態の計測装置の構成は、計測装置50と同様である。レーザー装置60Cではレーザー装置60Aと同様に偏波保持型光ファイバ34から光周波数コムC1,C2が得られるので、第3実施形態の計測装置は、計測装置50と同様に動作し、計測装置50と同様の効果を奏する。
【0065】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0066】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図5に示すように、第4実施形態のレーザー装置60Dにおける光源5から導入部21までの構成は、第1実施形態で説明したレーザー装置60Aにおける光源5から導入部21までの構成と同様である。レーザー装置60Dは、第1実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系10Aに替えて、デュアル光周波数コム生成光学系10Bを備えている。
【0067】
デュアル光周波数コム生成光学系10Bの第3ループ部33の偏波保持型光ファイバ33Bには、位相変調部72が組み込まれている。位相変調部72は、第3ループ部33で導波されるレーザー増幅光L1,L2の位相を変調できる。位相変調部72は、R1方向の手前側に設けられた電気光学変調器(第1電気光学変調器)73Aと、R1方向の奥側に設けられた電気光学変調器(第2電気光学変調器)73Bと、を備えている。偏波保持型光ファイバ33Bの端部と電気光学変調器73A,73Bとの間には、それぞれ出射端子81、コリメータレンズ82が設けられている。電気光学変調器73A,73Bの各々には、第3ループ部33の外部から、増幅器83を介して高周波発生器84から高パワーの高周波電気信号が供給される。電気光学変調器73Aは、偏光の向きが第1方向であるレーザー増幅光L1の位相のみを変調できる。電気光学変調器73Bは、偏光の向きが第2方向であるレーザー増幅光L2の位相のみを変調できる。
【0068】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の動作]
デュアル光周波数コム生成光学系10B及びレーザー装置60Dでは、第1実施形態で説明した内容と同様の導波及び動作原理によって、偏波保持型光ファイバ34からは、互いに繰り返し周波数の異なる光周波数コムC1,C2(図2参照)が得られる。
【0069】
デュアル光周波数コム生成光学系10B及びレーザー装置60Dでは、R1,R2方向に沿って第3ループ部33に導波されたレーザー増幅光L1,L2のうち、R1方向に沿って位相変調部72に入射したレーザー増幅光L1の光路長が電気光学変調器73Aによって変化する。また、R1方向に沿って位相変調部72に入射したレーザー増幅光L2の光路長は、電気光学変調器73Bによって変化する。すなわち、電気光学変調器73A,73Bによるレーザー増幅光L1の光路長の変化量によって、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLが変化する。
【0070】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置60Dは、デュアル光周波数コム生成光学系10Bを有するので、レーザー装置60Aと同様の効果を奏する。また、デュアル光周波数コム生成光学系10B及びレーザー装置60Cでは、電気光学変調器73Aによるレーザー増幅光L1の光路長の変化量と電気光学変調器73Bによるレーザー増幅光L2の光路長の変化量との差を調整することによって、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLを高精度に制御できる。レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLを高精度に制御することで、光周波数コムC1の繰り返し周波数frep1、又は光周波数コムC2の繰り返し周波数frep2のみを容易に制御できる。
【0071】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、本発明の第4実施形態の計測装置は、図2に示す計測装置50のレーザー装置60Aに替えて、図5に示すレーザー装置60Dを備えている。レーザー装置以外の第4実施形態の計測装置の構成は、計測装置50と同様である。レーザー装置60Dではレーザー装置60Aと同様に偏波保持型光ファイバ34から光周波数コムC1,C2が得られるので、第4実施形態の計測装置は、計測装置50と同様に動作し、計測装置50と同様の効果を奏する。レーザー装置60Dによれば、光周波数コムC1,C2同士の繰り返し周波数差Δfrepを容易に制御できるので、モード分解スペクトルにおいて周波数軸上で隣り合うスペクトル同士の周波数間隔を容易に制御すると共に、第4実施形態の計測装置の測定分解能を容易に調整できる。
【0072】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0073】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図6に示すように、第5実施形態のレーザー装置60Eにおける光源5から導入部21までの構成は、第1実施形態で説明したレーザー装置60Aにおける光源5から導入部21までの構成と同様である。レーザー装置60Eは、第1実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系10Aに替えて、デュアル光周波数コム生成光学系10Cを備えている。
【0074】
デュアル光周波数コム生成光学系10Cは、少なくとも第4実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系10Bの構成を備えている。加えて、デュアル光周波数コム生成光学系10Cの第2ループ部32の偏波保持型光ファイバ32Cには、偏波多重型の非相反位相シフト部90が組み込まれている。ここで、「偏波多重型」であるとは、偏光の向きが第1方向であるレーザー増幅光L1と、偏光の向きが第2方向であるレーザー増幅光L2の両方に対して作用することを示す。前述の「非相反」であるとは、R1方向に導波されるレーザー増幅光L1,L2と、R2方向に導波されるレーザー増幅光L1,L2の両方に対して個別に作用することを示す。すなわち、非相反位相シフト部90は、R1方向に導波されるレーザー増幅光L1,L2とR2方向に導波されるレーザー増幅光L1,L2との位相差φをシフトさせることができる。
【0075】
図7及び図8は、非相反位相シフト部90の第1構成例及び第2構成例を示す。図7に示すように、第1構成例の非相反位相シフト部90Aは、2台のファラデーローテータ91,92と、1/4波長板(quarter-wave plate:QWP)93と、を備えている。非相反位相シフト部90Aでは、基台98のR1方向の手前側及び奥側の端部に、偏波保持型光ファイバ32Cに接続されたコリメータ100A,100Bが設けられている。R1方向に沿って、基台98に、コリメータ100A,100Bの間に、ファラデーローテータ91、QWP93、ファラデーローテータ92が間隔をあけてこの順に配置されている。
【0076】
ファラデーローテータ91は、R1方向に沿って入射するレーザー増幅光L1,L2の偏光の向きを所定の方向に回転させる。所定の方向は、例えば、第1方向から光軸Aを中心に所定の角度θだけ回転させた方向である。ファラデーローテータ91は、R2方向に沿って入射するレーザー増幅光L1,L2の偏光の向きを所定の逆方向に回転させる。所定の逆方向は、例えば、第1方向から光軸Aを中心に所定の角度θだけR1方向からの入射時とは逆側に回転させた方向である。
【0077】
ファラデーローテータ92は、R2方向に沿って入射するレーザー増幅光L1,L2の偏光の向きを所定の方向に回転させる。所定の方向は、例えば、第1方向から光軸Aを中心に所定の角度θだけ回転させた方向である。ファラデーローテータ92は、R1方向に沿って入射するレーザー増幅光L1,L2の偏光の向きを所定の逆方向に回転させる。所定の逆方向は、例えば、第1方向から光軸Aを中心に所定の角度θだけR1方向からの入射時とは逆側に回転させた方向である。
【0078】
非相反位相シフト部90Aでは、R1方向に沿って偏波保持型光ファイバ32Cを通ってコリメータ100Aからファラデーローテータ91に入射したレーザー増幅光L1,L2の偏光の向きは、ファラデーローテータ91によって第1方向及び第2方向から第3方向及び第4方向に変更される。偏光の向きが第3方向及び第4方向になったレーザー増幅光L1,L2は、QWP93に入射する。R1方向に沿ってQWP93から出射されてファラデーローテータ92に入射したレーザー増幅光L1,L2の偏光の向きは、ファラデーローテータ92によって第3方向から第1方向に、及び、第4方向から第2方向に戻る。ファラデーローテータ92を通過したレーザー増幅光L1,L2は、コリメータ100Bから偏波保持型光ファイバ32Cに導波される。
【0079】
非相反位相シフト部90Aにおいて、R2方向に沿って偏波保持型光ファイバ32Cを通ってコリメータ100Bからファラデーローテータ92に入射したレーザー増幅光L1,L2の偏光の向きは、先にファラデーローテータ92によってR1方向とは逆に回転する。この際、QWP93の結晶軸をR1方向の偏光の向きに合わせておけば、R2方向に沿って進行するレーザー増幅光L1,L2に対して相対的な位相差90°を与えることができる。したがって、QWP93を通過した後に、ファラデーローテータ91によって偏光の向きが戻される。QWP93の結晶軸の向きは、例えばレーザー増幅光L1,L2の第1方向/第2方向から第3方向/第4方向とは逆に変更された向きに合わせることができる。
【0080】
非相反位相シフト部90Aによれば、偏波保持型光ファイバ32CからR1方向に沿って入射するレーザー増幅光L1,L2と、R2方向に沿って入射するレーザー増幅光L1,L2の両方に、位相差オフセットを付与できる。位相差オフセットは、QWP93の特性に基づいている。
【0081】
ファラデーローテータ91,92の間に配置される波長板の数は、図7では1であるが、変更されてもよい。QWP93のR1方向の奥側に、すなわち、QWP93とファラデーローテータ92との間に、1/2波長板(half-wave plate:HWP)と、QWP93とは異なるQWPが設けられてもよい。
【0082】
図8に示すように、第2構成例の非相反位相シフト部90Bは、4台のファラデーローテータ91A,91B,92A,92B、2つのQWP93A,93Bを備えている。ファラデーローテータ91A,91Bは、ファラデーローテータ91と同様に機能する。ファラデーローテータ92A,92Bは、ファラデーローテータ92と同様に機能する。QWP93A,93Bは、QWP93と同様に機能する。
【0083】
非相反位相シフト部90Bでは、第1構成例の非相反位相シフト部90Aにおけるファラデーローテータ91、QWP93、及び、ファラデーローテータ92の一連の構成が並列に設けられている。基台98には、R1方向に沿って、コリメータ100A,100Bの間に、第1系列としてファラデーローテータ91A、QWP93A、ファラデーローテータ92Aが互いに間隔をあけてこの順に配置されている。コリメータ100A,100Bの間には、第1系列とは異なる位置に、R1方向に沿って、第2系列としてファラデーローテータ91B、QWP93B、ファラデーローテータ92Bが間隔をあけてこの順に配置されている。第1系統において、ファラデーローテータ91AのR1方向の手前側には、偏波分離結合素子97Aが設けられている。ファラデーローテータ92AのR1方向の奥側には、偏波分離結合素子97Bが設けられている。第2系統において、ファラデーローテータ91BのR1方向の手前側には、偏波保持型のミラー99Aが設けられている。ファラデーローテータ92BのR1方向の奥側には、偏波保持型のミラー99Bが設けられている。
【0084】
非相反位相シフト部90Bでは、R1方向に沿ってコリメータ100Aからファラデーローテータ91に入射したレーザー増幅光L1,L2は、互いの偏光の向きの違いに基づいて偏波分離結合素子97Aによって分離される。レーザー増幅光L1,L2の一方のレーザー増幅光L1は、偏波分離結合素子97Aから第1系統に向けて進行する。レーザー増幅光L1は、ファラデーローテータ91A、QWP93A、ファラデーローテータ92Aをこの順に通過し、QWP93Aの特性に基づく位相シフトを受ける。偏波分離結合素子97Aによって分離されたレーザー増幅光L2は、ミラー99Aによって折り返されて第2系統に向けて進行し、ファラデーローテータ91B、QWP93B、ファラデーローテータ92Bをこの順に通過し、QWP93B、の特性に基づく位相シフトを受ける。ファラデーローテータ92Bから出射されたレーザー増幅光L2は、ミラー99Bによって偏波分離結合素子97Bに折り返される。偏波分離結合素子97Bに入射したレーザーL1,L2は、各々の偏光の向きを第1方向又は第2方向に維持しつつ、結合され、コリメータ100BからR1方向の奥側の偏波保持型光ファイバ32Cに入射する。
【0085】
非相反位相シフト部90Bにおいて、R2方向に沿ってコリメータ100Bから偏波分離結合素子97Bに入射したレーザー増幅光L1,L2は、進行方向が逆になる点を除き、R1方向に沿って進行しつつ非線形位相シフトを受けるレーザー増幅光L1,L2と同様に、非線形位相シフトを受ける。
【0086】
非相反位相シフト部90Bによれば、偏波保持型光ファイバ32CからR1方向に沿って入射するレーザー増幅光L1と、R2方向に沿って入射するレーザー増幅光L1の両方に、QWP93Aの特性に基づく位相シフトを付与できる。また、偏波保持型光ファイバ32CからR1方向に沿って入射するレーザー増幅光L2と、R2方向に沿って入射するレーザー増幅光L2の両方に、QWP93Bの特性に基づく位相差にオフセットを付与できる。非相反位相シフト部90Bでは、レーザー増幅光L1,L2に対して個別に位相シフトを付与できるので、非相反位相シフト部90Aに比べて光周波数コムC1,C2の繰り返し周波数差Δfrepを高精度に制御できる。
【0087】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の動作]
デュアル光周波数コム生成光学系10C及びレーザー装置60Eでは、第4実施形態で説明した内容と同様の導波及び動作原理によって、偏波保持型光ファイバ34からは、互いに繰り返し周波数の異なる光周波数コムC1,C2(図2参照)が得られる。但し、デュアル光周波数コム生成光学系10C及びレーザー装置60Eでは、R1,R2方向に沿って第2ループ部32に導波されたレーザー増幅光L1,L2が非相反位相シフト部90によって非線形位相シフトを受ける。
【0088】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置60Eは、デュアル光周波数コム生成光学系10Cを有するので、レーザー装置60Dと同様の効果を奏する。デュアル光周波数コム生成光学系10C及びレーザー装置60Eでは、非相反位相シフト部90を用いてレーザー増幅光L1,L2への非線形位相シフト量を調整することによって、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLを制御できる。したがって、デュアル光周波数コム生成光学系10C及びレーザー装置60Eによれば、非相反位相シフト部90を用いて、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLを制御し、光周波数コムC1,C2の繰り返し周波数差Δfrepを調整できる。非相反位相シフト部90として非相反位相シフト部90Bを用いてレーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLを個別に制御すれば、光周波数コムC1,C2の繰り返し周波数差Δfrepを細かく調整できる。
【0089】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第5実施形態の計測装置は、図2に示す計測装置50のレーザー装置60Aに替えて、図6に示すレーザー装置60Eを備えている。レーザー装置以外の第5実施形態の計測装置の構成は、計測装置50と同様である。レーザー装置60Eではレーザー装置60Aと同様に偏波保持型光ファイバ34から光周波数コムC1,C2が得られる。このことによって、第5実施形態の計測装置は、計測装置50と同様に動作し、計測装置50と同様の効果を奏する。レーザー装置60Eによれば、光周波数コムC1,C2同士の繰り返し周波数差Δfrepを容易に制御できる。したがって、モード分解スペクトルにおいて周波数軸上で隣り合うスペクトル同士の周波数間隔を容易に制御すると共に、第5実施形態の計測装置の測定分解能を容易に且つ高精度に調整できる。
【0090】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0091】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図9に示すように、第6実施形態のレーザー装置60Fにおける光源5から導入部21までの構成は、第1実施形態で説明したレーザー装置60Aにおける光源5から導入部21までの構成と同様である。レーザー装置60Fは、第1実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系10Aに替えて、デュアル光周波数コム生成光学系10Dを備えている。
【0092】
デュアル光周波数コム生成光学系10Dは、少なくとも第5実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系10Cの構成を備えている。デュアル光周波数コム生成光学系10Dの第2ループ部32の偏波保持型光ファイバ32Bには、共振器長制御素子76が組み込まれている。共振器長制御素子76によって、第2ループ部32におけるレーザー増幅光L1,L2の光路長が調節可能になる。共振器長制御素子76としては、例えば圧電素子や音響光学素子、電気光学素子等が挙げられる。
【0093】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の動作及び作用効果]
デュアル光周波数コム生成光学系10D及びレーザー装置60Fでは、第5実施形態で説明した内容と同様の導波及び動作原理によって、偏波保持型光ファイバ34からは、互いに繰り返し周波数の異なる光周波数コムC1,C2(図2参照)が得られる。デュアル光周波数コム生成光学系10D及びレーザー装置60Fでは、R1,R2方向に沿って第2ループ部32に導波されたレーザー増幅光L1,L2の光路長さを共振器長制御素子76によって変更できる。共振器長制御素子76によって、レーザー増幅光L1,L2の共振器長を制御し、光周波数コムC1,C2同士の繰り返し周波数差Δfrepを容易に且つ細かく制御できる。
【0094】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第6実施形態の計測装置は、図2に示す計測装置50のレーザー装置60Aに替えて、図6に示すレーザー装置60Fを備えている。レーザー装置以外の第6実施形態の計測装置の構成は、計測装置50と同様である。レーザー装置60Fではレーザー装置60Aと同様に偏波保持型光ファイバ34から光周波数コムC1,C2が得られるので、第6実施形態の計測装置は、計測装置50と同様に動作し、計測装置50と同様の効果を奏する。レーザー装置60Fによれば、光周波数コムC1,C2同士の繰り返し周波数差Δfrepを高精度に制御できる。このことによって、モード分解スペクトルにおいて周波数軸上で隣り合うスペクトル同士の周波数間隔を高精度に制御し、第6実施形態の計測装置の測定分解能を高精度に調整できる。
【0095】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0096】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図10に示すように、本発明の第7実施形態のレーザー装置60Gにおける光源5から導入部21までの構成は、第1実施形態で説明したレーザー装置60Aにおける光源5から導入部21までの構成と同様である。レーザー装置60Gは、第1実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系10Aに替えて、デュアル光周波数コム生成光学系10Eを備えている。
【0097】
デュアル光周波数コム生成光学系10Eは、第1ループ光ファイバ30、導入部21、増幅部40、連結部22、空間型共振部102を備えている。第1ループ光ファイバ30は、図10の右側に示す第2ループ部32と、図10の左側に示す偏波保持型光ファイバ33A,34,33Cを備えている。偏波保持型光ファイバ33A,34は共通の偏波保持型光ファイバで構成されているが、互いに接続された異なる偏波保持型光ファイバで構成されてもよい。偏波保持型光ファイバ33Aの入射側の端部(一方の端部)は連結部22の第2ループ部32側とは反対側に接続されている。偏波保持型光ファイバ33Aの出射側の端部(他方の端部)は計測装置50の偏波分離部52に接続されている。偏波保持型光ファイバ33Cの入射側の端部(一方の端部)は連結部22の第2ループ部32側とは反対側に接続されている。偏波保持型光ファイバ33Cの出射側の端部(他方の端部)には、空間型共振部102が接続されている。偏波保持型光ファイバ33Cでは光が長手方向に沿って往復するので、「入射側」及び「出射側」は偏波保持型光ファイバ33Cに最初に光が入射する側及び最初に光が出射する側を意味する。第1ループ光ファイバ30において、連結部22より図10の左側では、環状のループ経路は構成されていない。すなわち、第1ループ光ファイバ30は、連結部22を結び目として、数字の「9」を描くように構成されている。
【0098】
レーザー増幅光戻し部70は、連結部22と、偏波保持型光ファイバ33C及び空間型共振部102で構成される線形部38と、を有する。
【0099】
以下では、偏波保持型光ファイバ33Cの出射側の端部から、連結部22に対して離間する直線方向の1つをP1方向と称する。また、P1方向に沿って逆向きの直線方向をP2方向と称する。空間型共振部102は、偏波保持型の出射端104、レンズ108、偏波保持型のミラー106を備えている。出射端104は、偏波保持型光ファイバ33Cの出射側の端部に設けられている。レンズ108は、出射端104よりP1方向の奥側に配置されている。ミラー106は、レンズ108よりP1方向の奥側に配置されている。ミラー106の反射面106rにおけるレーザー増幅光L1,L2の透過率は、0%である。レンズ108は、P1方向に沿って入射するレーザー増幅光L1,L2をコリメートすると共に、P2方向に沿って入射するレーザー増幅光L1,L2を出射端104上に集光する。
【0100】
レーザー装置60Gにおける光源5から連結部22までのレーザー光S1,S2及びレーザー増幅光L1,L2の導波は、第1実施形態で説明したレーザー装置60Aにおける光源5から連結部22までのレーザー光S1,S2及びレーザー増幅光L1,L2の導波と同様である。
【0101】
連結部22では、位相差φによって、連結部22に入射したレーザー増幅光L1,L2が偏波保持型光ファイバ33A,33Cの各々に導波される比率が決まる。第1ループ光ファイバ30が「9」を描くように構成されているので、位相差φが第2波長の半分の偶数倍である場合(所定の条件を満たす場合)、連結部22の偏波保持型光カプラにおける干渉によって強められたレーザー増幅光L1,L2が全てR1方向に沿って偏波保持型光ファイバ33Aに導波される。連結部22に入射したレーザー増幅光L1,L2の一部(約50%)が偏波保持型光ファイバ33Aに導波される。連結部22に入射したレーザー増幅光L1,L2の残部(約50%)が偏波保持型光ファイバ33Cに導波される。
【0102】
連結部22から偏波保持型光ファイバ33Cに導波されたレーザー増幅光L1,L2は、偏波保持型光ファイバ33Cの他方の端部から空間型共振部102に入射し、出射端104を通って空間内に出射し、P1方向に沿って拡散してレンズ108に入射する。レンズ108に入射したレーザー増幅光L1,L2は、レンズ108によってコリメートされ、P1方向に沿って伝搬し、ミラー106の反射面106rによって反射される。反射面106rによって反射されたレーザー増幅光L1,L2は、P2方向に沿って伝搬し、レンズ108に入射し、レンズ108によって出射端104に集光する。出射端104に集光したレーザー増幅光L1,L2は、出射端104を通過し、R1方向に沿って偏波保持型光ファイバ33Cに導波される。
【0103】
偏波保持型光ファイバ33Cに導波され、R1方向に沿って連結部22に入射したレーザー増幅光L1,L2の導波は、第1実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系10A及びレーザー装置60AにおいてR1方向に沿って連結部22に入射したレーザー増幅光L1,L2の導波と同様である。連結部22から偏波保持型光ファイバ33A,34には、互いに異なる繰り返し周波数を有する光周波数コムC1,C2が得られる。
【0104】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置60Gは、デュアル光周波数コム生成光学系10Eを有し、レーザー装置60Aと同様の効果を奏する。また、レーザー装置60Gは、空間型共振部102を備えるので、出射端104,ミラー106の離間距離を変えることによって、レーザー増幅光L1,L2の共振器長を調節でき、加えて共振器長の調節範囲を大きく確保できる。
【0105】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第7実施形態の計測装置は、図2に示す計測装置50のレーザー装置60Aに替えて、図10に示すレーザー装置60Gを備えている。レーザー装置以外の第2実施形態の計測装置の構成は、計測装置50と同様である。レーザー装置60Gではレーザー装置60Aと同様に偏波保持型光ファイバ34から光周波数コムC1,C2が得られるので、第7実施形態の計測装置は、計測装置50と同様に動作し、計測装置50と同様の効果を奏する。
【0106】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0107】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図11に示すように、第8実施形態のレーザー装置60Hは、レーザー装置60Gの偏波保持型光ファイバ6及び偏波分離素子12に替えて偏波保持型光ファイバ42を備えると共に、第7実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系10Eを備えている。第2実施形態と同様に、光軸Aを中心とする偏波保持型光ファイバ42のクラッド77の偏光軸J42は、光軸Aを中心とする偏波保持型光ファイバ31のクラッド71の偏光軸J31に対して45°,135°,225°,315°のうち何れかの角度をなしている。
【0108】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置60Hは、デュアル光周波数コム生成光学系10Eを有し、レーザー装置60Gと同様の効果を奏する。また、レーザー装置60Gによれば、第2実施形態と同様に、偏波分離素子12を使わずに光源5から発せられたレーザー光をレーザーS1,S2に分けることができる。
【0109】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第8実施形態の計測装置は、図2に示す計測装置50のレーザー装置60Aに替えて、図11に示すレーザー装置60Hを備えている。レーザー装置以外の第8実施形態の計測装置の構成は、計測装置50と同様である。レーザー装置60Hではレーザー装置60Aと同様に偏波保持型光ファイバ34から光周波数コムC1,C2が得られるので、第8実施形態の計測装置は、計測装置50と同様に動作し、計測装置50と同様の効果を奏する。
【0110】
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0111】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図12に示すように、第9実施形態のレーザー装置60Iは、レーザー装置60Gの1台の光源5、偏波保持型光ファイバ6及び偏波分離素子12に替えて、2台の光源5A,5B、2本の偏波保持型光ファイバ6A,6B及び偏波結合素子14を備えると共に、第7実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系10Eを備えている。
【0112】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置60Iは、デュアル光周波数コム生成光学系10Eを有し、レーザー装置60Gと同様の効果を奏する。レーザー装置60Iによれば、第3実施形態と同様に、レーザー光S1,S2を個別に制御し、光周波数コムC1,C2の特性を容易且つ高精度に調整できる。
【0113】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第9実施形態の計測装置は、図2に示す計測装置50のレーザー装置60Aに替えて、図12に示すレーザー装置60Iを備えている。レーザー装置以外の第9実施形態の計測装置の構成は、計測装置50と同様である。レーザー装置60Iではレーザー装置60Aと同様に偏波保持型光ファイバ34から光周波数コムC1,C2が得られるので、第9実施形態の計測装置は、計測装置50と同様に動作し、計測装置50と同様の効果を奏する。
【0114】
(第10実施形態)
次に、本発明の第10実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0115】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図13に示すように、本発明の第10実施形態のレーザー装置60Jにおける光源5から導入部21までの構成は、第1実施形態で説明したレーザー装置60Aにおける光源5から導入部21までの構成と同様である。レーザー装置60Jは、第1実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系10Aに替えて、デュアル光周波数コム生成光学系10Fを備えている。
【0116】
デュアル光周波数コム生成光学系10Fは、第7実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系10Eの構成と、第4実施形態で説明した位相変調部72を備えている。空間型共振部102のレンズ108とミラー106との間には、位相変調部72の電気光学変調器73A,73Bが組み込まれている。位相変調部72は、空間型共振部102で共振するレーザー増幅光L1,L2の位相を変調できる。電気光学変調器73A,73Bの各々には、空間型共振部102の外部から増幅器83を介して高周波発生器84から高パワーの高周波信号が供給される。
【0117】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置60Jは、デュアル光周波数コム生成光学系10Fを有するので、レーザー装置60Gと同様の効果を奏する。レーザー装置60Jにおいては、第4実施形態で説明したように、電気光学変調器73Aによるレーザー増幅光L1の光路長の変化量と電気光学変調器73Bによるレーザー増幅光L2の光路長の変化量との差を調整できる。このことによって、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLを高精度に制御できる。すなわち、レーザー装置60Jでは、光周波数コムC1の繰り返し周波数frep1、又は光周波数コムC2の繰り返し周波数差Δfrep2のみを容易に制御できる。
【0118】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第10実施形態の計測装置は、図2に示す計測装置50のレーザー装置60Aに替えて、図13に示すレーザー装置60Jを備えている。レーザー装置以外の第10実施形態の計測装置の構成は、計測装置50と同様である。レーザー装置60Jではレーザー装置60Aと同様に偏波保持型光ファイバ34から光周波数コムC1,C2が得られるので、第10実施形態の計測装置は、計測装置50と同様に動作し、計測装置50と同様の効果を奏する。
【0119】
(第11実施形態)
次に、本発明の第11実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0120】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図14に示すように、第11実施形態のレーザー装置60Kにおける光源5から導入部21までの構成は、第1実施形態で説明したレーザー装置60Aにおける光源5から導入部21までの構成と同様である。レーザー装置60Kは、第1実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系10Aに替えて、デュアル光周波数コム生成光学系10Gを備えている。
【0121】
デュアル光周波数コム生成光学系10Gは、少なくとも第10実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系10Fの構成を備えている。加えて、デュアル光周波数コム生成光学系10Gの第2ループ部32の偏波保持型光ファイバ32Cには、第5実施形態で説明した偏波多重型の非相反位相シフト部90が組み込まれている。
【0122】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置60Kは、デュアル光周波数コム生成光学系10Gを有するので、レーザー装置60Jと同様の効果を奏すると共に、第5実施形態と同様に、非相反位相シフト部90を用いて、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLを制御し、光周波数コムC1,C2の繰り返し周波数差Δfrepを調整できる。レーザー装置60Kでは、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLを個別に制御し、光周波数コムC1,C2の繰り返し周波数差Δfrepを細かく調整できる。
【0123】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第11実施形態の計測装置は、図2に示す計測装置50のレーザー装置60Aに替えて、図14に示すレーザー装置60Kを備えている。レーザー装置以外の第11実施形態の計測装置の構成は、計測装置50と同様である。レーザー装置60Kではレーザー装置60Aと同様に偏波保持型光ファイバ34から光周波数コムC1,C2が得られるので、第11実施形態の計測装置は、計測装置50と同様に動作し、計測装置50と同様の効果を奏する。
【0124】
(第12実施形態)
次に、本発明の第12実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0125】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図15に示すように、第12実施形態のレーザー装置60Lにおける光源5から導入部21までの構成は、第1実施形態で説明したレーザー装置60Aにおける光源5から導入部21までの構成と同様である。レーザー装置60Lは、第1実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系10Aに替えて、デュアル光周波数コム生成光学系10Hを備えている。
【0126】
デュアル光周波数コム生成光学系10Hは、少なくとも第11実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系10Gの構成を備えている。加えて、デュアル光周波数コム生成光学系10Hの第2ループ部32の偏波保持型光ファイバ32Bには、共振器長制御素子76が組み込まれている。
【0127】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置60Lは、デュアル光周波数コム生成光学系10Hを有するので、レーザー装置60Kと同様の効果を奏すると共に、第6実施形態と同様に、R1,R2方向に沿って第2ループ部32に導波されたレーザー増幅光L1,L2の光路長さを共振器長制御素子76によって変更できる。レーザー装置60Lによれば、レーザー増幅光L1,L2の共振器長を制御し、光周波数コムC1の繰り返し周波数frep1、又は光周波数コムC2の繰り返し周波数frep2のみ、あるいは光周波数コムC1,C2同士の繰り返し周波数差Δfrepを容易に且つ細かく制御できる。
【0128】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第12実施形態の計測装置は、図2に示す計測装置50のレーザー装置60Aに替えて、図15に示すレーザー装置60Lを備えている。レーザー装置以外の第12実施形態の計測装置の構成は、計測装置50と同様である。レーザー装置60Lではレーザー装置60Aと同様に偏波保持型光ファイバ34から光周波数コムC1,C2が得られるので、第12実施形態の計測装置は、計測装置50と同様に動作し、計測装置50と同様の効果を奏する。
【0129】
(第13実施形態)
次に、本発明の第13実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置及び計測装置について説明する。
【0130】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の構成]
図16に示すように、第13実施形態のレーザー装置60Mにおける光源5から導入部21までの構成は、第1実施形態で説明したレーザー装置60Aにおける光源5から導入部21までの構成と同様である。レーザー装置60Mは、第7実施形態のレーザー装置60Gの空間型共振部102に替えて可飽和吸収反射体110を備えている。
【0131】
可飽和吸収反射体110は、連結部22での干渉によって強め合い、偏波保持型光ファイバ33Cを通って入射したレーザー増幅光L1,L2(パルス光)のみを偏波保持型光ファイバ33Cに反射する。可飽和吸収反射体110は、連結部22での干渉に基づいて弱まり、偏波保持型光ファイバ33Cを通って入射したレーザー増幅光L1,L2を吸収し、偏波保持型光ファイバ33Cには出射しない。すなわち、可飽和吸収反射体110は、第1実施形態で説明した第3ループ部33や第7実施形態で説明した空間型共振部102と同様に機能する。
【0132】
[デュアル光周波数コム生成光学系及びレーザー装置の作用効果]
レーザー装置60Mは、デュアル光周波数コム生成光学系10Mを有するので、レーザー装置60Aやレーザー装置60Gと同様の効果を奏する。レーザー装置60Mは、連結部22で強め合ったレーザー増幅光L1,L2を第2ループ部32に戻す構成として可飽和吸収反射体110を備えているので、レーザー装置60Mの小型化を図ることができる。
【0133】
[計測装置の構成、動作、及び作用効果]
図示していないが、第13実施形態の計測装置は、図2に示す計測装置50のレーザー装置60Aに替えて、図16に示すレーザー装置60Mを備えている。レーザー装置以外の第13実施形態の計測装置の構成は、計測装置50と同様である。レーザー装置60Mではレーザー装置60Aと同様に偏波保持型光ファイバ34から光周波数コムC1,C2が得られるので、第13実施形態の計測装置は、計測装置50と同様に動作し、計測装置50と同様の効果を奏する。
【0134】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系について説明したが、本発明に係る別の実施形態として、例えば図17に示すデュアル光周波数コム生成光学系10Nや、図18に示すデュアル光周波数コム生成光学系10Pが挙げられる。
【0135】
図17に示すように、デュアル光周波数コム生成光学系10Nでは、第1ループ光ファイバ30は連結部を有さず、環状に配置された偏波保持型光ファイバ30A,30B,30C,30Dで構成されている。第1ループ光ファイバ30には、R1方向に沿って、導入部21、増幅部40、導出部24、可飽和吸収体75、及び、偏波保持型光アイソレータ25が設けられている。
【0136】
デュアル光周波数コム生成光学系10Nにおけるレーザー増幅光戻し部70は、可飽和吸収体75及び偏波保持型光アイソレータ25で構成されている。可飽和吸収体75は、第2波長を含む波長帯域に感度を有する。可飽和吸収体75に所定のパワー以上のレーザー増幅光L1,L2が入射したときのみ、可飽和吸収体75の損失が小さくなり、レーザー増幅光L1,L2を偏波保持型光ファイバ30C,30Dに出射する。偏波保持型光アイソレータ25は、R2方向に沿って偏波保持型光ファイバ30Eから入射したレーザー増幅光L1,L2を偏波保持型光ファイバ30Dに通過させる。偏波保持型光アイソレータ25は、R1方向に沿って偏波保持型光ファイバ30Dから入射したレーザー増幅光L1,L2を第1ループ光ファイバ30から除去する。
【0137】
デュアル光周波数コム生成光学系10Nにおいて、光源5から発せられたレーザー光S0からレーザー光S1,S2が取り出されてレーザー光S1,S2が増幅部40によって波長変換されるまでの過程は、第1実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系10Aと同様である。増幅部40で増幅された後のレーザー増幅光L1,L2の一部は、R1方向に沿って偏波保持型光ファイバ30B、導出部24、偏波保持型光ファイバ30Cを通り、可飽和吸収体75に入射する。増幅部40で増幅された後のレーザー増幅光L1,L2の残部は、R2方向に沿って偏波保持型光ファイバ30Eに導波され、偏波保持型光アイソレータ25を通り、偏波保持型光ファイバ30Dに導波され、可飽和吸収体75に入射する。
【0138】
可飽和吸収体75は、R2方向に沿って可飽和吸収体75に入射する強いレーザー増幅光L1,L2のみが反射され、第1ループ光ファイバ30で導波される。可飽和吸収体75に入射する強いレーザー増幅光L1,L2は、高パワーになったパルス光である。R2方向に沿って可飽和吸収体75から出射したレーザー増幅光L1,L2の一部は、導出部24から偏波保持型光ファイバ34に導出される。R2方向に沿って可飽和吸収体75ら出射したレーザー増幅光L1,L2の残部は、偏波保持型光ファイバ30Bに導波され、増幅部40に入射し、繰り返し増幅される。
【0139】
上述の動作原理によって、デュアル光周波数コム生成光学系10Nでは、レーザー増幅光L1,L2がモード同期状態へ移行し、光周波数コムC1,C2が生成される。レーザー増幅光L1,L2の各々の屈折率及び第2波長等を考慮し、偏波保持型光ファイバ30A,33B,33Cの合計の長さは、レーザー増幅光L1,L2の共振器長及び光路長差ΔLが所望の繰り返し周波数frep1,frep2に相当するように設定されている。
【0140】
図18に示すように、デュアル光周波数コム生成光学系10Pでは、デュアル光周波数コム生成光学系10Nの構成において、偏波保持型光ファイバ30C,30Dの間に設けられた可飽和吸収体75に替えて、偏波保持型光ファイバ30Bに共振器長制御素子76が設けられている。共振器長制御素子76によって、第1ループ光ファイバ30で構成されるモード同期レーザーの共振器長は制御可能になっている。共振器長制御素子76としては、例えば圧電素子や音響光学素子、電気光学素子等が挙げられる。
【0141】
デュアル光周波数コム生成光学系10Pにおいて、光源5から発せられたレーザー光S0からレーザー光S1,S2が取り出され、レーザー光S1,S2が増幅部40によって増幅されるまでの過程は、第1実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系10Aと同様である。増幅部40で増幅された後のレーザー増幅光L1,L2の一部は、R1方向に沿って偏波保持型光ファイバ30B、導出部24、偏波保持型光ファイバ30Cを通り、偏波保持型光アイソレータ25に入射するが、偏波保持型光アイソレータ25によって第1ループ光ファイバ30から除去される。
【0142】
増幅部40で増幅された後のレーザー増幅光L1,L2の残部は、R2方向に沿って偏波保持型光ファイバ30Dに導波され、偏波保持型光アイソレータ25及び偏波保持型光ファイバ30Cを通り、導出部24に入射する。R2方向に沿って導出部24に入射したレーザー増幅光L1,L2の一部は、導出部24から偏波保持型光ファイバ34に導出される。R2方向に沿って導出部24に入射したレーザー増幅光L1,L2の残部は、偏波保持型光ファイバ30Bに導波され、増幅部40に入射し、前段で説明したように繰り返し増幅される。
【0143】
上述説明したように、デュアル光周波数コム生成光学系10N,10Pでは、第1実施形態のデュアル光周波数コム生成光学系10Aと同様に、偏光の向きが互いに異なるレーザー光S1,S2及びレーザー増幅光L1,L2を用い、レーザー増幅光L1,L2の屈折率を互いに異ならせる。そのため、レーザー光S1,S2及びレーザー増幅光L1,L2の共振器は共通にしつつ、レーザー増幅光L1,L2の互いの共振器長を異ならせることができる。このことによって、1台のモード同期レーザーを構成するデュアル光周波数コム生成光学系10N,10Pから繰り返し周波数が異なる光周波数コムC1,C2を発生させることができる。レーザー増幅光L1,L2が1台のモード同期レーザーとしてデュアル光周波数コム生成光学系10N,10Pを共有することによって、光周波数コムC1,C2の各々に含まれる環境外乱や機械的な擾乱を共通化し、容易に除去可能にすることができる。レーザー増幅光L1,L2が1台のデュアル光周波数コム生成光学系10N,10Pを共有することによって、従来のように光周波数コムC1,C2を生成するモード同期レーザーを個別のスペースに用意する場合に比べてデュアル光周波数コム生成光学系10N,10Pの小型化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置は、互いに繰り返し周波数が異なる光周波数コムC1,C2を用いる分野で広く応用可能である。本発明のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置によれば、高SN比を有する光周波数コムC1,C2が得られるので、本発明のデュアル光周波数コム生成光学系、レーザー装置、計測装置は、計測精度の高さを求められる分光計測や信号解析等に応用可能である。
【0145】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述の特定の実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、変更可能である。
【0146】
例えば、上述した各実施形態で説明したデュアル光周波数コム生成光学系の構成要素は、一例であって、同様の機能を有する公知の構成に適宜変更できる。例えば、電気光学変調器73A,73Bを、音響光学素子を備えた変調器に変更してもよい。
【符号の説明】
【0147】
5…光源
10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H,10M,10N,10P…デュアル光周波数コム生成光学系
21…導入部
22…連結部
24…導出部
30…第1ループ光ファイバ
32…第2ループ部
33…第3ループ部
40…増幅部
50…計測装置
60A,60B,60C,60D,60E,60F,60G,60H,60I,60J,60K,60L,60M,60N,60P…レーザー装置
70…レーザー増幅光戻し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18