(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】流路アセンブリおよびバルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 27/00 20060101AFI20221124BHJP
F16K 27/02 20060101ALI20221124BHJP
F16K 1/42 20060101ALI20221124BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20221124BHJP
F16K 7/16 20060101ALI20221124BHJP
F16K 7/14 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
F16K27/00 B
F16K27/02
F16K1/42 G
F16L55/00 G
F16K7/16 D
F16K7/14 Z
(21)【出願番号】P 2019551176
(86)(22)【出願日】2018-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2018039424
(87)【国際公開番号】W WO2019087879
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2017210423
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186750
【氏名又は名称】藤本 健司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一誠
(72)【発明者】
【氏名】執行 耕平
(72)【発明者】
【氏名】相川 献治
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】松田 隆博
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-90425(JP,A)
【文献】特開平8-244578(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021277(WO,A1)
【文献】国際公開第01/94824(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104482276(CN,A)
【文献】特開2012-202499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00-27/12
F16K 7/12- 7/16
F16K 1/00- 1/54
F16L 13/00-13/16
F16L 55/24
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項11】
処理チャンバにプロセスガスを供給する流体制御装置を有し、
前記流体制御装置は、複数の流体機器を含み、
前記流体機器は、請求項6に記載のバルブ装置を含む、半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路アセンブリおよびこれを用いたバルブ装置、流量制御装置、流体制御装置、流量制御方法、半導体製造装置および半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセス等の各種製造プロセスにおいては、正確に計量したプロセスガスをプロセスチャンバに供給するために、開閉バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラ等の各種の流体機器を集積化した流体制御装置が用いられている。
上記のような流体制御装置では、管継手の代わりに、流路を形成した設置ブロック(以下、ベースブロックと呼ぶ)をベースプレートの長手方向に沿って配置し、このベースブロック上に複数の流体機器や管継手が接続される継手ブロック等を含む各種流体機器を設置することで、集積化を実現している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-3013号公報
【文献】特許4137267号
【文献】特開2010-190430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各種製造プロセスにおけるプロセスガスの供給制御には、より高い応答性が求められており、流体制御装置をできるだけ小型化、集積化して、流体の供給先であるプロセスチャンバのより近くに設置する必要がある。
半導体ウエハの大口径化等の処理対象物の大型化が進んでおり、これに合わせて流体制御装置からプロセスチャンバ内へ供給する流体の供給流量も増加させる必要がある。
また、プロセスガスの供給制御の応答性を高めるためには、流路の短縮化が必要不可欠であり、オリフィスやフィルター等の機能部品をバルブ装置のバルブボディに集約する技術も提案されている(特許文献2,3等を参照)。
このように、オリフィスやフィルター等の機能部品をバルブ装置のバルブボディの流路等に集約した際には、流路を画定する部材とオリフィスやフィルター等の機能部品との間を長期間確実にシールする技術が必要である。
【0005】
本発明の一の目的は、オリフィスやフィルター等の機能部品が組み込まれた流路アセンブリであって、機能部品と流路を画定する流路部品との間が長期間確実に密封された流路アセンブリを提供することにある。
本発明の他の目的は、流路の一部を形成するために上記の流路アセンブリをバルブボディに内蔵するバルブ装置、流量制御装置、流体制御装置、流量制御方法、半導体製造装置および半導体製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の流路アセンブリは、互いに接続される流体流路を画定する金属製の第1および第2の流路部材と、前記第1および第2の流路部材との間に設けられかつ前記流体流路を流通する流体に特定の作用を及ぼす作用部を有するプレート状部材とが一体化された流路アセンブリであって、
前記第1および第2の流路部材は、前記流体流路の開口の周囲に配置され、前記プレート状部材を介して互いに対向する環状の対向面を有し、
前記対向面の外側において前記第1および第2の流路部材の間に介在する環状の弾性部材をさらに有し、
前記第1および第2の流路部材の一方は、前記第1および第2の流路部材と前記プレート状部材とを一体化し、かつ、前記対向面の一方が前記対向面の他方に向かうように前記第1および第2の流路部材の他方に力を及ぼして、前記プレート状部材と前記対向面との間をシールするためのカシメ部を有し、
前記弾性部材は、前記カシメ部からの力を受けて前記第1および第2の流路部材の間で圧し潰されて当該第1および第2の流路部材の間をシールしている。
【0007】
好適には、前記弾性部材は、前記カシメ部に直接接触する位置に配置されている、構成を採用できる。加えて、前記第1および第2の流路部材に作用する前記弾性部材の復元力は、前記プレート状部材と前記対向面との間をシールするための力の一部として作用する、構成を採用できる。
さらに好適には、前記作用部は、オリフィスを含む、構成を採用できる。
【0008】
本発明のバルブ装置は、対向する上面および底面、前記上面および底面の間で延びる側面を画定するブロック状のバルブボディを有するバルブ装置であって、
前記バルブボディは、前記上面で開口しかつバルブ要素が内蔵される収容凹部と、前記収容凹部に接続された一次側流路と、前記収容凹部に接続された二次側流路と、を画定し、
前記バルブ要素は、
一端面に形成された環状の座面と、他端面に形成された環状のシール面と、前記座面およびシール面の内側に形成され前記一端面および他端面を貫通する流通流路とを有するバルブシートと、
前記バルブシートのシール面が当接し当該シール面からの押圧力を支持する支持面を有するバルブシートサポートと、
前記バルブシートサポートに支持された前記バルブシートの座面に当接および離隔可能に設けられたダイヤフラムと、を有し、
前記ダイヤフラムは、当該ダイヤフラムと前記バルブシートの座面との間隙を通じて、前記バルブシートの流通流路と前記二次側流路とを連通させ、
前記バルブシートサポートは、前記収容凹部の内壁面の一部と協働して前記一次側流路と前記二次側流路との連通を遮断するシール面と、前記一次側流路と前記バルブシートの流通流路とを接続する迂回流路とを有し、
前記バルブシートサポートは、
互いに接続される流体流路を画定する金属製の第1および第2の流路部材と、前記第1および第2の流路部材との間に設けられかつ前記流体流路を流通する流体に特定の作用を及ぼす作用部を有するプレート状部材とが一体化された流路アセンブリからなり、
前記第1および第2の流路部材は、前記流体流路の開口の周囲に配置され、前記プレート状部材を介して互いに対向する環状の対向面を有し、
前記対向面の外側において前記第1および第2の流路部材の間に介在する環状の弾性部材をさらに有し、
前記第1および第2の流路部材の一方は、前記第1および第2の流路部材と前記プレート状部材とを一体化し、かつ、前記対向面の一方が前記対向面の他方に向かうように前記第1および第2の流路部材の他方に力を及ぼして、前記プレート状部材と前記対向面との間をシールするためのカシメ部を有し、
前記弾性部材は、前記カシメ部からの力を受けて前記第1および第2の流路部材の間で圧し潰されて当該第1および第2の流路部材の間をシールしている。
【0009】
本発明の流量制御装置は、流体の流量を制御する流量制御装置であって、
上記のバルブ装置を含む。
本発明の流量制御方法は、流体の流量制御に上記構成のバルブ装置を含む流体制御装置を用いる。
【0010】
本発明の流体制御装置は、
複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、
前記複数の流体機器は、上記のバルブ装置を含む。
【0011】
本発明の半導体製造方法は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの流量制御に上記のバルブ装置を用いる。
【0012】
本発明の半導体製造装置は、処理チャンバにプロセスガスを供給する流体制御装置を有し、
前記流体制御装置は、複数の流体機器を含み、
前記流体機器は、上記のバルブ装置を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弾性部材を設けることで、第1および第2の流路部材の対向面の間をシールすることに加えて対向面の外側をさらにシールするので、プレート状部材が介在する部材間を長期間確実にシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】本発明の一実施形態に係るバルブ装置の一部に縦断面を含む正面図。
【
図4A】
図1Aのバルブ装置の要部拡大断面図であって、バルブ要素が閉鎖された状態を示す図。
【
図4B】
図1Aのバルブ装置の要部拡大断面図であって、バルブ要素が開放された状態を示す図。
【
図5】
図1Aのバルブ装置に内蔵される、本発明の一実施形態に係る流路アセンブリの拡大断面図。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る流路アセンブリの拡大断面図。
【
図7】本発明のさらに他の実施形態に係る流路アセンブリの拡大断面図。
【
図8】弾性部材を備えていない流路アセンブリの一例を示す拡大断面図。
【
図9】本実施形態のバルブ装置を用いる流体制御装置の一例を示す斜視図。
【
図10】本実施形態に係るバルブ装置が適用される半導体製造装置の一例を示
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面においては、機能が実質的に同様の構成要素には、同じ符号を使用することにより重複した説明を省略する。
図1A~
図1Eは本発明の一実施形態に係るバルブ装置の構造を示し、
図2はインナーディスク、
図3はバルブシートの断面構造を示し、
図4Aおよび
図4Bはバルブ装置の動作を示している。
図1A~
図4Bにおいて、図中の矢印A1,A2は上下方向であってA1が上方向、A2が下方向を示すものとする。矢印B1,B2は、バルブ装置1のバルブボディ20の長手方向であって、B1が一端側、B2が他端側を示すものとする。C1,C2は、バルブボディ20の長手方向B1,B2に直交する幅方向を示し、C1が前面側、C2が背面側を示すものとする。
【0016】
バルブボディ20は、上面視で長方形状を有するブロック状の部材であり、上面20f1および底面20f2、上面20f1および底面20f2の間で延びる側面4つの側面20f3~20f6を画定している。加えて、上面20f1で開口する収容凹部22を画定している。収容凹部22に後述するバルブ要素2が内蔵されている。
図4A等からわかるように、収容凹部22は、直径の異なる内周面22a,22b,22cと底面22dとで構成されている。内周面22a,22b,22cは、この順に直径が小さくなっている。
バルブボディ20は、収容凹部22に接続された、一次側流路21と二次側流路24A,24Bとを画定している。一次側流路21は、ガス等の流体が外部から供給される側の流路である。二次側流路24A,24Bは、一次側流路21からバルブ要素2を通じて流入するガス等の流体を外部へ流出させる流路である。
【0017】
一次側流路21は、バルブボディ20の底面20f2に対して傾斜して形成され、一端が収容凹部22の底面22dで接続され、他端が底面20f2で開口している。
一次側流路21の底面20f2側の開口の周囲には、シール保持部21aが形成されている。シール保持部21aには、シール部材としてガスケットが配置される。バルブボディ20は図示しない他の流路ブロックとねじ穴20h1に締結ボルトをねじ込むことで連結される。この際に、シール保持部21aに保持部されたガスケットは、図示しない他の流路ブロックとの間で締結ボルトの締結力で圧し潰されるので、一次側流路21の底面20f2側の開口の周囲はシールされる。
【0018】
ガスケットとしては、金属製又は樹脂製などのガスケットを挙げることが出来る。ガスケットしては、軟質ガスケット、セミメタルガスケット、メタルガスケットなどが挙げられる。具体的には、以下のものが好適に使用される。
(1)軟質ガスケット
・ゴムOリング
・ゴムシート(全面座用)
・ジョイントシート
・膨張黒鉛シート
・PTFEシート
・PTFEジャケット形
(2)セミメタルガスケット
・うず巻形ガスケット(Spiral-wound gaskets)
・メタルジャケットガスケット
(3)メタルガスケット
・金属平形ガスケット
・メタル中空Oリング
・リングジョイント
なお、後述する分岐流路25,26の開口の周囲に設けられたシール保持部25a,26bも同様であり詳細説明は省略する
【0019】
二次側流路24は、バルブボディ20の長手方向B1,B2において収容凹部22に対して互いに反対側に形成された2つの二次側流路24A,24Bを含む。二次側流路24A,24Bは、バルブボディ20の長手方向B1,B2に延びる共通の軸線J1上に形成されている。
二次側流路24Aは、一端が収容凹部22の内周面22bで開口し、他端24a1はバルブボディ20の内部で閉塞している。
二次側流路24Bは、一端が収容凹部22の内周面22bで開口し、他端24b1は側面20f6側で開口している。
二次側流路24Bの側面20f6の開口には、溶接等の手段により、閉塞部材30が設けられ、二次側流路24Bの開口は閉塞されている。
二次側流路24は、ドリル等の工具を用いて容易に加工できる。
本実施形態に係るバルブ装置1では、一次側流路21に流入するガス等の流体を、二次側流路24の分岐流路25,26により4つに分流することができる。
【0020】
バルブ要素2は、それぞれ、ダイヤフラム14と、インナーディスク15と、バルブシート16と、後述する流路アセンブリで構成されたバルブシートサポート50とを有する。以下において、バルブシートサポート50を流路アセンブリ50とも呼ぶ。
バルブシートサポート50は、
図4Aに示すように、外周面50b1が収容凹部22の内周面22cに嵌合挿入されている。なお、バルブシートサポート50を構成する流路アセンブリについては後で詳述する。バルブシートサポート50は、中心部に迂回流路50aが形成され、上端面に迂回流路50aを中心とする環状の支持面50f1が形成されている。バルブシートサポート50の支持面50f1は、平坦面からなり、その外周部には、段差が形成されている。バルブシートサポート50の外周面50b1は、収容凹部22の内周面22cに嵌る直径を有し、下端側の小径化された外周面50b2との間には段差が存在する。この段差により、円環状の端面50b3が形成されている。外周面50b2には、
図4A等に示すように、PTFE等の樹脂製のシール部材55が嵌め込まれる。シール部材55は、断面形状が矩形状に形成され、収容凹部22の底面22dとバルブシートサポート50の端面50b3との間で圧し潰される寸法を有する。シール部材55が収容凹部22の底面22dとバルブシートサポート50の端面50b3との間で圧し潰されると、バルブシートサポート50の外周面50b1と収容凹部22の内周面22cおよび底面22dとの間に樹脂が入り込み、バルブシートサポート50と収容凹部22との間が確実にシールされる。すなわち、シール面としての外周面50b2および端面50b3は、収容凹部22の内周面22cおよび底面22dと協働して、一次側流路21と二次側流路24との連通を遮断する。
【0021】
バルブシートサポート50の迂回流路50aは、収容凹部22の底面22dで開口する一次側流路21と接続される。
バルブシートサポート50の支持面50f1上には、バルブシート16が設けられている。
バルブシート16は、PFA、PTFE等の樹脂で弾性変形可能に形成され
図3に示すように、円環状に形成され、一端面に円環状の座面16sが形成され、他端面に円環状のシール面16fが形成されている。座面16sおよびシール面16fの内側には、貫通孔からなる流通流路16aが形成されている。バルブシート16は、その外周側に小径部16b1と大径部16b2とを有し、小径部16b1と大径部16b2との間には段差部が形成されている。
【0022】
バルブシート16は、位置決め押圧部材としてのインナーディスク15により、バルブシートサポート50の支持面50f1に対して位置決めされ、かつバルブシートサポート50の支持面50f1に向けて押圧されている。具体的には、インナーディスク15の中心部に形成された大径部15a1と小径部15a2とが形成され、大径部15a1と小径部15a2との間には段差面15a3が形成されている。インナーディスク15の一端面側には、円環状の平坦面15f1が形成さている。インナーディスク15の他端面側には、外側に円環状の平坦面15f2が形成され、内側に円環状の平坦面15f3が形成されている。平坦面15f2と平坦面15f3とは高さが異なり、平坦面15f3が平坦面15f1寄りに位置している。インナーディスク15の外周側には、収容凹部22の内周面22aに嵌合する外周面15bが形成されている。さらに、一端面および他端面を貫通する流路15hが円周方向に等間隔に複数形成されている。インナーディスク15の大径部15a1と小径部15a2とに、バルブシート16の大径部16b2と小径部16b1とが嵌ることにより、バルブシート16は、バルブシートサポート50の支持面50f1に対して位置決めされる。
インナーディスク15の平坦面15f2は、収容凹部22の内周面22aと内周面22bとの間に形成された平坦な段差面上に設置される。インナーディスク15の平坦面15f1上には、ダイヤフラム14が設置され、ダイヤフラム14上には、押えリング13が設置される。
【0023】
アクチュエータ10は、空圧等の駆動源により駆動され、上下方向A1,A2に移動可能に保持されたダイヤフラム押え12を駆動する。アクチュエータ10のケーシング11の先端部は、
図1Aに示すように、バルブボディ20にねじ込まれて固定されている。そしてこの先端部が、押えリング13を下方A2に向けて押圧し、ダイヤフラム14は、収容凹部22内で固定される。ダイヤフラム14は、収容凹部22を開口側で密閉している。また、インナーディスク15も下方A2に向けて押圧される。インナーディスク15の平坦面15f2が収容凹部22の段差面に押し付けられた状態において、段差面15a3がバルブシート16をバルブシートサポート50の支持面50f1に向けて押圧するように、段差面15a3の高さは設定されている。また、インナーディスク15の平坦面15f3は、バルブシートサポート50の上端面に当接しないようになっている。
ダイヤフラム14は、バルブシート16よりも大きな直径を有し、ステンレス、NiCo系合金などの金属やフッ素系樹脂で球殻状に弾性変形可能に形成されている。ダイヤフラム14は、バルブシート16の座面16sに対して当接離隔可能にバルブボディ20に支持されている。
【0024】
図4Aにおいて、ダイヤフラム14はダイヤフラム押え12により押圧されて弾性変形し、バルブシート16の座面16sに押し付けられている。バルブ要素2は閉鎖状態にある。
ダイヤフラム14がバルブシート16の座面16sに押し付けられている状態では、一次側流路21と二次側流路24との間の流路は閉鎖された状態にある。バルブ要素2のダイヤフラム14をダイヤフラム押え12による押圧から開放すると、
図4Bに示すように、球殻状に復元する。ダイヤフラム押え12が上方向A1に移動されると、
図4Bに示すように、ダイヤフラム14がバルブシート16の座面16sから離れる。そして、一次側流路21から供給されるプロセスガス等の流体は、ダイヤフラム14とバルブシート16の座面16sとの間隙を通じて、二次側流路24に流入する。流体は、最終的には、分岐流路25,26を通じてバルブボディ20の外部に流出する。すなわち、流体は4つに分流される。
【0025】
図5に上記したバルブシートサポート50を構成する流路アセンブリを示す。
流路アセンブリ50は、流路部材51,52と、流路部材51,52の間に設けられるプレート状部材としてのオリフィスプレート53と、流路部材51,52の間に介在する環状の弾性部材54とを有する。
流路部材51は、中心部に貫通孔からなる流体流路51aが形成された金属製の円柱状部材からなり、外周面51bには、突出部51tが周方向に形成されている。
流路部材52は、中心部に貫通孔からなる流体流路52aが形成された金属製の有底円筒状部材からなり、円筒状部52eの先端部には、カシメ部52e_cが形成されている。なお、
図5において、カシメ部52e_cは、塑性変形後の状態を示しており、塑性変形前については図示しないが、カシメ部52e_cは、突出部51tの下側傾斜面部51t2から離れた位置にある。
オリフィスプレート53は、金属製の円板状部材からなり、中心部にオリフィス53aが形成されている。オリフィス53aは、流体流路51a,52aを流通する流体を通過させるために設けられている。オリフィス53aは流体の流れに対して抵抗として作用し、流体流路51a側と流体流路52a側とで圧力差を生じさせる。
流路部材51,52およびオリフィスプレート53は、ステンレス合金等の同種の金属材料で形成してもよいし、異なる金属材料で形成することもできる。
【0026】
流路部材51の上端側の外周面51eと流路部材52の円筒状部52eの根元付近に配置された内周面52e1とは嵌合するように形成されており、これにより、流体流路51a,52aの中心軸線が合うようになっている。
流路部材51と流路部材52は、互いに対向する環状の対向面51f、52fが形成されている。対向面51f,52fは、流体流路51a,52aの開口の周囲に形成され、かつ、流体流路51a,52aの中心軸線と同心状に配置されている。対向面51f、52fは平坦面からなり、対向面51f、52fには対応する位置に環状突起51p,52pが形成されている。環状突起51p,52pは、カシメ部52e_cをカシメた際に力を受けて圧し潰され、対向面51f,52fとオリフィスプレート53との間をシールする。
【0027】
流路部材51の外周面51eおよび突出部51tの上端面51t1と、流路部材52の内周面52e2および下側端面52e3とは、環状の弾性部材54を収容する収容空間を画定している。この収容空間は、弾性部材54の略矩形の断面形状に合わせた形状となっている。収容空間の容積はカシメ部52e_cを塑性変形させることにより減少し、弾性部材54を上端面51t1と下側端面52e3とで圧し潰すように形成されている。具体的には、カシメ部52e_cを内方に変形させると、カシメ部52e_cが突出部51tの下側傾斜面部51t2に係合する。これにより、カシメ部52e_cは、対向面51f,52fの一方が対向面51f,52fの他方に向かうように、すなわち、対向面51fが対向面52fに近づくように、流路部材51,52に力を及ぼす。これにより、弾性部材54が流路部材51の外周面51eおよび突出部51tの上端面51t1と、流路部材52の内周面52e2および下側端面52e3とに密着し、流路部材51と流路部材52との間をシールする。
弾性部材54は、PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン)やポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成されるが、これらに限定されるわけではない。
【0028】
このように、流体流路51aと流体流路52aとの間は、対向面51f,52fの環状突起51p,52pにおいてシールされるとともに、対向面51f,52fの外側においても弾性部材54によりシールされる。
【0029】
ここで、
図8に弾性部材54を用いない流路アセンブリ500の一例を示す。
図8において、
図5と同様の構成部分については同一の符号を使用している。上側の流路部材520のカシメ部520e_cが及ぼす力により、下側の流路部材51と上側の流路部材520との間は、対向面51f,52fの環状突起51p,52pにおいてのみシールされている。このシール部分に漏れが発生し、対向面51f,52fの外側に流体が流出すると、外周面51eと内周面520e1との間を通じて、流体が外部に流出してしまう。
一方、
図5に示した本実施形態に係る流路アセンブリ50では、対向面51f,52fの環状突起51p,52pにおいて漏れが発生したとしても、弾性部材54によるシールのおかげで、流体が外部に流出するのを確実に防ぐことができる。
【0030】
第2実施形態
図6に本発明の他の実施形態に係る流路アセンブリ50Bを示す。
図6において、
図5と同様の構成部分については同一の符号を使用している。
図6において、流路部材51Bの外周面51Bbには、突出部51sが周方向に形成されている。この突出部51sの下端面51s1と、流路部材51Bの外周面51Bbと、流路部材52のカシメ部52e_cとの間に、弾性部材54が設けられている。弾性部材54はカシメ部52e_cに直接接触する位置に配置され、カシメ部52e_cからの力により変形して断面形状が略三角形状となっているが、変形前の断面形状は略矩形状である。
図に示すように、弾性部材54には、カシメ部52e_cから常に力Fを受けている。この力Fにより、環状突起51p,52pは圧し潰され、対向面51f,52fとオリフィスプレート53との間をシールしている。また、弾性部材54がカシメ部52e_cにより圧し潰されることで、弾性部材54が下端面51s1、外周面51Bbおよびカシメ部52e_cに密着する。これにより、上記実施形態と同様に、流路部材51Bと流路部材52との間はシールされる。
ここで重要な点は、弾性部材54がカシメ部52e_cにより直接に圧し潰されることで、流路部材51Bと流路部材52には、弾性部材54の復元力が常時作用する。
カシメ部52e_cが弾性部材54から受ける反力Rの一部は、弾性部材54の復元力である。反力Rの垂直成分および水平成分をRv,Rhとすると、垂直成分Rvは、環状突起51p,52pが対向面51f,52fとオリフィスプレート53との間をシールするシール力として作用する。この垂直成分Rvには、弾性部材54の復元力が含まれていることから、このシール力を長期間に渡って安定化させることが可能となる。
【0031】
第3実施形態
図7に本発明の他の実施形態に係る流路アセンブリ50Cを示す。
図7において、
図6と同様の構成部分については同一の符号を使用している。
図7に示す流路部材51Cは、外周面51Cbにカシメ力を受ける突出部を備えていない。
弾性部材54は、上側の流路部材52Bの円筒状部52Beの先端に形成されたカシメ部52Be_cと、円筒状部52Beの下側端面52Be1と、流路部材51Cの外周面51Cbとの間で圧し潰され、流路部材51Cと流路部材52Bとの間はシールされる。また、第2実施形態と同様に、環状突起51p,52pが対向面51f,52fとオリフィスプレート53との間をシールするシール力の一部として弾性部材54の復元力は作用する。
【0032】
以上のように、種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるわけではない。
上記実施形態では、二次側流路24は、バルブボディ20内で複数に分岐し、分岐流路25,26がバルブボディ20の上面20f1で開口する場合を例示したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、底面20f2や側面20f3~20f6のいずれかで開口する構成も採用できる。
上記実施形態では、インナーディスク15とバルブシート16とを別部材としたが、インナーディスク15とバルブシート16とを一体化することも可能である。
上記実施形態では、流路21を一次側、流路24A,24Bを二次側としたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、流路21を二次側、流路24A,24Bを一次側とすることも可能である。
上記実施形態では、流路アセンブリをバルブシートサポートとして用いた場合を例示したが、これに限定されるわけではなく、バルブ装置以外の流路にも適用可能である。
また、上記実施形態では、プレート状部材としてオリフィスプレートを例示したが、これに限定されるわけではなく、例えば、プレート状部材としてフィルターを作用部にもつフィルタープレートを採用することも可能である。
【0033】
図9を参照して、上記実施形態に係るバルブ装置1が適用される流体制御装置の一例を説明する。
図9に示す流体制御装置には、幅方向W1,W2に沿って配列され長手方向G1,G2に延びる金属製のベースプレートBSが設けられている。なお、W1は正面側、W2は背面側,G1は上流側、G2は下流側の方向を示している。ベースプレートBSには、複数の流路ブロック992を介して各種流体機器991A~991Eが設置され、複数の流路ブロック992によって、上流側G1から下流側G2に向かって流体が流通する図示しない流路がそれぞれ形成されている。
【0034】
ここで、「流体機器」とは、流体の流れを制御する流体制御装置に使用される機器であって、流体流路を画定するボディを備え、このボディの表面で開口する少なくとも2つの流路口を有する機器である。具体的には、開閉弁(2方弁)991A、レギュレータ991B、プレッシャーゲージ991C、開閉弁(3方弁)991D、流量制御装置であるマスフローコントローラ991E等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。なお、導入管993は、上記した図示しない流路の上流側の流路口に接続されている。
【0035】
本実施形態に係るバルブ装置1は、上記のマスフローコントローラ991Eに適用可能であり、このマスフローコントローラ991Eで流体の流量制御が行われる。また、開閉弁(2方弁)991A、レギュレータ991B、プレッシャーゲージ991C、開閉弁(3方弁)991D等のバルブに、本実施形態に係るバルブ装置1を適用可能である。
【0036】
次に、上記の流体制御装置が適用される半導体製造装置の例を
図10に示す。
半導体製造装置1000は、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition 法)による半導体製造プロセスを実行するためのシステムであり、600はプロセスガス供給源、700はガスボックス、710はタンク、800は処理チャンバ、900は排気ポンプを示している。
図7に示した流体制御装置は、ガスボックス700内に収容される。
基板に膜を堆積させる処理プロセスにおいては、処理ガスを安定的に供給するためにガスボックス700から供給される処理ガスをバッファとしてのタンク710に一時的に貯留し、処理チャンバ800の直近に設けられたバルブ720を高頻度で開閉させてタンクからの処理ガスを真空雰囲気の処理チャンバへ供給する。
ALD法は、化学気相成長法の1つであり、温度や時間等の成膜条件の下で、2種類以上の処理ガスを1種類ずつ基板表面上に交互に流し、基板表面上原子と反応させて単層ずつ膜を堆積させる方法であり、単原子層ずつ制御が可能である為、均一な膜厚を形成させることができ、膜質としても非常に緻密に膜を成長させることができる。
ALD法による半導体製造プロセスでは、処理ガスの流量を精密に調整する必要があるとともに、基板の大口径化等により、処理ガスの流量をある程度確保する必要もある。
流体制御装置を内蔵するガスボックス700は、正確に計量したプロセスガスを処理チャンバ800に供給する。タンク710は、ガスボックス700から供給される処理ガスを一時的に貯留するバッファとして機能する。
処理チャンバ800は、ALD法による基板への膜形成のための密閉処理空間を提供する。
排気ポンプ900は、処理チャンバ800内を真空引きする。
【0037】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、上記適用例では、バルブ装置1をALD法による半導体製造プロセスに用いる場合について例示したが、これに限定されるわけではなく、本発明は、例えば原子層エッチング法(ALE:Atomic Layer Etching 法)等、精密な流量調整が必要なあらゆる対象に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 :バルブ装置
2 :バルブ要素
10 :アクチュエータ
11 :ケーシング
12 :ダイヤフラム押え
13 :押えリング
14 :ダイヤフラム
15 :インナーディスク
15a1 :大径部
15a2 :小径部
15a3 :段差面
15b :外周面
15f1~15f3 :平坦面
15h :流路
16 :バルブシート
16a :流通流路
16b1 :小径部
16b2 :大径部
16f :シール面
16s :座面
20 :バルブボディ
20f1 :上面
20f2 :底面
20f3~20f6 :側面
20h1 :ねじ穴
21 :一次側流路
21a :シール保持部
22 :収容凹部
22a~22c:内周面
22d :底面
24,24A,24B :二次側流路
24a1,24b1 :他端
25 :分岐流路
25a :シール保持部
26 :分岐流路
26b :シール保持部
30 :閉塞部材
50,50B,50C :流路アセンブリ(バルブシートサポート)
50a :迂回流路
50b1 :外周面
50b2 :外周面
50b3 :端面
50f1 :支持面
51 :流路部材
51B :流路部材
51Bb :外周面
51C :流路部材
51Cb :外周面
51a :流体流路
51b,51e :外周面
51f :対向面
51p :環状突起
51s :突出部
51s1 :下端面
51t :突出部
51t1 :上端面
51t2 :下側傾斜面部
52,52B :流路部材
52Be :円筒状部
52Be1 :下側端面
52Be_c :カシメ部
52a :流体流路
52e :円筒状部
52e1 :内周面
52e2 :内周面
52e3 :下側端面
52e_c :カシメ部
52f :対向面
52p :環状突起
53 :オリフィスプレート
53a :オリフィス
54 :弾性部材
55 :シール部材
500 :流路アセンブリ
520 :流路部材
520e1 :内周面
520e_c :カシメ部
700 :ガスボックス(流体制御装置)
710 :タンク
720 :バルブ
800 :処理チャンバ
900 :排気ポンプ
991A :開閉弁(2方弁)
991B :レギュレータ
991C :プレッシャーゲージ
991D :開閉弁(3方弁)
991E :マスフローコントローラ(流量制御装置)
992 :流路ブロック
993 :導入管
1000 :半導体製造装置
A1,A2 :上下方向
B1,B2 :長手方向
BS :ベースプレート
F :力
G1,G2 :長手方向
J1 :軸線
R :反力
Rv :垂直成分
W1,W2 :幅方向