(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】シート材の位置調整方法
(51)【国際特許分類】
B65H 23/038 20060101AFI20221124BHJP
B31F 7/00 20060101ALI20221124BHJP
B65H 43/00 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B65H23/038 A
B31F7/00
B65H43/00
(21)【出願番号】P 2020031961
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】593155330
【氏名又は名称】株式会社ホニック
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】高田 泰和
(72)【発明者】
【氏名】河内 俊英
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-187160(JP,A)
【文献】特開昭57-077556(JP,A)
【文献】特開2018-189798(JP,A)
【文献】特表2010-507543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/038
B31F 1/00- 7/02
B65H 7/00- 7/20
B65H 43/00- 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボールシートの製造ラインを走行するシート材の幅方向における位置を、シート材位置調整装置によって調整するものであり、
前記製造ラインにおいて、シート材が貼合または加工される貼合・加工装置より上流に前記シート材位置調整装置を配置すると共に、前記シート材位置調整装置と前記貼合・加工装置との間に、前記シート材の幅方向における位置を検出する検出地点の複数を、前記シート材の走行方向に距離をあけて配置し、
複数の前記検出地点においてそれぞれ検出された検出値に基づいて、単一の前記シート材位置調整装置による前記シート材の幅方向の位置調整を制御する
ものであり、
複数の前記検出地点のうち、最も前記シート材位置調整装置に近い第一検出地点における第一検出値に基づいて前記シート材位置調整装置による前記シート材の幅方向の位置調整を制御する第一のフィードバック制御から、
複数の前記検出地点のうち、前記第一検出地点より前記貼合・加工装置に近い第二検出地点における第二検出値に基づいて前記シート材位置調整装置による前記シート材の幅方向の位置調整を制御する第二のフィードバック制御へと、
前記シート材が紙継ぎされた時点からの時間の経過に伴って切り替える
ことを特徴とするシート材の位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールシートの製造ラインにおいて、走行するシート材の幅方向の位置を調整するシート材の位置調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
段ボールシートは、一般的にコルゲータと称される装置で製造される。コルゲータでは、シングルフェーサにおいて、波形に成形された中芯と裏ライナとの貼合により片面段ボールシートが製造され、ダブルフェーサにおいて、片面段ボールシートと表ライナとの貼合、または複数の片面段ボールシートと表ライナとの貼合が行われ、両面段ボールシート、複両面段ボールシート等の段ボールシートが製造される。製造された段ボールシートは、スリッタスコアラにおいて、波形が連続する方向に平行に切断されると共に横罫線(スコア)入れが行われた後、波形の連続する方向に直角に裁断される。
【0003】
上記の工程は、中芯、表ライナ、裏ライナ、片面段ボールシート等のシート材を走行させながら行われるが、シート材が走行する位置が幅方向(連続して走行するシート材の長手方向に直交する方向)にずれることがあり、貼合されるシート材同士で幅方向の位置が不揃いとなったり、スリッタスコアラにおける加工位置が適正な位置からずれたりすることにより、製造される段ボールシートが不良品となるおそれがある。
【0004】
このような、走行するシート材における幅方向の位置ずれは、ミルロールスタンドにおける原紙ロールの掛け位置のずれ、原紙ロールの巻きの緩みや崩れ、自動紙継ぎ装置(オートスプライサ)における旧ロットと新ロットの紙継ぎ位置のずれ、幅長さの異なるシート材を端辺で位置合わせをして紙継ぎすることによるずれ、シングルフェーサやダブルフェーサに供給される前のシート材を加熱する可動プレヒータとの摩擦、ダブルフェーサのベルトの蛇行など、極めて多様な理由により生じる。
【0005】
そこで、本出願人は過去に、走行するシート材の幅方向の位置を調整する装置(以下、「シート材位置調整装置」と称する)を、種々提案し実施している(例えば、特許文献1~7参照)。このうち、特許文献1~特許文献3のシート材位置調整装置は、平行な一対の長棒状部材の間に走行するシート材を通した上で巻き掛け、これら一対の長棒状部材の軸方向を傾けることにより、シート材の走行方向を幅方向に移動させるものである。一方、特許文献4~特許文献7のシート材位置調整装置は、走行するシート材を上下からローラで挟持し、これらのローラを幅方向にスライドさせ、或いは、ローラの回転軸を傾けることにより、シート材の走行方向を幅方向に移動させるものである。
【0006】
また、これらのシート材位置調整装置を制御する前提として、走行するシート材の位置が実際にどれだけ幅方向にずれているかを正確に検出する方法についても、本出願人は過去に提案し、実施している(特許文献8参照)。
【0007】
ところが、段ボールシートの製造ラインでは、上記のようなシート材位置調整装置を設置できるスペースに対する制限が大きい。そのため、シート材どうしの貼合を行うシングルフェーサやダブルフェーサ、切断線や罫線入れの加工を行うスリッタスコアラ、ミシン目の加工を行うライナカット装置などの貼合・加工装置と、シート材位置調整装置の設置位置とが離れてしまうことがある。そのような場合は、シート材位置調整装置によってシート材の幅方向の位置調整が行われたとしても、その後、貼合・加工装置に至るまでにシート材が走行する距離が長く、その間にシート材に位置ずれが生じてしまい、位置調整を高い精度で行うことができないというおそれがあった。
【0008】
更に、中芯原紙、表ライナ、裏ライナそれぞれを供給するミルロールスタンドは、一般的に、原紙ロールを保持するアームをロールの軸方向に移動させる機構を備えている。そのため、上記のような後付けのシート材位置調整装置ではなく、もともと製造ラインが備えているミルロールスタンドを、シート材位置調整装置として使用する技術も従前より提案されている(特許文献9参照)。しかしながら、ミルロールスタンドは製造ラインにおける最上流に位置するため、必然的に貼合・加工装置から離れている。従って、貼合・加工装置に至るまでにシート材が走行する距離が長く、シート材の幅方向の位置調整を高い精度で行うことができないという事情は、上記の場合と同様であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5953268号公報
【文献】特許第5953267号公報
【文献】特許第5226033号公報
【文献】特許第6087867号公報
【文献】特許第5548291号公報
【文献】特許第5740340号公報
【文献】特許第5343038号公報
【文献】特許第6063528号公報
【文献】特開昭57-77556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、段ボールシートの製造ラインにおいて、走行するシート材の幅方向の位置が適正に調整されているべき位置と、シート材位置調整装置との間の距離が離れていても、シート材の幅方向の位置を高い精度で調整することができるシート材の位置調整方法の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるシート材の位置調整方法は、
「段ボールシートの製造ラインを走行するシート材の幅方向における位置を、シート材位置調整装置によって調整するものであり、
前記製造ラインにおいて、シート材が貼合または加工される貼合・加工装置より上流に前記シート材位置調整装置を配置すると共に、前記シート材位置調整装置と前記貼合・加工装置との間に、前記シート材の幅方向における位置を検出する検出地点の複数を、前記シート材の走行方向に距離をあけて配置し、
複数の前記検出地点においてそれぞれ検出された検出値に基づいて、単一の前記シート材位置調整装置による前記シート材の幅方向の位置調整を制御する」ものである。
【0012】
以下では、「シート材位置調整装置」を、単に「位置調整装置」と称することがある。
【0013】
本方法では、走行するシート材の位置がどれだけ幅方向にずれているかを検出するための検出地点を、位置調整装置と貼合・加工装置との間に複数設ける。複数の検出地点は、シート材の走行方向に距離をあけて配置されるため、当然ながら、位置調整装置に近く貼合・加工装置からは遠い検出地点と、位置調整装置からは遠く貼合・加工装置に近い検出地点が存在する。
【0014】
検出地点それぞれにおいて検出されたシート材の幅方向の位置から、基準位置からのずれ量を求め、ずれを修正するように位置調整装置でシート材を幅方向に移動させるフィードバック制御をする場合、位置調整装置に近い検出地点における検出値に基づくフィードバック制御は、検出値を短時間で制御に反映させることができる長所がある反面、検出地点から貼合・加工装置までシート材が走行する間に位置がずれたとしても把握できないため、貼合・加工装置におけるシート材の位置が適正であるとは限らないという短所がある。つまり、“フィードバックは速いが精度の保証ができない”制御である。一方、位置調整装置から離れた検出地点における検出値に基づくフィードバック制御は、検出値が制御に反映されるまでに時間がかかる短所がある反面、検出地点が貼合・加工装置に近いため、貼合・加工装置におけるシート材の位置を適正値に調整しやすい長所がある。つまり、“フィードバックは遅いが精度が高い”制御である。
【0015】
本方法では、複数の検出地点における検出値に基づいて単一の位置調整装置を制御するため、上記のように長所と短所が相反しているフィードバック制御を組み合わせることができ、それぞれのフィードバック制御の長所と短所をバランスさせることが可能である。これにより、製造ラインにおいて走行するシート材の幅方向の位置が適正に調整されているべき位置にある貼合・加工装置と、シート材位置調整装置との間の距離が離れていたとしても、シート材の幅方向の位置を高い精度で調整することができる。
【0016】
本発明にかかるシート材の位置調整方法は、上記構成に加え、
「複数の前記検出地点のうち、最も前記シート材位置調整装置に近い第一検出地点における第一検出値に基づいて前記シート材位置調整装置による前記シート材の幅方向の位置調整を制御する第一のフィードバック制御から、
複数の前記検出地点のうち、前記第一検出地点より前記貼合・加工装置に近い第二検出地点における第二検出値に基づいて前記シート材位置調整装置による前記シート材の幅方向の位置調整を制御する第二のフィードバック制御へと、
前記シート材が紙継ぎされた時点からの時間の経過に伴って切り替える」ものである。
【0017】
本方法における「第一のフィードバック制御」は、上記の“フィードバックは速いが精度の保証ができない”制御である。一方、「第二のフィードバック制御」は、上記の“フィードバックは遅いが精度が高い”制御である。
【0018】
段ボールシートの製造ラインでは、ミルロールスタンドから中芯、表ライナ、裏ライナをそれぞれ供給し、供給されるシート材をオートスプライサで紙継ぎしながら、継続的に段ボールシートの製造が行われる。紙継ぎの際には新旧のシート材が、ずれた状態で接合されることがあり、新旧のシート材の幅長さが異なることもある。そのため、一般的に、紙継ぎの直後は、シート材の幅方向に大きな位置ずれが生じている。
【0019】
本方法では、紙継ぎ後の初期段階では第一のフィードバック制御を行い、時間が経過したら第二のフィードバック制御に切り替える。紙継ぎ後の初期段階で、速いフィードバックを繰り返すことにより、シート材に生じている大きな位置ずれを、早期に低減することができる。そして、予め定めた時間が経過し、位置ずれが低減した時点で第二のフィードバック制御に切り替える。つまり、紙継ぎの初期段階では第一のフィードバック制御の“速さ”を利用し、その後は第二のフィードバック制御の“精度の高さ”を利用する。これにより、貼合・加工装置におけるシート材の位置を、適正値に精度高く、且つ、効率よく調整することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、段ボールシートの製造ラインにおいて、走行するシート材の幅方向の位置が適正に調整されているべき位置と、シート材位置調整装置との間の距離が離れていても、シート材の幅方向の位置を高い精度で調整することができるシート材の位置調整方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第一実施形態であるシート材の位置調整方法の説明図である。
【
図2】第一実施形態のシート材の位置調整方法のフローチャートである。
【
図3】本発明の第二実施形態であるシート材の位置調整方法の説明図である。
【
図4】第二実施形態のシート材の位置調整方法であって、
図3の例とは異なる制御を行う場合の説明図である。
【
図5】第二実施形態のシート材の位置調整方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施形態であるシート材の位置調整方法について、図面を用いて説明する。まず、段ボールシートの製造装置であるコルゲータについて説明する。
【0025】
コルゲータは、ミルロールスタンドから供給された中芯原紙を波形に成形し、他のミルロールスタンドから供給された裏ライナと貼合して片面段ボールシートとするシングルフェーサ、シングルフェーサで形成された一以上の片面段ボールシートを、更に他のミルロールスタンドからから供給された表ライナと貼合して両面段ボールシート等のシート材とするダブルフェーサ、シート材を波形が連続する方向に平行に切断すると共に罫線入れを行うスリッタスコアラ、シート材を所定長さで幅方向に裁断するカッタ、ミルロールスタンドからシングルフェーサやダブルフェーサに供給されるシート材の紙継ぎを行うオートスプライサ、を具備している。また、コルゲータは、シングルフェーサに導入される前の裏ライナにミシン目を形成するライナカット装置を、更に具備している場合もある。
【0026】
本実施形態の位置調整方法は、このような構成のコルゲータにおける製造ラインを走行するシート材の幅方向における位置を、位置調整装置によって調整するものである。位置調整装置は製造ラインにおいて、シート材が貼合または加工される貼合・加工装置より上流に配置される。位置調整装置と貼合・加工装置との間には、シート材の幅方向における位置を検出する検出地点の複数を、シート材の走行方向に距離をあけて配置する。そして、複数の検出地点においてそれぞれ検出された検出値に基づいて、単一の位置調整装置によるシート材の幅方向の位置調整を制御する。
【0027】
ここで、「シート材」は、裏ライナ、表ライナ、中芯、片面段ボールシート、両面段ボールシート、または、二層以上が貼合された片面段ボールシートに表ライナが貼合されたシートを指している。
【0028】
上記構成のコルゲータにおいて、「シート材が貼合または加工される貼合・加工装置」には、シングルフェーサ、ダブルフェーサ、スリッタスコアラ、ライナカット装置が、それぞれ該当する。
【0029】
「シート材位置調整装置(位置調整装置)」としては、特許文献1~3に例示される位置調整装置、すなわち、平行な一対の長棒状部材の間に走行するシート材を通した上で巻き掛け、一対の長棒状部材の軸方向を傾けることにより、シート材の走行方向を幅方向に移動させる装置を使用することができる。或いは、特許文献4~7に例示される位置調整装置、すなわち、走行するシート材を上下からローラで挟持し、これらのローラを幅方向にスライドさせ、或いは、ローラの回転軸を傾けることにより、シート材の走行方向を幅方向に移動させる装置を使用することができる。
【0030】
また、ミルロールスタンドは、原紙ロールを保持するアームをロールの軸方向に移動させることにより、原紙を幅方向に移動させる機構を有しているのが一般的である。そのため、そのような機構を有しているミルロールスタンドを、位置調整装置として使用することができる。
【0031】
位置調整の対象であるシート材が中芯、裏ライナ、表ライナである場合、位置調整装置としては特許文献1~3に例示されるタイプの位置調整装置が好適であり、或いは、ミルロールスタンドを位置調整装置とすることができる。位置調整の対象であるシート材が片面段ボールシート、両面段ボールシートなど貼合後のシート材である場合、位置調整装置としては特許文献4~7に例示される位置調整装置を好適に使用することができる。
【0032】
貼合・加工装置がシングルフェーサである場合、位置調整装置はシングルフェーサと中芯原紙を供給するミルロールスタンドとシングルフェーサとの間、または裏ライナを供給するミルロールスタンドとシングルフェーサとの間に配置し、或いは、ミルロールスタンド自体を位置調整装置とすることができる。貼合・加工装置がダブルフェーサであって位置調整の対象が表ライナの場合、位置調整装置はミルロールスタンドとダブルフェーサとの間に配置し、或いは、ミルロールスタンド自体を位置調整装置とすることができる。貼合・加工装置がダブルフェーサであって位置調整の対象が片面段ボールシートの場合、位置調整装置はシングルフェーサとダブルフェーサとの間に配置する。貼合・加工装置がスリッタスコアラの場合、位置調整装置はダブルフェーサとスリッタスコアラとの間に配置する。貼合・加工装置がライナカット装置である場合、位置調整装置は裏ライナを供給するミルロールスタンドとライナカット装置との間に配置し、或いは、ミルロールスタンド自体を位置調整装置とすることができる。
【0033】
検出地点におけるシート材の幅方向の位置の検出は、ラインセンサカメラやエリアセンサカメラによる撮像を画像処理し、シート材の端辺を検出することにより行うことができる。或いは、シート材の有無を検出するセンサにより、シート材の端辺を検出することにより行うことができる。この場合、シート材の有無を検出するセンサとしては、可視光や赤外線を投射し反射光や遮光量によって検出対象の有無を検出する光電センサ、超音波を投射し反射波や減衰によって検出対象の有無を検出する超音波センサを使用することができる。また、センサによる検出に基づいて、シート材の位置がどれだけ幅方向にずれているかを正確に検出する方法としては、特許文献8の検出方法を好適に使用することができる。
【0034】
位置調整装置は、検出地点におけるシート材の幅方向の位置の検出に基づいて、シート材を幅方向に移動させる制御を行うための制御装置を備えている。制御装置は、主記憶装置と、主記憶装置に記憶されたプログラムに従って処理を行う中央処理装置(CPU)と、ハードディスク等の補助記憶装置とを具備するコンピュータで構成されており、主記憶装置には、検出地点における検出値に基づいて、シート材を幅方向に移動させるための制御値を算出し、制御値によって位置調整装置の動作を制御するシート材位置調整手段として、コンピュータを機能させるプログラムが記憶されている。
【0035】
また、製造ラインには、エンコーダが設けられている。エンコーダは、製造ラインの機械的な構成において駆動部と同期している箇所、例えば、シート材を搬送するコンベアを駆動する回転機構部に取り付けられ、回転機構部の所定角度の回転ごとに電気信号を発信する。制御装置は、エンコーダが発信する電気信号を受信し、そのパルス数に基づいてシート材の走行距離を算出する。また、制御装置は、タイマを使用して時間を計測する。
【0036】
次に、第一実施形態の位置調整方法について、
図1及び
図2を用いて説明する。本実施形態では、位置調整装置10と貼合・加工装置(図示を省略)との間に、二つの検出地点(第一検出地点M1,第二検出地点M2)が設けられている。シート材1の走行方向Fにおいて、位置調整装置10に近い第一検出地点M1と位置調整装置10とは距離L1だけ離れており、第一検出地点M1と第二検出地点M2とは距離L2だけ離れている。第二検出地点M2は、貼合・加工装置のごく近傍に設定される。
【0037】
ここでは、
図1(a)に示すように、走行するシート材1の幅方向の位置が、位置調整装置10から下流に向かって左方向(紙面における下方向)に移動することにより、シート材1の走行経路が左に傾斜しており、途中からその傾斜角度が緩やかになるものの、左に傾斜し続ける場合を例にとって説明する。このようなシート材1の幅方向の位置ずれは、上述したように種々の要因によって生じる。
【0038】
第一実施形態の位置調整方法は、第一検出地点M1における第一検出値に基づいて位置調整装置10によるシート材1の幅方向の位置調整を制御する第一のフィードバック制御から、第二検出地点M2における第二検出値に基づいて位置調整装置10によるシート材1の幅方向の位置調整を制御する第二のフィードバック制御へと、時間の経過に伴って切り替えるものである。第一のフィードバック制御から第二のフィードバック制御への切り替えは、シート材1が紙継ぎされた時点から、時間Tが経過した時点で行う。
【0039】
この制御を、
図2のフローチャートを用いて説明する。制御を開始すると、まず、紙継ぎが行われてから(ステップS0)、予め定めた時間Tが経過したか否かが確認される(ステップS1)。制御を開始したばかりの時点では時間Tは経過していないため(ステップS1においてNo)、紙継ぎ後のシート材1が位置調整装置10から距離L1だけ走行したか否かが判断され(ステップS2)、距離L1だけ走行している場合は(ステップS2においてYes)、第一検出地点M1で第一検出値として、シート材1の幅方向における位置ずれが検出される(ステップS3)。ここで、第一検出値は、第一検出地点M1におけるシート材1のセンタP1(幅方向の中心点)が、製造ラインにおける基準ラインXから幅方向にずれている量であり、「ずれ量a」とする(
図1(a)参照)。なお、ここでは、基準ラインXが位置調整装置10のマシンセンタの延長線である場合を例示しているが、製造ラインにおける他の装置のマシンセンタ、或いは、マシンセンタ以外の直線とすることができる。基準ラインXは、固定された仮想の直線である。また、基準ラインXに対する位置は、基準ラインXに対して右側では正の値、左側では負の値とすることができ、或いは、その逆の関係とすることができる。
【0040】
次に、ずれ量aがゼロであるか否かが判断される(ステップS4)。これは、予め定めた数値範囲内であればゼロと判断する処理、とすることができる。ずれ量aがゼロではない場合(ステップS4においてNo)、このずれ量を修正するように位置調整装置10を制御し、シート材1を幅方向に移動させる(ステップS5)。つまり、第一検出地点M1におけるずれ量aがゼロとなるように、ずれの方向とは反対方向にシート材1を移動させる。
【0041】
そして、位置調整装置10によるシート材1の位置調整後、シート材1が距離L1だけ走行したか否か、つまり、シート材1において位置調整装置10によって位置調整された箇所が、第一検出地点M1に到達したか否かが判断される(ステップS6)。走行距離がL1に達していれば(ステップS6においてYes)、ステップS3に戻って第一検出地点M1におけるずれ量aが検出され、ずれ量aがゼロに達するまではステップS4~S6,S3の処理が繰り返される。ずれ量aがゼロに達すると(ステップS4においてYes)、
図1(b)に示すように、第一検出地点M1におけるシート材1のセンタP1が、基準ラインX上に位置する。
【0042】
第一検出地点M1におけるずれ量aがゼロに達したらステップS2に移行し、紙継ぎ後に時間Tが経過しているか否かが確認される。そして、紙継ぎ後に時間Tが経過するまでは、ステップS2~S4,S1の処理が繰り返され、その途中で何らかの理由により再びずれ量aがゼロではなくなったときは(ステップS4においてNo)、ステップS5,S6,S3,S4の処理が繰り返される。このようにして、紙継ぎ後に時間Tが経過するまでは、第一検出地点M1における検出に基づいた第一のフィードバック制御が繰り返される。
【0043】
紙継ぎ後に時間Tが経過すると(ステップS1においてYes)、第二のフィードバック制御に切り替えられる。すなわち、第二検出地点M2で第二検出値として、シート材1の幅方向における位置ずれが検出される(ステップS7)。ここで、第二検出値は、第二検出地点M2におけるシート材1のセンタP2が、基準ラインXから幅方向にずれている量であり、「ずれ量b」とする(
図1(c)参照)。
【0044】
次に、ずれ量bがゼロであるか否かが判断される(ステップS8)。これは、予め定めた数値範囲内であればゼロと判断する処理、とすることができる。ずれ量bがゼロではない場合(ステップS8においてNo)、このずれ量を修正するように位置調整装置10を制御し、シート材1を幅方向に移動させる(ステップS9)。つまり、第二検出地点M2におけるずれ量bがゼロとなるように、ずれの方向とは反対方向にシート材1を移動させる。
【0045】
そして、位置調整装置10によるシート材1の位置調整後、シート材1が距離(L1+L2)だけ走行したか否か、つまり、シート材1において位置調整装置10によって位置調整された箇所が第二検出地点M2に到達したか否かが判断される(ステップS10)。走行距離が(L1+L2)に達していれば(ステップS10においてYes)、ステップS7に戻って第二検出地点M2におけるずれ量bが検出され、ずれ量bがゼロに達するまではステップS9,S10,S7の処理が繰り返される。ずれ量bがゼロに達すると(ステップS8においてYes)、
図1(d)に示すように、第二検出地点M2におけるシート材1のセンタP2が、基準ラインX上に位置する。
【0046】
第二検出地点M2におけるずれ量bがゼロに達したときも、ステップS7に戻ってステップS8までの処理が繰り返され、その途中で何らかの理由により再びずれ量bがゼロではなくなったときは(ステップS8においてNo)、ステップS9,S10を経てステップS7に戻る処理が繰り返される。このようにして、次に紙継ぎがなされるまでは、第二検出地点M2における検出に基づいた第二のフィードバック制御が繰り返される。
【0047】
このような第一実施形態の位置調整方法は、紙継ぎ直後のシート材1における大きな位置ずれが、シート材1の貼合や加工に影響する箇所、例えば、ミルロールスタンドとシングルフェーサの間、ミルロールスタンドとダブルフェーサの間、ミルロールスタンドとライナカット装置との間、で実施する位置調整方法として適している。紙継ぎ後の初期段階であって、シート材1に幅方向の大きな位置ずれが生じている間は、短い周期の速いフィードバックである第一のフィードバック制御を行うことにより、シート材1に生じている大きな位置ずれを、早期に低減することができる。そして、紙継ぎから予め定めた時間Tが経過し、位置ずれが低減した状態が安定した時点で、貼合・加工装置に近い第二検出地点M2における検出に基づく制御である第二のフィードバック制御に切り替えることにより、貼合・加工装置におけるシート材1の位置を、適正値に精度高く、且つ、効率よく調整することができる。
【0048】
次に、
本発明には含まれない参考例の第二実施形態の位置調整方法について、
図3~
図5を用いて説明する。本実施形態では、第一実施形態と同様に、位置調整装置10と貼合・加工装置との間に、二つの検出地点(第一検出地点M1,第二検出地点M2)が設けられている。シート材1の走行方向Fにおいて、第一検出地点M1に近い位置調整装置10と第一検出地点M1とは距離L1だけ離れており、第一検出地点M1と第二検出地点M2とは距離L2だけ離れていると共に、第二検出地点M2が貼合・加工装置のごく近傍に設定される点も同様である。
【0049】
ここでは、
図3(a)に示すように、走行するシート材1の幅方向の位置が、位置調整装置10から下流に向かって右方向(紙面における上方向)に移動し、途中から左方向に移動するように蛇行する場合を例にとって説明する。
【0050】
第二実施形態の位置調整方法では、第一検出地点M1における第一検出値と、第二検出地点M2における第二検出値とから、第一検出地点M1から第二検出地点M2までシート材1が走行する間に生じる幅方向の位置ずれ量として「二地点間ずれ量C」を算出する。そして、第一検出地点M1における検出に基づいて位置調整装置10によるシート材1の幅方向の位置調整を制御する第一のフィードバック制御の制御値Sに、二地点間ずれ量Cを含めることにより、第二検出地点M2におけるシート材1の幅方向の位置が目標値となるように第一のフィードバック制御を繰り返す。ここでは、第二検出地点M2におけるシート材1の位置の目標値は、「(第二検出地点M2におけるずれ量)=0」である。
【0051】
この制御を具体的に説明すると、第一検出地点M1において第一検出値として、シート材1の幅方向における位置の基準ラインXからのずれ量Aが検出され、第二検出地点M2において第二検出値として、シート材1の幅方向における位置の基準ラインXからのずれ量Bが検出されるとき、ずれ量Aとずれ量Bから二地点間ずれ量Cが算出される(
図3(a)参照)。基準ラインXの設定、基準ラインに対する位置が右側及び左側の一方では正の値とし、他方では負の値とできる点は、第一実施形態と同様である。
【0052】
第二実施形態が第一実施形態と相違する点は、第一検出地点M1における検出に基づく第一のフィードバック制御において、位置調整装置10を制御する制御値Sに二地点間ずれ量Cを含める点である。制御値Sは、第二検出地点M2におけるシート材1の位置が目標値となるように、すなわち、第二検出地点M2におけるシート材1のずれ量Bがゼロとなるように設定される。
【0053】
例えば、
図3(b)に示すように、第一検出地点M1におけるシート材1のセンタP1を目標ラインY上の点に移動させることによって、第二検出地点M2におけるシート材1のずれ量Bがゼロとなるように、位置調整装置10を制御するための制御値Sを設定する場合、「Y=X-C」である。従って、シート材1のセンタP1が、基準ラインXではなく目標ラインY上の点となるように、位置調整装置10によってシート材1を移動させ、第一検出地点M1におけるずれ量Aを検出しながら第一のフィードバック制御を繰り返す。これにより、
図3(c)に示すように、第一検出地点M1におけるシート材1のセンタP1は目標ラインY上の点に近付き、位置調整装置10を制御するための制御値Sもゼロに近付いて行く。そして、同時に、第二検出地点M2におけるシート材1のセンタP2は、基準ラインX上の点に近付いて行く。
【0054】
或いは、第一検出地点M1において検出されたシート材1のセンタP1は、実際にはずれ量Aだけ基準ラインXからずれているところ、二地点間ずれ量Cを加味したずれ量(A-C)だけ基準ラインXからずれていると扱って、第一のフィードバック制御をすることもできる。この場合、
図4(b)に示すように、基準ラインXからのずれ量が(A-C)である点Q1が、基準ラインX上の点となるように、位置調整装置10を制御するための制御値Sを設定する。すなわち、第一検出地点M1における点Q1の基準ラインXからのずれ量(A-C)がゼロとなるように、ずれの方向とは反対方向にシート材1を移動させる。このような制御値Sの設定により、第一検出地点M1におけるずれ量Aを検出し、ずれ量(A-C)を算出しながら、第一のフィードバック制御を繰り返すことにより、
図4(c)に示すように、第一検出地点M1において点Q1は基準ラインX上の点に近付き、位置調整装置10を制御するための制御値Sもゼロに近付いて行く。同時に、第二検出地点M2におけるシート材1のセンタP2は、基準ラインX上の点に近付いて行く。
【0055】
なお、
図3及び
図4に示す制御の何れにおいても、位置調整を開始した後の初期の段階では、二地点間ずれ量Cをゼロとして処理を行う。これは、紙継ぎ後の新たなシート材1の先頭が第二検出地点M2に到達する前は、二地点間ずれ量Cが算出できないためである。
【0056】
このような第二実施形態の位置調整方法を、
図5のフローチャートを用いて説明する。制御を開始すると、まず、紙継ぎ後のシート材1の先頭が位置調整装置10より下流に距離L1だけ走行したか否かが判断される(ステップS21)。距離L1だけ走行していれば(ステップS21においてYes)、第一検出地点M1において検出が行われるが、それに先立ち、二地点間ずれ量Cがゼロに設定される(ステップS22)。上述したように、紙継ぎ後のシート材1の先頭が第二検出地点M2に到達していない初期の段階では、二地点間ずれ量Cが算出できないためである。
【0057】
第一検出地点M1で第一検出値として、シート材1の幅方向における位置のずれ量Aが検出されると(ステップS23)、ずれ量A及び二地点間ずれ量C(この時点ではゼロ)に基づいて、位置調整装置10によるシート材1の移動を制御するための制御値Sが算出される(ステップS24)。制御値Sは、上述したように、第二検出地点M2におけるシート材1のずれ量Bが、ゼロとなるように設定される。
【0058】
次に、制御値Sがゼロであるか否かが判断される(ステップS25)。これは、予め定めた数値範囲内であればゼロと判断する処理、とすることができる。制御値Sがゼロではない場合(ステップS25においてNo)、この制御値Sによって位置調整装置10を制御し、シート材1を幅方向に移動させる(ステップS26)。
【0059】
そして、位置調整装置10によるシート材1の位置調整後、シート材1が距離L1だけ走行したか否か、つまり、シート材1において位置調整装置10によって位置調整された箇所が第一検出地点M1に到達したか否かが判断される(ステップS27)。走行距離がL1に達していれば(ステップS27においてYes)、第一検出地点M1におけるずれ量Aが検出された後(ステップS28)、ステップS24に戻って新たなずれ量Aに基づいて制御値Sが算出される。そして、制御値Sがゼロに達するまではステップS25~S28,S24の処理が繰り返される。
【0060】
制御値Sがゼロに達したら(ステップS25においてYes)、制御値Sがゼロになった後にシート材1が距離L2だけ走行したか否か、つまり、シート材1において第一検出地点M1において幅方向における位置が適正となった箇所が、第二検出地点M2に到達したか否かが判断される(ステップS29)。走行距離がL2に達していれば(ステップS29においてYes)、第二検出地点M2におけるシート材1の位置のずれ量Bが検出され(ステップS30)、これに基づいて二地点間ずれ量Cが算出され、新たな二地点間ずれ量C=B-Aとして更新される。
【0061】
その後は、ステップS24に戻り、新たに更新された二地点間ずれ量Cに基づいて制御値Sが設定される。そして、制御値Sがゼロであれば(ステップS25においてYes)、すなわち、
図3(c)または
図4(c)に示すように、第二検出地点M2におけるずれ量Bがゼロであり、位置調整装置10によるシート材1の移動が必要ない場合は、ステップS29~ステップS31,S24の処理が繰り返される。その途中で、何らかの理由によりずれ量A,Bの少なくとも一方が変化して制御値Sがゼロではなくなったときは(ステップS25においてNo)、ステップS26~S28,S24,S25の処理が繰り返される。このようにして、次に紙継ぎがなされるまでは、ずれ量Aと二地点間ずれ量Cに基づいて算出した制御値Sに基づいて、第一のフィードバック制御が繰り返される。
【0062】
このような第二実施形態の位置調整方法は、シート材1が左右に蛇行する場合など、上流側の検出に基づいてシート材1の位置調整を行っても、下流側における位置ずれが減少するとは限らない場合に適している。第二実施形態では、フィードバック自体は位置調整装置10に近い第一検出地点M1における検出に基づいて行うため、フィードバックが速いことに加え、第一検出地点M1より下流側で生じるずれ量である二地点間ずれ量Cが、位置調整装置10を制御するための制御値Sに反映されている。そのため、第二検出地点M2に近い貼合・加工装置におけるシート材1の位置を、適正値に精度高く、且つ、短時間で調整することができる。
【0063】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0064】
例えば、上記の実施形態では、検出地点が二つである場合を例示したが、検出地点は複数であれば二つに限定されない。例えば、検出地点が三つである場合を、位置調整装置に最も近いものから順に第一検出地点、第二検出地点、第三検出地点として説明する。第一実施形態の位置調整方法を検出地点が三つである場合に応用するとき、第一検出地点における検出に基づく第一のフィードバック制御から、第二検出地点における検出に基づく第二のフィードバック制御、第三検出地点における検出に基づく第三のフィードバック制御の順に、シート材が紙継ぎされた時点からの時間の経過に伴って切り替えて行くことができる。
【0065】
また、第二実施形態の位置調整方法を検出地点が三つである場合に応用するとき、第一検出地点と第二検出地点との間の二地点間ずれ量を、第一検出地点における検出に基づく制御値に含めて第一のフィードバック制御を行い、その場合の制御値がゼロに至ってから所定時間が経過した後、第二検出地点と第三検出地点との間の二地点間ずれ量を第二検出地点における検出に基づく制御値に含めて、第二のフィードバック制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
1 シート材
10 位置調整装置(シート材の位置調整装置)
F 走行方向
a ずれ量(第一検出値)
b ずれ量(第二検出値)
A ずれ量(第一検出値)
B ずれ量(第二検出値)
C 二地点間ずれ量
M1 第一検出地点
M2 第二検出地点
S 制御値