IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社レーベン販売の特許一覧

<>
  • 特許-施術器具 図1
  • 特許-施術器具 図2
  • 特許-施術器具 図3
  • 特許-施術器具 図4
  • 特許-施術器具 図5
  • 特許-施術器具 図6
  • 特許-施術器具 図7
  • 特許-施術器具 図8
  • 特許-施術器具 図9
  • 特許-施術器具 図10
  • 特許-施術器具 図11
  • 特許-施術器具 図12
  • 特許-施術器具 図13
  • 特許-施術器具 図14
  • 特許-施術器具 図15
  • 特許-施術器具 図16
  • 特許-施術器具 図17
  • 特許-施術器具 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】施術器具
(51)【国際特許分類】
   A61H 7/00 20060101AFI20221124BHJP
   A61H 23/06 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
A61H7/00 300B
A61H23/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020209643
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096506
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2020-12-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302045602
【氏名又は名称】株式会社レーベン
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高部 篤
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】宮部 愛子
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-37805(JP,A)
【文献】特開2020-178975(JP,A)
【文献】特開2003-325626(JP,A)
【文献】特開2005-95300(JP,A)
【文献】登録実用新案第3127253(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H7/00-15/02
A61H23/06
A61H39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に対して対象部位を撫でる、揺らす施術を行う施術器具であって、
対象部位と接触して施術を行う施術部と、
前記施術部を操作するハンドル部と、を備え、
前記施術部は、芯部と、柔軟性を有し、前記芯部の外周の少なくとも一部を覆い、対象部位と接触する接触面が横断面視凸曲面である作用部と、を含む棒状の指部を有し、
前記作用部は、デュロメーター硬度が5度以上で26度以下の低硬度に形成され、
前記施術部は、前記指部を複数有し、
複数の前記指部は、互いに略平行に設けられ、
前記芯部は、複数の芯部材を有し、複数の前記芯部材は、前記作用部に少なくとも一部が覆われて前記作用部を介して直列に連結され、
前記指部は、自重及び対象部位との接触により、対象部位に応じて揺動して対象部位に沿って屈曲し、
複数の前記指部は、前記作用部の柔軟性及び前記指部の自重により対象部位と密着して対象部位を揺らすことができる
ことを特徴とする施術器具。
【請求項2】
生体に対して対象部位を撫でる、揺らす施術を行う施術器具であって、
対象部位と接触して施術を行う施術部と、
前記施術部を操作するハンドル部と、を備え、
前記施術部は、芯部と、柔軟性を有し、前記芯部の外周の少なくとも一部を覆い、対象部位と接触する接触面が横断面視凸曲面である作用部と、を含む棒状の指部を有し、
前記作用部は、デュロメーター硬度が5度以上で26度以下の低硬度に形成され、
前記施術部は、前記指部を複数有し、
前記芯部は、複数の芯部材を有し、
前記芯部材同士は、関節部により可動に接続され、
前記指部は、前記芯部材同士が対象部位に接近する方向及び対象部位を離れる方向に回動可能に直列に連結され、自重及び対象部位との接触により、対象部位に応じて揺動して対象部位に沿って屈曲し、
複数の前記指部は、前記作用部の柔軟性及び前記指部の自重により対象部位と密着して対象部位を揺らすことができる
ことを特徴とする施術器具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の施術器具であって、
前記指部は、前記作用部の表面に凹凸模様が設けられている
ことを特徴とする施術器具。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の施術器具であって、
前記施術部を、対象部位上で移動させる移動機構を有する
ことを特徴とする施術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体に対して対象部位を押す、叩く等の施術を行う施術器具がある。例えば、ツボ等を押圧する押圧マッサージ器具(特許文献1を参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】登録実用新案第3026864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年、対象部位を揺らす、撫でる等することで、リンパ液の流れを改善したり、皮膚やファシア(線維性の立体網目状組織)をケアーしたりすることが行われている。しかし、上記押圧マッサージ器具は、ツボや経路をピンポイント的に押圧するものであり、このような施術には向いていない。
【0005】
また、施術者の手により対象部位をやさしく撫でたり、振動が深部に伝わるように揺らしたり、叩いたりする施術が行われている。例えば、対象部位に施術者の一方の手を載せ、その上に他方の手を重ねて揺らす施術や、施術者の一方の手を対象部位に載せ、他方の手で一方の手を叩く施術が行われている。このような施術は、施術者が異性である場合は、不便であり、手による直接接触を避けたい場合がある。セルフケアを行うことが考えられるが、自身の手が届く範囲には限界がある。
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一つを解決するためのもので、揺らす、撫でる、叩く等の施術を気軽に効率よく行うことができる施術器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した少なくとも1つの課題を解決するために、本発明の一方面に係る施術器具は、生体に対して対象部位を撫でる、揺らす、または叩く施術を行う施術器具であって、対象部位と接触して施術を行う施術部と、前記施術部を操作するハンドル部と、備え、前記施術部は、芯部と、柔軟性を有し、前記芯部の外周の少なくとも一部を覆う作用部と、を含む棒状の指部を有する。
【0008】
前記施術器具において、前記施術部は、前記指部を複数有してもよい。
【0009】
前記施術器具において、前記芯部は、複数の芯部材を有し、前記芯部材同士は、関節部により可動に接続されていてもよい。
【0010】
前記施術器具において、前記指部を個別に動かす指動機構を有してもよい。
【0011】
前記施術器具において、複数の前記指部は、隣同士の間隔が調整可能であってもよい。
【0012】
前記施術器具において、前記指部は、前記作用部の表面に凹凸模様が設けられていてもよい。
【0013】
前記施術器具において、前記施術部を、対象部位上で移動させる移動機構を有してもよい。
【0014】
前記施術器具において、前記施術部とともに施術を行う付加施術部を備えてもよい。
【0015】
本発明の一方面に係る施術器具は、生体に対して対象部位を撫でる、揺らす、または叩く施術を行う施術器具であって、柔軟性を有する材料により形成され、対象部位と接触して施術を行う施術部と、前記施術部とともに施術を行う付加施術部と、前記施術部及び前記付加施術部の一方または双方を操作するハンドル部と、を備える。
【0016】
前記施術器具において、前記施術部に対して、前記付加施術部を移動させる移動機構を備えてもよい。
【0017】
前記施術器具において、前記付加施術部は、前記施術部と同様に構成され、前記付加施術部は、前記移動機構により、前記施術部上で滑り移動できてもよい。
【0018】
前記施術器具において、前記付加施術部は、前記移動機構により、前記施術部を叩くことができてもよい。
【0019】
前記施術器具において、前記移動機構は、手動により移動させるもの、又はモータ或いはゼンマイを動力源とするものであってもよい。
【0020】
前記施術器具において、前記施術部には、温熱ヒータが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、揺らす、撫でる、叩く等の施術を気軽に効率よく行うことができる施術器具を提供することができる。
【0022】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る施術器具の一例を示す図で、(a)正面図、(b)断面図である。
図2図1の施術器具の他の例を示す図である。
図3】第2実施形態に係る施術器具の一例を示す図で、(a)正面図、(b)側面図である
図4図3の施術器具の使用状態を説明するための図である。
図5】第3実施形態に係る施術器具の一例を示す図で、(a)正面図、(b)側面図である。
図6図5の指部を説明するための図である。
図7図5の施術部を説明するための図で、(a)初期状態、(b)対象部位と接触状態の平面図、(c)対象部位と接触状態の側面図、(e)対象部位と接触状態の底面図である。
図8図5の施術部の他の例を説明するための図で、(a)指部の間隔を広げた状態、(b)対象部位と接触状態の平面図、(c)対象部位と接触状態の側面図、(d)対象部位と接触状態で一部の指を動かした状態の側面図である。
図9】第4実施形態に係る施術器具の一例を示す図で、(a)一例を示す図、(b)他の一例を示す図である。
図10】第5実施形態に係る施術器具の一例を示す図である。
図11】第6実施形態に係る施術器具の一例を示す図である。
図12図11の付加施術部の他の例を示す図である
図13】第7実施形態に係る施術器具の一例を示す図である。
図14図13の施術器具の他の一例を示す図である。
図15図13の施術器具の他の一例を示す図である。
図16図13の付加施術部の他の例を示す図である。
図17】第8実施形態に係る施術器具の一例を示す図である。
図18図5の施術器具の他の例を示す図で、(a)正面図、(b)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施形態の例を図面を用いて説明する。なお、下記実施形態において共通する構成要素については、前出の符号と同様な符号を付し説明を省略することがある。また、構成要素等の形状、位置関係等に言及する場合は、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0025】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態に係る施術器具の一例を示す図で、(a)正面図、(b)断面図である。図2は他の例を示す図である。図1において、Xは幅方向(横方向、左右方向)を示し、Yは長手方向(縦方向、前後方向)を示し、Zは厚み方向(深さ方向、上下方向)を示す(以下各図において同じ)。施術器具1は、生体に対して対象部位を撫でる、揺らす、叩く等の施術を行う施術器具である。
【0026】
施術器具1は、対象部位と接触して施術を行う施術部10と、施術部10を操作するハンドル部40とを有する。施術部10は、対象部位と接触して施術を行う一以上の指部20を有する。一例として、ここでは一の指部20を有する例を説明する。
【0027】
指部20は、棒状に形成され、芯部22と、柔軟性を有し、芯部22の外周の少なくとも一部を覆う作用部21とを含む。作用部21は、固着部23により芯部22に固着される。固着部23は、熱溶着によるものでもよいし、接着剤や粘着剤などが用いられてもよい。例えば、芯部22をプラスチック樹脂で成型し、周囲にエラストマー樹脂やゴム材を作用部21として二重成型し固着したりしても良い。
【0028】
作用部21は、一例として、芯部22の一部(例えば外周の1/2~2/3)を覆うように形成される。作用部21は、図1(b)に示すように、例えば、断面視略U字形状に形成され、対象部位と接触する接触面が凸曲面である。
【0029】
作用部21は、一例として、図2に示すように、芯部22の外周を全周覆うように形成される。作用部21は、例えば、図2(a)に示すように、4つの面を有し、接触面が凸曲面である。作用部21は、例えば、図2(b)に示すように、断面視円形状に形成され、均一な厚みを有し、芯部22と同心状である。作用部21は、例えば、図2(c)に示すように、断面視円形状に形成され、厚みに変化があり、芯部22とは中心がずれている。
【0030】
作用部21は、柔軟性を有する素材により形成され、例えば、いわゆるシリコーン、ウレタン、エラストマーまたはゴム等の素材が用いられる。発泡材やジェル状の素材、人口皮革等が用いられてもよい。作用部21に用いられる素材の硬度は、シリコーンの場合、例えば5°~35°、好ましくは8°~30°、より好ましくは10°~26°である。言い換えれば、作用部21は、好ましくは、30°以下の低硬度に形成される。他の素材の場合も、同様な硬度を有するように形成されてもよい。なお、素材に応じて硬度範囲を適宜変えてもよい。
【0031】
ここで、硬度とは、測定機が簡便であることから一般に広く普及している「デュロメータ硬さ」のことである。「デュロメータ硬さ」は、測定する対象の表面に鋭利ではない針(押針、インデンタ)を押し込んで、その変形量を測定し数値化する方法であり、針を押し込む力としてスプリングを用いている。JIS K 6253-3に規格され、デュロメータには、タイプA、タイプD、タイプE及びタイプAMがあり、その選択は、次による。
-タイプDデュロメータで硬さが20未満の値を示す場合は,タイプAを用いる。
-タイプAデュロメータで硬さが20未満の値を示す場合は,タイプEを用いる。
-タイプAデュロメータで硬さが90を超える値を示す場合は,タイプDを用いる。
本願明細書および特許請求の範囲における硬度は、上記で選択されたタイプのデュロメータで測定される値である。
【0032】
芯部22は、硬性を有し、一例として、図示のように断面が円形の棒状に形成される。芯部22は、施術器具1の長手方向に延びて、ハンドル部40と接続する。芯部22は、金属(例えば鉄、銅、金、銀、アルミニウム、ステンレス、チタン、マグネシウム、タングステン、またはこれらの合金)、鉱石、又はポリプロピレン、ナイロン、ABS等の樹脂等により形成される。
【0033】
施術部10は、対象部位に適度な荷重がかかるように、例えば10g~600g、好ましくは20g~500g、より好ましくは30g~400gとなるように構成される。後述のように、複数の指部20を有する場合、一の指部20は、例えば10g~300g、好ましくは10g~250g、より好ましくは10g~200gである。
【0034】
また、施術の対象部位によって施術時の全体の荷重の掛かる量を設定することもできる。例えば、皮膚表面のファシアケアーは10gから400g、筋肉や腱へのアプローチには50gから1kg、骨格(肋骨や手足の指など)系へのアプローチには200gから1.5kg、骨格(背骨や手足など)系のアプローチには400gから3kgとする。
【0035】
施術器具1は、作用部21が対象部位との密着性が高く、対象部位を揺らす施術を行いやすい。施術の際は、手で対象部位を揺らすように、指部20を対象部位に載せた状態でハンドル部40を左右又は前後に軽く振る。そうすると、作用部21と密着している対象部位が作用部21とともに動いて揺らされる。このとき、指部20の自重により対象部位に適度な圧力がかかり、揺らしやすくなる。
【0036】
また、施術器具1は、指部20の自重が対象部位に全部かからないように指部20を少し持ち上げるようにし、ハンドル部40を左右又は前後に移動させて、指部20を対象部位上で左右または前後に滑り移動させて対象部位を撫でる施術を行うことができる。
【0037】
また、施術器具1は、対象部位を指部20で叩いて施術を行うことができる。作用部21が柔軟性を有するため、衝撃を減らしながらも、振動を深部に伝えることができる。
【0038】
このように、施術器具1は、施術部10を柔軟性を備えるように構成し、人間の手ないし指を模して、効率よく施術を行うことができる。また、施術器具1は、施術者が異性である場合も行いやすく、セルフケアも行いやすい。
【0039】
施術器具1は、作用部21の表面に凹凸模様が設けられてもよい。より具体的には、作用部21の表面の全部または一部に細かな凹凸模様、例えば円形や半円形、渦巻状の模様、またはこれらを組み合わせた模様が設けられてもよい。凹凸の深さは、例えば、0.1mm~1mm、好ましくは0.2mm~1mmである。模様を設けることで、対象部位との密着性(吸着性)を高めることができる。
【0040】
施術器具1は、作用部21を覆ってこれを保護する表面層ないし表皮部を有してもよい。このような表面層ないし表皮部は、作用部21と同じ素材で形成されてもよいし、異なる素材が用いられてもよい。硬度のみが異なる素材が用いられてもよい。表面層ないし表皮部の形成には、重ね成型や塗布、巻き付けなどの手法が用いられてもよい。また、表面層ないし表皮部には、上記のような凹凸模様が設けられてもよい。
【0041】
施術器具1は、作用部21の全部が芯部22に固着されてよいし、一部のみが固着されてもよい。例えば、芯部22の両側付近のみが固着されていることで、施術時に中間付近のたるみがより皮膚との密着性を高めるようにしてもよい。
【0042】
<第2実施形態>
図3は第2実施形態に係る施術器具の一例を示す図で、(a)正面図、(b)側面図である。図4はその使用状態を説明するための図である。以下では、主として上記実施形態と異なる点を説明する。本実施形態の施術部10は、複数の指部を有し、接続部30を介してハンドル部40と接続する。なお、以下では5つの指部の例を説明するが、指部を22~4本有してもよいし、6本以上有してもよい。
【0043】
施術部10は、一例として、図示のように、指部20a、指部20b、指部20c、指部20d及び指部20eの5つの指部を有する。これらの指部は、長手方向に延在し、隣同士の間には所定の隙間が設けられている。5つの指部は、指連結部により並列して連結され、一体となっている。ここでは、第1指連結部13及び第2指連結部14の2つの連結部が5つの指部を串状に挿通して連結している。より具体的には、第2指連結部14が各指部の後方寄りの部分を挿通し、第1指連結部13が第2指連結部14よりもやや前方で各指部を挿通して、5つの指部を連結している。
【0044】
接続部30は、施術部10と接続する前段部31と、前段部31より太い中段部32と、中段部32より太い後段部33とを有する。これらは、同じ素材で構成されてもよいし、異なる素材で構成されてもよい。好ましくは、前段部31は可撓性を有し、撓る。中段部32も可撓性を有し撓るように構成されてもよい。
【0045】
なお、図示の施術器具1は、前段部31から後段部33まで、更にはハンドル部40まで一続き状に棒状に構成されているが、並列の2本以上の棒状に構成されてもよいし、扁平な板状に構成されてもよい。また、図示では直線状に延びているが、湾曲形状、コの字形状等の形状に曲がり、施術の際に施術部10よりも上方に位置するように施術部10との間に段差が形成されてもよい。また、直線状の状態から、他の形状に変更できるようになってもよい。
【0046】
図4では、主に皮膚表面を揺らす例、例えば、皮膚や筋膜周辺の血液やリンパの流れを促進するためのファシアケアーの例を示す。図4の(1)で示すように、施術部10を対象部位O(具体的には皮膚)上に載せると、その重さで対象部位Oが凹む。より具体的には、対象部位Oは、指部の下方部分が凹み、その両側が凸出する。なお、ここでは、便宜上、指部20b、指部20c、指部20dのみを示し、他の部分は省略している。
【0047】
図4の(2)で示すように、施術部10が矢印方向に動くと、各指部と密着している対象部位Oは図中の矢印方向(左方向)に徐々に引かれる。また、各指部の作用部は、柔軟性を有するため変形して、移動方向の前方部分が凹み(肉薄になり)、後方部分が凸出する(肉厚になる)。また、作用部の応力(図示の矢印)により、対象部位Oを元の状態に戻そうとする。この力により、対象部位Oに対し左方向に引く力が強まるが、作用部の柔軟性による緩やかな(優しい)、引く力(横方向に加わる圧力)が加わる(起きる)。また、この位置から、施術部10が図中の右方向に移動するときには、今までの左方向に引く力が徐々に弱まり、図4(1)の状態で引く力が解消した状態に戻る。この過程においても、作用部の柔軟性による穏やかな、引く力の解消が起きる。次に施術部が図中の右方向に動くことで図4(3)の状態に移行する。図4の(3)で示すように、反対方向に動く場合も同様に作用部の柔軟性による穏やかな力が変化が起きる。このように、ハンドル部を操作する人の動きにあまり影響されずに穏やかな力が対象部位に加わることで体に緊張を与えず施術することが出来る。
【0048】
また、この時に施術部10の振れ幅は、対象部位上を施術部10が滑らない範囲内に押えるほうが、施術効果が高まる。このため、施術部10の振れ幅を制限ないし調整する機構を設けても良い。振れ幅は、5mmから60mm、好ましくは5mmから50mm、より好ましくは5mmから40mmである。
【0049】
なお、人間の体には、強い力や急激な圧力に対し、皮膚や筋肉などが危険を察知し拘縮する仕組みがあると言われている。その極端な一例としてむち打ち症が挙げられている。筋線維に過大な負荷がかかると筋小胞体が傷害され、活動電位が出なくても筋小胞体からカルシウムイオンが筋漿に出ていくと言われている。その結果、太いフィラメントの間に細いフィラメントが滑り込んで、筋線維が短縮し、このとき活動電位が出ないので、収縮と呼ばず拘縮と称されている。拘縮が発生すると、血流が障害され、これに拘縮によるエネルギー消費の増大が加わって代謝産物が蓄積し、ブラジキニンが産出されて痛みを生じると言われている。このときプロスタグランジンも産出され、ブラジキニンの発痛作用が増加し、筋肉が痛みの発生源となると、反射性筋収縮や血管収縮が加わって痛みを強め、痛みの悪循環ができ上がると言われている。
【0050】
このように、施術器具1は、ハンドル部を左右に所定幅で振る操作をすることで、施術部が複数の指部の延在方向と直交する方向に動く(振れる)ようになり、複数の指部で対象部位Oを優しく押圧し揺らす施術を行うことができる。
【0051】
なお、作用部が硬いと、対象部位Oと馴染まず、対象部位Oが皺寄せ状態となる、対象部位O上で滑る等のことが生じて、施術効果が損なわれる。一方、柔軟性を有する素材のみで構成され、硬い芯部を有しない場合は、圧力が均一になりにくく、指部を思うように動かしにくくなる。
【0052】
<第3実施形態>
図5は第3実施形態に係る施術器具の一例を示す図で、(a)正面図、(b)側面図である。図6は、指部を説明するための図である。図7は、施術部を説明するための図で、(a)初期状態、(b)対象部位と接触状態の平面図、(c)対象部位と接触状態の側面図、(e)対象部位と接触状態の底面図である。以下では、主として上記実施形態と異なる点を説明する。本実施形態の施術器具1は、施術部10の指部が関節部を有する。
【0053】
施術部10は、5つの指部を有し、それぞれの指部は、芯部が複数の芯部材を有し、芯部材同士が関節部により可動に接続される。左右方向の両側の第1指部20aと第5指部20eは略線対称に形成され、ここでは第1指部20aを例に説明する。一例として、第1指部20aは、芯部22aが第1芯部材221a、第2芯部材222a及び第3芯部材223aの3つの棒状の芯部材を有し、第1芯部材221a及び第2芯部材222aが第1関節部により可動に接続され、第2芯部材222a及び第3芯部材223aが第2関節部により可動に接続される。好ましくは、第3芯部材223aは、先端部近辺で横方向内側(第2指部20b側)に鈍角に屈曲し、基端部近辺で長手方向に屈曲して折り返されるような形状である。なお、第5指部20eは、第1指部20aより若干長く形成されてもよい。
【0054】
好ましくは、各指部の作用部には芯部の関節部と対応する凹状の節部が設けられる。各指部は、少なくとも第1芯部材と第2芯部材との間の第1関節部と対応する節部を有する。第5指部20eを例に説明すると、一例として、第5指部20eは、第1関節部と対応して、径方向内側に凹む凹状の節部2101eを有する。指部に節部を設けることで、関節部がより動きやすくなる。
【0055】
中間の第2指部20b、第3指部20c及び第4指部20dは、長さを除き略同形状に形成される。なお、長さは同等でもよいが、好ましくは、図示のように。第3指部20cが他より長い。第3指部20cを例に説明すると、一例として、芯部22cは、4つの棒状の芯部材を有し、隣同士の芯部材は関節部により可動に接続される。
【0056】
ここで、芯部材についてより具体的に説明すると、各芯部材は、基端部が横幅を減らして板状に形成され、板厚を貫通する孔部が設けられる。第1芯部材以外の各芯部材は、先端部の中央に後方に凹む溝部が設けられ、溝部の両側の壁部に横方向に貫通する孔部が設けられる。各芯部材の基端部は、隣接芯部材の先端部の溝部に挿入され、共同して後述の軸部材に挿通され、連結される。
ここで示した例では、隣接芯部材間を軸部材で連結している。しかし、これに限らず、ワイヤーで芯部材の先端部同士を溶着やカシメ、接着、ねじ止めなどで連結して、各指部が各関節部分で屈曲可能にしても良い。また、芯部材間を直接連結せずに、作用部21で各芯部材及び各芯部材間を包み込むことで、各芯部材を間接的に連結させ、各指部が各関節部分で屈曲可能にしてもよい。
【0057】
図6に示すように、第3指部20cは、第1芯部材221cと第2芯部材222cが軸部材2201cにより回動可能に連結され、第2芯部材222cと第3芯部材223cが軸部材2202cにより回動可能に連結される。
【0058】
第3指部20cは、第3芯部材223cと第4芯部材224cが軸部材1101により回動可能に連結される。軸部材1101は、図5(a)に示すように、第2指部20b、第3指部20c及び第4指部20dの共通の枢軸であってこれらを一体に連結するものである。また、第1指部20a、第5指部20eを含む5つの指部の最後方の芯部材の基端部を挿通する軸部材1102は、図5(a)に示すように、5つの指部の共通の枢軸であってこれらを一体に連結するものである。好ましくは、共通の軸部材の周辺の作用部は、隣同士で結合して一体となり、掌状部11を形成する。
【0059】
接続部30の前段部31の施術連結部311は、略U字状に形成され、前後方向に延びる両端部が軸部材1101及び軸部材1102により挿通され、所定角度内で回動可能に施術部を支持する。また、好ましくは、前段部31が可撓性を有し、施術部10の自重で撓るようになっている。
【0060】
また、図示しないが、各軸部材の軸部にばね部材(例えば捩じりばねや、板ばね、コイルばね)が設けられ、撓る量を押えられる構造としても良い。さらに、対象部位との接触面が湾曲面となるようにばね部材を組み合わせても良い。また、軸部材に、ラッチを設け、ラッチのばねの強度と組合せて、所定の強さで一定の角度を保持し固定できるようにして、各指部の角度を変更できるようにしてもよい。
【0061】
施術部10は、指部の芯部が関節部を有するため、図7(a)の初期状態の施術部10を、対象部位O上に載せると、自重により指部が動き、対象部位Oの表面形状に沿った形となる。例えば、対象部位Oが凸曲面である場合は、図7(b)、図7(c)、図7(d)に示すように、対象部位Oの凸曲面状に沿った形状に各指部が曲がり、対象部位Oと密接に接触するようになる。また、施術部10は、指部の作用部が凹状の節部を有するため、関節部がより動きやすくなる。
これにより、対象部位Oが例えば肩や肘、踵、頭などの凸曲面(球面)状の部位の場合であっても、密接に接触して、揺らす、撫でるなどの施術を行うことができ、施術の効果を高めることができる。また、対象部位Oが腕や足などの円柱状の部位、腹部の側部などの半円柱状の部位の場合であっても、その形状に沿わせた形で施術を行い、高い施術効果が得られる。
【0062】
好ましくは、施術部10は、隣接の指部同士の間隔が調整可能である。一例として、図8(a)に示すように、第1指部20a及び第5指部20eを外側に動かして、隣接の指部との間隔を広げ、施術部10全体の横幅を広げるようにしてもよい。これにより、広範囲の施術を効率よく行うことができる。また、例えば、図8(b)、図8(c)に示すように、真ん中の3本の指部による施術の場合も行いやすくなる。
【0063】
施術部10は、指部を個別に動かす指動機構を有してもよい。一例として、施術部10は、指部の芯部材を引っ張るように構成された腱部材を有し、図8(d)に示すように、腱部材により一部の指部を対象部位Oから離れる方向に引っ張って反らせることで、残りの指部で施術を行うようにしてもよい。他の例として、腱部材により、一部の指部を対象部位O方向に大きく曲げて、対象部位Oと接触しないようにしてもよい。また、対象部位Oに対して施術を行う指部を、腱部材により動かして、形状や動作を変えて施術を行ってもよい。
【0064】
このように、施術器具1は、接触、密着の態様を変更するなどして、施術の対象部位や施術の目的などに合わせて施術を行うことができる。
【0065】
図18は第3実施形態に係る施術器具の他の例を示す図で、(a)正面図、(b)側面図である。施術器具1は、さらに、当て部81を備え、当て部81に支えられて、施術部10が振れるように施術が行われてもよい。
当て部81は、側面当て部811と、当て腕部812と、位置調整部813とを有する。側面当て部811は、所定の間隔を置いて、施術部10の横に設けられる。位置調整部813は、一例として、接続部30の後段部33に装着され、ネジ8131により接続部30に固定される。当て腕部812は、側面当て部811と位置調整部813の間に延びる部分である。
当て部81の位置は、ネジ8131を緩めて位置調整部813の位置を調整することで、調整され得る。当て腕部812が変形可能な素材で形成され、当て腕部812を所定の形状に曲げることで相対的に調整されてもよい。当て部81にラッチ機構が設けられ、これによりまたはこれと合わせて位置ないし施術部10との間隔が調整されるようになってもよい。
なお、側面当て部811は、施術者またはその装着物に当接または保持されるものでもよいし、非施術者またはその装着物に当接または保持されるものでもよいし、施術ベッドやいすまたはその周辺部材等に当接または保持されるものでもよい。なお、このような当て部は、他の実施形態の施術器具に設けられてもよい。
【0066】
<第4実施形態>
図9は第4実施形態に係る施術器具の一例を示す図で、(a)一例を示す図、(b)他の一例を示す図である。以下では、主として上記実施形態と異なる点を説明する。本実施形態の施術器具1は、施術部10を対象部位上で一体に移動させる移動機構を有する。
【0067】
移動機構は、一例として、引き部41と、前段部31と、圧縮コイルばね71とを含んで構成される。引き部41は、ハンドル部40に後方に引くことができるように配設される。ハンドル部40は、ここでは、略四角枠状に形成され、引き部41は、ハンドル部40を横断するように配設される。引き部41は、横方向に長い長尺部材で、前方の面が指を掛けやすいように4つの指と対応する4つの凹部を有する。
【0068】
前段部31は、ここでは、中段部32及び後段部33が筒状に形成され、前段部31がその内側を挿通して、引き部41と接続する。言い換えれば、前段部31は、ハンドル部40まで延びて、ハンドル部40の前方枠に設けられた貫通孔を挿通して引き部41と接続する。
【0069】
圧縮コイルばね71は、前段部31の露出部分に嵌められる。より具体的には、前段部31には、施術部10の基端部近辺に径方向に膨出する膨張部312が設けられる。膨張部312は、少なくとも後端が前段部31の他の部分より太くなっている。圧縮コイルばね71は、膨張部312と中段部32との間に、前段部31がその内側を挿通するように嵌められる。
【0070】
図9(a)に示すように、引き部41を矢印方向に引くと、施術部10が矢印方向に後退する。引き部41を緩めると、圧縮コイルばね71により、施術部10が前方に戻される。このように、施術器具1は、移動機構を設けることで、上記施術以外に、さらに、施術部のみを前後方向に移動させて、対象部位を撫でる、優しく擦るなどの施術を行うことができる。
【0071】
施術部10は、一例として、上記実施形態2(図3)と同様に、図9(a)のように指部が前後方向に延在するように配列される。施術部10は、一例として、図9(b)のように、指部が左右方向(横方向)に延在するように配列され、長手方向と交差するようになってもよい。複数の指部を串状に連結する指連結部は、第1指連結部13、第2指連結部14及び第3指連結部16の3つの指連結部から構成されてもよい。
【0072】
また、図示しないが、図9(a)の施術部10が一体に回転することができ、回転して図9(b)の態様になったり、他の角度で長手方向と交差する態様になったりして施術が行われてもよい。施術部10を回転させる機構は、特に限定されず、従来技術が適宜用いられてよい。例えば、ラッチで回転が止まるなどの構造が用いられてもよい。
【0073】
<第5実施形態>
図10は第5実施形態に係る施術器具の一例を示す図である。以下では、主として上記実施形態と異なる点を説明する。本実施形態の施術器具1は、施術部10とともに施術を行う付加施術部50を備える。施術部10は、上記実施形態のいずれかの施術部と同様に形成され、一例として、上記第3実施形態(図5)と同様に形成される。
【0074】
付加施術部50は、一例として、施術部10と同様に形成される。好ましくは、施術器具1は、施術部10に対して、付加施術部50を移動させる移動機構を備える。移動機構は、一例として、接続軸34と、ハンドル部40と、付加接続部60と、ねじりコイルばね72と、ねじりコイルばね73とを含んで構成される。この移動機構により、付加施術部50は、施術部10上で滑り移動できる。
【0075】
このとき、施術部10の振れ幅は、対象部位上を施術部10が滑らない範囲内に押えるほうが、施術効果が高まる。このため、施術部10の振れ幅を制限ないし調整できる機構を設けても良い。振れ幅は、5mmから60mm、好ましくは5mmから50mm、より好ましくは5mmから40mmである。
【0076】
接続部30には、付加接続部60と接続するための接続軸34が設けられる。接続軸34には、ねじりコイルばね73のコイルが嵌められる。ねじりコイルばね73の一方の腕は接続部30に後方に延びるように配設され、他方の腕は後述の第1付加接続部61に配設される。
【0077】
ハンドル部40は、先端部より後方の部分が二股状に第1ハンドルと第2ハンドルに分かれている。ねじりコイルばね72のコイルは、ハンドル部40の先端部に配設され、両腕は第1ハンドル及び第2ハンドルにそれぞれ配設される。ねじりコイルばね72の反発力により、ハンドル部40は、第1ハンドルと第2ハンドルとが接近したり離開したりして開閉できる。
【0078】
付加接続部60は、付加施術部50と接続部30とを接続する第1付加接続部61と、第1付加接続部61とハンドル部40とを接続する第2付加接続部62とを有する。
【0079】
第1付加接続部61は、基端部寄りの部分に孔部が設けられ、この孔部と接続軸34が篏合して、付加施術部50が接続部30に回動可能に接続される。第1付加接続部61は、基端部が二股状に第1基端及び第2基端に分かれており、そのうちの一方の基端に線材(ケーブル等)により構成される第2付加接続部62の一端が固定される。第2付加接続部62は、ハンドル部40の一方のハンドルを経由して、他方のハンドルに渡り、他端が固定される。
【0080】
施術器具1は、好ましくは、接続部30が外側(付加施術部50から離れる方向)に湾曲ないし屈曲し、第1付加接続部61が外側(施術部10から離れる方向)に湾曲ないし屈曲して、施術部10と付加施術部50との間の間隔が広げられる。また、好ましくは、付加施術部50は、施術部10と交差するように配設される。
【0081】
施術の際は、まず、図10中の(1)で図示のように、施術器具1を対象部位Oに載せる。(2)で図示のように、ハンドル部40を握って矢印方向に閉じると、第2付加接続部62が緩み、ねじりコイルばね73が矢印方向にねじり、付加施術部50が矢印方向に後退するように滑り移動する。(3)で図示のように、ハンドル部40を緩めると、第2付加接続部62が元の状態に戻り、ねじりコイルばね73が開き、付加施術部50が矢印方向に前進するように滑り移動する。
【0082】
このように、施術器具1は、付加施術部を備えることで、上記施術以外に、さらに、複雑な施術を行うことができる。一例として、施術部上で、付加施術部を滑り移動させる移動機構を設けて、人間の両手を重ねて行う施術を行えるようになる。
【0083】
なお、本実施形態の施術部は、上記実施形態と異なる構成でもよい。一例として、施術部の指部は、芯部を有せず、作用部のみで構成されてもよい。一例として、施術部は、棒状の指部ではなく、広い接触面(平面、曲面など)を有する柔軟性のある板状部材で構成されてもよい。付加施術部は、施術部と同様に形成されてもよいし、異なる構成でもよい。また、ハンドル部は、上記のように施術部及び付加施術部の双方を操作するものでもよいし、一方のみを操作するものでもよい。すなわち、施術部及び付加施術部はそれぞれ別のハンドル部で操作されてもよい。
【0084】
ここでの施術は、一例として、対象部位(例えば肌)の上に施術部10を載せ、その上に載る付加施術部50が振れる(揺れ動く)ようにすることで、付加施術部50が施術部10を揺らし、施術部10が対象部位を揺らすものである。この間接的な動きにより直接施術部を揺らす動きに比べてより穏やかで滑らかで優しい動作が得られ、より体に優しい施術となる。例えば皮膚のファシアケアーにおける揺らす圧力は通常20g前後と言われている。ここでは、例えば10gから100gとする。
【0085】
また、この時に付加施術部50の振れ幅は、対象部位上を施術部10が滑らない範囲内に押えるほうが、施術の効果が高まる。このため、振れ幅は、5mmから60mm、好ましくは5mmから50mmとする。またこの範囲で振れ幅を調節できるようにしても良い。
【0086】
<第6実施形態>
図11は第6実施形態に係る施術器具の一例を示す図である。図12は施術器具の付加施術部の他の例を示す図である。以下では、主として上記実施形態5と異なる点を説明する。本実施形態の付加施術部50Aは、施術部10を叩くことができるように構成される。施術部10は、上記実施形態のいずれかの施術部と同様に形成され、一例として、上記第2実施形態(図3)と同様に形成される。また、第5実施形態と同様に、施術部は上記実施形態と異なる構成でもよい。
【0087】
施術部10に対して付加施術部50Aを移動させる移動機構は、一例として、接続軸34Aと、ハンドル部40と、付加接続部60Aと、引張コイルばね74とを含んで構成される。ハンドル部40は、上記実施形態4(図9)と同様に構成される。
【0088】
接続部30には、付加接続部60Aと接続するための接続軸34Aが設けられる。例えば、第1付加接続部61Aの細いピン状の軸部が接続軸34Aの孔部に嵌め込まれることで、付加施術部50Aが接続部30に回動可能に接続される。引張コイルばね74は、一方のフックが第1付加接続部61Aに係り、他方のフックが接続部30に係るように配設される。第2付加接続部62Aは、一端が第1付加接続部61Aの基端部に固定され、他端が接続部30を経由して、ハンドル部40の引き部41に固定される。
【0089】
付加施術部50Aは、一例として、球体状に形成される。
【0090】
施術の際は、まず、施術器具1を対象部位Oに載せる。この状態では、付加施術部50Aは、第2付加接続部62Aが緩み、付加施術部50Aが施術部10上に載っている。図11中の(1)で図示のように、ハンドル部40を握って引き部41を引くと、第2付加接続部62Aが引っ張られ、付加施術部50Aが持ち上げられる。(2)で図示のように、引き部41を矢印方向に緩めると、第2付加接続部62Aが緩み、引張コイルばね74により、付加施術部50Aが矢印方向に下降して(落とされて)、施術部10を叩くようになる。
【0091】
なお、図示しないが、落とすことを前提とせず、例えば、付加施術部50Aを引張コイルばねと反発するコイルばねを拮抗させた状態にして、第2付加接続部62Aを引くことで、付加施術部50Aを横位置や下方向からでも動けるようにし叩ける構造としても良い。
【0092】
このように、施術器具1は、付加施術部を備えることで、上記施術以外に、さらに、複雑な施術を行うことができる。一例として、付加施術部が施術部を叩くように移動させる移動機構を設けて、人間の両手で間接的に対象部位Oを叩く施術を行えるようになる。これにより、衝撃を減らしながらも、振動を深部に伝えることができる。
【0093】
12(a)に示すように、付加施術部50Aは玄能状に形成されてもよい。図12(b)に示すように、付加施術部50Aは、一端に打撃部51A、他端に打撃部52Aを有し、その間の細い中間部53Cに衝撃吸収部54Aが設けられてもよい。図12(c)に示すように、付加施術部50Aは、一方の打撃部52Aが2つの細長い脚部で構成されてもよい。図12(d)に示すように、付加施術部50Aは、打撃部52Aの一つの脚部に湾曲ないし屈曲してなる衝撃吸収部54Aが設けられてもよい。2つの脚部は、長さが異なり、段差Mを有してもよい。図12(E)に示すように、付加施術部50Aは、両脚部に衝撃吸収部54Aが設けられてもよい。
【0094】
<第7実施形態>
図13は第7実施形態に係る施術器具の一例を示す図である。図14は施術器具の他の一例を示す図である。図15は施術器具の他の一例を示す図である。図16は付加施術部の他の例を示す図である。以下では、主として上記実施形態と異なる点を説明する。上記実施形態の施術部10の複数の指部が幅方向(X方向)に並ぶように配列されるのに対して、本実施形態の施術部10は、複数の指部が上下方向(Z方向)に並ぶように配列される。
【0095】
施術部10は、第1指部20a、第2指部20b及び第3指部20cの3つの指部を有する。第1指部20aの芯部22aは3つの芯部材により構成され、第2指部20bの芯部22bは4つの芯部材により構成され、第3指部20Cの芯部22cは3つの芯部材により構成され、第1指部20aと線対称に構成される。各指部は、隣接芯部材同士が軸部材を介して可動に接続される。また、各指部の軸部材は、図示のように、互い違いに上・下の芯部材の中心付近に位置する様に配置される。言い換えれば、各指部の軸部材は、隣接の指部の軸部材と長手方向の位置が互い違いになるように配置される。指連結部16は、略U字形状であり、両端部で第1指部20a及び第3指部20cと軸部材を介して可動に接続し、中間部で第2指部20bと軸部材を介して可動に接続する。
ここで示した例では、隣接芯部材間を軸部材で連結している。しかし、これに限らず、ワイヤーで芯部材の先端部同士を溶着やカシメ、接着、ねじ止めなどで連結して、各指部が各関節部分で屈曲可能にしても良い。また、芯部材間を直接連結せずに、作用部21で各芯部材及び各芯部材間を包み込むことで、各芯部材を間接的に連結させ、各指部が各関節部分で屈曲可能にしてもよい。
【0096】
接続部30は、2つの弾性部材(例えば、コイルばねや板ばね、ゴム等)で構成され、上下2箇所で指連結部16とハンドル部40とを接続する。
【0097】
図13中の(1)の施術器具1は、初期状態にある。施術の際は、(2)のように、矢印方向に施術部10を振り下ろす。そうすると、(3)のように、第1指部20aが下降し、対象部位Oに当たって、矢印方向に跳ね返る。(4)のように、跳ね返って上昇する第1指部20aが下降する第2指部20bに当たり、第2指部20bが第3指部20cに当たるが、第1指部20aが再び下降し、対象部位Oに当たる。(5)のように、第1指部20aの荷重とともに、第3指部20c及び第2指部20bの荷重も対象部位にかかるようになるが、作用部が柔軟性を有するように構成されるため、この荷重は対象部位Oに瞬間的に与えられるのではなく、緩やかに、連続した力が掛かる。これにより体の深部に広がる。一方で、強く急激に加わることを避けることが出来る。また、凸部などでも、局部に力が加わるのではなく、例えば第1指部20aの下部全体で力が加わるようになる。
また、この際、第3指部20cの先端側が屈曲し、第2指部20bの先端側の芯部材を押し下げ、続いて第2指部20bの先端側が屈曲し、第1指部20aの先端側を押し下げて屈曲させる。これにより第1指部20aの先端が対象部位Oを回り込むように動いて取り囲むように力を加えることが出来る。
【0098】
図14に示すように、施術器具1は、施術部10が直接対象部位Oと接触せず、付加施術部50Bを介して、対象部位Oに作用を及ぼしてもよい。付加施術部50Bは、板状の部材で構成される。付加施術部50Bは、全体としてシリコーンゴムで構成されてもよいし、硬い部材をシリコーンゴムで覆うようにして構成されてもよい。付加施術部50Bは、付加ハンドル部63Bに設けられる圧縮コイルばね64Bを介してハンドル部40に接続される。
【0099】
なお、図示しないが、ここでは、付加施術部50Bとして図3図5図10の施術部10が用いられてもよい。
【0100】
図15に示すように、施術器具1は、複数の指部が、上記のように共通の接続部ではなく、それぞれ異なる接続部(30a、30b、30c)によりハンドル部40に接続されてもよい。また、複数の指部を有する施術部10が、上下方向に複数配列され、それぞれ異なる接続部でハンドル部に接続されてもよい。
【0101】
図16に示すように、付加施術部50Bは、凸曲面状の凸部55Bが設けられてもよい。これにより、例えば足裏のアーチなど凹曲面状の対象部位に沿う形状となり、より密接に接触できる。
【0102】
<第8実施形態>
図17は第8実施形態に係る施術器具の一例を示す図である。以下では、主として上記実施形態と異なる点を説明する。施術器具1は、第1施術部10a及び第2施術部10bの2つの施術部を有する。第1施術部10a及び第2施術部10bは、上記第5実施形態(図10)と同様に構成される。
【0103】
第1施術部10aは第1接続部30aによりハンドル部40に接続され、第2施術部10bは第2接続部30bによりハンドル部40に接続される。第1接続部30a及び第2接続部30bは、軸部35により、互いに交差し、回動可能に接続される。また、第1接続部30aと第2接続部30bの間に引張コイルばね75が配設される。
【0104】
ハンドル部40は、先端部より後方の部分が二股状に第1ハンドルと第2ハンドルに分かれている。ハンドル部40は、上記実施形態(図10)と同様にねじりコイルばねが設けられる。
【0105】
施術器具1は、ハンドル部40を開閉することで、上記施術以外に、第1施術部10a及び第2施術部10bを矢印方向に開閉して、対象部位Oを挟むようにし、押圧する施術を行うことができる。また、第1施術部10a及び第2施術部10bで対象部位Oを挟んだ状態で、ハンドル部40を矢印方向の振ることで、対象部位Oを揺らす施術を行うことができる。
【0106】
なお、上記では、手動で付加施術部を移動させる移動機構や叩き機構を説明したが、これに限定されず、モータやゼンマイ、ソレノイド等を動力源とするものでもよい。また、これらの動作状態などを示したり、強調したりするように発光体やイルミネーションを設けても良い。
【0107】
また、上記各実施形態の施術器具の施術部には、温熱ヒータが設けられてもよい。付加施術部に温熱ヒータが設けられてもよい。
【0108】
なお、上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態の例に限定されるものではない。請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 施術器具
10 施術部
20 指部
21 作用部
22 芯部
23 固着部
30 接続部
40 ハンドル部
50、50A、50B 付加施術部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18