(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】液中シール用ラミネートフィルム
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20221124BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20221124BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20221124BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221124BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20221124BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20221124BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20221124BHJP
C09J 7/50 20180101ALI20221124BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20221124BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B15/08 N
B32B15/20
B32B27/00 M
B32B27/32 Z
B32B7/027
C09J7/29
C09J7/50
C09J7/35
(21)【出願番号】P 2021118591
(22)【出願日】2021-07-19
(62)【分割の表示】P 2017163928の分割
【原出願日】2017-08-29
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】307028493
【氏名又は名称】株式会社悠心
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二瀬 克規
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-101627(JP,U)
【文献】特開2014-133410(JP,A)
【文献】特開平08-026332(JP,A)
【文献】特開2004-223728(JP,A)
【文献】特開2013-154609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 1/00-43/00
C09J 7/00- 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のヒートシールロールによって、重なり合う2枚のラミネートフィルム間に残存している液状物を絞り出しながら該絞り出し位置をヒートシールして気密に接合する液中シールに用いられるラミネートフィルムであって、
少なくともベースフィルム層とシーラント層とを具え、
該シーラント層は、最外層となる高流動性熱可塑性樹脂フィルム層と、該高流動性熱可塑性樹脂フィルム層の前記ベースフィルム層側に位置する内側に積層された低流動性熱可塑性樹脂フィルム層とからなるものであって、
前記低流動性熱可塑性樹脂フィルム層は、前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層よりも高い融点を有し、その融点差が20℃以上であ
り、
前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層は、該高流動性熱可塑性樹脂フィルム層どうしが対面するように2枚の前記ラミネートフィルムを重ね合わせ、前記一対のヒートシールロールによって加熱、加圧した際に、軟化すると同時に流動して押し退けられるものであり、
前記低流動性熱可塑性樹脂フィルム層は、前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層の押し退け位置において、対面する該低流動性熱可塑性樹脂フィルム層どうしが融着接合してヒートシール部を形成するものであることを特徴とする液中シール用ラミネートフィルム。
【請求項2】
前記ベースフィルム層と前記低流動性熱可塑性フィルム層との間に、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、アルミニウム蒸着層、アルミナ蒸着層、シリカ蒸着層またはエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂層を有することを特徴とする請求項1に記載の液中シール用ラミネートフィルム。
【請求項3】
前記液状物は、水性または油性の材料、もしくは夾雑物を含むこれらの材料、耐熱性材料、高粘性材料またはその他のヒートシール阻害物質であることを特徴とする請求項1または2に記載の液中シール用ラミネートフィルム。
【請求項4】
前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層は、厚みが10~25μmで、前記低流動性熱可塑性樹脂フィルム層の厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の液中シール用ラミネートフィルム。
【請求項5】
前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層は、低密度ポリエチレンフィルム、エチレン・アクリル酸エチル共重合体フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムまたはエチレン・アクリル酸共重合体フィルムからなることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の液中シール用ラミネートフィルム。
【請求項6】
前記低流動性熱可塑性樹脂フィルム層は、高密度ポリエチレンフィルム、中密度ポリエチレンフィルムまたはアイオノマーフィルムからなることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の液中シール用ラミネートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のヒートシールロールによって重なり合う2枚のラミネートフィルム間に残存している液状の被包装物を絞り出しながら、該絞り出し位置をヒートシールする液中シールに用いて好適なラミネートフィルムに関する提案である。
【背景技術】
【0002】
液状の被包装物を充填包装してなるプラスチック製のラミネートフィルムからなる包装袋については、袋内に被包装物と共に外気(空気)や塵埃等が封入されていると、袋内の被包装物が酸化等されて食味が低下したり、袋内で菌類が繁殖等するおそれがある。そのため、液状の被包装物を包装袋内へ空気等を封入させることなく充填する方法として、特許文献1に記載のように、包装袋内に被包装物を充填しながら、横方向のシールロールにより余分の被包装物を絞り出し、該絞り出し位置に横シールを施して封止する方法(以下、「液中シール方法」と言う。)が用いられている。また、この液中シール方法を利用した充填包装機については、種々のものが開発され、広く利用されている(特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平1-153410号公報
【文献】特開2001-151208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の液中シール方法では、被包装物が液体のみからなる場合には、外気を侵入させることなく被包装物を密封充填することができる。例えば、ドレッシングのように被包装物中に固形物(夾雑物)が含まれていると、該固形物がシール部分に噛み込まれることがあり、該噛み込み部分がヒートシールロールによる加熱によって膨張して大きな気泡となってひぶくれを起こしたり、シール部分が剥離して被包装物が洩れ出す等のおそれがあった。また、シリコ-ンなどからなるシーリング材や接着剤(瞬間接着剤等)は、空気中の水分と反応して硬化する性質があるため、上記のような液中シール方法によって気密に充填包装することが望ましいが、シリコーンのような粘度の高いものは、ヒートシールロールによって十分に絞り出すことができないため、ヒートシール位置に例えばシリコーンが付着して残存(介在)することで、ラミネートフィルムどうしのヒートシールが阻害されることから、液中シール方法によっては密封包装することができなかった。
【0005】
そこで、この発明は、上述したような従来の液中シール充填方法が抱えている課題を解決するために開発したものであり、とくに固形物等の夾雑物を含むものや、シーリング材や接着剤等の高粘性材料など、ヒートシール部分に介在することとなる被包装物の種類に関係なく、液中シールすることのできるラミネートフィルムについて提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため鋭意検討した結果、発明者らは、下記に述べる要旨構成に係る本発明に想到した。
即ち、本発明は、一対のヒートシールロールによって、重なり合う2枚のラミネートフィルム間に残存している液状物を絞り出しながら該絞り出し位置をヒートシールして気密に接合する液中シールに用いられるラミネートフィルムであって、少なくともベースフィルム層とシーラント層とを具え、該シーラント層は、最外層となる高流動性熱可塑性樹脂フィルム層と、該高流動性熱可塑性樹脂フィルム層の前記ベースフィルム層側に位置する内側に積層された低流動性熱可塑性樹脂フィルム層とからなるものであって、前記低流動性熱可塑性樹脂フィルム層は、前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層よりも高い融点を有し、その融点差が20℃以上であり、前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層は、該高流動性熱可塑性樹脂フィルム層どうしが対面するように2枚の前記ラミネートフィルムを重ね合わせ、前記一対のヒートシールロールによって加熱、加圧した際に、軟化すると同時に流動して押し退けられるものであり、前記低流動性熱可塑性樹脂フィルム層は、前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層の押し退け位置において、対面する該低流動性熱可塑性樹脂フィルム層どうしが融着接合してヒートシール部を形成するものであることを特徴とする液中シール用ラミネートフィルムである。
【0007】
なお、本発明の液中シール用ラミネートフィルムについては、
(1)前記ベースフィルム層と前記低流動性熱可塑性フィルム層との間に、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、アルミニウム蒸着層、アルミナ蒸着層、シリカ蒸着層またはエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂層を有すること、
(2)前記液状物は、水性または油性の材料、もしくは夾雑物を含むこれらの材料、耐熱性材料、高粘性材料またはその他のヒートシール阻害物質であること、
(3)前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層は、厚みが10~25μmで、前記低流動性熱可塑性樹脂フィルム層の厚みよりも薄いこと、
(4)前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層は、低密度ポリエチレンフィルム、エチレン・アクリル酸エチル共重合体フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムまたはエチレン・アクリル酸共重合体フィルムからなること、
(5)前記低流動性熱可塑性樹脂フィルム層は、高密度ポリエチレンフィルム、中密度ポリエチレンフィルムまたはアイオノマーフィルムからなること、
がより好ましい解決手段となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る液中シール用ラミネートフィルムは、上述したように、シーラント層の最外層が高流動性熱可塑性樹脂フィルム層からなると共に、該高流動性熱可塑性樹脂フィルム層のベースフィルム層側となる内側に低流動性熱可塑性樹脂フィルム層が積層されてなり、前記低流動性熱可塑性樹脂フィルム層は、前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層よりも高い融点を有し、その融点差が20℃以上ある。従って、このようなラミネートフィルムを用いると、これを液中シールする際に、シーラント層どうし、即ち、最外層の前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層どうしが対面するように2枚のラミネートフィルムを重ね合わせて、一対のヒートシールロールによって加熱および加圧した場合、流動性(粘度)および融点の差によって該高流動性熱可塑性樹脂フィルム層のみが軟化し、流動して該ヒートシール位置およびその近傍に残存して介在しているヒートシール阻害物質である液状物と共に押し退けられる(排除される)ことになる。そして、前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層と液状物とが押し退けられた位置では、内側に位置する前記低流動性熱可塑性樹脂フィルム層が露出すると同時に、該低流動性熱可塑性樹脂フィルム層どうしが、ヒートシール阻害物質である被包装物の、液状物が介在しない状態で、前記ヒートシールロールによる加熱および加圧によって融着接合(ヒートシール)することになる。
【0009】
したがって、本発明によれば、液中シール充填する液状物が、固形物等の夾雑物を含む液状物や、シリコーン等の耐熱性に優れた高粘性材料や耐熱性材料などの難ヒートシール性の材料、即ち、ヒートシール阻害物質である場合にも、該液状物は軟化した前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層と共に確実に押し退けられることになるため、該液状物がヒートシール部内に噛み込まれたり、ヒートシールが阻害されるおそれがなく、液中シール方法によってヒートシール部を高い強度で確実に形成することができる。
【0010】
なお、本発明では、前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層を、前記低流動性熱可塑性樹脂フィルム層の厚みよりも薄い10~25μmとすることで、液中シールに際し、前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層のみを軟化、流動させて押し退け変位させる一方で、前記低流動性熱可塑性樹脂フィルム層どうしの融着接合を行うことができるようになり、この作用効果は、高流動性および低流動性熱可塑性樹脂フィルム層の種類やヒートシール条件を適宜設定することによっても調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の液中シール用ラミネートフィルムの積層構造の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明の液中シール用ラミネートフィルムを用いた液中シール方法を説明する図である。
【
図3】
図2の液中シール位置を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に示すところに基づいて説明する。
図1は、本発明に係る液中シール用ラミネートフィルムの実施の形態を示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、本発明に係るラミネートフィルム1は基本的に、ベースフィルム層2と、低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3および高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4からなるシーラント層11によって構成されている。例えば、ラミネートフィルム1の代表的な積層構成は、最外層に高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4が位置し、その内層(ベースフィルム層2側に位置する内側)に低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3が位置していればよい。
【0014】
このラミネートフィルム1は、ベースフィルム層2とシーラント層11(低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3)との間に所要に応じて、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、金属アルミニウムまたはその酸化物の蒸着層、シリカ蒸着層等の金属または金属酸化物層や、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂層からなるガスバリア性・水蒸気バリア性の高い層からなる中間層等を積層させることができる。
【0015】
とくに、液中シール充填する被包装物(液状物)が、シリコーンのように外気中に含まれる水分によって硬化する性質を有する場合には、3~20μm程度の厚みのガスおよびその他のバリア性に優れるアルミニウム箔や、金属アルミニウム、その酸化物(アルミナ)またはシリカの蒸着層を積層させることが好ましく、この場合、ラミネートフィルム1の積層構造は、例えば、ポリエステル(PET)/アルミニウム箔/ポリエステル(PET)/低流動性ポリオリフィン系樹脂フィルム層3/高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4などからなる積層構造のラミネートフィルム1とすることが好ましい。
【0016】
ラミネートフィルム1の製造方法としては、ドライラミネート法、押出ラミネート法、共押出法等が挙げられるが、好ましくは、ベースフィルム層2と低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3とは、ドライラミネート法により接着して積層させ、低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3と高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4とは、押出ラミネート法により積層する。
【0017】
ベースフィルム層2としては、一軸もしくは二軸延伸のポリエステル(PET)やナイロン樹脂(NY)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などにより構成することができるが、これに限定されるものではなく、所要に応じて適宜選択することができる。
【0018】
上記構成からなるラミネートフィルム1を用いて液状物を外気を取り込むことなく液中シール充填する方法を
図2を用いて説明する。
まず、高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4が対面するように、1枚のラミネートフィルム1を中央位置において半折りにするか、またはラミネートフィルム1を二枚重ねにして、該ラミネートフィルム1の側縁部を縦シールロール(図示しない)によって連続的に縦方向にヒートシールして筒状とする。
【0019】
この筒状のラミネートフィルム1を、全幅にわたって一対のヒートシールロール5a、5bによって挟み込み、例えば、タンクからポンプおよび供給路を介して被包装物(液状物)を、充填ノズル6から所定量ずつ充填しながら、一対のヒートシールロール5a、5bによって加熱、加圧する。なお、
図2のヒートシールロール5a、5bは、包装袋のピッチなどに合わせて所要の間隔で設けられた、該ヒートシールロール5a、5bの周面から突出する複数のシールバー7(図では4本)を有する。各ヒートシールロール5a、5bの対面するシールバー7どうしは、ヒートシールロール5a、5bの回転と共に、重なり合うラミネートフィルム1どうしを挟み付けるように圧接し、その圧接部分にヒートシール部8を形成することで、被包装液状物を気密下に包装してなる包装体9が形成される。
【0020】
ここで、重なり合うラミネートフィルム1を、上記したようにシールバー7によって両側面から挟持して加熱、加圧すると、内表面側に位置する高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4は、軟化すると同時に流動し、
図3に拡大して示すように、ラミネートフィルム1(高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4)の表面およびその近傍に介在する液状物と共に、ヒートシールロール5a、5bの回転に伴ってシールバー7の主に上方へと押し退けられて土手状の樹脂溜り10を形成することになる。その結果、高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4の押し退け位置では、高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4の内側に位置するヒートシール阻害物質(液状物)の付着していない低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3が露出して新生面となり、該露出した低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3どうしが、該液状物が付着介在しない状態で融着接合(ヒートシール部8が形成)することになる。
【0021】
したがって、上記液中シール方法によれば、たとえ液状物中に固形物(ヒートシール阻害物質)が含まれていたとしても、該固形物は、高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4と共に、ヒートシール部8の上方へと押し出されることになるため、ヒートシール部8内に固形物や液状物が噛み込まれるおそれがない。また、液状物がシリコ-ン等の耐熱性を有する高粘性の材料からなる場合にも、ラミネートフィルム1のヒートシール位置に付着した液状物は、高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4と共に、押し出されることになる。
【0022】
その結果、ヒートシール箇所に液状物等が介在する場合であっても、ヒートシールが阻害されるようなことがなく、露出している低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3どうしを高いヒートシール強度で融着接合させることができるようになる。
【0023】
したがって、本発明のラミネートフィルム1は、固形物等の夾雑物を含む液状物やヒートシールを阻害するような耐熱性材料、シーリング材や接着剤等の高粘性材料を液中シールする場合に好適に利用することができる。
【0024】
上述した液中シール方法では、シールバー7による加熱、加圧によってシーラント層11のうち、高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4のみを押し退けると同時に、該押し退け位置に露出した、内側に位置する低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3どうしを融着接合させてヒートシール部8が形成される。このため、ラミネートフィルム1のフィルム構成(積層構造)等に応じて、ヒートシールロール5a、5bの温度や圧力等のシール条件や、低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3および高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4の種類や厚み等の各種の条件を適宜選定する必要がある。
【0025】
とくに、本発明では、前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4の厚みを10~25μm、より好ましくは10~20μmとし、該高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4の厚みが、前記低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3よりも薄くなるようにすることが好ましい。
このように高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4の厚みを25μm以下とすることで、高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4をシールバー7からの加熱と加圧によって容易に軟化(粘度を低下)させて流動させること、即ち前記押し退け作用を助勢することができる。また、高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4は、低温で軟化して該フィルム層4の界面に付着した、または近傍に介在する液状物を確実に押し出す(排除する)ことができればよく、その作用効果を発揮することのできる最低限の厚みとして10μmとすることが好ましい。
【0026】
また、高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4は、低温で軟化(粘度が低下)し易いものであればよく、厚みはできるだけ薄いことが好ましいのに対し、低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3は、包装体等とした時に、前記押し退け位置に形成されたヒートシール部8に十分なヒートシール強度を付与できる厚みを有していることが好ましい。
【0027】
一方、低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3は、一対のヒートシールロール5a、5bによって高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4よりも高温で加熱される(ヒートシールロール5a、5bによってベースフィルム層2側から加熱されるため、ベースフィルム層2に近い低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3は、高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4に比べて高温で加熱される)ため、低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3の厚みは、高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4よりも厚くしておき、ヒートシールによって低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3が薄くなりすぎないようにすることが好ましい。
【0028】
なお、低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3の厚みはとくに限定されないが、包装体とした際に、押し退け位置に形成されたヒートシール部8が、十分な破袋強度を具えるように、好ましくは30μm以上とし、より好ましくは30~80μmとする。
【0029】
また、低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3は、高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4よりも融点が20℃以上高いものからなる。このように低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3と高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4との融点差を20℃以上設けることで、前記したようにシールバー7による加熱、加圧によって、高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4の内側に位置する低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3までが軟化して流動することを抑制することができ、また、ヒートシールロール5a、5bのヒートシール条件(温度、圧力等)の調整も容易になる。
【0030】
なお、シールバー7は、対面する高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4間に介在する液状物を高い面圧で絞り出せるようにシール面が狭幅であることが好ましく、好ましくは0.1mm~5mmとし、またシール面に凹凸を設けたり、弧状等にすることが好ましい。
【0031】
低流動性熱可塑性樹脂フィルム層3としては、融点が105℃以上、150℃以下のポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、例えば、高密度ポリエチレンフィルム(HDPE)、中密度ポリエチレンフィルム(MDPE)またはアイオノマーフィルム(IO)等を用いることができる。一方、高流動性熱可塑性樹脂フィルム層4としては、融点が50℃以上、105℃未満のポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、例えば、低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体フィルム(EEA)、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム(EVA)またはエチレン・アクリル酸共重合体フィルム(EAA)等を用いることができる。
【0032】
なお、本発明において「流動性」とは、熱可塑性樹脂を加熱溶融すると共に、圧力を加えた際の、該温度や圧力と粘度との関係で表されるものであり、本発明では、熱可塑性樹脂フィルムにおいて、130℃未満の温度において粘度が低下して流動しやすくなるものを「高流動性熱可塑性樹脂フィルム層」とし、該温度では、粘度の低下が小さく、流動し難いものを「低流動性熱可塑性樹脂フィルム層」とする。
【0033】
例えば、前記高流動性熱可塑性樹脂フィルム層とは、メルトフローレート(MFR)値で7.0g/10min以上、30g/10min未満であるもの、低流動性熱可塑性樹脂フィルム層とは、メルトフローレート(MFR)値で、0.5g/10min以上、7.0g/10min未満のものであることが好ましい。なお、メルトフローレート(MFR)とは、JIS K7210(1995)に規定された方法に従って測定した値である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、飲食品、医薬品、化学品、化粧品等の各種の液状または粘稠状の被包装物を気密に充填包装する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ラミネートフィルム
2 ベースフィルム層
3 低流動性熱可塑性樹脂フィルム層
4 高流動性熱可塑性樹脂フィルム層
5a、5b ヒートシールロール
6 充填ノズル
7 シールバー
8 ヒートシール部
9 包装体
10 樹脂溜り
11 シーラント層