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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】電子機器筐体
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
H05K7/20 G
H05K7/20 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017218650
(22)【出願日】2017-11-13
(65)【公開番号】P2019091769
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390040187
【氏名又は名称】株式会社バッファロー
(73)【特許権者】
【識別番号】517397604
【氏名又は名称】巴比禄股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】517396113
【氏名又は名称】智易科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 廣高
(72)【発明者】
【氏名】鍾 介明
(72)【発明者】
【氏名】林 浩妃
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-260698(JP,A)
【文献】特開2012-160651(JP,A)
【文献】特開2013-051294(JP,A)
【文献】特開2009-026894(JP,A)
【文献】特開平09-260878(JP,A)
【文献】特開平08-213784(JP,A)
【文献】特開2009-231511(JP,A)
【文献】特開2010-118492(JP,A)
【文献】特開2004-200283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収容し、筺体の内外を連通させる第一の通気口を有する電子機器筐体であって、
前記第一の通気口と前記電子部品とを直線的に結ぶ最短経路を遮断しないように配置され、
当該電子部品近辺から当該第一の通気口に向かう対流を拡散させる板材であって、前記 第一の通気口よりも大きい穴を有する拡散板を備えることを特徴とする電子機器筐体。
【請求項10】
前記拡散板は、前記第一の通気口よりも大きい内径を有するリング状であることを特徴 とする請求項1~請求項9のいずれかに記載の電子機器筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱する電子部品を収容し、筺体の内外を連通させる通気口を有する電子機器筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱する電子部品を収容し、筺体の内外を連通させる通気口を有する電子機器筐体として、特許文献1,2に開示されるものが知られている。
図13図14は、特許文献1に開示される発明を模式的に示している。図13に示すように、発熱部品1と排気口2の位置関係により、排気口2の一部(A部分)から高温の空気が排気され、残りの部分(B部分)からはさほど高温ではない空気が排気されていた。このため、排気口の一部が局所的に加熱されてしまっていた。
【0003】
図14に示すように、同発明では、スリットを形成した熱伝導部材3を排気口2の手前に配置することで、高温の空気がまず熱伝導部材3に伝わり、やや温度が下がった上でA部分から排気される。さほど高温でない空気の排気は、熱伝導部材3の残りの部分を通過することで熱を吸収し、やや温度が上がった上でB部分排気口2を通過する。これにより、排気口2のA部分とB部分とから、温度が平均化された上で排気されるので、排気温度の平均化を図り、局所的な加熱を防止できる。なお、この例では熱の拡散は熱伝導部材3を均熱部材とする熱移動であり、空気の拡散ではない。
この場合、筐体内で発生した熱量と、排気口2から排気される熱量は基本的に同じであり、熱伝導部材3は空気を通し、空気の流れを阻害していない。
【0004】
また、特許文献2に開示される発明は、筐体内に電動ファンを備えている場合、吸気口から排気口に至る最短経路で排気されやすく、冷却の効率がよくなかった。このため、吸気口から排気口に至る経路に空気の流れを強制する板材を配置し、電動ファンで吸引する空気の流れを筺体内で拡散させ、筐体内全体で冷却の効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-26894号公報
【文献】実開平5-25795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図15は、別の観点での従来の課題を示している。
図14に示す発明では、排気口の加熱の局所的な偏りは解消される。
発熱部材1で加熱された空気は対流によって排気口2を通過して排気されるが、図15に示すように、排気口2が形成される側壁において、排気口2の部分だけが加熱され、他の部分はさほど加熱されていない。すなわち、排気口2は局所加熱箇所であって高温箇所となり、周辺の壁面は低温箇所であって表面温度ムラが生じるから、側壁における温度の偏りが大きくなる。なお、この例では、筐体内で発生した熱量と、排気口2で排気される熱量は基本的には同じである。
【0007】
本発明は、排気口が形成される側壁の温度の偏りを少なくさせた電子機器筐体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電子部品を収容し、筺体の内外を連通させる第一の通気口を有する電子機器筐体であって、前記第一の通気口と前記電子部品とを直線的に結ぶ最短経路を遮断しない ように配置され、当該電子部品近辺から当該第一の通気口に向かう対流を拡散させる板材 であって、前記第一の通気口よりも大きい穴を有する拡散板を備えた構成としてある。
前記構成において、一般に電子部品に電流が流れると発熱する。空気で冷却するためには、ファンを利用して強制的に空気の流れを発生させる方法と、空気の対流を利用する方法とが採用可能である。空気の対流を利用する場合、温度の相違による気圧差で対流が生じるため、電子部品で加熱された空気は上方にある通気口に向けて最短距離で移動しようとする。すると、加熱され、高温になった空気はほぼ通気口のスリットや比較的近隣の部分だけを加熱した上で排気されることになる。しかし、通気口と電子部品との間には拡散板が配置されているので、電子部品近辺から通気口に向かう対流はこの拡散板の存在によって拡散され、最短距離で排気口に至らない空気の流れを生じさせる。直には排気口に至らない空気の流れは電子部品よりも上方にある天板に沿う空気の流れとなり、天板に沿って移動する際に天板を加熱する。
【0009】
言い換えると、電子部品で加熱された空気は、通気口だけに向かうのではなく、その一部が他の天板に沿って移動する。このように空気の経路が分かれる現象は、同時に熱量を分ける結果にもなり、通気口を加熱する熱量は減り、通気口以外の天板を加熱する熱量が増える。そして、通気口が形成される側壁の温度の偏りが少なくなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子機器筐体は、ほぼ通気口に集中していた加熱され、高温になった空気の熱量を分散させ、通気口の周りの壁材などを加熱させるようにしたため、電子機器筐体の他の壁材を介して廃熱することとし、通気口だけが局所的に加熱される症状を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかる電子機器筐体の概略斜視図である。
図2】同電子機器筐体の横置き状態の内部状況を示す概略断面図である。
図3】同電子機器筐体の縦置き状態の内部状況を示す概略断面図である。
図4】拡散板を備えない電子機器筐体の横置き状態の対流を示す断面図である。
図5】電子機器筐体の横置き状態の熱量の伝搬を模式的に示す概略断面図である。
図6】変形例にかかる電子機器筐体の横置き状態の対流を示す断面図である。
図7】同電子機器筐体の横置き状態の熱量の伝搬を模式的に示す断面図である。
図8】変形例にかかる電子機器筐体の横置き状態の対流を示す断面図である。
図9】拡散板の変形例にかかる断面形状を示す概略断面図である。
図10】拡散板の変形例にかかる断面形状を示す概略断面図である。
図11】拡散板の変形例にかかる断面形状を示す概略断面図である。
図12】変形例にかかる電子機器筐体の横置き状態の対流を示す断面図である。
図13】従来の電子機器筐体の課題を模式的に示す概略断面図である。
図14】従来の電子機器筐体が課題を解決した状態を模式的に示す概略断面図である。
図15】従来の電子機器筐体が残した課題を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面にもとづいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる電子機器筐体の概略斜視図であり、図2は、同電子機器筐体の横置き状態の内部状況を示す概略断面図であり、図3は、同電子機器筐体の縦置き状態の内部状況を示す概略断面図である。
図において、電子機器筐体である筐体10は、中空の概略矩形薄箱形に形成され、正面と背面の縦方向および横方向が大きく、正面10aと背面10bを連結する側壁(10c~10f)の厚みが小さい。各側壁は、上面10c、底面10d、左側面10e、右側面10fと呼ぶ。なお、後述するように横置きとする場合は、単に側面10a~10fと呼ぶこともある。薄箱形状であるのは一例に過ぎず、また、各辺や面が曲線で形成されていても良い。正面10aには円環状に配置した貫通口である第一の通気口11aを形成してある。第一の通気口11aは、筺体10内外を連通させており、機能的には通気口として機能する。
【0013】
上面10cと底面10dには、スリット状の貫通口である第二の通気口11bを形成してある。図には示していないが、底面10dには脚部を形成してあり、底面10dが下方側に配置されても底面10dの第二の通気口11bが塞がれないようになっている。第二の通気口11bも、筺体10内外を連通させており、機能的には通気口として機能する。第一の通気口11aおよび第二の通気口11bを合わせて単に通気口11(11a,11b)とも呼ぶ。
背面10bには図示しない壁掛け用の穴を設けてある。この壁掛け用の穴を使用することで筐体10を壁にかけて使用する設置方法も可能である。
【0014】
ここで筐体10は、少なくとも二方向の設置パターンを有している。
図2は、正面10aが上方に面し、背面10bが下方に面する設置パターンであり、これを本実施例では、横置きと呼ぶことにする。図3は、上面10cが上方に面し、底面10dが下方に面する設置パターンであり、これを本実施例では、縦置きと呼ぶことにする。すなわち、電子機器筺体は、第一の通気口11aが天面となる設置と、第二の通気口11bの一方が天面となる設置とが可能となっている。
縦置きの場合の冷却は、以下のようにして行われる。内部の電子部品12が発熱すると、底面10d側の通気口11bから入った空気は、上面10c側の通気口11bから出る。このとき、いわゆる煙突効果を利用した換気を行うことができる。この効果を利用した換気を行なう際には、吸気口と排気口との高低差が小さい場合に比べて、吸気口と排気口との高低差が大きい場合に効率良く換気できる。なお、後述するように拡散板20は、電子部品の側に突き出る形状をしているが、突き出る部位によっても上記煙突効果を妨害しないようにしている。逆に、拡散板20の突き出る部分により、上昇する空気を電子部品12の側に寄せることができ(図3の矢印参照)、電子部品12の放熱効果を向上させることができる。
【0015】
筺体10内には、電子部品12と、電子部品12が配置される電子基板13とが収容されている。電子部品12は、各種の素子を含んで構成されるが、発熱部材を含んでいる。発熱部材となりうる素子は様々であるが、CPUをはじめとする各種の高密度ICは発熱対策が必要となることが多い。電子部品12は、このような発熱対策を要する素子を含んでいる。なお、電子部品12は、概ね円環状とした第一の通気口11aのほぼ中央に近い位置の電子基板13上に配置されている。従って、発熱することで周囲に上昇する空気の流れを生じさせるものが発熱部材であり、発熱部材を中心とした所定の範囲で上昇する空気の流れを生じさせる。この意味で、上昇する空気の流れが発生する位置は電子部品12の近辺といえる。
【0016】
第一の通気口11aの場合、正面10aと背面10bとの間を電子基板13が遮るように配置されており、底面10dから上面10cの第一の通気口11aに空気の流れがほぼ貫通するような流れはおきない。これに対して、第二の通気口11bの場合、上面10cと底面10dとの間に電子部品12などの障害物はあるものの、電子基板13のように板状のものが空気の流れを遮ることになっていない。従って、縦置きの場合は下方から上方への対流による空気の流れが比較的流れやすい。縦置きの場合、電子部品12が発熱すると、周囲の空気が暖められ、比重が軽くなるために上昇する。電子部品12の周囲の空気が上昇するのに伴い、下方の空気は引き上げられ、上方の空気は自ずと押し上げられる。熱を吸収することでより上昇しやすくなる。この結果、底面10dの第二の通気口11bから空気が吸引され、上面10cの第二の通気口11bから排気される。本実施形態では、この現象を対流と呼んでいる。なお、吸気と排気については、必ずしも一方通行の空気の流れの流れだけではないため、総じて通気口と呼ぶことにしている。
なお、第一の通気口11aや第二の通気口11bの通気口形状は特に限定されるものではない。また、この例では、電子機器筺体は、複数の側面を有し、第一の通気口11aと第二の通気口11bは、互いに隣接する面であって、互いに対向する面ではない側面に形成されている。
【0017】
筺体10内には、円環状に配置される第一の通気口11aに隣接して、拡散板20が収容されている。この拡散板20は、板材を概ねリング状に形成してある。この拡散板20についての詳細は、後述する。
【0018】
図4は、拡散板20を備えない電子機器筐体を横置きとした状態の対流を示す断面図であり、図4の筺体10は、概略形状とせず、具体例の断面図を示している。以下においても、説明の便宜上、概略的に示すものと、具体例のものとを示している。
図4に示すように、電子部品12に通電されると当該電子部品12が発熱し、周囲、特に上方の空気が暖められる。電子部品12は円環状の第一の通気口11aのほぼ中央に配置されているため、加熱されて暖められた空気は円環状の第一の通気口11aの内側にある壁面に向かって上昇しようとするが、壁面で遮断されているので、上昇しつつ水平方向を基準として周縁に広がるように移動する。そして、暖められた空気の一部が第一の通気口11aを通過して正面10aの壁面を通過して外部に排気される。正面10aの壁面には第一の通気口11a以外には通気口がないため、暖められた空気は、すべて第一の通気口11aを通過する。
【0019】
電子部品12で暖められた空気が第一の通気口11aを介して排気される一方、筺体10内の気圧変化を抑制するように、側面10cと側面10dから外部の空気が吸引される。この場合、側面10cと側面10dのスリット状とした第二の通気口11bは吸気口としてのみ機能し、吸引された空気は第一の通気口11aに向かって移動する。この場合、正面10aの内壁には第一の通気口11aを形成する以外の障害物が形成されていないので、第二の通気口11bから吸引された空気は第一の通気口11aに向かって流れる。そして、正面10aの第一の通気口11aは排気口としてのみ機能する。すなわち、電子部品12の廃熱は周縁の空気を介して第一の通気口11aから排出されるが、この廃熱が第一の通気口11aを加熱するので、正面10a全体からみると第一の通気口11aに隣接する壁材部分だけが局所的に加熱される。正面10aの壁面に沿う空気の流れは、中央付近の加熱された空気が周縁に広がるものの第一の通気口11aの位置まで来ると、この第一の通気口11aから外部へ排気されるので、第一の通気口11aよりも外側の壁面を加熱するには至らない。一方、第一の通気口11aよりも外側の壁面では、第二の通気口11bから吸引された未加熱の空気が流れてきて第一の通気口11aから外部へ排気されることになり、この流れによっても正面10aにおける第一の通気口11aよりも外側の壁面は加熱されない。
なお、図4には上述した空気の流れを矢印で示している。
【0020】
図5は、電子機器筐体の横置き状態の熱量の伝搬を模式的に示す概略断面図である。図6は、この場合の電子機器筐体の具体例での対流を示す断面図である。
筺体10内では、第一の通気口11aよりも内側の位置であって、円環状とした第一の通気口11aよりもやや大きい内径を有する板材からなるリング状の拡散板20が配置されている。また、拡散板20は、リング状としつつ、内周側の縁部から電子部品12の側に筒状に突き出る凸型壁部20aが形成されている。
このように、拡散板20は、板材であって、第一の通気口11aに近い側と、第二の通気口11bに近い側とでは、電子部品12の側に突き出る高さが異なっている。
【0021】
電子部品12で暖められた空気が対流で上方に移動するとき、第一の通気口11aで通過時におきる流体の抵抗により、この対流は第一の通気口11aよりも手前側で周縁に広がろうとする。特に、拡散板20は中央部分に筒状の凸型壁部20aを備えていることから、この凸型壁部20aによって対流の進路が隔てられ、凸型壁部20aの手前で広がった対流が拡散板20に突き当たると、さらに上昇しようとしてくる対流からの圧力により、拡散板20に沿って周縁方向に広がろうとする。図4に示す拡散板20が無い場合であれば、第一の通気口11aよりも外側では、第一の通気口11aへと向かう内向きの空気の流れが発生していたが、図5に示す拡散板20を備える場合では、逆に第一の通気口11aから広がって外側に移動する空気の流れが生じている。
【0022】
この空気の流れがリング状の拡散板20の外周端に至ると、暖められているせいでこの空気の流れは上方に移動し、正面10aの壁面における第一の通気口11aの外側の壁面に接することになる。正面10aの壁面に接する空気の流れとなることで、この正面10aの壁面に熱を伝えて暖める。すなわち、壁面の表面からの熱放射を行うことになる。
このように、拡散板20が無いものでは、第一の通気口11aの周縁だけが暖められて局所加熱されていたものが、拡散板20を設置することで、第一の通気口11aへ向かう対流を拡散し、第一の通気口11aよりも外側に空気の流れを誘導し、結果的に第一の通気口11aよりも外側に位置する壁面全体に熱を伝えるので表面温度が上昇することになる。このように廃熱を伝える部位が多くなることにより、第一の通気口11aからの排出熱量を低下して局所加熱を低減することができる。
【0023】
なお、図5では、電子部品12から大きな3つの矢印の熱量が放出されるが、第一の通気口11aからはより小さな四つの矢印の熱量が排出され、第一の通気口11aよりも外側の壁面からも小さな二つの矢印の熱量が排出されている様子を示している。これは廃熱の分散を表しているといえる。
【0024】
図6は、具体例における電子機器筐体の横置き状態の対流を示す断面図である。模式的に概略断面図として示す図5の場合と同様に、電子部品12を基準として拡散板21の手前側で、電子部品12で加熱された空気は拡散板21よりも外側へ拡散され、拡散されてから上昇して正面10aの壁面に沿って外側に流れる。正面10aの壁面に沿って流れるときに同壁面に熱量を伝え、筺体表面からの熱放射で廃熱する。
【0025】
図7は、同電子機器筐体の横置き状態の熱量の伝搬を模式的に示す断面図である。
図6図7に示す実施例の場合、暖められた空気が拡散板21によって外側に拡散されると、その空気の流れが第二の通気口11bの一部を介して筺体外に流れ出る。図6に示すように、拡散板21自体が第一の通気口11aよりも外側から第一の通気口11aへ併記される経路を遮断する場合は、より第二の通気口11bから排気されやすいが、拡散板21自体が同経路を遮断しない場合であっても、図7に示すように第二の通気口11bから排気される経路も生じる。
【0026】
むろん、第二の通気口11bにおける上方側の開口部分からは排気され、それ以外の下方側の開口部分からは吸気される。第二の通気口11bから排気される場合は、第二の通気口11bが形成される上面10cおよび底面10dの筺体壁面からも熱放射によって廃熱される。従って、図5に示す場合であれば、電子部品12が発生する熱量と正面10aから廃熱される熱量は概ね等しいが、図7に示す場合であれば、電子部品12が発生する熱量よりも正面10aから廃熱される熱量は少なく、その差の分が上面10cと底面10dから廃熱されていると言える。
【0027】
このように、通気口は第一の通気口11aと第二の通気口11bとを備え、拡散板21は、第二の通気口11bよりも第一の通気口11aに近い位置に配置され、電子部品12近辺から第一の通気口11aに向かう対流を拡散して第二の通気口11bへ誘導することになる。
【0028】
拡散板20,21の位置については、設計上の都合により、適宜変更可能である。上述した実施例では、拡散板20,21は概ね第一の通気口11aと電子部品12との間に配置していといえる。しかし、拡散板20,21が、第一の通気口11aと電子部品12とを直線的に結ぶ最短経路を遮断するように配置されているわけではない。最短経路を遮断しなくても外側に誘導することができている。すなわち、拡散板20,21は、電子部品12と第一の通気口11aとを結ぶ直線経路は遮らない位置に配設されている。
【0029】
次に、図8は、変形例にかかる電子機器筐体の横置き状態の対流を示す断面図である。
この実施例では、拡散板22が、第一の通気口11aと電子部品12とを直線的に結ぶ最短経路を遮断する位置に配設されている。遮らない位置に配設すると、理論的には電子部品12から第一の通気口11aに直線的に移動する空気の流れが必ず発生し、その空気の流れは比較的大きな熱量を含んでいて、その熱量を直に第一の通気口11aに伝える。一方、遮る位置に配設すると、電子部品12から第一の通気口11aに直線的に移動する空気の流れを遮り、より多くの空気の流れが正面10aの内側壁面に沿って移動する空気の流れを生じやすくし、壁材を介して熱量を放出することで正面10aの壁材の温度の不均衡を緩和する傾向が強くなる。
【0030】
遮る配置とするか、遮らない配置とするかは、実際に両者を形成してみて温度分布を計測するなどして、適宜決定すればよい。
【0031】
空気の流れを拡散させる機能に着目すると、拡散板20,21のように、単なる板状とするのではなく、凸型壁部20a,21aを形成すると良い。
図9図11は、同様の観点での拡散板の変形例にかかる断面形状を示す概略断面図である。
図9に示す拡散板23の断面形状は、第一の通気口11aの側から、電子部品12の側に直線的に突き出た後、外側方向に向かって広がりつつ、第一の通気口11aの側に向かって徐々に後退し、外周端において、直線的に短い距離だけ第一の通気口11aの側に後退する形状となっている。
【0032】
図10に示す拡散板24の断面形状は、電子部品12の側から見るとほぼ同じ形状の突出形状となっているが、断面形状は肉抜きしていない形状となっている。
図11に示す拡散板25の断面形状は、電子部品12とほぼ平行な位置関係となるリング状の円板部分25aを有し、内周側にはさらに内径が狭まりつつ電子部品12の側に向かってせり出すように斜めに形成した内周円錐壁面部25bを備え、円板部分25aの外周側には外形を広げつつ電子部品12から遠ざかるように斜めに後退する外周円錐壁面部25cを備える形状となっている。
いずれの形状も、共通するのは内側から外側に向けて、電子部品12から徐々に後退する斜面を形成しており、電子部品12で暖められて上昇する空気の流れを第一の通気口11aから外側に広がる空気の流れを形成しやすくしている。
【0033】
図12は、変形例にかかる電子機器筐体の横置き状態の対流を示す断面図である。
第一の通気口11aが形成される正面10aの壁面を表面からの熱放射に利用する場合、できるだけ壁面に沿って熱量を効率よく伝搬させることが好ましいと言える。この例では、正面10aの壁面の裏面側における前記第一の通気口11aよりも内側の部位に、銅箔やアルミ箔などの熱伝導率の高い熱伝導部材30を貼付してある。むろん、この熱伝導部材30の熱伝導率は、通気口11a,11bが形成される壁面よりも熱伝導率が高い。熱伝導部材30を貼付してある壁面では廃熱の熱量が素早く伝搬し、熱伝導部材30が無い場合と比べて筺体10からの熱放射の効率がよい。なお、熱伝導部材30は正面10aの壁面のみならず、上面10cや底面10dの壁面に貼付しても良い。
【0034】
このように、通気口が形成される壁面よりも熱伝導率の高い熱伝導部材を、通気口に隣接して配設してある。
【0035】
なお、本発明は前記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・第一の通気口11aと拡散板20は円環状の形状としてあるが、円環状である必要はなく、多角形であったり、直線状であってもよい。連続する形状であったり、連鎖状の形状でも良いし、空気以外の異物を入りにくくするネット状のフィルタを配置してあっても良い。
この他、
・前記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって前記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が前記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0036】
1…発熱部品、2…排気口、3…熱伝導部材、10…筺体、10a…正面、10b…背面、10c…上面、10d…底面、10e…左側面、10f…右側面、11…通気口、11a…第一の通気口、11b…第二の通気口、12…電子部品、13…電子基板、20~25…拡散板、20a…凸型壁部、21a…凸型壁部、25a…円板部分、25b…内周円錐壁面部、25c…外周円錐壁面部、30…熱伝導部材。
図1
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