(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】冷熱発電装置
(51)【国際特許分類】
F02C 6/16 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
F02C6/16
(21)【出願番号】P 2018003189
(22)【出願日】2018-01-12
【審査請求日】2020-11-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】猿田 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】松隈 正樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0101728(US,A1)
【文献】特開平03-054327(JP,A)
【文献】特開2014-125987(JP,A)
【文献】特開平10-238366(JP,A)
【文献】特開2016-211465(JP,A)
【文献】特開昭56-006023(JP,A)
【文献】特開2016-211416(JP,A)
【文献】特公平07-013470(JP,B2)
【文献】特開2001-193483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 1/04
F02C 6/16
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火力発電装置と、圧縮空気貯蔵発電装置と、出力合流部とを備える冷熱発電装置であって、
前記火力発電装置は、
液化天然ガスを気化させるLNG気化器と、
前記LNG気化器によって気化した天然ガスを燃焼させて動力に変換する動力部と、
前記動力部で得られた動力によって駆動される主発電機と
を備え、
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、
前記LNG気化器にて前記液化天然ガスの気化時に発生する冷熱を利用して冷却された空気を圧縮する空気圧縮機と、
前記空気圧縮機から吐出された圧縮空気を貯蔵する空気タンクと、
前記空気タンクから供給された前記圧縮空気を前記動力部における前記天然ガスの燃焼によって発生した熱によって加熱する空気加熱器と、
前記空気加熱器で加熱された前記圧縮空気を膨張させる空気膨張機と、
前記空気膨張機によって駆動される補助発電機と
を備え、
前記出力合流部において、前記主発電機の出力と、前記補助発電機の出力とが合流され、
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、
前記空気圧縮機から吐出された前記圧縮空気と熱交換して熱媒を加熱する第1熱交換器と、
前記第1熱交換器にて加熱された前記熱媒を貯蔵する高温熱媒タンクと、
前記高温熱媒タンクに貯蔵された前記熱媒と前記空気タンクから前記空気膨張機に供給される前記圧縮空気とを熱交換することで前記圧縮空気を加熱する第2熱交換器と
をさらに備える冷熱発電装置。
【請求項2】
火力発電装置と、圧縮空気貯蔵発電装置と、出力合流部とを備える冷熱発電装置であって、
前記火力発電装置は、
液化天然ガスを気化させるLNG気化器と、
前記LNG気化器によって気化した天然ガスを燃焼させて動力に変換する動力部と、
前記動力部で得られた動力によって駆動される主発電機と
を備え、
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、
前記LNG気化器にて前記液化天然ガスの気化時に発生する冷熱を利用して冷却された空気を圧縮する空気圧縮機と、
前記空気圧縮機から吐出された圧縮空気を貯蔵する空気タンクと、
前記空気タンクから供給された前記圧縮空気を前記動力部における前記天然ガスの燃焼によって発生した熱によって加熱する空気加熱器と、
前記空気加熱器で加熱された前記圧縮空気を膨張させる空気膨張機と、
前記空気膨張機によって駆動される補助発電機と
を備え、
前記出力合流部において、前記主発電機の出力と、前記補助発電機の出力とが合流され、
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、
前記液化天然ガスの気化時に発生する冷熱を利用して前記圧縮空気を冷却する空気冷却器と、
前記空気冷却器にて冷却された前記圧縮空気を膨張させて液化する空気液化器と、
前記空気液化器にて液化した液体空気を貯蔵する液体空気タンクと、
液体空気タンクに貯蔵された前記液体空気を気化させて前記空気膨張機に供給する空気気化器と
をさらに備える、冷熱発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷熱発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、ガスタービン発熱のために液化天然ガス(LNG)が気化される際に発生する冷熱を利用する冷熱発電装置が開示されている。
【0003】
特許文献3には、LNGが気化する際の冷熱を利用して生成した液体空気をタンクに貯蔵し、タンク内の液体空気を必要に応じて気化させることで動力を得て発電する液体空気貯蔵発電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-107806号公報
【文献】特開昭63-230914号公報
【文献】特開平4-127850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2の冷熱発電装置は、LNGが気化する際に発生する冷熱を利用して発電するので、LNGを気化させないと発電できない。また、この冷熱発電装置の発電量は、LNGの気化量によって定まるため、発電量を適時に調整することが困難である。従って、需要電力量の変動に対して、発電量を応答性良く追従させることができない。即ち、需要電力量に対して適切な発電量を適時に確保できない。
【0006】
特許文献3の液体空気貯蔵発電システムは、LNGを気化しないときであっても発電することができるが、空気を液化することにエネルギーを消費するため、システム全体としての発電効率が高くない。また、ガスタービンを使用して発電するので発電量を頻繁に変更すると、制御が不安定になるおそれがある。従って、このシステムもまた、需要電力量の変動に対して、発電量を応答性良く追従させることができない。
【0007】
本発明は、発電効率を向上させるとともに、発電量を応答性良く需要電力量に追従させることができる冷熱発電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
火力発電装置と、圧縮空気貯蔵発電装置と、出力合流部とを備える冷熱発電装置であって、
前記火力発電装置は、
液化天然ガスを気化させるLNG気化器と、
前記LNG気化器によって気化した天然ガスを燃焼させて動力に変換する動力部と、
前記動力部で得られた動力によって駆動される主発電機と
を備え、
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、
前記LNG気化器にて前記液化天然ガスの気化時に発生する冷熱を利用して冷却された空気を圧縮する空気圧縮機と、
前記空気圧縮機から吐出された圧縮空気を貯蔵する空気タンクと、
前記空気タンクから供給された前記圧縮空気を前記動力部における前記天然ガスの燃焼によって発生した熱によって加熱する空気加熱器と、
前記空気加熱器で加熱された前記圧縮空気を膨張させる空気膨張機と、
前記空気膨張機によって駆動される補助発電機と
を備え、
前記出力合流部において、前記主発電機の出力と、前記補助発電機の出力とが合流される、冷熱発電装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、LNG気化器にてLNGが気化する際に発生する冷熱を利用して空気を冷却し、冷却した空気を空気圧縮機に供給するので、圧縮空気の密度を高めることができ、空気圧縮機の圧縮効率を向上できる。また、空気加熱器にて天然ガスの燃焼によって発生した熱によって圧縮空気を加熱し、加熱された圧縮空気を空気膨張機によって膨張させるので、空気膨張機の膨張効率を向上でき、即ち補助発電機の発電効率を向上できる。また、火力発電装置の主発電機による安定した大容量の発電出力に、圧縮空気貯蔵(CAES)発電装置の補助発電機による応答性の高い発電出力を出力合流部にて加算できるので、安定した大容量の発電出力を得るとともに応答性の高い発電出力を得ることができる。さらにいえば、補助発電機の発電出力を変動することで、需要電力量に対して応答性よく発電量を追従させることができるため、主発電機の発電出力を変動させる必要がない。そのため、主発電機は最大出力での発電を継続できるため、発電効率を向上できる。
【0010】
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、
前記空気圧縮機から吐出された前記圧縮空気と熱交換して熱媒を加熱する第1熱交換器と、
前記第1熱交換器にて加熱された前記熱媒を貯蔵する高温熱媒タンクと、
前記高温熱媒タンクに貯蔵された前記熱媒と前記空気タンクから前記空気膨張機に供給される前記圧縮空気とを熱交換することで前記圧縮空気を加熱する第2熱交換器と
をさらに備えてもよい。
【0011】
この構成によれば、第1熱交換器によって空気タンクに貯蔵される圧縮空気の温度を低下させることができ、好ましくは常温近傍にすることができる。そのため、空気タンクに貯蔵されている間の圧縮空気の大気中への放熱量を減少させることができるため、冷熱発電装置のエネルギー効率を向上できる。また、第1熱交換器で加熱された高温熱媒を高温熱媒タンクに貯蔵し、必要に応じて高温熱媒タンクの高温熱媒を第2熱交換器に供給し、第2熱交換器にて圧縮空気を加熱し、空気膨張機に加熱された圧縮空気を供給できるため、空気膨張機の膨張効率を向上できる。
【0012】
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、
前記液化天然ガスの気化時に発生する冷熱を利用して前記圧縮空気を冷却する空気冷却器と、
前記空気冷却器にて冷却された前記圧縮空気を膨張させて液化する空気液化器と、
前記空気液化器にて液化した液体空気を貯蔵する液体空気タンクと、
液体空気タンクに貯蔵された前記液体空気を気化させて前記空気膨張機に供給する空気気化器と
をさらに備えてもよい。
【0013】
この構成によれば、空気を液化することで大量の空気を液体空気タンクに貯蔵できる。そのため、空気膨張機に空気を長時間にわたって供給でき、補助発電機によって長時間にわたって発電できる。従って、主発電機の出力を長時間にわたって補うことができる。また、空気冷却器において、空気を液化する前に、LNGが気化する際の冷熱を利用して空気を冷却することにより、空気を液化するためのエネルギーを低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷熱発電装置において、火力発電装置の出力と圧縮空気貯蔵発電装置の出力とを合わせているため、発電効率を向上させるとともに、発電量を応答性良く需要電力量に追従させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る冷熱発電装置の概略構成図
【
図4】第2実施形態に係る冷熱発電装置の概略構成図
【
図5】第3実施形態に係る冷熱発電装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る冷熱発電装置1の概略構成図である。冷熱発電装置1は、火力発電装置10と、圧縮空気貯蔵(CAES:Compressed Air Energy Storage)発電装置20とを備える。本実施形態の冷熱発電装置1は、後述する風力発電装置40の発電量を平準化する機能を有している。
【0018】
火力発電装置10は、蒸気タービン式であり、液化天然ガス(LNG)を燃焼させることで蒸気タービンを駆動して発電する設備である。火力発電装置10は、LNG貯蔵容器11と、LNG気化器12と、動力部13と、主発電機14とを備える。
【0019】
本実施形態のLNG貯蔵容器11には、タンクローリー2によってLNG受入基地がある港湾から搬送されてきたLNGが貯蔵される。貯蔵されるLNGの温度は、例えば、-167℃である。LNG貯蔵容器11は、パイプラインによって天然ガス(NG)を輸送できない内陸部または非都市部の工場地帯などに建設されるサテライト基地に設置されると有用である。また、LNG受入基地がある港湾の周辺に設けても有用である。LNG貯蔵容器11は、動力部13と配管5aによって接続されており、LNG貯蔵容器11に貯蔵されたLNGは配管5aを通じて動力部13に供給される。配管5aには、バルブ15と、LNG気化器12と、三方弁16とが介設されている。
【0020】
LNG気化器12では、LNGが、空気と熱交換して加熱されることで気化される。LNG気化器12は、配管5aによって動力部13のガス混合器13Aと接続されている。この配管5aから三方弁16を介して配管5bが分岐している。分岐した配管5bは、需要家設備3aに接続されている。そのため、LNG気化器12で気化された天然ガスは、配管5aを通じて動力部13のガス混合器13Aに送出されるとともに、成分調整された後に都市ガスとして配管5bを通じて需要家設備3aにも供給される。また、LNG気化器12にて天然ガスと熱交換することで冷却された空気は後述する空気圧縮機21に供給される。
【0021】
本実施形態では、空気を利用してLNGを加熱する空温式のLNG気化器12を使用しているが、海水または地下水などを利用してLNGを加熱する水温式の気化器を使用してもよい。水温式の気化器を使用する場合、詳細を図示しないが、LNG気化器12を通過した冷却水と空気とを熱交換させる熱交換器を追加して設け、当該熱交換器にて空気を冷却して空気圧縮機21に供給する。また、天然ガスと空気を直接熱交換させずに窒素などを介して熱交換してもよい。いずれの場合でも、空気圧縮機21の耐寒温度以内の温度(例えば-50℃程度)まで空気を冷却することが好ましい。
【0022】
動力部13は、主発電機14を駆動する動力を生成する部分である。動力部13は、ガス混合器13Aと、ボイラー13Bと、蒸気タービン13Cとを備える。
【0023】
ガス混合器13Aでは、配管5aを通じてLNG気化器12から送出された天然ガスと、ボイラー13Bから出た排ガスとが混合される。ガス混合器13Aにて混合されたガスは、ボイラー13Bに供給されて燃焼される。ボイラー13Bには脱硝装置13Dが取り付けられており、ボイラー13Bからガス混合器13Aに供給される排ガスは、脱硝装置13Dを通る際に脱硝される。また、ボイラー13Bには煙突13Eが並設され、脱硝装置13Dによって脱硝された排ガスの一部が煙突13Eから排気され、残りが前述のようにガス混合器13Aに送られる。また、ボイラー13Bの内部には、ボイラー配管13Fが配置されており、ボイラー配管13Fは蒸気タービン13Cまで延びている。ボイラー配管13F内には、水ないし水蒸気が流れており、ボイラー13Bにて加熱されることで、例えば600℃程度の高温の水蒸気となり、蒸気タービン13Cに供給される。
【0024】
蒸気タービン13Cの給気口には、ボイラー配管13Fを通じて水蒸気が供給され、供給された水蒸気によって蒸気タービン13Cが回転駆動される。蒸気タービン13Cは主発電機14と機械的に接続されており、主発電機14は蒸気タービン13Cによって駆動される。主発電機14は変圧器17を介して電源系統4に電気的に接続されており、主発電機14によって発電した電力は変圧器17を介して昇圧され、例えば6600Vの電源系統4に送られる。また、主発電機14は、隣接する工場などの需要家設備3bにも電気的に接続されており、主発電機14によって発電した電力は、例えば440Vの所内交流電圧として需要家設備3bにも供給される。
【0025】
蒸気タービン13Cの排気口は配管6aを通じてボイラー配管13Fに接続されており、蒸気タービン13Cから排出された水蒸気はボイラー13Bに供給される。配管6aには、予冷却器13Gと復水器13Hとが介設されている。蒸気タービン13Cから排出された水蒸気は、予冷却器13Gで冷却された後、復水器13Hでさらに冷却されることで凝縮して液体の水になる。このようにして、ボイラー13Bには、液体の水が供給され、前述のようにボイラー13Bで加熱されて再び水蒸気となる。即ち、ボイラー13Bと蒸気タービン13Cとの間では、液体状態または気体状態の水ないし水蒸気が循環している。また、ボイラー13Bにおける水が不足することを防止するために、純水タンク13Iが設けられている。純水タンク13Iは、ボイラー配管13Fと接続され、ボイラー配管13Fに適宜純水を補給できる。なお、予冷却器13Gと復水器13Hは、後述する配管7c内の圧縮空気と熱交換する熱交換器である。従って、予冷却器13Gと復水器13Hは、後述するように配管7cを通じて空気膨張機26に供給される圧縮空気を加熱する空気加熱器ともなっている。
【0026】
CAES発電装置20は、火力発電装置10に隣接して設けられており、空気圧縮機21と、空気タンク25と、空気加熱器としての予冷却器13Gおよび復水器13Hと、空気膨張機26と、補助発電機27とを備える。
【0027】
本実施形態の空気圧縮機21は、2段型スクリュ圧縮機であり、1段目圧縮機本体22と、2段目圧縮機本体23とを有している。1段目圧縮機本体22および2段目圧縮機本体23は、ともにモータ24と機械的に接続されており、モータ24からの動力によって駆動される。駆動されると、1段目圧縮機本体22は、吸気口22aから空気を吸気し、内部で圧縮し、吐出口22bから吐出し、2段目圧縮機本体23に圧縮空気を圧送する。2段目圧縮機本体23は、1段目圧縮機本体22から吐出された圧縮空気を吸気口23aから吸気し、内部でさらに圧縮し、吐出口23bから吐出する。本実施形態の1段目圧縮機本体22および2段目圧縮機本体23は、ともにスクリュ式であるが、これに代えて、例えばレシプロ式またはターボ式等であってもよい。特に2段目圧縮機本体23は、レシプロ式であってもよい。これにより、例えば5MPa程度の高圧まで圧縮できる。また、2段目までスクリュ式として3段目としてレシプロ式の圧縮機を設けてもよい。
【0028】
1段目圧縮機本体22の吸気口22aには配管7aの一端が接続されており、配管7aの他端は開放されている。また、配管7aにはLNG気化器12が設けられている。従って、空気圧縮機21が吸気する空気は、LNG気化器12にて冷却された空気である。このとき、吸気する空気の温度は、空気圧縮機21の耐寒性能にもよるが、例えば前述のように-50℃程度である。また、2段目圧縮機本体23の吐出口23bは、配管7bを通じて空気タンク25に接続されている。従って、空気圧縮機21が吐出した圧縮空気は、配管7bを通じて空気タンク25に供給される。このとき、吐出口23bから吐出される圧縮空気の温度は、圧縮熱により昇温するため、例えば、100℃程度まで上昇し、圧力は2MPa程度となる。
【0029】
配管7bには第1熱交換器28aが介設されており、第1熱交換器28aにて配管7b内の圧縮空気は熱媒系統28の熱媒と熱交換することで冷却される。換言すれば、第1熱交換器28aでは、熱媒系統28の熱媒は、配管7b内の圧縮空気熱交換することで加熱される。好ましくは、第1熱交換器28aでは、圧縮空気は常温(大気温度)程度まで冷却される。この熱媒系統28については詳細を後述する。
【0030】
空気タンク25には、空気圧縮機21から圧送された圧縮空気が貯蔵される。空気タンク25は配管7cを通じて空気膨張機26の給気口26aに接続されており、空気タンク25で貯蔵された圧縮空気は配管7cを通じて空気膨張機26に供給される。配管7cには、バルブ29と、第2熱交換器28bと、上記の復水器13Hと、上記の予冷却器13Gとが介設されている。バルブ29は、流量を調整する機能を有しており、バルブ29によって空気タンク25から空気膨張機26に供給する空気量を調整できる。また、配管7c内の圧縮空気は、第2熱交換器28bと、復水器13Hと、予冷却器13Gとによって加熱された後に空気膨張機26に供給される。特に、復水器13Hおよび予冷却器13Gでは、天然ガスの燃焼によって発生した熱によって圧縮空気を加熱している。このとき、空気膨張機26に給気される圧縮空気の温度は、例えば150℃程度である。このように、空気膨張機26に給気する圧縮空気を加熱することで膨張効率を向上させることができる。
【0031】
空気膨張機26は、例えばスクリュ式であり、空気タンク25から給気された圧縮空気によって駆動される。空気膨張機26は補助発電機27と機械的に接続されており、補助発電機27は空気膨張機26からの動力によって駆動される。補助発電機27は出力合流部50と変圧器17とを介して電源系統4に電気的に接続されており、補助発電機27によって発電した電力は主発電機14によって発電した電力と合わせられる。本実施形態では、出力合流部50は、単に電気配線の合流部分であるが、例えば電力の供給源ないし供給先を切り替えるスイッチなどの機構を有する部分であってもよい。また、空気膨張機26にて膨張された空気は、排気口26bから大気中に排気される。なお、本実施形態の空気膨張機26は、後述する需要電力に対する応答性の高いスクリュ式であるが、これに代えて、例えばレシプロ式またはターボ式等であってもよい。また、本実施形態の空気膨張機26は単段式であるが、2段以上の多段式にしてもかまわない。
【0032】
熱媒系統28は、CAES発電装置20において圧縮空気の温度を調整するために設けられている。熱媒系統28は、低温熱媒タンク28cと、第1熱交換器28aと、高温熱媒タンク28dと、第2熱交換器28bとを備える。これらは、配管8a,8bによって接続されている。配管8a,8b内では、図示しないポンプによって、熱媒がこれらの間を循環するように流されている。本実施形態では、熱媒として水を採用し、以降熱媒のことを水としても説明するが、熱媒の種類は水に限定されず、油などの任意の流体であり得る。また、セラミックスなどの固体蓄熱装置を用いてもよい。
【0033】
低温熱媒タンク28cには、低温の水が貯蔵されている。低温熱媒タンク28cには適宜水が補給され、必要量の水が内部に常時貯蔵されている。低温熱媒タンク28cから高温熱媒タンク28dまでは配管8aが延びており、低温熱媒タンク28cから高温熱媒タンク28dに熱媒としての水を流すことができるようになっている。
【0034】
低温熱媒タンク28cから高温熱媒タンク28dまで延びる配管8aには、第1熱交換器28aが介設されている。第1熱交換器28aでは、配管8a内の水が加熱され、配管7b内の圧縮空気が冷却される。
【0035】
高温熱媒タンク28dは、第1熱交換器28aで加熱された高温の水を貯蔵するタンクである。高温熱媒タンク28dは、内部の水の温度を保つため、外部から断熱されていることが好ましい。高温熱媒タンク28dから低温熱媒タンク28cまでは配管8bが延びており、高温熱媒タンク28dから低温熱媒タンク28cに水を流すことができるようになっている。また、高温熱媒タンク28dには、予冷却器13Gと復水器13Hとを接続する配管6aの一部から分岐した配管8cが接続されている。配管8cにはバルブ28eが介設されており、バルブ28eを開くことで、高温熱媒タンク28dに熱媒としての水を補給できる。また、バルブ28eを閉じることで、この水の流れを遮断できる。
【0036】
高温熱媒タンク28dから低温熱媒タンク28cまで延びる配管8bには、第2熱交換器28bが介設されている。第2熱交換器28bでは、配管8b内の水が冷却され、配管7c内の圧縮空気が加熱される。
【0037】
本実施形態では、風力発電装置40が電源系統4に電気的に接続されている。風力発電装置40の発電する電力は、図示しないセンサによって常時測定されている。一般に、風力発電装置40の発電量は、天候に依存するため、所定の値に保つことが難しい。そのため、発電量を所定の値に保つためには、変動する発電量を平準化する必要がある。これに対し、本実施形態の冷熱発電装置1は、風力発電装置40の変動する発電量の平準化に適している。なお、本実施形態では、風力発電装置40と接続する例を示したが、他の出力が安定しない再生可能エネルギーによる発電装置、例えば太陽光発電装置や太陽熱発電装置と接続してもよい。
【0038】
図2は、上記平準化の概念を示すグラフである。横軸が時間を示し、縦軸が電力を示している。一点鎖線L1は、工場などの需要家設備から求められる電力(需要電力)を示しており、
図2では説明を簡単にするために一定値として水平線で示している。ただし、実際の需要電力は、一定ではなく、時間に応じて変動する値であり得る。また、二点鎖線L2は火力発電装置10の主発電機14の発電量を示している。本実施形態の主発電機14の発電量は、最大出力を発揮しているため、一定値として水平線で示されている。二点鎖線の上で波打つ曲線は、火力発電装置10の主発電機14の発電量に追加された風力発電装置40の発電量を示している。風力発電装置40の発電量は、前述のように天候に応じて変動するため、図示のような波打つ曲線となっている。
図2の例では、風力発電装置40の発電量が一定量を下回ると、需要電力量に対応する発電量を確保できず、電力不足が発生する(図中の斜線領域A参照)。これに対し、風力発電装置40の発電量が一定以上となると、需要電力量を上回り、余剰電力が発生する(図中の斜線領域B参照)。
【0039】
本実施形態では、補助発電機27によって、上記電力不足を補うように発電することで、需要電力を満たすとともに、上記余剰電力をモータ24に供給して圧縮空気を製造することでエネルギーを無駄なく利用できる。また、エネルギーを無駄なく利用するために、主発電機14および補助発電機27で発電した電力を必要に応じてモータ24に供給してもよい。また、
図2中の時間t1は、CAES発電装置20の立ち上げ時間を示している。CAES発電装置20の立ち上げ時間t1は、例えば十数秒であり、火力発電装置10の立ち上げ時間(例えば30分程度)と比べて短い。従って、立ち上げの際にも高速に需要電力に応答できる。
【0040】
また、風力発電装置40の発電量が需要量に十分達している場合には、火力発電装置10の主発電機14を停止し、風力発電装置40の出力をCAES発電装置20で平滑化して需要者に電力を供給してもよい。この場合、火力発電装置10のLNGの消費量を低減することができる。この場合、高温熱媒タンク28dに蓄えられた高温熱媒で、空気膨張機26に供給する前の圧縮空気を予熱することになる。また、火力発電装置10で発生した熱を図示しない蓄熱装置に蓄えておき、その熱で予熱するようにしてもよい。
【0041】
本実施形態の冷熱発電装置1によれば、次のような利点がある。
【0042】
LNG気化器12にてLNGが気化する際に発生する冷熱を利用して空気を冷却し、冷却した空気を空気圧縮機21に供給するので、圧縮空気の密度を高めることができ、空気圧縮機21の圧縮効率を向上できる。また、空気加熱器(予冷却器13Gおよび復水器13H)にて、ボイラー13Bで天然ガスの燃焼によって発生した熱によって圧縮空気を加熱し、加熱された圧縮空気を空気膨張機26によって膨張させるので、空気膨張機26の膨張効率を向上でき、即ち補助発電機27の発電効率を向上できる。
【0043】
さらにいえば、補助発電機27の発電出力を変動することで、需要電力量に対して応答性よく発電量を追従させることができるため、主発電機14の発電出力を変動させる必要がない。そのため、主発電機14は最大出力での発電を継続できるため、発電効率を向上できる。
【0044】
また、火力発電装置10の主発電機14による安定した大容量の発電出力に、CAES発電装置20の補助発電機27による応答性の高い発電出力を出力合流部50にて加算できるので、安定した大容量の発電出力を得るとともに応答性の高い発電出力を得ることができる。
【0045】
第1熱交換器28aによって空気タンク25に貯蔵される圧縮空気の温度を低下させることができ、好ましくは常温近傍にすることができる。そのため、空気タンク25に貯蔵されている間の圧縮空気の大気中への放熱量を減少させることができるため、冷熱発電装置1のエネルギー効率を向上できる。また、第1熱交換器28aで加熱された高温熱媒を高温熱媒タンク28dに貯蔵し、必要に応じて高温熱媒タンク28dの高温熱媒を第2熱交換器28bに供給し、第2熱交換器28bにて圧縮空気を加熱し、空気膨張機26に加熱された圧縮空気を供給できるため、空気膨張機26の膨張効率を向上できる。
【0046】
第1実施形態の変形例として
図3に示すように、CAES発電装置20は、熱媒系統28(
図1参照)を有していなくてもよい。熱媒系統28(
図1参照)は、CAES発電装置20の圧縮空気の温度を調整してエネルギー効率を向上させるために設けられるものである。従って、熱媒系統28(
図1参照)は、機能上、必須構成ではない。これは以降の実施形態でも同様である。さらにいえば、空気圧縮機21が吸気する空気を、例えば-150℃程度まで冷却する場合、吐出口23bから吐出される圧縮空気は、常温ないし50℃程度となり得る。その場合、空気タンク25において圧縮空気の大気への放熱量が少ない。従って、第1熱交換器28aで圧縮空気を冷却する必要性が少なくなるため、第1熱交換器28aを省略してもよい。
【0047】
(第2実施形態)
図4に示す第2実施形態の冷熱発電装置1では、火力発電装置10の動力部13がガスタービン式となっている。これに関する構成以外は、
図1の第1実施形態の冷熱発電装置1の構成と同様である。従って、
図1に示した構成と同様の部分については同様の符号を付して説明を省略する。
【0048】
本実施形態の動力部13は、燃焼器13Jと、空気圧縮機13Kと、ガスタービン13Lと、排熱回収ボイラー13Mとを備える。
【0049】
燃焼器13Jは配管5aによってLNG気化器12と接続されており、LNG気化器12にて気化した天然ガスは配管5aを通じて燃焼器13Jに送られる。また、燃焼器13Jは、空気圧縮機13Kと、ガスタービン13Lとに流体連通している。燃焼器13Jでは、LNG気化器12から配管5aを通じて送出された天然ガスと、吸気口13Nから吸気して空気圧縮機13Kにて圧縮された圧縮空気とが混合されて燃焼され、高温の燃焼ガスが生成される。そして、この燃焼ガスによってガスタービン13Lが駆動される。ガスタービン13Lは主発電機14と機械的に接続されており、主発電機14はガスタービン13Lによって駆動される。
【0050】
ガスタービン13Lには排熱回収ボイラー13Mが取り付けられており、ガスタービン13Lの駆動に供された燃焼ガスは排熱回収ボイラー13Mにて熱回収される。排熱回収ボイラー13Mの内部には脱硝装置13Pが設けられており、排気される燃焼ガスは脱硝装置13Pを通る際に脱硝される。また、排熱回収ボイラー13Mには、空気加熱器13Oと煙突13Qが取り付けられており、排熱回収ボイラー13Mを経て排気される高温の排ガスは、空気加熱器13Oを介して熱回収された後、煙突13Qから排気される。空気加熱器13Oでは、排ガスから熱回収した熱によって配管7c内の圧縮空気を加熱し、空気膨張機26に供給される圧縮空気を昇温させている。本実施形態では、空気膨張機26に供給される圧縮空気は、空気加熱器13Oにて加熱されることで、例えば150℃程度となる。
【0051】
本実施形態の冷熱発電装置1によって得られる利点は第1実施形態と実質的に同じである。
【0052】
(第3実施形態)
図5に示す第3実施形態の冷熱発電装置1では、液体空気を生成および貯蔵する構成を備える。これに関する構成以外は、
図1の第1実施形態の冷熱発電装置1の構成と同様である。従って、
図1に示した構成と同様の部分については同様の符号を付して説明を省略する。
【0053】
本実施形態のCAES発電装置20は、第1実施形態の構成に加えて、空気冷却器30と、空気液化器31と、液体空気タンク32と、空気気化器33とを備える。空気冷却器30と、空気液化器31と、液体空気タンク32と、空気気化器33とは、配管7d~7gを通じて接続されており、配管7d~7g内には液体状態または気体状態の空気が流れている。
【0054】
空気冷却器30では、LNG貯蔵容器11からガス混合器13Aに向かって延び、バルブ35が介設された配管5c内のLNGと、第1熱交換器28aから空気タンク25に延びる配管7bから三方弁34を介して分岐して空気液化器31まで延びる配管7d内の圧縮空気とが熱交換する。具体的には、空気冷却器30では、LNGが加熱され、圧縮空気が冷却される。ここで、加熱されたLNGは気化してガス混合器13Aに送られ、冷却された圧縮空気は配管7dを通じて空気液化器31に送られる。
【0055】
空気液化器31は、空気冷却器30にて冷却された圧縮空気を断熱膨張させることによってさらに温度を低下させ、液化するものである。空気液化器31は配管7eによって液体空気タンク32と接続されており、空気液化器31で液化された液体空気は配管7eを通じて液体空気タンク32に送られる。
【0056】
液体空気タンク32は、液体空気を貯蔵するタンクである。液体空気タンク32は、液体状態の空気を貯蔵するため、気体状態の空気を貯蔵する空気タンク25よりも容量を小さくしつつ大量の空気を貯蔵できる。液体空気タンク32は配管7fによって空気気化器33と接続されており、液体空気タンク32に貯蔵された液体空気は配管7fを通じて空気気化器33に送られる。なお、空気液化器31で液化された液化空気の流通経路上に空気分離装置(不図示)を必要に応じて設け、液化空気から空気中の成分のうち商業的に有用な成分(例えばアルゴンガス等)を分離して、需要家設備3cに送出するようにしてもよい。
【0057】
空気気化器33は、液体空気を気化させる機能を有している。空気気化器33の態様は、特に限定されず、例えば大気で液体空気を加熱する空温式であってもよい。空気気化器33は、配管7gを通じて配管7cと接続されている。即ち、空気気化器33で気化された空気は、空気タンク25からの圧縮空気とともに空気膨張機26に給気される。
【0058】
本実施形態によれば、空気を液化することで大量の空気を液体空気タンク32に貯蔵できる。そのため、空気膨張機26に空気を長時間にわたって供給でき、補助発電機27によって長時間にわたって発電できる。従って、主発電機14の出力を長時間にわたって補うことができる。また、空気冷却器30において、空気を液化する前に、LNGが気化する際の冷熱を利用して空気を冷却することにより、空気を液化するためのエネルギーを低減できる。
【0059】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。上記実施形態では、風力発電装置40の発電量の平準化に冷熱発電装置1を利用しているが、本用途以外にも応答性良く需要電力に追従することが必要となる任意の用途に対して冷熱発電装置1を利用できる。例えば、その他の再生可能エネルギーの平準化、または、適時適量の電力を要求する工場などの電力確保などにも利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 冷熱発電装置
2 タンクローリー
3a,3b,3c 需要家設備
4 電源系統
5a~5c 配管(LNG・NG用)
6a 配管(水・水蒸気用)
7a~7g 配管(空気・液体空気用)
8a~8c 配管(熱媒用)
10 火力発電装置
11 LNG貯蔵容器
12 LNG気化器
13 動力部
13A ガス混合器
13B ボイラー
13C 蒸気タービン
13D 脱硝装置
13E 煙突
13F ボイラー配管
13G 予冷却器(空気加熱器)
13H 復水器(空気加熱器)
13I 純水タンク
13J 燃焼器
13K 空気圧縮機
13L ガスタービン
13M 排熱回収ボイラー
13N 吸気口
13O 空気加熱器
13P 脱硝装置
13Q 煙突
14 主発電機
15 バルブ
16 三方弁
17 変圧器
20 圧縮空気貯蔵(CAES)発電装置
21 空気圧縮機
22 1段目圧縮機本体
22a 吸気口
22b 吐出口
23 2段目圧縮機本体
23a 吸気口
23b 吐出口
24 モータ
25 空気タンク
26 空気膨張機
26a 給気口
26b 排気口
27 補助発電機
28 熱媒系統
28a 第1熱交換器
28b 第2熱交換器
28c 低温熱媒タンク
28d 高温熱媒タンク
28e バルブ
29 バルブ
30 空気冷却器
31 空気液化器
32 液体空気タンク
33 空気気化器
34 三方弁
35 バルブ
40 風力発電装置
50 出力合流部