(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】通信装置、通信装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/345 20150101AFI20221124BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20221124BHJP
H04J 1/00 20060101ALI20221124BHJP
H04B 1/707 20110101ALI20221124BHJP
H04B 1/16 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
H04B17/345
H04L27/26 100
H04J1/00
H04B1/707
H04B1/16 Z
(21)【出願番号】P 2018036736
(22)【出願日】2018-03-01
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-193339(JP,A)
【文献】特表2017-530610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/60
H04B 3/46-3/493
H04B 17/00-17/40
H04L 27/00-27/38
H04B 1/69-1/719
H04J 1/00-1/20
H04J 4/00-13/22
H04J 99/00
H04L 5/00-5/12
H04B 1/06
H04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークにおいて少なくとも2つの通信方式で通信を行うことが可能な通信装置であって、
検知すべき信号の受信信号強度を示すレベルであって、第1の通信方式による第1の信号を検知するための第1の検知レベルと、第2の通信方式による第2の信号を検知するための第2の検知レベルとを設定する設定手段と、
前記通信装置の周辺に前記第1の通信方式で通信する他の通信装置が存在するか否かを前記第1の検知レベル
に従って検知した信号の復調結果に基づいて判定する判定手段と、を有し、
前記判定手段により前記通信装置の周辺に前記第1の通信方式で通信する他の通信装置が存在しないと判定された場合に、前記設定手段は、前記第1の検知レベルを上げるが、前記第2の検知レベルを変更しないことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第1の通信方式で通信する他の通信装置が存在すると前記判定手段が判定した場合に当該他の通信装置が前記ネットワークに属しているかを特定する特定手段をさらに有し、
前記他の通信装置が前記ネットワークに属していないと前記特定手段が特定した場合に、前記設定手段は、前記第1の検知レベルを上げることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
受信信号強度が前記第1の検知レベルより大きい信号を前記第1の通信方式で復調し、かつ、当該信号の当該受信信号強度が前記第2の検知レベルより大きい場合に当該信号を前記第2の通信方式でも復調する処理手段を更に有し、
前記特定手段は、前記処理手段による復調の結果に基づいて、前記第1の通信方式で通信する他の通信装置が前記ネットワークに属しているか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記判定手段は、第1の所定時間に受信した信号を用いて、前記通信装置の周辺に前記第1の通信方式で通信する他の通信装置が存在するか否かを判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記第1の検知レベルの値を上げてから第2の所定時間の経過後に、前記第1の検知レベルを下げることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記第1の通信方式は、DSSS(Direct Sequence Spread Spectrum)通信方式であり、前記第2の通信方式は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)通信方式であることを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記第1の通信方式は、サブキャリア間隔が312.5kHzのOFDM通信方式であり、前記第2の通信方式は、サブキャリア間隔が78.125kHzのOFDM通信方式であることを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
ネットワークにおいて少なくとも2つの通信方式で通信を行うことが可能な通信装置の制御方法であって、
検知すべき信号の受信信号強度を示すレベルであって、第1の通信方式による第1の信号を検知するための第1の検知レベルと、第2の通信方式による第2の信号を検知するための第2の検知レベルとを設定する設定工程と、
前記通信装置の周辺に前記第1の通信方式で通信する他の通信装置が存在するか否かを前記第1の検知レベル
に従って検知した信号の復調結果に基づいて判定する判定工程と、を有し、
前記判定工程により前記通信装置の周辺に前記第1の通信方式で通信する他の通信装置が存在しないと判定された場合に、前記設定工程では、前記第1の検知レベルを上げるが、前記第2の検知レベルを変更しないことを特徴とする通信装置の制御方法。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1から
7のいずれか1項に記載の通信装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.11シリーズに準拠する無線LAN(Local Area Network)では、混信防止のために、送信前に送信チャネルの空き状況を確認することが義務付けられている。空き状況を確認する方式として、IEEE802.11では2つの方式が規定されている。1つ目の方式は、無線LANの電波のみを検知するCS(Carrier Sense)方式であり、2つ目の方式は、無線LANの電波か否かに関係なく電波のエネルギーを検知するED(Energy Detect)方式である。このCS方式とED方式はそれぞれ、検知するための電波のエネルギーの強度レベル(以下、検知レベル)を有する。一般的に、CS方式の検知レベルは、ED方式の検知レベルより低い。例えば、CS方式の検知レベルは、-82dBmであり、ED方式の検知レベルは-70dBmである。
【0003】
一方、IEEE802.11では、DSSS方式、および、OFDM方式による通信を可能とすることが規定されている。なお、DSSSはDirect Sequence Spread Spectrumであり、OFDMはOrthogonal Frequency Divisional Multiplexingを表す。特許文献1には、DSSS方式とOFDM方式による無線LAN通信を行い、DSSS信号とOFDM信号を送受信可能な通信装置の構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、IEEE802.11シリーズに準拠する無線LAN通信を行う通信装置は、CS方式およびED方式により、送信前に送信チャネルの空き状況を確認し得る。CS方式の検知レベルは、一般的にED方式の検知レベルより低いため、無線LAN以外の信号に対しては、ED方式の検知レベルを用いて検知することが適切である。しかしながら、通信装置は、信号の種類によっては、本来はED方式の検知レベルを用いて送信チャネルの空き状況を確認すべきところ、誤ってCS方式の検知レベルを用いてしまうことがあり得る。その結果、本来は検知すべきでない低いエネルギーレベルの信号が検知されることにより、送信停止確率が高くなり、送信スループットの低下を招いてしまう。
【0006】
また、特許文献1に記載されているような、DSSS信号とOFDM信号を受信可能な通信装置も、例えばDSSS信号を受信しない環境において、DSSS信号に対して設定されたCS方式の検知レベルを誤って用いてしまうことが有り得る。この場合も同様に、本来は検知すべきでない低いエネルギーレベルの信号が検知されることにより、送信停止確率が高くなり、送信スループットの低下を招いてしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、誤った検知レベルの使用に起因する送信スループットの低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための一手段として、本発明の通信装置は以下の構成を有する。すなわち、ネットワークにおいて少なくとも2つの通信方式で通信を行うことが可能な通信装置であって、検知すべき信号の受信信号強度を示すレベルであって、第1の通信方式による第1の信号を検知するための第1の検知レベルと、第2の通信方式による第2の信号を検知するための第2の検知レベルとを設定する設定手段と、前記通信装置の周辺に前記第1の通信方式で通信する他の通信装置が存在するか否かを前記第1の検知レベルに従って検知した信号の復調結果に基づいて判定する判定手段と、を有し、前記判定手段により前記通信装置の周辺に前記第1の通信方式で通信する他の通信装置が存在しないと判定された場合に、前記設定手段は、前記第1の検知レベルを上げるが、前記第2の検知レベルを変更しない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、誤った検知レベルの使用に起因する送信スループットの低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態におけるネットワークの構成例を示す。
【
図2】第1の実施形態における通信装置101の構成例を示す。
【
図3】通信装置101の制御部108の機能構成例を示す。
【
図4】第1の実施形態における通信装置101の処理のフローチャートである。
【
図5】第2の実施形態における通信装置101の構成例を示す。
【
図6】第2の実施形態における通信装置101の処理のフローチャートである。
【
図7】第2の実施形態における受信パケットの構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本発明をその実施形態の一例に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0012】
[第1の実施形態]
(ネットワーク構成)
図1に、本実施形態における無線LANのネットワーク構成を示す。本実施形態では、無線LAN端末またはアクセスポイントとして機能する複数の通信装置101~104からネットワーク105が構成されている。本実施形態では、通信装置101がネットワーク105内の他の通信装置とIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers. Inc.)802.11シリーズに準拠した無線LAN通信を行うことを想定する。ここで、通信装置101は、ネットワーク105の内外からの、無線LAN信号や無線LAN以外の信号を検知し得る状況にある。
【0013】
(通信装置101の構成)
本実施形態における通信装置101の構成を、
図2と
図3を参照して説明する。ここでは、本実施形態に関連する処理である受信処理に関する構成について説明する。
図2は、本実施形態における通信装置101の構成例を示す図である。
図2に示す各構成要素は、それぞれハードウェア又はソフトウェアによって構成される。ソフトウェアとして構成される場合には、各機能を実現するためのコンピュータプログラムがメモリ206に記憶され、制御部205が当該プログラムを実行することによって該機能が実現される。
【0014】
通信装置101は、その構成の一例として、アンテナ部201、高周波処理部202、ベースバンド処理部203、媒体アクセス管理部204、制御部205、メモリ206、通信インターフェース207、表示部208、および入力部209を有する。また、ベースバンド処理部203は、DSSS(Direct Sequence Spread Spectrum)処理部211とOFDM(Orthogonal Frequency Divisional Multiplexing)処理部212を有する。
【0015】
アンテナ部201は、ネットワーク105内の他の通信装置等から送信された無線信号を受信する。高周波処理部202は、アンテナ部201により受信された無線信号を、ベースバンド信号に変換する。ベースバンド処理部203では、不図示のA/D(アナログ/ディジタル)変換部が、ベースバンド信号がディジタル信号に変換した後、DSSS処理部211とOFDM処理部212がそれぞれ、DSSS復調処理とOFDM復調処理を行う。また、ベースバンド処理部203により復調されたディジタル信号は、媒体アクセス管理部204により、ヘッダ処理等のディジタル信号処理が行われ、制御部205に送られる。制御部205は種々の機能を有し、通信装置101全体の制御を行う。制御部205の機能構成については後述する。メモリ206は、制御部205により実行される、通信装置101を制御するためのプログラムを格納する。また、メモリ206は、媒体アクセス管理部204からのデータ等を格納する。通信インターフェース207は、不図示の外部装置あるいは外部ユニットへとのデータの送受信処理を行う。表示部208は、制御部205により各種データ処理が行われた結果等を表示する。入力部209は、ユーザーにより指示される各種設定や、コマンド等の入力に使用される。
【0016】
次に、DSSS処理部211とOFDM処理部212について、より詳細に説明する。DSSS処理部211には、後述する検知レベル設定部301により、CS方式の検知レベル(DSSS CS検知レベル)とED方式の検知レベル(DSSS ED検知レベル)が設定される。DSSS処理部211は、無線LANの信号についてはDSSS CS検知レベルを用いて受信信号強度を判定し、受信信号強度がDSSS CS検知レベル以上の信号を検知してDSSS方式に従って復調する。同様に、DSSS処理部211は、無線LAN以外の信号についてはDSSS ED検知レベルを用いて受信信号強度を判定し、受信信号強度がDSSS ED検知レベル以上の信号を検知してDSSS方式に従って復調する。
【0017】
また、OFDM処理部212には、検知レベル設定部301により、CS方式の検知レベル(OFDM CS検知レベル)とED方式の検知レベル(OFDM ED検知レベル)が設定される。OFDM処理部212は、無線LANの信号についてはOFDM CS検知レベルを用いて受信信号強度を判定し、受信信号強度がOFDM CS検知レベル以上の信号を検知してOFDM通信方式に従って復調する。同様に、OFDM処理部212は、無線LAN以外の信号についてはOFDM ED検知レベルを用いて受信信号強度を判定し、受信信号強度がOFDM ED検知レベル以上の信号を検知してOFDM通信方式に従って復調する。
【0018】
次に、制御部205の機能構成について説明する。制御部205は、1つ以上のCPU(Central Processing Unit)、または、MPU(Micro Processing Unit)により構成され、メモリ206に記憶されたプログラムを実行することにより通信装置101全体を制御する。
図3に、制御部205における機能構成例を示す。制御部205は、その機能構成の一例として、検知レベル設定部301、パラメータ設定部302、判定部303、データ管理部304、通信制御部305、入出力制御部306、およびタイマ部307を有する。
【0019】
検知レベル設定部301は、ベースバンド処理部203に対して、前述したDSSS CS検知レベル、DSSS ED検知レベル、OFDM CS検知レベル、およびOFDM ED検知レベルを設定する。パラメータ設定部302は、ベースバンド処理部203や媒体アクセス管理部204における各種処理に関するパラメータを設定する。判定部303は、DSSS処理部211とOFDM処理部212の復調結果に基づいて、通信チャネルにおいて、周辺にDSSS方式またはOFDM通信方式で通信する他の通信装置が存在するか否かを判定する。データ管理部304は、メモリ206に格納されるデータの管理を行う。通信制御部305は、通信インターフェース207における通信処理を制御する。入出力制御部306は、表示部208への表示制御を行うほか、入力部209により入力されたコマンド等を、通信装置101の各構成要素に伝達する。タイマ部307は、計時処理を行う。
【0020】
(処理の流れ)
続いて、本実施形態における通信装置101の動作について、
図4を参照して説明する。
図4は、第1の実施形態における通信装置101の処理のフローチャートである。
図4に示すフローチャートは、制御部205がメモリ206に記憶されている制御プログラムを実行し、情報の演算および加工並びに各ハードウェアの制御を実行することにより実現され得る。
【0021】
まず、S401において、検知レベル設定部301は、DSSS ED検知レベルを-70dBm、OFDM ED検知レベルを-70dBm、OFDM CS検知レベルを-82dBmに設定する。続いて、S402において、検知レベル設定部301は、DSSS CS検知レベルを-82dBmに設定する。S401とS402における各種検知レベルの設定後、S403において、通信装置101の制御部205は、第1の所定時間(例えば1秒)の間に受信した信号を、周辺通信情報としてメモリ206に保持する。この第1の所定時間は、タイマ部307により計時される。第1の所定時間の経過後に、S404において、通信装置101の制御部205は、周囲にDSSS方式で通信する通信装置が存在するか否かを判定する。具体的には、判定部303が、第1の所定時間の間に受信された信号がDSSS処理部211により正しく復調されたか否かを判定する。判定部303により、DSSS処理部211により正しく復調されたと判定された場合、すなわち、周囲にDSSS方式で通信する通信装置が存在すると判定された場合(S404でYes)、処理はS402に戻る。
【0022】
一方、判定部303により、DSSS処理部211により正しく復調されなかったと判定された場合、すなわち、周囲にDSSS方式で通信する通信装置が存在しないと判定された場合(S404でNo)、処理はS405へ進む。第1の所定時間の間に何ら信号が受信されなかった場合も、周囲にDSSS方式で通信する通信装置が存在しないと判定され(S404でNo)、S405へ進む。S405では、検知レベル設定部301は、DSSS処理部211に対して、DSSS CS検知レベルを-70dBmに設定する。すなわち、DSSS CS検知レベルが-82dBmから-70dBmに緩和される。これにより、DSSS処理部211が、従来誤検知していた、例えば-75dBmの干渉信号を検知しなくなることにより、誤検知による送信停止確率が効果的に低減される。
【0023】
S405でDSSS CS検知レベルが-70dBに設定された後、S406において、制御部205は、第2の所定時間(例えば10秒)経過したかどうかを確認する。第2の所定時間は、タイマ部307により計時される。第2の所定時間の経過後(S406でYes)、処理はS402に戻る。これにより、通信装置101の周辺に新たにDSSS方式で通信する装置が入ってきた場合でも、その装置を認識でき、通信装置101と当該装置との共存が可能となる。
【0024】
このように、本実施形態における通信装置101は、通信装置101の周辺にDSSS方式で通信する装置が存在しない場合に、DSSS CS検知レベルを緩和する。これにより、例えば、通信装置101のDSSS処理部211が、本来はDSSS ED検知レベルを用いて受信信号強度を判定すべきところ、誤ってDSSS CS検知レベルを用いてしまう場合であっても、誤検知を防げる。これにより、通信装置101による送信停止の確率が高くなることを抑制でき、送信するスループットの低下を回避することが可能となる。なお、本実施形態ではDSSS CS検知レベルを制御することについて説明したが、OFDM CS検知レベルを制御することも可能である。すなわち、周囲にOFDM方式で通信する通信装置が存在しない場合に、OFDM CS検知レベルを上げてもよい。
【0025】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、通信装置101の周辺にDSSS方式で通信する装置が存在しない場合に、DSSS CS検知レベルを緩和する形態について説明した。本実施形態では、通信装置101が2種類のOFDM通信方式で通信可能である場合に、当該2種類のOFDM信号の一方の通信方式で通信する他の装置が周辺に存在しない場合の制御について説明する。なお、以下において、第1の実施形態と共通の事項については、説明を省略する。
【0026】
(通信装置101の構成)
本実施形態における通信装置101の構成を、
図5を参照して説明する。
図5は、本実施形態における通信装置101の構成例を示す図である。第1の実施形態と同様に、ここでは、本実施形態に関連する処理である受信処理に関する構成について説明する。なお、第1の実施形態において説明した
図2と比較して、ベースバンド処理部203の構成が異なる。本実施形態におけるベースバンド処理部203は、第1のOFDM処理部511と第2のOFDM処理部512とED検知部513を有する。第1のOFDM処理部511は、第1のOFDM通信方式に基づく信号として、サブキャリア間隔312.5kHz(例えばIEEE802.11ac)のOFDM信号(第1のOFDM信号)を復調することができる。また、第2のOFDM処理部512は、第2のOFDM通信方式に基づく信号として、サブキャリア間隔78.125kHz(例えばIEEE802.11ax)OFDM信号(第2のOFDM信号)を復調することができる。
【0027】
制御部205の機能構成は、第1の実施形態において説明した
図3と同様である。ただし、検知レベル設定部301は、第1のOFDM処理部511、第2のOFDM処理部512、ED検知部513のそれぞれに対して、第1OFDM CS検知レベル、第2OFDM CS検知レベル、ED検知レベルを設定する。第1のOFDM処理部511は、第1OFDM CS検知レベルと受信信号強度を比較し、受信信号強度が第1OFDM CS検知レベル以上の信号を検知して第1のOFDM通信方式に従って復調する。また、第2のOFDM処理部512は、第2OFDM CS検知レベルと受信信号強度を比較し、受信信号強度が第2OFDM CS検知レベル以上の信号を検知して第2のOFDM通信方式に従って復調する。ED検知部513は、無線LAN以外の信号についてED検知レベルを用いて受信信号強度を判定し、受信強信号度がED検知レベル以上の信号を検知する。
【0028】
(処理の流れ)
続いて、本実施形態における通信装置101の動作について、
図6を参照して説明する。
図6は、第2の実施形態における通信装置101の処理のフローチャートである。
図4に示すフローチャートは、制御部205がメモリ206に記憶されている制御プログラムを実行し、情報の演算および加工並びに各ハードウェアの制御を実行することにより実現され得る。
【0029】
まず、S601において、検知レベル設定部301は、ED検知レベルを-70dBm、第1OFDM CS検知レベルを-82dBm、第2OFDM CS検知レベルを-82dBmに設定する。各種検知レベルの設定後、通信装置101の制御部205は、第1の所定時間(例えば1秒)の間に受信した信号を、周辺通信情報として保持する。第1の所定時間は、タイマ部307により計時される。第1の所定時間の経過後に、S602において、通信装置101の制御部205は、周囲に第1のOFDM通信方式で通信する通信措置が存在するか否かを判定する。具体的には、判定部303が、第1のOFDM処理部511と第2のOFDM処理部512で復調された、第1の所定時間の間に受信された信号を解析することにより、当該判定を行う。
【0030】
S602の判定の一例を、
図7(A)と
図7(B)を参照して説明する。
図7(A)は、第1のOFDM処理部511による復調により得られる第1のOFDM信号のパケット構成例を示す。
図7(B)は、第2のOFDM処理部512による復調により得られる第2のOFDM信号のパケットの構成例である。
図7(A)から分かるように、第1OFDM信号のパケットは、第1のOFDM信号用プリアンブルとペイロードから構成される。また、
図7(B)から分かるように、第2のOFDM信号のパケットは、第1のOFDM信号用プリアンブル、第2のOFDM信号用プリアンブル、およびペイロードから構成される。したがって、第1のOFDM処理部511と第2のOFDM処理部512により復調されたOFDM信号の構成が
図7(A)の構成である場合、判定部303は、第1のOFDM通信方式で通信する通信装置が存在すると判定する。
【0031】
また、S602の判定の別の例として、判定部303は、第1のOFDM処理部511と第2のOFDM処理部512で復調された、無線LANのマネージメントフレームの中にある情報エレメント内の情報を用いる。例えば、判定部303は、当該情報エレメント内に、第2のOFDM通信方式に関する情報を示すID=255が存在しない場合に、第1のOFDM通信方式で通信する通信装置が存在すると判断する。
【0032】
S602において、第1のOFDM信号方式で通信する通信装置が存在しないと判定された場合(S602でNo)、処理はS604へ進む。S604において、検知レベル設定部301は、第1OFDM CSレベルを-62dBmに、ED検知レベルを-62dBmに設定する。これにより、第1のOFDM処理部511の誤検知による送信停止確率の低減が可能となる。続いて、S606で制御部205が第2の所定時間(例えば5秒)経過したかどうかを確認する。第2の所定時間は、タイマ部307により計時される。第2の所定時間の経過後(S606でYes)、処理はS601に戻る。
【0033】
S602において、第1のOFDM信号方式で通信する通信装置が存在すると判定された場合(S602でYes)、処理はS603へ進む。S603において、判定部303は、第1のOFDM通信方式で通信する通信装置が、通信装置101が所属するネットワーク105中に存在するか否かを判定する。具体的には、判定部303は、第1のOFDM処理部511と第2のOFDM処理部512で復調された信号を解析することにより、当該判定を行う。例えば、判定部303は、復調された信号に含まれる、所属ネットワークを識別する情報が、ネットワーク105に対応する場合に、第1のOFDM信号を使用する装置が、ネットワーク105中に存在すると判断する。所属ネットワークを識別する情報の一例はBSSID(Basic Service Set Identifier)である。また、S603の判定の別の例として、判定部303は、復調された信号に含まれる、所属ネットワークのグループに関する情報を用いる。判定部303は、所属ネットワークのグループに関する情報が、ネットワーク105のグループに関する情報と一致する場合に、第1のOFDM信方式で通信する通信装置が、ネットワーク105中に存在すると判定する。
【0034】
第1のOFDM通信方式で通信する通信装置が、ネットワーク105中に存在すると判定された場合(S603でYes)、処理はS601へ戻る。一方、第1のOFDM通信方式で通信する通信装置が、ネットワーク105中に存在しない、すなわち、ネットワーク105と隣接するネットワーク内に第1のOFDM信号を使用する装置が存在すると判定された場合(S603でNo)、処理はS605へ進む。S605では、検知レベル設定部301は、第1OFDM CS検知レベルを、S601で設定していた-82dBmから変更し、-70dBmに設定し、キャリアセンス感度を緩和させる。これにより、隣接ネットワークからの第1のOFDM信号のキャリアセンスによるネットワーク105におけるスループット低下の軽減が可能となる。S605で検知レベル設定部301が第1OFDM CS検知レベルを-70dBmに設定後、S607で、制御部205が第3の所定時間(例えば5秒)経過したかどうかを確認する。第3の所定時間は、タイマ部307により計時される。第3の所定時間の経過後(S607でYes)、処理はS601に戻る。
【0035】
このように、本実施形態における通信装置101は、第1のOFDM処理部511の誤検知による送信停止確率の低減と、隣接ネットワークからの第1のOFDM信号のキャリアセンス感度の緩和を行う。これにより、通信装置101が所属するネットワークのスループット低下の軽減が可能となる。
【0036】
なお、上記実施形態においては、2つの通信方式による信号を受信および復調可能な通信装置を通信装置101として想定したが、通信装置101は、1つまたは3つ以上の通信方式による信号を受信および復調可能な通信装置であってもよい。
【0037】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0038】
201 アンテナ部、202 高周波処理部、203 ベースバンド処理部、204 媒体アクセス管理部、205 制御部、206 メモリ、207 通信インターフェース、208 表示部、209 入力部