(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20221124BHJP
【FI】
A63B53/04 A
(21)【出願番号】P 2018055822
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】北川 知憲
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-058461(JP,A)
【文献】米国特許第07258624(US,B2)
【文献】登録実用新案第3106250(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0272526(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース部、ソール部、クラウン部を備えるウッド型のゴルフクラブヘッドであって、
前記クラウン部の一部を構成するクラウン部材を有し、
前記クラウン部は、開口を有し、
前記クラウン部材は、第1部材と、第2部材と、を有し、前記開口を閉じており、
前記第1部材は、シート状の繊維強化樹脂を複数枚積層した積層体であり、
複数枚のシート状の前記繊維強化樹脂は、炭素繊維を一方向に引きそろえてエポキシ樹脂を含侵させた
炭素繊維強化樹脂シート
と、ガラス繊維と樹脂との複合材料であるガラス繊維強化樹脂シートと、を含み、
前記第2部材は金属線からなり、
前記第2部材は、複数枚のシート状の前記繊維強化樹脂の間に挟み込まれ、
前記ガラス繊維強化樹脂シートは前記第2部材よりも前記ゴルフクラブヘッドの外部側に配置され、前記炭素繊維強化樹脂シートは前記第2部材よりも前記ゴルフクラブヘッドの内部側に配置され、
前記金属線は前記ゴルフクラブヘッドの外部から視認可能であり、
前記第2部材はトウ-ヒール方向に延びることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記クラウン部材は前記第2部材を複数有し、
複数の前記第2部材は互いが概ね平行であり、それぞれがフェース-バック方向に隣接していることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
隣接する前記第2部材の間隔は概ね一律であることを特徴とする請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記金属線の断面形状は楕円を含む円形、かつ最も小さい幅が0.1mm~2.0mmであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記金属線は、トウ側とヒール側に端を持ち、隣接する金属線同士は非連続であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のゴルフクラブヘッドでは、ゴルフボールの打撃性能を向上させるため、クラウン部が撓みやすいように考慮されている。一方で、クラウン部の強度も重要であり、クラウン部の強度を向上させるために、例えば、クラウン部を構成する材料として繊維強化樹脂等が用いられている。
【0003】
しかしながら、クラウン部を構成する材料やその配置の仕方によっては、クラウン部の強度を向上した結果、クラウン部の撓みを阻害する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4759333号
【文献】特開2005-137819号公報
【文献】特許第4403084号
【文献】特開2000-229135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、クラウン部の撓みを阻害することなくクラウン部の強度を向上させたゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本ゴルフクラブヘッドは、フェース部、ソール部、クラウン部を備えるウッド型のゴルフクラブヘッドであって、前記クラウン部の一部を構成するクラウン部材を有し、前記クラウン部は、開口を有し、前記クラウン部材は、第1部材と、第2部材と、を有し、前記開口を閉じており、前記第1部材は、シート状の繊維強化樹脂を複数枚積層した積層体であり、複数枚のシート状の前記繊維強化樹脂は、炭素繊維を一方向に引きそろえてエポキシ樹脂を含侵させた炭素繊維強化樹脂シートと、ガラス繊維と樹脂との複合材料であるガラス繊維強化樹脂シートと、を含み、前記第2部材は金属線からなり、前記第2部材は、複数枚のシート状の前記繊維強化樹脂の間に挟み込まれ、前記ガラス繊維強化樹脂シートは前記第2部材よりも前記ゴルフクラブヘッドの外部側に配置され、前記炭素繊維強化樹脂シートは前記第2部材よりも前記ゴルフクラブヘッドの内部側に配置され、前記金属線は前記ゴルフクラブヘッドの外部から視認可能であり、前記第2部材はトウ-ヒール方向に延びることを要件とする。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、クラウン部の撓みを阻害することなくクラウン部の強度を向上させたゴルフクラブヘッドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する図である。
【
図2】本実施の形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施の形態の説明を行う。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は、本実施の形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する図であり、
図1(a)は平面図、
図1(b)は右側面図である。
図1において、矢印d
1はトウ-ヒール方向(左右方向)を、矢印d
2はトップ-ソール方向(上下方向)を、矢印d
3はフェース-バック方向(前後方向)を示している。
【0011】
図2は、本実施の形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する分解図であり、
図2(a)はヘッド本体部材10及びクラウン部材20を上面側から視た斜視図、
図2(b)はヘッド本体部材10及びクラウン部材20の右側面図である。
【0012】
図1及び
図2に示すゴルフクラブヘッド1は、ウッド型のゴルフクラブヘッドであって、例えばドライバであるが、ユーティリティやフェアウェイウッドであってもよい。また、ゴルフクラブヘッド1は、複数の部品を接合して組み立てることができる。以下、ゴルフクラブヘッド1について詳説する。
【0013】
ゴルフクラブヘッド1は、ヘッド本体部材10と、ヘッド本体部材10に固着されたクラウン部材20とを有する中空構造体である。なお、中空構造体の内側の面をヘッド内面、外側の面をヘッド外面と称する場合がある。
【0014】
ヘッド本体部材10は、フェース部11と、クラウン部12と、ソール部13と、サイド部14と、ホゼル部15とを有する。
【0015】
フェース部11は、打撃面となるフェース面を備えた部分である。クラウン部12は、クラウン部材20と共にゴルフクラブヘッド1の上部を形成する部分である。クラウン部12とクラウン部材20の詳細な構造については後述する。ソール部13は、ゴルフクラブヘッド1の底部を形成する部分である。サイド部14は、クラウン部12とソール部13とを繋ぐ部分である。ホゼル部15は、シャフトと連結される部分である。
【0016】
ヘッド本体部材10のクラウン部12は、開口121と、開口121を囲むように形成された段差部122とを有する。段差部122は、ヘッド外面よりも一段下がったところに位置しており、クラウン部材20の外縁部を位置決めし、保持し、固着することができる。クラウン部材20は、ヘッド本体部材10のクラウン部12の段差部122に接着剤等により取り付けられ、開口121を閉じる。
【0017】
ヘッド本体部材10は、例えば、鋳造、鍛造、3Dプリンタ、その他の成形方法等により作製することができる。ヘッド本体部材10の材料としては、例えば、金属材料、非金属材料、金属材料よりも低比重の材料等を用いることができる。具体的な材料としては、例えば、チタン、チタン合金、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄系金属、マグネシウム、マグネシウム合金、繊維強化樹脂等が挙げられる。
【0018】
クラウン部材20は、樹脂部30と、金属線40とを有し、クラウン部12の一部を構成している。樹脂部30は、繊維強化樹脂を有している。なお、樹脂部30は本発明に係る第1部材の代表的な一例であり、金属線40は本発明に係る第2部材の代表的な一例である。
【0019】
ここで、繊維強化樹脂とは、補強材となる繊維と樹脂との複合材料である。繊維強化樹脂を構成する繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維等が挙げられる。又、繊維強化樹脂を構成する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0020】
樹脂部30は、シート状の繊維強化樹脂を複数枚積層して加圧しながら加熱することにより成形してもよいし、強化繊維を一方向に引きそろえて樹脂を含浸させたUD(Uni Direction)プリプレグの層を積層中に含んでいてもよい。また、応力を分散させるために、繊維方向が90°の繊維強化樹脂と繊維方向が0°の繊維強化樹脂とを交互に積層した構造としてもよい。繊維方向が0°とは、繊維方向がトウ-ヒール方向を向いていることを指す。また、繊維方向が90°とは、繊維方向がフェース-バック方向を向いていることを指す。
【0021】
樹脂部30は、繊維強化樹脂に加えて他の部材を有してもよい。他の部材としては、補強材となる繊維を有していない樹脂等が挙げられる。
【0022】
金属線40は、ゴルフクラブヘッド1の外部から視認可能な状態で樹脂部30に封入されている。金属線40は、トウ-ヒール方向に延びている。ここで、トウ-ヒール方向に延びているとは、金属線40がクラウン部材20内のトウ側の任意の点とヒール側の任意の点とを結んでいることを言う。但し、金属線40はおおよそ
図1(a)に示すd
1の方向を向くが、必ずしもd
1と完全に平行である必要はない。
【0023】
金属線40としては、例えば、結晶合金や非結晶合金が挙げられ、具体例としてチタンニッケルが挙げられる。金属線の断面形状は例えば楕円を含む円形または多角形状であり、断面の最も小さい幅が例えば0.1mm~2.0mm程度である。
【0024】
複数の金属線40を、ゴルフクラブヘッド1の外部から視認可能な状態で樹脂部30に封入してもよい。この場合、複数の金属線40は、それぞれがトウ-ヒール方向に延びるように配置することができる。また、複数の金属線40は、互いが概ね平行であり、それぞれがフェース-バック方向に隣接するように配置することができる。
【0025】
ここで、概ね平行とは、ゴルフクラブヘッド1を水平面に基準のライ角及び基準のロフト角通りに接地し、水平面の法線方向から視たときに、隣接する金属線の間隔の最大値と最小値との差が1mm以内であることを言う。なお、水平面の法線方向から視たときに各金属線が直線状に視える必要はなく、曲線状に視えてもよい。或いは、直線状に視えるものと曲線状に視えるものとが混在してもよい。
【0026】
隣接する金属線40の間隔Pは、概ね一律である。ここで、概ね一律とは、n本目の金属線40とn+1本目の金属線40との間隔がnの値に依らず誤差±1mm以内であることを言う(n:自然数)。
【0027】
クラウン部材20は、例えば、樹脂部30となる複数のプリプレグの間に金属線40となる複数の金属線を挟み、加熱しながら加圧することで所定の形状に成形することができる。必要に応じ、クラウン部材20に塗装等が施されてもよい。また、必要に応じ、クラウン部材20の表面全体に研磨、機械加工等の処理が行われていてもよい。
【0028】
このように、ゴルフクラブヘッド1のクラウン部材20において、金属線40をトウ-ヒール方向に配置することにより、ボール打撃時にクラウン部12のフェース-バック方向の撓みや反発を阻害することなく、クラウン部12の強度を向上させることができる。
【0029】
なお、クラウン部材20において金属線40をフェース-バック方向に配置することは、金属線40がボール打撃時にクラウン部12の撓みや反発を阻害する方向に働くため、好ましくない。又、金属線40に代えて金属シートを用いることも考えられるが、金属シート自体が重く、ゴルフクラブヘッド1全体の重量増加を招くため、好ましくない。
【0030】
また、ゴルフクラブヘッド1のクラウン部材20において、外部から視認可能な状態で金属線40をトウ-ヒール方向に配置することにより、金属線40がアライメントマークとして機能するため、打者は飛球線方向を認識しやすくなる。すなわち、ゴルフクラブヘッド1を水平面に基準のライ角及び基準のロフト角通りに接地してアドレスした際に、金属線40が打者から飛球線方向と垂直になるように視認できるため、打者は飛球線方向に対してゴルフクラブヘッド1を精度よくアライメントすることができる。
【0031】
なお、クラウン部12が外側に凸の曲面である上に打者はゴルフクラブヘッド1をライ角の分傾けて構えるので、金属線40をフェース-バック方向に配置するより、トウ-ヒール方向に配置する方が、打者は構えやすくなる。
【0032】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ゴルフクラブヘッド
10 ヘッド本体部材
11 フェース部
12 クラウン部
13 ソール部
14 サイド部
15 ホゼル部
20 クラウン部材
30 樹脂部
40 金属線
121 開口
122 段差部