(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】回転規制機構、回転アクチュエータおよびロボット
(51)【国際特許分類】
F16D 63/00 20060101AFI20221124BHJP
B25J 17/00 20060101ALI20221124BHJP
F16D 7/02 20060101ALI20221124BHJP
F16D 43/21 20060101ALI20221124BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
F16D63/00 H
B25J17/00 E
F16D63/00 Z
F16D7/02 A
F16D43/21
B60T1/06 G
(21)【出願番号】P 2018081818
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧上 孝太
(72)【発明者】
【氏名】松田 浩一
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-189081(JP,A)
【文献】特開2012-192765(JP,A)
【文献】特開2002-122160(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015200737(DE,A1)
【文献】特開昭60-022443(JP,A)
【文献】特開2011-058578(JP,A)
【文献】特開2014-020515(JP,A)
【文献】特開2017-019309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
B60T 1/00-7/10
F16D 1/00-9/10
F16D 41/00-47/06
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動側の回転軸に取り付けられ該回転軸と一体に回転する規制部材と、
前記規制部材と係合することで前記回転軸の回転を停止させる係合部と、
前記回転軸および前記規制部材の間の保持力を調整可能に前記回転軸に対して前記規制部材を保持する保持部と
を備え
、
前記規制部材は、円板状であり、外周部に前記係合部と係合する規制部を備え、
前記規制部は、前記外周部から前記規制部材の径方向の外側に向けて突設され前記規制部材の周方向に所定間隔をあけて配置された2つの凸部の間に形成される凹部を備え、
前記凹部は、前記規制部材の前記径方向の中心線上に形成され、
前記凸部は、前記規制部材の前記径方向の中心線に対して接線方向にずれている、
回転規制機構。
【請求項2】
前記保持部は、弾性部材を備え、前記弾性部材の弾性力の調整により前記保持力が調整される、請求項1に記載の回転規制機構。
【請求項3】
前記弾性部材は、板バネである、請求項2に記載の回転規制機構。
【請求項4】
前記保持部は、前記規制部材の径方向と交わる方向から前記弾性部材により前記規制部材を挟み込む、請求項2または3に記載の回転規制機構。
【請求項5】
前記規制部材は、円板状であり、外周部に前記係合部と係合する規制部を備え、
前記規制部は、前記外周部から前記規制部材の径方向と交わる方向に向けて突設され前記規制部材の周方向に所定間隔をあけて配置された2つの凸部の間に形成される凹部を備え、
前記凸部は、前記規制部材の前記径方向の中心線に対して接線方向にずれている、請求項1~
4のいずれか1つに記載の回転規制機構。
【請求項6】
前記規制部は、前記規制部材の前記周方向に等間隔で複数配置される、請求項
4又は5に記載の回転規制機構。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1つに記載の回転規制機構と、
前記回転軸を出力軸とする駆動源と
を備える、回転アクチュエータ。
【請求項8】
請求項
7に記載の回転アクチュエータと、
前記回転アクチュエータが搭載される関節部と
を備える、ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転規制機構、回転アクチュエータおよびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多関節ロボットの関節部において停止しているロータの回転を規制する回転規制機構には、たとえば、ロータに固定される略円環状の回転側規制部材と、回転側規制部材と係合してロータの周方向における回転側規制部材の移動を規制する固定側規制部材と、固定側規制部材をロータの軸方向に移動させる駆動機構とを備えるものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような回転規制機構では、固定側規制部材が回転側規制部材と係合する場合に回転側規制部材に対して所定以上のトルクがかかると、回転側規制部材からロータに所定以上のトルクが伝達され、ロータから駆動側にまで所定以上のトルクが伝達されてしまい、駆動側が破損するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、駆動側の破損を抑えることができる回転規制機構、回転アクチュエータおよびロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る回転規制機構は、規制部材と、係合部と、保持部とを備える。前記規制部材は、駆動側の回転軸に取り付けられ該回転軸と一体に回転する。前記係合部は、前記規制部材と係合することで前記回転軸の回転を停止させる。前記保持部は、前記回転軸および前記規制部材の間の保持力を調整可能に前記回転軸に対して前記規制部材を保持する。前記規制部材は、円板状であり、外周部に前記係合部と係合する規制部を備える。前記規制部は、前記外周部から前記規制部材の径方向の外側に向けて突設され前記規制部材の周方向に所定間隔をあけて配置された2つの凸部の間に形成される凹部を備える。前記凹部は、前記規制部材の前記径方向の中心線上に形成される。前記凸部は、前記規制部材の前記径方向の中心線に対して接線方向にずれている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、駆動側の破損を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るロボットの説明図である。
【
図2A】
図2Aは、実施形態に係る回転アクチュエータの説明図(その1)である。
【
図2B】
図2Bは、実施形態に係る回転アクチュエータの説明図(その2)である。
【
図3A】
図3Aは、実施形態に係る回転規制機構の非規制状態を示す斜視図である。
【
図3B】
図3Bは、実施形態に係る回転規制機構の規制状態を示す斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、実施形態に係る規制部材および保持部を示す斜視図(その1)である。
【
図4B】
図4Bは、実施形態に係る規制部材および保持部を示す斜視図(その2)である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る規制部材を示す側面図である。
【
図6A】
図6Aは、実施形態に係る規制部材に対する係合部の係合状態の説明図(その1)である。
【
図6B】
図6Bは、実施形態に係る規制部材に対する係合部の係合状態の説明図(その2)である。
【
図7】
図7は、変形例に係る回転規制機構を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、変形例に係る規制部材を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、変形例に係る規制部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る回転規制機構、回転アクチュエータおよびロボットについて図面を参照して説明する。なお、以下で説明する実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0010】
<ロボットの概要>
まず、
図1を参照して実施形態に係るロボット10の概要について説明する。
図1は、実施形態に係るロボット10の説明図であり、ロボット10を示す正面図である。ロボット10は、後述する関節部(ロボットモジュールともいう)12を複数備えるいわゆる多関節ロボットであり、たとえば、製品の組立ラインや製造ラインに設置される。
【0011】
なお、
図1には、説明の便宜上、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している。かかる直交座標系は、他の図においても示している場合がある。
【0012】
図1に示すように、ロボット10は、ベース部11と、複数の関節部12と、複数のアーム部13と、ハンド部14とを備える。なお、
図1には、ロボット10が、6つの関節部12と、2つのアーム部13とを備える例を示している。
【0013】
6つの関節部12は、ロボット10における動力伝達の上流側となるベース部11から下流側となるハンド部14までの間に、第1関節部12A、第2関節部12B、第3関節部12C、第4関節部12D、第5関節部12E、第6関節部12Fの順に配置される。また、2つのアーム部13は、ロボット10における動力伝達の上流側に第1アーム部13Aが配置され、下流側に第2アーム部13Bが配置される。
【0014】
ベース部11は、第1関節部12Aを支持することで、ロボット10を全体的に支持する。6つの関節部12のうち、第1関節部12Aは、ベース部11に対して仮想軸である軸AX1の軸まわりに回転する。第1関節部12Aは、X-Y平面において回転(旋回ともいう)する。第2関節部12Bは、第1関節部12Aに連結され、第1関節部12Aに対して軸AX2の軸まわりに回転する。
【0015】
また、第2関節部12Bは、第1アーム部13Aの一端部と連結される。第3関節部12Cは、第1アーム部13Aの他端部と連結される。第4関節部12Dは、第3関節部12Cに連結され、第3関節部12Cに対して仮想軸である軸AX3の軸まわりに回転する。また、第4関節部12Dは、第2アーム部13Bの一端部と連結される。
【0016】
第5関節部12Eは、第2アーム部13Bの他端部と連結される。第6関節部12Fは、第5関節部12Eに連結され、第5関節部12Eに対して仮想軸である軸AX4の軸まわりに回転する。第6関節部12Fには、ハンド部14が連結される。ハンド部14は、軸AX5の軸まわりに回転する。
【0017】
ハンド部14は、ロボット10の先端部(エンドエフェクタ)であり、たとえば、部品を把持する把持装置である。ハンド部14は、ロボット10の用途に応じて付け替え可能である。ハンド部14としては、把持装置の他、塗布装置や溶接装置などがある。なお、6つの関節部12によるロボット10の回転構成は上記に限定されない。ロボット10は、たとえば、第2関節部12Bと第1アーム部13Aとの間や、第4関節部12Dと第2アーム部13Bとの間が回転可能に構成されてもよい。
【0018】
また、6つの関節部12は、回転アクチュエータ20(
図2A参照)をそれぞれ備える。言い換えると、回転アクチュエータ20は、関節部12に搭載される。ロボット10は、回転アクチュエータ20によって多軸動作を行うことができる。
【0019】
<回転アクチュエータ>
次に、
図2Aおよび
図2Bを参照して回転アクチュエータ20について説明する。
図2Aおよび
図2Bは、実施形態に係る回転アクチュエータ20の説明図である。なお、
図2Aおよび
図2Bには、6つの関節部12のうち、たとえば、第4関節部12DにおけるX-Z面の断面を示している。また、
図2Bにおいては、固定部24と回転部25とが明確になるように、両者で異なる種類の斜線を付している。このため、
図2Bにおいて斜線は必ずしも断面を示すものではない。
【0020】
図2Aに示すように、回転アクチュエータ20は、モータ21と、減速機30と、回転規制機構40とを備える。モータ21は、回転アクチュエータ20の駆動源であり、X方向に延びた出力軸22を備える。出力軸22は、減速機30に動力を伝達する回転軸23に対して同軸で連結される。
【0021】
減速機30は、たとえば、径方向の中心に貫通孔が形成された中空減速機である。減速機30は、たとえば、波動歯車装置であり、波動発生部31と、可撓性外歯歯車32と、固定内歯歯車33とを備える。波動発生部31は、モータ21の出力軸22となる回転軸23の外周に設けられる。
【0022】
波動発生部31は、楕円状カムの外周にボールベアリング311が組み込まれた部品である。波動発生部31は、モータ21の出力軸22(回転軸23)の外周に取り付けられる。波動発生部31は、ボールベアリング311の内輪が楕円状カムに固定される。
【0023】
可撓性外歯歯車32は、入力側が波動発生部31に取り付けられ、出力側が軸受35に取り付けられる。可撓性外歯歯車32は、開口端部の外周に歯を有する、たとえばカップ状の可撓性部品である。固定内歯歯車33は、減速機30のケーシング34に固定される。固定内歯歯車33は、内周に歯を有する、たとえばリング状の剛性部品である。
【0024】
減速機30においては、モータ21の出力軸22(回転軸23)から入力された回転動力が、波動発生部31、弾性外歯歯車32、固定内歯歯車33の順に減速されながら伝達され、軸受35から出力部36に向けて出力される。
図2Bに示すように、回転アクチュエータ20においては、固定部24に対して回転部25が回転軸23の軸まわりに回転する。
【0025】
なお、減速機30は、上記した波動歯車装置に限定されない。減速機30は、波動歯車装置以外の装置(たとえば、遊星歯車装置)でもよい。
【0026】
<回転規制機構>
次に、
図2A~
図6Bを参照して回転規制機構40について説明する。回転規制機構40は、たとえば、ロボット10(
図1参照)が動作を停止する場合に、回転アクチュエータ20を回転規制するために設けられる。
図2Aおよび
図2Bに示すように、回転規制機構40は、規制部材41と、係合部42と、保持部43とを備える。
【0027】
規制部材41は、回転アクチュエータ20の駆動側、すなわち、駆動源であるモータ21の出力軸22となる回転軸23に取り付けられ、回転軸23と一体に回転する。係合部42は、規制部材41と係合することで、回転軸23の回転を停止させる。係合部42は、たとえば、ソレノイドアクチュエータであり、Z方向に進退可能な突部421を備える。
【0028】
係合部42は、規制部材41に対して規制部材41の径方向の外側に配置される。また、係合部42は、規制部材41の規制状態において、規制部材41に向けて突部421を進出させる。
【0029】
保持部43は、回転軸23に対して規制部材41を保持する。保持部43は、回転軸23および規制部材41の間の保持力を調整可能に規制部材41を保持する。なお、規制部材41および保持部43の構成については、
図4Aおよび
図4Bを用いて後述する。
【0030】
図3Aは、実施形態に係る回転規制機構40の非規制状態を示す斜視図である。
図3Bは、実施形態に係る回転規制機構40の規制状態を示す斜視図である。
図3Aに示すように、回転規制機構40は、規制部材41の非規制状態では係合部42の突部421が規制部材41とは反対方向(Z負方向)に後退している。この場合、規制部材41は、回転軸23と一体に回転可能である。
【0031】
図3Bに示すように、回転規制機構40は、規制部材41の規制状態では係合部42の突部421が規制部材41の方向(Z正方向)に進出し、突部421が規制部材41の後述する規制部412と係合する。この場合、規制部材41は、回転規制されるとともに、回転軸23を回転規制する。
【0032】
図4Aおよび
図4Bは、実施形態に係る規制部材41および保持部43を示す斜視図である。なお、
図4Bは、X-Z面の断面を示している。
図4Aおよび
図4Bに示すように、規制部材41は、円板状であり、貫通孔411と、規制部412とを備える。貫通孔411は、規制部材41の中央部に形成される。また、貫通孔411は、回転軸23(
図2A参照)が挿通可能な径に形成される。
【0033】
規制部412は、規制部材41の外周部に設けられる。規制部412は、係合部42の突部421(
図3B参照)と係合する。規制部412は、2つの凸部413と、凹部414とを備える。2つの凸部413は、規制部材41の外周部から規制部材41の径方向の外側に向けて突設される。2つの凸部413は、規制部材41の周方向に所定間隔、すなわち、係合部42の突部421が進入可能な間隔をあけて配置される。
【0034】
凹部414は、2つの凸部413の間に形成される。凹部414は、係合部42の突部421が入り込むことで、突部421と係合する。これにより、規制部材41の周方向の回転を規制することができる。また、規制部412は、規制部材41の周方向に等間隔で複数配置される。図示の例では、規制部412は、規制部材41の外周部に90度の間隔(位相差)をあけて4つ配置される。なお、規制部412の詳細については、
図5~
図6Bを用いて後述する。
【0035】
図4Bに示すように、保持部43は、規制部材41を、規制部材41の径方向と交わる方向(回転軸23の軸方向)から挟み込み、回転軸23(
図2A参照)に保持する。保持部43は、止め輪431と、弾性部材432と、シム板433とを備える。止め輪431は、保持部43におけるX方向の最も外側に配置される。
【0036】
止め輪431は、回転軸23が挿通され、回転軸23の外周に形成された溝231に嵌ることで、回転軸23に固定される。かかる止め輪431が規制部材41を径方向と交わる方向から挟み込むことで、止め輪431を含む保持部43によって規制部材41を回転軸23に固定(保持)する。
【0037】
弾性部材432は、たとえば、円板状であり、厚さ方向(X方向)に弾性力を有する。弾性部材432は、板バネであることが好ましい。また、弾性部材432は、中央部に回転軸23が挿通可能な貫通孔を有する。シム板433は、保持部43におけるX方向の最も内側に配置される。シム板433は、たとえば、円板状であり、たとえば、金属製である。また、シム板433は、中央部に回転軸23が挿通可能な貫通孔を有する。
【0038】
保持部43は、弾性部材432の弾性力を調整することで、規制部材41の保持力を調整可能である。ここで、係合部42が規制部材41と係合した場合、規制部材41から回転軸23に伝達されるトルクが保持部43の保持力を上回ると、回転軸23に対して規制部材41が滑り、規制部材41は回転しなくなる。保持部43は、たとえば、シム板433の厚さを変更することで、弾性部材432を厚さ方向(X方向)に圧迫することで弾性部材432の弾性力を調整(強化)してもよいし、弾性係数の異なる複数の弾性部材432を用いることで弾性部材432の弾性力を調整してもよい。
【0039】
ここで、規制部材41における規制部412の詳細について説明する。
図5は、実施形態に係る規制部材41を示す側面図である。
図6Aおよび
図6Bは、実施形態に係る規制部材41に対する係合部42の係合動作の説明図である。なお、
図6Aおよび
図6Bには、
図5のA部における係合部42の突部421の係合動作を示している。また、
図5、
図6Aおよび
図6Bにおいて規制部材41は、矢線R1で示す方向に回転するものとする。
【0040】
図5に示すように、規制部材41は、外周部に90度の間隔(位相差)をあけて4つの規制部412を備える。
【0041】
規制部412は、規制部材41の径方向の中心線(Y方向の中心線L1およびZ方向の中心線L2)に対して平行にオフセットされている。
図5中の右方に配置された規制部412を例に説明すると、規制部412の2つの凸部413のうち、規制部材41の回転方向R1において後行する一方の凸部413aが中心線L1から接線Lt方向にずれている。また、2つの凸部413のうち、回転方向R1において先行する他方の凸部413bは、一方の凸部413aとは中心線L1を挟んで対称となるように接線Lt方向にずれている。
【0042】
図6Aに示すように、規制部412がオフセットされていることで、回転する規制部材41に対して係合部42の突部421が進出する場合、たとえば、突部421が凹部414から外れて回転方向前側の1つ目の凸部413の外側面に当接すると、規制部412がオフセットされていない場合に比べて凸部413の傾斜の度合いが大きい。
【0043】
この場合、
図6Aに示すように、突部421に作用する力Fは、図中水平方向の成分Faに加えて図中下向きの成分Fbが含まれる。また、係合部42の突部421は、規制部材41の回転規制のために突き出す場合、突き出す方向(進出方向)に常時力が働いている。突部421は、突き出す方向と反対方向(後退方向)に押されると後退側に移動するが、力が除かれると再び突き出す。このため、突部421は、回転する規制部材41の凸部413によって押し下げられ、1つ目の凸部413(他方の凸部413b)が通過した後に突き出して凹部414に入り込む。
【0044】
図6Bに示すように、突部421が凹部414に入り込むと、突部421は、2つ目の凸部413(一方の凸部413a)に対して面で当接する。この場合、突部421に作用する力Fは、図中水平方向の力である。なお、突部421に作用する力Fに図中下向きの成分が含まれるとしても微小である。
【0045】
このように、規制部41の凸部413が規制部材41の径方向の中心線L2から接線Lt方向にずれていることで、凹部414に入り込んだ係合部42の突部421との当接面積が増大する。
【0046】
以上説明したように、実施形態に係る回転規制機構40によれば、保持部43が保持力を調整可能に規制部材41を保持するため、回転軸23と一体に回転する規制部材41が係合部42と係合して規制部材41に所定以上のトルクがかかった場合に、保持部43の保持力を上回り、回転軸23に対して規制部材41が滑るようになり、回転軸23に所定以上のトルクが伝達されるのを防止することができる。
【0047】
これにより、回転軸23から駆動側、すなわち、駆動源であるモータ21に所定以上のトルクが伝達されるのを防止することができ、モータ21の破損を抑えることができる。
【0048】
また、弾性部材432の弾性力を調整することで保持部43の保持力が調整されるため、回転軸23および規制部材41の間の保持力を容易に調整することができる。また、弾性部材432が板バネであるため、保持部43の弾性部材432を簡素な構成とすることができる。また、保持部43が規制部材41の径方向と交わる方向から弾性部材432により規制部材41を挟み込むため、規制部材41を確実に保持することができる。
【0049】
また、規制部412の凹部414に係合部42の突部421が入り込むことで、回転軸23の回転を停止させることができる。この場合、規制部412の凸部413が規制部材41の径方向の中心線L2から接線Lt方向にずれているため、凹部414に入り込んだ係合部42の突部421との当接面積を増大させることができ、制動力Faを向上させることができ、また、応力の集中を緩和して突部421にかかる負荷を低減することができる。これにより、規制部材41および係合部42の破損を抑えることができる。
【0050】
また、係合部42が規制部材41の径方向から凹部414に入り込むため、たとえば、係合部42が規制部材41の径方向と直交する方向から入り込む場合に比べて全体の高さ(X方向)を抑えることができる。また、2つの凸部413で係合部42の突部421を規制することで、規制部材41の周方向における戻りを規制するとともに、規制部材41が左右のいずれに回転する構成であっても対応可能となる。
【0051】
また、規制部412が規制部材41の周方向に複数配置されることで回転している規制部材41に対して規制部412の凹部414に係合部42の突部421が入り込むまでの間隔が短いため、係合部42が動作を開始してから回転軸23の回転を停止させるまでのタイムラグを抑えることができる。
【0052】
また、上記した実施形態に係る回転アクチュエータ20によれば、駆動側となるモータ21に所定以上のトルクが伝達されるのを防止することができ、モータ21の破損を抑えることができる。
【0053】
また、上記した実施形態に係るロボット10によれば、回転アクチュエータ20においてモータ21の破損を抑えることができるため、耐久性を向上させることができる。
【0054】
なお、上記した実施形態では、保持部43が弾性部材432を備える構成としているが、弾性部材432を省略した構成としてもよい。この場合、シム板433が規制部材41との間のスペーサとなり、規制部材41に所定以上のトルクがかかった場合に、規制部材41と回転軸23との動力伝達を遮断することができる。また、弾性部材432を残してシム板433を省略することも可能である。
【0055】
また、保持部43によって規制部材41を挟み込む場合に、弾性部材432をいずれか一方のみに備える構成としてもよい。このように構成しても、保持部43が保持力を調整可能に規制部材41を保持することができる。
【0056】
また、上記した実施形態では、ロボット10が多関節ロボットである場合の関節部12に回転規制機構40を備える構成としているが、ロボット10は、多関節ロボットに限定されない。たとえば、電動自動車などの車輪モジュールに回転規制機構40を用いることも可能である。
【0057】
<回転規制機構の変形例>
次に、
図7~
図9を参照して回転規制機構の変形例(回転規制機構50)について説明する。
図7は、変形例に係る回転規制機構50を示す斜視図である。
図8は、変形例に係る規制部材51を示す斜視図である。
図9は、変形例に係る規制部材51を示す側面図である。なお、
図9において規制部材51は、矢線R2で示す方向に回転するものとする。
【0058】
なお、変形例に係る回転規制機構50においては、規制部材51の構成が上記した回転規制機構40と異なる。このため、以下では、規制部材51について説明し、その他の箇所については同一または同等の箇所に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0059】
図7に示すように、変形例に係る回転規制機構50は、規制部材51と、係合部42と、保持部43とを備える。規制部材51は、後述する規制部512がX正方向を向くように配置される。
【0060】
図8に示すように、規制部材51は、円板状であり、貫通孔511と、規制部512とを備える。貫通孔511は、規制部材51の中央部に形成される。また、貫通孔511は、回転軸23(
図2A参照)が挿通可能な径に形成される。
【0061】
規制部512は、規制部材51の外周部に設けられる。規制部512は、係合部42の突部421(
図3B参照)と係合する。規制部512は、2つの凸部513と、凹部514とを備える。2つの凸部513は、規制部材51の外周部から規制部材41の径方向と交わる方向に向けて突設される。2つの凸部513は、規制部材51の周方向に所定間隔、すなわち、係合部42の突部421が進入可能な間隔をあけて配置される。
【0062】
凹部514は、2つの凸部513の間に形成される。係合部42の突部421が凹部514に入り込むことで、突部421と凸部513とが係合する。これにより、規制部材51の周方向の回転を規制することができる。また、規制部512は、規制部材51の周方向に等間隔で複数配置される。図示の例では、規制部512は、規制部材51の外周部に45度の間隔(位相差)をあけて8つ配置される。
【0063】
図9に示すように、規制部512は、規制部材51の径方向の中心線に対して平行にオフセットされている。
図9中の右方に配置された規制部512を例に説明すると、規制部512の2つの凸部513のうち、規制部材51の回転方向R2において後行する一方の凸部513aが中心線L1から接線方向にずれている。また、2つの凸部513のうち、回転方向R2において先行する他方の凸部513bは、一方の凸部513aとは中心線L1を挟んで対称となるように接線方向にずれている。
【0064】
このように、変形例に係る回転規制機構50においても、規制部材51の規制部512がオフセットされていることで、凹部514に入り込んでいる突部421(
図3B参照)は、凸部513に対して面で当接する。
【0065】
変形例に係る回転規制機構50によれば、規制部512の凹部514に係合部42の突部421(
図3B参照)が入り込むことで、回転軸23の回転を停止させることができる。
【0066】
この場合、規制部512の凸部513が規制部材51の径方向の中心線L1から接線方向にずれているため、凹部514に入り込んだ係合部42の突部421に対する当接面積を増大させることができ、制動力を向上させることができ、応力の集中を緩和して係合部にかかる負荷を低減することができる。これにより、規制部材51および係合部42の破損を抑えることができる。
【0067】
さらに、変形例に係る回転規制機構50によれば、規制部512の凸部513が回転軸23の軸方向における出力側(X正方向)に延出しているため、上記した実施形態に係る回転規制機構40と比べて小径化、すなわち、Z-Y平面における小型化が可能となる。
【0068】
また、係合部42が規制部材51の径方向から凹部514に入り込むため、たとえば、係合部42が規制部材51の径方向と直交する方向から入り込む場合に比べて全体の高さ(X方向)を抑えることができる。また、2つの凸部513(513a,513b)で係合部42の突部421を規制することで、規制部材41の周方向における戻りを規制するとともに、規制部材41が左右のいずれに回転する構成であっても対応可能となる。
【0069】
また、規制部512が規制部材51の周方向に複数配置されることで回転している規制部材51に対して規制部512の凹部514に係合部42の突部421が入り込むまでの間隔が短いため、係合部42が動作を開始してから回転軸23の回転を停止させるまでのタイムラグを抑えることができる。
【0070】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 ロボット、12 関節部、20 回転アクチュエータ、21 駆動源、22 出力軸、23 回転軸、40,50 回転規制機構、41,51 規制部材、412,512 規制部、413,513 凸部、414,514 凹部、42 係合部、43 保持部、432 弾性部材、L1,L2 中心線、Lt 接線