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特許7181722電解コンデンサ用電解液及び前記電解液を用いた電解コンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用電解液及び前記電解液を用いた電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/035 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
H01G9/035
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018145452
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2019033257
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2017151970
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内橋 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】田邊 史行
(72)【発明者】
【氏名】芝 隆宏
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-045482(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138578(WO,A1)
【文献】特開昭64-077110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルモノマー(a1)及び(メタ)アクリルモノマー(a2)を必須構成モノマーとする重合体(A)と、溶剤(B)と電解コンデンサ用電解質(C)とを含む電解コンデンサ用電解液であって、
前記(メタ)アクリルモノマー(a1)の溶解度パラメータと、溶剤(B)の溶解度パラメータとの差の絶対値が0.0(cal/cm1/2以上4.5(cal/cm1/2未満であり、前記(メタ)アクリルモノマー(a2)の溶解度パラメータと、溶剤(B)の溶解度パラメータとの差の絶対値が4.5(cal/cm1/2以上7.5(cal/cm1/2以下であり、前記溶剤(B)が分子量600以下のアルコールを含有し、前記重合体(A)を構成する(メタ)アクリルモノマー(a1)の重量割合が、前記重合体(A)を構成する(a1)と(a2)との合計重量を基準として50~99重量%であり、前記重合体(A)を構成する(メタ)アクリルモノマー(a2)の重量割合が、前記重合体(A)を構成する(a1)と(a2)との合計重量を基準として1~50重量%である電解コンデンサ用電解液(但し、無機イオン交換体を含有しない)。
【請求項2】
前記(メタ)アクリルモノマー(a1)が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミド基及び炭素数2~3のオキシアルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する(メタ)アクリルモノマーである請求項1に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項3】
前記重合体(A)の数平均分子量が1,000~100,000である請求項1又は2に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項4】
前記(メタ)アクリルモノマー(a1)の溶解度パラメータと、前記(メタ)アクリルモノマー(a2)の溶解度パラメータとの差の絶対値が、1.0~7.0(cal/cm1/2である請求項1~のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電解液を含む電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電解コンデンサ用電解液及び前記電解液を用いた電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、様々な電気製品及び電子製品において広く用いられており、その用途は電荷の蓄積、ノイズの除去及び位相の調整等多岐に渡っている。近年、電解コンデンサをより高い駆動電圧でも動作可能にするため、耐電圧向上のニーズが高まっており、様々な改良が試みられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ポリエチレングリコール-ポリアクリル酸グラフト共重合体又はポリプロピレングリコール-ポリアクリル酸グラフト共重合体を電解コンデンサ用電解液に含有させることで、耐電圧を向上させる技術が開示されている。
また、特許文献2でアクリル酸/メタクリル酸共重合体を電解コンデンサ用電解液に含有させることで、耐電圧を向上させる技術が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1及び2に記載の電解コンデンサでは、耐電圧が向上するものの不十分であった。
また、車載用途の電気製品に使用される電解コンデンサは高温環境下での使用が想定されるが、高温時に耐電圧が低下する問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-217067号公報
【文献】特開平7-45482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、耐電圧に優れ、高温状態でも耐電圧の低下を抑制できる電解コンデンサ用電解液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、(メタ)アクリルモノマー(a1)及び(メタ)アクリルモノマー(a2)を必須構成モノマーとする重合体(A)と、溶剤(B)と電解コンデンサ用電解質(C)とを含む電解コンデンサ用電解液であって、前記(メタ)アクリルモノマー(a1)の溶解度パラメータと、溶剤(B)の溶解度パラメータとの差の絶対値が0.0(cal/cm1/2以上4.5(cal/cm1/2未満であり、前記(メタ)アクリルモノマー(a2)の溶解度パラメータと、溶剤(B)の溶解度パラメータとの差の絶対値が4.5(cal/cm1/2以上7.5(cal/cm1/2以下であり、前記溶剤(B)が分子量600以下のアルコールを含有する電解コンデンサ用電解液;前記電解コンデンサ用電解液を含む電解コンデンサである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電解コンデンサ用電解液を用いた電解コンデンサは、耐電圧に優れており、更に高温時の耐電圧低下を抑制できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の電解コンデンサ用電解液は、(メタ)アクリルモノマー(a1)及び(メタ)アクリルモノマー(a2)を必須構成モノマーとする重合体(A)と、溶剤(B)と、電解コンデンサ用電解質(C)とを含む。
なお、本発明において、「(メタ)アクリロイル」の表記は、アクリロイル及び/又はメタアクリロイルを意味し、「(メタ)アクリレート」の表記は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」の表記は、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイロキシ」の表記は、アクリロイロキシ及び/又はメタアクリロイロキシを意味する。
【0010】
前記の重合体(A)は、(メタ)アクリルモノマー(a1)及び(メタ)アクリルモノマー(a2)を必須構成モノマーとする重合体である。
そして、前記(メタ)アクリルモノマー(a1)の溶解度パラメータ(以降、SP値と略記する)と、溶剤(B)のSP値との差の絶対値が0.0(cal/cm1/2以上4.5(cal/cm1/2未満であり、室温での耐電圧の観点及び溶解性の観点からは、1.0(cal/cm1/2以上4.0(cal/cm1/2以下であることが好ましく、更に好ましくは、2.0(cal/cm1/2以上3.0(cal/cm1/2以下である。
また、前記(メタ)アクリルモノマー(a2)のSP値と、溶剤(B)のSP値との差の絶対値が4.5(cal/cm1/2以上7.5(cal/cm1/2以下である。7.5(cal/cm1/2を超える場合には高温時の耐電圧が低下するという問題がある。(メタ)アクリルモノマー(a2)のSP値と、溶剤(B)のSP値との差の絶対値は、好ましくは4.5(cal/cm1/2以上7.0(cal/cm1/2以下であり、更に好ましくは、5.0(cal/cm1/2以上6.5(cal/cm1/2以下である。
なお、本発明におけるSP値は、ロバートエフフェイダース(Robert F. Fedors)らの著によるポリマーエンジニアリングアンドサイエンス(Polymerengineering and science)第14巻、147~154ページに記載されている方法で計算したものである。
【0011】
なお、前記の重合体(A)が、2種以上の(メタ)アクリルモノマー(a1)を構成単位として有する場合、(メタ)アクリルモノマー(a1)のSP値は、(メタ)アクリルモノマー(a1)に該当する各(メタ)アクリルモノマーのSP値をその重量比率に基づいて加重平均した値を用いる。前記の重合体(A)が、2種以上の(メタ)アクリルモノマー(a2)を構成単位として有する場合も同様にして、(メタ)アクリルモノマー(a2)のSP値を算出する。ただし、(メタ)アクリルモノマー(a1)に該当する各(メタ)アクリルモノマーのSP値はいずれも、(メタ)アクリルモノマー(a2)に該当する各(メタ)アクリルモノマーのSP値より大きいものである。
また、溶剤(B)が、2種以上の溶剤の混合物である場合、溶剤(B)のSP値は、溶剤(B)が含有する各溶剤のSP値をその重量比率に基づいて加重平均した値を用いる。
【0012】
前記の(メタ)アクリルモノマー(a1)及び(メタ)アクリルモノマー(a2)としては、(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個有するモノマーが挙げられ、前記の溶剤(B)に対する前記の重合体(A)の溶解性の観点から、(メタ)アクリロイル基を1個有するモノマーが好ましい。
【0013】
(メタ)アクリロイル基を1個有する単量体として好ましいものとしては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、コハク酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド及びアクリロイルモルホリン等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を2個以上有する単量体として好ましいものとしては、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=4)、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=7)ポリエチレングリコールジアクリレート(n=14)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(n=3)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(n=7)ポリプロピレングリコールジアクリレート(n=12)、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド(EO)変性グリセロールトリアクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性トリグレセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
【0014】
上記の(メタ)アクリルモノマーは、溶剤(B)のSP値との差の絶対値によって、(メタ)アクリルモノマー(a1)に該当するか(メタ)アクリルモノマー(a2)に該当するかが定まるが、(メタ)アクリルモノマー(a1)は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミド基、炭素数2~3のオキシアルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する(メタ)アクリルモノマーであることが好ましい。
【0015】
(メタ)アクリルモノマー(a1)として好ましいものとしては、ヒドロキシエチルメタアクリレート(SP値:12.1(cal/cm1/2)、ヒドロキシエチルアクリレート(SP値:12.5(cal/cm1/2)、ヒドロキシブチルアクリレート(SP値:11.6(cal/cm1/2)、アクリル酸(SP値:11.1(cal/cm1/2)、グリセリンモノアクリレート(SP値:13.1(cal/cm1/2)、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート(SP値:12.2(cal/cm1/2)、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート[n(オキシエチレン基の繰り返し数)=2の場合のSP値:11.8(cal/cm1/2;n=4の場合のSP値:11.1(cal/cm1/2]及びN-ヒドロキシエチルアクリルアミド(SP値:14.4(cal/cm1/2)、等が挙げられる。
【0016】
また、(メタ)アクリルモノマー(a2)として好ましいものとしては、メチルメタクリレート(SP値:8.9(cal/cm1/2)、n-ブチルアクリレート(SP値:8.8(cal/cm1/2)、t-ブチルアクリレート(SP値:8.5(cal/cm1/2)、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート(SP値:8.6(cal/cm1/2)、フェノキシエチルアクリレート(SP値:10.1(cal/cm1/2)、ベンジルアクリレート(SP値:10.1(cal/cm1/2)及びシクロヘキシルアクリレート(SP値:9.7(cal/cm1/2)等が挙げられる。
また、前記の(メタ)アクリルモノマー(a1)及び(メタ)アクリルモノマー(a2)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明の重合体(A)は、必須構成モノマーの(メタ)アクリルモノマー(a1)及び(メタ)アクリルモノマー(a2)以外のモノマー(a3)をも構成モノマーとする重合体であってもよい。
前記のモノマー(a3)としては、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、2-ヒロドキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、アセトキシエチルビニルエーテル、アセトキシブチルビニルエーテル、1-ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクトン及びN-ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0018】
前記の(メタ)アクリルモノマー(a1)のSP値と、前記(メタ)アクリルモノマー(a2)のSP値との差の絶対値は、高温時の耐電圧低下を抑制する観点から、1.0~7.0(cal/cm1/2であることが好ましく、更に好ましくは1.5~6.0(cal/cm1/2であり、特に好ましくは、2.0~5.0(cal/cm1/2であり、最も好ましくは2.5~4.0(cal/cm1/2である。
なお、前記の重合体(A)が、2種以上の(メタ)アクリルモノマー(a1)を構成単位として有する場合、(メタ)アクリルモノマー(a1)のSP値は、(メタ)アクリルモノマー(a1)に該当する各(メタ)アクリルモノマーのSP値をその重量比率に基づいて加重平均した値を用いる。前記の重合体(A)が、2種以上の(メタ)アクリルモノマー(a2)を構成単位として有する場合も同様にして、(メタ)アクリルモノマー(a2)のSP値を算出する。
【0019】
また、前記の重合体(A)の必須構成モノマーである(メタ)アクリルモノマー(a1)及び/又は(メタ)アクリルモノマー(a2)が2種以上である場合、高温時の耐電圧低下を更に抑制する観点から、(メタ)アクリルモノマー(a1)に該当する各モノマーと、(メタ)アクリルモノマー(a2)に該当する各モノマーの組み合わせの内、最もSP値の差の絶対値が小さくなる組み合わせについてのSP値の差の絶対値は、1.0~7.0(cal/cm1/2であることが好ましく、更に好ましくは1.5~6.0(cal/cm1/2であり、特に好ましくは、2.0~5.0(cal/cm1/2であり、最も好ましくは2.5~4.0(cal/cm1/2である。
また、(メタ)アクリルモノマー(a1)に該当するモノマーと、(メタ)アクリルモノマー(a2)に該当するモノマーの組み合わせの内、最もSP値の差の絶対値が大きくなる組み合わせについてのSP値の差の絶対値は、1.5~7.0(cal/cm1/2であることが好ましく、更にこのましくは3.0~5.0(cal/cm1/2である。
【0020】
前記の重合体(A)の数平均分子量(以降、Mnと略記する)は、耐電圧の観点及び電導度の観点から、1,000~100,000であることが好ましく、更に好ましくは3,000~50,000であり、特に好ましくは4,000~15,000である。
【0021】
本発明における重合体(A)のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以降GPCと略記)を用いて以下の条件で測定する。
装置(一例):東ソー(株)製HLC-8120
カラム(一例):TSK GEL GMH6 2本〔東ソー(株)製〕
測定温度:40℃
試料溶液:0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量:100μl
検出装置: 屈折率検出器
基準物質:東ソー(株)製標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(重量平均分子量: 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
【0022】
前記の重合体(A)を構成する(メタ)アクリルモノマー(a1)の重量割合は、高温時の耐電圧低下を抑制する観点及び溶解性の観点から、前記重合体(A)を構成する(a1)と(a2)との合計重量を基準として50~99重量%であることが好ましい。
また、前記重合体(A)を構成する(メタ)アクリルモノマー(a2)の重量割合は、高温時の耐電圧低下を抑制する観点から、前記重合体(A)を構成する(a1)と(a2)との合計重量を基準として1~50重量%であることが好ましい。
また、前記重合体(A)がモノマー(a3)を構成モノマーとして含む場合、前記重合体(A)を構成するモノマー(a3)の重量割合は、高温時の耐電圧低下を抑制する観点から、前記重合体(A)を構成する全てのモノマーの重量を基準として20重量%以下であることが好ましい。
【0023】
前記の重合体(A)は、(メタ)アクリルモノマー(a1)、(メタ)アクリルモノマー(a2)及び必要に応じてモノマー(a3)を、公知の方法(特開平5-117330号公報等に記載の方法)を用いて重合することで合成することができる。
例えば、前記モノマー(a1)、(a2)及び必要に応じて(a3)を重合用溶剤(トルエン等)中でラジカル開始剤(アゾビスイソブチロニトリル等)とともに反応させる溶液重合法により合成し、その後重合に用いた溶剤を減圧乾燥により留去することで得ることができる。
【0024】
前記の溶剤(B)は、分子量600以下のアルコールを必須成分として含有する。
分子量600以下のアルコールとしては、メチルアルコール(SP値:13.8(cal/cm1/2)、エチルアルコール(SP値:12.1(cal/cm1/2)、プロピルアルコール(SP値:11.8(cal/cm1/2)、ブチルアルコール(SP値:11.3(cal/cm1/2)、エチレングリコール(SP値:14.8(cal/cm1/2)、ジエチレングリコール(SP値:(cal/cm1/2)、プロピレングリコール(SP値:13.5(cal/cm1/2)、エチレングリコールモノブチルエーテル(SP値:10.8(cal/cm1/2)、ポリエチレングリコール(Mn:600以下)(SP値:11.2~10.1(cal/cm1/2)及びグリセリン(SP値:16.4(cal/cm1/2)等が挙げられる。
これらのうち、高温時の耐電圧低下を抑制する観点から、好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、分子量600以下のポリエチレングリコール及び分子量600以下のポリプロピレングリコールである。
【0025】
前記の溶剤(B)は、発明の効果を阻害しない範囲内で、その他の溶剤を含有していてもよい。その他の溶剤としては、水、アミド溶剤(N-メチルホルムアミド及びN,N-ジメチルホルムアミド等)、ラクトン溶剤(α-アセチル-γ-ブチロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びδ-バレロラクトン等)、ニトリル溶剤(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル、メタクリルニトリル及びベンゾニトリル等)スルホキシド溶剤(ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド及びジエチルスルホキシド)及びスルホン溶剤(スルホラン及びエチルメチルスルホン等)等が挙げられる。
【0026】
前記の溶剤(B)のSP値としては、高温時の耐電圧低下を抑制する観点から、10.0~18.0(cal/cm1/2であることが好ましく、更に好ましくは13.0~15.0(cal/cm1/2である。
なお、溶剤(B)が、2種以上の溶剤の混合物である場合、溶剤(B)のSP値は、溶剤(B)が含有する各溶剤のSP値をその重量比率に基づいて加重平均した値を用いる。
SP値が上記の好ましい範囲(10.0~16.0(cal/cm1/2)にある溶剤(B)としては、エチレングリコール(SP値:14.8(cal/cm1/2)、プロピレングリコール(SP値:13.5(cal/cm1/2)、ジエチレングリコール(SP値:13.0(cal/cm1/2)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
溶剤(B)が含有する分子量600以下のアルコールの重量割合は、導電率の観点から、溶剤(B)の重量を基準として、50~100重量%であることが好ましく、更に好ましくは100重量%である。
【0028】
前記の電解コンデンサ用電解質(C)としては、電解コンデンサ用電解液に用いられる公知の電解質を使用することができるが、カルボキシレートイオンと、アンモニウム又はアミジニウムとからなる電解質であることが好ましい。
【0029】
カルボキシレートイオンとしては、飽和ポリカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、2-メチルアゼライン酸、セバシン酸、1,5-オクタンジカルボン酸、4,5-オクタンジカルボン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,6-デカンジカルボン酸、5,6-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,15-ペンタデカンジカルボン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ペンチルマロン酸、ヘキシルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、メチルプロピルマロン酸、メチルブチルマロン酸、エチルプロピルマロン酸、ジプロピルマロン酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルコハク酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、3-メチル-3-エチルグルタル酸、3,3-ジエチルグルタル酸、3,3-ジメチルグルタル酸及び3-メチルアジピン酸等);
飽和モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸及びウンデカン酸等);
不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、クロトン酸及びオレイン酸等];
不飽和脂肪族ポリカルボン酸(マレイン酸、フマール酸、イタコン酸及びシトラコン酸等);
芳香族モノカルボン酸(安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸、トルイル酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、イソプロピル安息香酸、ブチル安息香酸、イソブチル安息香酸、第2ブチル安息香酸、第3ブチル安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、エトキシ安息香酸、プロポキシ安息香酸、イソプロポキシ安息香酸、ブトキシ安息香酸、イソブトキシ安息香酸、第2ブトキシ安息香酸、第3ブトキシ安息香酸、アミノ安息香酸、N-メチルアミノ安息香酸、N-エチルアミノ安息香酸、N-プロピルアミノ安息香酸、N-イソプロピルアミノ安息香酸、N-ブチルアミノ安息香酸、N-イソブチルアミノ安息香酸、N-第2ブチルアミノ安息香酸、N-第3ブチルアミノ安息香酸、N,N-ジメチルアミノ安息香酸及びN,N-ジエチルアミノ安息香酸等);
及び芳香族ポリカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸等)等のカルボン酸のカルボキシ基から水素原子を除いたアニオンが挙げられる。
これらの内、耐電圧の観点から好ましいのは飽和ポリカルボン酸及び不飽和ポリカルボン酸のカルボキシ基から水素原子を除いたアニオンである。
【0030】
アンモニウムは、前記カルボキシレートイオンと塩を形成するアンモニウムであれば特に限定されることなく使用することができる。
アンモニウムとしては、無置換アンモニウム、第1級アンモニウム(メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム及びイソプロピルアンモニウム等)、第2級アンモニウム(ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、メチルエチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム及びメチルイソプロピルアンモニウム等)、第3級アンモニウム(トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジメチルプロピルアンモニウム及びジメチルイソプロピルアンモニウム等)及び第4級アンモニウム(テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム及びテトラエチルアンモニウム等)等が挙げられる。
【0031】
アミジニウムは、前記カルボキシレートイオンと塩を形成するアミジニウムであれば特に限定されることなく使用することができる。
アミジニウムとしては、イミダゾリニウム、イミダゾリニウムが有する水素原子をアルキル基で置換したカチオン(1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4-トリメチル-2-エチルイミダゾリニウム、1,3-ジメチル-2,4-ジエチルイミダゾリニウム及び1,2-ジメチル-3,4-ジエチルイミダゾリニウム等)、イミダゾリウム及びイミダゾリウムが有する水素原子をアルキル基で置換したカチオン(1,3-ジメチルイミダゾリウム、1,3-ジエチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム及び1,2,3-トリメチルイミダゾリウム等)等が挙げられる。
【0032】
アンモニウム及びアミジニウムの内、耐電圧の観点から好ましいのはアンモニウムであり、更に好ましいのは無置換アンモニウム、第一級アンモニウム及び第三級アンモニウムである。
【0033】
本発明の電解コンデンサ用電解液は、必要に応じてホウ酸化合物(D)を含有していてもよい。
前記のホウ酸化合物(D)としては、ホウ酸及びホウ酸エステル等が挙げられる。
前記のホウ酸エステルとしては、ホウ酸アルキル(ホウ酸トリエチル等)及びホウ酸アリール(ホウ酸トリフェニル等)等が挙げられる。
これらの内、耐電圧の観点から好ましいのはホウ酸である。
【0034】
本発明の電解コンデンサ用電解液において、電解コンデンサ用電解液の合計重量に対する前記の重合体(A)の重量比率は、0.5~40重量%であることが好ましく、更に好ましくは1~30重量%であり、特に好ましくは5~20重量%である。
0.5重量%以上の重合体(A)を含有すると耐電圧が良好であり、40重量%以下であると導電率が良好である。
電解コンデンサ用電解液の合計重量に対する前記の溶剤(B)の重量比率は、耐電圧向上の観点から、50~99重量%であることが好ましく、更に好ましくは60~80重量%である。
電解コンデンサ用電解液の合計重量に対する電解コンデンサ用電解質(C)の重量比率は、導電率の観点から0.5~40重量%であることが好ましく、更に好ましくは5~30重量%である。
【0035】
電解コンデンサ用電解液の合計重量に対するホウ酸化合物(D)の重量比率は、耐電圧の観点から0~10重量%であることが好ましく、更に好ましくは0~5重量%である。
【0036】
本発明の電解コンデンサ用電解液の製造方法は、特に限定はされない。
例えば、前記の重合体(A)、溶剤(B)及び電解コンデンサ用電解質(C)並びに必要に応じてホウ酸化合物(D)を、20~150℃の温度範囲で、公知の機械的混合方法(例えばメカニカルスターラーやマグネティックスターラーを用いる方法)を用いることによって均一混合することで、製造することができる。
【0037】
本発明の電解コンデンサとしては、前記の本発明の電解コンデンサ用電解液を含んでいればよく、形状及び大きさ等は限定されない。本発明の電解コンデンサとしては、例えば、捲き取り形の電解コンデンサであって、陽極表面に酸化アルミニウムが形成された陽極(酸化アルミニウム箔)と陰極アルミニウム箔との間に、セパレータを介在させて捲回することにより構成されたコンデンサが挙げられる。
【0038】
本発明の電解コンデンサは、例えば、本発明の電解コンデンサ用電解液を駆動用電解液としてセパレータ(クラフト紙及びマニラ紙等)に含浸し、陽陰極と共に、有底筒状のアルミニウムケースに収納した後、アルミニウムケースの開口部を封口ゴム(ブチルゴム及びシリコーンゴム等)で密閉することで得ることができる。
【実施例
【0039】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
また、製造例及び比較製造例で合成した重合体(A)のMnは、GPCを用いて以下の条件で測定した。
装置:東ソー(株)製 HLC-8120
カラム:TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度:40℃
試料溶液:0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量:100μl
検出装置:屈折率検出器
基準物質:東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(重量平均分子量: 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
【0041】
<製造例1:重合体(A-1)の合成>
撹拌機、温度計及び冷却管を取り付けたフラスコに、メチルイソブチルケトン[和光純薬工業(株)製]200重量部及びヒドロキシエチルメタクリレート[東京化成工業(株)製]70重量部とメチルメタクリレート[東京化成工業(株)製]30重量部を投入し、80℃まで加熱した。ここに予め調製しておいたアゾビスイソブチロニトリル[和光純薬工業(株)製]1部をメチルイソブチルケトン5重量部に溶解させた溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間加熱した。その後100℃、0.5kPaの条件の減圧乾燥によりメチルイソブチルケトンを留去し、重合体(A-1)を合成した。
【0042】
<製造例2:重合体(A-2)の合成>
製造例1において、ヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルメタクリレートに代えて、ヒドロキシエチルアクリレート[東京化成工業(株)製]70重量部及びn―ブチルアクリレート[東京化成工業(株)製]30重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-2)を合成した。
【0043】
<製造例3:重合体(A-3)の合成>
製造例1において、ヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルメタクリレートに代えて、ヒドロキシブチルアクリレート[東京化成工業(株)製]70重量部、メチルメタクリレート[東京化成工業(株)製]15重量部及びt―ブチルアクリレート[東京化成工業(株)製]15重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-3)を合成した。
【0044】
<製造例4:重合体(A-4)の合成>
製造例1において、ヒドロキシエチルメタクリレートに代えて、アクリル酸[東京化成工業(株)製]70重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-4)を合成した。
【0045】
<製造例5:重合体(A-5)の合成>
製造例1において、ヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルメタクリレートに代えて、グリセリンモノアクリレート[ブレンマーGLM、日油(株)製]70重量部及び2-エチルヘキシルアクリレート[東京化成工業(株)製]30重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-5)を合成した。
【0046】
<製造例6:重合体(A-6)の合成>
製造例1において、ヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルメタクリレートに代えて、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート[日本化成(株)製]70重量部及びフェノキシエチルアクリレート[ビスコート♯192、大阪有機化学工業(株)製]30重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-6)を合成した。
【0047】
<製造例7:重合体(A-7)の合成>
製造例1において、ヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルメタクリレートに代えて、アクリルアミド[東京化成工業(株)製]70重量部及びベンジルアクリレート[東京化成工業(株)製]30重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-7)を合成した。
【0048】
<製造例8:重合体(A-8)の合成>
製造例1において、ヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルメタクリレートに代えて、ポリエチレングリコ―ル[n(オキシエチレン基の繰り返し数)=2]モノアクリレート[ブレンマーAE-90、日油(株)製]70重量部及びシクロヘキシルアクリレート[東京化成工業(株)製]30重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-8)を合成した。
【0049】
<製造例9:重合体(A-9)の合成>
製造例1において、ヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルメタクリレートに代えて、ポリエチレングリコ―ル[n(オキシエチレン基の繰り返し数)=4]モノアクリレート[ブレンマーAE-200、日油(株)製]70重量部及びシクロヘキシルアクリレート[東京化成工業(株)製]30重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-9)を合成した。
【0050】
<製造例10:重合体(A-10)の合成>
製造例1において、ヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルメタクリレートに代えて、ヒドロキシエチルメタクリレート[東京化成工業(株)製]30重量部、ヒドロキシブチルアクリレート[東京化成工業(株)製]30重量部及びフェノキシエチルアクリレート[東京化成工業(株)製]40重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-10)を合成した。
【0051】
<製造例11:重合体(A-11)の合成>
製造例1において、ヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルメタクリレートに代えて、ヒドロキシブチルアクリレート[東京化成工業(株)製]90重量部及びメチルメタクリレート[東京化成工業(株)製]10重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-11)を合成した。
【0052】
<製造例12:重合体(A-12)の合成>
製造例1において、ヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルメタクリレートに代えて、ヒドロキシブチルアクリレート[東京化成工業(株)製]50重量部及びフェノキシエチルアクリレート[東京化成工業(株)製]50重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-12)を合成した。
【0053】
<比較製造例1:重合体(A’-1)の合成>
製造例1において、ヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルメタクリレートに代えて、アクリル酸[東京化成工業(株)製]72重量部及びメタクリル酸[東京化成工業(株)製]28重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い比較用の重合体(A’-1)を合成した。
【0054】
<比較製造例2:重合体(A’-2)の合成>
製造例1において、ヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルメタクリレートに代えて、ヒドロキシブチルアクリレート[東京化成工業(株)製]100重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い比較用の重合体(A’-2)を合成した。
【0055】
<比較製造例3:重合体(A’-3)の合成>
製造例1において、ヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルメタクリレートに代えて、メチルメタクリレート[東京化成工業(株)製]100重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い比較用の重合体(A’-3)を合成した。
【0056】
重合体(A-1)~(A-14)及び比較用の重合体(A’-1)~(A’-3)を構成する各モノマーのSP値を表1に示す。また、溶剤(B)がエチレングリコールである場合における重合体(A-1)~(A-14)及び比較用の重合体(A’-1)~(A’-3)を構成する各モノマーのSP値とエチレングリコールのSP値との差の絶対値を表1に示す。
また、溶剤(B)がプロピレングリコールである場合における重合体(A-1)を構成する各モノマーのSP値とプロピレングリコールとのSP値との差の絶対値を表2に示す。
また、溶剤(B)がエチレングリコールとプロピレングリコールとの混合物である場合における重合体(A-1)を構成する各モノマーのSP値とエチレングリコールとプロピレングリコールとの混合物とのSP値との差の絶対値、及び溶剤(B)がグリセリンである場合における重合体(A-1)を構成する各モノマーのSP値とグリセリンのSP値との絶対値を表2に示す。
また、溶剤(B)が、ジエチレングリコール又はグリセリンである場合における重合体(A-3)を構成する各モノマーのSP値とジエチレングリコール又はグリセリンとのSP値との差の絶対値を表3に示す。
また、重合体(A-1)~(A-14)及び比較用の重合体(A’-1)~(A’-3)の数平均分子量を表1~3に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
<電解質(C-1)の調製>
<製造例13>
ビーカーにメタノール200重量部とアゼライン酸48.5重量部を投入し、炭酸アンモニウム29.2重量部を投入し中和した。その後減圧下(0.5kPa)80℃の条件でメタノールを除去し、アゼライン酸アンモニウム(C-1)54.0重量部を得た。
【0061】
<電解コンデンサ用電解液の調製>
<実施例1~21、比較例1~7>
上記製造例で合成した重合体(A)としての重合体(A-1)~(A-14)及び比較製造例で合成した比較用の重合体(A’-1)~(A’-3)と、電解コンデンサ用電解質(C)と、溶剤(B)としてのエチレングリコール(SP値:14.8(cal/cm1/2)、プロピレングリコール(SP値:13.5(cal/cm1/2)、ジエチレングリコール(SP値:13.0(cal/cm1/2)及びグリセリン(SP値:16.4(cal/cm1/2)、ホウ酸化合物(D)としてのホウ酸とを表1に示した部数で配合し、実施例1~21の電解液の電解コンデンサ用電解液及び比較例1~7の比較用電解コンデンサ用電解液を調製した。
【0062】
【表4】
【0063】
また、実施例1~21の電解コンデンサ用電解液と、比較例1~7の比較用電解コンデンサ用電解液について、導電率及び火花電圧を以下の方法で評価を行った。結果を表4に示す。
【0064】
<導電率>
電気伝導率計CM-40S[東亜電波工業(株)製]を用いて、実施例及び比較例の電解液の30℃での導電率を測定した。
【0065】
<火花電圧(25℃、85℃)>
陽極として10cmの高圧用化成エッチングアルミニウム箔を、陰極として10cmのプレーンなアルミニウム箔を、電解液として実施例及び比較例の各電解液を用いた。次に、25℃又は85℃にて定電圧・定電流直流電源装置[(株)高砂製作所製、GP0650-05R]を用いて定電流法(2mA)による負荷をかけ、電圧を測定した。横軸に時間を、縦軸に電圧をプロットし、時間経過に伴う電圧の上昇カーブを観測し、初めにスパーク又はシンチレーションによる上昇カーブの乱れが生じた時点での電圧を火花電圧とした。火花電圧が高いほど、耐電圧が高いことを示す。
【0066】
本発明の実施例1~21の電解コンデンサ用電解液は、室温環境下において優れた耐電圧と導電率を示し、さらに高温環境下(85℃)においても、優れた耐電圧を維持し、耐電圧の低下が小さい。
比較例1の比較用電解コンデンサ用電解液は、室温環境下及び降温環境下において耐電圧が低い。
一方、比較例2~4の比較用電解コンデンサ用電解液は、重合体(A)未添加の比較例1に比べて、室温環境下における耐電圧が向上するものの、85℃の高温環境下においては耐電圧が大きく低下する。これは重合体(A’-1)及び重合体(A’-2)が、溶剤との極性の差が比較的大きい(メタ)アクリルモノマー(a2)を構成単位として有していないためであると考えられる。
比較例5及び6の比較用電解コンデンサ用電解液は、室温環境下及び降温環境下において耐電圧が低い。 また、比較例7の比較用電解コンデンサ用電解液において、重合体(A’-3)は溶剤に不溶であり、コンデンサ用添加剤として使用することができない。これは重合体(A’-3)が、(メタ)アクリルモノマー(a1)を構成単位として有しておらず、溶剤との極性の差が大きいためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の電解コンデンサ用電解液を用いた電解コンデンサは、耐電圧に優れているため、高い駆動電圧が要求される電気製品及び電子製品の部品として好適に使用できる。
また、本発明の電解コンデンサ用電解液は、高温時にも高い耐電圧を有するため、駆動時に高温になりやすいノートパソコン等のモバイル用途、特に車載用途の電解コンデンサ用電解液として好適である。